説明

液体吐出装置

【課題】異なる薬液を短時間で確実に切り替えることができ、切り替え時の廃棄薬液量が少ない液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出装置10は、液体供給部1〜3と、液体を外部に吐出する吐出部5と、液体供給部1〜3及び吐出部5を接続する多方弁4と、多方弁4の開閉を制御するための制御装置6とを備える。制御装置6は、多方弁4のバルブH〜Iの開閉を制御することによって、液体供給部1〜3と吐出部5とを選択的に連通させる。液体供給部1による薬液の供給から、液体供給部2による薬液の供給に切り替える際には、多方弁4から吐出部5の吐出口に至る流路内の液体を、液体供給部3から供給した洗浄液、液体供給部2から供給した薬液で順に置換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を対象物に吐出する液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に薬液を塗布する装置として、特許文献1に記載されるようなスピンレス塗布装置(以下、単に「塗布装置」という)が知られている。一般に、塗布装置は、薬液を充填した貯留容器と、液体を塗布する塗布部と、貯留容器内の薬液を塗布部に供給する送液ポンプとを備える。また、塗布装置には、エアベントタンクやフィルターハウジング等が設けられる場合もある。これらの各構成装置は、配管によって接続されている。
【0003】
このような塗布装置で塗布する薬液を別の薬液に切り替える場合、各構成装置や配管内に残存している薬液を全て廃棄し、内部を別の薬液で置換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-119607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような薬液の切り替え・置換作業は、長時間を要すると共に、非常に煩雑である。また、薬液の置換が不完全で異なる薬液が混ざってしまった場合、薬液を塗布して製造される製品の品質不良を招く可能性がある。一方、置換を確実に行おうとすると、高価な薬液を大量に廃棄する必要がある。
【0006】
したがって、複数種類の薬液を塗布する作業が必要な場合は、1つの塗布装置で複数種類の薬液を切り替えて塗布する代わりに、薬液毎に専用の塗布装置を必要な数だけ使用することが一般的である。ただし、この場合、用意する塗布装置の台数が増えるため、設備費の増加に繋がる。
【0007】
それ故に、本発明は、異なる薬液を短時間で切り替えることができ、切り替え時の廃棄薬液量が少なく、更に、切り替え後に異なる薬液同士が混合することのない液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体吐出装置は、第1の液体を供給する第1の液体供給部と、第2の液体を供給する第2の液体供給部と、洗浄液を供給する第3の液体供給部と、第1〜第3の液体供給部にそれぞれ接続される第1〜第3の流入口と、流出口とを有する多方弁と、流出口に接続され、多方弁を通じて供給される液体を外部に吐出する吐出部と、第1〜第3の流入口の1つと流出口とが選択的に連通するように多方弁の開閉を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る液体吐出装置では、供給する薬液の切り替え時に、多方弁から吐出部の吐出口までの流路のみを薬液で置換すれば良いので、薬液の切り替えを短時間かつ確実に行うことができ、置換処理時の廃液量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の概略構成を示すブロック図
【図2】図1に示した多方弁の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の概略構成を示すブロック図であり、図2は、図1に示した多方弁の模式図である。
【0012】
本実施形態に係る液体吐出装置10は、薬液Aを供給する液体供給部1と、液体Bを供給する液体供給部2と、洗浄液を供給する液体供給部3と、多方弁4と、吐出部5と、制御装置6とを備える。
【0013】
液体供給部1は、薬液Aを貯留する貯留容器11と、貯留容器11に接続される配管13及び加圧配管15と、配管13に接続され、薬液Aを吸引して多方弁4へと送出するポンプ12と、ポンプ12と多方弁4とを接続する配管14とを含む。加圧配管15は、貯留容器11に加圧気体を導入して貯留容器11内を加圧することによって、内部の薬液Aを配管13を通じてポンプ12に送り込むためのものである。ただし、加圧配管15に代えて、貯留容器11内の薬液Aを吸引してポンプ12に送液する別途のポンプを配管13上に設けても良い。
【0014】
液体供給部2も同様に、薬液Bを貯留する貯留容器16と、貯留容器16に接続される配管18及び加圧配管20と、配管18に接続され、薬液Bを吸引して多方弁4へと送出するポンプ17と、ポンプ17と多方弁4とを接続する配管19とを含む。加圧配管20は、貯留容器16に加圧気体を導入して貯留容器11内を加圧することによって、内部の薬液Bを配管18を通じてポンプ17に送り込むためのものである。ただし、加圧配管20に代えて、貯留容器16内の薬液Bを吸引してポンプ17に送液する別途のポンプを配管18上に設けても良い。
【0015】
第3の液体供給部3は、配管22と、送風配管23と、配管22及び送風配管23に接続される多方弁7と、多方弁7と多方弁4とを接続する配管24とを含む。配管22は、図示しない貯留容器や送液装置等に接続され、供給される洗浄液を多方弁7へと送液するための洗浄液供給部を構成する。また、送風配管23は、図示しない送風装置等に接続され、薬液パージ用の気体(空気等)多方弁7へと供給するためのエアー供給部を構成する。ここで、洗浄液は、薬液A及びBの溶剤若しくは薬液A及びBに相溶性のある溶剤であることが望ましい。
【0016】
多方弁7は、図2(a)に模式的に示すように、2つの流入口26及び27と、1つの流出口28と、流出口28から流入口26及び27へと分岐する流路と、流入口26及び27のそれぞれに対応して設けられるバルブL及びKとから構成されている。バルブL及びKは、図1の制御装置6によって独立して開閉され、流入口26及び27のいずれかと流出口28とを選択的に連通させる。流入口26及び27には、前述の送風配管23及び配管22がそれぞれ接続されている。また、流出口28には、多方弁4に接続される配管24が接続されている。
【0017】
多方弁4は、図2(b)に模式的に示すように、3つの流入口31〜33と、1つの流出口34と、流出口34から流入口31〜33へと三分岐する流路と、流入口31〜33の各々に対応して設けられるバルブJ、I、Hとが一体的に構成された構造(マニホールド構造)を有する。多方弁4には、バルブH〜Jの開閉を独立に制御する制御装置6が接続されている。多方弁4としては、例えば、バルブH〜Jの開閉を空気圧を利用して切り替え自在な(例えば、バルブへの駆動エアーがOFF状態では、当該バルブと流出口とを遮断する)エアーオペレートバルブを利用できる。この場合、エアオペレートバルブの配管内径(オリフィス)は4〜6mmであることが好ましい。
【0018】
多方弁4の流入口31、32及び33には、前述の配管14、19及び24がそれぞれ接続されている。また、流出口34には、配管25を介して吐出部5が接続されている。
【0019】
吐出部5は、多方弁4を通じて供給される液体を基板等の対象物に対して吐出(塗布)するためのものであり、その形状は特に限定されない。
【0020】
ここで、本実施形態に係る液体吐出装置10における薬液切り替え方法について説明する。
【0021】
【表1】

【0022】
表1は、薬液Aの供給状態から薬液Bの供給状態へと切り替える過程におけるバルブH〜Lとポンプ12及び17との動作をまとめたものである。
【0023】
<1.薬液Aの供給時>
吐出部5に対して液体供給部1から薬液Aを供給している間は、制御部6は、バルブJのみが開状態となるように多方弁4を制御する。この状態で、液体供給部1のポンプ12が動作することによって、貯留容器11内の薬液Aが多方弁4及び吐出部5を通じて吐出される(表1のステップ1)。
【0024】
<2.薬液Aから薬液Bへの切り替え過程>
吐出部5へと供給する液体を薬液Aから薬液Bへと切り替える際には、制御部6は、バルブJを閉状態とした後、バルブH及びLを開状態に制御する(ステップ2)。この制御により、送風配管23から多方弁7及び多方弁4を通じて吐出部5に所定時間だけエアーが供給され、多方弁4から吐出部5の吐出口までの流路に存在する薬液Aがパージされる。
【0025】
次に、制御部6は、バルブLを閉状態に制御し、バルブKを開状態に制御する(ステップ3)。この制御により、配管22から多方弁7及び多方弁4を通じて吐出部5から所定時間だけ洗浄液が吐出され、多方弁4から吐出部5の吐出口までの流路が洗浄される。
【0026】
次に、制御部6は、バルブKを閉状態に制御し、バルブLを開状態に制御する(ステップ4)。この制御により、送風配管23から多方弁7及び多方弁4を通じて吐出部5に所定時間だけエアーが供給され、多方弁4から吐出部5の吐出口までの流路に存在する洗浄液がパージされる。
【0027】
次に、制御部6は、バルブH及びLを閉状態に制御した後、バルブIを開状態に制御する(ステップ5)。この状態で、液体供給部2のポンプ17が動作することによって、貯留容器12内の薬液Bが多方弁4及び吐出部5を通じて吐出され、多方弁4から吐出部5の吐出口までの流路が薬液Bで置換される。
【0028】
<3.薬液Bの供給時>
その後、吐出部5に対して薬液を供給している間は、制御部6は、バルブIのみを開状態に維持する。この状態で、液体供給部1のポンプ12の動作に従って、貯留容器11内の薬液Aが多方弁4及び吐出部5を通じて吐出される(ステップ6)。
【0029】
実際に上記のステップ1〜6に従って吐出部5へ供給する薬液を切り替えたところ、薬液Bが薬液Aや洗浄液等と混合することもなく、薬液B専用に用意した液体吐出装置を用いた場合と同様の性能(薬液の塗布品質)が得られた。また、1つの液体吐出装置において薬液を切り替える場合と比べると、切り替えに要する作業時間は約25%に短縮され、置換作業時の廃液量は約33%に低減することができた。
【0030】
尚、薬液Bの供給状態から薬液Aの供給状態への切り替えは、上述したステップ1〜6と同様であるので、ここでの繰り返しの説明を省略する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る液体吐出装置10では、多方弁4を用いて薬液を切り替えるので、切り替え時には、多方弁4から吐出部5の吐出口に至るまでの流路のみを薬液で置換すれば良い。したがって、薬液の切り替え時に行う流路内の薬液置換作業に要する時間や、置換作業時に廃棄される薬液量を低減することが可能となる。
【0032】
また、多方弁4には、複数の薬液に相溶性のある洗浄液を供給する液体供給部3が接続されているため、薬液の切り替え時に多方弁4から吐出部5の吐出口に至るまでの流路内の薬液が確実に除去され、異なる薬液の混合が防止される。また、この洗浄作業は、多方弁から吐出部の吐出口に至るまでの流路に対してのみ行えば良いので、必要な洗浄液の量や洗浄作業に要する時間も少なくて済む。
【0033】
更に、本実施形態では、吐出部5へと供給する液体の種類(薬液及び洗浄液)を変える前に、送風配管23から多方弁4へとエアーを導入して、多方弁4から吐出部5の吐出口に至る流路内の液体を排出する。これにより、多方弁4から吐出部5の吐出口までの流路内の液量を極めて少なくできるので、置換作業に要する液量及び時間を更に低減することが可能となる。
【0034】
尚、上記の実施形態において、吐出部5の装置構成や用途、形状、機能等は特に限定されない。また、塗布する薬液は、液体吐出装置10の用途に応じて任意である。
【0035】
また、上記の実施形態では、洗浄液を供給する配管22と、エアーを供給する送風配管23とを多方弁7で接続して液体供給部3を構成した例を説明したが、多方弁7を用いずに分岐させた配管24に配管22及び送風配管23を接続しても良い。
【0036】
更に、上記の実施形態では、多方弁4及び7を共通の制御装置6で制御した例を説明したが、多方弁4及び7のそれぞれに別個に制御装置を設けても良い。
【0037】
更に、上記の実施形態において、多方弁4の分岐(流入口)を更に増やして、4以上の液体供給部を接続することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る送液装置は、印刷機や薬液塗布装置等の液体を対象物に吐出または塗布する装置として利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1、2、3 液体供給部
4 多方弁
5 吐出部
6 制御装置
7 多方弁
10 液体吐出装置
31、32、33 流入口
34 流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置であって、
第1の液体を供給する第1の液体供給部と、
第2の液体を供給する第2の液体供給部と、
洗浄液を供給する第3の液体供給部と、
前記第1〜第3の液体供給部にそれぞれ接続される第1〜第3の流入口と、流出口とを有する多方弁と、
前記流出口に接続され、前記多方弁を通じて供給される液体を外部に吐出する吐出部と、
前記第1〜第3の流入口の1つと前記流出口とが選択的に連通するように前記多方弁の開閉を制御する制御部とを備える、薬液吐出装置。
【請求項2】
前記多方弁は、前記第1〜第3の流入口の各々に対応して設けられる第1〜第3の弁を含み、
前記制御部は、
前記第1の液体供給部から前記吐出部へと前記第1の液体を供給する際には、前記第1の弁のみを開状態とし、
前記第2の液体供給部から前記吐出部へと前記第2の液体を供給する際には、前記第2の弁のみを開状態とし、
前記第1の液体供給部による前記第1の液体の供給と、前記第2の液体供給部による前記第2の液体の供給とを切り替える過程で、前記第3の弁のみを開状態とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第3の液体供給部は、前記洗浄液を供給する洗浄液供給部と、エアーを供給するエアー供給部とを含み、前記第3の弁が閉状態から開状態へと遷移した際に、所定時間だけ前記エアー供給部から前記吐出部へとエアーを供給した後に、前記洗浄液供給部から前記吐出部へと前記洗浄液を供給する、請求項2に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−16047(P2011−16047A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161005(P2009−161005)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】