説明

液体吐出装置

【課題】ヘッドにより吐出される液体の濃度を均一にして印刷画質を安定させる。
【解決手段】本発明に係る液体吐出装置は、液体を収容する第一液体収容部と、前記第一液体収容部と異なる第二液体収容部と、前記第一液体収容部と前記第二液体収容部とを連通させる流路と、前記第一液体収容部から前記第二液体収容部へ前記流路を介して液体を送り出し、該液体を前記第二液体収容部から前記第一液体収容部へ前記流路を介して送り戻す液体供給部と、前記第一液体収容部から流出した液体を媒体に吐出するヘッド部と、を備え、前記第一液体収容部及び前記第二液体収容部の少なくとも1つが可撓性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例として、紙やフィルム等の各種媒体にインク等の液体を吐出して、画像の印刷を行うインクジェットプリンターが知られている。このインクジェットプリンターは、液体を収容する収容部と、液体を媒体に吐出するヘッド部と、を備えている。そして、液体の吐出によりヘッド部内の液体量が減少すると、収容部から液体が補給される(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−246908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このインクジェットプリンターでは、使用されない状態が長時間継続すると、収容部に収容される液体が沈降する場合がある。そして、液体が沈降すると、収容部内の上側と下側とで濃度差が生じてしまう。その結果、このような沈降後の液体を用いて画像を印刷すると、その画質が安定しないものとなってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヘッド部により吐出される液体の濃度をなるべく均一にして、印刷画質の安定性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための主たる発明は、
液体を収容する第一液体収容部と、
前記第一液体収容部と異なる第二液体収容部と、
前記第一液体収容部と前記第二液体収容部とを連通させる流路と、
前記第一液体収容部から前記第二液体収容部へ前記流路を介して液体を送り出し、該液体を前記第二液体収容部から前記第一液体収容部へ前記流路を介して送り戻す液体供給部と、
前記第一液体収容部から流出した液体を媒体に吐出するヘッド部と、
を備え、前記第一液体収容部及び前記第二液体収容部の少なくとも1つが可撓性を有することを特徴とする液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンター1の構成を示す概略図である。
【図2】プリンター1の構成を示すブロック図である。
【図3】インク補給ユニット35の構成例を説明する図である。
【図4】インクを攪拌するための動作例を説明する図であって、サブインクタンクSTから予備インクタンクSSTへのインクの送り出しを開始した状態を示す図である。
【図5】インクを攪拌するための動作例を説明する図であって、予備インクタンクSSTからサブインクタンクSTへのインクの送り戻しを開始した状態を示す図である。
【図6】インクを攪拌するための動作例を説明する図であって、攪拌後のサブインクタンクSTの状態を示す図である。
【図7】図7Aは、予備インクタンクSSTの構成を示す概略側面図であり、予備インクタンクSST内にインクが充填される前の状態を示す図である。図7Bは、予備インクタンクSSTの構成を示す概略側面図であり、予備インクタンクSST内にインクが充填された後の状態を示す図である。
【図8】図8Aは、予備インクタンクSSTの構成を示す概略正面図であり、予備インクタンクSST内へのインクの流入が開始される前の状態を示す図である。図8Bは、予備インクタンクSSTの構成を示す概略正面図であり、予備インクタンクSST内へのインクの流入が開始された後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
即ち、液体を収容する第一液体収容部と、
前記第一液体収容部と異なる第二液体収容部と、
前記第一液体収容部と前記第二液体収容部とを連通させる流路と、
前記第一液体収容部から前記第二液体収容部へ前記流路を介して液体を送り出し、該液体を前記第二液体収容部から前記第一液体収容部へ前記流路を介して送り戻す液体供給部と、
前記第一液体収容部から流出した液体を媒体に吐出するヘッド部と、
を備え、前記第一液体収容部及び前記第二液体収容部の少なくとも1つが可撓性を有することを特徴とする液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、ヘッド部によって吐出される液体の濃度をなるべく均一にして、印刷画質の安定性を向上させることができる。
【0011】
また、かかる液体吐出装置であって、
前記第二液体収容部は、可撓性を有し、鉛直方向下側の部位に少なくとも3つの開口部を備えており、
前記流路は、前記開口部のそれぞれに対応して設けられており、
前記液体供給部は、少なくとも3つの前記開口部のうちの最も離れた2つの前記開口部に対応して設けられた前記流路を介して、前記第一液体収容部から前記第二液体収容部へ液体を送り出すこととしてもよい。
このような液体吐出装置によれば、液体の濃度均一化をさらに向上させることができる。
【0012】
以下の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンター1(以下、「プリンター1」という)を例に挙げて説明する。
【0013】
===実施の形態===
<<<プリンター1の構成例について>>>
プリンター1の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、プリンター1の概略断面図である。図2は、プリンター1のブロック図である。
【0014】
なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1において紙面に直交する方向を示すものとする。
【0015】
また、本実施の形態においては、プリンター1が画像を記録する媒体として、ロール状に巻かれた用紙やフィルム(以下、「ロール紙(連続紙)」という)を用いて説明する。
【0016】
さらに、本実施の形態においては、プリンター1がロール紙に画像を記録するために使用する液体の一例としてインク(例えば、顔料インク)を用いて説明する。顔料インクは、色素となる顔料粒子を溶媒内に分散させたものである。この顔料インクは、長時間放置することにより顔料粒子が沈降する場合がある。
【0017】
本実施の形態に係るプリンター1は、図1及び図2に示すように、搬送部の一例としての搬送ユニット20と、及び、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路に沿って、給送ユニット10と、媒体支持部の一例としてのプラテン29と、巻き取りユニット90と、を有し、さらに、搬送経路上の印刷領域Rにおいて印刷を行うためのヘッドユニット30と、インクを補給するためのインク補給ユニット35と、ヘッド移動部の一例としてのキャリッジユニット40と、熱供給部の一例としてのヒーターユニット70と、プラテン29上のロール紙2に風を送る送風ユニット80と、これらのユニット等を制御しプリンター1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、を有している。
【0018】
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持される巻軸18と、巻軸18から繰り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、を有している。
【0019】
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(プラテン29から見て搬送方向上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、第一搬送ローラー23から見て右方(プラテン29から見て搬送方向下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
【0020】
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
【0021】
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23aと、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロール紙2を上方に引き上げ、プラテン29に対向する印刷領域Rへ搬送するローラーである。第一搬送ローラー23は、印刷領域R上のロール紙2の部位に対して画像印刷がなされている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙2の搬送量(ロール紙の部位の長さ)が調整される。
【0022】
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。このロール紙2の弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合には、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20はロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛ませたロール紙2の部位検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力が適切な大きさに調整される。
【0023】
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24aと、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット30により画像が記録された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
【0024】
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて巻き取りユニット90に送り出すようになっている。
【0025】
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット20により、印刷領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される。
【0026】
ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の印刷領域Rに(プラテン29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、インクを吐出するためのものである。このヘッドユニット30は、ヘッド31を有している。
【0027】
ヘッド31は、その下面に、列方向に並んだノズル列を有している。本実施形態においては、ホワイト(W)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)等の色ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯Nからなるノズル列を有している。各ノズル列の各ノズル♯1〜♯Nは、ロール紙2の搬送方向に交差する交差方向(列方向)に直線状に配列されている。各ノズル列は、当該搬送方向に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。
【0028】
各ノズル♯1〜♯Nには、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯Nから吐出される。
【0029】
インク補給ユニット35は、ヘッド31によるインクの吐出に起因してヘッドユニット30内のインクの量が減った際に、ヘッドユニット30にインクを補給するためのものであり、インクの色ごとに複数設けられている。インク補給ユニット35は、インク供給チューブを介してヘッドユニット30(ヘッド31)に接続されている。このため、ヘッド31は、プラテン29上に位置するロール紙2の部位に対してインク補給ユニット35から供給されたインクを吐出することにより、画像印刷を行うことができる。なお、インク補給ユニット35については、追って詳述する。
【0030】
キャリッジユニット40は、ヘッドユニット30(ヘッド31)を移動させるためのものである。このキャリッジユニット40は、左右方向に延びるガイドレール41と(図1に二点鎖線で示す)、ガイドレール41に沿って左右方向(移動方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ42と、不図示のモーターとを有する。本実施形態におけるキャリッジ42は、4つのサブキャリッジを有しており、このサブキャリッジごとに複数のヘッド31が設けられている。
【0031】
キャリッジ42は、不図示のモーターの駆動により、ヘッド31と一体となって移動するよう構成されている。キャリッジ42(ヘッド31又は各ノズル列)のガイドレール41における位置(左右方向の位置)は、コントローラー60が不図示のモーターに設けられたエンコーダーから出力されるパルス信号における立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出してこのエッジをカウントすることにより、求めることができる。
【0032】
そして、キャリッジ42は、画像印刷後にヘッド31のクリーニングを行う際、ヘッド31と一体となってガイドレール41に沿って搬送方向の上流側(プラテン29から見て搬送方向上流側)へ移動し、クリーニングを行うホームポジションHPで停止する(図1参照)。
【0033】
ホームポジションHPには、不図示のクリーニングユニットが設けられている。このクリーニングユニットは、キャップと、吸引ポンプ等とを有している。キャリッジ42がホームポジションHPに位置すると、ヘッド31の下面(ノズル面)に不図示のキャップが密着するようになっている。このようにキャップが密着した状態で吸引ポンプ(不図示)が作動すると、ヘッド31内のインクが、増粘したインクや紙粉と共に吸引される。このようにして、目詰まりしたノズルが不吐出状態から回復することによってヘッドのクリーニングが完了する。
【0034】
プラテン29は、搬送経路上の印刷領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するとともに、該部位を加熱するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路上の印刷領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。そして、プラテン29は、ヒーターユニット70が発生させた熱の供給を受けることにより、ロール紙2の該部位を加熱することができる。
【0035】
ヒーターユニット70は、ロール紙2を加熱するためのものであり、不図示のヒーターを有している。このヒーターは、ニクロム線を有しており、当該ニクロム線をプラテン29内部に、プラテン29の支持面から一定距離となるように配置させて構成されている。このため、ヒーターは、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、プラテン29の支持面上に位置するロール紙2の部位に熱を伝導させることができる。このヒーターは、プラテン29の全域にニクロム線を内蔵させて構成されているため、プラテン29上のロール紙2の部位に対して熱を均一に伝導することができる。本実施の形態において、プラテン上のロール紙2の部位の温度が45℃となるように、該ロール紙2の部位を均一に加熱する。これにより、該ロール紙2の部位に着弾されたインクを乾燥させることができる。
【0036】
送風ユニット80は、送風機の一例としてのファン81と、ファン81を回転させるモーター(不図示)とを備えている。ファン81は、回転することにより、プラテン29上のロール紙2に風を送り、ロール紙2に着弾されたインクを乾燥させるためのものである。このファン81は、図1に示すように、本体部に設けられた開閉可能なカバー(不図示)に複数設けられている。そして、この各々のファン81は、カバーが閉じた際に、プラテン29の上方に位置して、当該プラテン29の支持面(当該プラテン29上のロール紙2)と対向するようになっている。
【0037】
巻き取りユニット90は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像印刷済みのロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット90は、送り出しローラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するための中継ローラー91と、回転可能に支持され中継ローラー91から送られたロール紙2を巻き取る巻き取り駆動軸92と、を有している。
【0038】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー60は、図2に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61は、外部装置であるホストコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
【0039】
検出器群50は、プリンター1内の状況を監視するものであり、例えば、搬送ローラーに取り付けられて媒体の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送される媒体の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の移動方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダーなどがある。
【0040】
<<<インク補給ユニット35について>>>
ここでは、インク補給ユニット35の構成例について、図3を用いて説明する。図3は、インク補給ユニット35の構成例を示す図である。
【0041】
インク補給ユニット35は、ヘッドユニット30にインクを供給するためのものであり、インクの色ごとに複数設けられている。すなわち、各インク補給ユニット35は、対応するヘッド31に異なる色のインクを補給するものである。なお、以下においては、各インク補給ユニット35は同様の構成からなるため、ホワイトインク(W)を供給するインク補給ユニット35を例に挙げて説明する。ホワイトインクは、白色の酸化チタン(二酸化チタン)を顔料とする水性インクであって、透明媒体に印刷を行う際に、カラー画像の背景色(白色)を印刷するために用いるインクである。
【0042】
インク補給ユニット35は、インクカートリッジICと、第一液体収容部の一例としてのサブインクタンクSTと、第二液体収容部の一例としての予備インクタンクSSTと、インクカートリッジICから流出したインクをサブインクタンクST又は予備インクタンクSSTへ流すための第一インク供給チューブ34と、サブインクタンクSTとヘッドユニット30とを連通させる第一流路の一例としての第二インク供給チューブ36と、第二インク供給チューブ36と予備インクタンクSSTとを連通させる第二流路の一例としての第三インク供給チューブ37と、液体供給部の一例としての供給ポンプPと、を有している。
【0043】
<インクカートリッジIC>
インクカートリッジICは、ヘッドユニット30に供給するためのインクを収容するものである。このインクカートリッジICは、図3に示すように、第一インク供給チューブ34が接続され鉛直方向下側の部位に設けられた流出口ICoを有している。そして、インクカートリッジICは、プリンター本体に対して着脱可能に構成されている。
【0044】
<サブインクタンクST>
サブインクタンクSTは、インクカートリッジICからヘッドユニット30へ供給されるインクを一時的に収容するものである。
【0045】
このサブインクタンクSTは、図3に示すように、第一インク供給チューブ34が接続され鉛直方向上側の部位に設けられた流入口STiと、第二インク供給チューブ36がそれぞれ接続され鉛直方向下側の部位に設けられた複数の開口部SToと、を有している。
【0046】
本実施形態に係るサブインクタンクSTは、図3に示すように、4つの開口部STo1〜STo4を鉛直方向下側の部位に有しており、この4つの開口部STo1〜STo4は、水平方向に並んだ状態で配置されている。そして、この開口部STo1〜STo4は、対応する第二インク供給チューブ361〜364がそれぞれ接続されている。
【0047】
また、サブインクタンクSTはプリンター内部に固定されている。すなわち、サブインクタンクSTは、インクカートリッジICとは異なり、プリンター本体に対して着脱することができない構成となっている。
【0048】
ここで、サブインクタンクSTに収容されるインクを長時間放置することによりインクの沈降が生じる場合がある。このような沈降により、図3に示すように、サブインクタンクST内において鉛直方向の上側と下側とで濃度差が生じてしまう。特に、インクがホワイトインクのような顔料インクの場合には、その沈降による濃度差が顕著に現れる。そして、このような沈降後のインクを用いて画像を印刷すると、時間の経過に伴って、当初の画像と異なる濃度の画像へと次第に変化することになるため、印刷画質の低下を招くことになってしまう。
【0049】
これに対し、本実施形態においては、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間でインクを往復移動させることによって、サブインクタンクST内で沈降したインクを攪拌し、インク濃度の均一化を向上させている。この点については、追って詳細する。
【0050】
なお、サブインクタンクSTに収容されるインクが沈降するならば、インクカートリッジICに収容されるインクも当然に沈降することになる。しかし、インクカートリッジICはプリンター本体に対して着脱可能に構成されているため、ユーザーが、インクカートリッジICを本体から取り外し、上下に振ることによって、このインクの沈降を解消することができる。
【0051】
<予備インクタンクSST>
予備インクタンクSSTは、サブインクタンクSTへ送り戻すために、サブインクタンクSTから送り出されたインクを一時的に収容するものである。この予備インクタンクSSTは、図3に示すように、第一インク供給チューブ34が接続され鉛直方向上側の部位に設けられた流入口SSTiと、第三インク供給チューブ37がそれぞれ接続され鉛直方向下側の部位に設けられた複数の開口部SSToと、を有している。
【0052】
また、予備インクタンクSSTは、可撓性を有しているため、収容されるインク量に応じて撓むことが可能である。すなわち、予備インクタンクSSTは、インクが内部に充填されるに従って膨張し、インクが外部へ放出されるに従って収縮する等、ある程度の剛性を保ちつつも柔軟に変形することができる。本実施形態に係る予備インクタンクSSTは、透明色のポリエチレン系樹脂によって袋状に形成されている。なお、ポリエチレン系樹脂に限らず、可撓性を有する他の樹脂、シリコン、又はアルミ等の金属を用いて袋状に形成してもよい。
【0053】
本実施形態に係る予備インクタンクSSTは、図3に示すように、4つの開口部SSTo1〜SSTo4を鉛直方向下側の部位に有しており、この4つの開口部SSTo1〜SSTo4は、水平方向に並んだ状態で配置されている。そして、この開口部SSTo1〜SSTo4は、対応する第三インク供給チューブ371〜374がそれぞれ接続されている。
【0054】
ここで、上述したように、サブインクタンクSTに収容されるインクは、長時間経過後に沈降するため、図3に示すように、サブインクタンクST内において鉛直方向の上側と下側とで濃度差が生じてしまう。かかる場合、サブインクタンクSTに収容されたインクは、供給ポンプPによって予備インクタンクSST側へ順次送り出される。この予備インクタンクSSTは、サブインクタンクSTから送り出された当該インクを開口部SSToから次々と流入させて一時的に収容することができる。そして、サブインクタンクSTに収容されたインクの移動がすべて完了すると、予備インクタンクSST内に収容されたインクは、沈降が生じる前に、供給ポンプPによって再びサブインクタンクSTへ送り戻される。
【0055】
このように、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間で往復移動させることによって沈降したインクを攪拌し、インク濃度の均一化を向上させることが可能となる。なお、インクを攪拌するための動作例については、後に具体的に説明する。
【0056】
<第一インク供給チューブ34>
第一インク供給チューブ34は、インクカートリッジICからサブインクタンクST又は予備インクタンクSSTへインクを流すための流路を形成するものであり、その流路上に供給ポンプP0及びバルブ34Vが設けられている。
【0057】
本実施形態においては、図3に示すように、インクカートリッジICの流出口ICoとサブインクタンクSTの流入口STiとを繋ぐ第一インク供給チューブ341と、インクカートリッジICの流出口ICoと予備インクタンクSSTの流入口SSTiとを繋ぐ第一インク供給チューブ342とが設けられている。
【0058】
バルブ34Vは、第一インク供給チューブ34の流路を開放又は閉鎖するための開閉弁であり、インクカートリッジICの交換時や、サブインクタンクST又は予備インクタンクSSTへのインク供給時等に、コントローラー60からの制御信号に応答して開閉動作を行う。
【0059】
本実施形態においては、第一インク供給チューブ341の流路上にバルブ341Vが設けられ、第一インク供給チューブ342の流路上にバルブ342Vが設けられている。
【0060】
なお、バルブ341V、342Vは逆止弁となっているため、サブインクタンクST又は予備インクタンクSSTからインクカートリッジICへインクが逆流することはない。
【0061】
供給ポンプP0は、コントローラー60からの制御信号に応答して圧縮した空気を供給することより、インクカートリッジIC内のインクを吸引してサブインクタンクST又は予備インクタンクSST内へ送り込むものである。
【0062】
<第二インク供給チューブ36>
第二インク供給チューブ36は、図3に示すように、サブインクタンクSTからヘッドユニット30へインクを流すための流路を形成するものである。そして、この流路上には、上流側のバルブ36Vuと下流側のバルブ36Vdが設けられている。
【0063】
本実施形態においては、図3に示すように、ホワイトインクを流すための流路として4本の第二インク供給チューブ361〜364が設けられており、対応する開口部STo1〜STo4にそれぞれ接続されている。そして、各第二インク供給チューブ36を用いることによって、サブインクタンクSTとヘッドユニット30とを互いに連通させることが可能となる。このように4本の第二インク供給チューブ361〜364を設けたのは、本実施形態におけるキャリッジ42が4つのサブキャリッジを有しており、この各サブキャリッジに複数のヘッド31が設けられていることから、各サブキャリッジに供給チューブを対応させることによってヘッド31それぞれにホワイトインクを供給するためである。
【0064】
バルブ36Vu、Vdは、第二インク供給チューブ36の流路を開放又は閉鎖するための開閉弁であり、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間でインクを移動させるとき等に、コントローラー60からの制御信号に基づき開閉動作を行う。
【0065】
本実施形態においては、図3に示すように、複数の第二インク供給チューブ361〜364のそれぞれに対応させて、上流側のバルブ361Vu〜364Vu及び下流側のバルブ361Vd〜364Vdが設けられている。
【0066】
<第三インク供給チューブ37>
第三インク供給チューブ37は、図3に示すように、予備インクタンクSSTと第一インク供給チューブ36とを連通させるための流路を形成するものである。そして、この流路上には、バルブ37V及び液体供給部の一例としての供給ポンプPが設けられている。
【0067】
本実施形態においては、図3に示すように、ホワイトインクを流すための流路として4本の第三インク供給チューブ371〜374が設けられ、対応する開口部SSTo1〜SSTo4にそれぞれ接続されている。そして、各第三インク供給チューブ37を用いることによって、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとを互いに連通させることが可能となる。
【0068】
バルブ37Vは、第三インク供給チューブ37の流路を開放又は閉鎖するための開閉弁であり、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間でインクを移動させるとき等に、コントローラー60からの制御信号に基づき開閉動作を行う。
【0069】
本実施形態においては、図3に示すように、複数の第三インク供給チューブ371〜374のそれぞれに対応させてバルブ371V〜374Vが設けられている。
【0070】
<供給ポンプP>
供給ポンプPは、圧縮した空気を供給することより、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間でインクを送流させるものである。すなわち、供給ポンプPは、コントローラー60からの制御信号に応答して圧縮した空気を供給することより、サブインクタンクST内のインクを吸引して予備インクタンクSST内へ送り出し、予備インクタンクSST内の当該インクを吸引してサブインクタンクSTへ送り戻すことができる。
【0071】
本実施形態においては、図3に示すように、サブインクタンクST内のインクを吸引して予備インクタンクSST内へ送り出す供給ポンプP1と、予備インクタンクSST内のインクを吸引してサブインクタンクSTへ送り戻す供給ポンプP2が設けられている。供給ポンプP1は、第二インク供給チューブ361と第三インク供給チューブ371とを繋いで形成された流路、及び、第二インク供給チューブ364と第三インク供給チューブ374とを繋いで形成された流路上に設けられている。供給ポンプP2は、第二インク供給チューブ362と第三インク供給チューブ372とを繋いで形成された流路、及び、第二インク供給チューブ363と第三インク供給チューブ373とを繋いで形成された流路上に設けられている。すなわち、第二インク供給チューブ361と第三インク供給チューブ371とを繋いで形成された流路、及び、第二インク供給チューブ364と第三インク供給チューブ374とを繋いで形成された流路は、サブインクタンクSTから予備インクタンクSSTへインクを送り出すための送り出し専用流路を形成することになる。一方で、第二インク供給チューブ362と第三インク供給チューブ372とを繋いで形成された流路、及び、第二インク供給チューブ363と第三インク供給チューブ373とを繋いで形成された流路は、予備インクタンクSSTからサブインクタンクSTへインクを送り戻すための送り戻し専用流路を形成することになる。
【0072】
<<<プリンター1の動作例について>>>
次に、プリンター1のインク補給に関する動作例について説明する。
なお、プリンター1の各種動作は、主としてコントローラー60により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリー63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0073】
<インクカートリッジICからサブインクタンクSTへのインク供給>
まず、インクカートリッジICからサブインクタンクSTへインクを供給するための動作例について説明する。
【0074】
サブインクタンクST内のインク残量が少なくなると、センサー(不図示)がこれを検出する。コントローラー60は、このセンサーからの検出信号に基づいて、インクカートリッジIC内のインクをサブインクタンクSTへ補給するための制御を行う。
【0075】
先ず、コントローラー60は、各バルブの開閉動作を制御して、バルブ342V、36Vu、37Vを閉じた状態にさせると共に、バルブ341Vを開いた状態にさせる。これにより、第一インク供給チューブ342、複数の第二インク供給チューブ36及び複数の第三インク供給チューブ37の流路は遮断され、第一インク供給チューブ341の流路は開放されることになる。
【0076】
次いで、コントローラー60は、供給ポンプP0を駆動させることにより、インクカートリッジIC内のインクを吸引してサブインクタンクSTへ送り出す。これにより、インクカートリッジICから流出したインクは、第一インク供給チューブ341を流れて行き、サブインクタンクST内に収容されることになる。
【0077】
このようにしてサブインクタンクSTに収容されたインクが使用されない状態のままで長時間が経過すると、インクの沈降が発生してしまう。
【0078】
このような沈降に対し、本実施形態においては、サブインクタンクSTに収容されたインクの濃度均一化を向上させるために、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間でインクを往復移動させることによって、沈降したインクを攪拌するようにしている。以下、この攪拌動作について説明する。
【0079】
<攪拌動作について>
次に、サブインクタンクST内で沈降したインクを攪拌するための動作例について、図3乃至図6を用いて説明する。図4は、サブインクタンクSTから予備インクタンクSSTへのインクの送り出しを開始した状態を示している。図5は、予備インクタンクSSTからサブインクタンクSTへのインクの送り戻しを開始した状態を示している。図6は、攪拌後のサブインクタンクSTの状態を示している。
【0080】
コントローラー60は、図3に示すように、各バルブの開閉動作を制御して、バルブ341V、342V及びバルブ361Vd〜364Vdを閉じた状態にさせると共に、バルブ361Vu〜364Vu、371V〜374Vを開いた状態にさせる。これにより、第一インク供給チューブ341、342の流路、及び、第二インク供給チューブ361〜364のうちのサブインクタンクSTからヘッドユニット30へ向う下流側の流路は遮断され、第二インク供給チューブ361〜364のうちのサブインクタンクSTから予備インクタンクSSTへ向う上流側の流路、及び、第三インク供給チューブ371〜374の流路は開放されることになる。
【0081】
次いで、コントローラー60は、図4に示すように、供給ポンプP1のみを駆動させることによりサブインクタンクST内のインクを予備インクタンクSSTへ向けて順次送り出す。すなわち、供給ポンプP1には第二インク供給チューブ361、364及び第三インク供給チューブ371、374が接続されているため、サブインクタンクSTの両端に位置する開口部STo1、STo4から流出したインクは、第二インク供給チューブ361、364を経由して各第三インク供給チューブ371、374へそれぞれ流れて行き、予備インクタンクSSTの両端に位置する開口部SSTo1、SSTo4を介して予備インクタンクSST内に次々と流入することになる。
【0082】
ここで、サブインクタンクSTから流出したインクが予備インクタンクSSTに流入する様子について、図7及び図8を用いて具体的に説明する。図7は、予備インクタンクSSTの構成を示す概略側面図である。この図7では、予備インクタンクSST内にインクが充填される前の状態を図7Aに示し、予備インクタンクSST内にインクが充填された後の状態を図7Bに示している。図8は、予備インクタンクSSTの構成を示す概略正面図である。この図8では、予備インクタンクSST内へのインクの流入が開始される前の状態を図8Aに示し、予備インクタンクSST内へのインクの流入が開始された後の状態を図8Bに示している。
【0083】
上述したように、予備インクタンクSSTは、可撓性を有するため、インクが充填されていない状態(図7A)からインクが充填されている状態(図7B)へ変形することができるようになっている。
【0084】
2つの開口部STo1、STo4からサブインクタンクSTの外部へ流出したインクが、2つの開口部SSTo1、SSTo4から予備インクタンクSST内部に流入する前においては、予備インクタンクSSTは供給ポンプPで吸引されることによりインクが充填されていない状態となっている。すなわち、図7Aに示すように、予備インクタンクSSTは、インクが充填されていない状態においては、タンクの内壁が互いに近接することでS字状の断面を有する形状になっている。そして、予備インクタンクSSTがこのようにS字状に折れ曲がった形状になると、表面にシワが発生すると共に(図8A参照)、インクを流動させることができる狭い隙間が内部に発生する(図7A参照)。
【0085】
そして、供給ポンプP1の駆動によって、サブインクタンクSTの2つの開口部STo1、STo4それぞれから流出したインクが、予備インクタンクSSTの2つの開口部SSTo1、SSTo4から内部に流入すると、図7Aに示すように、タンクの内部に形成された狭い隙間に流れ込んで行き、図8Bに示すように、毛管現象により鉛直方向下側から上側へ向ってインクが移動することになる。その後、毛管現象によって上昇したインクは、自重により鉛直方向上側から下側へ散乱しながら移動することとなる。
【0086】
仮に、予備インクタンクSSTが可撓性を有しない剛体である場合には、S字状に折り曲がって変形することがなく、内部に流入したインクが狭い隙間を通って上昇する毛管現象が生じないため、タンク内の底部から徐々にインクが溜まって行くことになる。これに対して、本実施形態に係る予備インクタンクSSTは、可撓性を有することにより、タンクの内部に流入したインクが毛管現象によっていったん上昇してから下降するようになるため、より積極的に混ざり合うようになり、インク濃度の均一化をさらに向上させることができるようになる。
【0087】
特に、本実施形態に係る予備インクタンクSSTにおいては、4つの開口部SSTo1〜SSTo4のうちの最も離れた2つの開口部SSTo1、SSTo4からインクを流入させている。これは、仮に、隣り合う2つの開口部SSTo(例えば、開口部SSTo1と開口部SSTo2)からインクを流入させた場合、各開口部SSToから流入したインクはすぐに合流してタンク内の隙間を大きく広げることとなり、僅かな時間だけ毛管現象が生じることになる。これに対して、最も離れた2つの開口部SSTo1、SSTo4を選択した場合には、各開口部SSToから流入したインクが合流するまで時間を要するため、タンク内の左右両端において各々独立した毛管現象をしばらく維持させることができるようになり、より積極的にインクを混ぜ合わせることが可能となる。
【0088】
その後、サブインクタンクST内のインクがすべてなくなると、センサー(不図示)がこれを検出する。このとき、図5に示すように、サブインクタンクSTから送り出されたインクは、多少混ざり合った状態で予備インクタンクSST内に収容されることになる。
【0089】
コントローラー60は、このセンサー(不図示)からの検出信号に基づいて、予備インクタンクSST内のインクをサブインクタンクSTへ直ちに送り戻すために、供給ポンプP1の駆動を停止させて供給ポンプP2の駆動を開始させる。
【0090】
引き続きコントローラー60は、図5に示すように、供給ポンプP2のみを駆動させることにより予備インクタンクSST内のインクを吸引してサブインクタンクSTへ向けて順次送り戻す。この結果、中央の開口部SSToから流出したインクは、各第三インク供給チューブ372、373を経由して各第二インク供給チューブ362、363へそれぞれ流れて行き、サブインクタンクST内に次々と収容されることになる。そして、コントローラー60は、予備インクタンクSST内のインクがなくなるまで(不図示のセンサーが検知するまで)、供給ポンプP2を駆動させる。
【0091】
このように、コントローラー60が供給ポンプP1、P2を駆動させてサブインクタンクST内及び予備インクタンクSST内の圧力差を調整する制御を行うことで、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間をインクが往復移動する。そして、このような往復移動によって、サブインクタンクST内で沈降していたインクが攪拌されることになり、インク濃度の均一化を向上させることが可能となる。
【0092】
コントローラー60は、図6に示すように、各バルブの開閉動作を制御して、バルブ371V〜374Vを閉じた状態にさせると共に、バルブ361Vu〜364Vu、361Vd〜364Vdを開いた状態にさせる。この結果、攪拌された後のインク(濃度均一化後のインク)は、サブインクタンクSTの各開口部SToから流出して各第二インク供給チューブ36を流れて行き、ヘッドユニット30(ヘッド31)に供給されることになる。
【0093】
なお、本実施形態においては、上述したように、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間の往復移動を1回のみ行う動作例を挙げて説明したが、2回以上の往復移動を行ってもよい。往復移動を繰り返すほど、さらにインク濃度の均一化を向上させることが可能となる。
【0094】
<<<本実施の形態に係るプリンター1の有効性について>>>
上述したとおり、本実施形態に係るプリンター1は、インクを収容するサブインクタンクSTと、サブインクタンクSTと異なる予備インクタンクSSTと、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとを連通させるインク供給チューブ36、37の流路と、サブインクタンクSTから予備インクタンクSSTへ前記流路を介してインクを送り出し、該インクを予備インクタンクSSTからサブインクタンクSTへ前記流路を介して送り戻す供給ポンプPと、サブインクタンクSTから流出したインクをロール紙に吐出するヘッドユニット30と、を備え、サブインクタンクST及び予備インクタンクSSTの少なくとも1つが可撓性を有している。そして、このことにより、サブインクタンクSTと予備インクタンクSSTとの間を往復移動させることにより、沈降したインクが混じり合うことで、インク濃度の均一化を向上させることができる。すなわち、サブインクタンクST及び予備インクタンクSSTの少なくとも1つが可撓性を有しているため、タンク内にインクが充填されていない場合には、タンクの内壁が互いに接近してS字状の断面を形成するように変形する。これにより、シワが発生すると共に、タンク内に細長く狭い隙間部分が形成される。その結果、この隙間を通ってインクが上昇する毛管現象が発生するため、タンク内に流入したインクは鉛直方向上側へ上昇し、その後、鉛直方向下側へ自重により下降するようになる。このため、沈降したインクが散乱しながら混じり合うことで、インク濃度の均一化をさらに向上させることができる。また、インクの沈降が生じた場合、インクカートリッジICにあっては、プリンター本体に対して着脱可能に構成されているため、ユーザーがインクカートリッジICを本体から取り外して上下に振ることによって、インクの沈降を解消することができる。一方で、サブインクタンクSTは、プリンター本体から着脱することができない構成となっているため、かかるメンテナンス作業を行うことができない。したがって、サブインクタンクSTにおいてインクの沈降が生じた場合には、本実施形態に係る発明は有効なものとなる。
【0095】
また、予備インクタンクSSTは、可撓性を有し、鉛直方向下側の部位に少なくとも3つの開口部SSTo1〜SSTo4を備えており、前記流路は、開口部SSToのそれぞれに対応して設けられており、供給ポンプPは、少なくとも3つの開口部SSTo1〜SSTo4のうちの最も離れた2つの開口部SSTo1、SSTo4に対応して設けられた前記流路を介して、サブインクタンクSTから予備インクタンクSSTへインクを送り出すようにした。このため、各開口部SSTo1、SSTo4から流入したインクに対し各々独立して生じた毛管現象をしばらく維持させることができるようになるため、より積極的にインクを混ぜ合わせることでインク濃度の均一化をさらに向上させることが可能となる。
【0096】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として液体吐出装置について記載されているが、液体移送方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0097】
<液体吐出装置>
上記の実施形態においては、液体吐出装置としてインクジェット式プリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、インク以外の他の液体を吐出する液体吐出装置であってもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体吐出装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体吐出装置が吐出させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体吐出装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を吐出する液体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【0098】
<可撓性について>
上記の実施形態においては、可撓性を有する予備インクタンクSSTを備えたプリンター1を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、可撓性を有するサブインクタンクSTを備えるようにしてもよい。すなわち、サブインクタンクST及び予備インクタンクSSTの少なくとも1つが可撓性を有していればよい。
【0099】
<攪拌動作について>
上記の実施形態においては、ヘッドユニット30よる印刷動作が停止している際に、インク補給ユニット35による攪拌動作が開始される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0100】
たとえば、電源投入後に印刷動作を開始する前に攪拌動作を開始するようにしてもよい。
また、電源オフの状態が継続している期間をカウントするタイマーを設け、所定期間が経過する度に攪拌動作を開始するようにしてもよい。
具体的には、コンピューター60は、タイマーからの計時情報(電源オフの期間)を取得するとともに、予め設定した期間情報(例えば、2ヶ月)をメモリー63から読み出し、これら情報を比較する。そして、コンピューター60は、電源オフの期間が予め設定した所定期間(2ヶ月)以上であるか判定し、所定期間以上である場合には、攪拌動作のための処理を実行する。
このようにすることで、サブインクタンクST内でインク沈降が生じた場合でも、適切なタイミングでインク濃度の均一化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0101】
1 液体吐出装置、2 ロール紙、
10 給送ユニット、18 巻軸、
19 中継ローラー、20 搬送ユニット、
21 中継ローラー、22 中継ローラー、
23 第一搬送ローラー、24 第二搬送ローラー、
25 反転ローラー、26 中継ローラー、
27 送り出しローラー、29 プラテン、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
34 第一インク供給チューブ、34V バルブ、
35 インク補給ユニット、
36 第二インク供給チューブ、36V バルブ、
37 第三インク供給チューブ、37V バルブ、
40 キャリッジユニット、41 ガイドレール、
42 キャリッジ、50 検出器群、
60 コントローラー、70 ヒーターユニット、
80 送風ユニット、81 ファン、
90 巻き取りユニット、91 中継ローラー、
92 巻き取り駆動軸、110 ホストコンピューター、
IC インクカートリッジ、ST サブインクタンク、
STo 開口部、SST 予備インクタンク、
SSTo 開口部、P 供給ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する第一液体収容部と、
前記第一液体収容部と異なる第二液体収容部と、
前記第一液体収容部と前記第二液体収容部とを連通させる流路と、
前記第一液体収容部から前記第二液体収容部へ前記流路を介して液体を送り出し、該液体を前記第二液体収容部から前記第一液体収容部へ前記流路を介して送り戻す液体供給部と、
前記第一液体収容部から流出した液体を媒体に吐出するヘッド部と、
を備え、前記第一液体収容部及び前記第二液体収容部の少なくとも1つが可撓性を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記第二液体収容部は、
可撓性を有し、鉛直方向下側の部位に少なくとも3つの開口部を備えており、
前記流路は、
前記開口部のそれぞれに対応して設けられており、
前記液体供給部は、
少なくとも3つの前記開口部のうちの最も離れた2つの前記開口部に対応して設けられた前記流路を介して、前記第一液体収容部から前記第二液体収容部へ液体を送り出すことを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−59954(P2013−59954A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200959(P2011−200959)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】