説明

液体吐出装置、その制御方法及び液体タンク

【課題】コストアップを招くことなく、液体タンク内の液体残量などの液体使用履歴情報を、ユーザ及び装置側で正確かつ容易に確認することを可能とした液体吐出装置、その制御方法及び液体タンクを提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、インクカートリッジ17が着脱されるカートリッジ装着部15と、インクカートリッジ17から引き込んだインクを吐出するインクジェットヘッド21と、インクカートリッジ17のICチップ52に対してインクカートリッジ17内のインク使用履歴情報の読み書きを行うリーダライターとを備え、インクジェットヘッド21からインクを吐出して記録紙12に印刷処理を行うインクジェットプリンタであって、ICチップ52に書き込むインク使用履歴情報の少なくとも一部を、インクジェットヘッド21によってインクカートリッジ17の外面の印刷可能部51に印刷させる制御部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱可能な液体タンクの液体をヘッドに供給して液体を吐出する液体吐出装置、その制御方法及び液体タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置としては、着脱可能なインクカートリッジからインクを記録ヘッドに供給し、この記録ヘッドによって用紙に印刷するものがある。
このような印刷装置には、印字によりインクが消費され「インク無し」がセンサにより検知されると、インクカートリッジが装着部から取り出される前に、書込装置によって商標ロゴが塗り潰され、回数表示用ラベルに1本の黒線が追加され、新たな交換貼替用ラベルをロゴ部に貼着しないと使用できず、また、補充回数終了で回数表示ラベルが塗り潰されたときも使用できないようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−11469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置によれば、取り外したインクカートリッジのラベルから、インクカートリッジの使用の可否を確認することができるが、商標ロゴや回数表示用ラベルに対して情報を読み書きするための読取センサ及び書込装置を要するため、部品点数の増大及び構造の複雑化により、装置のコストアップを招いてしまう。
また、ラベルがインクなどで汚染されると、装置の読取センサによるラベルのインク情報の読み取りが正確に行われず、印刷処理が円滑に行われなくなる。
しかも、商標ロゴや回数表示用ラベルからでは、インクの有無あるいはインクカートリッジの使用回数を確認することができるが、インク残量を正確に把握することはできない。
【0005】
また、インクカートリッジの容器の一部に透明な小窓を設け、この小窓によりインク残量を目視で確認したり、光学的な検出器でインクの有無を検出することも考えられるが、この場合、インクカートリッジ内のインク収納パックの一部も透明にしなければならず、構造的に複雑になる。また、容器やパックを透明とする際に用いる材料は、ガスバリア性が劣り、しかも、外乱光の入射による色の変化などが生じ易くなるため、インクの保存性が良くない。
【0006】
また、インクカートリッジにICチップを設け、インク情報の読み書きを可能とすることも考えられるが、インクカートリッジをプリンタ本体から取り外すと、インク残量を確認できなくなってしまう。このため、複数のインクカートリッジを混在させてしまったときに、それぞれのインクカートリッジのインク残量を確認するために、それぞれのインクカートリッジをプリンタ本体に装着しなければならず、作業の煩雑化を招いてしまう。
このような場合、ユーザは、取り外したインクカートリッジを振るなどしてインクの有無を重さで判断していたが、正確にインク残量を把握することは困難であった。特に、ヘッドのクリーニング時のインクを廃インクとして内部に戻すタイプのインクカートリッジでは、重量変化が少なく、判断が一層困難であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、コストアップを招くことなく、タンク内の液体残量などの液体使用履歴情報を、ユーザ及び装置側で正確かつ容易に確認することを可能とした液体吐出装置、その制御方法及び液体タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明に係る液体吐出装置は、液体が貯留された液体タンクが着脱される装着部と、
前記装着部に装着された前記液体タンクから供給された液体を吐出するヘッドと、
前記液体タンクに設けられた記憶部に対してタンク内の液体使用履歴情報の読み書きを行う読み書き手段と、を備えた液体吐出装置であって、
前記記憶部に書き込む前記液体使用履歴情報の少なくとも一部を、前記ヘッドによって前記液体タンクのハウジング外面に記録させる制御手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成の液体吐出装置によれば、タンク内の液体使用履歴情報を記憶部に記憶させるとともにヘッドによって、液体使用履歴情報を液体タンクのハウジング外面に記録することができる。これにより、液体タンクを装着部から取り外しても、液体タンク単体で液体の残量などの液体使用履歴情報をユーザが目視で容易に確認することができる。しかも、再び液体タンクを装着部に装着すれば、記憶部の液体使用履歴情報を読み書き手段で読み取らせて液体使用履歴情報を取り込むことができる。
これにより、複数の液体タンクを混在させてしまっても、それぞれの液体タンクを装着部に装着して記憶部の液体使用履歴情報を読み込ませることなく、それぞれの液体タンクの液体残量を目視で確認することができ、液体タンクの交換時に新旧の液体タンクを取り違えたりするミスを無くすことができる。
また、液体タンクの容器や内部のパックを透明材料とする必要がなく、透明材料を用いることによる液体の劣化を招くこともない。
本発明の液体吐出装置において、前記装着部に装着されている前記液体タンクは、前記ヘッドと対向する側に前記ヘッドによって印刷可能なラベルを備えていることは、ラベルを剥離して新たなラベルを貼付するだけで液体タンクのハウジングを再使用できるので好ましい。
【0010】
本発明の液体吐出装置において、前記制御手段は、前記記憶部への前記液体使用履歴情報の書き込みタイミングに同期させて前記液体タンクに前記液体使用履歴情報を記録させることが好ましい。
【0011】
この構成の液体吐出装置によれば、制御手段が、記憶部への液体使用履歴情報の書き込みタイミングに同期させて液体タンクに液体使用履歴情報を記録させるので、記憶部に書き込まれた液体使用履歴情報と液体タンクのハウジング外面に記録された液体使用履歴情報とを整合させることができる。
【0012】
本発明の液体吐出装置において、前記装着部に装着された前記液体タンクのハウジング外面の一部が前記ヘッドによる媒体への吐出面と同一面上に配置されることが好ましい。
【0013】
この構成の液体吐出装置によれば、装着部に装着された液体タンクのハウジング外面の一部がヘッドによる吐出面と同一面上に配置されるので、媒体への吐出領域から液体タンク側へヘッドを移動させることにより、ヘッドによる液体タンクのハウジング外面への液体使用履歴情報の記録を円滑に行わせることができる。
【0014】
また、本発明の液体吐出装置の制御方法は、液体が貯留された液体タンクが着脱される装着部と、
前記装着部に装着された前記液体タンクから供給された液体を吐出するヘッドと、
前記液体タンクに設けられた記憶部に対してタンク内の液体使用履歴情報の読み書きを行う読み書き手段と、を備えた液体吐出装置の制御方法であって、
前記記憶部に書き込む前記液体使用履歴情報の少なくとも一部を、前記ヘッドによって前記液体タンクのハウジング外面に記録させることを特徴とする。
【0015】
この液体吐出装置の制御方法によれば、タンク内の液体使用履歴情報を記憶部に記憶させるとともにヘッドによって液体タンクのハウジング外面に記録するので、液体タンクを装着部から取り外しても、液体タンク単体で液体の残量などの液体使用履歴情報をユーザが目視で容易に確認することができる。しかも、再び液体タンクを装着部に装着すれば、記憶部の液体使用履歴情報を読み書き手段で読み取らせて液体使用履歴情報を取り込むことができる。
これにより、複数の液体タンクを混在させてしまっても、それぞれの液体タンクを装着部に装着して記憶部の液体使用履歴情報を読み込ませることなく、それぞれの液体タンクの液体残量を目視で確認することができ、液体タンクの交換時に新旧の液体タンクを取り違えたりするミスを無くすことができる。
また、液体タンクの容器や内部のパックを透明材料とする必要がなく、これにより、透明材料を用いることによる液体の劣化を招くこともない。
【0016】
本発明の液体吐出装置の制御方法において、前記記憶部への前記液体使用履歴情報の書き込みタイミングに同期させて前記液体タンクに前記液体使用履歴情報を記録させることが好ましい。
【0017】
この液体吐出装置の制御方法によれば、記憶部への液体使用履歴情報の書き込みタイミングに同期させて液体タンクに液体使用履歴情報を印刷させるので、記憶部に書き込まれた液体使用履歴情報と液体タンクのハウジング外面に記録された液体使用履歴情報とを整合させることができる。
また、上記の液体吐出装置に適用する液体タンクとして、
内部に液体を備えている液体タンクであって、
前記液体タンクのハウジングの一部に突出した突出部を設け、前記突出部の突出面に印刷可能な印刷可能部を備えていることを特徴とする。
この構成の液体タンクは、印刷可能部が突出しているので、印刷可能部に印刷される情報が見え易く、その情報を確認し易い効果がある。また、印刷可能部側が接地さるように置かれたとしても、接地される面が平面ではなく突出部による段差形状であるため、安定性が悪いので倒れ易く、突出部が接地さるように置かれる可能性は小さい。印刷可能部側の面が接地されるように置かれたとしても、傾いて接地する可能性が高いことから突出部が接地さる可能性は更に小さい。したがって、接地する際のゴミや埃等の異物が印刷領域51に付着することがないから、印刷部に印刷される品質を低下することはない。
また、前記印刷可能部は、前記液体により印刷可能であれば、印刷可能部に印刷する為の専用の液体を用意する必要がないから好ましい。
また、前記液体の残量検出に利用されるデータを記憶する記憶部が、前記ハウジングの前記印刷可能部より離れた位置に設けられていることは、印刷時における汚れが少なく読み書きのミスが少なくなるので好ましい。
また、前記記憶部は、前記突出部が突出される面に設けられていることは、印刷可能部側が接地さるように置かれたとしても、突出部により前記記憶部が設けられている平面が接地する可能性はないから好ましい。
また、前記液体タンクは、略直方体を成し、前記突出部は面積の最少の面に設けられていることは、接地される可能性がさらに低くなることより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る液体吐出装置の一例であるインクジェットプリンタを示す外観斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【図3】インクジェットプリンタの制御系を説明するブロック図である。
【図4】制御部における制御の流れを説明するフローチャート図である。
【図5】インクカートリッジに設けられた印刷可能部の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態におけるインクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液体吐出装置及びその制御方法の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図5は本発明に係る一実施形態の液体吐出装置であるインクジェットプリンタを説明するための図であり、図1はインクジェットプリンタの外観斜視図、図2はインクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図、図3はインクジェットプリンタの制御系を説明するブロック図、図4は制御部における制御の流れを説明するフローチャート図、図5はインクカートリッジに設けられた印刷可能部の平面図である。
【0020】
まず、本実施形態の液体吐出装置であるインクジェットプリンタの構造について説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、複数種(本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4種類)のカラーインクを使用してロール紙から繰り出された記録紙にカラー印刷するものであり、プリンタ本体を覆うプリンタケース2の前面には、ロール紙カバー5が開閉自在に設けられている。更に、プリンタケース2の前面には、電源スイッチ3と共にフィードスイッチやインジケータ等も配置されている。
【0021】
図2に示すように、ロール紙カバー5を開くと、印刷される媒体である記録紙12(媒体)がロール状に巻かれているロール紙11を収容した用紙収容部13が開放されるようになっており、ロール紙11の交換が可能になる。
また、内部には、カートリッジ装着部(装着部)15に略直方体のインクカートリッジ(液体タンク)17が矢印A方向に挿入して取付けし、その反対方向に移動させて取り外せるよう着脱可能に設けられている。
【0022】
プリンタケース2内の用紙収容部13の上方には、インクジェットヘッド(ヘッド)21を搭載したキャリッジ23が設けられている。キャリッジ23は、ロール紙11の幅方向に沿って延在するガイド部材25によって用紙幅方向に移動自在に支持されると共に、ロール紙11の幅方向に延在する無端ベルト(図示略)と無端ベルトを駆動するキャリッジモータ26とによって、プラテン28の上方をロール紙11の幅方向に往復移動可能になっている。インクジェットヘッド21は、ロール紙11から繰り出された記録紙12に対してインクを吐出して印刷処理を行う。
【0023】
図示のように、ロール紙11を介してカートリッジ装着部15の反対側は、往復移動するキャリッジ23の待機位置(ホームポジション)となっている。そして、この待機位置の下方には、キャリッジ23の下面に露出するインクジェットヘッド21の各インクノズル内のインクを吸引廃棄する廃インク吸引機構29が設けられている。
【0024】
インクカートリッジ17は、カートリッジケース(ハウジング)18内に複数個の図示略のカラーインクパックを収容したものである。インクカートリッジ17内の各インクパックは、可撓性材料からなり内部にインクを貯留した状態で密封されるもので、インクカートリッジ17をカートリッジ装着部15に装着した際に、カートリッジ装着部15側に設けられた図示略のインク供給針がインクカートリッジ17を矢印A方向に挿入するとインクカートリッジ17の挿入側の面に設けられているインクパックのインク供給口に差込接続される。カートリッジ装着部15のインク供給針には、プリンタケース2内に固定されたインク流路31が接続され、このインク流路31には、各色に分けられた可撓性のインク供給チューブ33の一端が接続されている。
【0025】
インク供給チューブ33の他端は、キャリッジ23上に設けられた各色のインクポンプ部34に接続されている。各インクポンプ部34は、インクジェットヘッド21の上方に設けられており、インクジェットヘッド21に接続された自己封止ユニット36にそれぞれ接続されている。
【0026】
キャリッジ23には、インクジェットヘッド21の他に、インクポンプ部34及び自己封止ユニット36が一体的に搭載された構成になっている。
これにより、インクカートリッジ17内の各インクパックのインクは、カートリッジ装着部15のインク供給針から、インク流路31、インク供給チューブ33、各色のインクポンプ部34及び各色の自己封止ユニット36を経て、インクジェットヘッド21の各インクノズルにそれぞれ供給されるようになっている。
【0027】
インクポンプ部34は、キャリッジ23の移動力によりインクカートリッジ17からインクを引き込むもので、キャリッジ23の移動力によりインクポンプ部34を動作させる規制板37が、キャリッジ23の待機位置への移動方向前方に配置されている。
そして、このインクポンプ部34では、キャリッジ23の待機位置への移動により、揺動アーム35が規制板37に当接すると、この揺動アーム35が揺動し、内部のポンプが駆動する。これにより、インクカートリッジ17からインクを引き込むようになっている。
【0028】
なお、インクジェットヘッド21のクリーニング時に廃インク吸引機構29によってインクジェットヘッド21から吸引したインクは、廃インクとしてインクカートリッジ17に戻され、インクカートリッジ17内の廃インク吸収材などに保持される。
【0029】
上記のインクジェットプリンタ1のカートリッジ装着部15に装着されるインクカートリッジ17は、箱型形状に形成されたもので、カートリッジ装着部15に装着した状態で、その外面である上面19の一部に印刷可能部51が設けられている。印刷可能部51としては、例えば、印刷可能なラベルを貼り付けても良く、あるいはインク受容層を形成することにより印刷可能としても良い。
このインクカートリッジ17の印刷可能部51は、カートリッジ装着部15に装着した状態で、インクジェットヘッド21による印刷面(吐出面)となるプラテン28上の記録紙12と同一面上に配置される。
【0030】
また、キャリッジ23は、記録紙12への印刷領域を越えて、カートリッジ装着部15側まで移動可能とされ、カートリッジ装着部15に装着されたインクカートリッジ17の印刷可能部51への印刷が可能とされている。
また、インクカートリッジ17には、印刷可能部51から離れている側の側面に、ICチップ(記憶部)52が取り付けられている。このICチップ52には、例えば、インク残量、廃インク量、使用開始日、使用装置情報などのインク使用履歴情報が読み書き可能とされている。また、ICチップ52にはインク使用履歴情報の他にインクの種類等の情報も記憶されている。
そして、インクジェットプリンタ1は、インクカートリッジ17のICチップ52に対して、インク使用履歴情報の読み書きを行う後述のリーダライター(読み書き手段)61を備えている。
【0031】
図3に示すように、インクジェットプリンタ1の制御部(制御手段)60は、インクジェットヘッド21及びキャリッジモータ26に制御信号を送信することにより、これらインクジェットヘッド21及びキャリッジモータ26の駆動を制御し、記録紙12への印刷処理を実行する。この制御部60には、ICチップ52に対してインク使用履歴情報の読み書きを行うリーダライター61が接続されており、このリーダライター61を介して、ICチップ52に対してインク使用履歴情報のやり取りを行う。
【0032】
次に、制御部60によるインク使用履歴情報の処理について図4に示すフローチャートに沿って説明する。
制御部60は、印刷を開始させると(ステップS1)、カートリッジ装着部15に装着されているインクカートリッジ17のICチップ52に記憶されているインク情報(インク使用履歴情報)をリーダライター61によって読み取る(ステップS2)。なお、装着されているインクカートリッジ17が新品であった場合は、ICチップ52に、使用開始日及び使用装置情報を書き込む。
【0033】
その後、所定時間毎、あるいは、廃インク吸引機構29によるインクジェットヘッド21のクリーニング時のインク情報更新タイミングとなると(ステップS3:Yes)、制御部60は、印刷処理で消費されたインク量及び廃インク吸引機構29によってインクジェットヘッド21から吸引したインク量に基づいてインクカートリッジ17内のインク残量及び廃インク量を求め、インク残量及び廃インク量をインク情報としてICチップ52に書き込む(ステップS4)。
【0034】
また、このとき、制御部60は、インクジェットヘッド21及びキャリッジモータ26を制御し、インクジェットヘッド21を、記録紙12への印刷領域を越えてインクカートリッジ17の上方まで移動させ、ICチップ52に書き込んだインク情報の内のインク残量の情報を、インクジェットヘッド21によってインクカートリッジ17の印刷可能部51に印刷する(ステップS5)。
【0035】
ここで、インク残量のインク情報の印刷の仕方としては、例えば、図5に示すように、印刷可能部51の長尺の枠51aを、インク残量に応じて一端側から塗りつぶしたり、また、インク残量が空となった場合は、印刷可能部51に「INK EMPTY」などの文字を印刷する。なお、図5では、本実施形態のインクカートリッジ17は、収容されたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4種類のカラーインクパックがそれぞれ交換可能ではないため、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4種類の内の一番少ない残量を印刷しており、どれか1色の残量が無くなった場合にインクカートリッジ17を交換する構成となっている。それぞれの色毎に印刷しても構わない。
そして、記録紙12への印刷処理の終了とともに(ステップS6:Yes)、制御部60によるインク情報の処理も終了する。
【0036】
以上に述べた本実施形態のインクジェットプリンタ及びその制御方法によれば、インクカートリッジ17内のインク使用履歴情報をICチップ52に記憶させるとともに記録紙12への印刷用のインクジェットヘッド21によってインクカートリッジ17の外面の印刷可能部51に印刷することができる。これにより、インクカートリッジ17をカートリッジ装着部15から取り外しても、インクカートリッジ17単体でインクの残量などのインク情報をユーザが目視で容易に確認することができる。しかも、再びインクカートリッジ17をカートリッジ装着部15に装着すれば、ICチップ52のインク情報をリーダライター61で読み取らせてインク情報を取り込むことができる。
【0037】
これにより、複数のインクカートリッジ17を混在させてしまっても、それぞれのインクカートリッジ17をカートリッジ装着部15に装着してICチップ52のインク情報を読み込ませることなく、それぞれのインクカートリッジ17のインク残量を目視で確認することができ、インクカートリッジ17の交換時に新旧のインクカートリッジ17を取り違えたりするミスを無くすことができる。
また、インクカートリッジ17の容器や内部のパックを透明材料とする必要がなく、これにより、透明材料を用いることによるインクの劣化を招くこともない。
【0038】
また、制御部60が、ICチップ52へのインク情報の書き込みタイミングであるインク情報更新タイミングに同期させてインクカートリッジ17にインク情報を印刷させるので、ICチップ52に書き込まれたインク情報とインクカートリッジ17の外面に印刷されたインク情報とを整合させることができる。
【0039】
また、カートリッジ装着部15に装着されたインクカートリッジ17の外面の一部がインクジェットヘッド21による記録紙12への印刷面と同一面上に配置されるので、インクジェットヘッド21を、記録紙12への印刷領域からインクカートリッジ17側へ移動させることにより、インクジェットヘッド21によるインクカートリッジ17の外面へのインク情報の印刷を円滑に行わせることができる。
また、ICチップ52は、印刷可能部51から離れているため、印刷可能部51に印刷による汚れが少なくリーダーライター61による読み書きのミスが少なくなる。本発明は上述の実施の形態に限られることなく種々の変更を行うことができる。例えば、インクカートリッジの形状を図6のようにすることができる。
図6は、前述の実施形態の図2に対応する図であり、説明については、上述の実施の形態と同じもしくは同一の機能を有する部品等には同符号を付し説明を省略する。
インクカートリッジ17aと前述のインクカートリッジ17の相違点は、印刷可能部51が設けられている側を、上面を形成する平面19bより突出させて段差のあるように形成してその吐出面19aに印刷可能部51を設けた点と、上面19bの印刷可能部51から離れている位置にICチップ(記憶部)52aが取り付けられている点である。
図6に基づいて説明する。略箱型形状に形成されたインクカートリッジ17aは、印刷可能領域51側の上面を段差のある形状に形成している。具体的には、印刷可能領域51があるところを突出している突出面19aとしている。突出している突出面19aに印刷可能領域があることにより、印刷可能領域51に印刷される情報が見え易く、その情報を確認し易い効果がある。また、インクカートリッジ51を印刷可能領域51側が接地さるように置かれたとしても、接地される面が平面ではなく段差形状であるため、安定性が悪いので倒れ易く、突出面19aが接地さるように置かれる可能性は小さい。印刷可能領域51側の面が接地されるように置かれたとしても、段差形状により、インクカートリッジ17aは傾いて接地する可能性が高いことから突出面19aが接地さる可能性は更に小さい。したがって、接地する際のゴミや埃等の異物が印刷領域51に付着することがないから、インクジェットヘッド21により印刷領域51に印刷される品質が低下することはない。このような効果を更に高めるには、突出面19aが小さいほどよい。本実施形態では、略直方体のインクカートリッジ51の、面積が最少の面に設けられている。
次に、ICチップ52aについて述べると、上述のようにインクカートリッジ51を印刷可能領域51側が接地さるように置かれたとしても、突出面19aにより平面19bが接地する可能性はない。したがって、したがって、接地する際のゴミや埃等の異物からICチップ52aを保護することができる。
本願発明の説明は以上であるが、上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、廃インク吸引機構29によって吸引された廃インクは、インクカートリッジ17内の廃インク吸収材などに保持されるとしたが、インクカートリッジ17内の廃インク貯留部はインク吸収材がない構成とすることもできる。この場合、このカートリッジをリユースする場合に廃インク吸収材を交換する必要がなく廃インクのみ抜き取ればよいからリユースする場合には都合がよい。
また、インクカートリッジ17、17aの印刷可能部51は、カートリッジ装着部15に装着した状態で、インクジェットヘッド21による印刷面(吐出面)となるプラテン28上の記録紙12と同一面上に配置されるとしたが、インクジェットヘッド21の吐出性能が良ければ同一平面でなくとも構わないものであるが、同一平面の場合はロール紙と同等の品質が保持されるので都合がよい。
また、印刷可能部51としては、印刷可能なラベルであって、剥がすときにインクカートリッジに残らなく剥がすことができるラベルを使用するとリユースするときに、ラベルの剥がす工数を削減できる。
また、制御部60は、印刷処理で消費されたインク量及び廃インク吸引機構29によってインクジェットヘッド21から吸引したインク量に基づいてインクカートリッジ17内のインク残量及び廃インク量を求めるとしたが、インク残量だけが判別すればよいことから、廃インク量を用いなくとも構わないものである。
【0040】
また、本発明に係る液体吐出装置は、上記実施形態で例示したインクジェット式のプリンタをはじめとして、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材吐出ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出ヘッド等の液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置、精密ピペットとしての試料吐出装置等にも適用できる。使用する液体がインク以外のものであっても、液体タンクの外面に液体を吐出することで液体使用履歴情報を記録することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…インクジェットプリンタ(液体吐出装置)、11…ロール紙(媒体)、15…カートリッジ装着部(装着部)、17…インクカートリッジ(メインタンク)、21…インクジェットヘッド(ヘッド)、52…ICチップ(記憶部)、60…制御部(制御手段)、61…リーダライター(読み書き手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留された液体タンクが着脱される装着部と、
前記装着部に装着された前記液体タンクから供給された液体を吐出するヘッドと、
前記液体タンクに設けられた記憶部に対してタンク内の液体使用履歴情報の読み書きを行う読み書き手段と、を備えた液体吐出装置であって、
前記記憶部に書き込む前記液体使用履歴情報の少なくとも一部を、前記ヘッドによって前記液体タンクのハウジング外面に記録させる制御手段を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記装着部に装着されている前記液体タンクは、前記ヘッドと対向する側に前記ヘッドによって印刷可能なラベルを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記制御手段は、前記記憶部への前記液体使用履歴情報の書き込みタイミングに同期させて前記液体タンクに前記液体使用履歴情報を記録させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記装着部に装着された前記液体タンクのハウジング外面の一部が前記ヘッドによる媒体への吐出面と同一面上に配置されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
液体が貯留された液体タンクが着脱される装着部と、
前記装着部に装着された前記液体タンクから供給された液体を吐出するヘッドと、
前記液体タンクに設けられた記憶部に対してタンク内の液体使用履歴情報の読み書きを行う読み書き手段と、を備えた液体吐出装置の制御方法であって、
前記記憶部に書き込む前記液体使用履歴情報の少なくとも一部を、前記ヘッドによって前記液体タンクの外面に記録させることを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出装置の制御方法であって、
前記記憶部への前記液体使用履歴情報の書き込みタイミングに同期させて前記液体タンクに前記液体使用履歴情報を記録させることを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項7】
内部に液体を備えている液体タンクであって、
前記液体タンクのハウジングの一部に突出した突出部を設け、前記突出部の突出面に印刷可能な印刷可能部を備えていることを特徴とする液体タンク。
【請求項8】
請求項7に記載の液体タンクであって、
前記印刷可能部は、前記液体により印刷可能であることを特徴とする液体タンク。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の液体タンクであって、
前記液体の残量検出に利用されるデータを記憶する記憶部が、前記ハウジングの前記印刷可能部より離れた位置に設けられていることを特徴とする。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の液体タンクであって、
前記記憶部は、前記突出部が突出される面に設けられていることを特徴とする。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかに記載の液体タンクであって、
前記液体タンクは、略直方体を成し、前記突出部は面積の最少の面に設けられていることを特徴とする。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−18024(P2010−18024A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133781(P2009−133781)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】