液体吐出装置及び液体吐出方法
【課題】液滴の微小化を図る。
【解決手段】本発明は、チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーとを備えた液体吐出装置である。前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーとを備えた液体吐出装置である。前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体を吐出する液体吐出装置として、例えばインクジェット方式のプリンターが知られている。このような液体吐出装置は、圧電素子やヒーターなどの素子を用いたヘッドを備えており、素子を駆動することによって液体をノズルから吐出する。
【0003】
インクジェット方式の液体吐出装置は、微小液滴(インク滴)を高精度に、ばらつきを少なく、生成できる。このため、液体吐出装置は、インクを吐出する印刷分野での用途に限らず、半導体製造用の加工液を吐出する工業分野や、薬剤を吐出する医療分野など、様々な分野での応用を期待されている。そして、いずれの用途においても、微小な液滴を生成することが求められる。
【0004】
特許文献1及び特許文献2では、ノズル径を変更することによって、液体の吐出量を調整することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−283555号公報
【特許文献2】特開平10−156250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微小な液滴を生成するためには、ノズル径を小さくすることが効果的である。一方、ノズル径が小さくなると、液滴が吐出されにくくなるという問題が生じる。
【0007】
図11は、ノズル流路の説明図である。ノズル流路を円筒管状にモデル化し、ノズル流路の半径をr、ノズル流路の長さをLとしたとき、このノズル流路のイナータンスMと粘性抵抗Rは、以下の式で求められる(式中のρは密度、μは粘度)。
M=ρ×L/(π×r^2)
R=8×L×μ/(π×r^4)
これらの式から理解できるように、ノズル径が小さくなると(rが小さくなると)、イナータンスM及び粘性抵抗Rが増加し、この結果、ノズル流路での圧力損失が大きくなる。このことは、ノズル径が小さくなると、液滴が吐出されにくくなることを示している。
【0008】
但し、ノズル径を大きくすると、液滴を微小化させにくくなるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、ノズル径に比べて微小な液滴を吐出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための主たる発明は、チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーとを備えた液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させることを特徴とする液体吐出装置である。
【0011】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、液体吐出装置の概要の説明図である。
【図2】図2A〜図2Cは、第1実施形態の第2圧電素子の形状・配置例の説明図である。
【図3】図3は、図2Aの第2圧電素子の周辺構成の説明図である。
【図4】図4は、第1実施形態の駆動方法の説明図である。
【図5】図5は、第2実施形態の駆動方法の説明図である。
【図6】図6は、第3実施形態の駆動方法の説明図である。
【図7】図7は、第4実施形態の駆動方法の説明図である。
【図8】図8は、第5実施形態における第2圧電素子の周辺構成の説明図である。
【図9】図9は、第5実施形態の変形例の説明図である。
【図10】図10は、液柱の別の形状の説明図である。
【図11】図11は、ノズル流路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0014】
チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーとを備えた液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させることを特徴とする液体吐出装置が明らかとなる。
このような液体吐出装置によれば、ノズル径に比べて微小な液滴を吐出することが可能になる。
【0015】
前記コントローラーは、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動して、前記ノズルの外側に液柱を形成した後に、前記ノズルの流路の断面積を拡張させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから前記液滴を吐出させることが望ましい。これにより、更に微小な液滴を生成できる。
【0016】
前記第2素子は、前記ノズルの開口部において、前記ノズルの流路の断面積を変動させることが望ましい。これにより、ノズルの外側に細い液柱を形成しやすくなり、微小な液滴を生成できる。
【0017】
前記第2素子は、シアモード型の圧電素子であることが望ましい。これにより、ノズル流路の断面積の変化量を大きくできる。
【0018】
チャンバー内の液体の圧力を変動させて、ノズル流路の前記液体に外向きのエネルギーを与える第1ステップと、前記第1ステップの後に、前記ノズル流路の断面積を収縮させる第2ステップと、前記第2ステップの後に、前記ノズルから液滴を吐出させる第3ステップとを有する液体吐出方法が明らかとなる。
このような液体吐出方法によれば、ノズル径に比べて微小な液滴を吐出することが可能になる。
【0019】
===第1実施形態===
<ヘッドの構成>
図1は、液体吐出装置の概要の説明図である。液体吐出装置は、ヘッド10と、コントローラー20とを備えている。
【0020】
ヘッド10は、液体を吐出するためのものである。ヘッド10は、供給流路11と、チャンバー12と、ノズルと、第1圧電素子13と、第2圧電素子14とを備えている。
【0021】
供給流路11は、不図示の貯蔵タンクからチャンバー12に液体を供給するための流路である。チャンバー12は、ノズルから液滴を吐出するための圧力を生成する圧力室である。チャンバー12には液体が充満しており、ノズルから液滴が吐出されると、供給流路11からチャンバー12に液体が供給される。
【0022】
第1圧電素子13は、チャンバー12内の容積や圧力を変動させるための駆動素子である。第1圧電素子13が駆動すると、変形部13Aの変形によってチャンバー12の容積が変動し、チャンバー12内の圧力が変動して、ノズルから液滴が吐出する。第1圧電素子13の駆動方法については後述する。
【0023】
第2圧電素子14は、ノズル流路の断面積を変動(拡張・縮小)させるための駆動素子である。第1実施形態では、円筒型の第2圧電素子14が用いられている。円筒の内周面は、ノズル流路の一部になる。円筒型の第2圧電素子14の電極は、円筒の内側と外側に形成される。円筒の内側の電極が液体と接触することを避けるため、円筒の内周面には絶縁のためのコーティングが施されている。第2圧電素子14及びノズル流路付近の構成については、後述する。
【0024】
コントローラー20は、ヘッド10を制御するための制御部である。具体的には、コントローラー20は、第1圧電素子13及び第2圧電素子14の駆動を制御する制御部である。コントローラー20は、圧電素子を駆動するための駆動信号生成部21を有している。駆動信号生成部21は、第1圧電素子13を駆動するための第1駆動信号COM1を生成する第1生成部21Aと、第2圧電素子14を駆動するための第2駆動信号COM2を生成する第2生成部21Bとを有している。第1駆動信号COM1による第1圧電素子13の駆動方法や、第2駆動信号COM2による第2圧電素子14の駆動方法については、後述する。
【0025】
<第2圧電素子の構成>
図2A〜図2Cは、第1実施形態の第2圧電素子14の形状・配置例の説明図である。図2Aでは、ノズル流路の途中に第2圧電素子14が設けられている。このため、図2Aの場合、ノズル流路の拡張・縮小は、ノズル開口から内側の離れた位置で行われる。これに対し、図2B及び図2Cでは、ノズル開口に第2圧電素子14が設けられている。図2Bではノズル流路の一部に第2圧電素子14が設けられており、図2Cではノズル流路の全体に第2圧電素子14が設けられている。
【0026】
図3は、図2Aの第2圧電素子14の周辺構成の説明図である。ノズル径を収縮させるように第2圧電素子14が駆動するときに、第2圧電素子14はノズル流路の流路方向(図中の上下方向)にも伸張する。このため、第2圧電素子14の流路方向の両端を拘束してしまうと、第2圧電素子14が変形時に破壊するおそれがある。そこで、第2圧電素子14の流路方向の端部に弾性体を設けることによって、第2圧電素子14の流路方向への変形が許容されている。また、ノズル径を収縮させるように第2圧電素子14が駆動するとき、第2圧電素子14は、外周面の外側にも伸張する。このため、第2圧電素子14の外周面の外側に空隙部を設けることによって、第2圧電素子14の外周面の外側への変形が許容されている。なお、空隙部には、空気が充填されていても良いし、バネなどの弾性部材が充填されていても良い。
【0027】
図2Aの第2圧電素子14の場合には、図3に示すように、第2圧電素子14の流路方向の両端を支持することができる。これに対し、図2Bや図2Cの第2圧電素子14は、ノズル開口側では支持の無い状態になる。このため、図2Bや図2Cのように第2圧電素子14を配置する場合には、図3の弾性体は不要である。
【0028】
後述するように、本実施形態では、ノズル径を収縮させてノズルの外側に細い液柱を形成することによって、液滴の微小化を図っている。このように、ノズルの外側に細い液柱を形成するためには、図2Aのようにノズル開口から離れた位置に第2圧電素子14があるよりも、図2Bや図2Cのようにノズル開口に第2圧電素子14がある方が有利である。
【0029】
<駆動方法>
図4は、第1実施形態の駆動方法の説明図である。図中の上側には、第1駆動信号COM1及び第2駆動信号COM2の電圧変化のタイミングチャートが示されている。図中の上側のタイミングチャートにはA〜Gのタイミングが示されており、各タイミングでの液体のメニスカスの様子が図中の下側に示されている。これらの図には、第2圧電素子14を駆動しない場合のメニスカスの様子が点線で示されている。
【0030】
第1駆動信号COM1は、第1圧電素子13を駆動するための信号である。ここでは、第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、第1圧電素子13が充電されて、チャンバー12の容積が膨張するものとする。また、第1駆動信号COM1の電圧が低くなると、第1圧電素子13が放電されて、チャンバー12の容積が収縮するものとする。但し、第1圧電素子13の充電時にチャンバー12の容積を収縮させ、第1圧電素子13の放電時にチャンバー12の容積を膨張させるようにヘッド10を構成することも可能である。この場合、第1駆動信号COM1の電圧変化は、図4とは逆方向になる。
【0031】
第2駆動信号COM2は、第2圧電素子14を駆動するための信号である。ここでは、第2駆動信号COM2の電圧が高くなると、第2圧電素子14が充電されて、ノズル流路の断面積が収縮するものとする。また、第2駆動信号COM2の電圧が低くなると、第2圧電素子14が放電されて、ノズル流路の断面積が拡張するものとする。但し、第2圧電素子14の充電時にノズル流路の断面積を拡張させ、第2圧電素子14の放電時にノズル流路の断面積を収縮させるようにヘッド10を構成することも可能である。この場合、第2駆動信号COM2の電圧変化は、図4とは逆方向になる。
【0032】
図中の駆動方法は、Pull-Push-Pull方式と呼ばれている。Pull-Push-Pull方式における基本的な動作は、次の通りである。まず最初に、チャンバー12の容積を膨張させるように第1圧電素子13が駆動して、メニスカスがノズル内に引き込まれる。次に、チャンバー12の容積を収縮させるように第1圧電素子13が駆動して、ノズルの外側に液柱が形成される。その後、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止して(チャンバー12の容積を一定若しく拡張して)、ノズル内の流速が変化することによって擾乱(じょうらん)が生じ、液柱を千切るような表面波が生じて液滴が形成される。液滴が吐出された後、チャンバー12の容積を膨張させるように第1圧電素子13が駆動して、メニスカスが引き込まれ、メニスカスが定常状態に戻る。
【0033】
本実施形態では、第1圧電素子13によるPull-Push-Pull方式の駆動に同期して、第2圧電素子14が駆動する。次に、第2圧電素子14の動作も合わせて、本実施形態のPull-Push-Pull方式の駆動方法について説明する。
【0034】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、チャンバー12の容積が膨張し、メニスカスがノズル内に引き込まれる。この結果、タイミングBでは、メニスカスがノズル内に引き込まれている。
【0035】
メニスカスがノズル内に十分引き込まれ、更に所定時間にて第1駆動信号COM1の電圧が保持された後、第1駆動信号COM1の電圧が低くなり、第1圧電素子13によってチャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0036】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングCまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0037】
もし仮にノズル流路が収縮されていると、ノズル流路の圧力損失が高くなるため、チャンバー12内の圧力が高くなっても、メニスカスは外側に押し出され難くなり、ノズル流路内の液体も外側に向かうエネルギーを持ちにくい。つまり、仮にノズル流路が収縮されていると、チャンバー12内の圧力が高くなっても、ノズル開口から液体を吐出し難くなる。
【0038】
タイミングCでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0039】
タイミングDでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。もし仮にノズル流路の収縮が無ければ、図中の点線で示すように、液柱の断面積は比較的大きくなり、液滴の微小化を図ることができない。
【0040】
なお、本実施形態では、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、本実施形態では、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。もし仮に、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与える前にノズル流路の断面積が狭い状態だとすると(例えば、最初からノズル流路の断面積が狭い状態だとすると)、ノズル流路の圧力損失が高いため、ノズル流路内の液体は外側に向かう慣性を持ち難く、ノズルの外側に液柱が形成され難い。
【0041】
図中では、メニスカスがノズルの外側に突出した後に、ノズル流路が収縮されることが示されている。但し、ノズル流路の収縮は、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられた後に行われれば良いので、メニスカスがノズルの外側に突出する前に行われても良い。
【0042】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0043】
更に本実施形態では、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2駆動信号COM2の電圧が低くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が拡張する。この結果、ノズル流路の容積が膨張し、ノズル流路内の流速が急激に低下する。これにより、大きな擾乱が生じることになる。
【0044】
このため、タイミングEにおいて、細い液柱に対して液柱を千切るような大きな表面波(大きなくびれ)が生じ、タイミングFにおいて、液柱から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0045】
その後、第1駆動信号COM1の電圧が高くなり、タイミングGにおいてメニスカスは定常状態に戻る。本実施形態では、液柱から液滴が千切れるときのノズル流路内の流速が低いため、メニスカスが安定して定常状態に戻るのが比較的早い。このため、液滴の吐出周期を短くできる(単位時間当たりの吐出回数を増やせる)。
【0046】
以上説明した第1実施形態によれば、コントローラー20は、ノズル流路の液体に外向きのエネルギーを与えるように第1圧電素子13を駆動した後に(タイミングC参照)、ノズル流路の断面積を収縮させるように第2圧電素子14を駆動している(タイミングD参照)。これにより、ノズルの外側に細い液柱を形成することができ、ノズルから吐出される液滴の微小化を図ることができる。
【0047】
また、上記の第1実施形態によれば、コントローラー20は、ノズル流路の断面積を収縮させるように第2圧電素子14を駆動して、ノズルの外側に液柱を形成した後に(タイミングD参照)、ノズル流路の断面積を拡張させるように第2圧電素子14を駆動している(タイミングE参照)。これにより、ノズル流路内の流速を低下させて擾乱を生じさせ、更に微小な液滴を生成できる。
【0048】
なお、第1実施形態のタイミングDにおいて、ノズルの外側に細い液柱を形成するためには、図2Aのようにノズル開口から離れた位置に第2圧電素子14があるよりも、図2Bや図2Cのようにノズル開口に第2圧電素子14がある方が有利である。
【0049】
===第2実施形態===
図5は、第2実施形態の駆動方法の説明図である。図中の駆動方法は、Pull-Push方式と呼ばれている。前述の第1実施形態では、液滴の吐出後に第1駆動信号COM1の電圧を高くしてメニスカスを定常状態に戻していたが、第2実施形態では、液滴の吐出後に第1駆動信号COM1の電圧を高くせず、そのままの状態を維持してメニスカスを定常状態に戻している。
【0050】
第2実施形態においても、第1圧電素子13の駆動に同期して、第2圧電素子14が駆動する。以下、第2実施形態のPull-Push方式の駆動方法について説明する。
【0051】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、チャンバー12の容積が膨張し、メニスカスがノズル内に引き込まれる。この結果、タイミングBでは、メニスカスがノズル内に引き込まれている。
【0052】
メニスカスがノズル内に十分引き込まれ、更に所定時間にて第1駆動信号COM1の電圧が保持された後、第1駆動信号COM1の電圧が低くなり、第1圧電素子13によってチャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0053】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングCまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0054】
タイミングCでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0055】
タイミングDでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。
【0056】
なお、第2実施形態においても、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、第2実施形態においても、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。
【0057】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0058】
更に、第2実施形態においても、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2駆動信号COM2の電圧が低くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が拡張する。この結果、ノズル流路の容積が膨張し、ノズル流路内の流速が急激に低下する。これにより、大きな擾乱が生じることになる。
【0059】
このため、タイミングEにおいて、細い液柱に対して液柱を千切るような大きな表面波(大きなくびれ)が生じ、タイミングFにおいて、液柱から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0060】
===第3実施形態===
図6は、第3実施形態の駆動方法の説明図である。図中の駆動方法は、Push-Pull方式と呼ばれている。前述の第1実施形態及び第2実施形態では、最初にメニスカスを引き込んでから液体が押し出されていたが、第3実施形態のPush-Pull方式では、メニスカスを引き込まずに液体が押し出される。
【0061】
第3実施形態においても、第1圧電素子13の駆動に同期して、第2圧電素子14が駆動する。以下、第3実施形態のPush-Pull方式の駆動方法について説明する。
【0062】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が低くなると、チャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0063】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングBまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0064】
タイミングBでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0065】
タイミングCでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。
【0066】
なお、第3実施形態においても、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、第3実施形態においても、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。
【0067】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0068】
更に、第3実施形態においても、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2駆動信号COM2の電圧が低くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が拡張する。この結果、ノズル流路の容積が膨張し、ノズル流路内の流速が急激に低下する。これにより、大きな擾乱が生じることになる。
【0069】
このため、タイミングDにおいて、細い液柱に対して液柱を千切るような大きな表面波(大きなくびれ)が生じ、タイミングEにおいて、液柱から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0070】
===第4実施形態===
図7は、第4実施形態の駆動方法の説明図である。第4実施形態における第1圧電素子13の駆動方法は、Pull-Push-Pull方式であり、前述の第1実施形態(図4参照)と共通している。但し、第2圧電素子14の駆動方法は、前述の第1実施形態と異なっている。前述の第1実施形態(及び第2、第3実施形態)では、液滴を吐出する際に、第2圧電素子14によってノズル流路の収縮と拡張の両方を行っている。これに対し、第4実施形態では、液滴を吐出させる際に、ノズル流路の収縮だけを行っている。
【0071】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、チャンバー12の容積が膨張し、メニスカスがノズル内に引き込まれる。この結果、タイミングBでは、メニスカスがノズル内に引き込まれている。
【0072】
メニスカスがノズル内に十分引き込まれ、更に所定時間にて第1駆動信号COM1の電圧が保持された後、第1駆動信号COM1の電圧が低くなり、第1圧電素子13によってチャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0073】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングCまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0074】
タイミングCでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0075】
タイミングDでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。
【0076】
なお、第4実施形態においても、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、第4実施形態においても、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。
【0077】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0078】
第4実施形態では、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2圧電素子14によるノズル流路の拡張は行われず、第2駆動信号COM2の電圧が維持される。このため、第4実施形態では、第1実施形態と比べると、擾乱は小さいかもしれない。但し、ノズル内の流速の変化によって擾乱は生じている。このため、タイミングEにおいて、液柱を千切るような表面波が生じ、タイミングFにおいて、液中から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0079】
第4実施形態では、細い液柱から千切れて液滴が形成されるため、図中の点線の液滴(ノズル流路の収縮が無い場合の液滴)と比べると、液滴が小さくなる。
【0080】
なお、図7では不図示であるが、液滴の吐出後に次の液滴を吐出する準備のために、第2駆動信号COM2の電圧を元に戻す必要がある。これに対し、前述の第1実施形態では、液滴の吐出前後の第2駆動信号COM2の電圧が同じである。このため、第4実施形態は、第1実施形態と比べて、吐出周期が長くなる。
【0081】
===第5実施形態===
図8は、第5実施形態における第2圧電素子14の周辺構成の説明図である。
【0082】
第5実施形態では、第2圧電素子14としてシアモード型圧電素子が用いられている。第5実施形態では、圧電素子の剪断変形を利用してノズル流路の断面積を変化させている。第5実施形態によれば、シアモード型圧電素子を採用することによって、ノズル流路の断面積の変化量を大きくできる。
【0083】
なお、前述の第1〜第4実施形態では、第2圧電素子14は、円筒型に形成されており、円筒の内周面と外周面との間隔が変化するように伸張・収縮して変形している。但し、このように圧電素子を伸張・収縮させる場合、ノズル流路の断面積の変化量が小さい。
【0084】
図9は、第5実施形態の変形例の説明図である。変形例では、弾性変形する部材でノズル流路が形成されており、シアモード型の第2圧電素子14によって間接的にノズル流路の断面積が変化する。
【0085】
前述の図8の形態では、図2Aのようにノズル開口から離れた位置でノズル流路の断面積が変化することになる。これに対し、図9の変形例によれば、図2Bや図2Cのように、ノズル開口でノズル流路の断面積を変化させることが可能になる。
【0086】
===その他===
上記の実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、その中には、液体吐出方法や、ヘッドの構造、ヘッドの駆動方法、ノズルの構造等の開示が含まれていることは言うまでもない。
【0087】
また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0088】
<液柱について>
前述の実施形態では、液柱の径がノズルの径とほぼ同じになるように図示されていた(例えば、図4のタイミングDを参照)。但し、液柱は、このような形状に限られるものではない。
【0089】
図10は、液柱の別の形状の説明図である。このように、液柱は、ノズルの径よりも細いことがある。特に、メニスカスをノズル内に引き込むPull-Push-Pull方式やPull-Push方式の場合には、一般的に、液柱がノズルの径よりも細くなる。
【0090】
液柱がこのような形状になる場合においても、前述の実施形態のように、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられた後にノズル流路の断面積を収縮させれば、更に細い液柱を形成することができ、液滴の微小化を図ることができる。
【0091】
<圧電素子について>
前述の実施形態によれば、チャンバー12内の圧力を変動させるのに第1圧電素子13が用いられていた。但し、圧電素子ではなく、ヒーターなどの他の素子が用いられても良い。
【0092】
また、前述の実施形態によれば、ノズル流路の断面積を変動させるのに第2圧電素子14が用いられていた。但し、ノズル流路の断面積を変動させることができれば、他の素子が採用されても良い。
【符号の説明】
【0093】
10 ヘッド、
11 供給流路、
12 チャンバー、
13 第1圧電素子、13A 変形部、
14 第2圧電素子、14A 弾性体、14B 空隙部、
20 コントローラー、
21 駆動信号生成部、21A 第1生成部、21B 第2生成部、
COM1 第1駆動信号、
COM2 第2駆動信号、
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体を吐出する液体吐出装置として、例えばインクジェット方式のプリンターが知られている。このような液体吐出装置は、圧電素子やヒーターなどの素子を用いたヘッドを備えており、素子を駆動することによって液体をノズルから吐出する。
【0003】
インクジェット方式の液体吐出装置は、微小液滴(インク滴)を高精度に、ばらつきを少なく、生成できる。このため、液体吐出装置は、インクを吐出する印刷分野での用途に限らず、半導体製造用の加工液を吐出する工業分野や、薬剤を吐出する医療分野など、様々な分野での応用を期待されている。そして、いずれの用途においても、微小な液滴を生成することが求められる。
【0004】
特許文献1及び特許文献2では、ノズル径を変更することによって、液体の吐出量を調整することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−283555号公報
【特許文献2】特開平10−156250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微小な液滴を生成するためには、ノズル径を小さくすることが効果的である。一方、ノズル径が小さくなると、液滴が吐出されにくくなるという問題が生じる。
【0007】
図11は、ノズル流路の説明図である。ノズル流路を円筒管状にモデル化し、ノズル流路の半径をr、ノズル流路の長さをLとしたとき、このノズル流路のイナータンスMと粘性抵抗Rは、以下の式で求められる(式中のρは密度、μは粘度)。
M=ρ×L/(π×r^2)
R=8×L×μ/(π×r^4)
これらの式から理解できるように、ノズル径が小さくなると(rが小さくなると)、イナータンスM及び粘性抵抗Rが増加し、この結果、ノズル流路での圧力損失が大きくなる。このことは、ノズル径が小さくなると、液滴が吐出されにくくなることを示している。
【0008】
但し、ノズル径を大きくすると、液滴を微小化させにくくなるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、ノズル径に比べて微小な液滴を吐出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための主たる発明は、チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーとを備えた液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させることを特徴とする液体吐出装置である。
【0011】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、液体吐出装置の概要の説明図である。
【図2】図2A〜図2Cは、第1実施形態の第2圧電素子の形状・配置例の説明図である。
【図3】図3は、図2Aの第2圧電素子の周辺構成の説明図である。
【図4】図4は、第1実施形態の駆動方法の説明図である。
【図5】図5は、第2実施形態の駆動方法の説明図である。
【図6】図6は、第3実施形態の駆動方法の説明図である。
【図7】図7は、第4実施形態の駆動方法の説明図である。
【図8】図8は、第5実施形態における第2圧電素子の周辺構成の説明図である。
【図9】図9は、第5実施形態の変形例の説明図である。
【図10】図10は、液柱の別の形状の説明図である。
【図11】図11は、ノズル流路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0014】
チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーとを備えた液体吐出装置であって、前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させることを特徴とする液体吐出装置が明らかとなる。
このような液体吐出装置によれば、ノズル径に比べて微小な液滴を吐出することが可能になる。
【0015】
前記コントローラーは、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動して、前記ノズルの外側に液柱を形成した後に、前記ノズルの流路の断面積を拡張させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから前記液滴を吐出させることが望ましい。これにより、更に微小な液滴を生成できる。
【0016】
前記第2素子は、前記ノズルの開口部において、前記ノズルの流路の断面積を変動させることが望ましい。これにより、ノズルの外側に細い液柱を形成しやすくなり、微小な液滴を生成できる。
【0017】
前記第2素子は、シアモード型の圧電素子であることが望ましい。これにより、ノズル流路の断面積の変化量を大きくできる。
【0018】
チャンバー内の液体の圧力を変動させて、ノズル流路の前記液体に外向きのエネルギーを与える第1ステップと、前記第1ステップの後に、前記ノズル流路の断面積を収縮させる第2ステップと、前記第2ステップの後に、前記ノズルから液滴を吐出させる第3ステップとを有する液体吐出方法が明らかとなる。
このような液体吐出方法によれば、ノズル径に比べて微小な液滴を吐出することが可能になる。
【0019】
===第1実施形態===
<ヘッドの構成>
図1は、液体吐出装置の概要の説明図である。液体吐出装置は、ヘッド10と、コントローラー20とを備えている。
【0020】
ヘッド10は、液体を吐出するためのものである。ヘッド10は、供給流路11と、チャンバー12と、ノズルと、第1圧電素子13と、第2圧電素子14とを備えている。
【0021】
供給流路11は、不図示の貯蔵タンクからチャンバー12に液体を供給するための流路である。チャンバー12は、ノズルから液滴を吐出するための圧力を生成する圧力室である。チャンバー12には液体が充満しており、ノズルから液滴が吐出されると、供給流路11からチャンバー12に液体が供給される。
【0022】
第1圧電素子13は、チャンバー12内の容積や圧力を変動させるための駆動素子である。第1圧電素子13が駆動すると、変形部13Aの変形によってチャンバー12の容積が変動し、チャンバー12内の圧力が変動して、ノズルから液滴が吐出する。第1圧電素子13の駆動方法については後述する。
【0023】
第2圧電素子14は、ノズル流路の断面積を変動(拡張・縮小)させるための駆動素子である。第1実施形態では、円筒型の第2圧電素子14が用いられている。円筒の内周面は、ノズル流路の一部になる。円筒型の第2圧電素子14の電極は、円筒の内側と外側に形成される。円筒の内側の電極が液体と接触することを避けるため、円筒の内周面には絶縁のためのコーティングが施されている。第2圧電素子14及びノズル流路付近の構成については、後述する。
【0024】
コントローラー20は、ヘッド10を制御するための制御部である。具体的には、コントローラー20は、第1圧電素子13及び第2圧電素子14の駆動を制御する制御部である。コントローラー20は、圧電素子を駆動するための駆動信号生成部21を有している。駆動信号生成部21は、第1圧電素子13を駆動するための第1駆動信号COM1を生成する第1生成部21Aと、第2圧電素子14を駆動するための第2駆動信号COM2を生成する第2生成部21Bとを有している。第1駆動信号COM1による第1圧電素子13の駆動方法や、第2駆動信号COM2による第2圧電素子14の駆動方法については、後述する。
【0025】
<第2圧電素子の構成>
図2A〜図2Cは、第1実施形態の第2圧電素子14の形状・配置例の説明図である。図2Aでは、ノズル流路の途中に第2圧電素子14が設けられている。このため、図2Aの場合、ノズル流路の拡張・縮小は、ノズル開口から内側の離れた位置で行われる。これに対し、図2B及び図2Cでは、ノズル開口に第2圧電素子14が設けられている。図2Bではノズル流路の一部に第2圧電素子14が設けられており、図2Cではノズル流路の全体に第2圧電素子14が設けられている。
【0026】
図3は、図2Aの第2圧電素子14の周辺構成の説明図である。ノズル径を収縮させるように第2圧電素子14が駆動するときに、第2圧電素子14はノズル流路の流路方向(図中の上下方向)にも伸張する。このため、第2圧電素子14の流路方向の両端を拘束してしまうと、第2圧電素子14が変形時に破壊するおそれがある。そこで、第2圧電素子14の流路方向の端部に弾性体を設けることによって、第2圧電素子14の流路方向への変形が許容されている。また、ノズル径を収縮させるように第2圧電素子14が駆動するとき、第2圧電素子14は、外周面の外側にも伸張する。このため、第2圧電素子14の外周面の外側に空隙部を設けることによって、第2圧電素子14の外周面の外側への変形が許容されている。なお、空隙部には、空気が充填されていても良いし、バネなどの弾性部材が充填されていても良い。
【0027】
図2Aの第2圧電素子14の場合には、図3に示すように、第2圧電素子14の流路方向の両端を支持することができる。これに対し、図2Bや図2Cの第2圧電素子14は、ノズル開口側では支持の無い状態になる。このため、図2Bや図2Cのように第2圧電素子14を配置する場合には、図3の弾性体は不要である。
【0028】
後述するように、本実施形態では、ノズル径を収縮させてノズルの外側に細い液柱を形成することによって、液滴の微小化を図っている。このように、ノズルの外側に細い液柱を形成するためには、図2Aのようにノズル開口から離れた位置に第2圧電素子14があるよりも、図2Bや図2Cのようにノズル開口に第2圧電素子14がある方が有利である。
【0029】
<駆動方法>
図4は、第1実施形態の駆動方法の説明図である。図中の上側には、第1駆動信号COM1及び第2駆動信号COM2の電圧変化のタイミングチャートが示されている。図中の上側のタイミングチャートにはA〜Gのタイミングが示されており、各タイミングでの液体のメニスカスの様子が図中の下側に示されている。これらの図には、第2圧電素子14を駆動しない場合のメニスカスの様子が点線で示されている。
【0030】
第1駆動信号COM1は、第1圧電素子13を駆動するための信号である。ここでは、第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、第1圧電素子13が充電されて、チャンバー12の容積が膨張するものとする。また、第1駆動信号COM1の電圧が低くなると、第1圧電素子13が放電されて、チャンバー12の容積が収縮するものとする。但し、第1圧電素子13の充電時にチャンバー12の容積を収縮させ、第1圧電素子13の放電時にチャンバー12の容積を膨張させるようにヘッド10を構成することも可能である。この場合、第1駆動信号COM1の電圧変化は、図4とは逆方向になる。
【0031】
第2駆動信号COM2は、第2圧電素子14を駆動するための信号である。ここでは、第2駆動信号COM2の電圧が高くなると、第2圧電素子14が充電されて、ノズル流路の断面積が収縮するものとする。また、第2駆動信号COM2の電圧が低くなると、第2圧電素子14が放電されて、ノズル流路の断面積が拡張するものとする。但し、第2圧電素子14の充電時にノズル流路の断面積を拡張させ、第2圧電素子14の放電時にノズル流路の断面積を収縮させるようにヘッド10を構成することも可能である。この場合、第2駆動信号COM2の電圧変化は、図4とは逆方向になる。
【0032】
図中の駆動方法は、Pull-Push-Pull方式と呼ばれている。Pull-Push-Pull方式における基本的な動作は、次の通りである。まず最初に、チャンバー12の容積を膨張させるように第1圧電素子13が駆動して、メニスカスがノズル内に引き込まれる。次に、チャンバー12の容積を収縮させるように第1圧電素子13が駆動して、ノズルの外側に液柱が形成される。その後、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止して(チャンバー12の容積を一定若しく拡張して)、ノズル内の流速が変化することによって擾乱(じょうらん)が生じ、液柱を千切るような表面波が生じて液滴が形成される。液滴が吐出された後、チャンバー12の容積を膨張させるように第1圧電素子13が駆動して、メニスカスが引き込まれ、メニスカスが定常状態に戻る。
【0033】
本実施形態では、第1圧電素子13によるPull-Push-Pull方式の駆動に同期して、第2圧電素子14が駆動する。次に、第2圧電素子14の動作も合わせて、本実施形態のPull-Push-Pull方式の駆動方法について説明する。
【0034】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、チャンバー12の容積が膨張し、メニスカスがノズル内に引き込まれる。この結果、タイミングBでは、メニスカスがノズル内に引き込まれている。
【0035】
メニスカスがノズル内に十分引き込まれ、更に所定時間にて第1駆動信号COM1の電圧が保持された後、第1駆動信号COM1の電圧が低くなり、第1圧電素子13によってチャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0036】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングCまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0037】
もし仮にノズル流路が収縮されていると、ノズル流路の圧力損失が高くなるため、チャンバー12内の圧力が高くなっても、メニスカスは外側に押し出され難くなり、ノズル流路内の液体も外側に向かうエネルギーを持ちにくい。つまり、仮にノズル流路が収縮されていると、チャンバー12内の圧力が高くなっても、ノズル開口から液体を吐出し難くなる。
【0038】
タイミングCでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0039】
タイミングDでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。もし仮にノズル流路の収縮が無ければ、図中の点線で示すように、液柱の断面積は比較的大きくなり、液滴の微小化を図ることができない。
【0040】
なお、本実施形態では、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、本実施形態では、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。もし仮に、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与える前にノズル流路の断面積が狭い状態だとすると(例えば、最初からノズル流路の断面積が狭い状態だとすると)、ノズル流路の圧力損失が高いため、ノズル流路内の液体は外側に向かう慣性を持ち難く、ノズルの外側に液柱が形成され難い。
【0041】
図中では、メニスカスがノズルの外側に突出した後に、ノズル流路が収縮されることが示されている。但し、ノズル流路の収縮は、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられた後に行われれば良いので、メニスカスがノズルの外側に突出する前に行われても良い。
【0042】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0043】
更に本実施形態では、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2駆動信号COM2の電圧が低くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が拡張する。この結果、ノズル流路の容積が膨張し、ノズル流路内の流速が急激に低下する。これにより、大きな擾乱が生じることになる。
【0044】
このため、タイミングEにおいて、細い液柱に対して液柱を千切るような大きな表面波(大きなくびれ)が生じ、タイミングFにおいて、液柱から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0045】
その後、第1駆動信号COM1の電圧が高くなり、タイミングGにおいてメニスカスは定常状態に戻る。本実施形態では、液柱から液滴が千切れるときのノズル流路内の流速が低いため、メニスカスが安定して定常状態に戻るのが比較的早い。このため、液滴の吐出周期を短くできる(単位時間当たりの吐出回数を増やせる)。
【0046】
以上説明した第1実施形態によれば、コントローラー20は、ノズル流路の液体に外向きのエネルギーを与えるように第1圧電素子13を駆動した後に(タイミングC参照)、ノズル流路の断面積を収縮させるように第2圧電素子14を駆動している(タイミングD参照)。これにより、ノズルの外側に細い液柱を形成することができ、ノズルから吐出される液滴の微小化を図ることができる。
【0047】
また、上記の第1実施形態によれば、コントローラー20は、ノズル流路の断面積を収縮させるように第2圧電素子14を駆動して、ノズルの外側に液柱を形成した後に(タイミングD参照)、ノズル流路の断面積を拡張させるように第2圧電素子14を駆動している(タイミングE参照)。これにより、ノズル流路内の流速を低下させて擾乱を生じさせ、更に微小な液滴を生成できる。
【0048】
なお、第1実施形態のタイミングDにおいて、ノズルの外側に細い液柱を形成するためには、図2Aのようにノズル開口から離れた位置に第2圧電素子14があるよりも、図2Bや図2Cのようにノズル開口に第2圧電素子14がある方が有利である。
【0049】
===第2実施形態===
図5は、第2実施形態の駆動方法の説明図である。図中の駆動方法は、Pull-Push方式と呼ばれている。前述の第1実施形態では、液滴の吐出後に第1駆動信号COM1の電圧を高くしてメニスカスを定常状態に戻していたが、第2実施形態では、液滴の吐出後に第1駆動信号COM1の電圧を高くせず、そのままの状態を維持してメニスカスを定常状態に戻している。
【0050】
第2実施形態においても、第1圧電素子13の駆動に同期して、第2圧電素子14が駆動する。以下、第2実施形態のPull-Push方式の駆動方法について説明する。
【0051】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、チャンバー12の容積が膨張し、メニスカスがノズル内に引き込まれる。この結果、タイミングBでは、メニスカスがノズル内に引き込まれている。
【0052】
メニスカスがノズル内に十分引き込まれ、更に所定時間にて第1駆動信号COM1の電圧が保持された後、第1駆動信号COM1の電圧が低くなり、第1圧電素子13によってチャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0053】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングCまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0054】
タイミングCでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0055】
タイミングDでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。
【0056】
なお、第2実施形態においても、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、第2実施形態においても、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。
【0057】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0058】
更に、第2実施形態においても、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2駆動信号COM2の電圧が低くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が拡張する。この結果、ノズル流路の容積が膨張し、ノズル流路内の流速が急激に低下する。これにより、大きな擾乱が生じることになる。
【0059】
このため、タイミングEにおいて、細い液柱に対して液柱を千切るような大きな表面波(大きなくびれ)が生じ、タイミングFにおいて、液柱から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0060】
===第3実施形態===
図6は、第3実施形態の駆動方法の説明図である。図中の駆動方法は、Push-Pull方式と呼ばれている。前述の第1実施形態及び第2実施形態では、最初にメニスカスを引き込んでから液体が押し出されていたが、第3実施形態のPush-Pull方式では、メニスカスを引き込まずに液体が押し出される。
【0061】
第3実施形態においても、第1圧電素子13の駆動に同期して、第2圧電素子14が駆動する。以下、第3実施形態のPush-Pull方式の駆動方法について説明する。
【0062】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が低くなると、チャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0063】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングBまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0064】
タイミングBでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0065】
タイミングCでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。
【0066】
なお、第3実施形態においても、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、第3実施形態においても、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。
【0067】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0068】
更に、第3実施形態においても、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2駆動信号COM2の電圧が低くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が拡張する。この結果、ノズル流路の容積が膨張し、ノズル流路内の流速が急激に低下する。これにより、大きな擾乱が生じることになる。
【0069】
このため、タイミングDにおいて、細い液柱に対して液柱を千切るような大きな表面波(大きなくびれ)が生じ、タイミングEにおいて、液柱から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0070】
===第4実施形態===
図7は、第4実施形態の駆動方法の説明図である。第4実施形態における第1圧電素子13の駆動方法は、Pull-Push-Pull方式であり、前述の第1実施形態(図4参照)と共通している。但し、第2圧電素子14の駆動方法は、前述の第1実施形態と異なっている。前述の第1実施形態(及び第2、第3実施形態)では、液滴を吐出する際に、第2圧電素子14によってノズル流路の収縮と拡張の両方を行っている。これに対し、第4実施形態では、液滴を吐出させる際に、ノズル流路の収縮だけを行っている。
【0071】
図中のタイミングAでは、メニスカスは定常状態になっている。定常状態では、メニスカスは、ノズル開口の位置にある。このような状態から第1駆動信号COM1の電圧が高くなると、チャンバー12の容積が膨張し、メニスカスがノズル内に引き込まれる。この結果、タイミングBでは、メニスカスがノズル内に引き込まれている。
【0072】
メニスカスがノズル内に十分引き込まれ、更に所定時間にて第1駆動信号COM1の電圧が保持された後、第1駆動信号COM1の電圧が低くなり、第1圧電素子13によってチャンバー12の容積が収縮し、チャンバー12内の圧力が高くなり、メニスカスがノズルの外側に向かって押し出される。つまり、ノズル流路内の液体に、外側に向かうエネルギーが与えられることになる。
【0073】
第1駆動信号COM1の電圧を低下させ始めてからタイミングCまでの期間では、ノズル流路は収縮されていない。このため、この期間では、ノズル流路の圧力損失やイナータンスが比較的低い状態である。この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、メニスカスが外側に向かって押し出されやすい。つまり、この状態では、チャンバー12内の圧力が高くなったときに、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーを与えやすい。
【0074】
タイミングCでは、メニスカスはノズル開口から突出すると共に、メニスカスは外側に向かうエネルギーを持っている(外側に向かう方向に速度を持っている)。このとき、ノズル流路内の液体も、外側に向かうエネルギーを持っている。このような状態で、第2駆動信号COM2の電圧が高くなり、第2圧電素子14によってノズル流路の断面積が収縮する。
【0075】
タイミングDでは、ノズルの外側に液柱が形成される。このとき、ノズル流路の断面積は収縮した状態なので、断面積の比較的小さな液柱が形成される。
【0076】
なお、第4実施形態においても、ノズル流路の収縮前にノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられているため、このときの慣性力がノズル流路の収縮後にも残っている。このため、第4実施形態においても、ノズル流路の断面積を収縮させても、ノズルの外側に液柱を形成しやすい。
【0077】
ノズルの外側に液柱が形成された後、第1駆動信号COM1の電圧低下が停止して、チャンバー12の容積を収縮させる動作が停止する。これにより、ノズル内の流速が低下することによって擾乱が生じることになる。
【0078】
第4実施形態では、ノズルの外側に液柱が形成された後、第2圧電素子14によるノズル流路の拡張は行われず、第2駆動信号COM2の電圧が維持される。このため、第4実施形態では、第1実施形態と比べると、擾乱は小さいかもしれない。但し、ノズル内の流速の変化によって擾乱は生じている。このため、タイミングEにおいて、液柱を千切るような表面波が生じ、タイミングFにおいて、液中から液滴が千切れることによって、微小な液滴が吐出される。
【0079】
第4実施形態では、細い液柱から千切れて液滴が形成されるため、図中の点線の液滴(ノズル流路の収縮が無い場合の液滴)と比べると、液滴が小さくなる。
【0080】
なお、図7では不図示であるが、液滴の吐出後に次の液滴を吐出する準備のために、第2駆動信号COM2の電圧を元に戻す必要がある。これに対し、前述の第1実施形態では、液滴の吐出前後の第2駆動信号COM2の電圧が同じである。このため、第4実施形態は、第1実施形態と比べて、吐出周期が長くなる。
【0081】
===第5実施形態===
図8は、第5実施形態における第2圧電素子14の周辺構成の説明図である。
【0082】
第5実施形態では、第2圧電素子14としてシアモード型圧電素子が用いられている。第5実施形態では、圧電素子の剪断変形を利用してノズル流路の断面積を変化させている。第5実施形態によれば、シアモード型圧電素子を採用することによって、ノズル流路の断面積の変化量を大きくできる。
【0083】
なお、前述の第1〜第4実施形態では、第2圧電素子14は、円筒型に形成されており、円筒の内周面と外周面との間隔が変化するように伸張・収縮して変形している。但し、このように圧電素子を伸張・収縮させる場合、ノズル流路の断面積の変化量が小さい。
【0084】
図9は、第5実施形態の変形例の説明図である。変形例では、弾性変形する部材でノズル流路が形成されており、シアモード型の第2圧電素子14によって間接的にノズル流路の断面積が変化する。
【0085】
前述の図8の形態では、図2Aのようにノズル開口から離れた位置でノズル流路の断面積が変化することになる。これに対し、図9の変形例によれば、図2Bや図2Cのように、ノズル開口でノズル流路の断面積を変化させることが可能になる。
【0086】
===その他===
上記の実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、その中には、液体吐出方法や、ヘッドの構造、ヘッドの駆動方法、ノズルの構造等の開示が含まれていることは言うまでもない。
【0087】
また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0088】
<液柱について>
前述の実施形態では、液柱の径がノズルの径とほぼ同じになるように図示されていた(例えば、図4のタイミングDを参照)。但し、液柱は、このような形状に限られるものではない。
【0089】
図10は、液柱の別の形状の説明図である。このように、液柱は、ノズルの径よりも細いことがある。特に、メニスカスをノズル内に引き込むPull-Push-Pull方式やPull-Push方式の場合には、一般的に、液柱がノズルの径よりも細くなる。
【0090】
液柱がこのような形状になる場合においても、前述の実施形態のように、ノズル流路内の液体に外側に向かうエネルギーが与えられた後にノズル流路の断面積を収縮させれば、更に細い液柱を形成することができ、液滴の微小化を図ることができる。
【0091】
<圧電素子について>
前述の実施形態によれば、チャンバー12内の圧力を変動させるのに第1圧電素子13が用いられていた。但し、圧電素子ではなく、ヒーターなどの他の素子が用いられても良い。
【0092】
また、前述の実施形態によれば、ノズル流路の断面積を変動させるのに第2圧電素子14が用いられていた。但し、ノズル流路の断面積を変動させることができれば、他の素子が採用されても良い。
【符号の説明】
【0093】
10 ヘッド、
11 供給流路、
12 チャンバー、
13 第1圧電素子、13A 変形部、
14 第2圧電素子、14A 弾性体、14B 空隙部、
20 コントローラー、
21 駆動信号生成部、21A 第1生成部、21B 第2生成部、
COM1 第1駆動信号、
COM2 第2駆動信号、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、
前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーと
を備えた液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動して、前記ノズルの外側に液柱を形成した後に、前記ノズルの流路の断面積を拡張させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから前記液滴を吐出させる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記第2素子は、前記ノズルの開口部において、前記ノズルの流路の断面積を変動させる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記第2素子は、シアモード型の圧電素子である
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
チャンバー内の液体の圧力を変動させて、ノズル流路の前記液体に外向きのエネルギーを与える第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記ノズル流路の断面積を収縮させる第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記ノズルから液滴を吐出させる第3ステップと
を有する液体吐出方法。
【請求項1】
チャンバー内の圧力を変動させるための第1素子と、前記チャンバー内の液体を吐出するノズルの流路の断面積を変動させるための第2素子とを備えたヘッドと、
前記第1素子及び前記第2素子の駆動を制御するコントローラーと
を備えた液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記ノズルの流路の前記液体に外向きのエネルギーを与えるように前記第1素子を駆動した後に、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから液滴を吐出させる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーは、前記ノズルの流路の断面積を収縮させるように前記第2素子を駆動して、前記ノズルの外側に液柱を形成した後に、前記ノズルの流路の断面積を拡張させるように前記第2素子を駆動することによって、前記ノズルから前記液滴を吐出させる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記第2素子は、前記ノズルの開口部において、前記ノズルの流路の断面積を変動させる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記第2素子は、シアモード型の圧電素子である
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
チャンバー内の液体の圧力を変動させて、ノズル流路の前記液体に外向きのエネルギーを与える第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記ノズル流路の断面積を収縮させる第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記ノズルから液滴を吐出させる第3ステップと
を有する液体吐出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−39810(P2013−39810A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179802(P2011−179802)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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