説明

液体噴射ヘッドの製造方法、圧電素子の製造方法及び液体噴射装置

【課題】面内特性の均一性に優れ、且つ、圧電体層に生じるクラックの発生率を低減させ
ることができる液体噴射ヘッドの製造方法、圧電素子の製造方法及びこれらの製造方法に
よって製造された液体噴射ヘッド又は圧電素子を備えた液体噴射装置を提供する。
【解決手段】流路形成基板用ウェハ110の一方面側に下電極膜60を形成する工程と、
相対湿度が30〜50%Rhの範囲内に選択された状態で、下電極膜60上に、鉛を含む
圧電材料を塗布した後、所定の熱処理を行って圧電体前駆体膜71を形成する工程と、圧
電体前駆体膜71を焼成して下電極膜60上に圧電体膜72を形成する工程と、圧電体膜
72上に上電極膜80を形成する工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドの製造方法、圧電素子の製造方法及びこれらの製造方法によ
って製造された液体噴射ヘッド又は圧電素子を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッド等に用いられる圧電素子は、電気機械変換機能を呈する圧電材料からな
る誘電体膜を2つの電極で挟んだ素子であり、誘電体膜は、例えば、結晶化した圧電性セ
ラミックスにより構成されている。
【0003】
このような圧電素子の製造方法としては、基板(流路形成基板)の一方面側に下電極膜
をスパッタリング法等により形成した後、下電極膜上に圧電体層をゾル−ゲル法又はMO
D法等により形成すると共に、圧電体層上に上電極膜をスパッタリング法により形成し、
圧電体層及び上電極膜をパターニングすることで圧電素子を形成している(例えば、特許
文献1及び2参照)。
【0004】
圧電体層を製造するゾル−ゲル法では、一般的に、金属アルコキシド等有機金属化合物
をアルコールに溶解し、これに加水分解制御剤等を加えて得た溶液を下電極膜が形成され
た基板上に塗布した後、加熱により部分加水分解、脱アルコール重合、脱水重合の反応を
連続的に進行させることにより、金属元素−酸素−金属元素の三次元ネットワークが形成
され、ゾルはやがて流動性を失ってゲル化し、圧電体の前駆体膜を形成する。この工程を
少なくとも一回以上は実施し、その後、高温で熱処理して結晶化させる。そして、これら
の工程を複数回繰り返し実施することで所定厚さの圧電体層(圧電体薄膜)を製造してい
る。一方、MOD法では、下電極膜を形成した基板上に有機金属化合物の溶液を塗布して
乾燥及び脱脂させて圧電体の前駆体膜を形成する工程を少なくとも一回以上実施し、その
後、高温で熱処理して結晶化させる。そして、これらの工程を複数回繰り返し実施するこ
とで所定厚さの圧電体層(圧電体薄膜)を製造している。
【0005】
【特許文献1】特開2003−298136号公報
【特許文献2】特開2004−111851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような圧電素子の製造工程では、圧電体薄膜を形成する過程において、湿度などの
状態によって圧電体薄膜の配向が安定せず、これが圧電特性に影響するという問題がある

【0007】
このような問題に対して、例えば、特許文献1では、湿度が低い方が優れた圧電体薄膜
を形成することができるという知見に基づき、圧電体薄膜の形成環境を湿度30%Rh以
下に調整するという手法を採用している。
【0008】
また、特許文献2では、例えば、圧電素子を形成する工程を細かく設定して、各工程ご
とに温度及び湿度などの条件をそれぞれ設定するという手法を採用することで、圧電特性
の向上を図っている。
【0009】
一方、薄膜で形成される圧電素子では、圧電素子にクラックが発生し易く、クラックの
発生率及び面内特性の均一性に関する問題があった。
【0010】
また、このような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載され
る圧電素子だけでなく、勿論、液体噴射装置をはじめ、その他のあらゆる装置で用いられ
る圧電素子においても同様に存在する。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、面内特性の均一性に優れ、且つ、圧電体層に生じるク
ラックの発生率を低減させることができる液体噴射ヘッドの製造方法、圧電素子の製造方
法及びこれらの製造方法によって製造された液体噴射ヘッド又は圧電素子を備えた液体噴
射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生
室が形成された流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられた
下電極膜と、圧電体層及び上電極膜が順次積層されてなる圧電素子とを具備する液体噴射
ヘッドの製造方法であって、前記流路形成基板の一方面側に下電極膜を形成する下電極膜
形成工程と、相対湿度が30〜50%Rhの範囲内に選択された状態で、前記下電極膜上
に、鉛を含む圧電材料を塗布した後、所定の熱処理を行って圧電体前駆体膜を形成する熱
処理工程と、前記圧電体前駆体膜を焼成して前記下電極膜上に圧電体膜を形成する結晶化
工程と、前記圧電体膜上に上電極膜を形成する上電極膜形成工程とを具備することを特徴
とする。
【0013】
ここで、前記熱処理工程では、前記圧電材料に含まれる有機成分を加熱によって脱離さ
せて熱処理を行う処理であり、少なくとも加熱によって圧電体前駆体膜を乾燥させる工程
を実行する。さらに、加熱によって圧電体前駆体膜を脱脂させる工程を含んでいてもよい

【0014】
この場合、前記熱処理工程では、ゾル−ゲル法又はMOD法を用いて前記圧電体前駆体
膜を形成することが好ましく、前記圧電材料は、少なくとも、Pb、Zr、及びTiを含
む強誘電体であることが好ましい。この場合、前記圧電材料は、強誘電体に+αの金属酸
化物を添加する場合を含んでいてもよい。
【0015】
さらに、本発明の液体噴射ヘッドの製造方法では、前記圧電体膜を形成する熱処理工程
及び結晶化工程を繰り返し行って、複数層の圧電体膜からなる圧電体層を形成することを
特徴とする。
上述のような本発明の液体噴射ヘッドの製造方法によれば、相対湿度が30〜50%R
hの範囲内に選択された状態で圧電体前駆体膜を形成する熱処理工程を具備することで、
湿度の影響による圧電体層に生じるクラックの発生と面内特性の均一性の双方を所定の範
囲内に安定して維持させることができる。
【0016】
本発明の圧電素子の製造方法は、下電極膜、圧電体層及び上電極膜からなる圧電素子の
製造方法であって、基板の一方面側に下電極膜を形成する下電極膜形成工程と、相対湿度
が30〜50%Rhの範囲内に選択された状態で、前記下電極膜上に、鉛を含む圧電材料
を塗布した後、熱処理を行って圧電体前駆体膜を形成する熱処理工程及び前記圧電体前駆
体膜を焼成して前記下電極膜上に圧電体膜を形成する結晶化工程を順次繰り返して実行し
圧電体層を形成する圧電体層形成工程と、前記圧電体層上に上電極膜を形成する上電極膜
形成工程とを具備する。
上述のような本発明の圧電素子の製造方法によれば、相対湿度が30〜50%Rhの範
囲内に選択された状態で圧電体膜を形成することができるため、圧電体層におけるクラッ
クの発生を抑制しながら、且つ、面内特性の均一性に優れた圧電素子を製造することがで
きる。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、上記の製造方法から製造された液体噴射ヘッド又は上記の製
造方法から製造された圧電素子を備えたことを特徴とする。
上述のような本発明の液体噴射装置によれば、上記の液体噴射ヘッド又は圧電素子を備
えることにより、信頼性ある液体噴射装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッド1の概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A’断
面図である。本実施形態において、流路形成基板10は、表面の結晶面方位が(110)
面のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には酸化膜からなる弾性膜50が形成さ
れている。
【0019】
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁1
1によって区画された圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また
、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通
路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生
室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が
形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、イン
ク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
【0020】
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12
より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ1
00と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発
生室12の幅より小さい幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入する

【0021】
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断
面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると
共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路15とから
なる液体流路が複数の隔壁11により区画されて設けられている。
【0022】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反
対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や
熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラ
スセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0023】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜5
0が形成され、この弾性膜50上には、弾性膜50とは異なる材料の酸化膜からなる絶縁
体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、下電極膜60と、圧電体
層70と、上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構
成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80
を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他
方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形
態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300
の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、
ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合
わせてアクチュエータ装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55
及び下電極膜60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例え
ば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、下電極膜60のみが振動板として作用する
ようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよ
い。
【0024】
圧電体層70は、下電極膜60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料、特に
圧電材料の中でもペロブスカイト構造を有し、金属としてPb、Zr、及びTiを含む強
誘電体材料からなる。圧電体層70としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)
等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸
化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン
酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン
酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,
La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb
(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。
【0025】
また、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端
部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からな
るリード電極90が接続されている。
【0026】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、下電極膜60
、絶縁体膜55及びリード電極90上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成する
リザーバ部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザー
バ部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方
向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各
圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、流路形成
基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、リザーバ部31のみをリザ
ーバとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流
路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜5
5等)にリザーバと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにして
もよい。
【0027】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻
害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32
は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封
されていても、密封されていなくてもよい。
【0028】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例え
ば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板
10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0029】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられて
いる。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔
33内に露出するように設けられている。
【0030】
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路20
0が固定されている。この駆動回路200としては、例えば、回路基板や半導体集積回路
(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路200とリード電極90とは、ボン
ディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線210を介して電気的に接続されてい
る。
【0031】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプラ
イアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する
材料(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜
41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の
硬質の材料(例えば、ステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザ
ーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため
、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0032】
以下、このようなインクジェット式記録ヘッド1の製造方法について、図3〜図8を参
照して説明する。なお、図3〜図8は、本発明の実施形態に係る液体噴射ヘッドの一例で
あるインクジェット式記録ヘッド1の製造方法および圧電素子の製造方法を示す圧力発生
室の長手方向の断面図である。
【0033】
まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハであり流路形成基板10が複数一体的
に形成される流路形成基板用ウェハ110の表面に弾性膜50を構成する酸化膜51を形
成する。この酸化膜51の形成方法は、特に限定されないが、例えば、流路形成基板用ウ
ェハ110を拡散炉等で熱酸化することにより形成すればよい。
【0034】
そして、図3(b)に示すように、弾性膜50(酸化膜51)上に、弾性膜50とは異
なる材料の酸化膜からなる絶縁体膜55を形成する。この絶縁体膜55の形成方法は、特
に限定されないが、例えば、弾性膜50(酸化膜51)上に、ジルコニウム(Zr)層を
形成した後、例えば500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウム(ZrO
2)からなる絶縁体膜55を形成すればよい。
【0035】
次いで、図3(c)に示すように、絶縁体膜55上に、下電極膜60を形成する。本実
施形態では、下電極膜60は、少なくともイリジウム(Ir)を主成分として含むように
形成される。このような下電極膜60は、例えば、スパッタリング法により形成すること
ができる。
【0036】
次に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本
実施形態では、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電
体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、MOD(Metal-Organic Decomposit
ion)法を用いてもよい。
【0037】
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図4(a)に示すように、下電極膜
60上にチタン(Ti)からなるチタン層65を形成する。チタン層65は、例えば、D
Cマグネトロンスパッタリング法によって形成することができる。また、チタン層65は
非晶質であることが好ましい。このようなチタン層65を形成することで、後の工程で下
電極膜60上にチタン層65を介して圧電体層70を形成する際に、圧電体層70の優先
配向方位を(100)または(111)に制御することができ、電気機械変換素子として
好適な圧電体層70を得ることができる。なお、チタン層65は、圧電体層70が結晶化
する際に、結晶化を促進させるシードとして機能し、圧電体層70の焼成後には圧電体層
70内に拡散するものである。なお、本実施形態では、4nm以上6nm以下のチタン層
65が形成されることを想定している。
【0038】
そして、図4(b)に示すように、下電極膜60(チタン層65)上に圧電体前駆体膜
71を成膜する。すなわち、下電極膜60が形成された流路形成基板10上に金属有機化
合物を含むゾル(溶液)を塗布する(塗布工程)。次いで、この圧電体前駆体膜71を所
定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。本実施形態では、ベーク1、ベーク
2からなる2段階の乾燥工程を想定している。
【0039】
次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによっ
て脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有
機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。
【0040】
ここで、本実施形態では、塗布した圧電材料に含まれる有機成分を加熱によって離脱さ
せて上述した圧電体前駆体膜71を形成するまでの工程を熱処理工程としている。つまり
、本実施形態における熱処理工程は、少なくとも、圧電体前駆体膜71を形成するまでの
塗布工程及び乾燥工程を含んで構成される工程であり、これらの各工程における相対湿度
が30〜50%Rhの範囲内に選択された状態となるように、成膜時の環境が設定された
状態をいう。なお、実際の相対湿度は、40%Rh前後に調整することが好ましい(図9
参照)。
【0041】
本発明は、湿度が高いほどクラックが発生する確率が高くなる一方、湿度が高いと面内
特性の均一性が優れた状態となる、又は、湿度が低いほどクラックが発生する確率が低く
なる一方、面内特性の均一性が劣化した状態となるという知見に基づくものである。つま
り、成膜時の湿度環境に応じて、クラックの発生率と面内特性の均一性とがトレードオフ
の関係を有するという知見に基づくものである。なお、ここでいう相対湿度が及ぼす面内
特性の均一性とクラックの発生率との関係についての詳細は後述する。
【0042】
上述した熱処理工程は、圧電体前駆体膜71を形成するまでの塗布工程及び乾燥工程を
熱処理工程としているが、本実施形態の熱処理工程は、特にこれに限定されず、例えば、
上述した塗布工程から脱脂工程までを熱処理工程として、これらの各工程における相対湿
度が30〜50%Rhの範囲内となるように成膜時の湿度環境を設定してもよい。
【0043】
また、上述したように、圧電体前駆体膜71を形成するまでの塗布工程、乾燥工程及び
脱脂工程までを熱処理工程とせず、例えば、乾燥工程までを第1の熱処理工程、脱脂工程
だけを第2の熱処理工程としてもよい。すなわち、熱処理工程を分離して段階的に設ける
ことで、成膜時の湿度環境を設定するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、上述した熱処理工程における各工程間の相対湿度がそれぞれ3
0〜50%Rhの範囲内となるように管理するようにしているが、特にこれに限定されず
、勿論、塗布工程から乾燥工程まで、及び塗布工程から脱脂工程までを1つの工程として
湿度環境を管理するようにしてもよい。
【0045】
本実施形態では、上述した熱処理工程により、成膜時の相対湿度を30〜50%Rhの
範囲内にすることができるため、クラックが発生しにくく、且つ、面内特性の均一性が安
定する成膜環境下で、圧電体前駆体膜71を形成することができる。
【0046】
次に、図4(c)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保
持することによって結晶化させ、圧電体膜72を形成する(焼成工程)。なお、このよう
な乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレ
ートや、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置な
どを用いることができる。
【0047】
ここで、本実施形態では、上述した焼成工程が結晶化工程となる。つまり、圧電体前駆
体膜71を結晶化して圧電体膜72を形成する工程を結晶化工程としている。本実施形態
では、結晶化工程においても、上述した熱処理工程と同様に、相対湿度が30〜50%R
hの範囲内に選択された状態となるように、成膜時の湿度環境を設定する。これにより同
様に、クラックが発生しにくく、且つ、面内特性の均一性が安定する成膜環境下で、圧電
体前駆体膜71から圧電体膜72を形成することができる。
【0048】
次に、図5(a)に示すように、下電極膜60上に1層目の圧電体膜72を形成した段
階で、下電極膜60及び1層目の圧電体膜72をそれらの側面が傾斜するように同時にパ
ターニングする。これにより、2層目の圧電体膜72を形成する際に、下電極膜60及び
1層目の圧電体膜72が形成された部分とそれ以外の部分との境界近傍において、下地の
違いによる2層目の圧電体膜72の結晶性への悪影響を小さく、すなわち、緩和すること
ができる。これにより、下電極膜60とそれ以外の部分との境界近傍において、2層目の
圧電体膜72の結晶成長が良好に進み、結晶性に優れた圧電体層70を形成することがで
きる。また、下電極膜60及び1層目の圧電体膜72の側面を傾斜させることで、2層目
以降の圧電体膜72を形成する際の付き回りを向上することができる。これにより、密着
性及び信頼性に優れた圧電体層70を形成することができる。なお、下電極膜60及び1
層目の圧電体膜72のパターニングは、例えば、イオンミリング等のドライエッチングに
より行うことができる。
【0049】
次に、図5(b)に示すように、1層目の圧電体膜72上を含む流路形成基板用ウェハ
110上に、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を順次行うことにより
、2層目の圧電体膜72が形成される。
【0050】
次に、図5(c)に示すように、2層目の圧電体膜72の上に、上述した塗布工程、乾
燥工程、脱脂工程及び焼成工程を順次繰り返し行うことにより、複数層の圧電体膜72が
形成される。
【0051】
次に、図6(a)に示すように、複数層の圧電体膜72からなる圧電体層70上に亘っ
て、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極膜80を形成する。そして、図6(b)
に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパ
ターニングして圧電素子300を形成する。圧電体層70及び上電極膜80のパターニン
グ方法としては、例えば、反応性イオンエッチングやイオンミリング等のドライエッチン
グが挙げられる。
【0052】
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図6(c)に示すように、流路形成基
板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成
後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300
毎にパターニングすることで形成される。
【0053】
次に、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、
シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接合する。そ
して、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110を所定の厚さにする。
【0054】
次いで、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110にマスク膜52を新た
に形成し、所定形状にパターニングする。そして、図8(b)に示すように、流路形成基
板用ウェハ110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチ
ング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12
、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
【0055】
その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要
部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成
基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設さ
れたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス
基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイ
ズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘ
ッド1とする。
【0056】
ここで、上述した相対湿度に基づく、面内特性の均一性とクラックの発生率との関係に
ついて説明する。図9は、成膜時における相対湿度の変化に基づく面内特性の均一性とク
ラック発生率との関係を示すグラフである。
【0057】
図9は、下記表1の評価結果に基づくグラフである。表1は、上述した各工程によって
形成された圧電体膜72を使用した圧電アクチュエータを製作して、長期駆動耐久評価を
実施することで得られた評価結果である。
【0058】
【表1】

【0059】
表1及び図9の評価結果に示されるように、相対湿度が30〜50%Rhの範囲内で面
内特性の均一性(変位レンジ)とクラックの発生率の双方が安定していることが確認でき
る。
【0060】
一方、湿度が高くなるほど、クラックが発生する確率が高くなり、湿度が低くなるほど
、クラックが発生する確率が低くなることも確認できた。つまり、湿度が上昇するにつれ
て、なだらかな曲線を描くようにクラックの発生率も上昇すると共に、湿度が低下するに
つれて、クラックの発生率を示す曲線とは相反する曲線を描くように面内特性の均一性(
変位レンジ)も低下している。
【0061】
さらに、面内特性の均一性(変位レンジ)は、クラックの発生率とトレードオフの関係
を有していることも確認できた。つまり、クラックが発生し易い状態(湿度が高い状態)
では、面内特性の均一性は優れた状態となり、クラックが発生し難い状態(湿度が低い状
態)では、面内特性の均一性は劣化した状態となる。このようにして、面内特性の均一性
(面内レンジ)とクラックの発生率とは、成膜時の湿度の状態において、相反する関係を
有するということが確認できた。
【0062】
面内特性の均一性(面内変位レンジ)は、例えば、後述の液体噴射装置であるインクジ
ェット式記録装置を用いて記録シートSに画像を形成した場合の画質に、クラックの発生
率は圧電体膜72を使用した圧電アクチュエータの歩留りに影響する。
画質として、画像に印刷斑が目立たない範囲を○、目立って許容できない範囲を×とし
て、判定結果を表1に示した。また、歩留まりの低下が許容できる範囲を○、許容できな
い範囲を×として、判定結果を表1に示した。
判定結果から、面内変位レンジがおよそ5%を超えると、印刷物の画像に印刷斑が目立
ちはじめる。また、クラック発生率がおよそ20%を超えると、歩留りの低下が深刻にな
ることがわかる。
【0063】
本発明は、上述のような知見に基づくものであり、特に、圧電体前駆体膜71が形成さ
れるまでの熱処理工程(塗布工程及び乾燥工程、又は塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程)
における相対湿度を上述のような評価結果に基づいて、30〜50%Rhの範囲内に設定
することにした。さらに、圧電体前駆体膜71から圧電体膜72が形成されるまでの結晶
化工程(焼成工程)における相対湿度に関しても同様に、30〜50%Rhの範囲内に設
定することにした。これにより、本実施形態では、長期駆動耐久評価において、クラック
の発生が少なく、且つ、面内特性の均一性に優れた圧電体膜72を形成することができる

【0064】
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド1の製造方法では
、下電極膜60に圧電材料(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘
電体材料)を塗布し、所定の熱処理を行って圧電体前駆体膜71を形成し、その後、焼成
して圧電体前駆体膜71を結晶化させて圧電体膜72が形成されて、複数の圧電体膜72
からなる圧電体層70を下電極膜60上に形成した。本実施形態では、圧電体層70を形
成する際の成膜時の相対湿度を30〜50%Rhの範囲内にすることで、クラックの発生
が少なく、且つ、面内特性の均一性に優れた圧電体膜72を形成することができる。これ
により、圧電体層70に生じるクラックの発生を抑制しながら、且つ、面内特性の均一性
に優れた圧電素子300を有するインクジェット式記録ヘッド1を製造することができる

【0065】
また、上述した実施形態の圧電素子の組み込まれたインクジェット式記録ヘッド1は、
インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成
して、液体噴射装置の一例となるインクジェット式記録装置に搭載される。図10は、そ
のインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図10に示すように、インクジ
ェット式記録ヘッド1を有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構
成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及
び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向
移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれ
ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動
モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ
3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャ
リッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン
8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である
記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0066】
なお、図10では、シリアル型の液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置
を示したが、ラインヘッド型の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置(ラ
インプリンタ)にも適用することができる。
【0067】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定
されない。例えば、図11に例示するように、圧電素子製造装置500を構成して、上述
した熱処理工程及び結晶化工程において、下電極膜60上に圧電体層70を形成する際の
相対湿度を30〜50%Rhの範囲内に設定して管理する湿度管理工程を設けるようにし
てもよい。
【0068】
具体的には、圧電素子製造装置500は、湿度センサ501、湿度調整装置502を備
えている。このうち、湿度センサ501及び湿度調整装置502が、上述した湿度管理工
程を実行可能なように構成されている。
【0069】
湿度センサ501及び湿度調整装置502は、上述した熱処理工程及び結晶化工程の相
対湿度を所定の範囲内(本実施形態では、30〜50%Rhの範囲内)に調整する。すな
わち、湿度センサ501が圧電素子製造装置500内の湿度を検出すると、その検出結果
に基づいて、図示しない制御部によって相対湿度が30〜50%Rhの範囲内となるよう
に湿度調整装置502を駆動させる駆動信号が出力される。これにより、圧電体層70を
形成する際の相対湿度を30〜50%Rhの範囲内に維持した状態で圧電素子300を形
成することができる。
【0070】
また、上述した実施形態では、流路形成基板10として、結晶面方位が(110)面の
シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、結晶面方位が(10
0)面のシリコン単結晶基板を用いるようにしてもよく、また、SOI基板、ガラス等の
材料を用いるようにしてもよい。
【0071】
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッ
ドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、イン
ク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴
射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、
液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディ
スプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッ
ド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0072】
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載され
る圧電素子の製造方法に限られず、他の装置に搭載される圧電素子の製造方法にも適用す
ることができる。さらに、これらの液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置は、インクジ
ェット式記録装置のみに限定されずに、インク以外の液体を噴射する液体噴射装置にも適
用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図7】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図8】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図9】面内特性の均一性とクラック発生率との関係を示すグラフである。
【図10】実施形態1に係る記録装置の概略図。
【図11】他の実施形態に係る圧電素子製造装置の概念図である。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12
圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズ
ルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板(結晶基板)、 31 リザーバ部
、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極
膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、
200 駆動回路、 300 圧電素子、 500 圧電素子製造装置、 501 湿
度センサ、 502 湿度調整装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板と、該流路
形成基板の一方面側に振動板を介して設けられた下電極膜と、圧電体層及び上電極膜が順
次積層されてなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記流路形成基板の一方面側に下電極膜を形成する下電極膜形成工程と、
相対湿度が30〜50%Rhの範囲内に選択された状態で、前記下電極膜上に、鉛を含
む圧電材料を塗布した後、所定の熱処理を行って圧電体前駆体膜を形成する熱処理工程と

前記圧電体前駆体膜を焼成して前記下電極膜上に圧電体膜を形成する結晶化工程と、
前記圧電体膜上に上電極膜を形成する上電極膜形成工程とを具備することを特徴とする
液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程では、前記圧電材料に含まれる有機成分を加熱によって脱離させて熱処
理を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程では、ゾル−ゲル法又はMOD法を用いて前記圧電体前駆体膜を形成す
ることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記圧電材料は、少なくとも、Pb、Zr、及びTiを含む強誘電体であることを特徴
とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記圧電体膜を形成する熱処理工程及び結晶化工程を繰り返し行って、複数層の圧電体
膜からなる圧電体層を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液体
噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
下電極膜、圧電体層及び上電極膜からなる圧電素子の製造方法であって、
基板の一方面側に下電極膜を形成する下電極膜形成工程と、
相対湿度が30〜50%Rhの範囲内に選択された状態で、前記下電極膜上に、鉛を含
む圧電材料を塗布した後、熱処理を行って圧電体前駆体膜を形成する熱処理工程及び前記
圧電体前駆体膜を焼成して前記下電極膜上に圧電体膜を形成する結晶化工程を順次繰り返
して実行し圧電体層を形成する圧電体層形成工程と、
前記圧電体層上に上電極膜を形成する上電極膜形成工程とを具備することを特徴とする
圧電素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか一項に記載の製造方法から製造された液体噴射ヘッド又は請求項
6に記載の製造方法から製造された圧電素子を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−255526(P2009−255526A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332955(P2008−332955)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】