説明

液体吐出装置

【課題】液体受け部材に液体が固着していても容易に除去清掃することができ、吐出面と対向する吐出空間が乾燥することを抑制することが可能な液体吐出装置を提供すること
【解決手段】制御部は、粘度情報取得部により取得された粘度情報が所定の粘度値以上と判断したとき(A3:YES)に、液体受け面清掃動作として、吐出面と液体受け面との位置関係が第1位置関係となるよう液体受け部材移動機構を制御する(A4)。そして、制御部は、加湿空気が吐出空間内に所定時間供給されるよう加湿空気供給機構を制御し(A9)、その後、液体受け面に付着した液体の除去清掃が行われるようにワイパユニットを制御する(A12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置において、液体を吐出しない期間中は、液体吐出ヘッドの吐出口が開口する吐出面に対して対向する吐出空間を外部空間から隔離することによって、吐出口内の液体が乾燥するのを防止する技術が知られている。
【0003】
上記のような液体吐出装置として、例えば、特許文献1には、インクジェットヘッドのノズル面を密閉するヘッドキャップの底部を摺擦し、残存するインクを払拭して排出口に導くワイプユニットを備えるインクジェット記録装置が開示されている。この技術は、キャップ内のインク受け部(液体受け部材)に残存するインクを除去するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−101594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体受け部材に付着した液体の水分量は、時間が経過するに伴って乾燥により低下する。このような水分量が低下した液体が液体受け部材に残存している状態で、吐出空間を外部空間から隔離(封止)した場合、当該残存している液体成分が乾燥材として機能して吐出空間内を乾燥させてしまい、その結果として、吐出口内の液体が乾燥する問題が生じる。そこで、液体受け部材に付着した液体を定期的に除去清掃する必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、インク受け部に吐出面と当接するキャップ部があるためインク受け部の形状を簡易にできず、吐出空間内部に液体が残らないように除去清掃するのは困難である。また、ワイプブレイドのみで液体の清掃除去を行っているので、液体受け部材に付着した液体が、その水分量の低下により当該液体受け部材に固着した場合などは、液体受け部材から液体を除去清掃することが困難となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、液体受け部材に液体が固着していても容易に除去清掃することができ、吐出面と対向する吐出空間が乾燥することを抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するための吐出口が開口した吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出口から吐出された液体を受ける液体受け面を有する液体受け部材と、前記液体吐出ヘッドの周囲に配設され、前記液体受け面とともに前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間に対して封止する環状部材と、前記液体吐出ヘッド、及び前記液体受け部材の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記環状部材が前記液体受け部材に当接すること、及びこれらがその前記吐出空間を外部空間に対して封止することが可能となる第1位置関係と、前記第1位置関係より前記液体受け面と前記吐出面が離隔した第2位置関係とをなし得るように前記吐出面と前記液体受け面との位置関係を調整可能な位置関係調整手段と、前記吐出空間に連通する空気導入口と、加湿空気を前記空気導入口から前記吐出空間内に供給する加湿空気供給手段と、前記液体受け面に付着した液体の除去清掃を行う清掃手段と、前記液体受け面に付着した液体の粘度情報を取得する粘度情報取得手段と、前記位置関係調整手段、前記加湿空気供給手段及び前記清掃手段を制御する制御手段とを備えた液体吐出装置であって、前記制御手段は、前記粘度情報取得手段により求められた液体の粘度情報が所定値以上と判断したときに、液体受け面清掃動作として、前記吐出面と前記液体受け面との位置関係を前記第1位置関係とするよう前記位置関係調整手段を制御してから、加湿空気が前記吐出空間内に所定時間供給されるよう前記加湿空気供給手段を制御し、その後、前記液体受け面に付着した液体の除去清掃が行われるように前記清掃手段を制御することを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、液体受け部材に付着した液体の粘度が所定値以上の場合には、吐出空間内に加湿空気が供給されるため、液体受け部材に付着した液体の粘度を下げることができる。これにより、液体受け部材に液体が固着していても、清掃手段により容易に除去清掃することができる。その結果、液体受け部材に固着している液体成分が乾燥材として機能して吐出空間内を乾燥させてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、液体受け部材に液体が固着していても容易に除去清掃することができ、吐出面と対向する吐出空間が乾燥することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】プラテン、及び液体受け部材の動作を説明するための動作状況図である。
【図3】(a)は液体受け面清掃動作における加湿時のワイパユニット、及び液体受け部材の動作状況図であり、(b)はヘッドワイプ時のワイパユニット、及び液体受け部材の動作状況図であり、(c)は液体受け面ワイプ時のワイパユニット、及び液体受け部材の動作状況図であり、(d)は液体受け面ワイプのインクの払拭特性を表すグラフである。
【図4】図1のプリンタの液体吐出ヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図5】(a)は図4の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図であり、(b)は図5(a)のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図6】加湿空気供給機構を説明するための説明図である。
【図7】図6の一点鎖線で囲まれた領域VIを示す部分断面図である。
【図8】図1に示す制御部の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示す制御部の液体受け面清掃動作に関する動作フロー図である。
【図10】加湿空気供給機構の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施の形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
先ず、図1を参照し、インクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0014】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部35が設けられている。筐体1aにより画定される空間には、後述の給紙ユニット1cから排紙部35に向けて、図1に示す太矢印に沿って、記録媒体である用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0015】
筐体1aは、ヘッド(液体吐出ヘッド)10、用紙Pを搬送する搬送ユニット30、画像記録時にヘッド10の吐出面10aと対向する対向位置(図2(a)参照)において用紙Pを支持するプラテン40、用紙Pをガイドするガイドユニット25、ヘッド10に供給するブラックインクを貯留するカートリッジ(図示せず)、ヘッド昇降機構50(図8参照)、ワイパユニット55(図3参照)、ヘッド10から吐出されたインクを受ける液体受け部材8、環状部材61、加湿空気供給機構80(図6参照)、液体受け部材移動機構96(図8参照)、及び、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部100等を収容している。なお、カートリッジは、ヘッド10にチューブ(不図示)及びポンプ54(図8参照)を介して接続されている。
【0016】
ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。ヘッド10の下面は、インクを吐出するための多数の吐出口108(図5参照)が開口した吐出面10aである。画像記録に際して、吐出口108からブラックのインクが吐出される。
【0017】
ヘッド10は、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aとプラテン40の上面との間に記録に適した所定の間隙が形成されるようヘッド10を保持している。ヘッドホルダ3、及びヘッド10のより具体的な構成については後に詳述する。
【0018】
搬送ユニット30は、用紙搬送方向に関するプラテン40の両側に配置された搬送ニップローラ31、32等を有する。搬送ニップローラ31、32は、用紙Pを上下方向に挟持するように対向配置された一対のローラ部材をそれぞれ有しており、挟持した用紙Pが搬送方向に搬送されるように用紙Pに搬送力を付与する。用紙搬送方向上流側に配置された搬送ニップローラ31によって搬送力を付与された用紙Pは、プラテン40の上面に支持されつつ用紙搬送方向に搬送される。プラテン40の上面を通過した用紙Pは、搬送ニップローラ32によって搬送力を付与され、プラテン40からさらに用紙搬送方向下流側へと搬送される。
【0019】
プラテン40は、一対の扉部材41,42からなり、平面視で吐出面10aを挟み且つ吐出面10aに平行で主走査方向に延びた一対の回転軸40aに開閉可能に支持されている。プラテン40は、プラテンモータ43(図8参照)による回転軸40aを中心とする回転によって、水平面に平行であり吐出面10aと対向する対向位置(図2(a)参照)、及び吐出面10aと対向しないで垂れ下がる非対向位置(図2(b),(c)参照)とを選択的に取り得る。プラテン40は、メンテナンス時は非対向位置を取り、画像記録時は対向位置を取る。プラテン40が対向位置に配置されたときには、吐出面10aとプラテン40との間隔は、吐出面10aと液体受け部材8との間隔よりも小さい間隔となる。また、対向位置に配置されたときにおいて、プラテン40における吐出面10aに対して対向する上面は、用紙Pを支持する支持面であり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。例えば支持面に、弱粘着性のシリコン層を形成したり、副走査方向に沿ったリブを多数形成したりすることで、支持面上に載置された用紙Pの浮き等が防止される。また、プラテン40は、樹脂により構成されている。
【0020】
ガイドユニット25は、搬送ユニット30を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、3つのガイド26a,26b,26c及び二対の送りローラ27を有する。当該上流側ガイド部は、給紙ユニット1cと搬送ユニット30とを繋ぐ。下流側ガイド部は、3つのガイド28a,28b,28c及び三対の送りローラ29を有する。当該下流側ガイド部は、搬送ユニット30と排紙部35とを繋ぐ。
【0021】
給紙ユニット1cは、給紙トレイ(収容部)23及び給紙ローラ24を有する。このうち給紙トレイ23が筐体1aに対して副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、用紙Pを収容可能である。給紙ローラ24は、制御部100の制御により回転し、給紙トレイ23の最も上方にある用紙Pを送り出す。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット30による用紙Pの搬送方向に平行な方向(図1における水平方向)であり、主走査方向とは、図1中の水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0022】
制御部100は、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る。制御部100は、外部装置(プリンタ1と接続されたPC等)から供給された記録指令に基づいた、画像記録を行う。具体的には、制御部100は、用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作等を制御する。制御部100の搬送動作によって給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、ガイド26a,26b,26cによりガイドされ、且つ送りローラ対27によって挟持されつつ搬送ユニット30へと送られる。搬送ユニット30は、用紙Pをヘッド10とプラテン40との間に送り出す。搬送ユニット30によりヘッド10とプラテン40との間へ送られた用紙Pは、ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出口108からインクが吐出されて用紙P上にモノクロ画像が形成される。吐出口108からのインク吐出動作は、用紙センサ37からの検出信号に基づき、制御部100による制御の下で行われる。用紙Pは、その後ガイド28a,28b,28cによりガイドされ且つ送りローラ対29によって挟持されつつ上方に搬送され、筐体1a上部に形成された開口38から排紙部35へと排出される。
【0023】
また、制御部100は、ヘッド10のインク吐出特性の維持・回復のためのメンテナンスを行う。メンテナンスとしては、通常加湿処理動作、排出処理動作、ワイピング処理動作、及び、液体受け面清掃動作等が含まれる。通常加湿処理動作は、外部空間S2に対して封止された吐出空間S1内に加湿空気を供給する動作である。ここで、吐出空間S1とは、吐出面10aと対向する空間であり、環状部材61の後述の先端61aと液体受け部材8とが当接された際に、環状部材61、液体受け部材8及び吐出面10aにより画成される空間である。また、通常加湿処理動作は、例えば、プリンタ1の停止時や休止時に行われる。
【0024】
排出処理動作は、フラッシング(画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10のアクチュエータを駆動することにより一部〜全吐出口108からインクを吐出することで強制的に排出させる動作)、及びパージ(ポンプ54(図8参照)によりヘッド10内のインクに圧力を付与することにより全吐出口108からインクを強制的に排出させる動作)を含む。
【0025】
ワイピング処理動作は、ワイパユニット55により、吐出面10aに付着したインクの除去清掃を行うヘッドワイプ、及び液体受け部材8の液体受け面8aに付着したインクの除去清掃を行う液体受け面ワイプを含む。このワイピング処理動作は、例えば、排出処理動作後に行われる。
【0026】
液体受け面清掃動作は、加湿空気を吐出空間S1内に所定時間供給した後に、液体受け面ワイプを行う動作である。液体受け面清掃動作は、図10に示すように吐出空間S1を外部空間に対して封止して加湿空気を吐出空間S1内に供給する第1液体受け面清掃動作と、図6に示すように吐出空間S1を外部空間に対して封止せずに加湿空気を吐出空間S1内に供給する第2液体受け面清掃動作とを含む。
【0027】
ここで、液体受け面8aに付着しているインクの粘度に対する液体受け面ワイプによるインクの払拭特性(以下、払拭特性)は、図3(d)に示すように、変曲点を持つ上に凸の曲線となる。従って、この変曲点よりも粘度が高いインクが液体受け面8aに多量に付着している場合には、液体受け面ワイプ後においても、液体受け面8aに多量のインクが残存することがある。そこで、本実施形態においては、液体受け面8aに所定量以上のインクが付着しており、且つそのインクの粘度が第1粘度値以上の場合には、第1液体受け面清掃動作を行う。
【0028】
また、液体受け面8aにインクが少量しか付着していない場合でも、インクが液体受け面8aに対して固着していると、液体受け面ワイプを行ったとしてもインクを容易に除去清掃することができない。そこで、本実施形態においては、液体受け面8aに上記所定量未満のインクが付着している場合でも、そのインクの粘度が第2粘度値以上の場合には、第2液体受け面清掃動作を行う。ここで、第2粘度値は、図3(d)に示すように上記第1粘度値よりも高い値である。
【0029】
ワイパユニット(清掃手段)55は、図3に示すように、吐出面ワイパ56a、液体受け面ワイパ56b、これらを支持する基部56c、及び、ワイパ移動機構57を有している。吐出面ワイパ56aは、板状の弾性部材(例えば、ゴム)であり、吐出面10aの副走査方向幅より若干長い。同様に、液体受け面ワイパ56bは、板状の弾性部材であり、液体受け面8aの副走査方向幅より若干長い。基部56cは、副走査方向を長手方向とする直方体であって、長手方向両端に円柱状の孔が形成されている。孔は、基部56cを主走査方向に貫通し、一方の孔の内面には雌ねじが形成されている。ワイパ移動機構57は、副走査方向に並んだ2つのガイド58と、2つのガイド58の一方に回転力を付与するワイパ駆動モータ59(図8参照)とから構成される。ガイド58は、ヘッド10よりも用紙搬送方向上流側において主走査方向に沿って延設された丸棒であり、ワイパ駆動モータ59により回転力を付与されるガイド58の外周面には雄ネジが形成され、ねじ同士が螺合する関係で基部56cの孔に貫挿されている。他方のガイド58については外周面には雄ネジが形成されていない丸棒であり、内面には雌ねじが形成されていない基部56cの孔に貫挿されている。
【0030】
ワイパ駆動モータ59の正逆回転によって、基部56cがガイド58に沿って往復移動する。外周面に雄ネジが形成されていない他方のガイド58により基部56c回転止めが図られている。図3(a)に示すように、ヘッド10の主走査方向の左側端部近傍は、基部56cの待機位置である。ヘッドワイプ時、及び液体受け面ワイプ時には、図中右方方向に、基部56cが移動する。これにより、ヘッドワイプ時においては、吐出面ワイパ56aが吐出面10aに接触しつつ、吐出面10aに対して平行移動し、吐出面10aに付着したインクが吐出面ワイパ56aにより払拭されて除去清掃される。また液体受け面ワイプ時においては、液体受け面ワイパ56bが液体受け面8aに接触しつつ、液体受け面8aに対して平行移動し、液体受け面8aに付着したインクが液体受け面ワイパ56bにより払拭されて除去清掃される。
【0031】
ヘッド昇降機構50は、ヘッドホルダ3を鉛直方向に昇降させることで、ヘッド10を記録位置、ヘッドワイプ位置、及び液体受け面ワイプ位置に選択的に移動させる。記録位置では、図1に示すように、ヘッド10がプラテン40と記録に適した間隔で対向する。ヘッドワイプ位置は、図3(b)に示すように、記録位置よりも上方の位置であり、ヘッドワイプ時にヘッド10が配置される位置である。また、液体受け面ワイプ位置は、図3(c)に示すように、ヘッドワイプ位置よりも上方の位置であり、液体受け面ワイプ時にヘッド10が配置される位置である。
【0032】
ヘッド10がヘッドワイプ位置に配置されているときには、図3(b)に示すように、吐出面10aは吐出面ワイパ56aの上端位置よりも若干下方に位置される。また、ヘッド10が液体受け面ワイプ位置に配置されているときには、図3(c)に示すように、吐出面10aは吐出面ワイパ56aの上端位置よりも上方に位置される。
【0033】
液体受け部材8は、平面視において、環状部材61よりも一回り大きい矩形平面形状を有するガラス板からなる。液体受け部材8の上面は、排出処理動作時に吐出口108から吐出されたインクを受ける液体受け面8aである。なお、液体受け部材8は、ガラス以外の材質から構成されていてもよく、特に限定するものではない。また、筐体1aには、この液体受け面8aに付着したインク量を検出可能な光学式の液体量検出センサ90(図8参照)が設けられている。
【0034】
液体受け部材移動機構(位置関係調整手段)96は、制御部100による制御の下、液体受け部材8を昇降させることで、吐出面10aと液体受け面8aとの位置関係を調整する。本実施形態においては、液体受け部材移動機構96は、液体受け部材8を、当接位置、初期位置、第1液体受け部材位置、及び第2液体受け部材位置に選択的に移動させる。
【0035】
ここで、当接位置とは、図2(b)及び図3(a)に示すように、液体受け面8aが吐出面10aと対向し、且つヘッド10が記録位置に配置されている際において、環状部材61の可動体63を下降させると、当該環状部材61の先端61aと液体受け面8aとが当接されて、吐出空間S1を外部空間S2に対して封止する位置である。なお、液体受け部材8が当接位置に配置されたとき、記録位置に配置されているヘッド10の吐出面10aと液体受け面8aとの位置関係は第1位置関係となる。また、フラッシングは、液体受け部材8がこの当接位置に配置されているときに行われる。
【0036】
初期位置とは、図2(a)に示すように、液体受け面8aが当接位置よりも吐出面10aから離隔した位置である。液体受け部材8が初期位置に配置されたとき、記録位置に配置されているヘッド10の吐出面10aと液体受け面8aとの位置関係は第2位置関係となる。また、画像記録は、液体受け部材8が初期位置に配置されているときに行われる。
【0037】
第1液体受け部材位置、及び第2液体受け部材位置それぞれは、図2(c)に示すように、当接位置と初期位置との間の位置である。液体受け部材8が第1液体受け部材位置に配置されたとき、液体受け面8aは、ワイパユニット55の液体受け面ワイパ56bの下端位置よりも若干下方の位置となる。ヘッドワイプ、及びパージは液体受け部材8がこの第1液体受け部材位置に配置されているときに行われる。
【0038】
また、液体受け部材8が第2液体受け部材位置に配置されたとき、液体受け面8aは、ワイパユニット55の液体受け面ワイパ56bの下端位置よりも若干上方の位置となる。対向面ワイプは液体受け部材8がこの第2液体受け部材位置に配置されているときに行われる。
【0039】
次に、図4、及び図5を参照しつつ、ヘッド10について詳細に説明する。図5(a)では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。ヘッド10は、図4に示すように、流路ユニット9の上面に8つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。流路ユニット9の下面が、吐出面10aである。流路ユニット9の内部にはインク流路が形成され、アクチュエータユニット21はこの流路内のインクに吐出エネルギーを付与する。
【0040】
流路ユニット9は、図5(b)に示すように、ステンレス製の9枚の金属プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の上面には、図4に示すように、リザーバユニットに連通する計18個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、図4、及び図5に示すように、インク供給口105bを一端とするマニホールド流路105、及び、マニホールド流路105から分岐した複数の副マニホールド流路105aが形成されている。さらに、各副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る複数の個別インク流路132が形成されている。吐出面10aに形成された多数の吐出口108は、マトリクス状に配置されており、主走査方向(一方向)に関してこの方向の解像度である600dpiの間隔で配列されている。
【0041】
図4、及び図5に示すように、リザーバユニットからインク供給口105bに供給されたインクは、マニホールド流路105(副マニホールド流路105a)に流入する。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に分配され、アパーチャ112及び圧力室110を経て吐出口108に至る。
【0042】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図4に示すように、8つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は副走査方向に沿って重なっている。
【0043】
次に、図4、図6及び図7を参照し、ヘッドホルダ3及び環状部材61の構成について説明する。ヘッドホルダ3は、金属等からなる枠状フレームであり、ヘッド10の側面を全周に亘って支持している。ヘッド10の周囲には、環状部材61が配設されている。環状部材61はヘッドホルダ3に取り付けられており、平面視でヘッド10の外周を取り囲む。また、ヘッドホルダ3には、一対のジョイント81が取り付けられている。ここで、ヘッドホルダ3とヘッド10との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ3と環状部材61との当接部は、全周に亘って接着剤で固定されている。
【0044】
一対のジョイント81は、加湿空気供給機構80の循環流路の一端及び他端をそれぞれ構成するものである。一対のジョイント81は、図6に示すように、空気導入口81aを持つ右側ジョイント81と空気排出口81bを持つ左側ジョイント81とから構成され、ヘッド10を主走査方向に挟んで配置されている。
【0045】
各ジョイント81は、略円筒状であり、基端81x、及び、基端81xから延出した先端81yを含む。基端81xから先端81yに亘って、鉛直方向に沿った円柱状の中空空間81zが貫通している。基端81x及び先端81yの外径は異なり、基端81xの方が先端81yより外径が大きいが、中空空間81zは鉛直方向に沿って一定の径を有する。
【0046】
ヘッドホルダ3には、平面視円形の貫通孔3aが形成されており、ジョイント81は、先端81yが貫通孔3aに貫挿された状態で、ヘッドホルダ3に固定されている。先端81yは、貫通孔3aよりも一回り小さいが、両者間の隙間には封止剤等が充填されて、封止される。
【0047】
環状部材61は、平面視でヘッド10の外周を取り囲む矩形形状であり、主走査方向に長い。環状部材61は、ヘッドホルダ3に支持された弾性体62、昇降可能な可動体63、可動体63に接続された複数のギア64を含む。
【0048】
弾性体62は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド10を囲んでいる。弾性体62は、図7に示すように、基部62x、基部62xの下面から突出した突出部62a、ヘッドホルダ3に固定された固定部62c、及び、基部62xと固定部62cとを接続する接続部62dを含む。このうち、突出部62aは、断面が三角形である。また、固定部62cは断面がT字状である。固定部62cの上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ3に固定されている。固定部62cはまた、ヘッドホルダ3と各ジョイント81の基端81xとで挟持されている。接続部62dは、固定部62cの下端から湾曲しつつ外側(平面視で吐出面10aから離隔する方向)に延び、基部62xの下側側面に接続している。接続部62dは、可動体63の昇降に伴って変形する。基部62xの上面には、凹部62bが形成されており、可動体63の下端と嵌合している。
【0049】
可動体63は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視でヘッド10の外周を取り囲んでいる。可動体63は、弾性体62に支持されて、ヘッドホルダ3に対して鉛直方向に相対移動可能である。可動体63は、複数のギア64と接続されている。ギア64は昇降モータ(環状部材移動手段)65(図8参照)により回転力が付与される
【0050】
制御部100による制御の下、昇降モータ65が回転されることによって、ギア64が回転して可動体63が昇降する。このとき、基部62xも、共に昇降する。これにより、環状部材61(突出部62a)の先端61aと吐出面10aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
【0051】
環状部材61は、可動体63の昇降により、その先端61aが、当接位置にある液体受け部材8の液体受け面8aに当接するキャップ位置(図7(a)参照)と、当接位置にある液体受け部材8の液体受け面8aから離隔した離隔位置(図7(b)、図10参照)と、キャップ位置と離隔位置との中間位置(図6参照)とを選択的にとる。キャップ位置では、環状部材61、吐出面10a、及び液体受け部材8により、吐出空間S1が外部空間S2に対して封止された封止状態となっている。また、離隔位置及び中間位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された開放状態となっている。
【0052】
次に、図6を参照し、加湿空気供給機構(加湿空気供給手段)80の構成について説明する。加湿空気供給機構80は、図6に示すように、一対のジョイント81、移送量が調整可能な第1加湿ポンプ82及び第2加湿ポンプ83、タンク84、並びにチューブ85〜89等を含む。
【0053】
タンク84は、下部空間に水(加湿液)を貯留し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。
【0054】
チューブ85の一端は左側のジョイント81の先端81yに嵌合し、他端は第1加湿ポンプ82に接続されている。チューブ86は第1加湿ポンプ82とタンク84の下部空間(水中)とを連通可能に接続している。チューブ87の一端は右側のジョイント81の先端81yに嵌合し、他端はタンク84の上部空間に接続されている。また、チューブ88は、第2加湿ポンプ83とタンク84の下部空間とを連通可能に接続している。またチューブ89は第2加湿ポンプ83と外部空間S2とを連通可能に接続している。
【0055】
なお、タンク84内の水がチューブ86及びチューブ88に流れ込まないよう、チューブ86及びチューブ88それぞれには図示しない逆止弁が取り付けられており、図6中白抜き矢印方向にのみ空気が流れるようになっている。
【0056】
この構成において、通常加湿処理動作が実行されると、制御部100による制御の下、昇降モータ65が駆動されて、環状部材61の先端61aがキャップ位置とされ、吐出空間S1が外部空間S2に対して封止される。さらに、制御部100による制御の下、第1加湿ポンプ82のみが駆動される。これにより、タンク84内の加湿空気が空気導入口81aから吐出空間S1内に供給され、当該吐出空間S1内を充満しつつ横切る。また、このとき、吐出空間S1の空気が空気排出口81bから回収されてタンク84に向かって流れる。このように通常加湿処理動作を行うことにより、ヘッド10の吐出口108近傍のインクが乾燥することを抑制することができる。また、吐出空間S1と加湿空気供給機構80との間で空気が循環される構成にされているので、比較的高い湿度の空気を再利用して加湿を行うことにより、加湿源(タンク84内の水など)の消費低減を図ることができる。
【0057】
また、上記の構成において、第1液体受け面清掃動作が実行されると、制御部100による制御の下、昇降モータ65が駆動されて、環状部材61の先端61aが、中間位置とされる。さらに、制御部100による制御の下、第1加湿ポンプ82及び第2加湿ポンプ83が所定時間駆動される。これにより、タンク84内の加湿空気が空気導入口81aから吐出空間S1内に供給される。吐出空間S1に供給された加湿空気は吐出空間S1に充満されるとともに、その一部は、環状部材61の先端61aと液体受け面8aとの隙間を通り外部空間S2に排出される。また、このとき、吐出空間S1の空気が空気排出口81bから回収されてタンク84に向かって流れるとともに、外部空間S2の空気がチューブ89から回収されてタンク84に向かって流れる。このように吐出空間S1内に加湿空気が供給されることで、液体受け面8aに付着したインクの粘度が低下される。この後、制御部100による制御の下、昇降モータ65が駆動されて、環状部材61の先端61aが離隔位置とされる。そして、ワイパ駆動モータ59が駆動されて、液体受け面ワイパ56bにより液体受け面8aに付着したインクが除去清掃される。
【0058】
このように第1液体受け面清掃動作を行うことにより、液体受け面8aにインクに多量にインクが付着していても、ワイパユニット55により確実に除去清掃することができる。なお、第1液体受け面清掃動作時における第1加湿ポンプ82及び第2加湿ポンプ83の所定時間当たりの空気の移送量の合計量は、通常加湿処理動作時の第1加湿ポンプ82の移送量よりも多くされている。これにより、通常加湿処理動作時よりも吐出空間S1内に供給される加湿空気の供給量が多くなるため、液体受け面8aに付着しているインクを効率良く低下させることができる。また、第1液体受け面清掃動作時における第1加湿ポンプ82の移送量は、通常加湿処理動作の移送量よりも少なくされている。これにより、空気排出口81bから回収される所定時間当たりの空気の量が少なくなるので、吐出空間S1に供給された加湿空気は、環状部材61の先端61aと液体受け面8aとの隙間から外部空間S2へ主に排出されることになる。その結果、液体受け面8a全体に亘って加湿空気を供給することができるので、液体受け面8aに付着しているインク全ての粘度を低下させることができる。
【0059】
また、上記の構成において、第2液体受け面清掃動作が実行されると、制御部100による制御の下、昇降モータ65が駆動されて、環状部材61の先端61aがキャップ位置とされ、吐出空間S1が外部空間S2に対して封止される。さらに、制御部100による制御の下、第1加湿ポンプ82のみが所定時間駆動される。これにより、タンク84内の加湿空気が空気導入口81aから吐出空間S1内に供給され、当該吐出空間S1内を充満しつつ横切る。また、このとき、吐出空間S1の空気が空気排出口81bから回収されてタンク84に向かって流れる。このように吐出空間S1内に加湿空気が供給されることで、液体受け面8aに付着したインクの粘度が低下される。この後、制御部100による制御の下、昇降モータ65が駆動されて、環状部材61の先端61aが離隔位置とさる。そして、ワイパ駆動モータ59が駆動されて、液体受け面ワイパ56bにより液体受け面8aに付着したインクが除去清掃される。このように第2液体受け面清掃動作を行うことにより、液体受け面8aにインクにインクが固着していても、ワイパユニット55により容易に除去清掃することができる。なお第2液体受け面清掃動作時における第1加湿ポンプの所定時間当たりの空気の移送量は、通常加湿処理動作時の第1加湿ポンプ82の移送量よりも多くされている。これにより、通常加湿処理動作時よりも吐出空間S1内に供給される加湿空気の供給量が多くなるため、液体受け面8aに付着しているインクを効率良く低下させることができる。
【0060】
次に、図8を参照しつつ、制御部100について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、不揮発性メモリとを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、制御部100は、搬送制御部141、画像データ記憶部142、ヘッド制御部143、メンテナンス制御部144、排出動作記憶部145、粘度情報取得部146、及び清掃要否判断部147を有している。
【0061】
搬送制御部141は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙ユニット1c、ガイドユニット25、及び、搬送ユニット30の各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの記録指令に含まれる画像データを記憶する。ヘッド制御部143は、画像記録時において、画像データ記憶部142に記憶された画像データ又は画像データを変換した印刷データに基づいて、搬送される用紙Pに向けてインクが吐出されるようヘッド10を制御する。
【0062】
メンテナンス制御部144は、排出処理動作、ワイピング処理動作、及び通常加湿処理動作のメンテナンスにおいて、ヘッド10、液体受け部材移動機構96、ヘッド昇降機構50、プラテンモータ43、ポンプ54、昇降モータ65、第1加湿ポンプ82、及び第2加湿ポンプ83を制御する。また、メンテナンス制御部144は、清掃要否判断部147が液体受け面清掃を行うと判断した際に、当該液体受け面清掃が行われるよう、液体受け部材移動機構96、ヘッド昇降機構50、プラテンモータ43、昇降モータ65、第1加湿ポンプ82、及び第2加湿ポンプ83を制御する。
【0063】
排出動作記憶部145は、メンテナンス制御部144により行われた排出処理動作の動作時刻を記憶する。なお、排出動作記憶部145は、不揮発性メモリであり、停電などの不測の事態が生じてプリンタ1に電力供給が停止した場合であっても、記録内容を保持可能である。
【0064】
粘度情報取得部146は、排出動作記憶部145に記憶されている排出処理動作の動作時刻に基づいて、液体受け部材8の液体受け面8aに付着したインクの粘度の予測値を算出して、当該予測値を粘度情報として取得する。具体的には、粘度情報取得部146は、液体受け部材8の液体受け面8aがインクを受けてからの経過時間と、インクの粘度との関係を定義する算出式を記憶している。そして、粘度情報取得部146は、この算出式を用いて、直近の液体受け面ワイプの後に最初に行われた排出処理動作の動作時刻からの経過時間に基づいて、液体受け部材8の液体受け面8aに付着したインクの粘度の予測値を算出する。なお、本実施形態においては、液体受け部材8の液体受け面8aがインクを受けてからの経過時間と、インクの粘度との関係は算出式により定義されているが、データテーブルにより定義されていてもよい。
【0065】
清掃要否判断部147は、液体受け面清掃動作を実行するか否かを判断する。具体的には、清掃要否判断部147は、粘度情報取得部146により取得されたインクの粘度情報が第1粘度値(図3(d)参照)以上、且つ液体量検出センサ90により検出された、液体受け面8aに付着したインクのインク量が所定量以上の場合に第1液体受け面清掃動作を行うと判断する。また、清掃要否判断部147は、粘度情報取得部146により算出されたインクの粘度が第2粘度値以上、且つ液体量検出センサ90により検出された、液体受け面8aに付着したインクのインク量が所定量未満の場合に第2液体受け面清掃動作を行うと判断する。
【0066】
次に、図9を参照し、液体受け面清掃動作に関する動作フローついて説明する。なお、この図9の動作フローの開始時における状態は、パージ中に停電等によりプリンタ1への電力供給が停止された状態である。即ち、液体受け部材8の液体受け面8aにインクが付着した状態で液体面ワイプが行われないまま放置されている状態である。また、液体受け部材8は第1液体受け部材位置に配置されており、ヘッド10は記録位置に配置されている。
【0067】
まず、プリンタ1の電源をオンにするためにユーザが電源スイッチ(不図示)を押すと、制御部100が電源スイッチから出力された電源オフ信号を受信する(A1)。すると、粘度情報取得部146は、排出動作記憶部145に記憶されている排出処理動作の動作時刻に基づいて、液体受け部材8の液体受け面8aに付着したインクの粘度情報を取得する(A2)。なお、上述したように排出動作記憶部145は不揮発性メモリであるため、プリンタ1に電力が供給される前の排出処理動作の動作時刻の記録内容を保持している。
【0068】
次に、清掃要否判断部147が、第1液体受け面清掃動作及び第2液体受け面清掃動作の何れかを実行するか否かを判断する(A3)。清掃要否判断部147が、第1液体受け面清掃動作及び第2液体受け面清掃動作の何れかを実行すると判断した場合(A3:YES)には、メンテナンス制御部144は、液体受け部材移動機構96を制御して、液体受け部材8を当接位置に移動させる(A4)。これにより、吐出面10aと液体受け面8aとの位置関係は第1位置関係となる。
【0069】
次に、清掃要否判断部147が第1液体受け面清掃動作を実行すると判断している場合(A5:YES)には、メンテナンス制御部144は、昇降モータ65を制御して環状部材61の先端61aを中間位置に移動させる(A6)。その後、メンテナンス制御部144は、第1加湿ポンプ82及び第2加湿ポンプ83を所定時間駆動する(A7)。ここで、環状部材61の先端61aは中間位置に配置されているので、離隔位置に配置されている場合と比べて液体受け面8aに付着したインクに対して加湿空気を効率良く供給することができ、その粘度を下げることができる。またさらには、液体受け面8aに付着しているインクが環状部材61に移動して付着することを抑制することができる。なお所定時間とは、液体受け面8aに付着しているインクの粘度が、図3(d)に示す払拭特性の変曲点に対応する粘度となるまでに要する時間である。このステップA7の処理が終了するとステップA10の処理に移る。
【0070】
一方、清掃要否判断部147が第2液体受け面清掃動作を実行すると判断している場合(A5:NO)には、メンテナンス制御部144は、昇降モータ65を制御して環状部材61の先端61aをキャップ位置に移動させる(A8)。その後、メンテナンス制御部144は、第1加湿ポンプ82のみ所定時間駆動する(A9)。ここで、環状部材61の先端61aはキャップ位置に配置されているので、第1加湿ポンプ82が所定時間駆動することで、液体受け面8aに付着したインクに対して加湿空気を効率良く供給することができ、その粘度を下げることができる。また、所定時間とは、上記の第1液体受け面清掃動作と同様、液体受け面8aに付着しているインクの粘度が、払拭特性の変曲点に対応する粘度となるまでに要する時間である。なお、この第2液体受け面清掃動作では、環状部材61の先端61aはキャップ位置に配置されているが、液体受け面8aに付着しているインク量は所定量未満であるため、環状部材61に多量のインクが付着することはない。このステップA9の処理が終了するとステップA10の処理に移る。
【0071】
ステップA10では、メンテナンス制御部144は、昇降モータ65を制御して環状部材61の先端61aを離隔位置に移動させる。その後、メンテナンス制御部144は、液体受け部材移動機構96を制御して、液体受け部材8を第2液体受け部材位置に移動させる(A11)。次に、メンテナンス制御部144は、液体受け面ワイプを行うべく、ワイパ駆動モータ59を制御して、基部56cを待機位置から右方に移動させることで、液体受け面ワイパ56bを液体受け面8aに接触させつつ、液体受け面8aに対して平行移動させる(A12)。これにより、液体受け面8aに付着したインクを除去清掃することができる。また、このとき、上記ステップA7又はA9の処理により、液体受け面8aに付着したインクの粘度は、払拭特性の変曲点に対応する粘度まで低下されているため、液体受け面ワイプを行うことにより、液体受け面8aに付着したインクを確実、且つ容易に除去清掃することができる。これにより、液体受け部材8に付着しているインク成分が乾燥材として機能して吐出空間S1内を乾燥させてしまうことを抑制することができる。
【0072】
一方、ステップA3において、清掃要否判断部147が、第1液体受け面清掃動作及び第2液体受け面清掃動作の何れも実行しないと判断した場合(A3:NO)には、メンテナンス制御部144は、液体受け部材移動機構96を制御して、液体受け部材8を第2液体受け部材位置に移動させる(A11)。次に、メンテナンス制御部144は、液体受け面ワイプを行うべく、ワイパ駆動モータ59を制御して、基部56cを待機位置から右方に移動させることで、液体受け面ワイパ56bを液体受け面8aに接触させつつ、液体受け面8aに対して平行移動させる(A12)。これにより、液体受け面8aに付着したインクを除去清掃することができる。なお、このとき、液体受け面8aに付着しているインクの粘度が第2所定値未満、又は、液体受け面8aに付着しているインクの粘度が第1所定値未満若しくは液体受け面8aに付着しているインク量が所定量未満であるため、液体受け面ワイプを行うことにより、液体受け面8aに付着したインクを容易に除去清掃することができる。以上、液体受け面清掃動作に関する動作フローついて説明した。
【0073】
以上、本実施形態のプリンタ1によると、液体受け面8aに付着したインクの粘度が第1粘度値以上、且つ液体受け面8aに付着したインクのインク量が所定量以上の場合、及び液体受け面8aに付着したインクの粘度が第2粘度値以上、且つ液体受け面8aに付着したインクのインク量が所定量未満の場合に、吐出空間S1内に加湿空気が供給されるため、液体受け面8aに付着したインクの粘度を下げることができる。これにより、液体受け部材8にインクが固着していても、ワイパユニット55により容易に除去清掃することができる。その結果、液体受け部材8に固着しているインク成分が乾燥材として機能して吐出空間S1内を乾燥させてしまうことを抑制することができる。
【0074】
本実施形態の変形例として、加湿空気供給手段は、図10に示すようにヒータ181を備えた加湿空気供給機構180であってもよい。ヒータ181は、メンテナンス制御部144の制御の下、タンク84の下部を加熱する。これにより、タンク84内において湿度の高い加湿空気が生成されるので、吐出空間S1に湿度の高い加湿空気を供給することができる。この場合、メンテナンス制御部144は、液体受け面清掃動作を行う際には通常加湿処理動作を行う際よりも、タンク84に対する加熱温度が高くなるようにヒータ181を制御することが好ましい。これにより、液体受け面清掃動作には湿度が高い加湿空気が吐出空間S1に供給されるため、液体受け面8aに付着したインクを効率良く下げることができる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、液体受け面清掃動作時には液体受け面ワイプのみ行うようにされているが、ヘッドワイプも行うようにされていてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態においては、液体受け部材8を昇降させることで、液体受け面8aと吐出面10aとの位置関係を調整する構成されていたが、ヘッド10を昇降させることで液体受け面8aと吐出面10aとの位置関係を調整してもよいし、液体受け部材8及びヘッド10の両方を昇降することで液体受け面8aと吐出面10aとの位置関係を調整してもよい。また、上述の実施形態では、液体受け面8aは常に吐出面10aと対向する(画像記録時においては、プラテン40を挟んで吐出面10aと対向する)ように構成されていたが、液体受け面8aは初期位置に配置されるときにおいては吐出面10aと対向していなくてもよい。
【0077】
また、上述の実施形態においては、制御部100による制御の下、昇降モータ65が駆動されることにより、環状部材61(突出部62a)の先端61aと吐出面10aとの相対位置が、鉛直方向に変化するように構成されているが、環状部材の先端の吐出面に対する相対位置が一定であってもよい。この場合、吐出面10aと液体受け面8aとの位置関係が第1位置関係となったときに、環状部材の先端が液体受け部材に当接されるように構成されていればよい。
【0078】
また、上述の実施形態においては、液体量検出手段は、光学式の液体量検出センサ90であったが、液体受け面8aに付着したインク量を検出することができるものであるならば、これに特に限定されるものではなく、例えば、液体量検出手段は、排出処理動作時において吐出口108から吐出されるインクの吐出量を検出する手段であり、当該吐出量を液体受け面8aに付着したインク量とするものであってもよい。この場合においては、排出処理動作時のインクの吐出量は不揮発性メモリに記憶することが好ましい。
【0079】
また、上述の実施形態においては、清掃手段はワイパユニット55であったが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、液体受け面8aに付着したインクを吸引除去する吸引装置であってもよい。
【0080】
また、上述の実施形態においては、粘度情報取得部146は、液体受け面8aがインクを受けてからの経過時間のみを用いてインクの粘度を算出していたが、筐体1a内に温度センサや湿度センサを設けて、当該経過時間と筐体1a内の環境温度や環境湿度に基づいてインクの粘度を算出してもよい。この場合、液体受け面8aに付着したインクの粘度をより正確に算出することができる。また、上述の実施形態においては、粘度情報取得部146が取得する粘度情報は、液体受け面8aに付着したインクの粘度の予測値であるが、液体受け面8aに付着したインクの粘度を粘度計により検出した実測値であってもよい。
【0081】
また、空気導入口、及び空気排出口は、吐出空間S1に連通する限り、形状や位置は特に限定されない。例えば、空気導入口が吐出面10aに形成され、空気排出口がヘッドホルダ3のジョイント81に形成されていてもてよい。
【0082】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
8 液体受け部材
8a 液体受け面
10 ヘッド(液体吐出ヘッド)
10a 吐出面
55 ワイパユニット(清掃手段)
61 環状部材
80 加湿空気供給機構(加湿空気供給手段)
96 液体受け部材移動機構(位置関係調整手段)
81a 空気導入口
144 メンテナンス制御部(制御手段)
146 粘度情報取得部(粘度情報取得手段)
S1 吐出空間
S2 外部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための吐出口が開口した吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出口から吐出された液体を受ける液体受け面を有する液体受け部材と、
前記液体吐出ヘッドの周囲に配設され、前記液体受け面とともに前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間に対して封止する環状部材と、
前記液体吐出ヘッド、及び前記液体受け部材の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記環状部材が前記液体受け部材に当接すること、及びこれらがその前記吐出空間を外部空間に対して封止することが可能となる第1位置関係と、前記第1位置関係より前記液体受け面と前記吐出面が離隔した第2位置関係とをなし得るように前記吐出面と前記液体受け面との位置関係を調整可能な位置関係調整手段と、
前記吐出空間に連通する空気導入口と、
加湿空気を前記空気導入口から前記吐出空間内に供給する加湿空気供給手段と、
前記液体受け面に付着した液体の除去清掃を行う清掃手段と、
前記液体受け面に付着した液体の粘度情報を取得する粘度情報取得手段と、
前記位置関係調整手段、前記加湿空気供給手段及び前記清掃手段を制御する制御手段と
を備えた液体吐出装置であって、
前記制御手段は、前記粘度情報取得手段により求められた液体の粘度情報が所定値以上と判断したときに、液体受け面清掃動作として、
前記吐出面と前記液体受け面との位置関係を前記第1位置関係とするよう前記位置関係調整手段を制御してから、加湿空気が前記吐出空間内に所定時間供給されるよう前記加湿空気供給手段を制御し、その後、前記液体受け面に付着した液体の除去清掃が行われるように前記清掃手段を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記吐出面と前記液体受け面との位置関係が前記第1位置関係であるときに、前記環状部材が前記液体受け部材に当接する位置と前記液体受け部材から離隔する位置との間において前記環状部材を移動させる環状部材移動手段を更に備えており、
前記制御手段は、前記液体受け面清掃動作において、
前記環状部材と前記液体受け部材との間隔が所定の間隔となるように前記環状部材移動手段を制御し、その後、加湿空気が前記吐出空間内に所定時間供給されるよう前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出面と前記液体受け面との位置関係が前記第1位置関係であるときに、前記環状部材が前記液体受け部材に当接する位置と前記液体受け部材から離隔する位置との間において前記環状部材を移動させる環状部材移動手段を更に備えており、
前記制御手段は、前記液体受け面清掃動作において、
前記環状部材と前記液体受け面とが当接されるように前記環状部材移動手段を制御し、その後、加湿空気が前記吐出空間内に所定時間供給されるよう前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記液体受け面清掃動作以外の動作であって、前記外部空間から封止された前記吐出空間に対して加湿空気を供給する通常加湿処理動作を実行可能にされており、
前記制御手段は、前記液体受け面清掃動作を行う際には、前記通常加湿処理動作を行う際よりも、前記吐出空間に供給する加湿空気の供給量が多くなるように、又は前記吐出空間に供給する加湿空気の湿度が高くなるように前記加湿空気供給手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記吐出空間に連通する領域に開口した空気排出口を更に備えており、
前記加湿空気供給手段は、前記空気排出口から空気を回収するとともに、回収した空気を加湿して、その加湿空気を前記空気導入口から前記吐出空間内に供給可能に構成されており、
前記制御手段が、前記液体受け面清掃動作を行う際には、前記通常加湿処理動作を行う際よりも、前記空気排出口から回収する所定時間当たりの空気の回収量を少なくすることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体受け面に付着した液体の液体量を検出する液体量検出手段を更に備えており、
前記制御手段は、前記液体量検出手段により検出された液体の液体量が所定量以上である場合に、前記液体受け面清掃動作を実行することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記粘度情報取得手段は、前記液体受け面が前記吐出口から吐出された液体を受けてから所定時間以上経過したときに、前記液体受け部材に付着した液体の粘度情報が前記所定値以上であるとすることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−95020(P2013−95020A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238628(P2011−238628)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】