説明

液体吐出装置

【課題】簡易な構成にてノズルを迅速に封止することが可能な、新規かつ改良された液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に対向する位置に設けられ、前記ノズルから吐出された液体が着弾する媒体を支持する支持部材と、前記支持部材の側面を囲んだ状態で前記側面に沿って移動可能なフレームと、前記フレームに支持され、前記フレームの移動に伴い前記ノズル面に接触した際に前記ノズルを封止する封止部材と、を備える液体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置として、例えば、媒体に液体であるインクを吐出して画像を印刷するインクジェットプリンタが知られている。このような液体吐出装置は、媒体に液体を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、ノズル面に対向する媒体を支持する支持部材とを備える。そして、印刷時には、支持部材に支持された媒体にノズルから液体を吐出することにより、画像が印刷される。
【0003】
ところで、媒体に液体を吐出しない待機時には、ノズルをゴミ、埃、乾燥等から保護するため、液体吐出装置はゴム等のキャップ部材でノズルを封止している(特許文献1参照)。なお、キャップ部材でノズルを封止するためには、液体吐出ヘッドと支持部材の間にキャップ部材が位置できるような空間を形成する必要があり、キャップ部材や支持部材を移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ノズルを封止するためのキャップ部材及び支持部材の移動機構を設けた場合には、装置の構成が複雑になる。また、このような複雑な構成の場合には、各部材の移動時間を確保する必要があるため、印刷時からノズルの封止までの時間が長くなってしまい、ノズル面が適切に保護されない問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、簡易な構成にてノズルを迅速に封止することが可能な、新規かつ改良された液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、液体を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に対向する位置に設けられ、前記ノズルから吐出された液体が着弾する媒体を支持する支持部材と、前記支持部材の側面を囲んだ状態で前記側面に沿って移動可能なフレームと、前記フレームに支持され、前記フレームの移動に伴い前記ノズル面に接触した際に前記ノズルを封止する封止部材と、を備える液体吐出装置が提供される。
【0008】
また、前記封止部材の平面形状は、中央に貫通穴が形成された矩形であり、前記封止部材の中央側の内周部は、前記支持部材に支持され、前記封止部材の外周側の外周部は、前記フレームに支持され、前記封止部材は、前記ノズル面に接触した際に、前記支持部材と共に前記ノズルを封止することとしても良い。
【0009】
また、前記フレームの移動に伴い、前記封止部材の前記外周部が移動し、前記封止部材は、前記接触位置に位置する際に前記外周部が前記ノズル面に接触することで、前記ノズルを封止することとしても良い。
【0010】
また、前記封止部材は、屈曲性を有し前記内周部と前記外周部を繋ぐ屈曲部を備え、前記フレームの移動に伴い、前記屈曲部が変形しながら前記外周部が移動することとしても良い。
【0011】
また、前記封止部材は、前記接触位置に位置する際に前記ノズル面に当接する突起を有し、前記突起が前記ノズル面に当接することで前記ノズルを封止することとしても良い。
【0012】
また、前記液体吐出ヘッドは、装置本体に対して移動不能に固定支持されていることとしても良い。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、簡易な構成にてノズルを迅速に封止することが可能な液体吐出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンタ10の全体構成を示したブロック図である。
【図2】プリンタ10の内部構成を示した斜視図である。
【図3】プリンタ10の内部構成を示した断面図である。
【図4】メンテナンスユニット40を示した斜視図である。
【図5】プラテン34及びキャップユニット110を示した斜視図である。
【図6】リップ114がノズルを封止している状態を正面から見た断面図である。
【図7】リップ114がノズルを封止している状態を側面から見た断面図である。
【図8】図6の領域Aを拡大した拡大図である。
【図9】図7の領域Bを拡大した拡大図である。
【図10】リップ114の屈曲性を説明するための図である。
【図11】ノズルNzを封止する直前のキャップユニット110を示した図である。
【図12】ノズルNzの封止中のキャップユニット110を示した図である。
【図13A】ノズルNzが封止されている状態を示す図である。
【図13B】メンテナンスユニット40が下降した状態を示す図である。
【図13C】ノズル面21aのクリーニングの開始状態を示す図である。
【図13D】ノズル面21aのクリーニングの終了状態を示す図である。
【図14A】ノズル面にキャップ部材が当接している待機状態を示す図である。
【図14B】搬送部及びキャップユニットの移動状態を示す図である。
【図14C】キャップ部材が退避している印刷状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.液体吐出装置の概要
2.メンテナンスユニットの構成
2−1.キャップユニットの詳細構成
2−2.クリーニングユニットの詳細構成
3.キャップユニットの動作例
4.クリーニングユニットの動作例
5.本実施形態に係るプリンタの有効性
6.その他の実施形態
【0017】
<1.液体吐出装置の概要>
本実施形態では、液体吐出装置の一例としてのカラーインクジェットプリンタ(以下、プリンタ10)について説明する。本実施形態のプリンタ10は、例えばY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4色のインクを、媒体の一例である用紙Sに吐出することにより、用紙Sに画像を印刷する印刷装置である。
【0018】
以下、プリンタ10の構成例について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、プリンタ10の全体構成を示したブロック図である。図2は、プリンタ10の内部構成を示した斜視図である。図3は、プリンタ10の内部構成を示した断面図である。
【0019】
プリンタ10は、図1に示すように、ヘッドユニット20と、搬送ユニット30と、メンテナンスユニット40と、コントローラ70と、検出器80とを有する。
【0020】
ヘッドユニット20は、用紙Sに画像を印刷するために、用紙Sにインクを吐出するものである。このヘッドユニット20は、図2に示すように、一対の本体フレーム12にネジ等によって固定されている。つまり、プリンタ10の動作中は、ヘッドユニット20が移動しない。
【0021】
また、ヘッドユニット20は、図3に示すように、インクの色毎に設けられた複数のラインヘッド21を有する。各ラインヘッド21は、用紙Sの紙幅よりも長い幅を有する長尺状の液体吐出ヘッドであり、その下部にノズルNzが形成されたノズル面21aを有する。各ノズルNzには、不図示のエネルギー発生素子(具体的には、発熱抵抗体)及びインク液室が設けられている。そして、発熱抵抗体の駆動に伴いインク液室内に気泡が発生し、この気泡発生時のエネルギーによって、各ノズルNzからインクが吐出される。
【0022】
そして、各ラインヘッド21は、用紙S上の領域(画像が印刷される印刷領域)がラインヘッド21直下を通過するときに、ノズルNzからインクを吐出する。すなわち、各ラインヘッド21は、ノズル面21aが用紙Sに対向している間にインクを吐出する。これにより、用紙S上の印刷領域には、紙幅分のドットが一度に形成される。
【0023】
搬送ユニット30は、用紙S上の印刷領域が各ラインヘッド21の直下を通過するように、用紙Sを搬送方向に搬送するものである。この搬送ユニット30は、図3に示すように、上流側搬送ローラ32と、下流側搬送ローラ33と、支持部材の一例であるプラテン34とを有する。
【0024】
上流側搬送ローラ32は、搬送方向においてヘッドユニット20の上流側に位置する一対のローラである。下流側搬送ローラ33は、搬送方向においてヘッドユニット20の下流側に位置する一対のローラである。この上流側搬送ローラ32及び下流側搬送ローラ33は、用紙Sを挟んだ状態で搬送方向に搬送する。
【0025】
プラテン34は、搬送方向において上流側搬送ローラ32と下流側搬送ローラ33の間に位置し、搬送される用紙Sを支持する台である。このプラテン34は、ラインヘッド21のノズル面21aに対向している。また、プラテン34は、リブ35とインク吸収材36を有する。リブ35が搬送中の用紙Sを支持する。インク吸収材36は、プラテン34に向かって吐出されたインクを吸収する。
【0026】
メンテナンスユニット40は、休止状態(用紙Sにインクを吐出しない状態)にある各ラインヘッド21に対して、ノズルNzからのインク吐出が良好に維持されるようにメンテナンスを行うためのものである。なお、メンテナンスユニット40の詳細構成については、後述する。
【0027】
コントローラ70は、各ユニット(ヘッドユニット20、搬送ユニット30、メンテナンスユニット40)を制御するためのものである。具体的には、コントローラ70は、メモリ72に格納されているプログラムに従って、CPU71によりユニット制御回路74を介してプリンタ10の各ユニットを制御する。また、コントローラ70は、インターフェース73を介してコンピュータ(不図示)と通信可能である。そして、コントローラ70は、コンピュータから印刷データを受信すると、該印刷データに基づいて各ユニットを制御して該印刷データに応じた画像を用紙Sに印刷する。
【0028】
検出器80は、プリンタ10内の状況を検出するためのものである。例えば、検出器80は、搬送経路上の用紙Sの位置を検出する紙検出センサーを有する。検出器80は、検出結果に応じた信号をコントローラ70に向けて出力する。コントローラ70は、前記信号を受け取って、各ユニットを制御する。
【0029】
次に、上述した構成のプリンタ10を用いて、カラー画像を用紙Sに印刷する印刷処理について説明する。印刷処理は、コントローラ70がインターフェース73を介してコンピュータからの印刷データを受信するところから始まる。コントローラ70は、受信した印刷データ中の各種コマンドの内容を解析しプリンタ10の各ユニットを制御する。これにより、先ず搬送ユニット30による搬送動作が実行される。すなわち、上流側搬送ローラ32や下流側搬送ローラ33により、用紙Sが搬送方向に搬送される。
【0030】
コントローラ70は、搬送ユニット30による搬送動作を実行しつつ、ヘッドユニット20によるインク吐出動作を実行する。すなわち、各ラインヘッド21が、対向する位置に位置する(プラテン34に支持された)用紙S上の印刷領域に、インクを吐出する。これにより、用紙Sの紙幅分のドットが一度に形成される。この結果、用紙S上にカラー画像が印刷される。
【0031】
<2.メンテナンスユニット40の構成>
メンテナンスユニットは、上述したように、休止状態(インクを吐出しない状態)にある各ラインヘッド21に対して、ノズルNzからのインク吐出が良好に維持されるようにメンテナンスを行う。このメンテナンスユニット40の構成について、図4を用いて説明する。図4は、メンテナンスユニット40を示した斜視図である。
【0032】
メンテナンスユニット40は、キャップユニット110とクリーニングユニット160とを有する。キャップユニット110は、ノズルNzを封止するためのものである。クリーニングユニット160は、ノズル面21aをクリーニングするためのものである。以下においては、キャップユニット110の詳細構成、クリーニングユニット160の詳細構成の順に説明する。
【0033】
(2−1.キャップユニット110の詳細構成)
まず、図5〜図10を用いて、キャップユニット110の詳細構成ついて説明する。図5は、プラテン34及びキャップユニット110を示した斜視図である。図6は、リップ114がノズルを封止している状態を正面から見た断面図である。図7は、リップ114がノズルを封止している状態を側面から見た断面図である。図8は、図6の領域Aを拡大した拡大図である。図9は、図7の領域Bを拡大した拡大図である。図10は、リップ114の屈曲性を説明するための図である。
【0034】
キャップユニット110は、ノズルNzを封止するためのものである。本実施形態に係るキャップユニット110は、キャッピング動作を迅速に行う観点から、図3に示すように用紙Sの搬送経路上に設けられている。具体的には、キャップユニット110は、搬送経路上においてラインヘッド21に対向する位置に設けられている。そして、キャップユニット110は、キャップフレーム112と、封止部材の一例であるリップ114と、バネ120と、駆動部130と、を有する。
【0035】
キャップフレーム112は、プラテン34の側面を囲む箱状の部材である。このキャップフレーム112の上端及び下端は、開放端となっており、キャップフレーム112は、プラテン34に側面に沿って、上下方向に移動する。具体的には、キャップフレーム112は、キャップ位置(図3参照)と、退避位置(図6参照)との間を移動する。
【0036】
リップ114は、図6に示すように、キャップフレーム112がキャップ位置に位置する際に、プラテン34と共にノズルNzを封止するためのものである。このリップ114は、矩形状を成しており、リップ114の大きさは、ラインヘッド21の下面(ノズル面21aが形成された面)とほぼ同じ大きさである。また、リップ114は、ゴム等の弾性部材から成る。
【0037】
リップ114の中央部には、図10に示すように矩形穴115が形成されている。矩形穴115がプラテン34のリブ35を取り囲む位置に、リップ114が設けられている。また、リップ114は、この矩形穴115の周りに、内周部116と外周部117と屈曲部118を有する。
【0038】
内周部116は、矩形状の形状をしており、リップ114の内側に位置する。この内周部116は、プラテン34の上面におけるリブ35の外周の部分に、例えば接着剤で固定されている。なお、内周部116は、搬送中の用紙Sが接触することを防止するために、プラテン34のリブ35よりも低い位置に固定されている(図3参照)。
【0039】
外周部117は、矩形状の形状をしており、リップ114の外側に位置する。この外周部117は、キャップフレーム112の上面112aに、例えば接着剤で固定されている。この外周部117は、キャップフレーム112が退避位置に位置する際には、内周部116よりも上下方向の下側に位置するが、キャップフレーム112がキャップ位置に位置する際には、内周部116よりも上下方向の上側に位置する。
【0040】
また、外周部117には、図8及び図9に示すように突起部の一例である突起117aが形成されている。この突起117aは、外周部117においてキャップフレーム112に接着する側とは反対側に形成されている。この突起117aは、キャップ時にノズル面21aに当接する。そして、外周部117のうち突起117aにより、ノズルNzが封止される。突起117aによりノズル面21aに当接することで、小さい当接圧であっても、有効にノズルを封止できる。
【0041】
屈曲部118は、内周部116と外周部117の間に位置し、内周部116と外周部117を繋げている。リップ114は、上述したように弾性変形可能なゴム部材であり、キャップフレーム112の移動に伴い、図10に示すように屈曲部118が変形する。これにより、外周部117の位置が移動することとなる。これにより、簡易な構成にて、リップ114の位置を移動させることができる。また、屈曲部118を有することで、繰り返しキャップフレーム112が上下動しても、リップ114が破損することを防止できる。
【0042】
上述したプラテン34と共に空間を形成してノズルを封止するリップ114において、外周部117がキャップフレーム112の移動に伴い移動するだけで、プラテン34を移動させること無く、ノズルの封止と封止の解除とが迅速に行われる。
【0043】
バネ120は、図5に示すようにキャップフレーム112とプラテン34の間に設けられた圧縮バネである。このバネ120の弾性力により、キャップフレーム112はラインヘッド21側に付勢されている。なお、バネ120は、圧縮バネに限定されず、例えば引っ張りバネであっても良い。
【0044】
駆動部130は、キャップフレーム112を上下方向に移動させるためのものである。駆動部130は、図5に示すように、モータ132と、歯車134と、ベルト135と、カム136と、カムフォロア138と、を有する。
【0045】
モータ132は、動力源である。歯車134及びベルト135は、回転することにより、モータ132の動力を伝達するためのものである。ベルト135は、歯車134とカム136を連結している。
【0046】
カム136は、回転可能にプリンタ本体に取り付けられている。そして、カム136は、歯車134(ベルト135)の回転に連動して回転する。このカム136は、楕円状の形状をしている偏心カムである。
【0047】
カムフォロア138は、キャップフレーム112に取り付けられており、キャップフレーム112と一体で上下方向に移動する。上述したように、キャップフレーム112は、バネ120の付勢力を受けて上下方向の上側に向かって付勢されている。このため、カムフォロア138も、キャップフレーム112を介して上下方向の上側に向かって付勢されることにより、カム136の外周面に当接している。
【0048】
そして、カム136が回転する際に、バネ120の付勢力に抗い、カム136がカムフォロア138を上下方向の下側に向かって押し下げる。カムフォロア138が上下方向に下側に移動する際に、キャップフレーム112もバネ120の付勢力に抗い、上下方向の下側に移動する。この結果、キャップフレーム112は、プラテン34に対して上下方向の下側に移動して、退避位置に位置する。
【0049】
上述した構成のキャップユニット110により、ラインヘッド21が休止状態にある間に該ラインヘッド21のノズルNzの開口近傍におけるインクの溶媒蒸発を抑制することが可能となり、以って、当該ノズルNzにおける目詰まりの発生が防止される。
【0050】
なお、キャップユニット120には、不図示の吸引ポンプが接続されている。この吸引ポンプは、例えばリップ114がノズルNzを封止した状態で作動する。これにより、リップ114とノズル面21a内の空間が負圧状態になり、ノズルNz内のインクが吸引されて強制的に排出される。このような吸引動作が行われたラインヘッド21は、ノズルNzからインクを良好に噴射する状態を維持できるようになる。
【0051】
(2−2.クリーニングユニット160の詳細構成)
次に、クリーニングユニット160の詳細構成について、上述した図4を用いて説明する。
【0052】
クリーニングユニット160は、ラインヘッド21のノズル面21aをクリーニングするためのものである。このクリーニングユニット160は、図4に示すように、ブレード162と、ワイパ164と、移動体166と、駆動部168と、を有する。
【0053】
ブレード162は、ノズル面21aに付着した塵や増粘インクを掻きとるためのものである。このブレード162は、例えばゴム材から成るゴムブレードであり、ノズル面21aに当接して塵等を掻き取る。
【0054】
ワイパ164は、ノズル面21aに付着した塵や増粘インクを拭き取るためのものである。このワイパ164は、例えばスポンジ状の多孔質ローラであり、ノズル面21aに接触して塵等を拭き取る。
【0055】
移動体166は、ブレード162とワイパ164を保持した状態で、移動方向に移動する。具体的には、移動体166は、一対のシャフトガイド170に沿って、移動方向に移動する。そして、ブレード162及びワイパ164がノズル面21aに当接した状態で移動体166が移動方向に移動することにより、ノズル面21aがクリーニングされる。
【0056】
駆動部168は、移動体166を移動方向に移動させるためのものである。この駆動部168は、駆動源としてのモータと歯車等を有する。
【0057】
クリーニングユニット160によるノズル面21aのクリーニングを行う際には、メンテナンスユニット40に設けられた駆動源(不図示)により、メンテナンスユニット40が上下方向においてシャフト172に沿って下降する。これにより、上下方向においてラインヘッド21とプラテン34の間に空間が形成される。形成された空間を移動体166が移動する際に、ブレード162とワイパ164によるノズル面21aのクリーニングが行われる。なお、クリーニングユニット160によるノズル面21aのクリーニング動作については、後述する。
【0058】
上記実施形態では、クリーニングユニット160が、ブレード162及びワイパ166を有することとしたが、これに限定されない。例えば、クリーニングユニット160は、ブレード162とワイパ166のいずれか一方を有することとしても良い。
【0059】
<3.キャップユニット110の動作例>
ノズルを封止するキャップユニット110の動作例について、図11及び図12を用いて説明する。図11は、ノズルNzを封止する直前のキャップユニット110を示した図である。図12は、ノズルNzの封止中のキャップユニット110を示した図である。
【0060】
キャップユニット110によるノズルの封止動作は、コントローラ70によって実行される。そして、本実施形態において、リップ114によるノズルNzの封止は、プリンタ10の休止状態(用紙Sにインクを吐出しない状態)にある場合に、継続して行われる。これは、ノズル面21aに形成されたノズルNzを塵や乾燥から保護するためである。
【0061】
まず、用紙Sへの画像印刷の直後にノズルNzを封止する際の、キャップユニット110の動作例について説明する。
【0062】
用紙Sに画像を印刷している間、具体的には用紙Sがプラテン34上を搬送されている間は、図11に示すように、キャップフレーム112は退避位置に位置している。すなわち、リップ114の外周部117がプラテン34のリブ35よりも下方に位置している。この際、キャップユニット110のカム136がカムフォロア138を上下方向の下側に押し下げていている。
【0063】
そして、用紙Sが搬送方向においてラインヘッド21よりも下流側に位置する際に、キャップユニット110が動作を開始して、ノズルNzを封止する。すなわち、駆動部130の駆動に伴いカム136が回転することで、カムフォロア138及びキャップフレーム112が、バネ120の付勢力を受けて上下方向において上昇する。そして、カム136が半回転して停止することで、リップ114の突起117aが、図12に示すようにノズル面21aに当接する。つまり、キャップフレーム112が、封止位置に位置する。これにより、ノズルNzが封止される。
【0064】
なお、キャップユニット110の動作中、ヘッドユニット21及びプラテン34は移動しない。つまり、ラインヘッド21に対向するキャップフレーム112の移動のみによって、ノズルNzが封止される。このため、用紙Sへの画像の印刷直後に、ノズルNzが封止されることとなる。
【0065】
次に、ノズルNzの封止状態から用紙Sにインクを吐出する際の、キャップユニット110の動作例について説明する。
【0066】
ノズルNzの封止状態から用紙Sにインクを吐出するためには、キャップ位置に位置するキャップフレーム112を退避位置に移動させる必要がある。そして、本実施形態では、キャップフレーム112を退避位置に移動させるタイミングを、用紙Sがラインヘッド21に対向する直前としている。例えば、上流側搬送ローラ22が用紙Sの搬送を開始する際に、キャップフレーム112を退避位置に移動させる。
【0067】
キャップフレーム112の退避位置への移動も、駆動部130の駆動によりカム136を回転させることで実行される。すなわち、カム136が回転することで、バネ120の付勢力に抗い、カムフォロア138及びキャップフレーム112が上下方向において下降する。そして、カム136が半回転して停止することで、キャップフレーム112が退避位置に位置することになる。つまり、リップ114の外周部117が、プラテン34のリブ35よりも下方に位置する。そして、キャップフレーム112が退避位置に位置した状態で、プラテン34上に搬送された用紙Sにインクが吐出される。
【0068】
このように、用紙Sにインクを吐出する直前まで、ノズルNzを封止しているので、ノズルNzの乾燥等を有効に防止できる。なお、検出器80(図1)が搬送経路上の用紙Sの位置を検出しており、検出された用紙Sの位置に基づいて、キャップフレーム112の移動が制御される。
【0069】
ところで、本実施形態において、キャップユニット110によるノズルNzの封止及び封止の解除の際には、プラテン34及びヘッドユニット20は、移動しない。このため、ノズルNzの封止及び封止の解除が、迅速に行われるので、ノズルNzを塵や乾燥から有効に保護できる。またヘッドユニット20が上下方向に移動せず固定されているため、ノズルNzのメニスカスを一定に保つことができる。また、ヘッドユニット20が上下方向に移動しないため、ノズル面21aとプラテン34の間の距離(ギャップ)が一定となる。このため、用紙Sへのインクの着弾位置が一定となり、用紙Sに印刷される画像の画質の劣化を防止できる。
【0070】
<4.クリーニングユニット160の動作例>
クリーニングユニット160によるノズル面21aのクリーニング動作について、図13A〜図13Dを用いて説明する。図13A〜図13Dは、ノズル面21aのクリーニングを説明するための図であり、図13Aは、ノズルNzが封止されている状態を示す図である。図13Bは、メンテナンスユニット40が、下降した状態を示す図である。図13Cは、ノズル面21aのクリーニングの開始状態を示す図である。図13Dは、ノズル面21aのクリーニングの終了状態を示す図である。
【0071】
本実施形態に係るクリーニング動作は、例えば、ラインヘッド21に対して吸引ポンプによる吸引動作を行った後に、ラインヘッド21のノズル面21aに対して行われる。このクリーニング動作は、コントローラ70により実行される。
【0072】
以下の説明において、図13Aに示す状態、すなわちノズル面21aにリップ114が当接している状態から、クリーニング動作が開始されるものとする。
【0073】
まず、図13Aに示す状態から、メンテナンスユニット40が上下方向において下降する。すなわち、メンテナンスユニット40が、不図示の駆動源により、一対のシャフト172(図4)に沿って下降する。そして、下降したメンテナンスユニット40は、図13Bに示すクリーニング位置にて停止する。これにより、プラテン34とラインヘッド21の間に大きな空間が形成される。
【0074】
メンテナンスユニット40がクリーニング位置に位置している際に、クリーニングユニット160の移動体166を、プラテン34とラインヘッド21の間に形成された空間を移動させる。具体的には、移動体166は、駆動部168により、シャフトガイド170に沿って移動方向の一端側から他端側に移動する。そして、移動体166の移動中に、ブレード162とワイパ164が、図13Cに示すようにラインヘッド21のノズル面21aに当接する。
【0075】
ブレード162とワイパ164がノズル面21aに当接した状態で、移動体166が図13Dに示す位置まで移動することにより、ブレード162とワイパ164によってノズル面21aがクリーニングされる。すなわち、ブレード162によって、ノズル面21aに付着した塵や増粘インクを掻きとられると共に、ワイパ164によって、ノズル面21aに付着した塵や増粘インクが拭き取られる。
【0076】
図13Dに示す位置に移動体166が停止した後、移動体166が図13Bに示す位置まで戻ることにより、クリーニング動作が終了する。その後、メンテナンスユニット40が、ガイドシャフトに沿って上昇して、リップ114がノズルNzを封止する。
【0077】
このように、本実施形態によれば、リップ114がノズルNzを封止している際に、クリーニング動作を実行しても、リップ114がノズルNzを封止していない時間を極力少なくできるので、ノズルNzの状態を適切に維持できる。
【0078】
<5.本実施形態に係るプリンタの有効性>
本実施形態に係るプリンタ10の有効性について、比較例と対比しながら説明する。
【0079】
まず、図14A〜図14C示す比較例に係るプリンタ200ついて説明する。図14Aは、ノズル面にキャップ部材が当接している待機状態を示す図である。図14Bは、搬送部及びキャップユニットの移動状態を示す図である。図14Cは、キャップ部材が退避している印刷状態を示す図である。
【0080】
比較例においては、図14Aに示す待機状態から図14Cに示す印刷状態へ移行する際に、プラテン212を含む搬送部210、及びキャップ部材222を含むキャップユニット220が、それぞれ移動している。すなわち、キャップユニット220がスライド移動し、このスライド移動に連動してレバー214が回転することで、搬送部210が回転軸210aを中心に回動する。このような構成のため、搬送部210及びキャップユニット220を移動させる領域が必要であり、装置が大きくなることになる。また、搬送部210とキャップユニット220を移動させる機構が複雑となり、部品点数も多くなる。更に、キャップユニット220を移動させる移動量が大きくなるため、例えば印刷状態から待機状態への移行時間が長くなり、ノズルの乾燥等が発生しやすくなる。
【0081】
これに対して、本実施形態に係るプリンタ10においては、ヘッドユニット20とプラテン34が対向している状態で、図11及び図12に示すようにキャップフレーム112を上昇させるだけでリップ114によりノズルを封止できる。このように、本実施形態では、搬送ユニット20の移動等は生じないため、比較例に比べてプリンタ10の構成を簡素化できる。
【0082】
また、本実施形態では、キャップフレーム112がプラテン34の側面に沿って上下動するだけなので、キャップフレーム112の移動量が少なく、プラテン34の周辺の空間を大きくする必要がない。このため、比較例に比べて、プリンタ10の小型化を実現しやすい。
【0083】
また、本実施形態では、プラテン34とリップ114によって囲まれた空間で、ノズルを封止する。つまり、プラテン34は、印刷時に用紙Sを支持するだけで無く、ノズルNzを封止する機能を有することになる。これは、キャップ部材222のみがノズルNzを封止する比較例に比べ、プラテン34をより有効活用できる。
【0084】
更に、本実施形態では、ノズルの封止を解除してインクを吐出するまでの間に、搬送ユニット20の移動等が生じないため、ヘッドユニット20に用紙Sが接近するまでノズルの封止状態を継続できる。一方で、比較例では、キャップユニット220の移動に伴い搬送部210が移動するので、ノズルの封止が解除されてからインクを吐出するまでの時間が長くなり、その間にノズルが乾燥等する不具合が発生する恐れがある。
【0085】
このように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、簡易な構成にて迅速にノズルNzを封止できると共に、ノズルの封止解除から用紙Sへのインク吐出までにノズルが開放される時間を短くできる。この結果、ノズルを封止する時間を最大限確保できるため、ノズルを塵や乾燥等から、より効果的に保護することができる。同様に、ノズルの封止状態からクリーニング動作を実行する際も、短時間でクリーニング動作に移行できる。
【0086】
<6.その他の実施形態>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0087】
また、上記実施形態では、液体吐出装置としてカラーインクジェットプリンタが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、有機EL製造装置、ディスプレイ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。
【0088】
また、上記実施形態では、エネルギー発生素子として発熱抵抗体を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、エネルギー発生素子としては、発熱抵抗体(ヒータ等)以外の発熱素子や、ピエゾ素子等の圧電素子等を用いることも可能である。
【0089】
また、上記実施形態では、液体吐出ヘッドとしてラインヘッド21を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、プリンタヘッドを媒体上で特定方向に移動させながらインクを吐出する、いわゆるシリアルタイプのプリンタヘッドに適用しても良い。
【0090】
また、上記実施形態では、リップ114の突起117aをノズル面21aに当接(線接触)することとしたが、これに限定されない。例えば、リップ114の外周部117がノズル面21aに面接触することとしても良い。
【0091】
また、上記実施形態では、リップ114が、複数の色のノズルをまとめて封止することとしたが、これに限定されない。例えば、インクの色毎に、リップを設けても良い。
【符号の説明】
【0092】
10 プリンタ
20 ヘッドユニット
21 ラインヘッド
21a ノズル面
30 搬送ユニット
32 上流側搬送ローラ
33 下流側搬送ローラ
34 プラテン
35 リブ
40 メンテナンスユニット
70 コントローラ
80 検出器
110 キャップユニット
112 キャップフレーム
114 リップ
115 矩形穴
116 内周部
117 外周部
117a 突起
118 屈曲部
120 バネ
130 駆動部
132 モータ
134 歯車
135 ベルト
136 カム
138 カムフォロア
160 クリーニングユニット
162 ブレード
164 ワイパ
166 移動体
168 駆動部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルが形成されたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズル面に対向する位置に設けられ、前記ノズルから吐出された液体が着弾する媒体を支持する支持部材と、
前記支持部材の側面を囲んだ状態で前記側面に沿って移動可能なフレームと、
前記フレームに支持され、前記フレームの移動に伴い前記ノズル面に接触した際に前記ノズルを封止する封止部材と、
を備える、液体吐出装置。
【請求項2】
前記封止部材の平面形状は、中央に貫通穴が形成された矩形であり、
前記封止部材の中央側の内周部は、前記支持部材に支持され、前記封止部材の外周側の外周部は、前記フレームに支持され、
前記封止部材は、前記ノズル面に接触した際に、前記支持部材と共に前記ノズルを封止する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記フレームの移動に伴い、前記封止部材の前記外周部が移動し、
前記封止部材は、前記接触位置に位置する際に前記外周部が前記ノズル面に接触することで、前記ノズルを封止する、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記封止部材は、屈曲性を有し前記内周部と前記外周部を繋ぐ屈曲部を備え、
前記フレームの移動に伴い、前記屈曲部が変形しながら前記外周部が移動する、請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記封止部材は、前記接触位置に位置する際に前記ノズル面に当接する突起を有し、前記突起が前記ノズル面に当接することで前記ノズルを封止する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドは、装置本体に対して移動不能に固定支持されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【公開番号】特開2012−45777(P2012−45777A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188555(P2010−188555)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】