説明

液体噴射ヘッド

【課題】ノズルプレートが導電性を有さない場合でも、流路内のインクの帯電を防止でき、駆動回路の破壊を防止することができる記録ヘッドを提供することを目的とする。
【解決手段】ノズルプレートに開口部を形成し、開口部内に導電材料を充填して導電部とし、導電部とカバー部の一部とを重合することによって、共通液体室のインクをカバー部に導通させる。したがって、記録ヘッド内のインクの帯電を防止できる。このため、記録紙からの静電気による記録ヘッド内のインクの静電気を、カバー部を介して記録ヘッド外部の接地点に逃がすことができ、駆動回路の破壊を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドに関し、特にヘッド内のインクから静電気を除去することができる液体噴射ヘッドである。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を代表とする液体噴射ヘッドには、共通インク室(共通液体室)から圧力発生室を経てノズル開口に至る一連の液体流路をノズル開口に対応して複数備え、圧力発生手段の駆動によって圧力発生室内の液体に生じた圧力変動を利用してノズル開口からインクなどの液体を吐出させるように構成されたものがある。
【0003】
上記のような記録ヘッドは複数の構成部品を積層して構成されている。例えば、ステンレス等の導電性を有するノズルプレートと、シリコン製の流路基板と 、弾性フィルムの封止膜を有するコンプライアンス基板とが積層され、流路基板に形成された空部がノズルプレートとコンプライアンス基板とに封止されて、液体流路が形成されている。そして、ここにインクが充填されることとなる。
【0004】
しかし、上記記録ヘッドを備えたプリンターにおいて、記録紙に発生した静電気がノズルプレートへ放電されると、この静電気が記録ヘッド内のインクを伝わって、圧電振動子を駆動する駆動回路を破壊するおそれがある。
【0005】
このため、ノズル開口を露出させる窓が形成された導電性のヘッドカバーを取り付けて、記録ヘッドを保護するとともに、記録ヘッド内のインクをノズルプレートからヘッドカバーを介して接地することで、記録ヘッド内のインクの帯電を防止し、記録紙からの静電気を逃がして駆動回路の破壊を防止するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−190513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノズルプレートは、ノズル開口をノズルプレートの所定位置に高精度に形成すべくエッチング技術を適用するため、シリコンで形成したものが開発されつつある。ところが、シリコンはステンレス等に比べ導電性が極めて低く、従来の記録ヘッドのように単にヘッドカバーを取り付けただけでは、記録ヘッド内のインクの静電気を、ヘッドカバーを介して逃がすことができなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ノズルプレートが導電性を有さない場合でも、流路内のインクの帯電を防止でき、駆動回路の破壊を防止することができる液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の液体噴射ヘッドは、液滴を吐出するノズル開口が形成されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する複数の圧力発生室と、複数の前記圧力発生室に連通して圧力発生室に液体を供給する共通液体室と、前記各圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を発生させる圧力発生手段と、前記ノズルプレートの圧力発生室と反対側に設けられた導電性のカバー部とを具備する液体噴射ヘッドであって、前記ノズルプレートは、非導電材料からなる基板であって、前記共通液体室に対向する位置に、板厚方向に貫通した状態で開設した開口部内に導電材料を充填して導電部を形成してなり、該導電部の少なくとも一部と前記カバー部の少なくとも一部とを重合させて前記共通液体室の液体を前記カバー部に導通させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ノズルプレートの共通液体室に対向する位置に、板厚方向に貫通した状態で開設した開口部内に導電材料を充填して導電部を形成し、導電部の少なくとも一部とカバー部の少なくとも一部とを重合させて共通液体室の液体をカバー部に導通させたので、液体噴射ヘッド内のインクの帯電を防止できる。よって、液体噴射ヘッド内のインクの静電気を、カバー部を介して逃がすことができ、駆動回路の破壊を防止することができる。
【0011】
また、上記構成において、前記ノズルプレートはシリコンで形成することが望ましい。この構成によれば、ノズルプレートをシリコンで形成したので、同じくシリコンで形成される流路基板と熱膨張率が同じであるため、圧電振動子等の熱により各部材が膨張しても接合部分の剥離など熱による悪影響を防止することができる。
【0012】
また、上記構成において、前記開口部は、前記共通液体室側の開口面積よりも前記カバー部側の開口面積の方が大きいことが望ましい。この構成によれば、開口部に充填する導電材料が、開口部から抜けて液体噴射ヘッド内に入り込む不具合を防止することができる。
【0013】
また、上記構成において、前記導電材料は、導電性接着剤であることが望ましい。この構成によれば、開口部内の形状に合わせた金属等の導電材料を別途用意する必要が無く、容易に導電部を形成することができる。
【0014】
また、上記構成において、前記導電材料は、前記ノズルプレート面よりも前記カバー部側に盛り上がっていることが望ましい。この構成によれば、導電材料は、ノズルプレート面よりもカバー部側に盛り上がっているので、導電部がカバー部と安定して導通をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンターの構成を説明する斜視図である。
【図2】インクジェット式記録ヘッドユニットの分解斜視図である。
【図3】インクジェット式記録ヘッドユニットの組立斜視図である。
【図4】インクジェット式記録ヘッドユニットの要部断面図である。
【図5】ヘッド及びヘッドケースの分解斜視図である。
【図6】ヘッド及びヘッドケースの要部断面図である。
【図7】ヘッドのノズルプレート側から見た平面図である。
【図8】ヘッド及びカバー部の要部断面図である。
【図9】第2実施形態におけるヘッドのノズルプレート側から見た平面図である。
【図10】第3実施形態におけるヘッド及びカバー部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、液体噴射装置として、図1に示すインクジェット式プリンター101(以下、プリンター101と略記する)を例示する。
【0017】
プリンター101は、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、ヘッドユニット1と言う)が取り付けられると共に、ヘッドユニット1が取り付けられるキャリッジ103と、ヘッドユニット1の下方に配設されたプラテン104と、ヘッドユニット1が搭載されたキャリッジ103を記録紙105(吐出対象物の一種)の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構106と、紙幅方向に直交する方向である紙送り方向に記録紙105を搬送する紙送り機構107等を備えて概略構成されている。ここで、紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)であり、紙送り方向とは、副走査方向(即ち、ヘッド走査方向に直交する方向)である。
【0018】
キャリッジ103は、主走査方向に架設されたガイドロッド108に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構106の作動により、ガイドロッド108に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ103の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー109によって検出され、検出信号が位置情報として制御部(図示せず)に送信される。これにより、制御部はこのリニアエンコーダー109からの位置情報に基づいてキャリッジ103(ヘッドユニット)の走査位置を認識しながら、ヘッドユニットによる記録動作(吐出動作)等を制御することができる。
【0019】
次に、ヘッドユニット1について、添付図面を参照して説明する。図2は本形態に係るヘッドユニット1の分解斜視図、図3はその組立斜視図、図4はその要部断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、ヘッドユニット1は、カートリッジケース3と、インクジェット式記録ヘッド2(以下、単に記録ヘッド2という)とによって構成されている。記録ヘッド2は、複数個(本形態では4個)のヘッド4及びヘッドケース5と、カバー部6とを備えており、カートリッジケース3に固定されている。また、カバー部6は、カバーヘッド7とヘッド固定板8とによって構成される導電性の部材であり、電気的に記録ヘッド2外部の接地点(不図示)に接地されている。
【0021】
ヘッド固定板8は、複数のヘッド4を位置決めして保持するための金属製の平板材であり、カバーヘッド7と接合してカバー部6を構成する。そして、このヘッド固定板8は、隣接するヘッド4の間に延設された固定用梁部10が設けられている。また、複数のヘッド4に亘って記録ヘッド2の外周に沿って設けられた固定用枠部11と、前記固定用梁部10とで構成された接合部12は、後述するノズルプレートのノズル開口30を露出するように固定板露出開口部13を形成している。
【0022】
カバーヘッド7は、ヘッド固定板8と導電性接着剤等で電気的かつ機械的に接合される金属製の箱形状部材であり、ヘッド固定板8の外周に亘って屈曲するように設けられた側壁部14を備えている。また、このカバーヘッド7は、固定用梁部10に対応した梁部15と、固定用枠部11に対応した枠部16とで構成された固定部17を備えており、加えて、固定板露出開口部13に対応した露出開口部18を備えている。さらに、カバーヘッド7の側壁部14から延設されたフランジ部19に固定孔20が設けられている。この固定孔20は、図3及び図4に示すように、カートリッジケース3に突設された突起部24を挿入し、突起部24の先端部を加熱してかしめることで、ヘッド4及びヘッドケース5とともに、カバー部6をカートリッジケース3に固定することができる。
【0023】
カートリッジケース3は、前記したキャリッジ103の主要部分を担う部材であり、インクカートリッジ102がそれぞれ装着されるカートリッジ装着部21を有する。インクカートリッジ102は、例えばブラック及びカラーインクが充填された別体で構成されたインク供給手段である。すなわち、カートリッジケース3には、各色のインクカートリッジ102がそれぞれ装着される。
【0024】
また、図4に示すように、カートリッジケース3には、一端が各カートリッジ装着部21に開口するとともに他端がヘッドケース5側に開口する複数のインク連通路22が内部に設けられている。さらに、カートリッジ装着部21には、インク供給針23が上向きに固定されており、該インク供給針23の基部にインク内の気泡や異物を除去するためのフィルタ(図示せず)が設けてある。そして、カートリッジ装着部21にインクカートリッジ102を装着すると、インク供給針23がインクカートリッジ102の内部に挿入され、これにより、カートリッジ内部のインク貯留空間と記録ヘッド2内部のインク流路とが、インク連通路22を通じて連通し、カートリッジ内部に貯留されているインクが記録ヘッド2内に導入される。
【0025】
ヘッドケース5は、各ヘッド4に対応して独立して複数個設けられており、カートリッジケース3の底面に位置決め固定されている。このヘッドケース5は、カートリッジケース3とは反対側の面にヘッド4が接着剤等で一体的に接合される。このヘッド4は、図5に示すように、ノズルプレート26、流路基板27、保護基板28及びコンプライアンス基板29の4つの基板で構成されている。
【0026】
流路基板27は、長尺なシリコン単結晶基板からなり、長手方向に沿って細長な連通部34が二本、エッチングにより形成され、両連通部34に挟まれた領域に複数の圧力発生室32が各連通部34ごとに、長手方向に並んだ状態でエッチングにより形成されている。そして、各圧力発生室32は、インク供給路33を介して、連通部34と連通している。また、流路基板27の一方面には、予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる弾性膜40が形成され、該弾性膜40上には、圧電振動子41が配設され、その反対側にノズルプレートが、接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、圧電振動子41は、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜、金属からなる下電極膜、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層及び金属からなる上電極膜を順次積層することで形成される。
【0027】
ノズルプレート26は、非導電材料であるシリコン単結晶基板で形成しているので、エッチングにより、ノズル開口30及び開口部51を穿設することができる。ノズル開口30は、各圧力発生室32のインク供給路33とは反対側で連通するように、ノズルプレート26に穿設されている。開口部51は、内部に導電材料を充填することで、後述する導電部52を形成するものである。この様に、ノズルプレート26にシリコンを用いると、前記した流路基板27との熱膨張率を同じにすることができるので、圧電振動子41等の熱により各部材が膨張しても両者の接合部分の剥離など熱による悪影響を防止することができる。なお、ここで導電材料とは電気抵抗値が10Ω・cm以下の材料を言い、これに該当しない材料を非導電材料と呼ぶ。
【0028】
保護基板28は、流路基板27のノズルプレート26と反対側に、接合されており、保護基板28を厚さ方向に貫通するように、長尺なリザーバー部35が二本設けられている。このリザーバー部35は、各連通部34と連通し、共通インク室36(共通液体室36)を構成している。また、保護基板28の圧電振動子41に対向する領域には、圧電振動子41の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電振動子保持部42が設けられている。このような保護基板28は、ガラス、セラミック、金属、プラスチック等で好適に形成し得るが、ノズルプレート26と同様に、流路基板27の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましく、本形態では、流路基板27と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成している。
【0029】
さらに、保護基板28上には、各圧電振動子41を駆動するための駆動IC44が設けられている。この駆動IC44の各端子は、図示しないボンディングワイヤー等を介して各圧電振動子41の個別電極から引き出された引き出し配線と接続されている。そして、駆動IC44の各端子には、図2及び図5に示すような、フレキシブルプリントケーブル(FPC)等の外部配線43を介して外部と接続され、各圧電振動子41を駆動するための外部からの各種信号を、外部配線43を介して受け取れるようになっている。
【0030】
コンプライアンス基板29は、保護基板28の流路基板27と反対側に、接合されており、封止膜46と支持板47とから形成されている。封止膜46は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さ6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)で形成されており、また支持板47は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成されている。ここで、図6に明示するように、コンプライアンス基板29は、共通インク室36に対向する領域に、共通インク室36にインクを供給するためのインク導入口37を、厚さ方向に貫通して形成されている。また、コンプライアンス基板29の共通インク室36に対向する領域において、インク導入口37以外の領域は、支持板47が除去された封止膜46からなる封止部48となっている。そのため、共通インク室36は、可撓性を有する封止部48により封止されることになる。そして、封止部48に対向するヘッドケース5の一部には、封止膜46の可撓変形を阻害しない程度の空間を有する封止膜保持部49を備えている。このように構成することで、可撓性を有する封止膜46により、共通インク室36がコンプライアンスを得るようにしてある。
【0031】
そして、ヘッドケース5は、上述したようにカートリッジケース3の底面に固着されており、それとは反対側でコンプライアンス基板29と接合している。また、ヘッドケース5は、保護基板28上に設けられた駆動IC44に対向する領域に、厚さ方向に貫通した駆動IC収納部45が設けられている。さらに、ヘッドケース5は、インクカートリッジ102からのインク連通路22(図4参照)とコンプライアンス基板29のインク導入口37を連通するように、インク供給連通路38を設けている。
【0032】
このように、ヘッド4は、インクカートリッジ102から供給されたインクを、インク連通路22、インク供給連通路38、インク導入口37、共通インク室36、インク供給路33を介して各圧力発生室32に供給することができる。そして、各圧力発生室32内には、圧力を発生させる圧力発生手段(圧電振動子41)を備えてあるので、インク滴(液滴の一種)を吐出させることができる。具体的には、駆動IC44からの駆動信号により圧電振動子41を撓ませることで、圧力発生室32の圧力変動を発生させることができ、この圧力変動によってノズル開口30からインク滴が吐出される。
【0033】
次に、ノズルプレート26に設けた導電部52ついて図7及び図8を用いて詳しく説明する。図7はヘッド4をノズルプレート26側から見た平面図であり、図8はヘッド4及びカバー部6の要部断面図である。
【0034】
開口部51は、図7に示すように、共通インク室36に対向する位置、具体的には、共通インク室36の長手方向中央部にノズルプレート26の板厚方向を貫通して、円形状に形成されている。また、この開口部51は、共通液体室36側の開口面積よりもカバー部6側の開口面積の方が大きくなるように、断面テーパ状に形成されている。
【0035】
そして、このノズルプレート26の開口部51内に、導電材料を充填することで、導電部52を形成している。この導電部52は、ノズルプレート26の圧力発生室32と反対側に設けられた導電性カバー部6の一部と重合する位置に形成されているので、ヘッドの組み付け後は導電性カバー部6と電気的に接続することができる。ここで、導電材料は、開口部51内の形状に合わせて別途作成された銅など金属製の材料でも良いし、銀ペーストやカーボンペースト等の導電性接着剤でも良い。導電材料を導電性接着剤とすれば、開口部51内の形状に合わせた金属製の材料を別途用意する必要が無く、容易に導電部52を形成することができる。
【0036】
また、図8に示すように、導電部52は、共通インク室36側ではノズルプレート26面と平滑になるように形成されているが、カバー部6側ではノズルプレート26面よりもカバー部6側に盛り上がる(突出する)ように形成され、この突出した部分が導電性カバー部6の一部と接合している。ここで、共通インク室36側でノズルプレート26面と平滑になるように形成するのは、インク内に発生した気泡が段差に引っ掛って残留するのを防ぐためであり、カバー部6側でノズルプレート26面よりもカバー部6側に盛り上がるように形成するのは、導電部52がカバー部6と安定して導通をとれるようにするためである。さらに、前述のように、開口部51が共通インク室36側からもカバー部6側に向けて大きくなるようにテーパ形状を設けているので、開口部51に充填する導電材料が、開口部51から抜けて記録ヘッド2内に入り込む不具合を防止することができる。
【0037】
このように、導電部52とカバー部6の一部とを重合させることで、共通インク室36のインクをカバー部6に導通させることができる。したがって、記録ヘッド2内のインクの帯電を防止できる。このため、記録紙105からの静電気による記録ヘッド2内のインクの静電気を、カバー部6を介して記録ヘッド2外部の接地点(不図示)に逃がすことができ、駆動回路の破壊を防止することができる。
【0038】
次に、第2の実施形態として、図9を用いて説明する。図9に示す第2の実施形態では、共通インク室36の一端部から延設して導電部専用インク室53を設けている。この導電部専用インク室53に対向するノズルプレート26に、上記実施形態と同様に、円形状の開口部51を形成し、該開口部51内に導電材料を充填して導電部52とし、この導電部52とカバー部6の一部とを重合することによって、共通インク室36のインクをカバー部6に導通させることができる。したがって、前記した実施形態と同様に、記録紙105からの静電気による記録ヘッド2内のインクの静電気を、カバー部6を介して逃がすことができ、駆動回路の破壊を防止することができる。また、この場合、共通インク室36側のノズルプレート26面に導電部52に起因する段差が発生したとしても、共通インク室36の外部(液体流路の外部)に導電部52を作成したので、前記段差に気泡が残留し難くい。さらに、その段差に気泡が残留したとしても、液体流路の外部なので、液体噴射時に気泡が悪影響をおよぼすことを防ぐことができる。
【0039】
なお、前記実施形態では、導電部52の形状を円形状としたが、これに限らず、楕円形、多角形、その他任意の形状のものであっても良い。さらに、1つの共通インク室36に対応する導電部52は、1個である必要はなく、複数個設けても良く、大きさも任意に決定し得る。
【0040】
ここで、上記実施形態では、開口部51(導電部52)の形状は、断面テーパ状に形成したが、これに限るものではない。第3の実施形態として、図10に示すように、開口部51(導電部52)の形状を断面階段状にしてもよい。要は、共通液体室36の開口面積よりもカバー部6側の開口面積の方が大きければ良く、開口部51内部の形状は任意でも良い。この場合も、共通液体室36の開口面積よりもカバー部6側の開口面積の方が大きいとしたので、開口部51に充填する導電材料が、開口部51から抜けて記録ヘッド2内に入り込む不具合を防止することができる。
【0041】
また、本発明は、ノズルプレート26が非導電材料の場合だけでなく、ノズルプレート26が導電材料であっても、記録ヘッド2内のインクをカバー部6に導通できない場合にも有用である。例えば、ノズルプレート26の流路基板27と反対側表面に、インクが付着しないように形成される撥液膜が非導電材料である場合にも有用である。
【0042】
さらに、上記実施形態では、圧力発生手段として、所謂撓み振動型の圧電振動子41を例示したが、これには限られず、例えば、所謂縦振動型の圧電振動子41を採用することも可能である。
【0043】
そして、本発明は、駆動信号を用いて液滴の吐出制御が可能な液体噴射ヘッドであれば、プリンター101に限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体吐出装置、例えば、ディスプレー製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等の他の機器用のヘッドにも適用することができる。そして、ディスプレー製造装置では、色材吐出ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極製造装置では、電極材吐出ヘッドから液状の電極材料を吐出する。チップ製造装置では、生体有機物吐出ヘッドから生体有機物の溶液を吐出する。
【符号の説明】
【0044】
1…インクジェット式記録ヘッドユニット,2…インクジェット式記録ヘッド,4…ヘッド,6…カバー部,26…ノズルプレート,30…ノズル開口,36…共通インク室(共通液体室),41…圧電振動子,51…開口部,52…導電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズル開口が形成されたノズルプレートと、前記ノズル開口に連通する複数の圧力発生室と、複数の前記圧力発生室に連通して圧力発生室に液体を供給する共通液体室と、前記各圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を発生させる圧力発生手段と、前記ノズルプレートの圧力発生室と反対側に設けられた導電性のカバー部とを具備する液体噴射ヘッドであって、
前記ノズルプレートは、非導電材料からなる基板であって、前記共通液体室に対向する位置に、板厚方向に貫通した状態で開設した開口部内に導電材料を充填して導電部を形成してなり、該導電部の少なくとも一部と前記カバー部の少なくとも一部とを重合させて前記共通液体室の液体を前記カバー部に導通させるようにしたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記ノズルプレートはシリコンで形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記開口部は、前記共通液体室側の開口面積よりも前記カバー部側の開口面積の方が大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記導電材料は、導電性接着剤であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記導電材料は、前記ノズルプレート面よりも前記カバー部側に盛り上がっていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−143573(P2011−143573A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4652(P2010−4652)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】