説明

液体噴射ヘッド

【課題】配線基板とアクチュエーター装置とを確実に導通させる。
【解決手段】異方性導電性接着剤を介して実装部の上方から配線基板を電気的に接続してあるので、同配線基板から駆動信号を加えると、異方性導電性接着剤を介して実装部に流れ、アクチュエータ装置に印加される。同アクチュエータ装置に駆動信号が印加されると、流路形成基板の所定の流路に充填されている液体が各流路に対応するインク等の液体がノズルより吐出される。異方性導電性接着剤を介して配線領域に配線基板を接着するため、位置合わせ用の目印を形成する。配線基板と配線領域の間には異方性導電性接着剤が塗布されることになるが、この目印は同配線領域よりも高い位置に形成しているので、異方性導電性接着剤が所定位置よりもはみ出たとしても目印を覆ってしまい、目印として機能しなくなることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射ヘッドには、ノズル開口に連通する圧力発生室が設けられた流路形成基板の一方面側に圧電素子を設け、圧電素子の変位によって圧力発生室内の圧力変動を行わせてインク滴をノズル開口から吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。
インクジェット式記録ヘッドとして、流路形成基板の圧電素子側に保護基板を接合し、保護基板上に設けられた駆動回路の各端子と、各圧電素子とをワイヤーボンディングによってボンディングワイヤーで電気的に接続し、駆動回路からの駆動信号をボンディングワイヤーを介して圧電素子に供給するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、インクジェット式記録ヘッドとして、複数の圧電素子に駆動信号を供給するCOF基板を接続したものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−053079号公報
【特許文献2】特開2007−301736号公報
【特許文献3】特開2008−023799号公報
【特許文献4】特開2006−281477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、駆動回路の各端子と各圧電素子とを個別にワイヤーボンディングで接続すると、ワイヤーボンディングを圧電素子の数だけ行わなければならず、製造時間が長時間になってしまうと共にコストが高騰してしまうという問題がある。
また、圧電素子にはボンディングワイヤーが接続される端子を配置する領域が必要となり、ヘッドが大型化してしまうという問題がある。
【0006】
さらに、特許文献2のように、COF基板を用いて圧電素子に電気的に接続するものも提案されているが、圧電素子が並設された列が複数列設けられている場合、COF基板と圧電素子との接続に使用される異方性導電性接着剤やポッティング剤などの樹脂材料が圧電素子の列間に流出し、導通不良が発生する虞があるという問題がある。ちなみに、流出した樹脂による導通不良を抑制するために、圧電素子の列間を広くすると大型化してしまう。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、配線基板とアクチュエーター装置とを確実に導通させて、コストを低減すると共に小型化を図ることができる液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、異方性導電性接着剤を介して実装部の上方から配線基板を電気的に接続してあるので、同配線基板から駆動信号を加えると、異方性導電性接着剤を介して実装部に流れ、アクチュエータ装置に印加される。同アクチュエータ装置に駆動信号が印加されると、流路形成基板の所定の流路に充填されている液体が各流路に対応するインク等の液体がノズルより吐出される。
【0009】
異方性導電性接着剤を介して配線領域に配線基板を接着するため、位置合わせ用の目印を形成する。配線基板と配線領域の間には異方性導電性接着剤が塗布されることになるが、この目印は同配線領域よりも高い位置に形成しているので、異方性導電性接着剤が所定位置よりもはみ出たとしても目印を覆ってしまい、目印として機能しなくなってしまうことがなくなる。
【0010】
目印を高い位置に形成する手法として、上記配線領域で上記配線基板の接着位置に隣接するとともに同配線領域よりも高い位置を形成する段部を形成し、上記目印はこの段部上に形成するようにしてもよい。
すなわち、配線領域に隣接する段部により、高い位置を作ることができる。
このような段部を形成するにあたり、上記配線基板は、先端をL字状に屈曲せしめて形成した先端部と、これにつながる本体部とからなり、上記段部はこの本体部と所定の一定距離を隔てた位置とするようにすることができる。この一定距離は、異方性導電性接着剤を介して上記先端部を所定位置に押し当てたときに余剰の同異法性導電接着剤が周縁にはみ出たときに、同段部と同本体部との間に入り込むとともに上方に誘導される程度の間隔とする。このようにすれば、異方性導電性接着剤は本体部と段部との間でも接着機能を呈するので、配線基板が外れにくくなる。
【0011】
段部の形成手法として、上記流路形成基板は、別部材にて被覆されるとともに、上記配線領域の周囲を覆う部材に上記段部を形成することで、同配線領域よりも高い位置に上記目印を形成するようにしてもよい。
流路形成基板は、さらに別部材にて被覆されることがある。従って、この別部材の側の形状を整えておけば、さらなる追加の工程などが不要となる。
【0012】
また、上記流路形成基板における上記配線領域を囲むように枠状とした板材を貼り合わせることで上記段部を形成し、この板材上に上記目印を形成するようにしてもよい。
別部材とした板材を貼り合わせることでも、高い位置を形成できる。
また、上記目印は上記配線領域における上記配線基板の接着位置に近接する位置で当該上記配線領域の面から突き出るように形成してもよい。すなわち、目印だけが突き出ることで、目印の周囲に異方性導電性接着剤が流れてきたとしても、目印の頂部が隠れることはなく、目印として機能する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、目印が配線領域よりも高い位置に形成されているので、異方性導電性接着剤が所定位置よりもはみ出たとしても目印を覆って機能しなくなることを防止できる液体噴射ヘッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】同記録ヘッドの平面図である。
【図3】同記録ヘッドの断面図である。
【図4】配線領域の拡大断面図である。
【図5】配線領域の拡大斜視図である。
【図6】配線領域の拡大斜視図である。
【図7】変形例にかかる配線領域の拡大斜視図である。
【図8】他の変形例にかかる配線領域の拡大斜視図である。
【図9】インクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は平面図、図3は図2に示すA−A′矢視断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態ではシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
【0016】
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の壁部11によって区画された圧力発生室12がその幅方向(図示短手方向)に並設された列が、圧力発生室12の図示長手方向に2列設けられている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、圧力発生室12と共に詳しくは後述するノズル開口毎に個別流路を構成する液体供給路の一例であるインク供給路14と連通路13とが壁部11によって区画されている。インク供給路14及び連通路13は、圧力発生室12の各列において、圧力発生室12の2つの列の外側に配置されている。
【0017】
インク供給路14は、詳しくは後述するマニホールド100と圧力発生室12との間でインクに流路抵抗を生じさせるものであり、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、圧力発生室12の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路13は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路13を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
【0018】
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きい断面積を有する連通路13とからなる個別流路が複数の壁部11により区画されて設けられた列が2列設けられている。
【0019】
流路形成基板10の圧力発生室12等の個別流路が開口する面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズル形成部材の一例でノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0020】
一方、このような流路形成基板10のノズルプレート20とは反対側の面には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には第1電極60と圧電体層70と第2電極80とが積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。すなわち、本実施形態では、圧力発生室12内のインク(液体)に圧力変化を生じさせるアクチュエーター装置として、圧電素子300を設けるようにした。なお、弾性膜50と絶縁体膜55とを総称して振動板と呼ぶ。
【0021】
また、このような各圧電素子300の第2電極80には、流路形成基板10のインク供給路14とは反対側の端部近傍まで延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加される。すなわち、本実施形態では、リード電極90の圧電素子300とは反対側の端部が、詳しくは後述する配線基板が電気的に接続される実装部となっている。
【0022】
また、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31を有する保護基板30が、接着剤35等によって接合されている。圧電素子300は、この圧電素子保持部31内に配置されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部31は、密封されていても、密封されていなくてもよい。また、圧電素子保持部31は、各圧電素子300毎に独立して設けてもよく、複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにしてもよい。本実施形態では、圧電素子保持部31を複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにした。
【0023】
さらに、保護基板30上の圧電素子保持部31に相対向する領域には、複数の個別流路の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100が設けられている。本実施形態では、マニホールド100は、保護基板30の流路形成基板10との接合面とは反対側の面に設けられた凹部で形成されている。すなわち、保護基板30の流路形成基板10とは反対側に開口しており、マニホールド100の開口は詳しくは後述するコンプライアンス基板40によって封止されている。なお、マニホールド100は、複数の個別流路の短手方向(幅方向)に亘って連続して設けられている。また、マニホールド100は、圧力発生室12の長手方向で保護基板30の両端部近傍まで設けられており、マニホールド100の一端部側は、個別流路の端部に相対向する領域まで設けられている。このようにマニホールド100を圧電素子保持部31の上方(平面視した際に圧電素子保持部31と重なる領域)に設けることで、マニホールド100を、圧力発生室12の長手方向における外側に拡幅する必要がなく、インクジェット式記録ヘッドIの圧力発生室12の長手方向の幅を小さくして小型化することができる。
【0024】
また、保護基板30には、個別流路である連通路13の端部に一端が連通すると共に、マニホールド100の一端部に他端が連通する厚さ方向に貫通した貫通孔である供給部101が設けられている。供給部101は、本実施形態では、複数の個別流路である連通路13に亘って1つ設けられている。そして、マニホールド100からのインクは、供給部101を介して各個別流路である連通路13、インク供給路14及び圧力発生室12に供給される。すなわち、本実施形態では、供給部101もマニホールド100の一部として機能する。
【0025】
このような保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料であるシリコン単結晶基板を用いている。
また、保護基板30には、圧力発生室12の2列の間に対応する領域に、厚さ方向に貫通する貫通孔102が設けられている。この貫通孔102には、配線基板200が挿通されており、配線基板200とアクチュエーター装置の実装部とを電気的に接続するものである。ここで本実施形態では、アクチュエーター装置が圧電素子300であり、圧電素子300に接続されたリード電極90は、その端部が貫通孔102内に配置される位置に設けられている。
【0026】
また、貫通孔102は、圧電素子300の各列に対して1つずつ設けられている。すなわち、本実施形態では、圧電素子300の列毎に配線基板200が接続されており、圧電素子300の列が2列あるため、貫通孔102は2つ設けられている。そして、互いに隣接する貫通孔102の間には、実装部(リード電極90の端部)を区画する隔壁103が設けられている。振動板となる弾性膜50におけるこの実装部が配置される領域を総称して配線領域と呼んでいる。
【0027】
リード電極90の貫通孔102内に露出した端部には、配線基板200が電気的に接続されている。配線基板200は、図示しない配線上に圧電素子300を駆動するための駆動回路201が実装された可撓性を有するものであり、例えば、チップオンフィルム(COF)やテープキャリアパッケージ(TCP)などのフレキシブルプリント基板(FPC)を用いることができる。
【0028】
配線基板200とアクチュエーター装置の実装部であるリード電極90とは、配線領域に適量を塗布された異方性導電性接着剤(ACP)210を介して電気的に接続することができる。異方性導電性接着剤210は、配線基板200とリード電極90とを電気的に接続すると共に、配線基板200を貫通孔102内に固定する接着剤としても機能する。
【0029】
また、保護基板30のマニホールド100が開口する面側には、封止膜41及び固定板42からなるコンプライアンス基板40が接合され、コンプライアンス基板40によってマニホールド100の開口が封止されている。
封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料、例えば、厚さが数μm程度のポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム等からなる。
【0030】
また、固定板42は、例えば、厚さが数十μm程度のステンレス鋼(SUS)などの金属などの硬質の材料からなる。固定板42は、図2に示すように、保護基板30のマニホールド100の周囲に亘って設けられており、マニホールド100に相対向する領域は厚さ方向に完全に除去された開口部43となっている。また、固定板42には、開口部43側に突出する突出部44が設けられており、この突出部44には、厚さ方向に貫通してインクが貯留された貯留手段(図示なし)からのインクをマニホールドに供給するための導入路45が設けられている。本実施形態では、突出部44を、供給部101とは反対側に、且つ圧力発生室12の並設方向の一部をマニホールド100に相対向する領域まで突出させるように設けた。このため、導入路45は、保護基板30に設けられた供給部101とは圧力発生室12の長手方向における反対側の端部に設けるようにした。このように、導入路45を保護基板30の供給部101とは反対側の端部に設けることによって、貯留手段から導入されたインクの動圧による影響が供給部101を介して圧力発生室12に及ぼされるのを低減させることができる。
【0031】
そして、このような固定板42の開口部43によって、マニホールド100の一方面は、可撓性を有する封止膜41のみで封止された撓み変形可能な可撓部46となっている。すなわち、本実施形態では、可撓部46は、マニホールド100に相対向する領域の保護基板30の供給部101に相対向する領域と、マニホールド100に相対向する領域の固定板42の導入路45の周囲とに設けられており、可撓部46は、これらの供給部101に相対向する領域と導入路45の周囲とに亘って連続して設けられている。このように、可撓部46を供給部101に相対向する領域と導入路45の周囲とに亘って連続して設けることで、可撓部46を広い面積で形成することができ、マニホールド100内のコンプライアンスを増大させて、圧力変動の悪影響によるクロストークの発生を確実に低減させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、駆動回路201が実装された配線基板200をリード電極90に接続するようにしたため、保護基板30上に駆動回路201を実装する必要がない。したがって、マニホールド100を圧電素子保持部31の上方に拡幅することができると共に、保護基板30上に広い可撓部46を有するコンプライアンス基板40を設けることができる。
【0033】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部のインクが貯留された貯留手段からマニホールド100内にインクを取り込み、マニホールド100から供給部101を介してノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路201からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、圧電素子300及び振動板をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインクが吐出する。
【0034】
図4は配線領域を拡大断面図により示しており、図5と図6は要部を斜視図により示している。
貫通孔102内の底の領域が配線領域となっており、この貫通孔102自体は保護基板30によって形成されている。保護基板30の貫通孔102の開口は上記配線領域側で狭まるように段部32が形成されている。その狭まり方は一様ではなく、図5には配線基板200の中央部分を省略して示しているが、配線基板200を基準とすると、長手方向となる幅方向の外側にあたる段部32aの方が、短手方向となる方向の段部32bよりも、狭まり方(言い換えると貫通孔102の内周壁面からの突出長さ)が大きい。また、長手方向における段部32aの上面には十字型の目印32cを形成してある。目印の形状は十字に限られるものではなく、他の形状でも構わない。この目印32cは、配線基板200を自動機にて装着する際に、配線基板200の位置合わせを行うために使用される。なお、段部32a,32bと目印32cは相対面する側に一対ずつ設けられている。
【0035】
段部32a,32bが配線領域の側に形成されることで、保護基板30を弾性膜50に接着剤35で接着したとき、リード電極90が配設される配線領域よりも段部32a,32bの上面の方が高い位置となる。そして、この高い位置に目印32cが形成されることになる。
配線基板200の先端はL字状に屈曲されて形成され、先端部200aと、これにつながる本体部200bとから構成されている。この先端部200aにおける配線領域に面する側はリード線が露出しており、それ以外の部分では樹脂によって被覆されている。露出されたリード線が上記各リード電極90に正確に対面するように上記目印32cにて位置合わせが行われている。予めリード電極90の上には適量の異方性導電性接着剤210が塗布され、その上から配線基板200の先端部200aを位置合わせて押しつけることで正確に位置合わせされた配線基板200のリード線と上記リード電極90とが電気的に接続されつつ、配線基板200自体が配線領域に接着されて固定される。
【0036】
この異方性導電性接着剤210は液状であり、最低限の塗布量が好ましいが、自動機で安定して塗布するためには本来の最低限以上の量の塗布が必要となる。この結果、導通性は確保されるが、必要以上の量を塗布することになるので配線領域の周囲に流れでることは否めない。ただし、上述した段部32a,32bによって配線領域を取り囲んでいるので、容易には段部32a上には流れ出ない。むろん、流れ出ない程度の塗布量で、必要な導電性は十分に確保できる。すなわち、必要な導電性を確保できる必要量を塗布しつつも、段部32a上には流れ出ないようにさせることができる。これに対し、従来は、目印にあたるものを配線領域と同じ弾性膜50に形成していたので、流れ出る異方性導電性接着剤210によって覆われてしまうと正確な位置合わせができなくなってしまっていた。
【0037】
図7は、変形例を示している。
先の例では、貫通孔102を形成する保護基板30によって段部32a,32bを形成しているが、本例では、別部材としての板材33で同様の段部33a,33bを形成している。むろん保護基板30に形成する貫通孔102の開口は一定としてあり、この貫通孔102の開口形状にほぼ一致する外形とした板材33を挿入し、接着剤35などで固定しておく。
【0038】
このようにしても、配線領域よりも高い位置に段部33a,33bが配置され、その上面に形成した目印33cは流れ出る異方性導電性接着剤210で覆われてしまうことを防げる。
図8は、さらなる変形例を示している。
先の二つの例では、配線領域より高い位置を形成する段部を形成していたが、この例では目印34だけを配線領域よりも突き出るように形成している。すなわち、十字型の突き出る目印34を形成することで、段部がなくても、流れ出る異方性導電性接着剤210で覆われてしまうことを防げる。
【0039】
ところで、異方性導電性接着剤210は、配線基板200の先端部200aとリード電極90との間で挟まれる際に周りに流れ出る。このとき、本体部200bと段部32bが近い位置にあると、図4に示すように、段部32bの側に流れ出た異方性導電性接着剤210は表面張力による毛細管現象によって吸い上げられる。すなわち、配線基板200は、先端部200aのみならず本体部200bの先端付近が段部32b側にも接着剤で固定できることになる。このような近い距離は、具体的には異方性導電性接着剤210の粘性等にも影響されるが、流れ出る量と毛細管現象とを考慮した一定距離として実現できる。一方、先端部200aにおける本体部200bとは反対側に流れ出た余剰分については、本体部200bがないこともあって、反対側の段部32bとの間に吸い上げられることはない。また、意図的に吸い上げの効果が生じないような位置関係としておくことで、意図的に余剰分を本体部200bと近接する段部32bの壁面との間に吸い上げさせることが可能となる。
【0040】
言い換えると、配線基板200は、先端をL字状に屈曲せしめて形成した先端部200aと、これにつながる本体部200bとからなり、段部32bはこの本体部200bと所定の一定距離を隔てた位置となっており、この一定距離は、異方性導電性接着剤210を介して上記先端部を所定位置に押し当てたときに余剰の同異法性導電接着剤が周縁にはみ出たときに同段部32bと同本体部200bとの間に入り込むとともに上方に誘導される程度の間隔である。
【0041】
また、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせるアクチュエーター装置として、薄膜型の圧電素子300を有するアクチュエーター装置を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を有するアクチュエーター装置や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子を有するアクチュエーター装置などを使用することができる。また、アクチュエーター装置として、圧力発生室12内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーター装置などを使用することができる。何れのアクチュエーター装置であっても、実装部が流路形成基板上に設けられていればよい。
【0042】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。
図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図9に示すように、インクジェット式記録装置IIは、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bを有し、記録ヘッドユニット1A及び1Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0043】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0044】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【0045】
また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置IIを挙げて説明したが、上述した他の液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
【0046】
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
【0047】
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0048】
10…流路形成基板、12…圧力発生室、13…連通路、14…インク供給路、20…ノズルプレート、21…ノズル開口、30…保護基板、32、32a、32b…段部、32c…目印、33…板材、33a、33b…段部、33c…目印、34…目印、40…コンプライアンス基板、41…封止膜、42…固定板、43…開口部、46…可撓部、50…弾性膜、55…絶縁体膜、60…第1電極、70…圧電体層、80…第2電極、90…リード電極(実装部)、100…マニホールド、101…供給部、102…貫通孔、103、103A…隔壁、200…配線基板、201…駆動回路、210…異方性導電性接着剤、300…圧電素子(アクチュエーター装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルに対応する所定の流路を形成した流路形成基板と、
この流路形成基板上における所定の配線領域に設けられた複数の実装部を有するアクチュエーター装置と、
上記配線領域で上記実装部の上方から異方性導電性接着剤を介して電気的に接続されて、駆動信号を上記アクチュエーター装置に供給する可撓性を有する配線基板と
を備える液体噴射ヘッドであって、
上記配線領域に上記配線基板の位置合わせに使用する目印を形成するにあたり、この目印は同配線領域よりも高い位置に形成していることを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
上記配線領域で上記配線基板の接着位置に隣接するとともに同配線領域よりも高い位置を形成する段部を有し、上記目印はこの段部上に形成したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
上記配線基板は、先端をL字状に屈曲せしめて形成した先端部と、これにつながる本体部とからなり、上記段部はこの本体部と所定の一定距離を隔てた位置となっており、この一定距離は、異方性導電性接着剤を介して上記先端部を所定位置に押し当てたときに余剰の同異法性導電接着剤が周縁にはみ出たときに同段部と同本体部との間に入り込むとともに上方に誘導される程度の間隔であることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
上記流路形成基板は、別部材にて被覆されるとともに、上記配線領域の周囲を覆う部材に上記段部を形成することで、同配線領域よりも高い位置に上記目印を形成していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
上記流路形成基板における上記配線領域を囲むように枠状とした板材を貼り合わせることで上記段部を形成し、この板材上に上記目印を形成していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
上記目印は上記配線領域における上記配線基板の接着位置に近接する位置で当該上記配線領域の面から突き出るように形成したことを特徴とする請求項1〜請求項5に記載の液体噴射ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−218155(P2012−218155A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82376(P2011−82376)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】