説明

液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法

【課題】液体受け部上に堆積した堆積物がヘッドに接触することを抑制する。
【解決手段】液体を吐出するヘッドと、ヘッドと連動して往復移動するキャリッジ42と、キャリッジ42が一往復する毎にヘッドがフラッシングを行うことによりヘッドから吐出された液体を受け、円筒形状を有する液体受け部36と、正直進方向へ往移動するキャリッジ42により正押圧されると基準位置から正回転方向へ揺動し、正押圧が解除されると逆回転方向へ揺動して基準位置に戻り、逆直進方向へ復移動するキャリッジ42により逆押圧されると基準位置から逆回転方向へ揺動し、逆押圧が解除されると正回転方向へ揺動して基準位置に戻る揺動部材39fと、揺動部材39fが正回転方向及び逆回転方向のどちらか一方に揺動するときに液体受け部36を一方向に回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドに付着した異物等を除去するため、ヘッドから強制的に連続して液体を吐出させるフラッシングと呼ばれるメンテナンスを行う液体吐出装置が知られている(たとえば、特許文献1)。液体吐出装置は、フラッシングを行う際、フラッシングユニットに向けて吐出させた液体を、当該フラッシングユニット内に設けられた液体受け部に着弾させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−150722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、液体の再溶解性または再分解性が低い場合には、液体受け部に着弾した液体が乾燥して、液体受け部上に堆積してしまうことがある。そして、このような堆積物がヘッドに接触することにより印刷不良を生じさせる場合が想定される。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体受け部上に堆積した堆積物がヘッドに接触することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための主たる発明は、
(A)液体を吐出するヘッドと、
(B)前記ヘッドと連動して往復移動するキャリッジと、
(C)前記キャリッジが一往復する毎に前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ヘッドから吐出された液体を受け、円筒形状を有する液体受け部と、
(D)正直進方向へ往移動する前記キャリッジにより正押圧されると基準位置から正回転方向へ揺動し、正押圧が解除されると逆回転方向へ揺動して前記基準位置に戻り、逆直進方向へ復移動する前記キャリッジにより逆押圧されると前記基準位置から前記逆回転方向へ揺動し、逆押圧が解除されると前記正回転方向へ揺動して前記基準位置に戻る揺動部材と、該揺動部材が前記正回転方向及び前記逆回転方向のどちらか一方に揺動するときに前記液体受け部を一方向に回動させ、他方に揺動するときに前記液体受け部を回動させない回動制御部材と、を備え、
前記キャリッジによる押圧力を、前記液体受け部を回動させる回動力へ変換する変換機構と、
(E)前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して正押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジを前記逆直進方向へ復移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して逆押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に逆押圧させることにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に二回回動させる第一モードを複数回連続して実行した後に、
前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジの前記正直進方向への往移動により前記キャリッジが前記揺動部材を通過して前記正押圧が解除される前に、前記キャリッジの移動を前記逆直進方向への復移動へ転換して前記正押圧を解除することにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に一回だけ回動させる第二モードを一回だけ実行するコントローラーと、
(F)を有することを特徴とする液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】液体吐出装置1の構成の断面を示す概略図である。
【図2】プラテン29部分の上面を示す概略図である。
【図3】液体吐出装置1の構成を示すブロック図である。
【図4】フラッシングユニット35の構成例を示す斜視図である。
【図5】フラッシングユニット35の構成例の断面を示す概略図である。
【図6】円筒パイプ36とキャリッジ42との位置関係を説明する、上流方向(左側)から見た概略図である。
【図7A】フラッシングユニット35の変換部39についての構成例を側面方向から見た概略図である。
【図7B】変換部39が正回転方向に回動している状態を側面方向から見た概略図である。
【図7C】変換部39が逆回転方向に回動している状態を側面方向から見た概略図である。
【図8A】記録動作及びフラッシング動作を説明するフロー図である。
【図8B】第一モードを説明するフロー図である。
【図8C】第二モードを説明するフロー図である。
【図9A】第二モードを実行した場合において、キャリッジ42が変換機構39に当接した際のキャリッジ42と変換機構39の位置関係を示す概略図である。
【図9B】第二モードを実行した場合において、矢印Tに示すようにキャリッジ42が変換機構39に押圧しながら移動方向を正直進方向から逆直進方向へ転換する際のキャリッジ42と変換機構39の位置関係を示す概略図である。
【図9C】第二モードを実行した場合において、キャリッジ42が変換機構39への押圧を解除する直前のキャリッジ42と変換機構39の位置関係を示す概略図である。
【図10A】第一モードのみを連続して実行した場合に、キャリッジ42が一往復する毎に円筒パイプ36がその外周上で受けるインクの位置を示す概略図である。
【図10B】第一モードを複数回連続して実行し第二モードを1回だけ実行した場合に、キャリッジ42が一往復する毎に円筒パイプ36がその外周上で受けるインクの位置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
即ち、
(A)液体を吐出するヘッドと、
(B)前記ヘッドと連動して往復移動するキャリッジと、
(C)前記キャリッジが一往復する毎に前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ヘッドから吐出された液体を受け、円筒形状を有する液体受け部と、
(D)正直進方向へ往移動する前記キャリッジにより正押圧されると基準位置から正回転方向へ揺動し、正押圧が解除されると逆回転方向へ揺動して前記基準位置に戻り、逆直進方向へ復移動する前記キャリッジにより逆押圧されると前記基準位置から前記逆回転方向へ揺動し、逆押圧が解除されると前記正回転方向へ揺動して前記基準位置に戻る揺動部材と、該揺動部材が前記正回転方向及び前記逆回転方向のどちらか一方に揺動するときに前記液体受け部を一方向に回動させ、他方に揺動するときに前記液体受け部を回動させない回動制御部材と、を備え、
前記キャリッジによる押圧力を、前記液体受け部を回動させる回動力へ変換する変換機構と、
(E)前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して正押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジを前記逆直進方向へ復移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して逆押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に逆押圧させることにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に二回回動させる第一モードを複数回連続して実行した後に、
前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジの前記正直進方向への往移動により前記キャリッジが前記揺動部材を通過して前記正押圧が解除される前に、前記キャリッジの移動を前記逆直進方向への復移動へ転換して前記正押圧を解除することにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に一回だけ回動させる第二モードを一回だけ実行するコントローラーと、
(F)を有することを特徴とする液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、液体受け部上に堆積した堆積物がヘッドに接触することを抑制することができる。
【0011】
また、かかる液体吐出装置であって、
前記コントローラーが前記第一モードを複数回連続して実行することにより前記液体受け部が一回転すると、前記コントローラーは、前記第二モードを一回だけ実行することを特徴とする液体吐出装置であってもよい。
このような液体吐出装置とすれば、より確実に液体受け部上に堆積した堆積物がヘッドに接触することを抑制することができる。
【0012】
また、
(A)液体を吐出するヘッドと、
(B)前記ヘッドと連動して往復移動するキャリッジと、
(C)前記キャリッジが一往復する毎に前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ヘッドから吐出された液体を受け、円筒形状を有する液体受け部と、
(D)正直進方向へ往移動する前記キャリッジにより正押圧されると基準位置から正回転方向へ揺動し、正押圧が解除されると逆回転方向へ揺動して前記基準位置に戻り、逆直進方向へ復移動する前記キャリッジにより逆押圧されると前記基準位置から前記逆回転方向へ揺動し、逆押圧が解除されると前記正回転方向へ揺動して前記基準位置に戻る揺動部材と、該揺動部材が前記正回転方向及び前記逆回転方向のどちらか一方に揺動するときに前記液体受け部を一方向に回動させ、他方に揺動するときに前記液体受け部を回動させない回動制御部材と、を備え、
前記キャリッジによる押圧力を、前記液体受け部を回動させる回動力へ変換する変換機構と、
を有する液体吐出装置を準備することと、
前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して正押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジを前記逆直進方向へ復移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して逆押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に逆押圧させることにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に二回回動させる第一モードを複数回連続して実行した後に、
前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジの前記正直進方向への往移動により前記キャリッジが前記揺動部材を通過して前記正押圧が解除される前に、前記キャリッジの移動を前記逆直進方向への復移動へ転換して前記正押圧を解除することにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に一回だけ回動させる第二モードを一回だけ実行することと、
を有することを特徴とする液体吐出装置の制御方法である。
このような液体吐出装置の制御方法によれば、液体受け部上に堆積した堆積物がヘッドに接触することを抑制することができる。
【0013】
===第一実施形態===
以下、本発明の第一実施形態に係る液体吐出装置1について説明する。
【0014】
<<液体吐出装置1の構成>>
液体吐出装置1の構成例について、図1、図2及び図3を用いて説明する。図1は、液体吐出装置1の構成の断面を示す概略図である。図2は、プラテン29部分の上面を示す概略図である。図3は、液体吐出装置1のブロック図である。
なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1において紙面に直交する方向を示すものとする。
また、第一実施形態においては、液体吐出装置1が画像を記録する媒体としてロール紙(連続紙)を用いて説明する。
【0015】
第一実施形態に係る液体吐出装置1は、図1及び図3に示すように、搬送部の一例としての搬送ユニット20と、及び、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路に沿って、給送ユニット10と、媒体支持部の一例としてのプラテン29と、巻き取りユニット90と、を有し、さらに、搬送経路上の記録領域Rにおいて印刷を行うためのヘッドユニット30と、キャリッジユニット40と、これらのユニット等を制御し液体吐出装置1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、を有している。なお、以下において、キャリッジユニット40によって搬送方向に移動されるヘッドユニット30が、プラテン29上においてロール紙2に対してインクを吐出することにより画像を記録することができる領域を記録領域R(図2参照)とする。
【0016】
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、を有している。
【0017】
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(プラテン29から見て搬送方向上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、第一搬送ローラー23から見て右方(プラテン29から見て搬送方向下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
【0018】
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0019】
第一搬送ローラー23は、モーター(不図示)により駆動される第一駆動ローラー23aと、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロール紙2を上方に引き上げ、プラテン29上へ搬送するローラーである。第一搬送ローラー23は、プラテン29上のロール紙2の部位に対して画像印刷がなされている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙2の搬送量(ロール紙の部位の長さ)が調整される。
【0020】
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。このロール紙2の弛みは、コントローラー60により、弛み検出用センサー(不図示)からの検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合には、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20はロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛ませたロール紙2の部位検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力が適切な大きさに調整される。
【0021】
第二搬送ローラー24は、モーターにより駆動される第二駆動ローラー24aと、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット30により画像が記録された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
【0022】
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて巻き取りユニット90に送り出すようになっている。
【0023】
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット20により、印刷された領域の搬送方向長さ分の距離だけ当該領域での印刷が完了する毎にその搬送経路に沿って搬送される。
【0024】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の記録領域Rに(プラテン29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、インクを吐出するためのものである。このヘッドユニット30は、ヘッド31とバルブユニット(不図示)とを有している。
【0025】
ヘッド31の下面には、多数のインク吐出ノズル(不図示)が前後方向に列設されている。各ノズルには、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズルから吐出される。
【0026】
バルブユニットは、インクを一時貯留するためのものであり、インク供給チューブ(不図示)を介してヘッド31に接続されている。このため、ヘッド31は、バルブユニットから供給されたインクをノズルからプラテン29上に搬送されて停止された状態のロール紙2の部位に向けて吐出することにより、画像印刷を行うことができる。
【0027】
キャリッジユニット40は、ヘッド31を移動させるためのものである。このキャリッジユニット40は、左右方向に延びるガイドレール41と(図1に二点鎖線で示す)、ガイドレール41に沿って左右方向(移動方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ42と、モーター(不図示)と、モーターの駆動力をキャリッジ42に伝達するキャリッジベルト43と、を有する。
【0028】
キャリッジ42は、モーターの駆動力がキャリッジベルト43を介してキャリッジ42に伝達されることにより、ヘッド31と一体となって移動するよう構成されている。キャリッジ42(ヘッド31又は各ノズル列)のガイドレール41における位置(左右方向の位置)は、コントローラー60がモーターに設けられたエンコーダーから出力されるパルス信号における立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出してこのエッジをカウントすることにより、求めることができる。
【0029】
キャリッジ42の底部後側には、突起部42aが設けられ、突起部42aが変換部39の当接部39aに当接する。突起部42aは、後述する図7B及び図7Cに示すように、キャリッジ42の底部からなだらかな勾配を有して突出している。
【0030】
キャリッジ42は、記録動作の合間にフラッシングユニット35上に移動し、その位置においてヘッド31はフラッシング動作を行う。なお、フラッシングユニット35及びフラッシング動作については、後に詳述する。
【0031】
キャリッジベルト43は歯付タイプのベルトであり、キャリッジベルト43の内周面には長手方向に一定ピッチで歯部と溝部が交互に設けられ、モーターから得た駆動力をキャリッジ42に伝達する。キャリッジベルト43は、後述するプラテン29の後側(すなわち、突起部42aが配置されている側)において搬送方向(左右方向)に沿う方向に移動するように設けられ、またキャリッジ42の後側端部においてベルトホルダー(不図示)によって固定されている。
【0032】
プラテン29は、搬送経路上の記録領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路上の記録領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。
【0033】
巻き取りユニット90は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像印刷済みのロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット90は、送り出しローラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するための中継ローラー91と、回転可能に支持され中継ローラー91から送られたロール紙2を巻き取る巻き取り駆動軸92と、を有している。
【0034】
コントローラー60は、液体吐出装置1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー60は、図3に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61は、外部装置であるホストコンピューター110と液体吐出装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、液体吐出装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
【0035】
検出器群50は、液体吐出装置1内の状況を監視するものであり、例えば、搬送ローラーに取り付けられて媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の移動方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0036】
<<フラッシングユニット35の構成>>
フラッシングユニット35の構成例について、図1、図4、図5、図6、図7A、図7B及び図7Cを用いて説明する。図4は、フラッシングユニット35の構成例を示す斜視図である。図5は、フラッシングユニット35とヘッド31との位置関係を説明する概念図である。図6は、円筒パイプ36とキャリッジ42との位置関係を説明する、上流方向(左側)から見た概略図である。図7Aは、フラッシングユニット35の変換部39についての構成例を側面方向から見た概略図であり、図7Bは、変換部39が正回転方向(反時計回りの方向)に回動している状態を側面方向から見た概略図であり、図7Cは、変換部39が逆回転方向(時計回りの方向)に回動している状態を側面方向から見た概略図である。
【0037】
フラッシングユニット35は、図4及び図5に示すように、液体受け部の一例としての円筒パイプ36を有している。そして、このフラッシングユニット35は、図1に示すように、プラテン29から見て搬送方向上流側(左側)に設けられている。
【0038】
円筒パイプ36は、円筒状に形成され、フラッシング時にノズルから吐出されたインク滴を曲面で受けるものである。また、この円筒パイプ36は、図6及び図7Aに示すように、前側端部に変換部39を有しており、変換部39はキャリッジ42から受ける押圧力を円筒パイプ36を回動させる回動力に変換する。なお、変換部39は、突起部42a及びキャリッジベルト43が配置されている側に設けられている。
【0039】
変換部39は、図7Aに示すように、ラチェット機構を有し、アーム39fに、当接部39aとラチェット歯車39bとバネ39cと中心軸39dとラチェット爪39eとが設けられて構成される。
【0040】
当接部39aは、アーム39fの先端部に設けられ、キャリッジ42の底面に設けられた突起部42aに当接する。当接部39aは、突起部42aに当接する際には、突起部42a上を滑らかに回転しながら移動する。
ラチェット歯車39bは、中心軸39dを中心とし回動する。また、ラチェット歯車39bが回動すると、ラチェット歯車39bに連動して円筒パイプ36も回動する。
バネ39cの一端は当接部39aが設けられていない側のアーム39fの先端部に接続されており、バネ39cの他端は固定部に接続されている。
ラチェット爪39eは、アーム39fに回動自在に設けられる。ラチェット爪39eは、弾性体(不図示)により中心軸39dに向かう方向に力が付与されており、ラチェット歯車39bの外周面に押付けられるように配置されている。
アーム39fは、ラチェット歯車39bとは独立に、中心軸39dを中心として揺動する。すなわち、当接部39aが突起部42aに当接して押圧力を受けると、アーム39fは中心軸39dを中心として回動する。また、突起部42aが通過して該押圧力から解放されると、アーム39fは中心軸39dを中心として元の姿勢(基準位置)に戻る方向に回動する。
【0041】
以下、変換部39の動きについて更に説明する。
キャリッジ42が正直進方向(搬送方向上流方向であって、図1において左方向)へ往移動する際に、ヘッド31が記録領域R上を通過して記録領域上以外の位置に到達したときに、キャリッジ42の突起部42aが当接部39aに当接する。キャリッジ42の突起部42aが当接部39aに当接すると、図7Bに示すように、当接部39aが左側に倒れる方向にアーム39fが中心軸39dを中心として回動し、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合ってラチェット歯車39bが正回転方向(X方向)に回動することにより、ラチェット歯車39bに連動して円筒パイプ36も正回転方向(X方向)にN度だけ回動する。そして、キャリッジ42が正直進方向へ往移動しながら当接部39aを通過すると、当接部39aが元の位置に戻る方向にバネ39cの弾性力でアーム39fが逆回転方向に回動するものの、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合わないことにより(滑ることにより)、ラチェット歯車39bが回動せず、よって円筒パイプ36は回動しない。
【0042】
一方で、キャリッジ42が逆直進方向(搬送方向下流方向であって、図1において右方向)へ復移動する際に、ヘッド31が記録領域R上に到達する前の記録領域上以外の位置に位置するときに、キャリッジ42の突起部42aが当接部39aに当接すると、図7Cに示すように、当接部39aが右側に倒れる方向にアーム39fが中心軸39dを中心として回動するものの、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合わないことにより(滑ることにより)、ラチェット歯車39bが回動せず、よって円筒パイプ36は回動しない。そして、キャリッジ42が逆直進方向へ復移動しながら当接部39aを通過すると、当接部39aは元の位置に戻る方向にバネ39cの弾性力でアーム39fが正回転方向に回動する。これにより、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合ってラチェット歯車39bが正回転方向(X方向)にN度だけ回動し、ラチェット歯車39bに連動して円筒パイプ36も正回転方向(X方向)に回動する。
【0043】
<<記録動作及びフラッシング動作>>
次に、記録動作及びフラッシング動作について、図7B、図7C、図8A、図8B、図8C、図9A、図9B、及び図9Cを用いて説明する。図8Aは、記録動作及びフラッシング動作を説明するフロー図である。図8Bは、第一モードを説明するフロー図である。図8Cは、第二モードを説明するフロー図である。図9A〜図9Cは、第二モードを実行した際のキャリッジ42の動きを示す概念図である。図9Aは、キャリッジ42が変換機構39に当接した際のキャリッジ42と変換機構39の位置関係を示し、図9Bは、矢印Tに示すようにキャリッジ42が変換機構39に押圧しながら移動方向を正直進方向から逆直進方向へ転換する際のキャリッジ42と変換機構39の位置関係を示し、図9Cは、キャリッジ42が変換機構39への押圧を解除する直前のキャリッジ42と変換機構39の位置関係を示す。
【0044】
なお、液体吐出装置1の各種動作は、主としてコントローラー60により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリー63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0045】
以下において、まず、キャリッジ42が変換部39に当接する際の動きに関する処理フローである第一モード及び第二モードについてそれぞれ説明し、ついで、記録動作及びフラッシング動作の全体のフローを説明することとする。
【0046】
まず、図8Bを用いて、第一モードについて説明する。
キャリッジ42が正直進方向へ往移動することにより、記録領域Rから外れた位置に到達したキャリッジ42の突起部42aが当接部39aに当接し(S822)、図7Bに示すように、アーム39fが正回転方向に回動し、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合ってラチェット歯車39bが正回転方向に回動することにより、円筒パイプ36も正回転方向にN度回動する(S824)。
【0047】
キャリッジ42がフラッシングユニット35に対応する位置にヘッド31を搬送し、ヘッド31は円筒パイプ36に向けてフラッシング動作を実行する(S826)。
フラッシング動作の終了後、キャリッジ42が正直進方向へ往移動することにより当接部39aを通過すると、アーム39fが逆回転方向に回動するものの、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合わないことにより、円筒パイプ36は回動しない(S828)。
【0048】
そして、キャリッジ42が往移動を正直進方向から逆直進方向へと転換する(S830)。さらに、キャリッジ42が逆直進方向へ復移動し、キャリッジ42の突起部42aが当接部39aに当接する(S832)。そうすると、図7Cに示すように、アーム39fが逆回転方向に回動するものの、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合わないことにより、円筒パイプ36は回動しない(S834)。
【0049】
さらに、キャリッジ42が逆直進方向へ復移動することにより当接部39aを通過すると、アーム39fが正回転方向に回動し、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合って正回転方向に回動することにより、円筒パイプ36も正回転方向にN度回動する(S836)。
【0050】
以上の通り、第一モードを実行すると、キャリッジ42が一往復する際に、円筒パイプ36は2回(すなわち2N度)回動する。
【0051】
また、図8Cを用いて、第二モードについて説明する。
図9Aに示すように、正直進方向へ往移動することにより記録領域Rから外れた位置に到達したキャリッジ42の突起部42aが当接部39aに当接する(S842)。さらに、キャリッジ42が正直進方向へ往移動することにより突起部42aが当接部39aに正押圧すると、図7Bに示すように、アーム39fが正回転方向に回動し、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合ってラチェット歯車39bが正回転方向に回動することにより、円筒パイプ36も正回転方向にN度回動する(S844)。
フラッシング動作の終了後、キャリッジ42がフラッシングユニット35に対応する位置にヘッド31を搬送し、ヘッド31は円筒パイプ36に向けてフラッシング動作を実行する(S846)。
【0052】
図9Bに示すように、キャリッジ42の突起部42aから当接部39aへの押圧を解除する前に(キャリッジ42が当接部39aを通過する前に)、キャリッジ42が往移動を正直進方向から逆直進方向へと転換する(S848)。
キャリッジ42は逆直進方向へ復移動することにより、突起部42aの当接部39aへの正押圧が解除される。これにより、アーム39fが逆回転方向に回動するものの、ラチェット歯車39bがラチェット爪39eに噛み合わないことにより、円筒パイプ36は回動しない(S850)。
【0053】
以上の通り、第二モードを実行すると、キャリッジ42が一往復する際に、円筒パイプ36は1回だけ(すなわちN度だけ)回動する。
【0054】
続いて、図8Aを用いて、記録動作及びフラッシング動作の全体のフローを説明する。
まず、ホストコンピューター110からの液体吐出装置1への印刷の制御信号がインターフェース部61を介してコントローラー60に入力される(S802)と、ユニット制御回路64の制御により、キャリッジ42が記録領域Rに移動し、記録動作を開始する(S804)。具体的には、キャリッジ42がヘッド31とともに逆直進方向(図9Cの矢印R)に復移動しつつ、記録領域Rに位置するヘッド31からロール紙2に対してインクを吐出する。ヘッド31が、記録領域Rの搬送方向下流側端に到達すると、折り返して正直進方向(図9Aの矢印L)に往移動しつつ、記録領域Rに位置するヘッド31からロール紙2に対してインクを吐出する。
さらに、キャリッジ42とヘッド31が、ガイドレール41に沿って正直進方向へ往移動し、記録領域Rから外れた位置に到達する(S806)。
【0055】
ここで、コントローラー60は、キャリッジ42がM回連続して第一モードを実行したか否かを判定する(S808)。すなわち、コントローラー60は、キャリッジ42が連続して第一モードを実行した回数をJ回としてカウントし、J≧Mであるか否かを判定する。
なお、上述した通り、第一モードを1回実行すると円筒パイプ36は2N度だけ回動するが、Mは、円筒パイプ36が一回転させるような第一モードの実行回数である。すなわち、Mは、M≧360/2Nを満たす最小の自然数である。
【0056】
さて、J≠M(すなわち、J<M)であれば(S808:NO)、第一モードを1回実行する(S810)とともに、第一モードを実行した回数をJ=J+1として一つカウントし(S812)、S818へ進む。
一方、J=Mであれば(S808:YES)、第二モードを実行する(S814)とともに、第一モードを実行した回数をJ=0としてカウントを初期化し(S816)、S818へ進む。
キャリッジ42は、逆直進方向へ復移動して記録領域Rに戻り(S818)、コントローラー60は、記録動作を再開する(S804)。
【0057】
以上の通り、コントローラー60は、第一モードを連続的に実施しつつ、第一モードをM回連続して実行したときにはその次に第二モードを実行することとした。
【0058】
<<液体吐出装置1の有効性>>
上述の通り、第一実施形態にかかる液体吐出装置1によれば、インクを吐出するヘッド31と、ヘッド31と連動して往復移動するキャリッジ42と、キャリッジ42が一往復する毎にヘッド31がフラッシングを行うことによりヘッド31から吐出されたインクを受け、円筒形状を有する円筒パイプ36と、正直進方向へ往移動するキャリッジ42により正押圧されると基準位置から正回転方向へ揺動し、正押圧が解除されると逆回転方向へ揺動して基準位置に戻り、逆直進方向へ復移動するキャリッジ42により逆押圧されると基準位置から逆回転方向へ揺動し、逆押圧が解除されると正回転方向へ揺動して基準位置に戻るアーム39fと、アーム39fが正回転方向及び逆回転方向のどちらか一方に揺動するときに円筒パイプ36を一方向に回動させ、他方に揺動するときに円筒パイプ36を回動させないラチェット機構と、を備え、キャリッジ42による押圧力を、円筒パイプ36を回動させる回動力へ変換する変換機構と、キャリッジ42を正直進方向へ往移動させることにより、キャリッジ42がアーム39fを通過して正押圧が解除されるまでキャリッジ42をアーム39fに正押圧させ、その後、キャリッジ42を逆直進方向へ復移動させることにより、キャリッジ42がアーム39fを通過して逆押圧が解除されるまでキャリッジ42をアーム39fに逆押圧させることにより、キャリッジ42の一回の往復動作で円筒パイプ36を一方向に二回回動させる第一モードを複数回連続して実行した後に、キャリッジ42を正直進方向へ往移動させることによりアーム39fに正押圧させ、その後、キャリッジ42の正直進方向への往移動によりキャリッジ42がアーム39fを通過して正押圧が解除される前に、キャリッジ42の移動を逆直進方向への復移動へ転換して正押圧を解除することにより、キャリッジ42の一回の往復動作で円筒パイプ36を一方向に一回だけ回動させる第二モードを一回だけ実行するコントローラー60と、を有することにより、円筒パイプ36に堆積したインクがヘッド31に接触することを抑制できる。
【0059】
比較例として、コントローラー60が、第一モードのみを実行し、第二モードを実行しない場合を考える。上述の通り、コントローラー60が第一モードのみを実行した場合には、円筒パイプ36は、キャリッジ42が一往復する毎に2N度ずつ回動する。図10Aは、第一モードのみを連続して実行した場合に、キャリッジ42が一往復する毎に円筒パイプ36がその外周上で受けるインクの位置を示す概略図である。同図に示すように、円筒パイプ36が一回転したときに再び同じ箇所又はその近傍でインクを受けると、円筒パイプ36はその特定箇所inkAでインクを受けることとなる。そうすると、液体の再溶解性または再分解性が低い場合には、円筒パイプ36上の特定箇所inkAにインクが堆積することとなり、堆積したインクがヘッド31に接触する虞がある。
【0060】
しかし、第一実施形態の液体吐出装置1によれば、コントローラー60は、複数回連続して第一モードを実行した後に、第二モードを実行することで、円筒パイプ36上のインクを受ける箇所をずらす(位相をずらす)ことができる。図10Bは、第一モードを複数回連続して実行し第二モードを1回だけ実行した場合に、キャリッジ42が一往復する毎に円筒パイプ36がその外周上で受けるインクの位置を示す概略図である。同図に示すように、第一モードを複数回連続して実行すると特定個所inkAにインクが堆積するが、第二モードを一回だけ実行すると、円筒パイプ36は特定箇所inkAから離れた箇所inkBでインクを受けることとなり、この箇所inkBにおいてインクが堆積することとなる。すなわち、第二モードを一回だけ実行することにより、円筒パイプ36上のインクを受ける箇所を分散させることができ、インクが高く堆積することを抑制できる。そうすると、堆積したインクがヘッド31に接触するリスクも抑制することができる。
【0061】
また、第一実施形態にかかる液体吐出装置1によれば、コントローラー60が第一モードを複数回連続して実行することにより円筒パイプ36が一回転すると、コントローラー60は、第二モードを一回だけ実行することにより、より確実に円筒パイプ36に堆積したインクがヘッド31に接触することを抑制できる。
【0062】
すなわち、円筒パイプ36が一回転するまでは、第一モードを連続して実行することで、円筒パイプ36上の外周面にある複数の特定個所inkAを十分に利用してインクを受けることとなるので、円筒パイプ36上の外周面を有効利用することができる。また、円筒パイプ36が一回転すると、第二モードを1回だけ実行することにより、円筒パイプ36上のインクを受ける箇所をずらすことができ、特定個所inkAにインクが高く堆積することを抑制できる。
【0063】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体吐出方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0064】
(1)第一実施形態にかかる液体吐出装置1においては、変換機構39がラチェット歯車39bを備える構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ワンウェイクラッチなど、一方向には回動するが、他方向には回動しない機構であればよい。また、一方向から押圧力を受けた場合にはその押圧力を受けるが、他方向から押圧力を受けた場合にはその押圧力を逃すようなラチェット爪を備えていてもよい。
【0065】
(2)第一実施形態においては、液体吐出装置としてインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、インク以外の他の液体を吐出する液体吐出装置であってもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体吐出装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する液体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 液体吐出装置、2 ロール紙、10 給送ユニット、
18 巻軸、19 中継ローラー、20 搬送ユニット、
21 中継ローラー、22 中継ローラー、
23 第一搬送ローラー、 24 第二搬送ローラー、
25 反転ローラー、26 中継ローラー、27 送り出しローラー、
29 プラテン、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
35 フラッシングユニット、36 円筒パイプ、38 スクレーパー、
39 変換部、39a 当接部、39b ラチェット歯車、39c バネ、
39d 中心軸、39e ラチェット爪、39f アーム、
40 キャリッジユニット、41 ガイドレール、42 キャリッジ、
42a 突起部、 43 キャリッジベルト、50 検出器群、
60 コントローラー、61 インターフェース部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路、90 巻き取りユニット、
91 中継ローラー、92 巻き取り駆動軸、110 ホストコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液体を吐出するヘッドと、
(B)前記ヘッドと連動して往復移動するキャリッジと、
(C)前記キャリッジが一往復する毎に前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ヘッドから吐出された液体を受け、円筒形状を有する液体受け部と、
(D)正直進方向へ往移動する前記キャリッジにより正押圧されると基準位置から正回転方向へ揺動し、正押圧が解除されると逆回転方向へ揺動して前記基準位置に戻り、逆直進方向へ復移動する前記キャリッジにより逆押圧されると前記基準位置から前記逆回転方向へ揺動し、逆押圧が解除されると前記正回転方向へ揺動して前記基準位置に戻る揺動部材と、該揺動部材が前記正回転方向及び前記逆回転方向のどちらか一方に揺動するときに前記液体受け部を一方向に回動させ、他方に揺動するときに前記液体受け部を回動させない回動制御部材と、を備え、
前記キャリッジによる押圧力を、前記液体受け部を回動させる回動力へ変換する変換機構と、
(E)前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して正押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジを前記逆直進方向へ復移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して逆押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に逆押圧させることにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に二回回動させる第一モードを複数回連続して実行した後に、
前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジの前記正直進方向への往移動により前記キャリッジが前記揺動部材を通過して前記正押圧が解除される前に、前記キャリッジの移動を前記逆直進方向への復移動へ転換して前記正押圧を解除することにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に一回だけ回動させる第二モードを一回だけ実行するコントローラーと、
(F)を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記コントローラーが前記第一モードを複数回連続して実行することにより前記液体受け部が一回転すると、前記コントローラーは、前記第二モードを一回だけ実行することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
(A)液体を吐出するヘッドと、
(B)前記ヘッドと連動して往復移動するキャリッジと、
(C)前記キャリッジが一往復する毎に前記ヘッドがフラッシングを行うことにより前記ヘッドから吐出された液体を受け、円筒形状を有する液体受け部と、
(D)正直進方向へ往移動する前記キャリッジにより正押圧されると基準位置から正回転方向へ揺動し、正押圧が解除されると逆回転方向へ揺動して前記基準位置に戻り、逆直進方向へ復移動する前記キャリッジにより逆押圧されると前記基準位置から前記逆回転方向へ揺動し、逆押圧が解除されると前記正回転方向へ揺動して前記基準位置に戻る揺動部材と、該揺動部材が前記正回転方向及び前記逆回転方向のどちらか一方に揺動するときに前記液体受け部を一方向に回動させ、他方に揺動するときに前記液体受け部を回動させない回動制御部材と、を備え、
前記キャリッジによる押圧力を、前記液体受け部を回動させる回動力へ変換する変換機構と、
を有する液体吐出装置を準備することと、
前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して正押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジを前記逆直進方向へ復移動させることにより、前記キャリッジが前記揺動部材を通過して逆押圧が解除されるまで前記キャリッジを前記揺動部材に逆押圧させることにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に二回回動させる第一モードを複数回連続して実行した後に、
前記キャリッジを前記正直進方向へ往移動させることにより前記揺動部材に正押圧させ、その後、前記キャリッジの前記正直進方向への往移動により前記キャリッジが前記揺動部材を通過して前記正押圧が解除される前に、前記キャリッジの移動を前記逆直進方向への復移動へ転換して前記正押圧を解除することにより、前記キャリッジの一回の往復動作で前記液体受け部を前記一方向に一回だけ回動させる第二モードを一回だけ実行することと、
を有することを特徴とする液体吐出装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate


【公開番号】特開2012−86371(P2012−86371A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232258(P2010−232258)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】