説明

液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射装置

【課題】 液体噴射ヘッドを構成する複数の部材を高精度で且つ容易に位置決めして接着することができる液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】 液体噴射ヘッドの製造方法は、第1部材に形成された接着位置決め孔及び第2部材に形成された接着位置決め孔に接着位置決めピンを挿入して、第1部材及び第2部材と接着位置決めピンとを接着面の面内方向に相対的に押圧し第1部材及び第2部材の接着位置決め孔の内壁面に接着位置決めピンを当接させる当接工程と、第1部材及び第2部材の相対的な位置が決定された状態で、シアノアクリレート系接着剤である第1接着剤を硬化させて第1部材及び第2部材を接着する第1接着工程と、第1部材及び第2部材が第1接着剤により接着された状態で加熱により硬化する第2接着剤を熱硬化させて第1部材及び第2部材を接着する第2接着工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プリンター、ファクシミリ、複写装置等に用いられる液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、インク滴を吐出させるためのメカニズムに応じて各種方式のものが知られている。例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子等の圧力発生手段により変形させて圧力発生室内の容積を膨張又は収縮させることでノズル開口からインク滴を吐出させるものや、静電気力を利用して振動板を変形させて圧力発生室の容積を変化させることで、ノズル開口からインク滴を吐出させるようにしたものがある。
【0003】
そして、このようなインクジェット式記録ヘッドは、一般的に、圧力発生室を形成した流路形成基板、流路形成基板に接合され圧電素子を保護するための圧電素子保持部や液体の流路が形成された保護基板、ノズル開口を穿設したノズルプレート等が熱硬化型の接着剤によって接合された構造となっている。このように、複数の部材を接着して積層することにより形成されているため、各部材を接着する際に位置ズレが生じると各部材を高精度に位置決めできず高精度に接着することができないという問題がある。
【0004】
このような問題を解決する技術として、流路形成基板用ウェハー及び封止基板(保護基板)に位置決め孔を形成し該位置決め孔の外径と略同一の内径を有する位置決めピンを挿入して位置決めする技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−50487号公報(請求項1、段落[0052])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インクジェット式記録ヘッドは高精度印刷のためには高密度に配列する必要があるため微細化されており、各部材を接着する際の位置決めにはより精密さが求められている。
【0007】
この場合に、従来のように各部材を熱硬化型の接着剤により接着すると、接着剤の硬化時の収縮により各部材間の接着剤層も収縮してしまうことがある。そうすると、高精度に位置決めしたとしても収縮により各部材がずれてしまい、この状態で固定されてしまうことで位置ずれによる変位特性の低下や液漏れ等が生じやすくなり、インクジェット式記録ヘッドの信頼性が低くなるという問題がある。なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドに限定されず、他の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体噴射ヘッドを構成する複数の部材を高精度で且つ容易に位置決めして接着することができる液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、第1部材と第2部材とを接着することにより形成された積層部材を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれにフォトリソグラフィー法により貫通した接着位置決め孔を形成する接着位置決め孔形成工程と、前記第1部材に形成された前記接着位置決め孔及び前記第2部材に形成された前記接着位置決め孔に接着位置決めピンを挿入して、前記第1部材及び前記第2部材と前記接着位置決めピンとを接着面の面内方向に相対的に押圧し前記第1部材及び前記第2部材の前記接着位置決め孔の内壁面に前記接着位置決めピンを当接させる当接工程と、前記第1部材及び前記第2部材の相対的な位置が決定された状態で、シアノアクリレート系接着剤である第1接着剤を硬化させて前記第1部材及び前記第2部材を接着する第1接着工程と、前記第1部材及び前記第2部材が前記第1接着剤により接着された状態で加熱により硬化する第2接着剤を熱硬化させて前記第1部材及び前記第2部材を接着する第2接着工程とを有することを特徴とする。
【0010】
かかる態様では、接着面の面内方向に押圧することにより各部材に形成された接着位置決め孔の内壁面に接着位置決めピンを当接させて各部材の位置を決定しているため、各部材を高精度で且つ容易に位置決めすることができる。また、接着位置決めピンは接着位置決め孔よりも径が小さいため、接着位置決めピンが接着位置決め孔と同じ径を有する場合よりも、接着位置決めピンの接着位置決め孔への挿入が容易である。さらに、位置の決定後、部材同士を、常温で硬化するシアノアクリレート系接着剤である第1接着剤で加熱することなく仮に接着した後に熱硬化する第2接着剤を硬化させていることにより、加熱による第2接着剤の収縮に伴う部材の収縮を抑制できるので、上記の高精度な位置決め状態を保持して接着し、固定することができる。また、シアノアクリレート系接着剤である第1接着剤により仮接着を行えば、硬化時間が他の接着剤に比較して極めて短いため製造工程にかかる時間を短縮することができる。なお、本発明でいう常温とは、20〜30℃をいう。
【0011】
本発明の好ましい実施形態としては、前記第2接着剤を前記第1部材と前記第2部材との接着面の所定の領域に設けた後、前記当接工程を行い、その後、前記第1部材又は第2部材に設けられた第1接着剤導入孔を介して前記接着面の所定の領域以外の領域に前記第1接着剤を設けて硬化させて前記第1接着工程を行い、その後、加熱により前記第2接着剤を熱硬化させて第2接着工程を行うこと、又は、前記当接工程後に、前記第1部材又は第2部材に設けられた第1接着剤導入孔を介して前記第1接着剤を前記第1部材と前記第2部材との接着面の所定の領域に設け硬化させて前記第1接着工程を行い、次いで、前記第1部材又は第2部材に設けられた第2接着剤導入孔を介して前記第2接着剤を前記接着面の所定の領域以外の領域に設けて加熱により硬化させて第2接着工程を行うことが挙げられる。これらの実施形態によることで、上記の高精度な位置決め状態をより好ましい状態で保持して接着し、固定することが可能である。
【0012】
ここで、前記当接工程を行いながら前記第1接着工程を行うことが好ましい。当接工程を行いながら第1接着工程を行うことで、当接後、部材への押圧を解除することで生じる部材間の反発を抑制することができるので、部材間の位置ずれを抑制し高精度な位置決め状態をより保持して固定することが可能である。
【0013】
また、前記接着剤導入孔の接着面側の開口周囲に、溝部を設けることが好ましい。溝部が接着剤の逃げ溝として機能することで、意図しない接着剤の拡散を抑制することができる。
【0014】
ここで、前記第1部材及び前記第2部材にはそれぞれ単孔及び長孔からなる前記接着位置決め孔が形成されており、前記当接工程では、前記第1部材及び前記第2部材と前記接着位置決めピンとを接着面の面内方向に相対的に押圧して前記単孔の内壁面に前記接着位置決めピンを当接させることにより前記第1部材及び前記第2部材の接着面の面内方向の相対的な位置を固定すると共に、前記長孔の内壁面に前記接着位置決めピンを当接させることにより前記単孔を基準とした前記第1部材及び前記第2部材の回転方向を固定することが好ましい。これによれば、回転方向も固定されるため、位置決めがより高精度になる。
【0015】
また、前記接着位置決め孔は角孔からなり、前記当接工程では前記接着位置決め孔の角を形成する互いに接する2つの内壁面に前記接着位置決めピンが当接するように押圧することが好ましい。これによれば、接着位置決め孔の角に接着位置決めピンを当接することにより、接着位置決めピンが確実に固定されて、位置決めがより高精度になる。
【0016】
そして、前記第1部材及び前記第2部材は、前記液体噴射ヘッドを構成するヘッド構成部材が複数一体的に形成されたヘッド領域と前記ヘッド構成部材が形成されていない非ヘッド領域とを有する部材であり、前記接着位置決め孔は前記非ヘッド領域に設けられており、前記第2接着工程の後、前記第1部材及び前記第2部材を分割して液体噴射ヘッドとする工程を有するようにしてもよい。これによれば、複数の液体噴射ヘッドが一体的に構成された部材であっても、高精度に且つ容易に位置決めすることができる。
【0017】
また、前記第1部材及び前記第2部材がシリコン単結晶基板であることが好ましい。これによれば、シリコン単結晶基板なのでエッチングにより接着位置決め孔等を高精度に形成することができるため、より高精度に位置決めすることができる。
【0018】
また、前記当接工程では、前記第1部材及び前記第2部材を緩衝部材で挟み込み前記第1部材及び前記第2部材の積層方向に押圧することが好ましい。これによれば、当接工程で第1部材及び第2部材を強く押圧しても緩衝部材を介しているため、第1部材及び第2部材の破損等を防止することができる。
【0019】
さらに、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに、貫通孔からなり前記第1部材と前記第2部材とを目的とする位置で接着した場合には互いに重ならないが隣接する検査パターンをフォトリソグラフィー法により形成する工程をさらに有し、前記第2接着工程の後、積層方向に光を照射して前記検査パターンからの透過光の有無により前記第1部材及び前記第2部材の接着位置の精度を検査する検査工程を有していてもよい。これによれば、各部材に所定の検査パターンを形成し光を照射することにより、計測器を用いなくても、容易に接着位置の精度を検査することができる。
【0020】
そして、前記第1部材に形成された検査パターンと前記第2部材に形成された検査パターンの平面視の形状は、いずれか一方の検査パターンが他方の検査パターンの周囲を囲むように形成されていることが好ましい。これによれば、いずれか一方の検査パターンが他方の検査パターンの周囲を囲むように形成されているため、位置ずれが生じた場合にどの方向にずれているかを容易に判定することができる。
【0021】
本発明の液体噴射装置は、上記態様の製造方法により製造されたことを特徴とする液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする。かかる液体噴射ヘッドは、各部材を高精度に位置決めして接着しているため、位置ずれによる変位特性の低下や液漏れ等が生じ難いので、信頼性の高い液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの要部平面図及び断面図である。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図5】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。
【図7】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す平面図である。
【図8】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す平面図である。
【図9】実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す平面図である。
【図10】複数配置の記録ヘッドの要部拡大断面図である。
【図11】複数配置の記録ヘッドの要部拡大断面図である。
【図12】一実施形態に係るインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造される液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの平面図及びそのA−A′断面図である。
【0024】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では板厚方向の結晶面方位が(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。この流路形成基板10には、その他方面側から異方性エッチングすることにより、流路形成基板10には、複数の隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバー100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
【0025】
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。そして、各連通路15は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路15を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きく圧力発生室12と同等の断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
【0026】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等の接着剤層によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
【0027】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)等からなる絶縁体膜55が積層形成されている。また、絶縁体膜55上には、厚さ
が例えば、約0.1〜0.5μmの第1電極60と、厚さが例えば、約0.5〜5μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの第2電極80とからなる圧電素子300が形成されている。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、本実施形態では、第1電極60を複数の圧電素子300の並設方向に亘って設け、第1電極60の圧力発生室12の長手方向の端部を、圧力発生室12に相対向する位置となるように設けた。また、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。
【0028】
そして、このような各圧電素子300の第2電極80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
【0029】
また、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31を有する保護基板30が、第2接着剤層35及び第1接着剤層36によって、詳しくは後述するが高精度に接合されている。なお、圧電素子保持部31は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0030】
また、保護基板30には、連通部13に対向する領域にリザーバー部32が設けられており、このリザーバー部32は、上述したように、流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。また、保護基板30の圧電素子保持部31とリザーバー部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33内に第1電極60の一部及びリード電極90の先端部が露出され、これらの先端部に図示しない導電性ワイヤーを介して圧電素子300を駆動するための駆動回路が電気的に接続されている。
【0031】
保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料、すなわち、表面の結晶面方位が(110)面のシリコン単結晶基板を用いた。また、本実施形態では、流路形成基板10と保護基板30とは同一ロットで製造されたシリコン単結晶基板用ウェハーを用いて製造されたものである。
【0032】
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバー部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0033】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0034】
(インクジェット式記録ヘッドの製造方法)
インクジェット式記録ヘッドIの製造方法について、図3〜図9を参照して説明する。なお、図3〜図6は、圧力発生室の長手方向の断面図であり、図7〜9は、平面図である。
【0035】
まず、図3(a)に示すように、流路形成基板10(請求項の「ヘッド構成部材」に相当)が中央部に複数一体的に形成される流路形成基板用ウェハー110(請求項の「第1部材」に相当)を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜52を形成する。
【0036】
次に、図3(b)及び図7に示すように、流路形成基板用ウェハー110のインクジェット式記録ヘッドを構成する領域(ヘッド領域201A)以外の領域(非ヘッド領域202A)に、貫通孔である接着位置決め孔501A及び502Aを形成する(接着位置決め孔形成工程)。すなわち、所定形状のパターンを有するレジスト膜をフォトリソグラフィー法により形成した後、KOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、流路形成基板用ウェハー110の非ヘッド領域202Aに、接着位置決め孔501A及び502Aを形成した後レジスト膜を除去する。なお、流路形成基板用ウェハー110として、表面の結晶面方位が(110)面で、表面の(110)面に垂直な方向の第1の(111)面でオリフラ(オリエンテーションフラット)250Aが形成されているシリコンウェハーを用いている。そして、異方性エッチングにより形成された接着位置決め孔501A及び502Aは、壁面が(111)面で形成される。
【0037】
ここで、流路形成基板用ウェハー110の非ヘッド領域202Aに形成された接着位置決め孔501A及び502Aは、後述する接着位置決めピン511及び512の外径よりも大きな内径を有している、すなわち、接着位置決め孔501A及び502Aに接着位置決めピン511及び512を単に挿入しただけでは接着位置決めピン511及び512は、接着面の面内方向に動くことが可能な状態である。よって、接着位置決めピン511及び512を接着位置決め孔501A及び502Aに挿入すると、接着位置決めピン511及び512は押圧されなければ接着位置決め孔501A及び502Aは接着面方向に固定されない。
【0038】
また、図7に示すように、接着位置決め孔501Aの開口はひし形からなる単孔であり、接着位置決め孔502Aの開口は平行四辺形からなる長孔である。なお、単孔とは、接着位置決めピン511を挿入した際に該接着位置決めピン511の外周から接着位置決め孔501Aの内壁面までの隙間(クリアランス)が同一になりうるものであり、また、長孔とは接着位置決めピン512を挿入した際に該接着位置決めピン512の外周から接着位置決め孔502Aの内壁面までの隙間(クリアランス)が同一にならないものである、すなわち、接着位置決めピン511及び512を接着位置決め孔501A及び502Aに挿入する際、長孔からなる接着位置決め孔502Aは長軸方向に大きさに余裕があるため、多少ずれた位置でも接着位置決め孔502Aに挿入可能である。
【0039】
ここで、本実施形態のようにフォトリソグラフィー法によれば、高精度で所定の位置に接着位置決め孔501A及び502Aを形成することができるが、寸法誤差が生じる場合がある。特許文献1のように位置決め孔の外径と略同一の内径を有する接着位置決めピンとすると、寸法誤差が生じた場合に接着位置決めピンが位置決め孔に挿入できないため、非常に高度な寸法精度が必要になる。しかしながら、本実施形態のように、接着位置決め孔の内径を挿入される接着位置決めピンの外径よりも大きいものとすれば、接着位置決め孔に多少の寸法誤差が生じたとしても、容易に接着位置決めピンを挿入することができる。
【0040】
次いで、図3(c)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55を形成する。
【0041】
次に、図3(d)に示すように、圧電素子300を形成する。具体的には、例えば、白金(Pt)とイリジウム(Ir)とを絶縁体膜55上に積層することにより第1電極60を形成した後、この第1電極60を所定形状にパターニングする。その後、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、白金(Pt)又はイリジウム(Ir)等からなる第2電極80とを流路形成基板10の全面に形成後、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。なお、圧電体層70と第2電極80とのパターニングでは、例えば、ドライエッチングにより一括して行うことができる。
【0042】
次に、図4(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングする。
【0043】
次に、流路形成基板用ウェハー110と、保護基板30(請求項の「ヘッド構成部材」に相当)が中央部に複数一体的に形成される保護基板用ウェハー130(請求項の「第2部材」に相当)とを接着する。本実施形態では、保護基板用ウェハー130及び流路形成基板用ウェハー110を接着するにあたり、位置決め後、仮接着用の第1接着剤により保護基板用ウェハー130及び流路形成基板用ウェハー110を仮接着し固定し、その後第2接着剤により保護基板用ウェハー130及び流路形成基板用ウェハー110を固定する。このように第1接着剤により仮固定することで、熱硬化性樹脂である第2接着剤の硬化による収縮に起因したウェハーの位置ずれを抑制でき、高精度な位置決めを保持することができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0044】
具体的には、まず、図4(b)及び図8に示すように、保護基板30が中央部に複数一体的に形成される保護基板用ウェハー130のインクジェット式記録ヘッドを構成する領域(ヘッド領域201B)以外の領域(非ヘッド領域202B)に、貫通孔である接着位置決め孔501B及び502Bを形成する(接着位置決め孔形成工程)と共に、保護基板用ウェハー130に貫通孔である第1接着剤導入孔503を複数形成する。該保護基板用ウェハー130のヘッド領域201Bに複数の保護基板30を、フォトリソグラフィー法により形成する。すなわち保護基板用ウェハー130上に所定形状のパターンを有するレジスト膜をフォトリソグラフィー法により形成した後、KOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、保護基板用ウェハー130の非ヘッド領域202Bに接着位置決め孔501B及び502B並びに複数の第1接着剤導入孔503を形成する。そして、保護基板用ウェハー130のヘッド領域201Bに圧電素子保持部31、リザーバー部32及び貫通孔33を形成すると共に、第1接着剤導入孔503の接着面側の開口の周囲に接着剤の逃げ溝として機能する溝部504を形成する。これは、後述するように第2接着剤を塗布した場合に、第2接着剤が、第1接着剤が形成される領域(接着面の第1接着剤導入孔503の近傍領域)にまで侵入して混合されると所望の効果を得られないことが考えられる。そこで、本実施形態においては、溝部504を設け、この溝部504内に第2接着剤を溜めて第2接着剤が第1接着剤層36の形成領域に侵入しないように構成している。溝部504は、平面視において円状であるが、形状については特に限定されず、第2接着剤層35と混合しないように設けてあればよい。
【0045】
保護基板用ウェハー130として、表面の結晶面方位が(110)面で、表面の(110)面に垂直な方向の第1の(111)面でオリフラ(オリエンテーションフラット)250Bが形成されているシリコンウェハーを用いている。そして、異方性エッチングにより形成された接着位置決め孔501B及び502B並びに第1接着剤導入孔503等は、壁面が(111)面で形成される。即ち、第1接着剤導入孔503の開口は上面視においてひし形である。この開口部は、後述するように所望量の第1接着剤を導入することができればその大きさ、形状は特に限定されない。また、本実施形態においては、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130とは同一ロットで製造されたシリコン単結晶基板用ウェハーであり、同一ロットのものを用いることにより、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130に形成される接着位置決め孔501A、501B、502A、502B等の寸法のばらつきが抑制でき、より高精度に位置決めをすることができる。
【0046】
ここで、図8に示すように、保護基板用ウェハー130に形成された接着位置決め孔501Bは、流路形成基板用ウェハー110に形成された接着位置決め孔501Aと形状が同一である、すなわち同じ内径を有している。また、保護基板用ウェハー130に形成された接着位置決め孔502Bは、流路形成基板用ウェハー110に形成された接着位置決め孔502Aと形状が同一である、すなわち同じ内径を有している。
【0047】
次いで、第2接着剤を流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の少なくとも一方の接着面に所定の領域に設けて第2接着剤層35を形成する。第2接着剤としては、加熱により硬化するもの、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とする1液加熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤を用いることができる。ここでいう加熱とは、常温(20〜30℃)よりも高い温度で熱することをいう。本実施形態では、保護基板用ウェハー130の溝部504の内側(第1接着剤導入孔503側)を除く所定の領域にエポキシ樹脂系接着剤を塗布することにより、第2接着剤層35を設けた。なお、接着剤を塗布するかわりに熱溶着フィルムを貼付して接着剤層としてもよい。
【0048】
次いで、図5、図7及び図8に示すように、流路形成基板用ウェハー110に形成された接着位置決め孔501A及び保護基板用ウェハー130に形成された接着位置決め孔501Bよりも径が小さい接着位置決めピン511を、接着位置決め孔501A及び501Bに挿入する。同様に、流路形成基板用ウェハー110に形成された接着位置決め孔502A及び保護基板用ウェハー130に形成された接着位置決め孔502Bよりも径が小さい接着位置決めピン512を、接着位置決め孔502A及び502Bに挿入する。そして、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を接着面の面内方向に押圧して、接着位置決め孔501A、501B、502A、502Bの内壁面に接着位置決めピン511及び512をそれぞれ当接させる(当接工程)。これにより、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の相対的な位置が決定される。
【0049】
このように、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130に接着位置決め孔501A、501B、502A、502Bを形成し、接着位置決め孔501A及び501Bよりも小さな径を有する接着位置決めピン511を接着位置決め孔501A、501Bに挿入し、接着位置決め孔502A及び502Bよりも小さな径を有する接着位置決めピン512を接着位置決め孔502A、502Bに挿入すると共に、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を接着面の面内方向に押圧することにより、接着位置決め孔501A、501B、502A、502Bの内壁面に接着位置決めピン511及び512を当接させて流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の相対的な位置を決定できるため、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130とを高精度に且つ容易に位置決めすることができる。また、接着位置決めピン511及び512はそれぞれ、接着位置決め孔501A及び501B、502A及び502Bよりも径が小さいため、接着位置決めピンが接着位置決め孔と同じ径を有する場合よりも、接着位置決めピン511及び512の接着位置決め孔501A、501B、502A、502Bへの挿入が容易である。
【0050】
また、本実施形態では、接着位置決め孔を各部材に2つずつ形成したので、一方の接着位置決めピン511により接着面の面内方向の位置が一点で固定され、さらに、他方の接着位置決めピン512により流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の接着位置決め孔501A及び501Bを中心とした回転方向(図中θで示す)も固定されるため、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の位置決めがより高精度になされる。
【0051】
また、単孔からなる接着位置決め孔501A及び501B、長孔からなる接着位置決め孔502A及び502Bとしたので、接着位置決め孔を形成する際に寸法誤差が多少生じても、接着位置決めピン512を容易に挿入することができ且つ接着面の面内方向に押圧することにより精度よく位置決めすることができる。
【0052】
さらに、角孔、すなわち角を有する接着位置決め孔501A及び501Bの互いに接する二つの内壁面521A及び522A、521B及び522Bに接着位置決めピン511及び512がそれぞれ当接するように押圧している、すなわち、角孔からなる接着位置決め孔501Aや501Bの角に接着位置決めピンが当接して確実に固定されているため、位置決めがより高精度になる。
【0053】
本実施形態では、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を積層方向に押圧するための治具530に接着位置決めピン511及び512を設け、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を接着位置決めピン511及び512を形成した治具530でポリテトラフルオロエチレン等の可撓性を有するポリマーシート等からなる緩衝部材540を介して挟み込み、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130のオリフラ250A及び250Bを接着面の面内方向(図中aで示す)に押圧部材550で押圧し、相対的な位置を固定した状態で、積層方向(図中bで示す)に押圧させた。なお、当接工程では当接により流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の相対的な位置が仮に固定され、その後の第2接着工程で位置が本固定される。
【0054】
次いで、この当接された状態で(即ち当接工程中に)第1接着剤からなる第1接着剤層36を形成し、常温にて第1接着剤を硬化させ仮の固定を行う(第1接着工程)。その後、押圧を解放する。このように当接工程中に第1接着工程により部材を接着することで、当接後、部材への押圧を解放すると生じる反発を抑制することができ、高精度な位置決めをより保持することが可能である。
【0055】
この第1接着剤としては、常温で硬化するものが挙げられ、例えば2−シアノアクリル酸エステルモノマーを主成分とするシアノアクリレート系接着剤等を用いることができる。なお、第1接着剤としては、例えばシアノアクリレート系接着剤のように雰囲気中の水分により常温で硬化するものだけでなく、使用直前に架橋剤を添加しその後常温で硬化するものを用いてもよい。本実施形態では第1接着剤導入孔503を介して流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130との接着面(間隙)に第1接着剤を導入し、第1接着剤を毛細管現象により拡散させる。この場合、第1接着剤は溝部504に対応する領域の内側まで、即ち第2接着剤が形成された所定の領域以外の領域に拡散する。なお、第1接着剤導入孔503に第1接着剤を導入する際には、治具530に設けられた液体導入孔531及びこの液体導入孔531に連通すると共に第1接着剤導入孔503に連通する緩衝部材540に設けられた液体導入孔541を介して第1接着剤導入孔503に第1接着剤を導入する。
【0056】
拡散された第1接着剤は常温で硬化するものであるので、この状態で保持することにより拡散された状態で硬化して流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130が仮固定される。ここで第1接着剤は加熱により硬化するものではないため、熱収縮による流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の変形は生じず、その結果熱硬化による位置ずれは生じない。なお、第1接着剤のみで流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の接着を行うとなると、第1接着剤が一般的に第2接着剤よりも強度に乏しいため好ましいものではない。
【0057】
このように、仮接着により流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の相対的な位置を精度良く固定した状態で、第2接着剤層35を加熱等して硬化させて流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を接着する(第2接着工程)。従来では、第2接着工程により接着された場合に第2接着剤層35の収縮により流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130が収縮されて位置ずれが生じていたが、本実施形態においては、第1接着剤層36により流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を固定していることで、第2接着剤層35の収縮に起因した流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の収縮を抑制でき、その結果、ウェハーの変形や位置ずれを抑制することができる。これにより、ウェハーの変形や位置ずれによる変位特性の低下や液漏れ等が生じ難いので、信頼性の高い液体噴射ヘッドとなる。
【0058】
次に、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚みにする。次いで、図6(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜51を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図6(c)に示すように、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜51を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14、連通路15等の流路形成基板10を形成する。
【0059】
ここで、本実施形態においては、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130を接着した後に、流路形成基板用ウェハー110に圧力発生室12等を形成しているため、圧力発生室12等の形成位置を調整すれば、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130とを高精度に接着しなくても、所望の位置に圧力発生室12等を形成できるともいえるが、位置ずれを考慮して圧力発生室12等を形成しなくてはならなくなる。したがって、本実施形態のように流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130を接着した後に流路形成基板用ウェハー110に圧力発生室12等を形成する場合であっても、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130とを高精度に接着することが必要である。
【0060】
その後、図1に示すような1つのチップサイズの流路形成基板10と保護基板30との接合体に分割し、流路形成基板10の保護基板30とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板30にコンプライアンス基板40を接合することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
【0061】
このようにして製造された本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130が高精度に位置決めされ、この高精度な位置決め状態を保持したまま接着されて形成されたものであるので、位置ずれによるインクの吐出特性の低下が生じ難くなり、信頼性の高い液体噴射ヘッドとなる。
【0062】
ここで、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130それぞれに、貫通孔からなり目的とする位置で接着した場合には互いに重ならないが隣接する検査パターンを、フォトリソグラフィー法により形成する工程を有し、第2接着工程の後、積層方向に光を照射して検査パターンからの透過光の有無により流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の接着位置の精度を検査するようにしてもよい(検査工程)。
【0063】
具体的には、例えば、図9(a)及び(b)に示すように、まず流路形成基板用ウェハー110に貫通孔からなる検査パターン260A(実線)を形成すると共に保護基板用ウェハー130に貫通孔からなる検査パターン260Bをフォトリソグラフィー法により形成しておく。なお、検査パターン260A及び260Bは、接着位置決め孔を基準とした所定の位置に形成するようにする。
【0064】
ここで、図9(a)及び(b)に示すように、流路形成基板用ウェハー110に形成された検査パターン260Aはひし形である。そして、保護基板用ウェハー130に形成された検査パターン260Bは、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130を目的とする正しい位置で接着した場合に、流路形成基板用ウェハー110に形成された検査パターン260Aのひし形の四方を囲む形状である。なお、図9(a)の検査パターン260Aの近傍に記載された破線は、図9(b)の保護基板用ウェハー130に形成された検査パターン260Bの位置を示す。
【0065】
このように、各部材に設けられた検査パターンは、目的とする位置で接着した場合には互いに重ならないが隣接するため、第2接着工程後、積層方向に光を照射すると、流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130を目的とする正しい位置で接着した場合には検査パターン260A及び260Bからの透過光は無い。一方、目的とする位置からずれた位置で接着された場合は、積層方向に照射した光が透過する。このように、所定の検査パターンを設けることにより、積層方向の透過光の有無により流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130の接着位置の精度を検査することができる。このようにすれば、計測器を用いなくても、容易に接着位置の精度を検査することができる。さらに、本実施形態では、一方の検査パターンが他方の検査パターンの周囲を囲むように形成されているため、光が透過した場合、透過光の位置からどの方向に接着位置がずれたかを判定することができる。
【0066】
(別のインクジェット式記録ヘッドの製造方法)
本実施形態は、上述したインクジェット式記録ヘッドの製造方法とは、第1接着剤による仮固定後に流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の接着面(間隙)に第2接着剤を塗布する点が異なる。以下、詳細に説明する。
【0067】
本実施形態では、接着位置決め孔形成工程において、保護基板用ウェハー130に第1接着剤導入孔503を形成する際に、さらに貫通孔である第2接着剤導入孔(図示せず)を複数形成する。第2接着剤導入孔は、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を接合できる程度に第2接着剤層35を所望の位置に所望量塗布できるように構成されている。例えば、第2接着剤導入孔は、非ヘッド領域202Bにおいて、第1接着剤導入孔503よりも保護基板用ウェハー130の面内方向内側に複数形成されると共に、ヘッド領域201Bにおいてもヘッドの液体噴射特性に影響を与えない範囲で複数形成される。また、このように形成される第2接着剤導入孔も、壁面が(111)面で形成され、その開口は上面視においてひし形である。
【0068】
次いで、当接工程を行いながら、高精度に位置決めされた状態で、第1接着剤導入孔から第1接着剤を所定の領域に設け、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の仮固定を行う。この場合、第1接着剤は第1接着剤導入孔503から溝部504を満たして溝部504に対応する領域まで拡散し、第1接着剤層36を形成する。即ち、溝部504は、上述した実施形態では、第2接着剤が第1接着剤層36が形成される領域に侵入しないために設けたが、本実施形態では、第1接着剤が第2接着剤層35が形成される領域まで侵入して第2接着剤と混合されるのを抑制するために、第1接着剤の逃げ溝としての溝部504を設けている。このように溝部504は、第1接着剤又は第2接着剤のどちらかの接着剤の逃げ溝として機能する。
【0069】
その後、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130の少なくとも一方の接着面に第2接着剤層35を設ける(第2接着剤層形成工程)。本実施形態では、第2接着剤導入孔から第2接着剤を導入し、毛細管現象により第2接着剤をその近辺に拡張させて、第2接着剤層35を設けた。即ち、この場合の第2接着剤層35は、第1接着剤層36が形成されなかった領域に設けられている。
【0070】
そして、その後、加熱して第2接着剤層35を硬化させ流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を固定する。このようにして、本実施形態でも、仮固定後第2接着剤で固定することにより、第2接着剤層の硬化による収縮を抑制し、高精度な位置決めを保持したまま接合できる。また、上述した実施形態これにより、位置ずれによる変位特性の低下や液漏れ等が生じ難いので、信頼性の高い液体噴射ヘッドとなる。
【0071】
上述した各実施形態では、保護基板用ウェハー130に第1接着剤導入孔503(及び第2接着剤導入孔)を設けたが、接着剤を導入することができれば、流路形成基板用ウェハー110に設けてもよい。また、第1接着剤導入孔503は平面視において4つ設けたが、第1接着剤を所望量導入することができればこの数に限定されない。
【0072】
また、上述した各実施形態では、当接工程を行いながら第1接着剤層を形成し硬化させたが、これに限定されず、当接工程後、位置が決定した後に第1接着剤層を形成し硬化させてもよい。
【0073】
なお、上述した各実施形態では、接着位置決めピンとして円柱状のものを用いたが、これに限定されず、角柱状でもよい。また、接着位置決め孔の形状も押圧により接着位置決めピンを固定できる形状であれば特に限定されず、円、楕円、多角形いずれでもよいが、本実施形態のように、四角形等、接着位置決めピンが当接して確実に固定される形状が好ましい。
【0074】
さらに、上述した各実施形態では、位置決め精度と形成し易さの観点から、接着位置決め孔を流路形成基板用ウェハー及び保護基板用ウェハーにそれぞれ2つ設けるようにしたが、接着位置決め孔の数は特に限定されず、1つでも3つ以上でもよい。
【0075】
また、各実施形態では、当接工程で平らな面であるオリフラを押圧するようにしたが、接着位置決めピンを固定させることができれば何れの方向から押すようにしてもよい。そして、押圧する方向は、接着位置決めピンを固定させることができれば何れの方向でも良いが、より高精度に位置決めするためには、本実施形態のように、接着位置決め孔の角を形成する互いに接する内壁面に接着位置決めピンが当接する方向で押圧すると確実に固定することができるので好ましい。
【0076】
さらに、各実施形態では、インクジェット式記録ヘッドを構成する流路形成基板10や保護基板30が複数一体的に形成されたウェハーを接着するようにしたが、インクジェット式記録ヘッドを構成する単独の部材同士を接着するようにしてもよい。
【0077】
そして、本実施形態では、非ヘッド領域202Aに接着位置決め孔を設けるようにしたが、製造されるインクジェット式記録ヘッドに支障がなければ、ヘッド領域201Aに接着位置決め孔を設けるようにしてもよい。
【0078】
また、接着位置決め孔形成工程は、圧力発生室12等の凹部や貫通孔と同時に形成しても、別工程で形成してもよい。同時に形成することにより、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
【0079】
各実施形態では、積層方向に押圧しながら位置決めを行ったが、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハー130を高精度に位置決めすることができれば積層方向に押圧しなくてもよい。
【0080】
また、各実施形態では、本発明の製造方法を流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130とを接着する際に適用するようにしたが、本発明の製造方法は流路形成基板用ウェハー110と保護基板用ウェハー130の接着のみに限らずインクジェット式記録ヘッドを構成する2つの部材の接着に適用することができ、例えば流路形成基板10とノズルプレート20を接着する際や、保護基板30とコンプライアンス基板40とを接着する際にも適用することができる。
【0081】
また、各実施形態では当接工程を行いながら第1接着工程を行ったが、これに限定されず、当接工程後、第1接着工程を行ってもよい。
【0082】
さらに、本発明の製造方法は、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIをベースプレート601に複数個載置して形成されるインクジェット式記録ヘッド600を製造する際にも、適用することができる。
【0083】
詳述すると、該インクジェット式記録ヘッド600は、要部拡大断面図である図10に示すように、ベースプレート601に設けられインクジェット式記録ヘッドIよりも径が大きい貫通孔からなるヘッド孔602に、複数のインクジェット式記録ヘッドIが載置されている。そして、インクジェット式記録ヘッドIは、ベースプレート601の所定の位置に設けられたヘッド位置決めピン603により固定されており、ヘッド位置決めピン603は、ヘッド位置決めピン603が挿通されるヘッド位置決めピン支持孔610が設けられベースプレート601に接着剤で接合されたガイドプレート620で支持されている。このガイドプレート620により、ヘッド位置決めピン603のベースプレート601に対する取付け強度が向上するため、ヘッド位置決めピン603が繰り返し着脱されても、ヘッド位置決めピン603がベースプレート601からずれたり、傾いたりしてしまうことが防止される。
【0084】
そして、図10のヘッド位置決めピン603近傍の要部拡大断面図である図11に示すように、ベースプレート601に設けられた取付溝630にヘッド位置決めピン603が接着剤等で立設されている。
【0085】
また、ヘッド位置決めピン603を支持するガイドプレート620は、ベースプレート601に接合される最下層部621と、該最下層部621上に設けられる中間層部622と、該中間層部622上に設けられる最上層部623がそれぞれ接着剤層で接着された積層体で構成されている。最下層部621及び最上層部623は、(110)面に優先配向した一枚のシリコン単結晶基板からなり、中間層部622は、三枚のシリコン単結晶基板が接着されたものである。なお、ガイドプレート620の各層は、このような構成に限定されず、最下層部621や最上層部623が複数のシリコン単結晶基板から構成されていてもよいし、中間層部622が一枚のシリコン単結晶基板から構成されていてもよく、また、材質もシリコン単結晶基板でなくてもよい。
【0086】
この接着剤層は、仮固定用の第1接着剤層と本固定用の第2接着剤層(それぞれ図示せず)からなる。本実施形態においては、第1接着剤層を形成するための貫通孔である第1接着剤導入孔631〜634が、それぞれ設けられている。即ち、最も内側の第1接着剤導入孔631は、最上層部623と中間層部622との接着面(間隙)に第1接着剤を導入するために設けられており、他の3つの第1接着剤導入孔632〜634も、それぞれ各積層の間隙に第1接着剤を導入できるように設けられている。なお、図示しないが、これらの第1接着剤導入孔は平面視において複数設けられている。また、同様に第2接着剤導入孔641〜644が設けられており、それぞれ各層間に第2接着剤を導入できるように構成されている。また、本実施形態では図示しないが各導入孔の接着剤側の開口周囲には接着剤の逃げ溝として機能する溝部が設けられており、各接着剤が混合されないように構成されている。
【0087】
また、ヘッド位置決めピン支持孔610は、ヘッド位置決めピン603が内接するように開口した最下層部621の開口部611及び最上層部623の開口部613と、ヘッド位置決めピン603の径より大きくヘッド位置決めピン603から内壁面が隔離するように開口した中間層部622の連通開口部612とからなる。すなわち、開口部611と開口部613とにヘッド位置決めピン603が支持されている。なお、連通開口部612は、ヘッド位置決めピン603を支持していないため高精度に位置決めしなくてもよい。
【0088】
このような複数の基板を接着して積層されたガイドプレート620を、本発明の製造方法で製造することができる。例えば、まず、開口部611が形成された最下層部(請求項の「第1部材」相当)621と、連通開口部612が形成された中間層部622と、開口部613が形成された最上層部(請求項の「第2部材」相当)623のそれぞれにフォトリソグラフィー法により貫通した接着位置決め孔を例えば2個ずつ形成する(接着位置決め孔形成工程)。
【0089】
次いで、各部材の接着位置決め孔に該接着位置決め孔よりも径が小さい接着位置決めピンを挿入して各部材と接着位置決めピンとを接着面の面内方向に相対的に押圧し接着位置決め孔の内壁面に接着位置決めピンを当接させる(当接工程)。これにより、各部材の相対的な位置が固定される。その後、第1接着剤導入孔631〜634から第1接着剤を導入し硬化させる(第1接着工程)。次いで、第2接着剤を各層間に第2接着剤導入孔641〜644から導入し第2接着工程を行うことで第2接着剤層が形成される。このような工程で製造することにより、ガイドプレート620を構成しヘッド位置決めピン603を支持している最下層部621及び最上層部623を高精度に位置決めすることができるため、ヘッド位置決めピン603の移動や傾きを高精度に規制することができる。かつ、これらの積層体を高精度に位置決めできた状態で熱硬化による収縮もなく積層体を固定することができる。そして、ヘッド位置決めピン603を高精度で規制することにより、インクジェット式記録ヘッドIをベースプレート601に高精度に配置することができる。
【0090】
この場合においても、第2接着剤導入孔641〜644を形成せず、当接工程前に第2接着剤層35を形成し、その後当接工程を行って位置決めをし、次いで第1接着剤層形成工程により第1接着剤層を形成し仮固定工程を行い、最後に第2接着工程を行ってもよい。この場合には第2接着剤導入孔を形成する必要がないため、より簡易に固定を行うことができる。
【0091】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態例を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、成膜及びリソグラフィー法を応用して製造される薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のインクジェット式記録ヘッドや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型のインクジェット式記録ヘッドにも本発明を採用することができる。また、圧力発生素子として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することもできる。
【0092】
さらに、これらインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図12は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0093】
図12に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0094】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0095】
なお、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0096】
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド) 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、 32 リザーバー部、 40 コンプライアンス基板、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 110 流路形成基板用ウェハー、 130 保護基板用ウェハー、 201 ヘッド領域、 202 非ヘッド領域、 250 オリフラ、 260 検査パターン、 501、502 接着位置決め孔、 503、631〜634 第1接着剤導入孔、 504 溝部、 511、512 接着位置決めピン、 530 治具、 540 緩衝部材、 550押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを接着することにより形成された積層部材を具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれにフォトリソグラフィー法により貫通した接着位置決め孔を形成する接着位置決め孔形成工程と、
前記第1部材に形成された前記接着位置決め孔及び前記第2部材に形成された前記接着位置決め孔に接着位置決めピンを挿入して、前記第1部材及び前記第2部材と前記接着位置決めピンとを接着面の面内方向に相対的に押圧し前記第1部材及び前記第2部材の前記接着位置決め孔の内壁面に前記接着位置決めピンを当接させる当接工程と、
前記第1部材及び前記第2部材の相対的な位置が決定された状態で、シアノアクリレート系接着剤である第1接着剤を硬化させて前記第1部材及び前記第2部材を接着する第1接着工程と、
前記第1部材及び前記第2部材が前記第1接着剤により接着された状態で加熱により硬化する第2接着剤を熱硬化させて前記第1部材及び前記第2部材を接着する第2接着工程とを有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記第2接着剤を前記第1部材と前記第2部材との接着面の所定の領域に設けた後、前記当接工程を行い、その後、前記第1部材又は第2部材に設けられた第1接着剤導入孔を介して前記接着面の所定の領域以外の領域に前記第1接着剤を設けて硬化させて前記第1接着工程を行い、その後、加熱により前記第2接着剤を熱硬化させて第2接着工程を行うことを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記当接工程後に、前記第1部材又は第2部材に設けられた第1接着剤導入孔を介して前記第1接着剤を前記第1部材と前記第2部材との接着面の所定の領域に設け硬化させて前記第1接着工程を行い、次いで、前記第1部材又は第2部材に設けられた第2接着剤導入孔を介して前記第2接着剤を前記接着面の所定の領域以外の領域に設けて加熱により硬化させて第2接着工程を行うことを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記当接工程を行いながら前記第1接着工程を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤導入孔の接着面側の開口周囲に、溝部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記第1部材及び前記第2部材にはそれぞれ単孔及び長孔からなる前記接着位置決め孔が形成されており、前記当接工程では、前記第1部材及び前記第2部材と前記接着位置決めピンとを接着面の面内方向に相対的に押圧して前記単孔の内壁面に前記接着位置決めピンを当接させることにより前記第1部材及び前記第2部材の接着面の面内方向の相対的な位置を固定すると共に、前記長孔の内壁面に前記接着位置決めピンを当接させることにより前記単孔を基準とした前記第1部材及び前記第2部材の回転方向を固定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記接着位置決め孔は角孔からなり、前記当接工程では前記接着位置決め孔の角を形成する互いに接する2つの内壁面に前記接着位置決めピンが当接するように押圧することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記液体噴射ヘッドを構成するヘッド構成部材が複数一体的に形成されたヘッド領域と前記ヘッド構成部材が形成されていない非ヘッド領域とを有する部材であり、前記接着位置決め孔は前記非ヘッド領域に設けられており、前記第2接着工程の後、前記第1部材及び前記第2部材を分割して液体噴射ヘッドとする工程を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記第1部材及び前記第2部材がシリコン単結晶基板であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記当接工程では、前記第1部材及び前記第2部材を緩衝部材で挟み込み前記第1部材及び前記第2部材の積層方向に押圧することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに、貫通孔からなり前記第1部材と前記第2部材とを目的とする位置で接着した場合には互いに重ならないが隣接する検査パターンをフォトリソグラフィー法により形成する工程をさらに有し、
前記第2接着工程の後、積層方向に光を照射して前記検査パターンからの透過光の有無により前記第1部材及び前記第2部材の接着位置の精度を検査する検査工程を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記第1部材に形成された検査パターンと前記第2部材に形成された検査パターンの平面視の形状は、いずれか一方の検査パターンが他方の検査パターンの周囲を囲むように形成されていることを特徴とする請求項11に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法により製造された液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−269499(P2010−269499A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122483(P2009−122483)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】