説明

液体噴射装置、および液体噴射装置を用いた医療機器

【課題】供給圧力の変動する液体が供給された場合でも、液体噴射装置の操作感が損なわれることを回避する。
【解決手段】液体圧送手段を用いて液体室に液体を圧送するとともに、容積変更部に駆動電圧を印加して液体室の容積を減少させることによって、加圧した液体室内の液体を噴射ノズルから噴射する。容積変更部に駆動電圧を印加するに際しては、液体室に圧送される液体の圧力変動が液体の噴射に与える影響を、駆動電圧の電圧波形を変更することによって補償するとともに、供給流量が所定の圧力以下に低減した場合は駆動波形の時間間隔を補正する。こうすれば、たとえ液体室に圧送される液体の圧力が変動した場合でも、液体噴射装置の操作に違和感が現れることを抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧した液体を噴射する液体噴射装置、および液体噴射装置を用いた医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
水あるいは生理食塩水などの液体を加圧して、噴射ノズルから細くしぼった状態で生体組織などに噴射することで、生体組織の切開や切除などを行う技術が開発されている(特許文献1)。この技術は、血管などの脈管構造を傷つけることなく臓器などの組織だけを切開することが可能であり、周囲の組織に与える損傷が少ないので、患者の負担を小さくすることが可能である。
【0003】
また、液体を噴射するに際して、単に噴射ノズルから連続的に噴射するのではなく、パルス状の噴流を断続的に噴射することで、少ない噴射量で生体組織の切開を可能とした技術も提案されている(特許文献2)。この技術では、噴射しようとする液体を小さな液体室に供給した後に、液体室の容積を瞬間的に減少して液体を加圧することで、噴射ノズルからパルス状に液体を噴射している。
【0004】
ここで、噴射ノズルから液体を噴射するためには、液体室および噴射ノズル先端までが液体で満たされるように、常に必要十分な量の液体を噴射ユニットに供給しておく必要がある。また、供給した液体に気泡が混入していると、液体を噴射するために液体室の容積を減少させても気泡が潰れてしまうので、液体室内の液体を加圧して適切に噴射することができなくなる。このため、パルス状の噴流を噴射する技術では、液体室に液体を供給するためのポンプとして、気泡が発生し易い遠心型のポンプ(例えば、ベーンポンプなど)ではなく、気泡を発生させることなく十分な流量を確保することが可能な容積変更型のポンプ(例えば、ピストンポンプなど)が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−152127号公報
【特許文献2】特開2008−082202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、容積変更型のポンプは、液体の供給圧力に変動が生じ易いため、液体噴射装置の操作感が損なわれ易いという問題がある。供給圧力が低下すると、噴射される液体の噴射量に対して供給量が不足するため、噴射量が著しく低下し、切開能力、あるいは液体を噴射した時に操作者が感じる反力が著しく変動することとなる。このため、液体をパルス状に噴射する技術では、容積変更型ではありながら圧力変動ができるだけ生じない特殊なポンプの使用を余儀なくされていた。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、供給圧力の変動する液体が供給された場合でも、液体噴射装置の操作感が損なわれることを回避することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本適用例の液体噴射装置は次の構成を採用した。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる液体噴射装置は、噴射ノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、噴射しようとする液体が供給されると共に、前記噴射ノズルが接続された液体室と、前記液体室に液体を圧送する液体圧送手段と、印加された駆動電圧に応じて変形することで、前記液体室の容積を変更する容積変更部と、前記液体室に液体が供給された状態で、前記容積変更部に所定の電圧波形の前記駆動電圧を印加する駆動電圧印加手段と、前記液体室に圧送される液体の圧力変動データを記憶する記憶部と、を備え、前記液体圧送手段は、前記液体室に圧力変動を伴う状態で液体を圧送する手段であり、前記駆動電圧印加手段は、前記記憶部の前記圧力変動データに基づき、前記電圧波形を変更することによって補償しながら、前記容積変更部に印加し、前記圧力変動データが所定の圧力より小さい場合の、電圧波形と前記電圧波形の次に印加する電圧波形との時間間隔が、前記圧力変動データが所定の圧力より大きい場合の、電圧波形と前記電圧波形の次に印加する電圧波形との時間間隔よりも長いことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、液体圧送手段を用いて液体室に液体を圧送するとともに、容積変更部に駆動電圧を印加して液体室の容積を減少させることによって、加圧した液体室内の液体を噴射ノズルから噴射する。そして、容積変更部に駆動電圧を印加するに際しては、液体室に圧送される液体の圧力変動が液体の噴射に与える影響を、駆動電圧の電圧波形を変更することによって補償する。
【0011】
液体室に圧送される液体の圧力が変動すると、噴射ノズルから噴射される液体の勢いが変動する。一方、容積変更部に印加する駆動電圧の電圧波形を変更することによっても、噴射ノズルから噴射される液体の勢いが変動する。このことから、液体室に圧送される液体の圧力変動による影響を打ち消すように、駆動電圧の電圧波形を変更してやれば、たとえ液体室に圧送される液体の圧力が変動した場合でも、液体噴射装置の操作に違和感が現れることを抑制することが可能となる。
【0012】
さらに、供給圧力が所定の圧力より小さい場合の、一つの電圧波形と次に印加する電圧波形との時間間隔を、供給圧力が所定の圧力より大きい場合の、一つの電圧波形と次に印加する電圧波形との時間間隔より長くすることで、一度噴射した後の、次の噴射までの間隔を長くすることができる。噴射の間隔(タイミング)を長くすることができれば、一つの噴射と次の噴射との間に供給される液体の流量を、たとえ供給ポンプから圧送される液体の圧力が低下した場合でも、十分に確保できるようになるため、液体を噴射ノズル先端から適切に噴射することが可能となる。
【0013】
[適用例2]上記適用例にかかる液体噴射装置において、前記駆動電圧印加手段は、前記液体室に圧送される液体の圧力が低くなるほど、前記駆動電圧の最大電位差が大きくなるように電圧波形を変更した後、前記容積変更部に印加する手段であることとしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、駆動電圧の最大電位差が大きくなるように電圧波形を変更すれば、液体室内の液体の圧力を高めることができるので、液体室内に圧送される液体の圧力低下を補うことができる。その結果、たとえ、液体室に圧送される液体の圧力が低下した場合でも、液体噴射装置の操作感が損なわれることを抑制することが可能となる。
【0015】
尚、液体室に圧送される液体の圧力が増加する場合には、圧力が高くなるほど、駆動電圧の最大電位差が小さくなるように電圧波形を変更して、容積変更部に印加すればよい。こうすれば、液体室の容積変更による液体室内の圧力増加を抑制することができるので、液体室内に圧送される液体の圧力増加を補うことができる。その結果、たとえ、液体室に圧送される液体の圧力が増加した場合でも、液体噴射装置の操作感が損なわれることを抑制することが可能となる。
【0016】
[適用例3]上記適用例にかかる液体噴射装置において、前記駆動電圧印加手段は、前記液体室に圧送される液体の圧力が低くなるほど、前記駆動電圧の電圧上昇速度が増加するように電圧波形を変形した後、前記容積変更部に印加する手段であることとしてもよい。
【0017】
このような構成によれば、駆動電圧の電圧上昇速度が増加するように電圧波形を変更すれば、液体室内の液体の圧力を高めることができるので、液体室内に圧送される液体の圧力低下を補うことができる。その結果、たとえ、液体室内に圧送される液体の圧力が低下した場合でも、液体噴射装置の操作感が損なわれることを抑制することが可能となる。
【0018】
尚、液体室に圧送される液体の圧力が増加する場合には、圧力が高くなるほど、駆動電圧の電圧上昇速度が減少するように電圧波形を変更して、容積変更部に印加すればよい。こうすれば、液体室の容積変更による液体室内の圧力増加を抑制することができるので、液体室内に圧送される液体の圧力増加を補うことができる。その結果、たとえ、液体室に圧送される液体の圧力が増加した場合でも、液体噴射装置の操作感が損なわれることを抑制することが可能となる。
【0019】
[適用例4]本適用例にかかる医療機器は、上記適用例にかかる液体噴射装置を用いたことを特徴とする。
このような構成によれば、上記適用例にかかる液体噴射装置を用いることにより、液体室内に圧送される液体の圧力が変動した場合でも、液体噴射装置の操作感が損なわれることを抑制することができるため、使用に際して安定した操作が可能な医療機器を提供できる。
医療機器としては、生体手術に使用されるウォータージェットメスなどに用いてもよい。安定した操作により医者が医療行為に集中することを可能とした安全性の高い医療機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例における液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】噴射ユニットの詳細な構造を示した説明図である。
【図3】実施例の噴射ユニットが液体を噴射する動作を示した説明図である。
【図4】アクチュエーターに駆動電圧が印加されることにより、液体室内の液体が加圧される様子を概念的に示した説明図である。
【図5】供給ポンプから圧力変動を含む液体が供給される場合に生じる現象を概念的に示した説明図である。
【図6】実施例の液体噴射装置がアクチュエーターに印加する駆動電圧波形を変更する様子を示した説明図である。
【図7】実施例の液体噴射装置が駆動電圧波形に補正係数を乗算することで液体室内の圧力ピークを一定に保つ様子を示した説明図である。
【図8】供給ポンプから圧力変動を含む液体が供給される場合に、所定の圧力を定めることを示した説明図である。
【図9】実施例の液体噴射装置がアクチュエーターに印加する駆動電圧波形間隔を変更する様子を示した説明図である。
【図10】実施例の液体噴射装置が駆動電圧波形に補正係数を乗算することに加えて、所定の圧力以下では駆動電圧波形の時間間隔に補正をすることで、液体室内の圧力ピークを一定に保ちつつ、噴射の時間間隔を調整する様子を示した説明図である。
【図11】実施例の変形例の液体噴射装置が駆動電圧波形を変形する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
1.装置構成
2.液体の噴射動作
3.アクチュエーターの駆動方法
4.実施例の変形例
【実施例】
【0022】
(1.装置構成)
図1は、実施例における液体噴射装置10の大まかな構成を示した説明図である。図示されているように液体噴射装置10は、大きく分けると、パルス状に液体を噴射する噴射ユニット100と、噴射ユニット100から噴射される液体を噴射ユニット100に向けて圧送することで供給する液体圧送手段としての供給ポンプ300と、噴射ユニット100および供給ポンプ300の動作を制御する制御ユニット200と、あらかじめ供給ポンプ300の供給圧力変動を記憶しておく記憶部としての記憶部202などから構成されている。なお、記憶部202は制御ユニット200内に組み込まれていてもよい。
【0023】
噴射ユニット100は、金属製で略長方形形状の前ブロック106に、同じく金属製の後ブロック108を重ねてネジ止めしたような構造となっており、前ブロック106の前面には円管形状の液体通路管104が立設され、液体通路管104の先端には噴射ノズルとしての噴射ノズル102が挿着されている。前ブロック106と後ブロック108との合わせ面には、薄い円板形状の液体室としての液体室110が設けられており、液体室110は、液体通路管104を介して噴射ノズル102に接続されている。また、後ブロック108の内部には、積層型圧電素子によって構成された容積変更部としてのアクチュエーター112が設けられており、アクチュエーター112が駆動電圧に応じて変形することによって、液体室110を変形させて、液体室110の容積を変更させることが可能となっている。
【0024】
供給ポンプ300は、噴射しようとする液体(水、生理食塩水、薬液など)が貯められた液体タンク306から、チューブ302を介して液体を吸い上げた後、チューブ304を介して噴射ユニット100の液体室110内に供給する。供給ポンプ300には、噴射ユニット100の要求に応じて必要十分な分量の液体を供給可能であるとともに、液体中に気泡を混入させないこととが求められている。このため、図示は省略するが、水車状の部材(ベーンあるいはインペラーと呼ばれる)をケース内部で回転させることで液体を圧送する遠心型のポンプではなく、容積を増減可能な液体室内に液体を吸い込んだ後、その液体室の容積を減少させることで液体を圧送する容積変更型のポンプ(ピストンポンプや、ダイアフラムポンプなど)が用いられる。
【0025】
液体噴射装置10で用いられている供給ポンプ300は、シリンダー内で2つのピストンを摺動させることによって液体室内の液体を圧送するピストンポンプであるものとする。2つのピストンは、一方が前進している時は他方が後退するといったように、互いに逆位相で摺動するようになっているため、途切れることなく噴射ユニット100に向かって液体を圧送することが可能である。もっとも、2つのピストンを逆位相で摺動させるだけでは、液体を圧送する圧力までは均一にすることができず、従って、噴射ユニット100には圧力変動を伴った状態で、液体が供給されている。
【0026】
制御ユニット200は、噴射ユニット100に内蔵されたアクチュエーター112や、供給ポンプ300を制御することにより、液体噴射装置10の動作を制御している。また、上述したように、液体噴射装置10では、供給ポンプ300から噴射ユニット100に圧力変動を伴った液体が供給されている。そして、記憶部202には、供給ポンプ300から圧送される液体による液体室110内の圧力変動データがあらかじめ記憶されている。詳細には後述するが、液体噴射装置10では、噴射ユニット100に内蔵されたアクチュエーター112の駆動態様を記憶部202に記憶された液体室110内の圧力変動データに基づいて変更しているために、たとえ噴射ユニット100に供給される液体に圧力変動が含まれていた場合でも、液体噴射装置10の操作感が損なわれないようになっている。
【0027】
図2は、噴射ユニット100の詳細な構造を示した説明図である。図2(a)には、噴射ユニット100の断面を取った分解組立図が示されており、図2(b)には、組み立て後の断面図が示されている。後ブロック108には、前ブロック106と合わさる面のほぼ中央に、大きな円形の浅い凹部108cが形成されており、凹部108cの中央位置には、後ブロック108を貫通して円形断面の貫通穴108hが形成されている。
【0028】
凹部108cの底部には、貫通穴108hを塞ぐような状態で金属製の薄いダイアフラム114が設けられ、ダイアフラム114の周縁部は、ロウ付けあるいは拡散接合などの手法によって、凹部108cの底部に対して気密に固着されている。更に、凹部108cには、ダイアフラム114の凹部108cの底部側とは反対側(図では上側)から、円環形状をした金属製の補強板120が、凹部108cに緩く嵌め込まれるようになっている。そして、補強板120の板厚は、ダイアフラム114を挟んで補強板120を嵌めた時に、凹部108cが形成されている後ブロック108の端面と、補強板120の端面との面位置が同一となるような厚さに設定されている。
【0029】
ダイアフラム114によって一端側が塞がれた貫通穴108hには、アクチュエーター112(実施例では積層型圧電素子)が収容され、アクチュエーター112の他端側では、円板形状で金属製の底板118によって貫通穴108hが塞がれている。また、アクチュエーター112とダイアフラム114との間には、円形で金属製のシム116が収納される。そして、後ブロック108の貫通穴108hにアクチュエーター112を収納して、底板118で貫通穴108hを塞いだ時に、ダイアフラム114と、シム116と、アクチュエーター112と、底板118とがちょうど接した状態となるように、シム116の厚さが選択されている。
【0030】
前ブロック106には、後ブロック108と合わさる側の面に、円形の浅い凹部106cが形成されている。この凹部106cの内径は、後ブロック108に嵌め込まれた補強板120の円環形状の内径とほぼ同じ大きさに設定されている。そして、前ブロック106と後ブロック108とを合わせてネジ止めした時に、後ブロック108側に設けられたダイアフラム114および補強板120の内周面と、前ブロック106に設けられた凹部106cとによって、略円板形状の液体室110が形成されるようになっている。
【0031】
また、前ブロック106には、前ブロック106の側方から液体室110に液体を供給するための供給通路106iが設けられている。更に、凹部106cの中央位置には、液体室110で加圧された液体が通過する細径の噴射通路106oが貫通している。この噴射通路106oが開口する部分には、液体通路管104が内径部分で挿着されている。そして、その液体通路管104の先端には噴射ノズル102が挿着されている。従って、噴射ユニット100から噴射される液体の通路は、液体室110を出た後噴射通路106oを通って液体通路管104に出ると通路断面積が広くなり、液体通路管104の先端の噴射ノズル102の部分で再び断面積が狭くなるようになっている。
【0032】
図2(b)には、噴射ユニット100を組み立てた状態での断面図が示されている。図示されているように、補強板120の端面は後ブロック108の端面とちょうど面位置が同一になっており、この面に前ブロック106を合わせることで、前ブロック106と後ブロック108との間に液体室110が形成されている。また、後ブロック108の貫通穴108hに、シム116およびアクチュエーター112を収納して底板118を取り付けると、ダイアフラム114と、シム116と、アクチュエーター112と、底板118とがちょうど接する状態となっている。
【0033】
(2.液体の噴射動作)
図3は、実施例の噴射ユニット100が液体を噴射する動作を示した説明図である。図3(a)は、供給ポンプ300を駆動しているが、アクチュエーター112は駆動していない状態(駆動電圧を印加する前の状態)を表している。この状態では、図中に太い破線の矢印で示されるように、供給ポンプ300によって供給された液体で液体室110が満たされる。図中では、液体室110に斜線を付すことによって、液体室110が液体で満たされていることを表している。
【0034】
続いて、駆動電圧を印加することにより、アクチュエーター112を駆動する。すると、アクチュエーター112は伸長する方向に変形し、ダイアフラム114を変形させて、液体室110の容積を減少させようとする。その結果、液体室110の液体が加圧されて、噴射通路106oおよび液体通路管104を介して、噴射ノズル102から噴射される。
【0035】
尚、液体室110には、噴射通路106oだけでなく、供給通路106iも接続されている。従って、液体室110で加圧された液体は、噴射通路106oからだけでなく、供給通路106iからも流出しようとするものと考えられる。しかし実際には、液体室110で加圧された液体は、専ら噴射通路106oから流出し、供給通路106iから流出することはない。
【0036】
これは、次のような理由による。先ず、供給通路106i内の液体は液体室110内に流入しようとしているので、液体室110で加圧された液体が供給通路106iから流出するためには、供給通路106i内の液体の流れを押し戻す必要がある。加えて、供給通路106i内の液体は、後方から供給ポンプ300によって圧送されているので、この圧力にも打ち勝つ必要がある。
【0037】
これに対して、噴射通路106oでは、液体室110からの流出を妨げるような液体の流れは存在せず、しかも供給ポンプ300が液体を圧送する圧力も、液体室110からの流出を妨げる方向には作用しない。
このため、液体室110で加圧された液体は、供給通路106iではなく、専ら噴射通路106oから流出する。加えて、噴射通路106oと供給通路106iの断面積や長さを調整することで、噴射通路106oよりも供給通路106iのイナータンスを大きくして、液体室110で加圧された液体が噴射通路106oから流出し易くなる方向に作用させることができる。
【0038】
例えば、噴射通路106oを出た部分で液体の通路の断面積(すなわち、液体通路管104の断面積)を供給通路106iの断面積よりも大きく形成したり、噴射通路106oの長さを供給通路106iの長さよりも短く形成したりすることによって、噴射通路106oよりも供給通路106iのイナータンスを大きくすることができる。
これらの理由から、液体室110で加圧された液体は、専ら噴射通路106oから流出し、供給通路106iから流出することはない。
【0039】
図3(b)には、アクチュエーター112に駆動電圧を印加することで、アクチュエーター112が変形して、液体室110の容積を減少させる。その結果、押し出された分の液体が噴射ノズル102からパルス状に噴射される様子が示されている。
【0040】
こうして液体をパルス状に噴射した後、アクチュエーター112に印加した電圧を取り除く。すると、変形していたアクチュエーター112が元の長さに復元し、それに伴って減少していた液体室110の容積が元の容積に復元する。その動きと共に、供給ポンプ300から液体室110に液体が供給される。その結果、図3(a)に示したアクチュエーター112を駆動する前の状態に復帰する。そして、この状態から再びアクチュエーター112に駆動電圧を印加すると、図3(b)に示したようにアクチュエーター112が変形して、液体室110から押し出された分の液体が、噴射ノズル102からパルス状に噴射される。このように、実施例の液体噴射装置10では、アクチュエーター112に駆動電圧を印加する度に、噴射ノズル102から液体をパルス状に噴射することが可能となっている。
【0041】
図4は、アクチュエーター112に駆動電圧が印加されることにより、液体室110内の液体が加圧される様子を概念的に示した説明図である。尚、図4は、アクチュエーター112による加減圧分のみであるため、供給ポンプ300から液体室110に液体が供給される際の圧力は含まれていない。図の上段には、アクチュエーター112に印加される駆動電圧波形が示されており、図の下段には、アクチュエーター112によって液体室110が変形することで、液体室110内の圧力が変化する様子が概念的に示されている。
実施例では、アクチュエーター112に印加される電圧が上昇すると、アクチュエーター112が伸びる方向に変形して液体室110の容積が減少し、逆に、印加される電圧が低下すると、液体室110の容積が増加するようになっている。
【0042】
図4中に示した駆動電圧波形では、実線で示した部分では液体室110が圧縮され、破線で示した部分では液体室110が拡大されている。そして、液体室110が圧縮される部分(駆動電圧波形が実線で示された部分)では、液体室110内の液体が加圧され、その結果、噴射ノズル102から液体が噴出することになる。その後、液体室110の容積が元に戻る部分(駆動電圧波形が破線で示された部分)では、液体室110の圧力が低下し、その結果、供給通路106iから液体室110内に液体が供給される。ここで、供給ポンプ300から供給される液体の圧力が変動していると、以下のような事態が発生する。
【0043】
図5は、供給ポンプ300が噴射ユニット100に向かって供給する液体に圧力変動が含まれていた場合に生じる現象を概念的に示した説明図である。例えば、供給ポンプ300の出口部分での液体圧力が、図5(a)に示したように周期T1で変動していたものとする。この圧力変動は、供給ポンプ300と噴射ユニット100(液体室110の入口部分)との間を接続するチューブ304の部分で、若干の時間遅れDが発生すると共に、圧力振幅も僅かに減少する。
結果、図5(b)のように圧力が変動した状態で、噴射ユニット100の液体室110に供給される。従って、アクチュエーター112を駆動しない状態では、液体室110内の圧力は、図5(b)に示すような状態で変動することになる。また、記憶部202には図5(b)に示すような、液体室110内の圧力変動データを記憶しておく。
【0044】
液体室110内の圧力が、図5(b)に示されるような状態で、図4に示した駆動電圧波形を用いてアクチュエーター112を駆動する。すると、アクチュエーター112によって液体室110が圧縮あるいは拡大する動きに応じて、液体室110内の圧力が増加あるいは減少する。その結果、例えば、後述する周期T2の駆動電圧波形をアクチュエーター112に印加すると、液体室110内の圧力は、図5(c)に示したように、周期T1で変化する長周期の変動に、周期T2で変化する短周期の変動が重畳したような状態で変動することになる。
【0045】
図5(c)に示すような状態で液体室110内の圧力が変動すると、以下のように液体噴射装置10の操作感が損なわれてしまう。
先ず、噴射ノズル102からは、周期T2の間隔でパルス状に液体が噴射されるが、パルス毎に、液体が噴射される勢いが変動する。このため、生物組織の切開能力も変動し、その結果、組織を切り過ぎてしまったり、逆に切り方が足らなかったりする事態が発生する。また、噴射ノズル102の外側は大気圧で一定であるから、液体室110内の圧力が変動すると、それに伴って噴射ノズル102から噴射される液体の流量も変動する。そして、噴射流量の変動も、切開能力の変動を引き起こす。
【0046】
加えて、噴射ノズル102から液体を噴射すると、その反力が噴射ユニット100に伝わることから、噴射ノズル102から噴射する液体の勢いが変動すると、噴射ユニット100を保持しておくために要する力も変動し、その結果、液体噴射装置10の操作者が噴射ユニット100を同じ位置で保持しておくことが困難となる。
【0047】
さらに、噴射ノズル102から液体を噴射すると、液体が噴射された直後は、噴射ノズル102、および噴射ノズル102と液体室110とをつなぐ液体通路管104内の一部は液体が満たされていない状態になる。したがって、次の液体の噴射までの時間に、供給ポンプ300から圧送される液体で、噴射ノズル102先端までを充填する必要がある。一般的に、圧送される液体の圧力が小さいほど、圧送される液体の流量が低下するので、供給ポンプ300から圧送される液体が、所定の圧力以下の場合は、一度噴射した後に供給ポンプ300から圧送される液体の量が不足し、次の噴射までに噴射ノズル102先端までを液体で充填できない可能性がある。
【0048】
噴射ノズル102先端まで液体が充填されていない状態では、噴射ノズル102から噴射する液体の流量が低下し、その結果、生体組織の切り方が足らないといった事態が発生する。また、噴射ノズル102から噴射する液体の勢いが変動するため、噴射ユニット100を保持しておくために要する力も変動し、その結果、液体噴射装置10の操作者が噴射ユニット100を同じ位置で保持しておくことが困難となる。
【0049】
以上のような理由から、供給ポンプ300の圧送圧力が変動すると液体噴射装置10の操作感が損なわれてしまう。そこで、実施例の液体噴射装置10では、供給ポンプ300から供給される液体の圧力に応じて、アクチュエーター112に印加する電圧波形を変更し、さらに、供給圧力が所定の圧力以下となった場合は、噴射と次の噴射との時間間隔を補正することで、たとえ供給ポンプ300からの液体に圧力変動が存在する場合でも、液体噴射装置10の操作感が損なわれることを回避可能としている。
【0050】
(3.アクチュエーターの駆動方法)
図6は、実施例の液体噴射装置10がアクチュエーター112に印加する駆動電圧波形を変更する様子を示した説明図である。実施例では、標準として記憶されている駆動電圧波形に補正係数を乗算することによって、アクチュエーター112に印加する駆動電圧波形を変更する。例えば、図6の上段に示した駆動電圧波形のうち、左端に示した駆動電圧波形は補正係数「1」を乗算した波形(すなわち、標準の駆動電圧波形)であり、中央に示した駆動電圧波形は補正係数「1.2」を乗算した波形であり、右端に示した波形は補正係数「1.4」を乗算した駆動電圧波形である。
【0051】
また、図6の下段には、上段に示したそれぞれの駆動電圧波形によって液体室110内の圧力が変動する様子が示されている。図示されているように、補正係数が大きくなるほど(駆動電圧波形の最大電圧が大きくなるほど)、液体室110内に発生する圧力のピーク値も大きくなる。逆に、補正係数が小さくなると、液体室110内に発生する圧力のピーク値も小さくなる。実施例の液体噴射装置10では、このように、アクチュエーター112に印加する駆動電圧波形に補正係数を乗算することで、供給ポンプ300からの液体の圧力変動に起因して液体噴射装置10の操作感が損なわれることを回避している。
【0052】
図7は、実施例の液体噴射装置10が、駆動電圧波形に補正係数を乗算することで、供給ポンプ300からの液体供給圧力の変動を打ち消し、液体室110内の圧力のピーク値を一定に保つ様子を示した説明図である。尚、図7では、供給圧力が所定の圧力以下となった場合に、噴射と次の噴射との時間間隔を補正する効果は含まれていない。
供給ポンプ300が液体を圧送する際の圧力が、図7(a)に示すように変動していた場合、標準の(補正係数を乗算しない)駆動電圧波形を用いてアクチュエーター112を駆動すると、液体室110内の圧力は、図7(b)に示すように変動する。その結果、図5を用いて前述したように、液体噴射装置10の操作感が損なわれることになる。
【0053】
そこで、液体室110に供給される液体の圧力が低下している部分では、駆動電圧波形に「1」よりも大きな補正係数を乗算した後、アクチュエーター112に印加することで、図7(c)に示されるように、液体室110内の圧力のピーク値がいつでもほぼ同じ値となり一定に保たれるようにする。記憶部202に記憶した液体室110内での圧力変動データから、適切な補正係数を予め設定しておくことで、図7(c)に示されるように、液体室110内の圧力のピーク値がほぼ一定に保たれるようにすることができる。
【0054】
尚、記憶部202は供給ポンプ300内に組み込まれていても良い。記憶部202を供給ポンプ300内に組み込んだ場合は、記憶部202には図5(a)に示されるような供給ポンプ300出口での供給圧力変動データを記憶していても良い。液体室110に供給される液体の圧力変動は、供給ポンプ300が圧送する液体の圧力変動に対して、位相の遅れや、振幅の減衰などが生じているが、これらは、供給ポンプ300と噴射ユニット100とを接続するチューブ304の長さやチューブ304の剛性などによってほぼ決まるので、予め把握しておくことができる。従って、供給ポンプ300内に組み込んだ記憶部202に記憶された、供給ポンプ300出口での供給圧力変動データから液体室110内の圧力変動を求め、駆動電圧波形の補正係数を求めても良い。
【0055】
また、図5(b)では理解しやすくするために、チューブ304で発生する時間遅れDの大きさを誇張して表示しているが、実際の時間遅れDはそれほど大きいものではない。従って、簡便には、時間遅れDの影響は無視して、チューブ304による圧力変動の減衰のみを考慮して、駆動電圧波形の補正係数を求めても良い。また、図7(c)では、一定の周期でパルス状に液体が噴射されているものとしているが、以上の説明から明らかなように、一定の周期で液体を噴射する場合に限らず、任意のタイミングで液体を噴射する場合でも、それぞれのパルスのピーク値をほぼ同じ圧力にすることが可能である。
【0056】
こうして、駆動電圧波形に補正係数を乗算することで、噴射ノズル102から噴射される液体の圧力をほぼ同じにしておけば、液体噴射装置10の切開能力をほぼ一定に保つことができる。また、パルスで噴射される液体の毎回の流量もほぼ一定に保っておくこともできる。更に、噴射ノズル102から液体を噴射した時に噴射ユニット100が受ける反力も、ほぼ一定に保っておくことができる。このため、たとえ、供給ポンプ300から圧送される液体の圧力が変動していても、液体噴射装置10の操作感が損なわれてしまうことを回避することが可能となる。
【0057】
次に供給圧力が所定の圧力より小さい場合に、噴射と次の噴射の時間間隔を補正することについて説明する。図8は供給圧力が変動する場合に、噴射と次の噴射との時間間隔を変更するために所定の圧力を定めることを示した説明図である。供給圧力が所定の圧力以下となった場合、駆動電圧波形の時間間隔を変更する。
【0058】
図9は、実施例の液体噴射装置10がアクチュエーター112に印加する駆動電圧波形の時間間隔を変更する様子を示した説明図である。尚、図8では波形間隔についてのみ表し、上述した電圧補正の効果は含まれていない。1つのパルス化された液体を噴出するために、容積変更手段に印加する駆動電圧波形は図4に示した一対の電圧増加部(駆動電圧波形が実線で示された部分)と減少部(駆動電圧波形が破線で示された部分)からなるとする。
図9に示すように、パルス化された液体の噴射の間隔は、駆動電圧波形の、電圧増加部の開始時点と次の電圧増加部の開始時点との時間間隔T3で表される。したがって、供給圧力の低下に合わせて、時間間隔T3を長くするように駆動電圧波形を変更する。例えば、駆動電圧波形のうち、左端を第1波、その次を第2波、以下第3波、第4波とすると、第1波と第2波との駆動電圧波形の時間間隔T3は補正係数「1」を乗算した波形(すなわち、標準の駆動電圧波形間隔)であり、第2波と第3波との駆動電圧波形間隔は補正係数「1.2」を乗算した波形であり、第3波と第4波との駆動電圧波形間隔は補正係数「1.4」を乗算した駆動電圧波形である。
【0059】
補正係数が大きくなるほど(駆動電圧波形間隔が長くなるほど)、液体室110内に供給ポンプ300から液体が供給される時間が長くなるため、たとえ供給ポンプ300の供給圧力が低く、供給流量が低下した状態であっても、噴射ノズル102先端まで液体を充填させることが可能となる。このように、アクチュエーター112に印加する駆動電圧波形間隔に補正係数を乗算することで、供給ポンプ300からの液体の圧力変動に起因して液体噴射装置10の操作感が損なわれることを回避している。
【0060】
所定の圧力は以下のように定めることもできる。供給圧力と供給流量の関係は、供給ポンプ300と噴射ユニット100とを接続するチューブ304の長さや噴射ユニット100内の流路の形状などによってほぼ決まるので、予め把握しておくことができる。したがって、波形間隔T3の間に噴射ユニット100に供給される流量を、記憶部400に記憶された供給圧力変動データから算出することができる。また、噴射流量は、上述した駆動電圧補正を行うことで、供給ポンプ300の圧力変動に影響されず、ほぼ一定に保たれている。したがって、(標準の波形間隔T3の間に供給される流量)=(1つのパルスで噴射される液体の流量)となるときの供給圧力を、所定の圧力として定めることができる。
【0061】
尚、所定の圧力は供給圧力変動における圧力の下限値と上限値の間にあることが望ましい。なぜなら、所定の圧力を供給圧力変動における下限値以下に設定した場合、常に(標準の波形間隔T3の間に供給される流量)≧(一度のパルスで噴射される液体)となるため、パルスとして噴射される流量以外にも噴射ノズル102より液体が流出することになり、供給される液体を無駄に消費してしまうことになる。一方、所定の圧力を供給圧力変動における上限値以上に設定した場合は、常に(標準の波形間隔T3の間に供給される流量)≦(一度のパルスで噴射される液体)となり、常に供給流量が欠乏し、波形間隔の補正を行う必要があるためである。
【0062】
図10は、実施例の液体噴射装置10が、駆動電圧波形に補正係数を乗算することに加えて、供給圧力が所定の圧力より小さい場合に、一つの駆動電圧波形と次の駆動電圧波形の時間間隔に補正係数を乗算することで、液体室内の圧力のピーク値を一定に保ちつつ、噴射の時間間隔を調整する様子を示した説明図である。駆動電圧波形に補正係数を乗算することで、液体室110内の圧力のピーク値がほぼ一定になるようにしている。さらに、供給圧力が所定の圧力より小さい場合には、駆動電圧波形間隔に補正係数を乗算することで、供給圧力が低下した状態であっても、噴射ノズル102先端まで液体を充填し、噴射ノズル102先端から液体が適切に噴射できるようにしている。尚、本実施例の波形は一例であって、矩形波や三角波など、他の波形に変更することが可能である。
【0063】
(4.実施例の変形例)
上述した実施例では、アクチュエーター112に印加する駆動電圧波形に補正係数を乗算して、駆動電圧波形の相似形状を保ったまま変形(すなわち拡大あるいは縮小)することによって、供給ポンプ300からの圧力変動の影響を補償するものとして説明した。しかし、駆動電圧波形を非相似な形状に変形することによって、供給ポンプ300からの圧力変動の影響を補償するようにしても良い。以下では、このような実施例の変形例について説明する。
【0064】
図11は、実施例の変形例の液体噴射装置10が駆動電圧波形を変形する様子を示した説明図である。図11の上段に示した3つの駆動電圧波形の中で、左側に示した電圧波形は、標準として記憶されている駆動電圧波形である。また、中央に示した駆動電圧波形は、電圧増加部の出力に要する時間を、標準の時間taから時間tc(=0.8×ta)に短縮した電圧波形である。更に、右側に示した駆動電圧波形は、電圧増加部の時間を時間td(=0.6×ta)に短縮した電圧波形である。
【0065】
実施例の変形例では、アクチュエーター112に印加する駆動電圧波形を、駆動電圧値が増加する部分(電圧増加部分)と、駆動電圧値が減少する部分(電圧減少部分)とに分けて記憶する。そして、電圧増加部分の出力に要する時間を変更することによって、アクチュエーター112に印加する駆動電圧波形を変形する。例えば、標準として記憶されている駆動電圧波形は、時間taかけて電圧増加部分が出力され後、時間tbかけて電圧減少部分が出力される電圧波形であったとすると、電圧増加部分の出力に要する時間を短縮したり、あるいは延長したりすることによって駆動電圧波形を変形するのである。もちろん、電圧増加部分の時間taを変更することに併せて、電圧減少部分の時間tbを変更しても良い。
【0066】
つまり、電圧増加部の出力に要する時間を短縮するに従って、アクチュエーター112に印加される電圧値は急激に増加するのでアクチュエーター112が急激に変形し、液体室110の容積を急激に減少させる。その結果、液体室110内の液体に加わる圧力のピーク値が大きくなる。
図11の下段には、駆動電圧波形の電圧増加部の時間が短くなるにつれて、液体室110内の圧力のピーク値が増加する様子が示されている。尚、図11では、電圧増加部の出力に要する時間を短縮する場合のみが示されているが、電圧増加部の出力に要する時間を延長した場合には、液体室110内の圧力のピーク値が減少することになる。
従って、前述した実施例の液体噴射装置10では、記憶部202に記憶された圧力変動データを基準として定めた補正係数を乗算することによって駆動電圧波形を変形したが、これと同様に、実施例の変形例の液体噴射装置10では、電圧増加部の出力に要する時間を、記憶部202に記憶された圧力変動データを基準として短縮(あるいは延長)して駆動電圧波形を変形することによっても、供給ポンプ300から供給される液体の圧力変動の影響で操作感が損なわれることを回避することが可能となる。さらに、供給される液体の圧力が所定の圧力以下に低下する場合は、電圧増加部分の時間taに補正係数を乗算し、液体室110内の圧力のピーク値がほぼ一定になるよう補正しながら、前述した、噴射と次の噴射の時間間隔を補正する。尚、本実施例の波形は一例であって、三角波やのこぎり波などの他の波形に変更することが可能である。
【0067】
以上、実施例の液体噴射装置10について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…液体噴射装置、100…噴射ユニット、102…噴射ノズル、104…液体通路管、106…前ブロック、106c…凹部、106i…供給通路、106o…噴射通路、108…後ブロック、108c…凹部、108h…貫通穴、110…液体室、112…アクチュエーター、114…ダイアフラム、116…シム、118…底板、120…補強板、200…制御ユニット、300…供給ポンプ、302…チューブ、304…チューブ、306…液体タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ノズルから液体を噴射する液体噴射装置であって、
噴射しようとする液体が供給されると共に、前記噴射ノズルが接続された液体室と、
前記液体室に液体を圧送する液体圧送手段と、
印加された駆動電圧に応じて変形することで、前記液体室の容積を変更する容積変更部と、
前記液体室に液体が供給された状態で、前記容積変更部に所定の電圧波形の前記駆動電圧を印加する駆動電圧印加手段と、
前記液体室に圧送される液体の圧力変動データを記憶する記憶部と、
を備え、
前記液体圧送手段は、前記液体室に圧力変動を伴う状態で液体を圧送する手段であり、
前記駆動電圧印加手段は、前記記憶部の前記圧力変動データに基づき、前記電圧波形を変更することによって補償しながら、前記容積変更部に印加し、
前記圧力変動データが所定の圧力より小さい場合の、
電圧波形と前記電圧波形の次に印加する電圧波形との時間間隔が、
前記圧力変動データが所定の圧力より大きい場合の、
電圧波形と前記電圧波形の次に印加する電圧波形との時間間隔よりも長いことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記駆動電圧印加手段は、前記液体室に圧送される液体の圧力が低くなるほど、前記駆動電圧の最大電位差が大きくなるように電圧波形を変更した後、前記容積変更部に印加する手段である液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記駆動電圧印加手段は、前記液体室に圧送される液体の圧力が低くなるほど、前記駆動電圧の電圧変化速度が増加するように電圧波形を変更した後、前記容積変更部に印加する手段である液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体噴射装置を用いた医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−40222(P2012−40222A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184761(P2010−184761)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】