説明

液体吐出ヘッド用基板の製造方法

【課題】本発明は、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去可能な液体吐出ヘッド用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、シリコン基板の表面であって液体供給口が開口する部位に、前記シリコン基板に対して選択的にエッチングされるアルミニウムを含有する犠牲層を形成する工程と、前記シリコン基板の裏面に、前記犠牲層に対応した開口部を有するエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクをマスクとして、8質量%以上15質量%未満のTMAH含む第一のエッチング液を用いて、前記シリコン基板をエッチングする第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程後に、15質量%以上25質量%以下のTMAHを含む第二のエッチング液を用いて、前記犠牲層を除去する第二のエッチング工程と、を有する液体吐出ヘッド用基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに用いられる液体吐出ヘッド用基板の製造方法に関する。好ましくは、インクジェット記録ヘッドに用いられるインクジェット用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットのインク供給口を精度良くエッチングし、ヒータとインク供給口の距離を一定に保ち、インクジェット記録ヘッドの性能を向上させることが望まれている。例えば、特許文献1に開示されているように、犠牲層をアルミニウムにしてアルカリエッチング液によりインク供給口を形成する方法がある。
【0003】
また、生産性を向上させるため、シリコンのエッチング時間短縮が求められている。例えば、特許文献2に開示されているように、有機アルカリ化合物と無機アルカリ化合物であるアルカリ化合物と、シリコン又はシリコン化合物を含有させたエッチング液組成にすることで、シリコン異方性エッチング時間の短縮が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-35281号公報
【特許文献2】特開2009-206335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エッチング液の組成によっては、犠牲層のエッチングにバラツキが生じ、ウエハ面内でインク供給口の表面開口幅にバラツキが生じる場合があった。
【0006】
また、特許文献2のエッチング液でエッチングを行うと、シリコンのエッチングに伴い、シリコンがエッチング液に溶出し、アルミニウムに対するエッチングレートが低下することがあった。さらにシリコンのエッチングが進行すると、ある領域からアルミニウムがエッチングされなくなり、犠牲層の残渣が生じる場合があった。犠牲層の残渣が生じると、インクジェット記録ヘッドの性能を低化させてしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去可能な液体吐出ヘッド用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、液体供給口を有する液体吐出ヘッド用基板の製造方法であって、シリコン基板の第一の面であって前記液体供給口が開口する部位に、前記シリコン基板に対して選択的にエッチングされるアルミニウムを含有する犠牲層を形成する工程と、前記シリコン基板の前記第一の面の裏面である第二の面に、前記犠牲層に対応した開口部を有するエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクをマスクとして、8質量%以上15質量%未満のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む第一のエッチング液を用いて、前記シリコン基板をエッチングする第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程後に、15質量%以上25質量%以下のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む第二のエッチング液を用いて、前記犠牲層を除去する第二のエッチング工程と、を有することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去可能な液体吐出ヘッド用基板の製造方法を提供することができる。シリコン基板が早くエッチングされるため、生産能力が向上する。また、犠牲層が良好に除去されるため、液体供給口の開口幅が精度よく形成される。したがって、良好な吐出特性を示す液体吐出ヘッド用基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係わる液体吐出ヘッド用基板の製造方法を説明するための断面工程図である。
【図2】本実施形態によって製造される液体吐出ヘッド用基板を備える液体吐出ヘッドの構成例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
なお、以下の説明では、本発明の適用例として、インクジェットヘッド用基板を例に挙げて説明を行うが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。また、インクジェットヘッド用基板の他、バイオッチップ作製や電子回路印刷用途の液体吐出ヘッド用基板の製造方法にも適用できる。液体吐出ヘッドとしては、インクジェット記録ヘッドの他にも、例えばカラーフィルター製造用ヘッド等も挙げられる。
【0013】
図2は、本実施形態のインクジェットヘッド用基板を備えるインクジェット記録ヘッドの一例を示す模式的斜視図である。図2に示されるように、インクジェットヘッド用基板は、吐出エネルギー発生素子3が所定のピッチで2列並んで形成されたシリコン基板1を有している。シリコン基板1上には、インク流路(液体流路)11及び吐出エネルギー発生素子3の上方に開口するインク吐出口(吐出口)9が流路形成部材8により形成されている。インク流路11は、インク供給口10とインク吐出口9に連通している。また、シリコンの異方性エッチングによって形成されたインク供給口10がインク吐出エネルギー発生素子3の2つの列の間に開口されている。このインクジェット記録ヘッドは、インク供給口10を介してインク流路11内に充填されたインク(液体)に、吐出エネルギー発生素子3が発生する圧力を加えることによって、インク吐出口9からインク液滴を吐出させて被記録媒体に付着させることにより記録を行う。
【0014】
図1を用いて、本実施形態のインクジェットヘッド用基板の製造方法を説明する。
【0015】
図1(A)〜(F)は、図2の点線A−Aにおける断面図であり、本実施形態のインクジェットヘッド用基板の基本的な製造工程を説明するための断面工程図である。
【0016】
図1(A)に示されるシリコン基板1の表面(第一の面)であって液体供給口が開口する部位には、犠牲層14が形成されている。また、シリコン基板1の表面側には発熱抵抗体等の吐出エネルギー発生素子3が複数個配置されている。また、シリコン基板1及び犠牲層14の上には、保護膜4が形成されている。また、シリコン基板1の裏面(第一の面と反対側の第二の面)には、後工程でインク供給口を形成する際のエッチングマスク材に用いる酸化膜2が形成されている。
【0017】
吐出エネルギー発生素子3の配線や吐出エネルギー発生素子を駆動するための半導体素子は不図示である。また、吐出エネルギー発生素子3や犠牲層14、その他の素子や配線は保護膜4で覆われている。
【0018】
また、シリコン基板の第一の面の裏面である第二面に、インク供給口の酸化膜2をエッチングするためのマスク材15をパターニングで予め形成しておく。
【0019】
犠牲層14を形成しておくことによりインク供給口(液体供給口)の表面開口を精度よく形成することができる。犠牲層はアルミニウムを含有し、シリコン基板のエッチング液(アルカリ溶液)で選択的にエッチングが可能である。犠牲層の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウムシリコン(AlSi)、アルミニウム銅(AlCu)、アルミニウムシリコン銅(AlSiCu)などが挙げられる。これらのうち、アルミニウム又はアルミニウム銅が好ましい。AlSiは、AlとSiとからなる化合物であり、AlCuは、AlとCuとからなる化合物であり、AlSiCuは、AlとSiとCuとからなる化合物である。
【0020】
保護膜4は、後工程で用いるエッチング液に対して耐エッチング性を有する。保護膜としては、例えば、酸化珪素(SiO)や窒化珪素(SiN)、炭化珪素(SiC)等を用いることができる。
【0021】
次に、図1(B)に示すように、図1(A)で示された基板上に、インク流路の型材となる流路型材16を形成し、該流路型材16の上に被覆樹脂を用いて吐出口9を有する流路形成部材8を形成する。
【0022】
流路型材16は、例えば、ポジ型レジストを塗布し、露光及び現像を施すことにより形成することができる。被覆樹脂としては、感光性樹脂を用いることができる。吐出口9を有する流路形成部材8は、例えば、感光性樹脂をスピンコート等により塗布し、紫外線やDeepUV等による露光、現像を行って形成することができる。
【0023】
次に、図1(C)に示すように、マスク材15をマスクとして酸化膜2をエッチングし、後工程におけるインク供給口の形成に用いるエッチングマスク2’を形成する。エッチングマスク2’は前記犠牲層に対応した開口部を有する。
【0024】
次に、図1(D)に示すように、エッチングマスク2’をマスクとし、第一のエッチング液を用いて、シリコン基板1をエッチングする第一のエッチング工程を行う。第一のエッチング工程ではエッチングをシリコン基板の途中で止めてもいいが、犠牲層に到達するまでエッチングを行うことが好ましい。
【0025】
本発明では、第一のエッチング液としては、シリコンのエッチングレートが早い溶液を使用する。
【0026】
即ち、第一のエッチング液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を8質量%以上15質量%未満の範囲で含有する。
【0027】
TMAHの濃度を8質量%以上とすることで、エッチングが安定し、シリコン基板の面荒れの発生を抑制できる。TMAHの濃度を15質量%未満とすることで、エッチングのレートを向上させることができる。TMAHの濃度は、好ましくは、10質量%以上である、また、好ましくは13質量%以下である。
【0028】
第一のエッチング液は、シリコン化合物を含有していることが好ましい。このシリコン化合物を、第一のシリコン化合物とする。第一のシリコン化合物は、シリコンを含んで構成される化合物である。シリコン化合物としては、無機含珪素化合物又は有機含珪素化合物がある。無機含珪素化合物としては、例えば、金属珪素、ヒュームド・シリカ、コロイダル・シリカ、シリカゲル、シリカゾル、珪藻土、酸性白土、活性白土等が挙げられる。有機含珪素化合物としては、例えば、珪酸アルキル若しくはアルキル珪酸等が挙げられる。これらは単独で又は複数混合して用いることができる。
【0029】
第一のシリコン化合物の濃度は、第一のエッチング液中0.5質量%以上8質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。第一のシリコン化合物の濃度が0.5質量%以上である場合、シリコンのエッチングレートの不安定な領域を避けることができる。特に第一のエッチング液が後述する無機アルカリ金属を含有している場合、第一のシリコン化合物の含有量が多いと、シリコンのエッチングレートが低下することがある。よって、第一のシリコン化合物の濃度を8質量%以下とすることで、エッチングのレートを向上させることができる。
【0030】
シリコンのエッチングレートは、TMAHとシリコン化合物の組成を調整することで、例えば22質量%のTMAHのみの場合と比較し1.2〜1.5倍にすることができる。
【0031】
また、前記第一のエッチング液は、さらに無機アルカリ金属を含有することが好ましい。無機アルカリ金属としては、例えば、NaOH、KOH、又はCsOH等が挙げられる。無機アルカリ金属を2質量%含有する第一のエッチング液は、エッチングレートがさらに1.5倍から2倍程度向上する。無機アルカリ金属の濃度は、第一のエッチング液中1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0032】
第一のエッチング液の温度は、特に制限されるものではないが、例えば80℃とすることができる。
【0033】
第一のエッチング工程後に、図1(E)に示すように、第二のエッチング液を用いて、犠牲層14を除去する。第二のエッチング液により、犠牲層が速やかに除去される。この際に、シリコンがエッチングされてもよい。
【0034】
第二のエッチング液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を15質量%以上25質量%以下含有する。
【0035】
TMAHの濃度が15質量%以上の場合、エッチング面の均一性を高めることができる。TMAHの濃度が25質量%以下の場合、エッチングのレートを向上させることができる。好ましくは18質量%以上である。また好ましくは22質量%以下である。
【0036】
また、第二のエッチング液は第二のシリコン化合物を含むことが好ましい。第二のシリコン化合物としては、上述の第一のシリコン化合物と同じものを用いることができる。なお、第一のシリコン化合物と第二のシリコン化合物としてはそれぞれ異なるものを用いることができる。
【0037】
第二のシリコン化合物の濃度は、第二のエッチング液中0質量%以上12質量%以下の範囲であることが好ましい。12質量%以下とすることで、エッチングの阻害による面荒れの発生を抑制できる。また、0.1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上6質量%以下であることがさらに好ましい。第二のシリコン化合物の濃度は、第二のエッチング液0.1質量%以上8質量%以下の範囲にすることによって、シリコンのエッチングレートを遅くし、犠牲層を速やかに除去することができる。そのため、インク供給口の開口幅を一定とすることができる。
【0038】
第二のエッチング液の温度は、特に制限されるものではないが、例えば80℃とすることができる。
【0039】
また、第二のエッチング液のTMAHの濃度は、第一のエッチング液のTMAHの濃度よりも、2質量%以上高いことが好ましく、4質量%以上高いことがより好ましく、6質量%以上高いことがさらに好ましい。
【0040】
次に、図1(F)に示すように、保護膜4の一部を除去する。そして、流路型材16を除去する。また、流路形成部材8を熱硬化させることもできる。
【0041】
以上の工程により、インク供給口10が形成されたインクジェットヘッド用基板1を製造することができる。
【0042】
(実施例)
図1を用いて、インクジェット記録ヘッドに用いられるシリコン基板のエッチング方法の実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例1>
まず、図1(A)に示されるシリコン基板1を用意した。シリコン基板1の上には、アルミニウムを用いて犠牲層14が形成されている。また、シリコン基板1の上には発熱抵抗体からなる吐出エネルギー発生素子3が複数個配置されている。発熱抵抗体の材料はTaSiNを用いた。また、シリコン基板1の裏面にはインク供給口を形成するためのエッチングマスクに用いる酸化膜2を形成した。吐出エネルギー発生素子3や犠牲層14、その他の素子や配線は、保護膜4で覆われている。基板裏面には、酸化膜2をエッチングするためのマスク材15をパターニングで予め形成しておいた。保護膜としては、SiNを用いた。マスク材15は、ポリイミドをパターニングして形成した。
【0044】
次に、図1(B)に示すように、基板上にポジレジストを用いて流路型材16を形成し、流路型材の上に流路形成部材8を形成した。
【0045】
流路型材の材料としては、ポジ型の感光性樹脂であるODUR(商品名:東京応化製)を用いた。
【0046】
流路形成部材の材料としては、エポキシ樹脂および光カチオン重合開始剤、溶媒であるキシレンを含む材料でネガ型の感光性樹脂を用いた。ネガ型レジストとしては、エポキシ樹脂EHPE3150(商品名、ダイセル化学工業製)100質量パーセントと光カチオン重合触媒SP−172(商品名、旭電化工業製)を6質量%の材料を使用した。その感光性樹脂をスピンコート等により塗布、紫外線やDeepUV等による露光、現像を行うことにより、吐出口9を有する流路形成部材を形成した。
【0047】
次に、図1(C)に示すように、マスク材15をマスクとして酸化膜2をBHFによりエッチングし、エッチングマスク2’を形成した。
【0048】
次に、図1(D)に示すように、第一のエッチング液として、TMAH10質量%、CsOH1質量%、残りを純水で合計100質量%としたものを用い、シリコン基板のエッチングを行った(第一のエッチング工程)。
【0049】
次に、図1(E)に示すように、第二のエッチング液として、TMAH22質量%、残りを純水で合計100質量%としたものを用いて、犠牲層14を除去した。第二のエッチング液により、犠牲層が速やかに除去された。この際に、シリコン基板も一部エッチングされた。
【0050】
次に、図1(F)に示すように、保護膜4の一部をエッチングした後、流路型材16を除去した。
実施例1の製造方法によれば、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去することができた。
【0051】
<実施例2>
第一のエッチング液の組成を、TMAH8質量%、CsOH1質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1と同様、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去することができた。
【0052】
<実施例3>
第一のエッチング液の組成を、TMAH14質量%、CsOH1質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1よりもシリコン基板を速やかにエッチングすることができた。また、犠牲層を良好に除去することができた。
【0053】
<実施例4>
第一のエッチング液の組成を、TMAH8質量%、コロイダルシリカ1質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1と同様、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去することができた。
【0054】
<実施例5>
第一のエッチング液の組成を、TMAH8質量%、CsOH1質量%、コロイダルシリカ1質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1と同様、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去することができた。また、実施例1よりもエッチングレートがさらに安定した。
【0055】
<実施例6>
第二のエッチング液の組成を、TMAH15質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1と同様、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去することができた。
【0056】
<実施例7>
第二のエッチング液の組成を、TMAH25質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1と同様、シリコン基板を速やかにエッチングし、犠牲層を良好に除去することができた。
【0057】
<比較例1>
第一のエッチング液の組成を、TMAH7質量%、CsOH1質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1と比較して、シリコン基板の液体供給口に面荒れが発生した。
【0058】
<比較例2>
第一のエッチング液の組成を、TMAH16質量%、CsOH1質量%、残りを純水で合計100質量%とした以外は、実施例1と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例1と比較して、シリコン基板のエッチングにさらに時間を要した。
【0059】
<比較例3>
第二のエッチング液の組成を、第一のエッチング液の組成と同様にした以外は、実施例5と同様にして液体吐出ヘッド用基板を製造した。実施例5と比較して、犠牲層を良好にエッチングすることができず、インク供給口の開口幅がばらついた。
【符号の説明】
【0060】
1 シリコン基板
2 酸化膜
2’ エッチングマスク
3 吐出エネルギー発生素子
4 保護膜
8 流路形成部材
9 インク吐出口(吐出口)
10 インク供給口(液体供給口)
11 インク流路(液体流路)
14 犠牲層(アルミニウム化合物)
15 マスク材
16 流路型材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給口を有する液体吐出ヘッド用基板の製造方法であって、
シリコン基板の第一の面であって前記液体供給口が開口する部位に、前記シリコン基板に対して選択的にエッチングされるアルミニウムを含有する犠牲層を形成する工程と、
前記シリコン基板の前記第一の面の裏面である第二の面に、前記犠牲層に対応した開口部を有するエッチングマスクを形成する工程と、
前記エッチングマスクをマスクとして、8質量%以上15質量%未満のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む第一のエッチング液を用いて、前記シリコン基板をエッチングする第一のエッチング工程と、
第一のエッチング工程後に、15質量%以上25質量%以下のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む第二のエッチング液を用いて、前記犠牲層を除去する第二のエッチング工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
【請求項2】
前記第一のエッチング液が第一のシリコン化合物を含有する請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
【請求項3】
前記第一のエッチング液が無機アルカリ金属を含有する請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
【請求項4】
前記第一のシリコン化合物の濃度が前記第一のエッチング液中0.5質量%以上8質量%以下である請求項2に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
【請求項5】
前記第二のエッチング液が第二のシリコン化合物を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
【請求項6】
前記第二のシリコン化合物の濃度が前記第二のエッチング液中0質量%以上12質量%以下である請求項5に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。
【請求項7】
前記無機アルカリ金属がNaOH、KOH、又はCsOHである請求項3に記載の液体吐出ヘッド用基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−232571(P2012−232571A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−79459(P2012−79459)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】