説明

液体噴射装置

【課題】キャリッジから1本のチューブを引き回すだけで済むので、小型化にきわめて有
利な構造の液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】インクの供給を受けて該インクを噴射する液体噴射ヘッド20と、該液体噴
射ヘッドを搭載して主走査方向に往復移動されるキャリッジ13とを有する液体噴射装置
であって、前記キャリッジに搭載され、着色された高濃度のインクを色別に収容するため
の複数のサブタンク40と、装置本体側に搭載され、着色成分を含まない希釈液および/
または無色インク用のメインタンク61とを備えており、前記メインタンクから前記サブ
タンクが配置された前記キャリッジまで、供給管63により、前記希釈液および/または
無色インクのみを供給する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを小型に形成できる液体噴射装置に関する

【背景技術】
【0002】
従来、液体、特にインクカートリッジに収容された液体としてのインクを噴射する液体
噴射ヘッドを備えた液体噴射装置として、例えば、インクを噴射する種々の種類のプリン
タ等が開発されている。
このようなプリンタのうち、例えばオフィス用や業務用向けの機種では印刷頻度の多さ
に伴い大量のインクを消費することから、大容量のインクカートリッジを搭載する必要が
ある。しかし、キャリッジ上にインクカートリッジを収容するカートリッジホルダを乗せ
た機種(オンキャリッジ式)で、単純に大容量のインクカートリッジを乗せると、キャリ
ッジが大型化し、該キャリッジを移動させるのに大きな負荷がかかる。
【0003】
図6は上記したオンキャリッジ式のインクカートリッジを搭載したキャリッジ1を示し
ている。
キャリッジ1には、各色インクを収容した複数のインクカートリッジ2が搭載されてお
り、図示するようにキャリッジ1は大型になり、このように大型で重量も大きなキャリッ
ジ1は、例えば、小型のプリンタなどの液体噴射装置には不向きである。
【0004】
そこで、キャリッジとインクカートリッジを別々にしたオフキャリッジ式のプリンタも
開発されている。
このようなオフキャリッジ式のプリンタでは、本体側に設けたインクタンクから、主走
査方向に可動されるキャリッジ側(キャリッジ上のサブタンク)に送る必要がある。
このため、肉厚のチューブや複層のチューブを用いて、供給インクの水蒸気成分の揮発
を防止しつつ、さらに各色分の複数本のチューブを引き回さなければならない。
【0005】
そこで、キャリッジには小型のサブタンクを複数個搭載し、本体側で高濃度インクを希
釈させて、使用の都度キャリッジ側の各サブタンクに送る構成としたものもある(特許文
献1参照)。
【特許文献1】特開平9−11498
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載のインクジェット式記録装置では、供給インクの水蒸気成分の揮
発についてはある程度対策できるものではあるが、複数のインクカートリッジを本体側に
配置して、本体側で希釈して、キャリッジの各サブタンクに供給する構成であるから、主
走査方向に可動されるキャリッジに対して、複数のチューブを接続しなければならない点
は従来のオフキャリッジ方式と同じである。
【0007】
すなわち、例えば、図7はこのような構成のキャリッジ3を示している。図7では、理
解の便宜のため、記録ヘッドやサブタンクの図示は省略されている。
図示されているように、キャリッジ3には複数本のチューブ4を引き回さなければなら
ない。
しかしながら、小型化された液体噴射装置では、キャリッジを移動させる駆動手段のパ
ワーが限られることから、複数もしくは多数のチューブを引き回して、該キャリッジを主
走査方向に移動させることは、チューブ本数が多い分だけ、可動に対する抵抗を大きくす
るという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、キャリッジから1本のチューブ
を引き回すだけで済むので、小型化にきわめて有利な構造の液体噴射装置を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、本発明にあっては、インクの供給を受けて該インクを噴射する液体噴射ヘ
ッドと、該液体噴射ヘッドを搭載して主走査方向に往復移動されるキャリッジとを有する
液体噴射装置であって、前記キャリッジに搭載され、着色された高濃度のインクを色別に
収容するための複数のサブタンクと、装置本体側に搭載され、着色成分を含まない希釈液
または無色インク用のメインタンクとを備えており、前記メインタンクから前記サブタン
クが配置された前記キャリッジまで、1本の供給管により、前記希釈液または無色インク
のみを供給する構成とした液体噴射装置により、達成される。
【0010】
上記構成によれば、キャリッジには複数のサブタンクが搭載され高濃度のインクを色別
に収容することで、従来のオフキャリッジタイプと同様に、小型で小さな重量のキャリッ
ジとすることができ、装置の小型化に適している。
さらに、本体のメインタンクには、着色成分を含まない希釈液または無色インクが収容
される構成であるから、これらをキャリッジのサブタンクまで搬送する供給管は、複数色
のインクを搬送するものではないので、1本だけで済む。
しかも、供給管からの水蒸気成分の揮発が生じても、このことがただちにインク品質に
影響するわけではないから、そのために対策された肉厚のチューブもしくは複数層の剛性
が高い、言い換えれば、曲げ抵抗の高いチューブを供給管として使用しなくても良いため
、キャリッジの可動に要するパワーがその分低減できる。
かくして、サイズの点でもパワーの点でも無理なく小型化できる液体噴射装置を提供す
ることができる。
なお、本発明の液体噴射装置は、主としてインクを噴射するインクジェットプリンタで
あるが、インクを噴射する対象が紙などの被印刷媒体に限られないことから、インクを利
用した液体噴射装置全般に適用できるものである。
【0011】
好ましくは、前記キャリッジ上で、前記供給管出口から前記サブタンク内に希釈液およ
び/または無色インクを供給する構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、前記サブタンクには、前記高濃度インクが収容された状態において
、前記キャリッジ上で、サブタンク内に希釈液または無色インクが供給されて適切な濃度
とされる。
【0012】
また、好ましくは、前記キャリッジには、複数の色に対応した複数のサブタンクと、前
記供給管が分岐されて、前記各サブタンクに接続された各分岐管と、各サブタンクに対応
するように、高濃度の前記複数の色インクを収容した複数の高濃度インクカートリッジと
が配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、キャリッジには、複数の色インクに対応して、同じ数だけサブタン
クが配置され、各サブタンクに対応して、色別に高濃度インクを収容したインクカートリ
ッジが配置されているので、各サブタンクには、それぞれ対応する高濃度の色インクが各
インクカートリッジから供給される。また、本体のメインタンクから着色成分を含まない
希釈液または無色インクが供給管を介してキャリッジまで搬送され、各サブタンクに対応
して分岐された分岐管を介して該サブタンクに供給される。これにより、各サブタンクで
は、高濃度インクが希釈されて適切な濃度のインクが作られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、液体噴射装置の一例としてのインクジェット式記録装置であるプリンタ要部を
示す概略斜視図であり、図2はプリンタの本体を構成するケース内の概略構成を示す平面
図である。
これらの図において、プリンタ10は、上記した本体内部のキャリッジ13に、サブタ
ンク40が配置されている。
このプリンタ10は、キャリッジ13に、サブタンク40と、後述する高濃度の液体カ
ートリッジとしてのインクカートリッジを搭載しているが、インクのための希釈液を収容
した大きな容積を持つメインタンクをキャリッジ13には搭載せず、本体側に配置してい
るので、オフキャリッジ式である。
【0014】
キャリッジ13は駆動プーリ21と従動プーリ22との間に張設された無端のタイミン
グベルト16に取り付けられ、このタイミングベルト16がキャリッジモータ15により
駆動されることで、図1のガイド部材(ガイド軸)14に案内された状態で主走査方向(
図1の矢印A方向)に往復移動するようになっている。
キャリッジ13の下面には、複数のノズル孔を有する液体噴射ヘッドとしての記録ヘッ
ド20が取り付けられている。プリンタ10の下部端側には、印刷用紙を紙送りするとき
の駆動源となる図示しない紙送りモータが搭載されている。紙送りモータの出力軸にはギ
ヤが固定され、このギヤがギヤ列を介して紙送りローラ32及び排紙ローラ33に連結さ
れている。
すなわち、紙送りモータが回転すると、紙送りローラ32及び排紙ローラ33が回転し
て、用紙Pがプラテン12に沿って副走査方向(図2の上下方向)に紙送りされる。
【0015】
図1の符号Hは、ホームポジションであり、このホームポジションHは、ガイドレール
17の一方の端部に位置している。このホームポジションHは、キャリッジ13の走行経
路の末端にある非印刷領域である。このホームポジションHには、ヘッドクリーニング機
構30が配置されている。ヘッドクリーニング機構30は、記録ヘッド20のノズル開口
のインクの乾燥を防止する機能と、吸引ポンプ34からの負圧をノズル開口に作用させて
ノズル開口からインクを強制的に吸引して排出させる機能を備える。すなわち、キャリッ
ジ13が移動されて、記録ヘッド20を下降することで、キャップ35にはめ込む。この
状態で、吸引ポンプ34は、キャップ35内を吸引して負圧にすることで、記録ヘッド2
0のノズルに詰まったインクをキャップ35内の例えばスポンジでなる吸収部材に吸収さ
せることでクリーニングが行われるようになっている。
【0016】
図3は、キャリッジ13と装置本体側に配置されたメインタンク61との関係を示す構
成図であり、図2および図3を参照して、実施形態の要部を説明する。
キャリッジ13には、記録ヘッド20にインクを供給するサブタンク40が搭載されて
いる。また、サブタンク40は、好ましくはインクの色毎に複数設けられ、この実施形態
では、符号41ないし44に示すように4つのサブタンクが設けられている。
【0017】
また、キャリッジ13には、各サブタンクに対して接続されるインクカートリッジ50
が搭載されている。インクカートリッジは好ましくは符号51ないし54に示されている
ように、色毎に複数設けられている。このインクカートリッジ51ないし54は濃縮され
た色インクが収容された従来のインクカートリッジよりも小型で軽量のものである。
インクカートリッジ51ないし54及びサブタンク41ないし44は、図3に示すディ
スペンサ機構57を介して接続されており、インク色(例えばブラック、イエロー、マゼ
ンタ、シアン)の数だけ配設されている。ディスペンサ機構57は例えば、ピエゾ素子な
どを利用して、駆動電圧により制御されるように構成することができる。
なお、図2および図3においては、インク色を4色として4つのサブタンク、4つのイ
ンクカートリッジを図示しているが、インク色はこれより少なくても、多くてもよく、図
示の数はあくまでも一例である。
【0018】
プリンタ10である装置本体側には、メインタンク61が設けられている。
メインタンク61は、主として、インクカートリッジ50からサブタンク40に供給さ
れる高濃度インクを、適切な濃さに調整するための比較的多量の希釈液が収容されている
。このメインタンク61に収容される液体は、この希釈液に替え、あるいはこれに加えて
、無色のインクすなわち、色味を持たない艶だけを出すためのインクが収容されている。
メインタンク61には、1本の供給管63が接続されており、チューブポンプなどでな
る給送ポンプ62により、該メインタンク62の希釈液等は、1本の供給管63の後端側
で各色に対応して分岐された分岐管63a,63b,63c,63dの各出口(供給管出
口)を経て、各サブタンク41ないし44に送られるようになっている。
なお、各分岐管63a,63b,63c,63dには、フローセンサなどでなる流量検
出手段56と、その後段には分岐管の流路を開閉するための封止バルブ55とが設定され
ている。
【0019】
図4は、プリンタ10の制御のための電気的構成例を示すブロック図である。
制御部70は、プリンタ10に制御基板として内蔵されるコンピュータ等で構成され、
主として、メモリ71に予め格納されたソフトウエアに基づいて、必要とされる演算を行
い、プリンタ10の運転を制御する。
制御部70には、上述した各駆動手段やセンサなどが接続されている。
例えば、制御部70には、キャリッジモータ15と、ポンプ34、記録ヘッド20(ヘ
ッドのノズルに設定されるピエゾなどの駆動部)、メモリ71等が接続されている。
また、制御部70には、給送ポンプ62、流量検出手段56、封止バルブ55、ディス
ペンサ機構57等が接続されている。
【0020】
本実施形態は以上のように構成されており、各サブタンク41ないし44はインクカー
トリッジ51ないし54から供給される高濃度インクを収容する。この各サブタンク41
ないし44には、給送ポンプ62の駆動により、例えば、希釈液が送られ、この希釈液は
分岐管63aないし63dにおいて、流量検出手段56により流量検出されて各サブタン
ク41ないし44内に収容される。
これにより、各サブタンク41ないし44内では、各色インクが適切な濃度となって貯
留され、その貯留インクを所定圧に圧力調整して記録ヘッド20に供給するようになって
いる。
【0021】
すなわち、インクはサブタンク41ないし44で一時貯留され、圧力調整された状態で
記録ヘッド20へと供給される。プリンタ10は、制御部70を介して、ホストコンピュ
ータやメモリーカードから取り込んだ印刷データに基づきキャリッジモータ15及び紙送
りモータを駆動し、記録ヘッド20からインクを吐出して印刷処理を実行するようになっ
ている。
【0022】
本実施形態は以上のように構成されており、プリンタ10のキャリッジ13には、濃縮
タイプのインクを収容した小型のインクカートリッジ50と、複数のサブタンク41ない
し44が搭載されることで、従来のオフキャリッジタイプと同様に、小型で小さな重量の
キャリッジとすることができ、装置の小型化に適している。
さらに、本体のメインタンク61には、着色成分を含まない希釈液および/または無色
インクが収容される構成であるから、これらをキャリッジのサブタンクまで搬送する供給
管63は、複数色のインクを搬送するものではないので、図5にそのキャリッジ13を概
略的に示すように、1本だけで済む。なお、図5は理解の便宜のため、記録ヘッドやイン
クカートリッジの図示を省略している。
【0023】
しかも、供給管からの水蒸気成分の揮発が生じても、このことがただちにインク品質に
影響するわけではないから、そのために対策された肉厚のチューブもしくは複数層の剛性
が高い、言い換えれば、曲げ抵抗の高いチューブを供給管として使用しなくても良いため
、キャリッジの可動に要するパワーがその分低減できる。
かくして、サイズの点でもパワーの点でも無理なく小型化できるプリンタを提供するこ
とができる。
【0024】
また、図3で説明したように、キャリッジ13上で、サブタンク41ないし44内に希
釈液または無色インクを供給する構成としたので、各サブタンクには、予め高濃度インク
が収容された状態において、キャリッジ13上で、サブタンク内に希釈液および/または
無色インクが供給されて適切な濃度のインクが形成される。
【0025】
また、キャリッジ13には、複数の色インクに対応して、同じ数だけサブタンク41な
いし44が配置され、各サブタンクに対応して、色別に高濃度インクを収容したインクカ
ートリッジ51ないし54が配置されているので、各サブタンクには、それぞれ対応する
高濃度の色インクが各インクカートリッジから供給される。
また、本体のメインタンク61から着色成分を含まない希釈液または無色インクが供給
管63を介してキャリッジまで搬送され、各サブタンクに対応して分岐された分岐管を介
して該サブタンクに供給される。これにより、各サブタンクでは、高濃度インクが希釈さ
れて適切な濃度のインクが作られ、適切に印刷に利用される。
【0026】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
キャリッジ13に配置されるサブタンク40には、ひとつのインクカートリッジが配置
される構成を説明したが、各サブタンクもしくは、一部のサブタンクに対して、複数のイ
ンクカートリッジを対応させてもよい。
上述の実施形態の各条件や各構成は適宜その一部を省略し、あるいは言及しない他の構
成と組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態にかかる液体噴射装置としてのプリンタの概略斜視図。
【図2】図1のプリンタの概略構成図。
【図3】キャリッジに搭載される構成の概略図。
【図4】プリンタの電気的構成の一例を示すブロック図。
【図5】図1のプリンタのキャリッジの要部斜視図。
【図6】従来のプリンタのキャリッジの概略斜視図。
【図7】図6のキャリッジの要部斜視図。
【符号の説明】
【0028】
10・・・プリンタ、13・・・キャリッジ、20・・・記録ヘッド(液体噴射ヘッド
)、40・・・サブタンク、50・・・インクカートリッジ、61・・・メインタンク、
63・・・供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの供給を受けて該インクを噴射する液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドを搭載
して主走査方向に往復移動されるキャリッジとを有する液体噴射装置であって、
前記キャリッジに搭載され、着色された高濃度のインクを色別に収容するための複数の
サブタンクと、
装置本体側に搭載され、着色成分を含まない希釈液または無色インク用のメインタンク
とを備えており、
前記メインタンクから前記サブタンクが配置された前記キャリッジまで、1本の供給管
により、前記希釈液または無色インクのみを供給する構成とした
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記キャリッジ上で、前記供給管出口から前記サブタンク内に希釈液および/または無
色インクを供給する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記キャリッジには、複数の色に対応した複数のサブタンクと、前記供給管が分岐され
て、前記各サブタンクに接続された各分岐管と、各サブタンクに対応するように、高濃度
の前記複数の色インクを収容した複数の高濃度インクカートリッジとが配置されているこ
とを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−196548(P2007−196548A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18609(P2006−18609)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】