液体噴射装置
【課題】タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに加熱された液体を安定な温度で供給できると共に、液体噴射ヘッド内の液体を安定な温度に保温し、良好な噴射性能を確保できる液体噴射装置を提供する。
【解決手段】サブタンク25にはサブタンク用ヒーター33と第1温度センサー32とがインク中に浸漬された状態で設けられている。サブタンク25と複数の記録ヘッド43とを接続する第3インク供給管47にはその下流側で分岐した複数の接続管48を挟み込む状態に配置された熱伝導体74と、熱伝導体74にそれぞれ取着された供給路用ヒーター54と第3温度センサー53とが設けられている。各記録ヘッド43には外壁部にヘッド用ヒーター45と第2温度センサー44とが設けられている。各ヒーター33,45,54は、第1〜第3温度センサー32,44,53の検出結果に基づき温度制御される。
【解決手段】サブタンク25にはサブタンク用ヒーター33と第1温度センサー32とがインク中に浸漬された状態で設けられている。サブタンク25と複数の記録ヘッド43とを接続する第3インク供給管47にはその下流側で分岐した複数の接続管48を挟み込む状態に配置された熱伝導体74と、熱伝導体74にそれぞれ取着された供給路用ヒーター54と第3温度センサー53とが設けられている。各記録ヘッド43には外壁部にヘッド用ヒーター45と第2温度センサー44とが設けられている。各ヒーター33,45,54は、第1〜第3温度センサー32,44,53の検出結果に基づき温度制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体噴射装置として、例えば特許文献1に記載のインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という。)が提案されている。この特許文献1に記載のプリンターは、記録用紙などのターゲットに液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッドとしての複数の記録ヘッドと、メインタンク(例えばインクカートリッジ)から供給されたインクを貯留するサブタンクと、サブタンクから記録ヘッドにインクを供給する供給路(ヘッド供給路)とを備えていた。サブタンクと、供給路(ヘッド供給路)と、記録ヘッドとのそれぞれに加熱手段(ヒーター)及び温度検知手段(温度センサー)を備え、サブタンク、供給路、記録ヘッドのそれぞれで順に加熱したUV(Ultra Violet)インク(紫外線硬化型インク)を記録ヘッドのノズルから噴射する構成となっていた。
【0003】
このプリンターにおいては、サブタンクでは、サブタンクヒーターがサブタンクの底壁下面に設けられ、サブタンク温度センサーがサブタンクの内底面に設けられていた。また、供給路では、供給路ヒーターが供給路の外壁に設けられ、供給路温度センサーが供給路内に設けられていた。さらに、記録ヘッドでは、ヘッドヒーター及びヘッド温度センサーが記録ヘッドの内部に設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127417号公報(例えば段落[0054]〜[0058]、図5、図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のプリンターでは、サブタンクに常温のインクが供給されたときは、その常温のインクの流入によってできる低温層(低温インク)が下方へ移動し、サブタンク温度センサーにより検知されてはじめてサブタンクヒーターの発熱が開始される。このとき、サブタンクヒーターが発熱しても、その熱がサブタンクの底壁を熱伝導して底壁からインクに熱が伝わり始めて、はじめてインクの加熱が開始される。このため、インク供給開始から実際にインクの加熱が開始されるまでに所定の時間を要し、さらにインクが目標温度に加熱されるまでにも所定の時間を要する。この間に、例えば印刷が行われると、サブタンクから供給路へ低温インクが流れてしまう虞がある。このような問題が起こる要因には、インク供給開始からサブタンク温度センサーが検知するまでの検知の遅れ、サブタンク温度センサーの検知時からインクの加熱が実際に開始されるまでの加熱の応答遅れ、タンク内の全インク平均温度(温度分布を平均化した平均温度)の昇温速度が遅いことなどがある。
【0006】
そして、上記の検知の遅れ、加熱の応答遅れ、遅い昇温速度が原因となって、サブタンクから供給路へ供給されるインクに比較的大きな温度のばらつきが発生する。サブタンクから供給されるインクにこの種の温度のばらつきがあると、供給路や記録ヘッドでインクの温度を目標温度に安定させることが困難となる。上記の原因のうち、特に、加熱の応答遅れ、及び遅い昇温速度を改善できる加熱方法を採用できれば、この種の温度のばらつきをかなりの部分で解決できる。
【0007】
また、特許文献1に記載のプリンターでは、供給路ヒーターは供給路の外壁に設けられていたので、供給路内のインクは供給路ヒーターが設けられた側の部分で強く加熱され、その反対側の部分で加熱され難い。このため、供給路内のインクにおいても温度分布が発生し易かった。例えば供給路に使用される管がたとえ金属などの熱伝導率の高い材料であっても、供給路の外気に接している部分では放熱が起き、供給路のヒーター接触部側とヒーター非接触部側とで温度差が生じ、これが供給路内のインクの温度分布となって現れる。このため、サブタンクから供給されたインクの温度のばらつきを供給路において小さく抑えつつインクを加熱することは困難であった。
【0008】
さらに、記録ヘッドには、サブタンク及び供給路で安定な温度に加熱されたインクを記録ヘッド内で保温できることが要求される。しかし、特許文献1に記載のプリンターでは、上述のように、サブタンクから供給路へ送られるインクの温度のばらつきが大きく、供給路ではその温度ばらつきを小さくする効果が小さかったので、記録ヘッドへ温度ばらつきの比較的大きなインクが供給されることになっていた。このため、記録ヘッドがインクを保温する機能を有していても、保温機能によっては温度のばらつきまでを小さくすることは困難であった。特に印刷中で記録ヘッド内をインクが流れているときは、インクがヘッドヒーターの熱を受ける時間が短いので、温度のばらつきのあるままインクが噴射され、これが噴射不良の原因となるという問題があった。なお、特許文献1のプリンターのように、ヘッドヒーター及びヘッド温度センサーを記録ヘッド内に設けることは、記録ヘッドの構造が複雑になる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに加熱された液体を安定な温度で供給できると共に、液体噴射ヘッド内の液体を安定な温度に保温し、良好な噴射性能を確保できる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置において、液体を貯留するタンクと液体噴射ヘッドとを連通する供給路と前記タンクに設けられると共に第1温度検出手段と該第1温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるタンク用ヒーターとを有する第1加熱手段と、前記供給路に設けられると共に第2温度検出手段と該第2温度検出手段の検出結果に基づき温度制御される供給路用ヒーターとを有する第2加熱手段と、前記液体噴射ヘッドに設けられると共に第3温度検出手段と該第3温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるヘッド用ヒーターとを有する第3加熱手段と、を備え、前記第1加熱手段は、前記タンク用ヒーターを前記タンクに貯留された液体中に浸漬する状態に配置し、前記第2加熱手段は、前記供給路の被加熱部分を被覆すると共に前記供給路用ヒーターから伝導される熱で加熱される金属製の加熱ブロックを含み、前記第3加熱手段は、前記液体噴射ヘッドの外壁部に設けられていることを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、タンク内の液体と供給路内の液体と液体噴射ヘッド内の液体とがそれぞれタンク用、供給路用及びヘッド用の各ヒーターにより加熱されることにより、タンクから液体噴射ヘッドで噴射されるまでの液体供給過程において液体が順に加熱される。また、タンク用、供給路用及びヘッド用の各ヒーターは、第1〜第3温度検出手段の検出結果に基づきそれぞれ温度制御される。このとき、タンク用ヒーターはタンクに貯留された液中に浸漬されているので、タンク用ヒーターの熱は直に液体に伝わり、液体を加熱する応答性がよく、かつタンク内の液体の昇温速度を高めて速やかに液体を目標温度に加熱できる。タンクで加熱された液体は供給路に送られる。供給路においては、供給路の被加熱部分を被覆する金属製の加熱ブロックが供給路用ヒーターから伝導される熱によって加熱される。このとき、加熱ブロックは金属なので、他の材料(無機材料や樹脂材料)に比べ熱伝導率が極めて高く、温度分布もさほどない略均一な温度に加熱される。そして、供給路の被加熱部分は加熱ブロックに被覆されているので、略均一な温度に加熱された加熱ブロックによってその周囲から均等に加熱される。このため、タンクから送られてきたときに多少の温度のばらつきがあっても、供給路内の液体は緩やかに加熱されることで、その温度のばらつきを小さく抑制するように加熱される。さらに、供給路から液体噴射ヘッド内に供給された液体は、液体噴射ヘッドの外壁部に設けられた第3加熱手段から熱をもらうことで、液体噴射ヘッド内の適切な加熱温度に保温される。よって、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに加熱された液体を安定な温度で供給できると共に、液体噴射ヘッド内の液体を安定な温度に保温でき、液体噴射ヘッドの良好な噴射性能を確保できる。
【0012】
本発明の液体噴射装置では、前記第1温度検出手段は、前記タンク内の液体に浸漬される位置に設けられて液体の温度を検出し、前記第2温度検出手段は、前記加熱ブロックに設けられて該加熱ブロックの温度を検出し、前記第3温度検出手段は、前記ヘッド用ヒーターに設けられて該ヘッド用ヒーターの温度を検出することが好ましい。
【0013】
この発明によれば、第1温度検出手段は、タンク内の液体に浸漬され、液体の温度を直接検出するので、液体の温度変化に応じてタンク用ヒーターを制御できる。このため、液体の温度変化による応答性がよくなり、液体の温度変化に速やかに反応し速やかに液体温度を目標温度に近づけるタンク用ヒーターの温度制御が可能になる。よって、目標温度から大きく離れた温度の液体がタンクから供給路へ供給され難くなり、温度ばらつきの比較的小さい概ね目標温度の液体を供給路へ供給することができる。また、第2温度検出手段は加熱ブロックに設けられ、加熱ブロックの温度を検出するので、加熱ブロックの温度変化による応答性がよくなり、加熱ブロックの温度変化に速やかに反応し加熱ブロックを速やかに目標温度に近づける供給路用ヒーターの温度制御が可能になる。このため、加熱ブロックの温度はほぼ目標温度に安定に保たれる。そして、目標温度に保たれた加熱ブロックによってその被覆された供給路の被加熱部分が加熱されることにより、タンクから供給された液体をその温度ばらつきを小さく抑えつつ加熱することができる。よって、供給路から液体噴射ヘッドへ温度の安定した液体(加熱液体)を供給できる。さらに、第3温度検出手段がヘッド用ヒーターに設けられ、ヘッド用ヒーターの温度を検出する。このため、ヘッド用ヒーターの温度変化による応答性がよくなり、ヘッド用ヒーターの温度変化に速やかに反応しヘッド用ヒーターを速やかに目標温度に近づけるヘッド用ヒーターの温度制御が可能になる。よって、ヘッド用ヒーターの温度が目標温度に安定に保たれ、液体噴射ヘッド内に安定な温度で供給された液体をその安定な温度のまま保温できる。
【0014】
また、本発明の液体噴射装置では、前記タンクから前記供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を前記タンクへ還流させる循環路を備えていることが好ましい。
この発明によれば、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに供給された液体が、液体噴射ヘッドから循環路を通じてタンクに還流されることで、タンク内の液体の温度の平均化が進み、タンクで概ね適度な温度に加熱した液体の温度のばらつきを一層小さく抑えることができる。よって、温度のばらつきを一層小さく抑えたさらに安定な温度の液体を液体噴射ヘッドに供給できる。また、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに供給された液体を循環路を通じてタンクへ還流させることで、第2加熱手段が供給路の全域を加熱する訳ではなく、一部を加熱するだけの構成であっても、供給路内の液体にその長手方向の位置の違いによる温度分布が発生することを回避できる。よって、第2加熱手段が供給路の一部を加熱するだけの構成であっても、温度の安定した液体を供給路から液体噴射ヘッドへ供給することができる。
【0015】
本発明の液体噴射装置では、前記タンクには液量の減少が検出されたときに補充される液体が流入する液体流入部が設けられ、前記タンク内には、前記供給路と連通する管路が、前記タンク内を半分以上横断する長さで挿入されており、前記管路の液体流入口は、前記液体流入部と前記タンク用ヒーターの中心とを結ぶ仮想線と直交しかつ前記中心を通る仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、液体流入部から流入した加熱前(例えば常温)の液体は、タンクの反対側へ流れる過程で、タンク用ヒーターの近くを通ったり液体内に発生する液流によって攪拌されたりしながらタンク内の液体の平均温度近くの温度に加熱される。そして、その平均温度近くの温度に加熱された液体が、管路の流入口から流入して供給路へ送られる。また、管路がタンク内を半分以上横断する長さで挿入されていることから、管路を流れるときにも液体はタンク用ヒーターの熱で加熱されたり、あるいはタンク中における管路周りの液体との熱交換により温度のばらつきが緩和されたりする。このため、液体流入部から流入したばかりの加熱前の液体が供給路へ送られることを回避しつつ、温度ばらつきの比較的小さな適度な温度に加熱された液体をタンクから供給路へ供給することができる。
【0017】
また、本発明の液体噴射装置では、前記第1温度検出手段は、前記仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置で液体の温度を検出することが好ましい。
この発明によれば、第1温度検出手段は、タンク用ヒーターの中心と液体流入部とを結ぶ仮想線と直交しかつ前記中心を通る仮想面に対して液体流入部と反対側となる、液体流入部から離れた位置で液体の温度を検出する。このため、液体流入部から流入したばかりの加熱前(例えば常温)の局所的に低温な液体の温度を検出し、タンク用ヒーターが急発熱して、タンク内の液体全体の平均温度が上昇し過ぎることを回避できる。このため、液体の温度が高くなり過ぎることを回避しつつ適度な温度に加熱した液体をタンクから供給路へ供給できる。
【0018】
本発明の液体噴射装置では、前記液体噴射ヘッドは複数備えられ、前記供給路は、前記各液体噴射ヘッドに並列に接続された複数本の接続路を有すると共に、前記複数本の接続路において共通の前記加熱ブロックに被覆されており、前記複数本の接続路において前記加熱ブロックに被覆された部分は、互いに略平行な状態を保ちつつ蛇行経路を描くように延びていることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、共通路は、複数の液体噴射ヘッドに並列に接続された複数本の接続路の部分において共通の加熱ブロックに被覆されており、その被覆された部分は、互いに略平行な状態を保ちつつ蛇行経路を描くように延びている。例えば各液体噴射ヘッド間で液体噴射流量(噴射によって排出される液体の流量)が異なった場合、流量の多い接続路では熱を奪うため加熱ブロックはその接続路周辺の部分で温度が低下し易く、流量の少ない接続路では熱をさほど奪わないため加熱ブロックはその接続路周辺の部分で温度が低下し難い。このように各接続路間の流量の違いに基づき加熱ブロックには低温領域や高温領域などの温度分布が発生するが、互いに略平行な状態で蛇行経路を描くように延びている複数本の接続路はその低温領域や高温領域をおおよそ共通に通るので、各接続路間で液体の温度のばらつきが発生し難い。また、蛇行経路を描くことで接続路を長く確保して、加熱ブロックと接続路、及び接続路と液体との間の接触面(熱伝達面)を広く確保できるので、加熱ブロックの熱が接続路内の液体に効率よく伝達される。この結果、液体噴射ヘッド内の液体温度が液体噴射ヘッド間でばらつくことを小さく抑えることができる。
【0020】
なお、共通の前記加熱ブロックとは、1つの加熱ブロックに限らず、複数のブロックが熱伝導の観点から一体であるかのように互いに接触して1つのブロックを形成する構成でもよい。
【0021】
さらに、本発明の液体噴射装置では、前記液体噴射ヘッドは、ノズルが形成されるノズル形成面を有すると共に少なくとも前記ノズル形成面を含む部分が樹脂より熱伝導率の高い材料で形成されたヘッド部を有し、前記第3加熱手段は、前記ヘッド用ヒーターの熱を伝導する熱伝導部材を有し、前記熱伝導部材は、前記液体噴射ヘッドの前記ヘッド部に対して前記ノズル形成面の周縁部から側壁に渡って設けられていることが好ましい。
【0022】
この発明によれば、ヘッド用ヒーターの熱が熱伝導部材を介してノズル形成面の周縁部及びヘッド側壁に伝わることで、液体噴射ヘッドにおいてノズル形成面を含むヘッド部を加熱できる。よって、ノズル内の液体やノズルの直ぐ上流側付近の流路や室内の液体を適度な加熱温度に保温できる。ここで、ノズルから噴射される液体の噴射特性は、ノズル内の液体やノズルの直ぐ上流の流路や室内の液体の温度に依存し、ヘッド用ヒーターの熱をノズル形成面に伝えることで、噴射特性に影響を与える部分の液体を保温できる。この結果、ノズルからの液体の噴射を良好に行うことができる。
【0023】
本発明の液体噴射装置では、前記第1加熱手段では、前記第1温度検出手段の検出結果に基づき前記タンク内の液体の温度が目標値になるように前記タンク用ヒーターが温度制御され、前記第2加熱手段では、前記加熱ブロックの表面温度が目標値になるように前記供給路用ヒーターが温度制御され、前記第3加熱手段では、前記第3温度検出手段の検出結果に基づき前記ヘッド用ヒーターの表面温度が保温用の目標値になるように当該ヘッド用ヒーターが温度制御されることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、タンク内の液体の温度変化に応答よくタンク内の液体を加熱できるので、タンク内の液体を温度のばらつきが小さな加熱温度に加熱できる。また、目標温度に略均一に加熱された加熱ブロックで供給路を加熱することで、温度のばらつきをほぼ無くした安定な温度に供給路内の液体を加熱できる。さらに安定な温度に加熱された液体を液体噴射ヘッド内で保温できる。
【0025】
また、本発明の液体噴射装置では、前記液体噴射ヘッドはN(但し、N≧2)個設けられ、前記循環路に前記液体噴射ヘッド毎に設けられた複数の開閉弁と、前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプとを更に備え、前記N個の液体噴射ヘッドのうち少なくとも1つに対してクリーニングを行う場合には、クリーニング対象のM個(但し、M<N)の液体噴射ヘッドと対応するM個の開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記M個の液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させることが好ましい。
【0026】
この発明によれば、クリーニング対象のM(<N)個の液体噴射ヘッドと対応する開閉弁を開にした状態で、供給ポンプを駆動することにより、供給路から開状態の開閉弁と対応する液体噴射ヘッド内を経由して循環路へ還流される循環経路で液体が流れる。このとき、N個全ての液体噴射ヘッドではなくクリーニング対象のM個の液体噴射ヘッドに絞って液体が集中して流れるため、ヘッド1個当たりの流量が多くなって液体噴射ヘッドを流れる液体の流速が高くなる。その結果、液体の高い流速によって液体噴射ヘッド内の気泡等が除去され易くなるので、高いクリーニング効果を得ることができる。
【0027】
本発明の液体噴射装置では、前記循環路に設けられた開閉弁と、前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプと、前記タンクを減圧する減圧手段とを更に備え、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させると共に、前記減圧手段を駆動して前記タンクを減圧させることが好ましい。
【0028】
この発明によれば、循環路上の開閉弁を開にした状態で、供給ポンプが駆動されると、供給路から液体噴射ヘッド内を経由して循環路へ還流されるように液体が循環する。このとき液体噴射ヘッド内を液体が流れることによって、液体噴射ヘッド内の気泡がその液体の流れと共に除去される。また、このとき減圧手段によってタンク内が減圧されて、その減圧に応じた分だけ液体噴射ヘッド内の液圧が低下するため、クリーニング時に液体噴射ヘッドから液体が漏れることを防止又は少なく抑えることができる。
【0029】
さらに本発明の液体噴射装置では、前記タンクを加圧する加圧手段と、前記循環路に前記液体噴射ヘッドに対応して設けられた開閉弁と、前記タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体が流れることを一時的に遮断可能に前記供給路に設けられた遮断手段とを更に備え、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記供給路を遮断した状態かつ前記循環路上の開閉弁を閉じた状態で、前記加圧手段を駆動して前記タンク内を加圧状態とした後、前記開閉弁を開くことで前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を排出することが好ましい。
【0030】
この発明によれば、供給路を遮断した状態かつ循環路上の開閉弁を閉じた状態で、加圧手段を駆動してタンクを加圧状態(蓄圧状態)とした後、開閉弁を開く。この結果、液体噴射ヘッドのノズルから液体が勢いよく排出される。よって、液体噴射ヘッドのノズル目詰まりを予防又は解消することができ、高いクリーニング効果が得られる。このとき、クリーニング時の液体は循環路を通ってノズルから排出されるので、加熱手段によって加熱された液体供給系の加熱液体がクリーニングによって無駄に排出されてしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態におけるプリンターの模式図。
【図2】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図3】サブタンクと記録ヘッドとを含むインク供給系の模式側面図。
【図4】第1加熱装置の模式側断面図。
【図5】第2加熱装置の一部の部品を取り除いた模式平断面図。
【図6】第2加熱装置の図5におけるA−A線断面図。
【図7】第2加熱装置の図6と異なる方向で切った模式断面図。
【図8】保温装置が設けられた記録ヘッドの一部を破断した模式断面図。
【図9】インク供給制御ルーチンを示すフローチャート。
【図10】第1クリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【図11】第2クリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【図12】変形例におけるプリンターの一部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と略記する。)は、液体の一例としてUV(Ultra Violet)インク(紫外線硬化型インク)を用い、図示しないターゲット(フィルムなど)に対して印刷処理を施す印刷部12を備えている。また、本実施形態のプリンター11には、印刷部12で印刷済みとなったターゲットに対して紫外線を照射し、ターゲットに着弾したUVインクを硬化させる図示しない照射部が設けられている。なお、UVインクは、分散安定性の低い顔料成分を含有すると共に、該顔料成分が沈降しやすいという性質を有している。
【0033】
印刷部12は、UVインクを貯留するインクカートリッジ13が装着されるホルダー部14と、重力方向においてホルダー部14の下方に配置される有底略円筒形状のメインタンク15とを備えている。ホルダー部14には、図1において二点鎖線で示す装着位置に配置されたインクカートリッジ13の導出部16に対して挿脱可能な中空状のインク供給針17が設けられている。また、ホルダー部14には、上流端18aがインク供給針17内と連通する第1インク供給管18が接続されており、該第1インク供給管18の下流端18bは、メインタンク15内に配置されている。このメインタンク15は、そのUVインクの収容許容量がインクカートリッジ13におけるUVインクの貯留量よりも十分に多くなるように構成されている。こうしたメインタンク15の側壁には、UVインクの液面A1の位置に基づき、メインタンク15内におけるUVインクの残量を検出するための複数(本実施形態では2つ)のメイン側残量センサー19,20が設けられており、各メイン側残量センサー19,20は、重力方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0034】
また、印刷部12には、メインタンク15内で収容されるUVインクを攪拌するための攪拌装置21が設けられている。この攪拌装置21は、駆動源となる攪拌用モーター22と、該攪拌用モーター22の駆動によって回転する軸部材23と、該軸部材23の先端(図1では下端)に設けられる複数枚の羽根部材24とを備えている。
【0035】
また、印刷部12には、UVインクの収容許容量がメインタンク15よりも少ないタンクとしてのサブタンク25と、メインタンク15からUVインクをサブタンク25内に供給するための第1液体供給部26とが設けられている。この第1液体供給部26は、上流端27aがメインタンク15内に配置されると共に下流端27bがサブタンク25に接続される第2インク供給管27と、第1駆動モーター28の駆動によってメインタンク15内のUVインクを吸入してサブタンク25側に吐出する第1ポンプ29とを備えている。また、第2インク供給管27において第1ポンプ29よりもサブタンク25側には、各タンク15,25間でのUVインクの流動を許容又は規制すべく作動する第1開閉弁(例えば電磁弁)30が設けられている。
【0036】
サブタンク25は、有底筒状をなすタンク本体と、該タンク本体の開口部を閉塞するカバー部とを有している。こうしたサブタンク25の側壁には、該サブタンク25内に一時的に収容されるUVインクの収容量を検出するためのサブ側残量センサー31が設けられている。このサブ側残量センサー31からは、サブタンク25内におけるUVインクの液面A2がサブ側残量センサー31の設置位置と同一位置又は設置位置よりも上方に位置する場合にON信号が出力される。また、サブタンク25には、該サブタンク内のUVインクの温度を検出するための第1温度センサー32と、UVインクを加熱するためのサブタンク用ヒーター33とが設けられている。また、サブタンク25には、このサブタンク25内を加減圧するための加減圧装置34が接続されている。
【0037】
この加減圧装置34は、第2駆動モーター35によってサブタンク25内に気体を圧送し、該サブタンク25内を加圧させるべく駆動する第2ポンプ36と、この第2ポンプ36が駆動する場合には開状態となると共に駆動しない場合には閉状態となる第2開閉弁(例えば電磁弁)37とを備えている。また、加減圧装置34には、第3駆動モーター38によってサブタンク25内から気体を排気し、サブタンク25内を減圧させるべく駆動する第3ポンプ39と、サブタンク25内を設定圧に昇圧されるまで大気開放するための圧力開放弁40とが設けられている。さらに、加減圧装置34には、第3ポンプ39及び圧力開放弁40の少なくとも一方が駆動する場合には開状態となると共に、第3ポンプ39及び圧力開放弁40が共に駆動しない場合には閉状態となる第3開閉弁(例えば電磁弁)41が設けられている。
【0038】
また、印刷部12には、ターゲットに向けてUVインクを噴射するインク噴射ユニット42が設けられ、このインク噴射ユニット42は、複数(本実施形態では4つ)の記録ヘッド(液体噴射ヘッド(液体噴射手段))43を有している。これら各記録ヘッド43は、それらの内部に供給されたUVインクを各ノズルから適宜噴射する。また、各記録ヘッド43には、それらの内部に供給されたUVインクの温度を検出するための第2温度センサー44と、各内部のUVインクを保温するためのヘッド用ヒーター45とがそれぞれ設けられている。
【0039】
こうした各記録ヘッド43には、第2液体供給部46を介してサブタンク25内のUVインクがそれぞれ供給される。第2液体供給部46は、上流端47aがサブタンク25の底部近傍に配置される第3インク供給管47(供給路)を備えている。この第3インク供給管47は、上流側の1本の共通管47b(共通路)と、この共通管47bから並列に分岐して各記録ヘッド43にそれぞれ接続されるように下流側に設けられ、記録ヘッド43毎に個別対応する複数(本実施形態では4つ)の接続管48(接続路)とを有している。また、第3インク供給管47には、第4駆動モーター49の駆動に基づきサブタンク25側からUVインクを吸入して各記録ヘッド43側に吐出する第4ポンプ50が設けられている。また、第3インク供給管47において第4ポンプ50よりも各記録ヘッド43側には、サブタンク25から各記録ヘッド43側へのUVインクの流動を許容又は規制すべく作動する第4開閉弁(例えば電磁弁)51と、第4ポンプ50によって供給されるUVインクの脈動を減衰させるためのダンパー52とが設けられている。なお、第1〜第4ポンプは、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプなどの往復動ポンプや、ギヤポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプを用いることができる。
【0040】
各接続管48は、それらの流路断面積S2が共通管47bの流路断面積S1よりも狭くなるようにそれぞれ構成されている。こうした各接続管48内を流動するUVインクは、第3温度センサー53からの検出信号に基づき制御される供給路用ヒーター54によって加熱される。
【0041】
また、各記録ヘッド43とサブタンク25との間には、各記録ヘッド43に個別対応する複数(本実施形態では4つ)のインク循環管55が設けられている。これら各インク循環管55は、それらの上流端55aが各記録ヘッド43に接続されると共に、それらの下流端55bがサブタンク25内に配置されるようにそれぞれ構成されている。インク循環管55は、それらの流路断面積S3が共通管47bの流路断面積S1よりも狭く、かつ各接続管48の流路断面積S2より広くなるように構成されている(S1>S3>S2)。こうした各インク循環管55には、各記録ヘッド43側からサブタンク25側へのUVインクの流動を許容又は規制すべく作動する第5開閉弁(例えば電磁弁)56がそれぞれ設けられている。
【0042】
また、印刷部12は、ターゲットを搬送するための図示しない搬送手段を備え、搬送手段により搬送されるターゲットに対して記録ヘッド43によりUVインクが噴射されることでターゲットに印刷が施される。搬送手段は、例えばローラー式搬送機構、ベルト搬送機構、回転ドラム式搬送機構など公知の搬送機構と、搬送モーター57(図2参照)とを備えている。この搬送手段は、搬送モーター57(図2参照)の動力により搬送機構が駆動されることによりターゲットを搬送する。
【0043】
このように構成されたプリンター11は次のように動作する。インクカートリッジ13はその導出部16内にインク供給針17が挿入されない待機位置に配置される。メインタンク15内のUVインクの液面A1が下降して上側の第1メイン側残量センサー19がオンからオフになると、後述する制御装置60からの制御指令に基づき着脱用モーターが駆動されてホルダー部14の上方に配置された不図示の押圧装置のプレス部材が、待機位置に配置されるインクカートリッジ13を付勢手段の付勢力に抗して下方に移動させる。この結果、インクカートリッジ13はインク供給針17が挿入される装着位置に配置されてホルダー部14に装着される。インクカートリッジ13内のUVインクは、インク供給針17及び第1インク供給管18を介してメインタンク15側に導出される。このとき、メインタンク15において攪拌装置21によりUVインクの攪拌が所定時間行われる。
【0044】
プリンター11の制御装置60は、記録ヘッド43におけるインク消費量を計測しており、その計測結果に基づきサブ側残量センサー31がオンになる液面A2の状態からサブタンク25内のUVインクが所定量消費されたと判断すると、第1ポンプ29を駆動し、メインタンク15からサブタンク25にUVインクを供給する。サブタンク25内のUVインクの液面A2が上昇してサブ側残量センサー31がオフからオンになると、制御装置60が第1ポンプ29の駆動を停止し、メインタンク15からサブタンク25へのUVインクの供給が停止される。
【0045】
印刷時には、加減圧装置34によりサブタンク25を減圧しつつ第4ポンプ50が駆動されることで、サブタンク25から第3インク供給管47を通って記録ヘッド43にUVインクが供給されると共に、記録ヘッド43からインク循環管55を通ってインクがサブタンク25に還流される。このサブタンク25と各記録ヘッド43との間で第3インク供給管47及びインク循環管55を通じて行われるインクの循環により、各記録ヘッド43にインクが供給される。各記録ヘッド43でノズルからインクを噴射するなどして消費された分のインクがサブタンク25において徐々に減少する。
【0046】
また、プリンター11においては、サブタンク25及び第3インク供給管47においてUVインクをサブタンク用ヒーター33及び供給路用ヒーター54により加熱すると共に、その加熱された状態で供給された記録ヘッド43内のUVインクをヘッド用ヒーター45で保温する温度制御が行われる。また、プリンター11において、記録ヘッド43内のインク中の気泡を除去することを目的とする第1クリーニングと、記録ヘッド43のノズルの目詰まりを予防・解消することを目的とする第2クリーニングとが行われる。
【0047】
なお、印刷部12は、複数色のUVインクをターゲットに対して噴射可能な構成であり、ホルダー部14、各タンク15,25及びインク噴射ユニット42を含む印刷ユニットを色毎に備えている。しかし、本実施形態では、一色(例えば白色)用の印刷ユニットのみを説明し、他の色用の印刷ユニットの説明に関しては、明細書の説明理解の便宜上、省略するものとする。また、以下の説明では、UVインクを単にインクと呼ぶ場合もある。
【0048】
次に、本実施形態の印刷部12の電気的構成について図2に基づき説明する。図2に示すように、プリンター11は、インク供給系及び印刷系を統括制御する制御装置60を備えている。制御装置60の入出力インターフェースには、インク供給系のセンサーとして、第1メイン側残量センサー19、第2メイン側残量センサー20、サブ側残量センサー31、及びサブタンク25内の空気圧を検出する圧力センサー58がそれぞれ電気的に接続されている。さらにその入出力インターフェースには、加熱制御用のセンサーとして、第1温度センサー32、4つの第2温度センサー44、及び第3温度センサー53がそれぞれ電気的に接続されている。
【0049】
また、制御装置60の入出力インターフェースには、印刷系の制御対象として4つの記録ヘッド43及び搬送モーター57がそれぞれ電気的に接続されている。さらにその入出力インターフェースには、インク供給系の制御対象として、ポンプ駆動用の第1駆動モーター28、第2駆動モーター35、第3駆動モーター38及び第4駆動モーター49と、流路開閉用の第1開閉弁30、第4開閉弁51及び4つの第5開閉弁56と、加減圧装置34を構成する第2開閉弁37、第3開閉弁41及び圧力開放弁40とがそれぞれ電気的に接続されている。
【0050】
さらに制御装置60の入出力インターフェースには、インク加熱用のサブタンク用ヒーター33、インク加熱用の供給路用ヒーター54及びインク保温用の4つのヘッド用ヒーター45がそれぞれ電気的に接続されている。
【0051】
また、制御装置60は、各センサー19,20,31,32,44,53,58から入力する検出結果などに基づいて各種の制御を司るコンピューター61(マイクロコンピューター)と、記録ヘッド43を駆動制御するヘッド駆動制御部62と、各モーター57、22,28,35,38,57を駆動制御するモーター駆動制御部63と、各開閉弁30,37,41,51,56及び圧力開放弁40を制御する弁駆動制御部64と、各ヒーター33,45,54を加熱制御するヒーター駆動制御部65とを備えている。
【0052】
制御装置60は、コンピューター61が各駆動制御部62〜65に制御内容(指令値)を指示することにより、記録動作、搬送動作、ポンプ動作、弁駆動動作、加熱動作などを制御する。ここで、コンピューター61は、CPU67、ROM68、RAM69を備えている。ROM68には、CPU67が各種制御を行うためのプログラムデータ及び各種制御で用いる設定値などを含む各種データが記憶されている。RAM69には、CPU67の演算結果などが一時記憶される。また、RAM69の一部の領域は、例えば不図示のホスト装置から入力される印刷データを展開等するためのバッファーとして使用される。なお、各駆動制御部62〜65は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及び各種駆動回路などから構築されている。また、CPU67は、印刷系(搬送系、噴射系)、インク供給系、加熱系のそれぞれを個別に制御する複数個設けられていてもよい。
【0053】
例えばコンピューター61は、ヘッド駆動制御部62に対してインク噴射量に応じたデューティー値Dを指示することにより、記録ヘッド43のノズルから噴射されるインク噴射量を制御するデューティー制御を行う。このときコンピューター61が指示するデューティー値Dは0〜100%の範囲で変化し、デューティー値(%)が大きくなるほどインク噴射量(=1噴射当たりのインク排出量)がそれに略比例して多くなる。全ての記録ヘッド43に対してデューティー値100%(FULLデューティー)を指示して全ノズルから毎噴射周期ごとにインク滴を噴射させる場合、記録ヘッド43のノズルから噴射により排出される単位時間当たりのインク排出量(インク噴射流量Qh)が最大となる。
【0054】
本実施形態のプリンター11では、記録ヘッド43内のインク中の気泡をインク循環流によって除去する第1クリーニングと、記録ヘッド43のノズル84(図8参照)からインクを強制的に排出してノズル目詰まりを予防及び解消する第2クリーニング(ノズルクリーニング)とが行われる。
【0055】
例えばインクカートリッジ13が空になって同じインク(例えば同色)のインクカートリッジ13に交換するカートリッジ交換時には、インクカートリッジ13がホルダー部14に装填されたときにインク供給針17を介してインク中に気泡が混入する場合がある。また、異なるインク(例えば異色)のインクカートリッジ13に交換するときには、タンク及び流路のインクを全て入れ換えると共に、入れ換えたインクを流路に充填させる初期充填という処理が行われる。また、例えばインク供給管18,27,47及びインク循環管55のうち樹脂製のチューブが使用されている部分では、樹脂製のチューブをガス透過して流路内のインクに溶け込んだ空気が、プリンター11が長期間使用されていないうちに、インク中で気泡に成長する場合がある。このようにカートリッジ交換時、初期充填時、プリンター長期間不使用時には、記録ヘッド43内のフィルター83(図8参照)より上流側エリアのコーナーなどに気泡が溜まったり、フィルター83に気泡が捕捉されていたりする場合がある。このため、主に記録ヘッド43内のインク中の気泡を除去することを目的として、インク循環流を利用した第1クリーニングが行われる。すなわち、図2に示すコンピューター61は、カートリッジ交換の検出時、初期充填の検出時、又は前回の第2クリーニング終了時点からの経過時間を計時する内蔵タイマーの計時時間Tが第1クリーニング時間T1に達したときに、第1クリーニングを実行する。
【0056】
また、記録ヘッド43のノズル目詰まりの予防及び解消のための第2クリーニングは、ユーザー操作によるクリーニング実行指示を受け付けたとき、又はクリーニング実施時期に達したときに行われる。すなわち、図2に示すコンピューター61は、ユーザー操作によるクリーニング実行指示を受け付けたとき、又は前回の第2クリーニング終了時点からの経過時間を計時する内蔵タイマーの計時時間Tが第2クリーニング時間T2に達したときに、第2クリーニングを実行する。
【0057】
この第2クリーニングは、第2ポンプ36(加圧ポンプ)を駆動してサブタンク25内の空気室25aを加圧することでサブタンク25内のインクを加圧し、サブタンク25からインク循環管55を通じて記録ヘッド43にインクを加圧供給し、記録ヘッド43のノズルからインクを強制的に排出させることにより行われる。このため、第2クリーニングは、インク循環管55の流路を閉じてサブタンク25を含むその上流側にインク圧を蓄圧する段階(加圧ステップ)と、インク圧が目標値まで蓄圧された時点でインク循環管55の流路を開いて加圧インクを一気に下流側へ押し流してノズル84からインクを強制的に排出する段階(開弁ステップ)との二段階で行われる。
【0058】
すなわち、第2クリーニングの蓄圧段階では、開閉弁30,41,51,56が閉弁されると共に開閉弁37が開弁された状態、かつ各ポンプ29,39,50が駆動停止の状態で、第2ポンプ36(加圧ポンプ)が駆動されてサブタンク25内のインクが加圧される。
【0059】
本実施形態では、全て(N個)の記録ヘッド43のうち第2クリーニングを行うべきM個(但し1≦M<N)の記録ヘッド43を選択し、その選択したM個の記録ヘッド43にだけクリーニングを施す選択クリーニングを採用している。プリンター11には、記録ヘッド43別にノズル目詰まりを検査可能なノズル検査装置(図示せず)が設けられ、このノズル検査装置によりクリーニングが必要との検査結果が得られた記録ヘッド43をクリーニング対象とする。
【0060】
例えば第2クリーニングには複数段階の強度が用意されている。ユーザー操作により第2クリーニングが繰り返し指示された場合はその実施回数が増えるに連れて強いクリーニングが選択され、また前回のクリーニング実施時点からの経過時間が長いほど強いクリーニングが選択される。蓄圧段階において、第2ポンプ36の駆動を開始した制御装置60は、圧力センサー58により空気室25aの圧力(空気圧)を検出し、その検出圧が選択されたクリーニング強度に応じた目標圧に達すると、蓄圧段階の終了と判断する。蓄圧段階の終了後、N個の開閉弁56のうちノズル検査結果に基づきクリーニング必要の旨と判定されたM個の記録ヘッド43にそれぞれ通じるインク循環管55上の開閉弁56だけが開弁されることで、そのM個の記録ヘッド43に限り第2クリーニングが実施される(開弁ステップ)。
【0061】
本実施形態では、第3インク供給管47とインク循環管55との流路抵抗が次のように設定されている。第3インク供給管47(供給路)の流路抵抗R(≒R2>R1)と、インク循環管55(循環路)の流路抵抗R3とを、R<R3の関係を満たすように設定されている。このため、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことが可能になっている。これは、印刷中において、各記録ヘッド43のノズルからのインク漏れを抑えつつ、各記録ヘッド43内のインク圧を許容範囲内に収めて適量のインク滴の噴射を可能にするためである。
【0062】
さらに、第3インク供給管47の共通管47bの流路抵抗R1と、接続管48の流路抵抗R2と、インク循環管55の流路抵抗R3とを、R1<R3<R2の関係を満たすように設定している。これは、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことを可能にするためである。
【0063】
ここで、流路抵抗R1,R2,R3のうち共通管47bの流路抵抗R1を一番小さくし、接続管48の流路抵抗R2を一番大きくすることにより、共通管47b上における各接続管48の入口におけるインク圧を略等しくすることが可能になり、各接続管48の流路抵抗R2が非常に大きいことから、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくすることが可能になる。また、インク循環管55の流路抵抗R3が大きいほど、記録ヘッド43内のインク圧が高くなる傾向にあるが、インク循環管55の流路抵抗R3を小さくしているので、記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことが可能である。このとき、各記録ヘッド43間でインク供給流量Qinが略等しく、インク噴射流量Qhが記録ヘッド43毎に異なることから、インク循環流量Qout(=Qin−Qh)は、記録ヘッド43間で異なることになる。しかし、インク循環管55の流路抵抗R3を小さくしているので、インク循環流量Qoutと流路抵抗R3との積で表されるインク循環管55の圧力損失P3loss(=Qout・R3)が小さな値となる。このため、記録ヘッド43間で圧力損失P3lossの値はほとんど同じとみなせるので、各記録ヘッド43内のインク圧を記録ヘッド43間で略等しくすることが可能になる。
【0064】
また、共通管47bの流路抵抗R1と、インク循環管55の流路抵抗R3とが、R1<R3の関係を満たすようにしているのは、インク循環管55の流路抵抗R3をなるべく小さくしたいという要請はあるものの、少なくとも印刷時には、記録ヘッド43でインクが噴射により消費され、インク循環流量Qoutはインク供給流量Qinに比べ少ないことから、その少ない分だけでもインク循環管55を小径にし、インク循環管55の小型化を図るためである。また、記録ヘッド43において、インク圧の変動を±50Pa以内に収めたいという要請がある。このため、インク循環流量Qoutが最大印刷時と非印刷時とで変化する範囲において、記録ヘッド43内のインク圧の変動を±50Pa以内に収めることができるように、インク循環管55の流路抵抗R3を決めている。
【0065】
さらに、どの印刷モードにおいてもインク圧の変動を±50Pa以内に収めたいという要請から、接続管48の流路抵抗R2が、インク循環管55の流路抵抗R3の5倍以上(R2≧5・R3)になる関係を満たすように設定している。このため、どの印刷モードで印刷したときでも、記録ヘッド43内のインク圧の変動が±50Pa以内に収まり、記録ヘッド43のノズルからのインク噴射量を安定にすることが可能になっている。
【0066】
図3は、サブタンクと記録ヘッドとを含むインク供給系を示す模式図である。図3に示すように、サブタンク25は記録ヘッド43の重力方向上方に配置されている。本実施形態では、記録ヘッド43は圧力調整弁を内蔵していない。そのため、サブタンク25内の液面A2の高さと、記録ヘッド43のノズル内のインクメニスカス表面高さAnozlとの間の重力方向の距離である液頭差Hを利用し、記録ヘッド43内のノズル84におけるインク圧力を調整するようにしている。
【0067】
ここで、記録ヘッド43内のノズル84におけるインク圧力は、サブタンク25内の液面A2とノズル内のインクメニスカス表面高さAnozlとの間の液頭差Hだけでなく、第3インク供給管47及びインク循環管55を含む流路を流れるインクの流路抵抗、及びサブタンク25内のインク圧力などの影響を受ける。このため、本実施形態では、加減圧装置34によりサブタンク25内の空気室25aを負圧に制御してサブタンク25内のインク圧を負圧にすることにより、記録ヘッド43のノズル84内のインクメニスカスにおけるインク圧を適切な値に調整する制御を行うようにしている。
【0068】
記録ヘッド43は、ノズル84(図8参照)に連通する不図示の圧力室をノズル毎に備え、圧力室に対してノズルと反対側にノズル毎に配置された圧力発生素子が駆動されると、圧力室が膨張・収縮し、その膨張時に圧力室に吸い込まれたインクが圧力室の収縮時にノズル84から噴射される仕組みになっている。このとき、ノズル84内におけるインクメニスカス表面高さAnozlは、圧力室のインク圧(つまりノズルに及ぶインク圧)によって決まる。このインクメニスカス表面高さAnozlをノズル84内の適切な位置に保つことが、インク噴射性能を安定に保つ条件となる。例えば圧力室のインク圧が低過ぎて、ノズル84内におけるインクメニスカス表面がノズル内の奥の方に位置すると、インク噴射量不足や噴射ミスが発生し易くなる。また、圧力室のインク圧が高過ぎて、ノズル内におけるインクメニスカス表面がノズル開口から円弧面状に突出して位置すると、インク噴射量が過大になったり、ノズルからのインク漏れが発生したりする。このため、本実施形態では、インクメニスカスのインク圧を適切な値に保つべく、インク供給制御を行っている。
【0069】
以下、図3を用いてインク供給制御について説明する。ここで、共通管47bの流路抵抗R1、接続管48の流路抵抗R2、インク循環管55の流路抵抗R3、サブタンク25内のインクの液面A2とノズル内のインクメニスカス表面高さAnozlとの液頭差H(液面高さ差)、サブタンク25内の負圧値Pdec(減圧値)とする。
【0070】
本例の場合、第4ポンプ50(供給ポンプ)からの供給流量は20N(cc/分)と一定である。ここで、液頭差Hによる圧力P(H)、共通管47bの流路抵抗R1による圧力損失P1loss、接続管48の流路抵抗R2による圧力損失P2loss、インク循環管55の流路抵抗R3による圧力損失P3lossとする。このとき、圧力損失P3lossは、インク循環管55のインク循環流量Qoutがデューティー値Dに応じて変化し、このインク循環流量Qoutがデューティー値Dの関数Qout(D)として示されることから、圧力損失P3lossもデューティー値Dの関数としてP3loss(D)(=R1・Qout(D))と表すことができる。
【0071】
記録ヘッド43のノズル内のインクメニスカスにおけるインク圧力Phは、Ph=P(H)+Pdec−P1loss−P2loss+P3loss(D)と表すことができる。但し、圧力は、1気圧を「0」とする正圧(>0)と負圧(<0)で示され、Pdecは負圧なので、Pdec<0である。
【0072】
そして、本例では、インク圧力Phをインク噴射に適切な目標値に保つべく、空気室25aがインク循環流量Qout(D)に応じて変化する圧力損失P3loss(D)(=Qout(D)・R3)に応じた目標負圧値Pdectrgになるよう第3ポンプ39(減圧ポンプ)及び圧力開放弁40を制御する。目標負圧値Pdectrgは、式 Pdectrg=Po−Ph(H)−P3loss(D)で表される。ここで、Poは、Phの目標値をPhtrgとすると、Po=Phtrg+P1loss+P2lossで示される定数である。
【0073】
また、記録ヘッド43のインク噴射流量Qhは、デューティー値Dが同じでも、印刷モードによって変化することから、目標負圧値Pdectrgを求めるときには印刷モードも考慮している。印刷モードには、印刷品質よりも印刷速度を優先する高速印刷モード、印刷速度よりも印刷品質を優先する低速印刷モード(高画質印刷モード)などがある。高速印刷モードでは、同じ画像の印刷でも、低速印刷モードに比べ、印刷速度が高速のため、インク噴射流量Qh(cc/分)が多くなる。このため、関数P3loss(D)は、高速印刷モード用と低速印刷モード用とで別々にROM68に用意されている。そして、ROM68から読み出したそのときの印刷モードに応じた関数P3loss(D)を適用した上記の式を用いて、目標負圧値Pdectrgを算出している。
【0074】
このように本実施形態では、制御装置60内のコンピューター61は、そのときの印刷モードと、そのときのサブタンク25内のインクの液面A2の液面高さHsubから決まる液頭差Hと、記録ヘッド制御用のデューティー値Dとに基づいて、目標負圧値Pdectrgを、式 Pdectrg=Po−Ph(H)−P3loss(D)を用いて算出する。そして、コンピューター61は、圧力センサー58が検出した実負圧値Pdetが、その目標負圧値Pdectrgに一致するように第3ポンプ39(減圧ポンプ)用の第3駆動モーター38及び圧力開放弁40を制御する。
【0075】
なお、液面高さHsubと、サブタンク25の内底面からノズル開口高さ(≒インクメニスカス表面高さAnozl)までの距離をhとすると、液頭差Hは、H=Hsub+hにより算出される。ここで、液面高さHsubは、サブ側残量センサー31が液面を検知したときの既知の液面高さHsuboを基準として、その後におけるサブタンク25の液面変位ΔAを用いて、式 Hsub=Hsubo+ΔAにより求める。液面変位ΔAは、サブ側残量センサー31の検知以後における、第1ポンプ29からサブタンク25へのインク補充量、及び記録ヘッド43で消費されたインク噴射量の計測結果又は計算結果から求まるサブタンク25内のインク変化量を、サブタンク25の液面と平行な断面積で除算することで求める。もちろん、サブタンク25の液量を検出する液量センサーを設け、液量センサーの検出値に基づいて液面高さHsubを求めてもよい。
【0076】
例えば印刷量が少なくデューティー値Dが比較的小さいときにはインク循環流量Qoutが多くなり、印刷量が多くデューティー値Dが比較的大きいときにはインク循環流量Qoutが少なくなる。インク循環流量Qoutが多いときには、流路抵抗R3とインク循環流量Qoutとの積から決まる圧力損失P3lossが大きくインクメニスカスにおけるインク圧の上昇分が相対的に大きいため、目標負圧値Pdectrgを減圧側に高くする。一方、インク循環流量Qoutが少ないときには、流路抵抗R3とインク循環流量Qoutとの積から決まる圧力損失P3lossが小さくインクメニスカスにおけるインク圧の上昇分が相対的に小さいため、目標負圧値Pdectrgを減圧側に低くする。
【0077】
次に、プリンター11に装備されたサブタンク25から記録ヘッド43へ供給される過程でインクを加熱すると共に、記録ヘッド43に供給された加熱インクを記録ヘッド43内で保温する加熱システムについて説明する。
【0078】
加熱システムは、図1に示すように、メインタンク15から第2インク供給管27を通じて供給されたサブタンク25内のインクを目標温度に予備加熱する第1加熱装置71(第1加熱手段)と、サブタンク25で加熱された少し温度ばらつきのある状態で第3インク供給管47へ供給されたインクを接続管48の部分でその温度ばらつきを無くしつつ目標温度に加熱する第2加熱装置72(第2加熱手段)とを備える。さらに加熱システムは、第3インク供給管47を通じて供給された各記録ヘッド43内の加熱インクを目標温度に保温するために各記録ヘッド43に設けられた保温装置73(第3加熱手段)を備える。
【0079】
第1加熱装置71は、サブタンク25内に配置されたサブタンク用ヒーター33(タンク用ヒーター)と、サブタンク25内のインク温度を検出する第1温度センサー32とを備える。制御装置60は、第1温度センサー32の検出温度(第1温度センサー32の位置におけるインクの温度)がサブタンク25におけるインクの目標温度である第1目標温度(目標値)になるようにサブタンク用ヒーター33の発熱制御を行う。
【0080】
また、第2加熱装置72は、サブタンク25から供給された加熱インクを第3インク供給管47の接続管48の部分で加熱する供給路用ヒーター54と、供給路用ヒーター54の熱を伝導して接続管48を加熱する熱伝導体74(加熱ブロック)と、この熱伝導体74の温度を検出する第3温度センサー53とを備える。制御装置60は、第3温度センサー53の検出温度(熱伝導体74の表面温度)が第2目標温度(目標値)になるように供給路用ヒーター54の発熱制御を行う。
【0081】
さらに、保温装置73は、記録ヘッド43内の加熱インクを保温するヘッド用ヒーター45と、ヘッド用ヒーター45の温度を検出する第2温度センサー44とを備える。制御装置60は、第2温度センサー44の検出温度(ヘッド用ヒーター45の表面温度)が記録ヘッド43内のインクを保温すべき第3目標温度(目標値)になるようにヘッド用ヒーター45の発熱制御を行う。
【0082】
次に、第1加熱装置71、第2加熱装置72及び保温装置73の構成を詳細に説明する。図4は、第1加熱装置71を装備するサブタンク25の断面図である。また、図5は、第2加熱装置72の模式断面図である。図6は第2加熱装置72の図5におけるA−A線断面を示す模式部分断面図であり、図7は第2加熱装置72の図6と直交する方向の断面を示す模式断面図である。さらに図8は記録ヘッド43の一部破断した模式側断面図である。
【0083】
まず第1加熱装置71の構成及び機能について説明する。図4に示すように、サブタンク25は、有底円筒状のタンク本体25bと、タンク本体25bの開口を閉塞するカバー部25cとを備えている。サブタンク25は、熱伝導率が比較的小さくかつ耐熱性が高くインクに侵され難い耐食性のある材料を用いている。この材料の一例としてはガラスなどが挙げられる。例えばステンレス等の金属容器を用いて、金属容器の外壁面にヒーターを設けた構成にすると、容器の内周面からインクの内側へ向かって熱が伝わって加熱されるので、インクが第1目標温度(例えば40℃)に加熱されるまでに長めの時間を要する。これに対して本実施形態では、サブタンク用ヒーター33をサブタンク25内のインク中に浸漬しているので、インクの中央付近やや下方に位置するサブタンク用ヒーター33の周辺部分から加熱され、インク全体の平均温度が目標温度に達するまでの所要時間が比較的短く済む。このとき、サブタンク25が金属に比べて熱伝導率の小さい無機材料(例えばガラス)よりなるので、加熱されたインクの熱がサブタンク25の壁部から外部に放熱され難くなっており、この点からも第1目標温度に加熱されるまでの所要時間が短く済む。
【0084】
ここで、サブタンク25へのインクの供給は間欠的に行われる。そして、第1目標温度に加熱されたインク中に常温のインクが流入する。本実施形態では、図4に示すように、サブタンク25内のインク中において、メインタンク15からのインク流入口25d(液体流入部)から所定距離だけ離れた位置に第1温度センサー32を配置している。ここで、第1温度センサー32の配置条件は、インク流入口25dとサブタンク用ヒーター33の中心とを結ぶ仮想線と直交しかつサブタンク用ヒーター33の中心を通る仮想面に対してインク流入口25dと反対側となる位置に、第1温度センサー32を設けることである。これは、仮に温度センサー32がインク流入口25d近傍に位置した場合、インクの流入が開始した時点で直ぐに冷えたインク温度がサブタンク用ヒーター33により検出されてサブタンク用ヒーター33が急加熱される。このとき、インク流入中はそのインク流がサブタンク25内のインクを攪拌する作用を有するので、攪拌されつつインクの温度が上昇し、インク全体の温度が上昇しやすい。しかし、インク流入終了後においては、インク流による攪拌作用がなくなるため、インク流入口付近のインクの温度が局所的に上昇しその局所温度が目標加熱温度に達すると、他の箇所のインク温度が低いにも関わらず、その時点でサブタンク用ヒーター33の加熱が停止されてしまい、サブタンク25内のインクに温度分布ができてしまう。なお、第1温度センサー32の配置条件を決める際のサブタンク用ヒーター33の中心とは、実施形態のように環状のヒーターである場合は、環状の中心となる。
【0085】
これに対して、本実施形態では、図4に示すように、サブタンク25内におけるサブタンク用ヒーター33の配置位置を、インク流入口25dから所定距離だけ離しているので、上記のようなインク流入口25d付近の温度が局所的に目標温度になっているものの、そのインク流入口25dから一番離れた反対側の部分でインクが目標温度よりかなり低くなっている温度分布の発生を回避しやすくなっている。
【0086】
詳しくは、サブタンク25内に流入口(上流端27a)から流入した常温のインクが、インク流入口25dから所定距離だけ流入すると、第1温度センサー32がその常温のインク温度を検出してサブタンク用ヒーター33が発熱する。この発熱したサブタンク用ヒーター33の上側を主に流れようとする流入インクは、温度差による比重の違いや、インク循環管55から還流されるインク流との合流によって下方へ流され易い。そして、このようにインク流入口25dからやや下降しつつ流れるインクは、サブタンク用ヒーター33の近くを通る過程で加熱される。そして、メインタンク15からのインク流入中は、そのインク流により攪拌されながら加熱されるので、サブタンク25内のインクの温度分布が発生し難くい。また、インク循環中は、インク循環管55からのインク流によってインクは攪拌されながら加熱されるので、サブタンク25内のインクの温度分布が発生し難い。
【0087】
また、サブタンク用ヒーター33の周囲でインクが局所的に高温になると、インクに熱による悪影響が生じる虞がある。そのため、そのような熱による悪影響が生じないような位置に第1温度センサー32を配置している。インク加熱中においては、サブタンク用ヒーター33の周辺ほどインク温度が高くサブタンク用ヒーター33から離れるほどインク温度は低くなる温度分布が発生する。例えば第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33から離し過ぎると、サブタンク用ヒーター33の周辺温度がかなり高くなってはじめて第1温度センサー32の位置におけるインク温度が目標加熱温度に達し、その時点ではじめてサブタンク用ヒーター33の発熱が停止される。この場合、サブタンク用ヒーター33の周辺近傍のインク温度がかなり高くなってインクに熱による悪影響が及ぶ虞がある。一方、第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33に近づけ過ぎると、サブタンク用ヒーター33の周辺のインク温度が目標加熱温度に達した時に、サブタンク用ヒーター33から離れた周縁のインク温度が目標加熱温度よりかなり低いにも関わらず、サブタンク用ヒーター33の発熱が停止されてしまう。このため、このような両極端な温度分布の発生を回避できるように、第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33から適度な距離だけ離した位置に配置している。その位置とは、本例では、サブタンク用ヒーター33とメインタンク15からのインク流入が停止したときの液面(例えば図4における液面A2)との中間位置を真ん中に挟んで深さ方向に、液面A2からサブタンク用ヒーター33までの深さの半分の範囲内に設定されている。特に本例では、その深さ方向の範囲のうち、液面A2とサブタンク用ヒーター33との中間位置よりも少しサブタンク用ヒーター33寄りの位置に、第1温度センサー32を配置している。
【0088】
また、サブタンク25内には、第3インク供給管47の上流端側の一部を構成する所定長さの管部47c(管路)が、サブタンク25の底面より少し上方位置をその底面に沿って延びるように挿入されている。インク流入口25dに対して該インク流入口25dから流入したインクがサブタンク25内を横切った反対側となる位置に、管部47cの流入口47dは開口している。ここで、管部47cの挿入位置の条件は、インク流入口25dとサブタンク用ヒーター33の中心とを結ぶ仮想線と直交しかつサブタンク用ヒーター33の中心を通る仮想面に対して、インク流入口25dと反対側となる位置に流入口47dが到達するまで、サブタンク25内を半分以上横断する所定長さだけ管部47cを挿入することである。よって、メインタンク15からサブタンク25内に流入してサブタンク25内を横切る過程でサブタンク用ヒーター33により加熱されたインクや、攪拌されて平均的な温度に加熱されつつ流入口47d付近に流れたインクが、図4に矢印に示すように、管部47cの流入口47dから流入する。このため、サブタンク25内に流入したばかりの常温のインクが、管部47cの流入口47dから第3インク供給管47へ流入することが回避される。
【0089】
管部47cはサブタンク25の底面に沿って延びているので、その管部47c内を流れる過程でサブタンク用ヒーター33の下側を通るときにも加熱される。この管部47cを通るインクが適度に加熱されるように、サブタンク用ヒーター33は、管部47cから上側に適度な距離を保った位置に配置されている。仮に、メインタンク15から間欠的にインクが流入されているタイミングにおいて、加熱不足のインクが管部47cの流入口47dから仮に流入したとしても、管部47c内を流れてサブタンク用ヒーター33の下側を通る過程で加熱されるので、概ね第1目標温度に加熱されたインクがサブタンク25から第3インク供給管47へ流出する。また、メインタンク15からインクが流入されていないときは、サブタンク用ヒーター33は第1目標温度にまで加熱されたインクを保温する程度の発熱に抑えられるので、サブタンク25の底面に沿って延びる管部47cを流れるインクはサブタンク用ヒーター33の下側を通っても、そのサブタンク用ヒーター33自体がさほど発熱しないので、サブタンク25から加熱し過ぎたインクが第3インク供給管47へ流出することもない。さらに、サブタンク25の底面近くを延びている管部47cは、液面A2より少し下側の深さ位置で常温のインクが流入するインク流入口25dに対して、深さ方向においてサブタンク用ヒーター33の位置を間に挟んだ反対側に離れて位置している。このため、管部47cを通るインクが、インク流入口25dから流入したばかりの常温のインクによって冷やされることも回避され易くなっている。
【0090】
また、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43に供給されたインクが、記録ヘッド43から第3インク供給管47を通じてサブタンク25に還流されることで、インク循環管55から加熱インクが流入する。このとき、サブタンク25内でインク流入口25dから常温のインクが流入しているときには、その常温のインクと、インク循環管55から流入した加熱インクとが混ざり合うことで、サブタンク25内のインクの温度が急激に低下することが防止される。また、常温のインクの流入が終わった後の加熱過程でサブタンク25内のインクに温度分布ができていたり、まだ十分温度が安定していないときにも、インク循環管55から流入する目標温度より若干冷めた加熱インクの流入と、その流入の際に発生したインク流による攪拌作用とにより、サブタンク25内のインクの温度の平均化及びインク温度の目標温度への緩やかな収束が進む。よって、サブタンク25で概ね適度な温度に加熱されたインクの温度のばらつきを一層小さく抑えることができる。よって、温度のばらつきを一層小さく抑えた温度の安定したインクを第3インク供給管47へ供給できる。
【0091】
例えば印刷中においてインク循環を行わず記録ヘッド43で必要な分のインクだけを供給する構成とすると、第3インク供給管47において第2加熱装置72がない箇所のインクが冷め易いため、第3インク供給管47の長手方向における位置の違いで温度が異なる温度分布が発生する。第3インク供給管47で一旦発生した温度分布は解消され難いため、記録ヘッド43のインク噴射性能に影響する。これに対して本実施形態では、印刷準備期間から印刷中(液体噴射動作中)さらに印刷終了後の待機期間においてインク循環を行うため、第3インク供給管47内のインクにその長手方向における位置の違いによる有意な温度分布が発生することがない。
【0092】
以上より、サブタンク用ヒーター33は、サブタンク25内において、その底面近くを延びる管部47cよりも少し離れた上方に位置し、かつメインタンク15からのインク流入停止時の液面A2から底面までの深さの半分の深さ位置よりやや底面側に位置する状態で、水平方向において筒状のサブタンク25のほぼ中央に配置されている。そして、第1温度センサー32は、サブタンク用ヒーター33の環状部分の中心よりもインク流入口25d側の端部と反対側の端部寄り(図4において左側端部寄り)に位置し、かつ液面A2からサブタンク用ヒーター33までの深さの半分の中間位置を真ん中に挟む前記範囲内に位置している。特に、第1温度センサー32は、前記範囲のうち中間位置よりもサブタンク用ヒーター33寄りに位置している。
【0093】
こうしてサブタンク25内のインクはサブタンク用ヒーター33によって第1目標温度になるよう加熱されるものの、サブタンク25内でインクの温度分布を無くし切ることが困難であり、またメインタンク15から間欠的に常温のインクが流入するときに温度分布が発生し易い状態にある。このため、サブタンク25から管部47cを通って第3インク供給管47に流出するインクは概ね第1目標温度に加熱されるものの少し温度のばらつきをもっている。
【0094】
次に第2加熱装置72の構造を、図1、図5〜図7を用いて説明する。図1、図5〜図7に示すように、第2加熱装置72は、接続管48が内部に配管される熱伝導体74と、熱伝導体74に設けられた供給路用ヒーター54と、熱伝導体74に設けられて熱伝導体74の温度を検出する第3温度センサー53とを備えている。熱伝導体74は供給路用ヒーター54の熱を伝導して接続管48を加熱する構成となっている。
【0095】
図6及び図7に示すように、熱伝導体74は、四角板状の熱伝導ブロック75と、同じく四角板状でほぼ同サイズの熱伝導プレート76とを備えている。熱伝導ブロック75の熱伝導プレート76と対向する面には複数本の案内溝75aが形成されており、複数本(N本)の接続管48が各案内溝75aに収容された状態で、熱伝導ブロック75と熱伝導プレート76との間に挟み込まれている。図6及び図7に示すように、供給路用ヒーター54は、熱伝導体74の熱伝導ブロック75側の表面に取着されている。また、第3温度センサー53は、熱伝導体74の熱伝導ブロック75側の表面において供給路用ヒーター54から少し離した位置に取着されている。もちろん、第3温度センサー53は、熱伝導体74において供給路用ヒーター54の配置位置と反対側となる熱伝導プレート76側の表面に取着してもよい。
【0096】
本実施形態では、熱伝導体74を構成する熱伝導ブロック75と熱伝導プレート76は、熱伝導率の高いアルミ系金属(例えばアルミニウム又はアルミ合金)よりなり、接続管48はインク耐食性の高い鉄系金属(例えばステンレス)で構成される。そして、熱伝導体74と、案内路74aに収容された接続管48とはロウ付けにより接合されている。もちろん、熱伝導体74の材料が低熱伝導率かつインク耐食性を有する場合には、熱伝導体74の案内路74aを例えば断面円形の流路とし、この流路をそのまま接続管として使用してもよい。
【0097】
図5に示すように、N本(例えば4本)の接続管48は、隣に位置するものとの略一定の間隔を保った略平行な状態で延びていると共に、蛇行した所定経路を描くように配管されている。管径の小さなN本の接続管48は、蛇行経路を描くことにより細長く延びている。接続管48が蛇行経路を描きつつ細長く延びていることで、接続管48と熱伝導体74との接触面積を広く確保でき、かつ熱伝導体74に配管された部分の接続管48とその管内を流れるインクとの接触面積も広く確保できる。このため、供給路用ヒーター54の熱が熱伝導体74を介して接続管48を流れるインクに効率良く伝達できる。
【0098】
また、接続管48は、図5に示すように隣合うもの同士が略一定の間隔を隔てた略平行な状態で蛇行経路を描くように配管されていることにより、接続管48間における温度のばらつきが発生し難い配管構造となっている。例えばN本の接続管をそれぞれ独立したN個の配管エリア内で蛇行経路を描くように配管した場合、インク噴射流量の多い記録ヘッド43と接続された接続管48の配管エリアで温度が他のエリアよりも相対的に低くなり、インク消費量の少ない記録ヘッド43と接続された接続管48の配管エリアで温度が他のエリアよりも相対的に高くなる。この場合、接続管48内のインク温度が接続管48間でばらつき、ひいては記録ヘッド43内のインク温度が記録ヘッド43間でばらつくという問題を招く。
【0099】
これに対して本実施形態のように、N本の接続管48が隣合うもの同士が略一定の間隔を保った状態で熱伝導体74の同一のエリア内に蛇行経路を描くように配管された構成であれば、仮にインク噴射流量の多い記録ヘッド43と対応する接続管48の周辺温度が低下しても、他の接続管48もその温度の低下したエリアを通ることになる。このため、接続管48内のインク温度が接続管48間でばらつくことが発生し難くなっている。
【0100】
また、接続管48が細長く延びていることでその流路抵抗R2が大きくなっており、仮に第4ポンプ50の脈動が共通管47bを通じて各接続管48の入口まで減衰し切れず伝播しても、各接続管48をインクが通るときの大きな動圧によって脈動は減衰して消滅し、記録ヘッド43内に弱い脈動をも伝播されることが回避される。
【0101】
さらに、図5に示す蛇行経路を描くように配管されているN本の接続管48は、ほぼ等しい管路長になっている。そのため、圧力損失の小さな太い共通管47bをインクが流れることで各接続管48の入口箇所でほぼ同じにできたインク圧は、流路長のほぼ等しい各接続管48をインクがそれぞれ通るときにほぼ等しい圧力損失を受けることから、各記録ヘッド43内のインク圧は記録ヘッド43間でほぼ等しくなる。
【0102】
次に保温装置73の構造について図8に基づいて説明する。図8に示すように、記録ヘッド43は、ヘッド本体80と、ヘッド本体80の下部に固定されたヘッド部81とを備える。ヘッド本体80の内部にはインク室82が形成されており、接続管48とインク循環管55は、ヘッド本体80の上部に対してこのインク室82を挟んで対向する位置にそれぞれ接続されている。インク室82には、接続管48と連通する上側部分からヘッド部81側へ至る途中にフィルター83が設けられており、接続管48からインク室82に流入したインクのうちヘッド部81へ流れるインク中の気泡や異物はフィルター83によって除去されるようになっている。
【0103】
インク室82においてフィルター83を通過したインクはヘッド部81に流れ、ヘッド部81の下面であるノズル形成面81aに開口する複数のノズル84からインク滴として噴射される。ヘッド部81には、各ノズル84と連通する不図示の圧力室がノズルと同数設けられ、ノズル84毎に1つずつ設けられた圧力発生素子が圧力室の一つの壁部(振動板)を振動させてその内部のインクに噴射圧を与えることにより、ノズル84からインク滴が噴射されるようになっている。この圧力発生素子の一例としては、例えば圧電素子、静電素子の他、サーマル方式のインクジェットで使用されるヒーターなどを挙げることができる。
【0104】
図8に示すように、インク室82に流入した加熱インクを保温するための保温装置73は、記録ヘッド43の外壁面に設けられている。記録ヘッド43には、ヘッド部81のノズル形成面81aの周縁部からヘッド側部に渡って金属製のヘッドカバー85(加熱部材)が取着されている。ヘッド用ヒーター45はこのヘッドカバー85に接触する状態に設けられている。そして、ヘッド用ヒーター45に設けられた第2温度センサー44は、ヘッド用ヒーター45の表面温度を直接検出するようになっている。
【0105】
このため、第2温度センサー44の検出温度を第3目標温度(保温用の目標温度)に近づけるようにヘッド用ヒーター45を発熱制御する際の温度の制御幅を小さくすることができる。例えば、インク温度やヘッドカバー85、伝熱板86の温度を直接検出する構成とした場合、インクが冷えたことやインクが加熱されたことを検出したときには、ヘッド用ヒーター45は既にかなり冷えていたりかなり加熱されたりしており、ヘッド用ヒーター45の温度の振れ幅が比較的大きくなる。これに対してヘッド用ヒーター45の表面温度を直接検出する構成であると、ヘッド用ヒーター45を略一定温度(第3目標温度)に保持できるので、記録ヘッド43を第3目標温度に保温でき、記録ヘッド43内の加熱インクの保温効果を確保できる。このため、温度の制御幅が大きいときに問題になるオーバーシュートによるインクの加熱し過ぎや冷め過ぎとなる事態を回避できる。そして、ヘッド用ヒーター45の温度の制御幅が小さいことから、記録ヘッド43内のインクが第3目標温度に保温される。
【0106】
また、記録ヘッド43の外壁部には、ヘッド用ヒーター45の表面とヘッドカバー85の表面との両方に接触した状態でこれらの側面を覆うように配置された伝熱板86が設けられている。よって、ヘッド用ヒーター45の熱は、記録ヘッド43の側面に直接伝えられる以外に、伝熱板86を介して記録ヘッド43の側面に伝えられ、さらに伝熱板86及びヘッドカバー85を介してヘッド部81の側部及びノズル形成面81aの周縁部に伝えられる。このとき、ヘッド用ヒーター45の熱はヘッドカバー85にその端面接触部分を介して直接伝えられる他、伝熱板86を経由してヘッドカバー85の側部表面に伝えられる。このため、ヘッド部81の側面及びノズル形成面81aの周縁部に効率よく熱を伝えることができる。よって、保温装置73により、ヘッド部81の圧力室やノズル84内のインクを効果的に保温できる。この結果、ノズル84から噴射されるインク滴の噴射性能が良好になる。
【0107】
本実施形態では、ヘッド本体80は樹脂ベースで形成されており、ヘッド部81のノズル形成面81aを含む部分はヘッド本体80のベース樹脂よりも熱伝導率の高い材料で形成されている。本実施形態では、ヘッド部81のうちノズル形成面81aを含む部分は例えばシリコンにより形成されている。シリコンは、金属ほどではないが樹脂やセラミックに比べ熱伝導率が大きい。よって、ヘッド用ヒーター45の熱を伝熱板86及びヘッドカバー85を介してヘッド部81におけるノズル形成面81aの周縁部及び側壁部に熱を伝導させることで、ヘッド部81全体をヘッド用ヒーター45の温度にほぼ等しい均一な温度に加熱することで、ヘッド部81内のインクを保温することができる。
【0108】
この場合、ヘッド本体80を外側から加熱してもインク室82やその下流の流路、圧力室、ノズル84内のインクに熱を伝えることが困難である。しかし、本実施形態の構成であれば、ヘッド用ヒーター45から伝熱板86を介して熱が伝達されたヘッドカバー85が、ヘッド部81の側部及びノズル形成面81aの周縁部を加熱する。このため、インク室82内のインクが加熱され難いヘッド本体80が樹脂製の記録ヘッド43では、インク室82からその下流側へ送られるうちにインクが徐々に冷める傾向にあるが、ヘッド部81が加熱されることで、インク流路の下流端に位置するノズル84や圧力室内のインクが加熱される。よって、記録ヘッド43内において噴射される前のインクが第3目標温度に適度に保温されているので、記録ヘッド43の良好な噴射性能が確保される。
【0109】
このように加熱システムを構成する第1加熱装置71、第2加熱装置72、保温装置73は、ヒーター、温度センサー、伝熱手段(熱伝導体や伝熱板)などの配置構造により、第1加熱・第2加熱・保温の各機能を実現している。さらに、これらに加え、制御装置60によるヒーター33,45,54のフィードバック制御によっても、第1加熱・第2加熱・保温の各機能を実現している。
【0110】
本実施形態では、制御装置60のコンピューター61は、温度センサー32,44,53が検出した検出温度を目標温度に近づけるように各ヒーター33,45,54をPID制御している。サブタンク用ヒーター33はP重視で温度の制御幅の大きなPID制御が行われ、温度変化に素早く追随する温度制御が行われる。また、供給路用ヒーター54は、P重視であるが、温度の制御幅が小さく、サブタンク用ヒーター33ほどではないが温度変化に比較的速やかに追随するPID制御が行われる。さらに、ヘッド用ヒーター45は、検出温度と目標温度との温度差が他の制御と同じであっても、他の制御に比べ温度の制御幅が一番小さく、ヘッド用ヒーター45に目標温度からずれる温度変化があっても実温度が第3目標温度に滑らかに追随するPID制御が行われる。
【0111】
次に、制御装置60のコンピューター61が実行するインク供給制御及びクリーニング制御について説明する。
さて、コンピューター61は、予め設定された所定周期(例えば1〜100ミリ秒の範囲内の所定時間)毎にインク供給制御ルーチンを実行する。プリンター11の電源オフ時は、各開閉弁30,37,41,51,56は閉弁状態にある。プリンター11の電源が投入されると、コンピューター61は開閉弁30,41,51,56を開弁させると共に第3ポンプ39及び第4ポンプ50を駆動させる。この結果、第3ポンプ39による空気室25a内からの空気の排出動作により空気室25a内が負圧になり、サブタンク25内のインクの液面A2に負圧が作用することでサブタンク25内のインク圧が減圧する。この状態で第4ポンプ50が吐出駆動されることにより、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43にインクが供給される。このとき、第4ポンプ50の吐出駆動によって、インクは第3インク供給管47を通じて例えば20N(cc/分)のインク吐出流量Qpump(=インク供給流量Qin)で供給される。
【0112】
第3インク供給管47のうち共通管47bを流れてN個の接続管48の各入口位置(各分岐箇所)に至るまでインクが流れる距離(流路長)がそれぞれ異なるものの、共通管47bの流路抵抗R1が小さくインクの圧力損失がほとんどないため、N個の接続管48のそれぞれの入口に到達した際のインク供給圧が各接続管48の間でほぼ等しくなる。そして、管径が小さくかつ蛇行経路(蛇道)をとる細長い接続管48を流れるときのインクの流路抵抗R2は非常に大きくなる。このため、各記録ヘッド43内へ供給されるインク供給量が記録ヘッド43間でほぼ等しくなる。また、このとき第4ポンプ50の脈動は、ダンパー52で減衰し切れない僅かな分は接続管48の入口に伝播するが、大きな流路抵抗R2の接続管48を流れるときのインクの動圧により僅かばかり伝播した脈動もほとんど消滅し、記録ヘッド43内に脈動の影響が及ぶことがほぼ防止される。
【0113】
ここで、記録ヘッド43ではノズル84から噴射されたインクの分だけインクが消費される。このとき、記録ヘッド43に供給される流量20(cc/分)のインクのうちそのときのデューティー値Dに応じたインク噴射流量Qh分のインクが消費される。本実施形態では、最大(Full)デューティーで印刷しているとき、記録ヘッド一個当たりのインク消費量が10(cc/分)である。そして、N個全ての記録ヘッド43が最大(Full)デューティーで印刷を行っているときの最大インク噴射流量Qhmax(=10N(cc/分))よりも、多いインク供給流量Qin(=20N(cc/分))のインクが第4ポンプ50(供給ポンプ)により供給される。よって、印刷停止中はもちろん印刷中においても、インク供給流量Qinからインク噴射流量Qh分を差し引いた分のインク循環流量Qout(=Qin−Qh)で記録ヘッド43からインク循環管55を通じてサブタンク25にインクが還流される。このため、最大デューティーで印刷されているときでも、必ずインク循環管55を通ってインクが環流するので、記録ヘッド43からインク循環管55へ一旦流出したインクが、インク循環管55から記録ヘッド43に戻ることはない。よって、インク循環管55へ一旦流出して冷めたUVインクが記録ヘッド43内に再び戻って記録ヘッド43内のインク温度を低下させることによる記録ヘッド43の噴射特性の悪化を回避できる。
【0114】
ROM68には、印刷時のインク供給制御を行うための図9のフローチャートで示される印刷処理ルーチンのプログラムが記憶されている。印刷が開始されると、コンピューター61(詳しくはその内部のCPU67)が図9に示される印刷処理ルーチンを実行することで、印刷時のインク供給制御が行われる。以下、コンピューター61が実行する印刷時のインク供給制御について図9に基づいて説明する。なお、プリンター11の印刷開始前の待機中は、サブタンク25と記録ヘッド43間でインクの循環が行われているが、待機状態のまま所定時間を経過するとインクの循環が停止される。ここでは、印刷ジョブを受け付けたときに、インク循環は停止されているものとする。この場合、第3インク供給管47及びインク循環管55上の各開閉弁51,56と、加減圧装置34における開閉弁37,41は全て閉弁状態にある。なお、加減圧装置34は、サブタンク25の液量の変化に応じて空気室25aの容積が変化するのに連れて、空気室25aを目標圧にすべく適宜駆動される。
【0115】
まずステップS10では、記録ヘッド43へインクを供給するために開閉弁を開弁する。すなわち、第3インク供給管47上の開閉弁51と、インク循環管55上の開閉弁56と、加減圧装置34の開閉弁41とを開弁する。
【0116】
ステップS20では、インク供給経路及び記録ヘッド内のインクの加熱・保温制御を行う。コンピューター61は、プリンター11の電源投入時からインクの加圧・保温制御を開始しており、このステップは、そのうち印刷中に行われる加熱・保温制御の部分を示したものである。すなわち、コンピューター61は、第1温度センサー32の検出結果に基づいてサブタンク用ヒーター33を温度制御する。コンピューター61は、第3温度センサー53の検出結果に基づいて供給路用ヒーター54を温度制御する。さらに、コンピューター61は、第2温度センサー44の検出結果に基づいてヘッド用ヒーター45を温度制御する。
【0117】
ステップS30では、インク供給用の第4ポンプを駆動させる。このとき、第4ポンプ50を最大インク噴射流量Qhmaxよりも多いインク供給流量Qin(Qin>Qhmax)の条件を満たすようにポンプを駆動制御する。
【0118】
ステップS40では、印刷モードと記録ヘッド制御用のデューティー値Dと液頭差Hとに基づく負圧値Pdecになるようサブタンク25の空気室25aを圧力制御する。すなわち、そのときの印刷モードに応じたP3loss(D)を選択し、デューティー値Dと液頭差Hとを用いて、目標負圧値Pdectrgを、式 Pdectrg=Po−Ph(H)−P3loss(D)により算出する。そして、コンピューター61は、圧力センサー58が検出した実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgに一致するように、第3ポンプ39(減圧ポンプ)及び圧力開放弁40を制御する。この結果、空気室25aが目標負圧値Pdectrgになるように制御される。詳しくは、コンピューター61は、実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgよりも絶対値で小さいときには、第3駆動モーター38を駆動して第3ポンプ39を減圧駆動させることで、実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgに一致するまで空気室25aを減圧させる。一方、サブタンク25内のインクが減少して空気室25aの容積が増えると空気室25aの圧力は減少し、このとき実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgよりも絶対値で大きくなる。このように実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgよりも絶対値で大きいときには、コンピューター61は、圧力開放弁40を開弁して空気室25aを大気に開放することで、実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgに一致するまで、小流量で空気を空気室25a内に流入させる。
【0119】
そして、ステップS50では印刷終了か否かを判断し、印刷終了でなければ(つまり印刷中であれば)ステップS20に戻る。そして、S50において印刷終了と判断されるまで、以下同様にS20〜S40の処理を繰り返し実行する。印刷が終了すると、ステップS60において、第4ポンプ50を駆動停止させてインク供給を停止させると共に、その第4ポンプ50の駆動停止後に開閉弁51,56を閉弁させて第3インク供給管47及びインク循環管55の流路を遮断する。
【0120】
次にクリーニングについて説明する。プリンター11は、記録ヘッド43の噴射不良を予防・解消するクリーニング機能を有している。本実施形態のプリンター11では、前述のように、記録ヘッド43のインク室82内におけるインク中の気泡を除去することを目的とする第1クリーニングと、記録ヘッド43のノズル目詰まりの予防・解消を目的とする第2クリーニングとが用意されている。第1クリーニングは、インクカートリッジ交換時、初期充填時、プリンター長期間不使用時などのインク中に気泡が混入する又は混入している虞があるときに行われる。
【0121】
また、プリンター11は、記録ヘッド43毎にノズル目詰まりの有無を検査するノズル検査装置(図示省略)を備えている。制御装置60は、ユーザー操作によりクリーニングの指示を受け付けたとき、及び前回のクリーニング終了時点からの経過時間が不図示のクリーニングタイマーの計時時間に基づき所定時間に達したと判断したときに、ノズル検査装置に各記録ヘッド43のノズル検査を行わせる。第2クリーニングは、ノズル検査装置によるノズル検査結果からノズル目詰まり有りと判定された不良の記録ヘッド43が存在するときに、その不要の記録ヘッド43を対象として選択的に行われる。図2に示すROM68には、図10に示す第1クリーニング処理ルーチンのプログラム、及び図11に示す第2クリーニング処理ルーチンのプログラムが記憶されている。
【0122】
まず第1クリーニングについて説明する。コンピューター61は、インクカートリッジ交換時、初期充填時、プリンター長期間不使用時のうちいずれか一つが該当する第1クリーニング実施時期になると、図10に示す1クリーニング処理ルーチンを実行する。
【0123】
まずステップS110では、第1及び第2開閉弁30,37を閉弁し、第3及び第4開閉弁41,51を開弁する。この結果、第1開閉弁30の閉弁によってサブタンク25とメインタンク15との連通が遮断されると共に、第4開閉弁51の開弁によってサブタンク25と各記録ヘッド43とが連通状態とされ、さらに加減圧装置34においてサブタンク25に対して第2ポンプ36が非連通状態かつ第3ポンプ39が連通状態となる。
【0124】
次のステップS120では、N個(本例では4個)の第5開閉弁56のうち今回の第1クリーニングの対象となるM個の記録ヘッド43に対応するM個の第5開閉弁56を開弁すると共に、残り(N−M)個の開閉弁56を閉弁する。ここで、第1クリーニングは、記録ヘッド43をM個ずつ順番に複数回に分けて行われ、このステップでは、今回行うべき第1クリーニングの対象となるM個の記録ヘッド43(以下、「第1クリーニング対象ヘッド」ともいう)の選択と、その選択したM個の記録ヘッド43に対応するM個の第5開閉弁56を開弁する。
【0125】
詳しくは、第1クリーニングにおけるM個は、クリーニング1回当たりのクリーニング対象の最大個数であって、N個のうちクリーニング対象のK(但し、M≦K≦N)個の液体噴射ヘッドのクリーニングを、少なくとも|[−K/M]|(但し、[]はガウス記号、||は絶対値)回行うことで、K個全ての液体噴射ヘッドのクリーニングを行う。例えばK個分のクリーニングを1個ずつ行う場合(M=1)は、1個ずつのクリーニングをK(=|[−K]|)回行う。また、7個分のクリーニングを2個ずつ行う場合(M=2、K=7)は、2個ずつのクリーニングを3回、1個のクリーニングを1回行うことで、計4(=|[−7/2]|)回のクリーニングを行うことになる。
【0126】
ステップS130では、第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動させる。すなわち、コンピューター61は第4駆動モーター49を駆動させることで第4ポンプ50を駆動する。この結果、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43に供給されたインクが、M本のインク循環管55を通じて再びサブタンク25に還流するインクの循環が行われる。
【0127】
次のステップS140では、第3ポンプ39(減圧ポンプ)を駆動する。すなわち、コンピューター61は第3駆動モーター38を駆動させることで第3ポンプ39を駆動する。第3ポンプ39が駆動されることでサブタンク25が減圧される。すなわち、第3ポンプ39によって空気室25aから空気が排気されることで空気室25aが減圧され、この空気室25aの負圧がインクの液面A2に及ぶことでサブタンク25内のインクが減圧される。
【0128】
そして、ステップS150では、サブタンク25の減圧が完了したか否かを判断する。つまり、コンピューター61は、圧力センサー58が検出するサブタンク25内の空気圧(サブタンク圧)Psubが目標負圧値PDに達した(Psub≦PD)か否かを判断する。Psub≦PDが不成立の間はステップS140における第3ポンプ39の駆動を継続し、Psub≦PDが成立するとステップS160に進む。
【0129】
ステップS160では、第1クリーニング時間を経過したか否かを判断する。コンピューター61は、第4ポンプ50を駆動してインク循環を開始することにより第1クリーニングを開始した時点からの経過時間を不図示のタイマーで計時している。コンピューター61は、そのタイマーの計時時間Tが、第1クリーニングの実施時間である第1クリーニング時間T1(以下、「第1CL時間T1」とも記す)に達した(T≧T1)ことをもって、第1CL時間T1が経過したと判断する。第1CL時間T1を経過していなければ(T≧T1が不成立であると)、そのまま第1クリーニングを継続し、第1CL時間T1を経過すると(T≧T1が成立すると)、ステップS170に進む。
【0130】
ステップS170では、第1クリーニング対象ヘッド(第1CL対象ヘッド)がまだ存在するか否かを判断する。つまりN個全ての記録ヘッド43に対する第1クリーニングを終えておらず、第1クリーニングを実施すべき記録ヘッド43がまだ残っている場合は、第1クリーニング対象ヘッドありと判断する。第1クリーニング対象ヘッドがまだ存在すれば、ステップS120に戻り、次の第1クリーニング対象ヘッドに対して、同様にステップS120〜S160の各処理を実行することで第1クリーニングを施す。そして、N個全ての記録ヘッド43に対して第1クリーニングを実施し、ステップS170において第1クリーニング対象ヘッドがないと判断すると、ステップS180に進む。
【0131】
ステップS180では、第4ポンプ50の駆動を停止させてインクの循環を停止させると共に、第4及び第5開閉弁51,56を閉弁させることで第3インク供給管47及び各インク循環管55を閉じる。さらに、圧力開放弁40を制御して外部からサブタンク25内に小流量で空気を流入させることで、サブタンク25を減圧状態から印刷待機時の標準圧に復帰させる。なお、ステップS140,S150におけるサブタンク25の減圧は、記録ヘッド一個当たりのインク供給流量Qin(=インク循環流量Qout)が、印刷時の値(本例では20(cc/分))のN/M倍になっても、ノズルのインク漏れが発生しないか極めて少ないインク漏れで済むように、記録ヘッド一個当たりのインク供給流量Qinの値に応じて可変の目標負圧値PDに設定されている。
【0132】
この第1クリーニング実施中においては、第4ポンプ50の送り出し流量は印刷中と同じ20N(cc/分)である。この送り出し流量は第4ポンプ50のほぼ能力上限であり、本例では、流量をこれより多くすることはできない。また、本例では、第1クリーニング対象ヘッドの個数Mが「1」であり、1個ずつ順番に記録ヘッド43の第1クリーニングを行う。5本のインク循環管55のうち第1クリーニング対象ヘッドに対応するM本(例えば1本)のインク循環管55が開放され、残り(N−M)本(例えば3本)のインク循環管55は遮断される。このため、M=1の本例では、3本のインク循環管55が遮断されていることから、クリーニング対象の記録ヘッド43に対応する1本のインク循環管55を通ってインクは流量20N(cc/分)で還流される。
【0133】
サブタンク25から第4ポンプ50によって共通管47bへ送り出された流量20N(cc/分)のインクは全て、第1クリーニング対象である1個の記録ヘッド43を通る経路で循環する。印刷時における記録ヘッドN個分の流量20N(cc/分)がすべて一つの記録ヘッド43に流入することで、記録ヘッド43内を流れるインクの流速は速くなる。
【0134】
本例では、図8に示すように、接続管48から記録ヘッド43のインク室82内に流入するインク量は印刷時のN/M倍(例えば4倍)となるため、接続管48から流入してインク循環管55から流出するまでインク室82を流れるインクは、印刷時の流速に比べN/M倍の速い流速で流れることになる。よって、インク室82の上側のコーナーに溜まった気泡やフィルター83に捕捉されていた気泡が、インクのその速い流速によって押し流されて、インク室82から除去される。
【0135】
ここで、記録ヘッド43の一個当たりのインク流量がN/M倍になることで、記録ヘッド43内のインク圧が高くなりノズルからのインク漏れが懸念される。しかし、本実施形態では、第3ポンプ39の駆動によりサブタンク25が減圧されることで、記録ヘッド43内のインク圧も減圧される。このため、記録ヘッド一個当たりのインク流量が大幅に増大したことによるインク室82のインク圧上昇分は、サブタンク25の減圧によるインク減圧分によりほぼ相殺される。この結果、ノズルからインク漏れが発生しないか、仮にインク漏れが発生してもその漏れ量を少なく抑えることができる。
【0136】
また、例えば記録ヘッド一個当たりのインク流量を増大し記録ヘッド内のインクが加圧されるだけの構成であると、その加圧力により気泡が小さく圧縮されてしまいフィルターから気泡が離れにくくなる。これに対し、本例では、インク室82のインクが流量増大分のその加圧を相殺するように減圧されることにより、インク室82のインク中の気泡は減圧がない場合に比べ膨張するので、フィルター83に捕捉された気泡がフィルター83から離れやすくなる。このように記録ヘッド一個当たりのインク流量が増大する第2クリーニングにおいて、インクの減圧を併せて行うことで、ノズルからのインク漏れを防止又は少なく抑えつつ、気泡の除去効果を高めることができる。なお、この第1クリーニングが行われるときには、事前に記録ヘッド43のノズル形成面にキャップを当接するキャッピングが行われ、仮にノズルからインクが漏れても、その漏れたインクはキャップ内に受け止められる。
【0137】
ここで、第1クリーニングにおける減圧制御の目標負圧値PDについて説明する。
第3インク供給管47の流路抵抗Rがインク循環管55の流路抵抗R3よりも大きい(R>R3)ので、クリーニング時においても印刷時と同様に各接続管48の入口箇所でのインク圧Pinがほぼ等しく、このインク圧Pinから接続管48の流路抵抗R2分だけ下降した値が記録ヘッド43内のインク圧Pheadとなる。
【0138】
このとき閉になった開閉弁56と対応する非クリーニング対象の記録ヘッド43内のインク圧Pheadは、接続管48を通じて記録ヘッド43へインクが徐々に流入するに連れて高まり、そのインク圧が入口のインク圧Pinと同じになった時点で接続管48を通るインクの流れが止まる。このため、記録ヘッド43内のインク圧Pheadは、クリーニング開始後しばらくすると入口のインク圧Pinに等しい値に収束する。ここで、入口のインク圧Pinは、サブタンク圧Psub、第4ポンプ50(供給ポンプ)のインク吐出流量Qpump(=Qintotal)、流路抵抗R1を用いて、Pin=Psub−P1loss=Psub−R1・Qpumpで示される。
【0139】
一方、開になった開閉弁56と対応するクリーニング対象の記録ヘッド43のノズル84におけるメニスカスのインク圧Phclは、接続管48を通じて記録ヘッド43へ流入する際のインク供給流量Qinが(N/M)・Qintotal/Nで、接続管48の流路抵抗がR2なので、Phcl=Psub−(N/M)・(P1loss+P2loss−P3loss)+Ph(H)で表される。
【0140】
また、非クリーニング対象の記録ヘッド43のノズル84におけるメニスカスのインク圧Phnclは、Phncl=Psub−P1loss+Ph(H)で表される。
上記の二式から第1クリーニング時のインク圧力Phは、記録ヘッド43の総個数N,クリーニング対象の記録ヘッド43の個数M,液頭差Hが決まれば、サブタンク圧Psubを変化させることで調整できる。そのため、本例では、上記のインク圧Phcl,Phnclを、ノズル84からインクが漏れない程度の値にするように、サブタンク圧Psubの負圧値Pdecを調整している。インクが漏れないときのインク圧をPhtrg2とし、Ph=Phtrg2とするためのサブタンク圧Psubの目標負圧値を、クリーニング対象と非クリーニング対象とでそれぞれPDcl,PDnclとおくと、PDcl,PDnclは、
PDcl=Phtrg2+(N/M)・(P1loss+P2loss−P3loss)−Ph(H)
PDncl=Phtrg2+P1loss−Ph(H)
で表される。そして、上記2式で決まるPDcl,PDnclのうち小さい方を目標負圧値PDに採用する。このため、本実施形態では、第1クリーニングのときは、サブタンク圧Psubを負圧値PDにすることにより、ノズル84からのインク漏れが回避される。
【0141】
次に第2クリーニングについて説明する。クリーニングタイマーが前回のクリーニング終了時点から所定時間を計時し終わったとき、又はユーザー操作によるクリーニングの指示を受け付けたとき、コンピューター61はノズル検査装置に各記録ヘッド43のノズル検査を行わせる。ノズル検査結果からノズル目詰まりがあると判断された記録ヘッド43が存在すると、その記録ヘッド43のみを対象として第2クリーニングを行う。この第2クリーニングを行うときには、コンピューター61は図11に示す第2クリーニング処理ルーチンを実行する。以下、N個の記録ヘッド43のうち第2クリーニングの対象となる記録ヘッド43(以下、第2クリーニング対象ヘッド)がK個あったとして説明する。
【0142】
まずステップS210では、第1、第3及び第5開閉弁30,41,56を閉弁し、第2及び第4開閉弁37,51を開弁する。この結果、サブタンク25とメインタンク15との連通が遮断されると共に、N本のインク循環管55全てが遮断される。また、加減圧装置34においてサブタンク25に対して第2ポンプ36が連通状態かつ第3ポンプ39が非連通の状態となる。
【0143】
ステップS220では、第2ポンプ36(加圧ポンプ)を駆動する。すなわち、コンピューター61は、第2駆動モーター35を駆動させることで第2ポンプ36を駆動する。第2ポンプ36が駆動されることでサブタンク25が加圧される。すなわち、第2ポンプ36によって外部から空気が送り込まれることで空気室25aが加圧され、この空気室25aの加圧力が液面A2に及ぶことでサブタンク25内のインクが加圧される。
【0144】
そして、ステップS230では、サブタンク25の加圧が完了したか否かを判断する。つまり、コンピューター61は、圧力センサー58が検出するサブタンク25内の空気圧Psubが目標加圧値PAに達した(Psub≧PA)か否かを判断する。Psub≧PAが不成立の間はステップS220における第2ポンプ36の駆動を継続し、Psub≧PAが成立するとステップS240に進む。
【0145】
ステップS240では、N個(本例では4個)の第5開閉弁56のうち第2クリーニング対象のK個の記録ヘッド43に対応するK個の第5開閉弁56を開弁する。この結果、サブタンク25の圧力が十分高まった状態でK個の第5開閉弁56が開弁されることで、サブタンク25から加圧インクがK本のインク循環管55を通じてK個の記録ヘッド43へそれぞれ供給される。このとき、第3インク供給管47は閉じられているので、記録ヘッド43のインク室82に加圧インクが一気に供給され、記録ヘッド43のノズルからインクが勢いよく排出される。
【0146】
ステップS250では、第2クリーニング時間を経過したか否かを判断する。コンピューター61は、不図示のタイマーで、K個の第5開閉弁56を開弁して第2クリーニングを開始した時点からの経過時間を計時しており、そのタイマーの計時時間Tが、第2クリーニングの実施時間である第2クリーニング時間T2(以下、「第2CL時間T2」とも記す)に達した(T≧T2)ことをもって、第2CL時間T2が経過したと判断する。第2CL時間T2経過前であれば(T≧T2が不成立であれば)、そのまま第2クリーニングを継続し、第2CL時間T2が経過すると(T≧T2が成立すると)、ステップS260に進む。
【0147】
そして、ステップS260では、K個の第5開閉弁56を閉弁してインク循環管55を閉じることにより第2クリーニングを停止すると共に、加減圧装置34の開閉弁37,41を切り換えて、第3ポンプ39を駆動させてサブタンク25を減圧することにより、サブタンク25を印刷待機時の標準圧まで復帰させる。
【0148】
このように第2クリーニングにおいては、サブタンク25内の空気圧Psubが目標加圧値PAまで高まるのを待ってから第5開閉弁56を開弁するので、無駄なインク消費を減らすことができる。例えば最初に第5開閉弁56を開弁しておき、それから第2ポンプ36を駆動させて加圧を開始する構成とすると、サブタンク25が目標加圧値PAに達するまでの加圧途中の段階で、記録ヘッド43のノズルからインクが少しずつ漏れてしまう。この漏れた分のインクは勢いがなくノズル目詰まりの解消には役立たず、無駄なインクの消費となる。これに対して本実施形態の第2クリーニングでは、サブタンク25を十分加圧してから第5開閉弁56を開弁するので、ノズルから排出されるインクは最初から勢いがありノズル目詰まりの解消に役立つため、無駄なインク消費を抑制できる。
【0149】
また、ノズルクリーニングの方法として、第5開閉弁56を全て閉じた状態で第4ポンプ50を駆動し、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43へインクを供給することにより、記録ヘッド43のノズルからインクを強制的に排出させる方法も考えられる。しかし、この場合、流路抵抗の大きな接続管48をインクが通る際の圧力損失が大きいため、第2ポンプ36によるサブタンク25の加圧、及び第4ポンプ50の吐出力による上流側での高いインク加圧力を発生させた割に、記録ヘッド43のノズルから排出されるインクの勢いがさほど得られない。これに対して、本実施形態の第2クリーニングでは、流路抵抗の小さなインク循環管55を通じて加圧インクを記録ヘッド43に供給するので、加圧インクがインク循環管55を通る際の圧力損失が小さく、記録ヘッド43のノズルから勢いよくインクを排出させることができる。
【0150】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)第3インク供給管47(供給路)の流路抵抗R(≒R2>R1)と、インク循環管55(循環路)の流路抵抗R3とを、R<R3の関係を満たすように設定した。このため、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことができる。よって、印刷中において、各記録ヘッド43のノズルからのインク漏れを抑えつつ、各記録ヘッド43内のインク圧を許容範囲内に収めて適量のインク滴を噴射できる。
【0151】
(3)第3インク供給管47の共通管47bの流路抵抗R1と、接続管48の流路抵抗R2と、インク循環管55の流路抵抗R3とを、R1<R3<R2の関係を満たすように設定した。よって、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことができる。また、少なくとも印刷時には、インク循環流量Qoutはインク供給流量Qinに比べ少ないことから、その少ない分だけインク循環管55を小径にしているので、インク循環管55の小型化を図ることができる。
【0152】
(4)記録ヘッド43において、インク圧の変動を±50Pa以内に収めたいという要請からは、接続管48の流路抵抗R2は、インク循環管55の流路抵抗R3の5倍以上にすることが好ましい。よって、R2≧5・R3の関係を満たすことで、どの印刷モードにおいても、記録ヘッド43内のインク圧の変動を±50Pa以内に収めることができるので、記録ヘッド43のノズルからのインク噴射量を安定にすることができる。
【0153】
(5)最大デューティー値Dfull(最大噴射流量)で印刷しているときの記録ヘッド43の最大インク噴射流量Qhmaxよりも多いインク供給流量Qinで記録ヘッド43にインクを供給するようにした(Qin>Qhmax)。よって、最大デューティー値Dfullで印刷しているときでも、記録ヘッド43からインク循環管55へ一旦流出した冷めたインクが再び記録ヘッド43内へ逆流することを防止できる。その結果、記録ヘッド43内のインク温度を適度な値に安定に保つことができ、記録ヘッド43内のインクを噴射に適した低粘度に保持できる。よって、各記録ヘッド43間におけるインクの噴射性能のばらつきを抑え、高い印刷品質を実現できる。
【0154】
(6)接続管48の流路抵抗R2を大きくするために、接続管48を細長く形成しているので、接続管48に第2加熱装置72を設けることにより、第3インク供給管47を流れるインクを効率よく加熱することができる。
【0155】
(9)第1クリーニングにおいては、少なくとも1つの開閉弁を閉じた状態で、第4ポンプを駆動することにより、サブタンク25から記録ヘッド43を経由する循環流路でインクを循環させてクリーニング対象の記録ヘッド43に大きな流量のインクを流すと共に、サブタンク25を減圧するので、記録ヘッド43内のインク中の気泡を効果的に除去することができる。
【0156】
(10)第3ポンプ39によりサブタンク25を減圧することにより、記録ヘッド43内のインク中の気泡が小さくなることを抑制しつつ気泡の除去効果を高められるうえ、記録ヘッド43のノズル84からのインク排出量を少なく抑えることができる。
【0157】
(11)第2クリーニングにおいては、第5開閉弁56を閉弁した状態で第2ポンプ36を駆動し、サブタンク25内のインクが所定圧まで加圧(蓄圧)されるのを待ってから第5開閉弁56を開くので、加圧途中で無駄なインクの排出を抑えつつノズルクリーニングを行うことができる。このとき大きな流路抵抗Rの第3インク供給管47上の第4開閉弁51を閉じ、小さな流路抵抗R3のインク循環管55を経由して加圧インクを記録ヘッド43に送り込む構成なので、サブタンク25から記録ヘッド43へ加圧インクが供給される際の圧力損失が小さく済み、その分、強いノズルクリーニングを行うことができる。さらに、第2クリーニング時に第3インク供給管47内の加熱インクが流れることがほとんどないので、第3インク供給管47内の加熱インクがノズルクリーニングにより排出されてしまう無駄がない。そのため、クリーニング終了後の印刷時には、第3インク供給管47内の低粘度の加熱インクが使用され、良好な印刷を行うことができる。
【0158】
(12)サブタンク用ヒーター33をサブタンク25内のインクに浸漬したので、サブタンク25内のインク全体の平均昇温速度(加熱速度)を高めることができる。
(13)サブタンク25を金属に比べて熱伝導率の低い無機材料で形成したので、サブタンク25内のインクの熱がサブタンク25の壁部を介して放熱し難くすることができる。よって、サブタンク25内のインクの加熱速度を高めることに寄与する。
【0159】
(14)サブタンク25内において第3インク供給管47の上流端側の一部をなす管部47cが、サブタンク25内を底面に沿って横断するように挿入され、その管部47cの流入口47dが、メインタンク15からのインク流入口25dと反対側に位置する。よって、インク流入口25dから流入したばかりでさほど加熱されていないインクが、第3インク供給管47へ送り出されることを回避できる。
【0160】
(15)第1温度センサー32をサブタンク25内のインク中に浸漬したので、サブタンク25内の実際のインク温度が低下してから加熱を開始するまで応答速度を高めることができる。例えばメインタンク15から流入した常温のインクの温度を第1温度センサー32が素早く検出して、速やかにサブタンク用ヒーター33を発熱させることができる。よって、常温のインクが流入中のときでも、概ね第1目標温度に加熱されたインクを第3インク供給管47に供給できる。
【0161】
(16)第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33から適度な所定距離だけ離したので、近づけ過ぎたときに問題になるインクの過加熱による特性変異を招いたり、遠ざけ過ぎたときに問題になる応答性の悪化及びサブタンク25内のインク全体の平均昇温速度の低下を回避できる。特に第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33の中心よりもインク流入口25dと反対側の範囲に配置し、かつメインタンク15からのインク供給停止時の液面A2からサブタンク用ヒーター33までの深さの半分の中心位置を真ん中に挟んでその深さの半分の範囲内(特に前記範囲内において中心位置よりもサブタンク用ヒーター33寄りの位置)に配置した。よって、サブタンク25内に常温インクが流入したときの加熱開始までの応答速度、及びその加熱開始後におけるインク全体の平均昇温速度(サブタンク25内のインク温度分布を平均化した平均温度の上昇速度)をそれぞれ高めることができる。
【0162】
(17)接続管48を熱伝導体74(加熱ブロック)により挟み込んだ状態とし、供給路用ヒーター54の熱が伝導することで全体が供給路用ヒーター54の温度にほぼ等しくなった熱伝導体74により接続管48を加熱する構成とした。よって、ほぼ目標温度に保持された熱伝導体74からの熱伝達により、接続管48内の加熱インクをその温度ばらつきを無くすように加熱することができる。
【0163】
(18)第3温度センサー53を熱伝導体74に設けることで、熱伝導体74の表面温度の検出結果に基づき供給路用ヒーター54を制御する構成とした。そのため、熱伝導体74をほぼ目標温度に保持でき、ほぼ目標温度に保持された熱伝導体74からの熱伝達によって接続管48内の加熱インクをその温度ばらつきを無くすように加熱できる。
【0164】
(19)保温装置73は、ヘッド用ヒーター45の熱を伝導して加熱するヘッドカバー85(加熱部材)をノズル形成面81aの周縁部からヘッド側壁に渡って設けている。よって、ヘッド用ヒーター45の熱は、ヘッドカバー85を介してノズル形成面81aの周縁部に伝わり、記録ヘッド43をその流路の下流端であるノズル84側から目標温度に保温できる。よって、ノズル84やノズル84の直ぐ上流側付近の液体を適度な加熱温度に保温できることから、ノズル84から低粘度のインクを噴射させて、良好な噴射を実現できる。
【0165】
(20)第2温度センサー44をヘッド用ヒーター45に設け、ヘッド用ヒーター45の表面温度の検出結果に基づきヘッド用ヒーター45を制御する構成とした。よって、ヘッド用ヒーター45を目標温度に保持でき、その目標温度に保持されたヘッド用ヒーター45の熱をヘッドカバー85を介してノズル形成面81aの周縁部に伝達できるので、たとえヘッド本体80が樹脂製であっても、ヘッド部81を目標温度に保温できる。その結果、ノズル84やノズル84の直ぐ上流側付近の液体を適度な加熱温度に保温でき、良好なインク滴の噴射を実現できる。
【0166】
(21)ヘッド用ヒーター45の熱を伝熱板86を介してヘッドカバー85に伝えるので、ヘッドカバー85への熱伝達を効率よく行うことができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0167】
・第2クリーニングは、第3ポンプ39(加圧ポンプ)を駆動して行う方法に限定されない。例えば第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動することにより第2クリーニングを実施することもできる。すなわち、インク循環管55に設けられたN個の第5開閉弁56を閉弁状態とし、第4ポンプ50を駆動する。各記録ヘッド43の下流側のインク循環管55が、閉じられた第5開閉弁56によりインクが流れることを遮断された状態で、第4ポンプ50の駆動によって第3インク供給管47を通じて各記録ヘッド43にインクが送り込まれるので、記録ヘッド43内のインク圧が一気に高まり、そのノズルからインクが勢いよく排出される。
【0168】
・実施形態において、ノズル目詰まりを解消する第2クリーニング(ノズルクリーニング)を行う構成及び方法として、図12に示すものを採用できる。例えば第5開閉弁56を全て閉じた状態で、第4ポンプ50を駆動させることにより、記録ヘッド43のノズルからインクを排出させる構成及び方法を採用できる。この場合、図12に示すように、第3インク供給管47から並列に分岐する各接続管48上にN個の第6開閉弁90を設け、各第6開閉弁90を全て閉じた状態で第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動させることにより、各第6開閉弁90より上流側のインクを蓄圧する。そして、インク圧が十分高まった時点(蓄圧終了時点)でクリーニング対象の記録ヘッド43に対応するM個の第6開閉弁90を選択的に開弁させることでノズルクリーニングは実現される。このように、インク循環管55上に設けた第5開閉弁56と、サブタンク25から各記録ヘッド43へ第3インク供給管47を通じてインクを送り出す第4ポンプ50と、接続管48上の第6開閉弁90とによっても、ノズルクリーニングを実施できる。この場合、第3インク供給管47に蓄えられていた加熱インクが記録ヘッド43に供給されてインクを排出するクリーニングが行われるが、クリーニング終了後には記録ヘッド43内は加熱インクで充填されているので、次の印刷は加熱インクが噴射されて良好に行われる。これに対し、前記実施形態のように、インク循環管55を経由して加圧インクを供給方向とは反対向きに逆流させた場合は、インク循環管55内の冷めたインクが記録ヘッド43内に流入し、その後、記録ヘッド43内のインクが加熱されるまでしばらく印刷を開始することができない。これに対し、この第2クリーニングではインクの流れが供給方向なので、ノズルクリーニング終了後において記録ヘッド43内は加熱インクで充填されているので、温度が安定するまでの比較的短い時間を待つ程度で印刷を開始することができる。
【0169】
・図12におけるN個の第6開閉弁90を開閉選択することで、第1クリーニングを行ってもよい。すなわち、N個の第6開閉弁90のうちクリーニング対象として選択したM個の第6開閉弁90を開弁状態とした後、第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動し、クリーニング対象のM個の記録ヘッド43を経由する循環経路でインクを循環させる。もちろん、図12に示すようにインク循環管55にも第5開閉弁56がある場合は、少なくともクリーニング対象の記録ヘッド43に対応するM個の第5開閉弁56を開弁状態にすることは言うまでもない。このような第1クリーニングを行う場合、閉じた第6開閉弁90により遮断された非クリーニング対象の記録ヘッド43のインク圧Phnclは考慮する必要がないので、サブタンク圧Psubの負圧値PDとしてPhclを設定すればよい。さらに、供給ポンプである第4ポンプ50の配置位置を還流方向へ液体の送り出しが可能な状態でインク循環管55側に移し、第3インク供給管47(供給路)を通る経路をインクを流して第2クリーニングを行う構成も採用できる。この場合、N個の第6開閉弁90を閉じた状態で第3ポンプ39(加圧手段)を駆動してサブタンク25を加圧することで蓄圧状態とし、蓄圧(加圧)完了後、M個の第6開閉弁90を開き、第3インク供給管47(供給路)を通ってインクをM個の記録ヘッド43に送り込むことで第2クリーニングを行う。なお、第1クリーニングと第2クリーニングを共に第6開閉弁90の開閉選択により行う場合は、インク循環管55上の第5開閉弁56を廃止してもよい。
【0170】
・実施形態において、タンクとしてのサブタンク25は、各記録ヘッド43に個別対応する複数備えた構成であってもよい。この場合、インク循環管55の下流端は各サブタンク25にそれぞれ挿入又は接続する。
【0171】
・実施形態において、メインタンクとサブタンクのうち一方のみを採用することで、タンクを1つだけとし、その1つのタンクと記録ヘッド43との間でインクを供給及び循環させる構成としてもよい。また、インクカートリッジをそのままタンクとして使用する構成でもよい。この場合、インクカートリッジをホルダー部に装着すると、インクカートリッジが供給路の上流端及び循環路の下流端と接続されると共に、第2ポンプ36、第3ポンプ39及び圧力開放弁40と繋がる流路の一端部とも接続されるようにすればよい。また、インクカートリッジはケース内にインクが直接貯留されていてもよいし、ケース内にインクパックを収容する構成でもよい。
【0172】
・実施形態において、各インク循環管55の途中に可変絞り弁を1つずつ設け、可変絞り弁の絞り量を調整することにより、各インク循環管55の流路抵抗R3を一斉に又は個別に調整してもよい。例えばデューティー値Dに応じて可変絞り弁の絞り量を調整する制御を行い、記録ヘッド43内のインク圧を適切な値に調整する構成を採用してもよい。
【0173】
・実施形態において、サブタンク25を減圧するときの負圧値を次の方法で取得してもよい。印刷データ(液体噴射処理データ)を解析して単位時間当たりの印刷ドット数を求め、その求めた印刷ドット数の値からインク噴射流量(cc/分)を予測し、その予測したインク噴射流量に応じた負圧値をテーブルデータを参照するなどして取得する。例えば印刷データに基づきその印刷を終えるまでの過程(つまり印刷期間中)における最大インク噴射流量Qhm(cc/分)を求め、この最大インク噴射流量Qhmに一定値Qoを加算してインク供給流量Qin(=Qhm+Qo)を求めてもよい。例えば一定値Qoは、必要なインク循環流量Qout、又はインク循環流量Qout+マージン流量の値とする。この場合、印刷の開始から終了までの間、一定値Qo以上のインクが常に循環路を流れることになる。
【0174】
・さらに、印刷データ(液体噴射処理データ)を解析し、印刷中において現在より10ミリ秒〜10秒の範囲内の所定時間経過後における噴射流量を解析結果に基づき逐次演算して予測し、その時々の噴射流量に応じた負圧値になるようサブタンク25をリアルタイムで減圧制御する構成も採用できる。なお、前記所定時間は、サブタンク25内を負圧値(目標負圧値)にする圧力制御を開始してから実際にサブタンク25内がその負圧値になるまでの所要時間と、このサブタンク25内が目標負圧値になってからノズル内のインクメニスカスの液圧が所望圧になるまでの所要時間との和で表される応答時間に相当する。
【0175】
・実施形態において、インク供給流量Qinを可変としてもよい。例えば、印刷モード(噴射モード)に応じてQhmaxが可変である場合は、Qin>Qhmaxの関係を満たす範囲でQinを可変とする。また、印刷データ(液体噴射処理データ)を解析してインク噴射流量Qhを予測できる場合は、その予測したインク噴射流量Qhに応じてQin>Qhmaxの関係を満たすように、Qinを可変とする構成としてもよい。また、インク循環流量Qoutがなるべく一定となるように、Qin=Qh+Qoutcnst(但し、Qoutcnstは一定値)を満たすインク供給流量Qinでインクを供給する構成も採用できる。この構成によれば、各記録ヘッド43間でインク噴射流量Qhが異なっても、常にインク循環流量Qoutを一定(=Qoutcnst)にできるので、記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきをほぼ解消できる。
【0176】
・実施形態において、流路抵抗の関係を、R3<R1<R2としてもよい。この場合、第3インク供給管47の流路抵抗Rは、接続管48の流路抵抗R2でおおよそ決まるので、R>R3の関係が成り立つことには変わりない。このように各流路抵抗の中でインク循環管55の流路抵抗R3を一番小さくすることで、記録ヘッド43内のインク圧の変動を一層小さくして、記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを一層小さくすることができる。この結果、記録ヘッド43間でのインク滴のサイズ(又は重量)のばらつきを小さくすることができる。
【0177】
・実施形態において、第3インク供給管47を記録ヘッド43毎に1本ずつ設けてもよい。この構成でも、第3インク供給管47の流路抵抗Rとインク循環管55の流路抵抗R3との関係が、R>R3を満たせば、同様の効果を得ることができる。
【0178】
・循環路をもたないプリンターに加熱システムを適用することもできる。この場合、循環系がなく供給系だけとなるが、サブタンク25、第3インク供給管47(供給路)、記録ヘッド43の加熱はできる。
【0179】
・管部47c(管路)は、サブタンク25の底面と略平行に延びるように挿入されていればよい。例えば管路は、サブタンク用ヒーター33の上側をサブタンク25の底面(又は液面)と略平行な状態で延びるように挿入されていてもよい。さらには、管路は、サブタンク25の底面(又は液面)と略平行な方向と交差する方向に延びるように挿入されていてもよい。
【0180】
・加熱ブロックは、板状に限定されず、直方体状、立方体状、円柱状、錘状であってもよく、さらに表面と裏面のうち少なくとも一面に、接続管が内部を通っている部分(接続管の配管経路)に沿って延びる凸条を有する板状ブロックでもよい。また、加熱ブロックにより接続管が被覆されていれば足り、加熱ブロックは、接続管を2つの部材(ブロックとプレート)で挟み込む構造に限定されず、例えば加熱ブロックに形成した貫通孔に接続管を貫通させた構造でもよい。
【0181】
・タンクは液体噴射ヘッドに対して重量方向で下側又は同一高さに配置されてもよい。この場合、液体噴射ヘッド内に必要なインク圧を確保するため、印刷動作(液体噴射動作)中に、タンクを減圧するのではなく、加圧手段により加圧する構成としてもよい。
【0182】
・加熱手段は、タンクと供給路のうち一方に設けただけの構成でもよい。また、液体噴射ヘッドに加熱手段(保温手段)が設けられていなくてもよい。この場合、液体噴射ヘッドの保温性を高めることを目的とし、液体噴射ヘッド内の室や流路を保温性の高い材料で覆うことが望ましい。
【0183】
・本発明を適用するインクジェット式プリンターは、ラインプリンター、シリアルプリンター、ページプリンターのどれであってもよい。
・前記実施形態において、循環路は、特許文献1のように1本の循環復路と複数本の排出路とを備えた構成としてもよい。
【0184】
・前記実施形態において、特許文献1のようにメインタンク(インクタンク)から各液体噴射ヘッドに供給路を通じて液体を供給する構成としてもよい。
・前記実施形態において、遮断手段は、第4開閉弁51のような開閉弁に限定されず、例えば第4ポンプ50であってもよい。例えば第4ポンプ50がギヤポンプのような液体の流れを遮断できるものであれば、第4ポンプ50を遮断手段とすることもできる。この場合、第4開閉弁51は廃止してもよい。
【0185】
・液体の一例であるインクを供給/供給停止する手段(液体供給手段)は、液頭差を利用して供給する方式の場合は、供給路の途中に設けられた開閉弁であってもよい。すなわち、開閉弁を開弁すると液頭差を利用してタンクから液体が液体噴射ヘッドに供給され、開閉弁を閉弁するとタンクから液体噴射ヘッドへの液体の供給が停止される構成である。
【0186】
・記録ヘッド43は、圧電式記録ヘッド、静電式記録ヘッド、サーマル式記録ヘッドでもよい。
・デューティー値Dに応じてサブタンク25の負圧値を可変としたが、負圧値は一定でもよい。
【0187】
・実施形態において、記録ヘッド43を色毎に(1色につき)1個とし、接続管48及び循環管55を色毎に1本ずつとした構成でもよい。さらに複数色分のノズルを有する1個の記録ヘッドに対して色数分の接続管48及び循環管55が接続された構成でもよい。
【0188】
・実施形態において、インク循環管55を無くし、液体をサブタンク25と記録ヘッド43間で循環させない構成も採用できる。この場合、共通管47bの流路抵抗R1と接続管48の流路抵抗R2とを、R1<R2の関係を満たせば(特に5・R1<R2を満たすことが好ましい)、記録ヘッド43間のインク圧のばらつきを小さく抑制できるうえ、第4ポンプ50からのインクの脈動が記録ヘッド43に伝播することを防止できる。
【0189】
・液体としてのインクは、UVインクに限定されず、例えば熱硬化型インクでもよいし、水系又は油系の顔料インクや染料インクでもよい。
・ターゲットは、樹脂フィルムに限定されず、用紙、布、金属フィルムでもよい。
【0190】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【0191】
上記実施形態及び変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記液体噴射ヘッドの液体噴射動作中は、前記タンクから前記供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を前記循環路を通じて前記タンクへ還流させることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【0192】
この発明によれば、液体噴射ヘッドの液体噴射動作中は、タンクから供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を循環路を通じてタンクへ還流させるので、第2加熱手段が供給路の全域を加熱する訳ではなく、一部を加熱するだけの構成であっても、供給路内の液体にその長手方向の位置の違いによる温度分布が発生することを回避できる。よって、第2加熱手段が供給路の一部を加熱するだけの構成であっても、温度の安定した液体を供給路から液体噴射ヘッドへ供給することができる。
【0193】
(ロ)前記管路は、前記タンク用ヒーターの下側又は上側を通る経路で前記タンクの底面と略平行に延びる状態で挿入されていることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【0194】
この発明によれば、管路は、タンク用ヒーターの下側又は上側を通る経路でタンクの底面と略平行に延びるように挿入されているので、管路を流れるときにも液体はタンク用ヒーターの熱により加熱される。よって、液体流入路から流入したばかり加熱前の液体が供給路へ送られることを回避しつつ、温度ばらつきの比較的小さな適度な温度に加熱された液体をタンクから供給路へ供給することができる。
【0195】
(ハ)前記ヘッド本体は樹脂ベースで形成されており、前記ヘッド部の前記ノズル形成面を含む部分は前記ヘッド本体のベース樹脂よりも熱伝導率の高い材料で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
【0196】
この発明によれば、ヘッド部のノズル形成面を含む部分はヘッド本体のベース樹脂よりも熱伝導率の高い材料で形成されているので、ヘッド用ヒーターの熱を熱伝導部材を介してヘッド部のノズル形成面の周縁部及び側壁に伝達することで、ヘッド部内のインクを安定な温度に加熱できる。
【0197】
(ニ)前記循環路は、前記N個の液体噴射ヘッドにそれぞれ連通するN本設けられており、前記供給路の流路抵抗Rと前記循環路の流路抵抗R3との関係が、R>R3に設定されていることを特徴とする請求項3乃至8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【0198】
この発明によれば、クリーニング時の流れ方向において液体噴射ヘッドに対して上流側の供給路の流路抵抗Rと下流側の循環路の流路抵抗R3とが、R>R3の関係にあるので、閉とされた開閉弁と対応する液体噴射ヘッド内の液圧についてもなるべく低く抑えることができる。このため、クリーニング対象以外の液体噴射ヘッドから液体が排出されることを回避できるか、又は液体が排出されるにしてもその排出量を少なく抑えることができる。
【符号の説明】
【0199】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、13…インクカートリッジ、14…ホルダー部、15…メインタンク、18…第1インク供給管、21…攪拌装置、25…タンクとしてのサブタンク、25d…インク流入口(液体流入部)、26…第1液体供給部、27…第2インク供給管、28…第1駆動モーター、29…第1ポンプ、30…第1開閉弁、31…サブ側残量センサー、32…第1温度検出手段としての第1温度センサー、33…サブタンク用ヒーター、34…加減圧装置、35…加圧手段を構成する第2駆動モーター、36…液体送出手段及び加圧手段を構成する第2ポンプ(加圧ポンプ)、37…第2開閉弁、38…減圧手段を構成する第3駆動モーター、39…減圧手段を構成する第3ポンプ(減圧ポンプ)、40…減圧手段を構成する圧力開放弁、41…第3開閉弁、42…インク噴射ユニット、43…液体噴射ヘッド(液体噴射手段)としての記録ヘッド、44…第3温度検出手段としての第2温度センサー、45…ヘッド用ヒーター、46…第2液体供給部、47…供給路としての第3インク供給管、47b…共通路としての共通管、47c…管部(管路)、48…接続路としての接続管、49…第4駆動モーター、50…液体送出手段を構成するとともに供給ポンプとしての第4ポンプ、51…遮断手段としての第4開閉弁、52…ダンパー、53…第2温度検出手段としての第3温度センサー、54…供給路用ヒーター、55…循環路としてのインク循環管、56…開閉弁としての第5開閉弁、57…搬送手段を構成する搬送モーター、58…圧力センサー、60…制御装置、61…コンピューター、62…ヘッド駆動制御部、63…モーター駆動制御部、64…弁駆動制御部、65…ヒーター駆動制御部、67…CPU、68…ROM、69…RAM、71…第1加熱装置(第1加熱手段)、72…第2加熱装置(第2加熱手段)、73…保温装置(保温手段)、74…熱伝導体、75…熱伝導ブロック、76…熱伝導プレート、80…ヘッド本体、81…ヘッド部、82…インク室、83…フィルター、84…ノズル、85…ヘッドカバー(熱伝導部材)、86…伝熱板(熱伝導部材)、90…第6開閉弁、S1…共通管の流路断面積、S2…接続管の流路断面積、S3…インク循環管の流路断面積、R…流路抵抗、R1…共通路の流路抵抗としての共通管の流路抵抗、R2…接続路の流路抵抗としての接続管の流路抵抗、R3…循環路の流路抵抗としてのインク循環管の流路抵抗、A1,A2…液面、Anozl…インクメニスカス表面高さ、H…液頭差、Qin…インク供給流量(液体供給流量)、Qh…インク噴射流量、Qhmax…最大インク噴射流量(最大液体噴射流量)、Qhm…最大インク噴射流量(最大液体噴射流量)、Qout…インク循環流量(還流流量)、D…デューティー値、Dfull…最大デューティー値、Ph…記録ヘッド内のインク圧力、PA…目標加圧値、PD…目標負圧値。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体噴射装置として、例えば特許文献1に記載のインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という。)が提案されている。この特許文献1に記載のプリンターは、記録用紙などのターゲットに液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッドとしての複数の記録ヘッドと、メインタンク(例えばインクカートリッジ)から供給されたインクを貯留するサブタンクと、サブタンクから記録ヘッドにインクを供給する供給路(ヘッド供給路)とを備えていた。サブタンクと、供給路(ヘッド供給路)と、記録ヘッドとのそれぞれに加熱手段(ヒーター)及び温度検知手段(温度センサー)を備え、サブタンク、供給路、記録ヘッドのそれぞれで順に加熱したUV(Ultra Violet)インク(紫外線硬化型インク)を記録ヘッドのノズルから噴射する構成となっていた。
【0003】
このプリンターにおいては、サブタンクでは、サブタンクヒーターがサブタンクの底壁下面に設けられ、サブタンク温度センサーがサブタンクの内底面に設けられていた。また、供給路では、供給路ヒーターが供給路の外壁に設けられ、供給路温度センサーが供給路内に設けられていた。さらに、記録ヘッドでは、ヘッドヒーター及びヘッド温度センサーが記録ヘッドの内部に設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127417号公報(例えば段落[0054]〜[0058]、図5、図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のプリンターでは、サブタンクに常温のインクが供給されたときは、その常温のインクの流入によってできる低温層(低温インク)が下方へ移動し、サブタンク温度センサーにより検知されてはじめてサブタンクヒーターの発熱が開始される。このとき、サブタンクヒーターが発熱しても、その熱がサブタンクの底壁を熱伝導して底壁からインクに熱が伝わり始めて、はじめてインクの加熱が開始される。このため、インク供給開始から実際にインクの加熱が開始されるまでに所定の時間を要し、さらにインクが目標温度に加熱されるまでにも所定の時間を要する。この間に、例えば印刷が行われると、サブタンクから供給路へ低温インクが流れてしまう虞がある。このような問題が起こる要因には、インク供給開始からサブタンク温度センサーが検知するまでの検知の遅れ、サブタンク温度センサーの検知時からインクの加熱が実際に開始されるまでの加熱の応答遅れ、タンク内の全インク平均温度(温度分布を平均化した平均温度)の昇温速度が遅いことなどがある。
【0006】
そして、上記の検知の遅れ、加熱の応答遅れ、遅い昇温速度が原因となって、サブタンクから供給路へ供給されるインクに比較的大きな温度のばらつきが発生する。サブタンクから供給されるインクにこの種の温度のばらつきがあると、供給路や記録ヘッドでインクの温度を目標温度に安定させることが困難となる。上記の原因のうち、特に、加熱の応答遅れ、及び遅い昇温速度を改善できる加熱方法を採用できれば、この種の温度のばらつきをかなりの部分で解決できる。
【0007】
また、特許文献1に記載のプリンターでは、供給路ヒーターは供給路の外壁に設けられていたので、供給路内のインクは供給路ヒーターが設けられた側の部分で強く加熱され、その反対側の部分で加熱され難い。このため、供給路内のインクにおいても温度分布が発生し易かった。例えば供給路に使用される管がたとえ金属などの熱伝導率の高い材料であっても、供給路の外気に接している部分では放熱が起き、供給路のヒーター接触部側とヒーター非接触部側とで温度差が生じ、これが供給路内のインクの温度分布となって現れる。このため、サブタンクから供給されたインクの温度のばらつきを供給路において小さく抑えつつインクを加熱することは困難であった。
【0008】
さらに、記録ヘッドには、サブタンク及び供給路で安定な温度に加熱されたインクを記録ヘッド内で保温できることが要求される。しかし、特許文献1に記載のプリンターでは、上述のように、サブタンクから供給路へ送られるインクの温度のばらつきが大きく、供給路ではその温度ばらつきを小さくする効果が小さかったので、記録ヘッドへ温度ばらつきの比較的大きなインクが供給されることになっていた。このため、記録ヘッドがインクを保温する機能を有していても、保温機能によっては温度のばらつきまでを小さくすることは困難であった。特に印刷中で記録ヘッド内をインクが流れているときは、インクがヘッドヒーターの熱を受ける時間が短いので、温度のばらつきのあるままインクが噴射され、これが噴射不良の原因となるという問題があった。なお、特許文献1のプリンターのように、ヘッドヒーター及びヘッド温度センサーを記録ヘッド内に設けることは、記録ヘッドの構造が複雑になる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに加熱された液体を安定な温度で供給できると共に、液体噴射ヘッド内の液体を安定な温度に保温し、良好な噴射性能を確保できる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置において、液体を貯留するタンクと液体噴射ヘッドとを連通する供給路と前記タンクに設けられると共に第1温度検出手段と該第1温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるタンク用ヒーターとを有する第1加熱手段と、前記供給路に設けられると共に第2温度検出手段と該第2温度検出手段の検出結果に基づき温度制御される供給路用ヒーターとを有する第2加熱手段と、前記液体噴射ヘッドに設けられると共に第3温度検出手段と該第3温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるヘッド用ヒーターとを有する第3加熱手段と、を備え、前記第1加熱手段は、前記タンク用ヒーターを前記タンクに貯留された液体中に浸漬する状態に配置し、前記第2加熱手段は、前記供給路の被加熱部分を被覆すると共に前記供給路用ヒーターから伝導される熱で加熱される金属製の加熱ブロックを含み、前記第3加熱手段は、前記液体噴射ヘッドの外壁部に設けられていることを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、タンク内の液体と供給路内の液体と液体噴射ヘッド内の液体とがそれぞれタンク用、供給路用及びヘッド用の各ヒーターにより加熱されることにより、タンクから液体噴射ヘッドで噴射されるまでの液体供給過程において液体が順に加熱される。また、タンク用、供給路用及びヘッド用の各ヒーターは、第1〜第3温度検出手段の検出結果に基づきそれぞれ温度制御される。このとき、タンク用ヒーターはタンクに貯留された液中に浸漬されているので、タンク用ヒーターの熱は直に液体に伝わり、液体を加熱する応答性がよく、かつタンク内の液体の昇温速度を高めて速やかに液体を目標温度に加熱できる。タンクで加熱された液体は供給路に送られる。供給路においては、供給路の被加熱部分を被覆する金属製の加熱ブロックが供給路用ヒーターから伝導される熱によって加熱される。このとき、加熱ブロックは金属なので、他の材料(無機材料や樹脂材料)に比べ熱伝導率が極めて高く、温度分布もさほどない略均一な温度に加熱される。そして、供給路の被加熱部分は加熱ブロックに被覆されているので、略均一な温度に加熱された加熱ブロックによってその周囲から均等に加熱される。このため、タンクから送られてきたときに多少の温度のばらつきがあっても、供給路内の液体は緩やかに加熱されることで、その温度のばらつきを小さく抑制するように加熱される。さらに、供給路から液体噴射ヘッド内に供給された液体は、液体噴射ヘッドの外壁部に設けられた第3加熱手段から熱をもらうことで、液体噴射ヘッド内の適切な加熱温度に保温される。よって、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに加熱された液体を安定な温度で供給できると共に、液体噴射ヘッド内の液体を安定な温度に保温でき、液体噴射ヘッドの良好な噴射性能を確保できる。
【0012】
本発明の液体噴射装置では、前記第1温度検出手段は、前記タンク内の液体に浸漬される位置に設けられて液体の温度を検出し、前記第2温度検出手段は、前記加熱ブロックに設けられて該加熱ブロックの温度を検出し、前記第3温度検出手段は、前記ヘッド用ヒーターに設けられて該ヘッド用ヒーターの温度を検出することが好ましい。
【0013】
この発明によれば、第1温度検出手段は、タンク内の液体に浸漬され、液体の温度を直接検出するので、液体の温度変化に応じてタンク用ヒーターを制御できる。このため、液体の温度変化による応答性がよくなり、液体の温度変化に速やかに反応し速やかに液体温度を目標温度に近づけるタンク用ヒーターの温度制御が可能になる。よって、目標温度から大きく離れた温度の液体がタンクから供給路へ供給され難くなり、温度ばらつきの比較的小さい概ね目標温度の液体を供給路へ供給することができる。また、第2温度検出手段は加熱ブロックに設けられ、加熱ブロックの温度を検出するので、加熱ブロックの温度変化による応答性がよくなり、加熱ブロックの温度変化に速やかに反応し加熱ブロックを速やかに目標温度に近づける供給路用ヒーターの温度制御が可能になる。このため、加熱ブロックの温度はほぼ目標温度に安定に保たれる。そして、目標温度に保たれた加熱ブロックによってその被覆された供給路の被加熱部分が加熱されることにより、タンクから供給された液体をその温度ばらつきを小さく抑えつつ加熱することができる。よって、供給路から液体噴射ヘッドへ温度の安定した液体(加熱液体)を供給できる。さらに、第3温度検出手段がヘッド用ヒーターに設けられ、ヘッド用ヒーターの温度を検出する。このため、ヘッド用ヒーターの温度変化による応答性がよくなり、ヘッド用ヒーターの温度変化に速やかに反応しヘッド用ヒーターを速やかに目標温度に近づけるヘッド用ヒーターの温度制御が可能になる。よって、ヘッド用ヒーターの温度が目標温度に安定に保たれ、液体噴射ヘッド内に安定な温度で供給された液体をその安定な温度のまま保温できる。
【0014】
また、本発明の液体噴射装置では、前記タンクから前記供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を前記タンクへ還流させる循環路を備えていることが好ましい。
この発明によれば、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに供給された液体が、液体噴射ヘッドから循環路を通じてタンクに還流されることで、タンク内の液体の温度の平均化が進み、タンクで概ね適度な温度に加熱した液体の温度のばらつきを一層小さく抑えることができる。よって、温度のばらつきを一層小さく抑えたさらに安定な温度の液体を液体噴射ヘッドに供給できる。また、タンクから供給路を通じて液体噴射ヘッドに供給された液体を循環路を通じてタンクへ還流させることで、第2加熱手段が供給路の全域を加熱する訳ではなく、一部を加熱するだけの構成であっても、供給路内の液体にその長手方向の位置の違いによる温度分布が発生することを回避できる。よって、第2加熱手段が供給路の一部を加熱するだけの構成であっても、温度の安定した液体を供給路から液体噴射ヘッドへ供給することができる。
【0015】
本発明の液体噴射装置では、前記タンクには液量の減少が検出されたときに補充される液体が流入する液体流入部が設けられ、前記タンク内には、前記供給路と連通する管路が、前記タンク内を半分以上横断する長さで挿入されており、前記管路の液体流入口は、前記液体流入部と前記タンク用ヒーターの中心とを結ぶ仮想線と直交しかつ前記中心を通る仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、液体流入部から流入した加熱前(例えば常温)の液体は、タンクの反対側へ流れる過程で、タンク用ヒーターの近くを通ったり液体内に発生する液流によって攪拌されたりしながらタンク内の液体の平均温度近くの温度に加熱される。そして、その平均温度近くの温度に加熱された液体が、管路の流入口から流入して供給路へ送られる。また、管路がタンク内を半分以上横断する長さで挿入されていることから、管路を流れるときにも液体はタンク用ヒーターの熱で加熱されたり、あるいはタンク中における管路周りの液体との熱交換により温度のばらつきが緩和されたりする。このため、液体流入部から流入したばかりの加熱前の液体が供給路へ送られることを回避しつつ、温度ばらつきの比較的小さな適度な温度に加熱された液体をタンクから供給路へ供給することができる。
【0017】
また、本発明の液体噴射装置では、前記第1温度検出手段は、前記仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置で液体の温度を検出することが好ましい。
この発明によれば、第1温度検出手段は、タンク用ヒーターの中心と液体流入部とを結ぶ仮想線と直交しかつ前記中心を通る仮想面に対して液体流入部と反対側となる、液体流入部から離れた位置で液体の温度を検出する。このため、液体流入部から流入したばかりの加熱前(例えば常温)の局所的に低温な液体の温度を検出し、タンク用ヒーターが急発熱して、タンク内の液体全体の平均温度が上昇し過ぎることを回避できる。このため、液体の温度が高くなり過ぎることを回避しつつ適度な温度に加熱した液体をタンクから供給路へ供給できる。
【0018】
本発明の液体噴射装置では、前記液体噴射ヘッドは複数備えられ、前記供給路は、前記各液体噴射ヘッドに並列に接続された複数本の接続路を有すると共に、前記複数本の接続路において共通の前記加熱ブロックに被覆されており、前記複数本の接続路において前記加熱ブロックに被覆された部分は、互いに略平行な状態を保ちつつ蛇行経路を描くように延びていることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、共通路は、複数の液体噴射ヘッドに並列に接続された複数本の接続路の部分において共通の加熱ブロックに被覆されており、その被覆された部分は、互いに略平行な状態を保ちつつ蛇行経路を描くように延びている。例えば各液体噴射ヘッド間で液体噴射流量(噴射によって排出される液体の流量)が異なった場合、流量の多い接続路では熱を奪うため加熱ブロックはその接続路周辺の部分で温度が低下し易く、流量の少ない接続路では熱をさほど奪わないため加熱ブロックはその接続路周辺の部分で温度が低下し難い。このように各接続路間の流量の違いに基づき加熱ブロックには低温領域や高温領域などの温度分布が発生するが、互いに略平行な状態で蛇行経路を描くように延びている複数本の接続路はその低温領域や高温領域をおおよそ共通に通るので、各接続路間で液体の温度のばらつきが発生し難い。また、蛇行経路を描くことで接続路を長く確保して、加熱ブロックと接続路、及び接続路と液体との間の接触面(熱伝達面)を広く確保できるので、加熱ブロックの熱が接続路内の液体に効率よく伝達される。この結果、液体噴射ヘッド内の液体温度が液体噴射ヘッド間でばらつくことを小さく抑えることができる。
【0020】
なお、共通の前記加熱ブロックとは、1つの加熱ブロックに限らず、複数のブロックが熱伝導の観点から一体であるかのように互いに接触して1つのブロックを形成する構成でもよい。
【0021】
さらに、本発明の液体噴射装置では、前記液体噴射ヘッドは、ノズルが形成されるノズル形成面を有すると共に少なくとも前記ノズル形成面を含む部分が樹脂より熱伝導率の高い材料で形成されたヘッド部を有し、前記第3加熱手段は、前記ヘッド用ヒーターの熱を伝導する熱伝導部材を有し、前記熱伝導部材は、前記液体噴射ヘッドの前記ヘッド部に対して前記ノズル形成面の周縁部から側壁に渡って設けられていることが好ましい。
【0022】
この発明によれば、ヘッド用ヒーターの熱が熱伝導部材を介してノズル形成面の周縁部及びヘッド側壁に伝わることで、液体噴射ヘッドにおいてノズル形成面を含むヘッド部を加熱できる。よって、ノズル内の液体やノズルの直ぐ上流側付近の流路や室内の液体を適度な加熱温度に保温できる。ここで、ノズルから噴射される液体の噴射特性は、ノズル内の液体やノズルの直ぐ上流の流路や室内の液体の温度に依存し、ヘッド用ヒーターの熱をノズル形成面に伝えることで、噴射特性に影響を与える部分の液体を保温できる。この結果、ノズルからの液体の噴射を良好に行うことができる。
【0023】
本発明の液体噴射装置では、前記第1加熱手段では、前記第1温度検出手段の検出結果に基づき前記タンク内の液体の温度が目標値になるように前記タンク用ヒーターが温度制御され、前記第2加熱手段では、前記加熱ブロックの表面温度が目標値になるように前記供給路用ヒーターが温度制御され、前記第3加熱手段では、前記第3温度検出手段の検出結果に基づき前記ヘッド用ヒーターの表面温度が保温用の目標値になるように当該ヘッド用ヒーターが温度制御されることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、タンク内の液体の温度変化に応答よくタンク内の液体を加熱できるので、タンク内の液体を温度のばらつきが小さな加熱温度に加熱できる。また、目標温度に略均一に加熱された加熱ブロックで供給路を加熱することで、温度のばらつきをほぼ無くした安定な温度に供給路内の液体を加熱できる。さらに安定な温度に加熱された液体を液体噴射ヘッド内で保温できる。
【0025】
また、本発明の液体噴射装置では、前記液体噴射ヘッドはN(但し、N≧2)個設けられ、前記循環路に前記液体噴射ヘッド毎に設けられた複数の開閉弁と、前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプとを更に備え、前記N個の液体噴射ヘッドのうち少なくとも1つに対してクリーニングを行う場合には、クリーニング対象のM個(但し、M<N)の液体噴射ヘッドと対応するM個の開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記M個の液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させることが好ましい。
【0026】
この発明によれば、クリーニング対象のM(<N)個の液体噴射ヘッドと対応する開閉弁を開にした状態で、供給ポンプを駆動することにより、供給路から開状態の開閉弁と対応する液体噴射ヘッド内を経由して循環路へ還流される循環経路で液体が流れる。このとき、N個全ての液体噴射ヘッドではなくクリーニング対象のM個の液体噴射ヘッドに絞って液体が集中して流れるため、ヘッド1個当たりの流量が多くなって液体噴射ヘッドを流れる液体の流速が高くなる。その結果、液体の高い流速によって液体噴射ヘッド内の気泡等が除去され易くなるので、高いクリーニング効果を得ることができる。
【0027】
本発明の液体噴射装置では、前記循環路に設けられた開閉弁と、前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプと、前記タンクを減圧する減圧手段とを更に備え、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させると共に、前記減圧手段を駆動して前記タンクを減圧させることが好ましい。
【0028】
この発明によれば、循環路上の開閉弁を開にした状態で、供給ポンプが駆動されると、供給路から液体噴射ヘッド内を経由して循環路へ還流されるように液体が循環する。このとき液体噴射ヘッド内を液体が流れることによって、液体噴射ヘッド内の気泡がその液体の流れと共に除去される。また、このとき減圧手段によってタンク内が減圧されて、その減圧に応じた分だけ液体噴射ヘッド内の液圧が低下するため、クリーニング時に液体噴射ヘッドから液体が漏れることを防止又は少なく抑えることができる。
【0029】
さらに本発明の液体噴射装置では、前記タンクを加圧する加圧手段と、前記循環路に前記液体噴射ヘッドに対応して設けられた開閉弁と、前記タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体が流れることを一時的に遮断可能に前記供給路に設けられた遮断手段とを更に備え、前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記供給路を遮断した状態かつ前記循環路上の開閉弁を閉じた状態で、前記加圧手段を駆動して前記タンク内を加圧状態とした後、前記開閉弁を開くことで前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を排出することが好ましい。
【0030】
この発明によれば、供給路を遮断した状態かつ循環路上の開閉弁を閉じた状態で、加圧手段を駆動してタンクを加圧状態(蓄圧状態)とした後、開閉弁を開く。この結果、液体噴射ヘッドのノズルから液体が勢いよく排出される。よって、液体噴射ヘッドのノズル目詰まりを予防又は解消することができ、高いクリーニング効果が得られる。このとき、クリーニング時の液体は循環路を通ってノズルから排出されるので、加熱手段によって加熱された液体供給系の加熱液体がクリーニングによって無駄に排出されてしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態におけるプリンターの模式図。
【図2】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図3】サブタンクと記録ヘッドとを含むインク供給系の模式側面図。
【図4】第1加熱装置の模式側断面図。
【図5】第2加熱装置の一部の部品を取り除いた模式平断面図。
【図6】第2加熱装置の図5におけるA−A線断面図。
【図7】第2加熱装置の図6と異なる方向で切った模式断面図。
【図8】保温装置が設けられた記録ヘッドの一部を破断した模式断面図。
【図9】インク供給制御ルーチンを示すフローチャート。
【図10】第1クリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【図11】第2クリーニング処理ルーチンを示すフローチャート。
【図12】変形例におけるプリンターの一部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。
図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と略記する。)は、液体の一例としてUV(Ultra Violet)インク(紫外線硬化型インク)を用い、図示しないターゲット(フィルムなど)に対して印刷処理を施す印刷部12を備えている。また、本実施形態のプリンター11には、印刷部12で印刷済みとなったターゲットに対して紫外線を照射し、ターゲットに着弾したUVインクを硬化させる図示しない照射部が設けられている。なお、UVインクは、分散安定性の低い顔料成分を含有すると共に、該顔料成分が沈降しやすいという性質を有している。
【0033】
印刷部12は、UVインクを貯留するインクカートリッジ13が装着されるホルダー部14と、重力方向においてホルダー部14の下方に配置される有底略円筒形状のメインタンク15とを備えている。ホルダー部14には、図1において二点鎖線で示す装着位置に配置されたインクカートリッジ13の導出部16に対して挿脱可能な中空状のインク供給針17が設けられている。また、ホルダー部14には、上流端18aがインク供給針17内と連通する第1インク供給管18が接続されており、該第1インク供給管18の下流端18bは、メインタンク15内に配置されている。このメインタンク15は、そのUVインクの収容許容量がインクカートリッジ13におけるUVインクの貯留量よりも十分に多くなるように構成されている。こうしたメインタンク15の側壁には、UVインクの液面A1の位置に基づき、メインタンク15内におけるUVインクの残量を検出するための複数(本実施形態では2つ)のメイン側残量センサー19,20が設けられており、各メイン側残量センサー19,20は、重力方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0034】
また、印刷部12には、メインタンク15内で収容されるUVインクを攪拌するための攪拌装置21が設けられている。この攪拌装置21は、駆動源となる攪拌用モーター22と、該攪拌用モーター22の駆動によって回転する軸部材23と、該軸部材23の先端(図1では下端)に設けられる複数枚の羽根部材24とを備えている。
【0035】
また、印刷部12には、UVインクの収容許容量がメインタンク15よりも少ないタンクとしてのサブタンク25と、メインタンク15からUVインクをサブタンク25内に供給するための第1液体供給部26とが設けられている。この第1液体供給部26は、上流端27aがメインタンク15内に配置されると共に下流端27bがサブタンク25に接続される第2インク供給管27と、第1駆動モーター28の駆動によってメインタンク15内のUVインクを吸入してサブタンク25側に吐出する第1ポンプ29とを備えている。また、第2インク供給管27において第1ポンプ29よりもサブタンク25側には、各タンク15,25間でのUVインクの流動を許容又は規制すべく作動する第1開閉弁(例えば電磁弁)30が設けられている。
【0036】
サブタンク25は、有底筒状をなすタンク本体と、該タンク本体の開口部を閉塞するカバー部とを有している。こうしたサブタンク25の側壁には、該サブタンク25内に一時的に収容されるUVインクの収容量を検出するためのサブ側残量センサー31が設けられている。このサブ側残量センサー31からは、サブタンク25内におけるUVインクの液面A2がサブ側残量センサー31の設置位置と同一位置又は設置位置よりも上方に位置する場合にON信号が出力される。また、サブタンク25には、該サブタンク内のUVインクの温度を検出するための第1温度センサー32と、UVインクを加熱するためのサブタンク用ヒーター33とが設けられている。また、サブタンク25には、このサブタンク25内を加減圧するための加減圧装置34が接続されている。
【0037】
この加減圧装置34は、第2駆動モーター35によってサブタンク25内に気体を圧送し、該サブタンク25内を加圧させるべく駆動する第2ポンプ36と、この第2ポンプ36が駆動する場合には開状態となると共に駆動しない場合には閉状態となる第2開閉弁(例えば電磁弁)37とを備えている。また、加減圧装置34には、第3駆動モーター38によってサブタンク25内から気体を排気し、サブタンク25内を減圧させるべく駆動する第3ポンプ39と、サブタンク25内を設定圧に昇圧されるまで大気開放するための圧力開放弁40とが設けられている。さらに、加減圧装置34には、第3ポンプ39及び圧力開放弁40の少なくとも一方が駆動する場合には開状態となると共に、第3ポンプ39及び圧力開放弁40が共に駆動しない場合には閉状態となる第3開閉弁(例えば電磁弁)41が設けられている。
【0038】
また、印刷部12には、ターゲットに向けてUVインクを噴射するインク噴射ユニット42が設けられ、このインク噴射ユニット42は、複数(本実施形態では4つ)の記録ヘッド(液体噴射ヘッド(液体噴射手段))43を有している。これら各記録ヘッド43は、それらの内部に供給されたUVインクを各ノズルから適宜噴射する。また、各記録ヘッド43には、それらの内部に供給されたUVインクの温度を検出するための第2温度センサー44と、各内部のUVインクを保温するためのヘッド用ヒーター45とがそれぞれ設けられている。
【0039】
こうした各記録ヘッド43には、第2液体供給部46を介してサブタンク25内のUVインクがそれぞれ供給される。第2液体供給部46は、上流端47aがサブタンク25の底部近傍に配置される第3インク供給管47(供給路)を備えている。この第3インク供給管47は、上流側の1本の共通管47b(共通路)と、この共通管47bから並列に分岐して各記録ヘッド43にそれぞれ接続されるように下流側に設けられ、記録ヘッド43毎に個別対応する複数(本実施形態では4つ)の接続管48(接続路)とを有している。また、第3インク供給管47には、第4駆動モーター49の駆動に基づきサブタンク25側からUVインクを吸入して各記録ヘッド43側に吐出する第4ポンプ50が設けられている。また、第3インク供給管47において第4ポンプ50よりも各記録ヘッド43側には、サブタンク25から各記録ヘッド43側へのUVインクの流動を許容又は規制すべく作動する第4開閉弁(例えば電磁弁)51と、第4ポンプ50によって供給されるUVインクの脈動を減衰させるためのダンパー52とが設けられている。なお、第1〜第4ポンプは、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプなどの往復動ポンプや、ギヤポンプ、ベーンポンプ、ねじポンプなどの回転ポンプを用いることができる。
【0040】
各接続管48は、それらの流路断面積S2が共通管47bの流路断面積S1よりも狭くなるようにそれぞれ構成されている。こうした各接続管48内を流動するUVインクは、第3温度センサー53からの検出信号に基づき制御される供給路用ヒーター54によって加熱される。
【0041】
また、各記録ヘッド43とサブタンク25との間には、各記録ヘッド43に個別対応する複数(本実施形態では4つ)のインク循環管55が設けられている。これら各インク循環管55は、それらの上流端55aが各記録ヘッド43に接続されると共に、それらの下流端55bがサブタンク25内に配置されるようにそれぞれ構成されている。インク循環管55は、それらの流路断面積S3が共通管47bの流路断面積S1よりも狭く、かつ各接続管48の流路断面積S2より広くなるように構成されている(S1>S3>S2)。こうした各インク循環管55には、各記録ヘッド43側からサブタンク25側へのUVインクの流動を許容又は規制すべく作動する第5開閉弁(例えば電磁弁)56がそれぞれ設けられている。
【0042】
また、印刷部12は、ターゲットを搬送するための図示しない搬送手段を備え、搬送手段により搬送されるターゲットに対して記録ヘッド43によりUVインクが噴射されることでターゲットに印刷が施される。搬送手段は、例えばローラー式搬送機構、ベルト搬送機構、回転ドラム式搬送機構など公知の搬送機構と、搬送モーター57(図2参照)とを備えている。この搬送手段は、搬送モーター57(図2参照)の動力により搬送機構が駆動されることによりターゲットを搬送する。
【0043】
このように構成されたプリンター11は次のように動作する。インクカートリッジ13はその導出部16内にインク供給針17が挿入されない待機位置に配置される。メインタンク15内のUVインクの液面A1が下降して上側の第1メイン側残量センサー19がオンからオフになると、後述する制御装置60からの制御指令に基づき着脱用モーターが駆動されてホルダー部14の上方に配置された不図示の押圧装置のプレス部材が、待機位置に配置されるインクカートリッジ13を付勢手段の付勢力に抗して下方に移動させる。この結果、インクカートリッジ13はインク供給針17が挿入される装着位置に配置されてホルダー部14に装着される。インクカートリッジ13内のUVインクは、インク供給針17及び第1インク供給管18を介してメインタンク15側に導出される。このとき、メインタンク15において攪拌装置21によりUVインクの攪拌が所定時間行われる。
【0044】
プリンター11の制御装置60は、記録ヘッド43におけるインク消費量を計測しており、その計測結果に基づきサブ側残量センサー31がオンになる液面A2の状態からサブタンク25内のUVインクが所定量消費されたと判断すると、第1ポンプ29を駆動し、メインタンク15からサブタンク25にUVインクを供給する。サブタンク25内のUVインクの液面A2が上昇してサブ側残量センサー31がオフからオンになると、制御装置60が第1ポンプ29の駆動を停止し、メインタンク15からサブタンク25へのUVインクの供給が停止される。
【0045】
印刷時には、加減圧装置34によりサブタンク25を減圧しつつ第4ポンプ50が駆動されることで、サブタンク25から第3インク供給管47を通って記録ヘッド43にUVインクが供給されると共に、記録ヘッド43からインク循環管55を通ってインクがサブタンク25に還流される。このサブタンク25と各記録ヘッド43との間で第3インク供給管47及びインク循環管55を通じて行われるインクの循環により、各記録ヘッド43にインクが供給される。各記録ヘッド43でノズルからインクを噴射するなどして消費された分のインクがサブタンク25において徐々に減少する。
【0046】
また、プリンター11においては、サブタンク25及び第3インク供給管47においてUVインクをサブタンク用ヒーター33及び供給路用ヒーター54により加熱すると共に、その加熱された状態で供給された記録ヘッド43内のUVインクをヘッド用ヒーター45で保温する温度制御が行われる。また、プリンター11において、記録ヘッド43内のインク中の気泡を除去することを目的とする第1クリーニングと、記録ヘッド43のノズルの目詰まりを予防・解消することを目的とする第2クリーニングとが行われる。
【0047】
なお、印刷部12は、複数色のUVインクをターゲットに対して噴射可能な構成であり、ホルダー部14、各タンク15,25及びインク噴射ユニット42を含む印刷ユニットを色毎に備えている。しかし、本実施形態では、一色(例えば白色)用の印刷ユニットのみを説明し、他の色用の印刷ユニットの説明に関しては、明細書の説明理解の便宜上、省略するものとする。また、以下の説明では、UVインクを単にインクと呼ぶ場合もある。
【0048】
次に、本実施形態の印刷部12の電気的構成について図2に基づき説明する。図2に示すように、プリンター11は、インク供給系及び印刷系を統括制御する制御装置60を備えている。制御装置60の入出力インターフェースには、インク供給系のセンサーとして、第1メイン側残量センサー19、第2メイン側残量センサー20、サブ側残量センサー31、及びサブタンク25内の空気圧を検出する圧力センサー58がそれぞれ電気的に接続されている。さらにその入出力インターフェースには、加熱制御用のセンサーとして、第1温度センサー32、4つの第2温度センサー44、及び第3温度センサー53がそれぞれ電気的に接続されている。
【0049】
また、制御装置60の入出力インターフェースには、印刷系の制御対象として4つの記録ヘッド43及び搬送モーター57がそれぞれ電気的に接続されている。さらにその入出力インターフェースには、インク供給系の制御対象として、ポンプ駆動用の第1駆動モーター28、第2駆動モーター35、第3駆動モーター38及び第4駆動モーター49と、流路開閉用の第1開閉弁30、第4開閉弁51及び4つの第5開閉弁56と、加減圧装置34を構成する第2開閉弁37、第3開閉弁41及び圧力開放弁40とがそれぞれ電気的に接続されている。
【0050】
さらに制御装置60の入出力インターフェースには、インク加熱用のサブタンク用ヒーター33、インク加熱用の供給路用ヒーター54及びインク保温用の4つのヘッド用ヒーター45がそれぞれ電気的に接続されている。
【0051】
また、制御装置60は、各センサー19,20,31,32,44,53,58から入力する検出結果などに基づいて各種の制御を司るコンピューター61(マイクロコンピューター)と、記録ヘッド43を駆動制御するヘッド駆動制御部62と、各モーター57、22,28,35,38,57を駆動制御するモーター駆動制御部63と、各開閉弁30,37,41,51,56及び圧力開放弁40を制御する弁駆動制御部64と、各ヒーター33,45,54を加熱制御するヒーター駆動制御部65とを備えている。
【0052】
制御装置60は、コンピューター61が各駆動制御部62〜65に制御内容(指令値)を指示することにより、記録動作、搬送動作、ポンプ動作、弁駆動動作、加熱動作などを制御する。ここで、コンピューター61は、CPU67、ROM68、RAM69を備えている。ROM68には、CPU67が各種制御を行うためのプログラムデータ及び各種制御で用いる設定値などを含む各種データが記憶されている。RAM69には、CPU67の演算結果などが一時記憶される。また、RAM69の一部の領域は、例えば不図示のホスト装置から入力される印刷データを展開等するためのバッファーとして使用される。なお、各駆動制御部62〜65は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及び各種駆動回路などから構築されている。また、CPU67は、印刷系(搬送系、噴射系)、インク供給系、加熱系のそれぞれを個別に制御する複数個設けられていてもよい。
【0053】
例えばコンピューター61は、ヘッド駆動制御部62に対してインク噴射量に応じたデューティー値Dを指示することにより、記録ヘッド43のノズルから噴射されるインク噴射量を制御するデューティー制御を行う。このときコンピューター61が指示するデューティー値Dは0〜100%の範囲で変化し、デューティー値(%)が大きくなるほどインク噴射量(=1噴射当たりのインク排出量)がそれに略比例して多くなる。全ての記録ヘッド43に対してデューティー値100%(FULLデューティー)を指示して全ノズルから毎噴射周期ごとにインク滴を噴射させる場合、記録ヘッド43のノズルから噴射により排出される単位時間当たりのインク排出量(インク噴射流量Qh)が最大となる。
【0054】
本実施形態のプリンター11では、記録ヘッド43内のインク中の気泡をインク循環流によって除去する第1クリーニングと、記録ヘッド43のノズル84(図8参照)からインクを強制的に排出してノズル目詰まりを予防及び解消する第2クリーニング(ノズルクリーニング)とが行われる。
【0055】
例えばインクカートリッジ13が空になって同じインク(例えば同色)のインクカートリッジ13に交換するカートリッジ交換時には、インクカートリッジ13がホルダー部14に装填されたときにインク供給針17を介してインク中に気泡が混入する場合がある。また、異なるインク(例えば異色)のインクカートリッジ13に交換するときには、タンク及び流路のインクを全て入れ換えると共に、入れ換えたインクを流路に充填させる初期充填という処理が行われる。また、例えばインク供給管18,27,47及びインク循環管55のうち樹脂製のチューブが使用されている部分では、樹脂製のチューブをガス透過して流路内のインクに溶け込んだ空気が、プリンター11が長期間使用されていないうちに、インク中で気泡に成長する場合がある。このようにカートリッジ交換時、初期充填時、プリンター長期間不使用時には、記録ヘッド43内のフィルター83(図8参照)より上流側エリアのコーナーなどに気泡が溜まったり、フィルター83に気泡が捕捉されていたりする場合がある。このため、主に記録ヘッド43内のインク中の気泡を除去することを目的として、インク循環流を利用した第1クリーニングが行われる。すなわち、図2に示すコンピューター61は、カートリッジ交換の検出時、初期充填の検出時、又は前回の第2クリーニング終了時点からの経過時間を計時する内蔵タイマーの計時時間Tが第1クリーニング時間T1に達したときに、第1クリーニングを実行する。
【0056】
また、記録ヘッド43のノズル目詰まりの予防及び解消のための第2クリーニングは、ユーザー操作によるクリーニング実行指示を受け付けたとき、又はクリーニング実施時期に達したときに行われる。すなわち、図2に示すコンピューター61は、ユーザー操作によるクリーニング実行指示を受け付けたとき、又は前回の第2クリーニング終了時点からの経過時間を計時する内蔵タイマーの計時時間Tが第2クリーニング時間T2に達したときに、第2クリーニングを実行する。
【0057】
この第2クリーニングは、第2ポンプ36(加圧ポンプ)を駆動してサブタンク25内の空気室25aを加圧することでサブタンク25内のインクを加圧し、サブタンク25からインク循環管55を通じて記録ヘッド43にインクを加圧供給し、記録ヘッド43のノズルからインクを強制的に排出させることにより行われる。このため、第2クリーニングは、インク循環管55の流路を閉じてサブタンク25を含むその上流側にインク圧を蓄圧する段階(加圧ステップ)と、インク圧が目標値まで蓄圧された時点でインク循環管55の流路を開いて加圧インクを一気に下流側へ押し流してノズル84からインクを強制的に排出する段階(開弁ステップ)との二段階で行われる。
【0058】
すなわち、第2クリーニングの蓄圧段階では、開閉弁30,41,51,56が閉弁されると共に開閉弁37が開弁された状態、かつ各ポンプ29,39,50が駆動停止の状態で、第2ポンプ36(加圧ポンプ)が駆動されてサブタンク25内のインクが加圧される。
【0059】
本実施形態では、全て(N個)の記録ヘッド43のうち第2クリーニングを行うべきM個(但し1≦M<N)の記録ヘッド43を選択し、その選択したM個の記録ヘッド43にだけクリーニングを施す選択クリーニングを採用している。プリンター11には、記録ヘッド43別にノズル目詰まりを検査可能なノズル検査装置(図示せず)が設けられ、このノズル検査装置によりクリーニングが必要との検査結果が得られた記録ヘッド43をクリーニング対象とする。
【0060】
例えば第2クリーニングには複数段階の強度が用意されている。ユーザー操作により第2クリーニングが繰り返し指示された場合はその実施回数が増えるに連れて強いクリーニングが選択され、また前回のクリーニング実施時点からの経過時間が長いほど強いクリーニングが選択される。蓄圧段階において、第2ポンプ36の駆動を開始した制御装置60は、圧力センサー58により空気室25aの圧力(空気圧)を検出し、その検出圧が選択されたクリーニング強度に応じた目標圧に達すると、蓄圧段階の終了と判断する。蓄圧段階の終了後、N個の開閉弁56のうちノズル検査結果に基づきクリーニング必要の旨と判定されたM個の記録ヘッド43にそれぞれ通じるインク循環管55上の開閉弁56だけが開弁されることで、そのM個の記録ヘッド43に限り第2クリーニングが実施される(開弁ステップ)。
【0061】
本実施形態では、第3インク供給管47とインク循環管55との流路抵抗が次のように設定されている。第3インク供給管47(供給路)の流路抵抗R(≒R2>R1)と、インク循環管55(循環路)の流路抵抗R3とを、R<R3の関係を満たすように設定されている。このため、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことが可能になっている。これは、印刷中において、各記録ヘッド43のノズルからのインク漏れを抑えつつ、各記録ヘッド43内のインク圧を許容範囲内に収めて適量のインク滴の噴射を可能にするためである。
【0062】
さらに、第3インク供給管47の共通管47bの流路抵抗R1と、接続管48の流路抵抗R2と、インク循環管55の流路抵抗R3とを、R1<R3<R2の関係を満たすように設定している。これは、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことを可能にするためである。
【0063】
ここで、流路抵抗R1,R2,R3のうち共通管47bの流路抵抗R1を一番小さくし、接続管48の流路抵抗R2を一番大きくすることにより、共通管47b上における各接続管48の入口におけるインク圧を略等しくすることが可能になり、各接続管48の流路抵抗R2が非常に大きいことから、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくすることが可能になる。また、インク循環管55の流路抵抗R3が大きいほど、記録ヘッド43内のインク圧が高くなる傾向にあるが、インク循環管55の流路抵抗R3を小さくしているので、記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことが可能である。このとき、各記録ヘッド43間でインク供給流量Qinが略等しく、インク噴射流量Qhが記録ヘッド43毎に異なることから、インク循環流量Qout(=Qin−Qh)は、記録ヘッド43間で異なることになる。しかし、インク循環管55の流路抵抗R3を小さくしているので、インク循環流量Qoutと流路抵抗R3との積で表されるインク循環管55の圧力損失P3loss(=Qout・R3)が小さな値となる。このため、記録ヘッド43間で圧力損失P3lossの値はほとんど同じとみなせるので、各記録ヘッド43内のインク圧を記録ヘッド43間で略等しくすることが可能になる。
【0064】
また、共通管47bの流路抵抗R1と、インク循環管55の流路抵抗R3とが、R1<R3の関係を満たすようにしているのは、インク循環管55の流路抵抗R3をなるべく小さくしたいという要請はあるものの、少なくとも印刷時には、記録ヘッド43でインクが噴射により消費され、インク循環流量Qoutはインク供給流量Qinに比べ少ないことから、その少ない分だけでもインク循環管55を小径にし、インク循環管55の小型化を図るためである。また、記録ヘッド43において、インク圧の変動を±50Pa以内に収めたいという要請がある。このため、インク循環流量Qoutが最大印刷時と非印刷時とで変化する範囲において、記録ヘッド43内のインク圧の変動を±50Pa以内に収めることができるように、インク循環管55の流路抵抗R3を決めている。
【0065】
さらに、どの印刷モードにおいてもインク圧の変動を±50Pa以内に収めたいという要請から、接続管48の流路抵抗R2が、インク循環管55の流路抵抗R3の5倍以上(R2≧5・R3)になる関係を満たすように設定している。このため、どの印刷モードで印刷したときでも、記録ヘッド43内のインク圧の変動が±50Pa以内に収まり、記録ヘッド43のノズルからのインク噴射量を安定にすることが可能になっている。
【0066】
図3は、サブタンクと記録ヘッドとを含むインク供給系を示す模式図である。図3に示すように、サブタンク25は記録ヘッド43の重力方向上方に配置されている。本実施形態では、記録ヘッド43は圧力調整弁を内蔵していない。そのため、サブタンク25内の液面A2の高さと、記録ヘッド43のノズル内のインクメニスカス表面高さAnozlとの間の重力方向の距離である液頭差Hを利用し、記録ヘッド43内のノズル84におけるインク圧力を調整するようにしている。
【0067】
ここで、記録ヘッド43内のノズル84におけるインク圧力は、サブタンク25内の液面A2とノズル内のインクメニスカス表面高さAnozlとの間の液頭差Hだけでなく、第3インク供給管47及びインク循環管55を含む流路を流れるインクの流路抵抗、及びサブタンク25内のインク圧力などの影響を受ける。このため、本実施形態では、加減圧装置34によりサブタンク25内の空気室25aを負圧に制御してサブタンク25内のインク圧を負圧にすることにより、記録ヘッド43のノズル84内のインクメニスカスにおけるインク圧を適切な値に調整する制御を行うようにしている。
【0068】
記録ヘッド43は、ノズル84(図8参照)に連通する不図示の圧力室をノズル毎に備え、圧力室に対してノズルと反対側にノズル毎に配置された圧力発生素子が駆動されると、圧力室が膨張・収縮し、その膨張時に圧力室に吸い込まれたインクが圧力室の収縮時にノズル84から噴射される仕組みになっている。このとき、ノズル84内におけるインクメニスカス表面高さAnozlは、圧力室のインク圧(つまりノズルに及ぶインク圧)によって決まる。このインクメニスカス表面高さAnozlをノズル84内の適切な位置に保つことが、インク噴射性能を安定に保つ条件となる。例えば圧力室のインク圧が低過ぎて、ノズル84内におけるインクメニスカス表面がノズル内の奥の方に位置すると、インク噴射量不足や噴射ミスが発生し易くなる。また、圧力室のインク圧が高過ぎて、ノズル内におけるインクメニスカス表面がノズル開口から円弧面状に突出して位置すると、インク噴射量が過大になったり、ノズルからのインク漏れが発生したりする。このため、本実施形態では、インクメニスカスのインク圧を適切な値に保つべく、インク供給制御を行っている。
【0069】
以下、図3を用いてインク供給制御について説明する。ここで、共通管47bの流路抵抗R1、接続管48の流路抵抗R2、インク循環管55の流路抵抗R3、サブタンク25内のインクの液面A2とノズル内のインクメニスカス表面高さAnozlとの液頭差H(液面高さ差)、サブタンク25内の負圧値Pdec(減圧値)とする。
【0070】
本例の場合、第4ポンプ50(供給ポンプ)からの供給流量は20N(cc/分)と一定である。ここで、液頭差Hによる圧力P(H)、共通管47bの流路抵抗R1による圧力損失P1loss、接続管48の流路抵抗R2による圧力損失P2loss、インク循環管55の流路抵抗R3による圧力損失P3lossとする。このとき、圧力損失P3lossは、インク循環管55のインク循環流量Qoutがデューティー値Dに応じて変化し、このインク循環流量Qoutがデューティー値Dの関数Qout(D)として示されることから、圧力損失P3lossもデューティー値Dの関数としてP3loss(D)(=R1・Qout(D))と表すことができる。
【0071】
記録ヘッド43のノズル内のインクメニスカスにおけるインク圧力Phは、Ph=P(H)+Pdec−P1loss−P2loss+P3loss(D)と表すことができる。但し、圧力は、1気圧を「0」とする正圧(>0)と負圧(<0)で示され、Pdecは負圧なので、Pdec<0である。
【0072】
そして、本例では、インク圧力Phをインク噴射に適切な目標値に保つべく、空気室25aがインク循環流量Qout(D)に応じて変化する圧力損失P3loss(D)(=Qout(D)・R3)に応じた目標負圧値Pdectrgになるよう第3ポンプ39(減圧ポンプ)及び圧力開放弁40を制御する。目標負圧値Pdectrgは、式 Pdectrg=Po−Ph(H)−P3loss(D)で表される。ここで、Poは、Phの目標値をPhtrgとすると、Po=Phtrg+P1loss+P2lossで示される定数である。
【0073】
また、記録ヘッド43のインク噴射流量Qhは、デューティー値Dが同じでも、印刷モードによって変化することから、目標負圧値Pdectrgを求めるときには印刷モードも考慮している。印刷モードには、印刷品質よりも印刷速度を優先する高速印刷モード、印刷速度よりも印刷品質を優先する低速印刷モード(高画質印刷モード)などがある。高速印刷モードでは、同じ画像の印刷でも、低速印刷モードに比べ、印刷速度が高速のため、インク噴射流量Qh(cc/分)が多くなる。このため、関数P3loss(D)は、高速印刷モード用と低速印刷モード用とで別々にROM68に用意されている。そして、ROM68から読み出したそのときの印刷モードに応じた関数P3loss(D)を適用した上記の式を用いて、目標負圧値Pdectrgを算出している。
【0074】
このように本実施形態では、制御装置60内のコンピューター61は、そのときの印刷モードと、そのときのサブタンク25内のインクの液面A2の液面高さHsubから決まる液頭差Hと、記録ヘッド制御用のデューティー値Dとに基づいて、目標負圧値Pdectrgを、式 Pdectrg=Po−Ph(H)−P3loss(D)を用いて算出する。そして、コンピューター61は、圧力センサー58が検出した実負圧値Pdetが、その目標負圧値Pdectrgに一致するように第3ポンプ39(減圧ポンプ)用の第3駆動モーター38及び圧力開放弁40を制御する。
【0075】
なお、液面高さHsubと、サブタンク25の内底面からノズル開口高さ(≒インクメニスカス表面高さAnozl)までの距離をhとすると、液頭差Hは、H=Hsub+hにより算出される。ここで、液面高さHsubは、サブ側残量センサー31が液面を検知したときの既知の液面高さHsuboを基準として、その後におけるサブタンク25の液面変位ΔAを用いて、式 Hsub=Hsubo+ΔAにより求める。液面変位ΔAは、サブ側残量センサー31の検知以後における、第1ポンプ29からサブタンク25へのインク補充量、及び記録ヘッド43で消費されたインク噴射量の計測結果又は計算結果から求まるサブタンク25内のインク変化量を、サブタンク25の液面と平行な断面積で除算することで求める。もちろん、サブタンク25の液量を検出する液量センサーを設け、液量センサーの検出値に基づいて液面高さHsubを求めてもよい。
【0076】
例えば印刷量が少なくデューティー値Dが比較的小さいときにはインク循環流量Qoutが多くなり、印刷量が多くデューティー値Dが比較的大きいときにはインク循環流量Qoutが少なくなる。インク循環流量Qoutが多いときには、流路抵抗R3とインク循環流量Qoutとの積から決まる圧力損失P3lossが大きくインクメニスカスにおけるインク圧の上昇分が相対的に大きいため、目標負圧値Pdectrgを減圧側に高くする。一方、インク循環流量Qoutが少ないときには、流路抵抗R3とインク循環流量Qoutとの積から決まる圧力損失P3lossが小さくインクメニスカスにおけるインク圧の上昇分が相対的に小さいため、目標負圧値Pdectrgを減圧側に低くする。
【0077】
次に、プリンター11に装備されたサブタンク25から記録ヘッド43へ供給される過程でインクを加熱すると共に、記録ヘッド43に供給された加熱インクを記録ヘッド43内で保温する加熱システムについて説明する。
【0078】
加熱システムは、図1に示すように、メインタンク15から第2インク供給管27を通じて供給されたサブタンク25内のインクを目標温度に予備加熱する第1加熱装置71(第1加熱手段)と、サブタンク25で加熱された少し温度ばらつきのある状態で第3インク供給管47へ供給されたインクを接続管48の部分でその温度ばらつきを無くしつつ目標温度に加熱する第2加熱装置72(第2加熱手段)とを備える。さらに加熱システムは、第3インク供給管47を通じて供給された各記録ヘッド43内の加熱インクを目標温度に保温するために各記録ヘッド43に設けられた保温装置73(第3加熱手段)を備える。
【0079】
第1加熱装置71は、サブタンク25内に配置されたサブタンク用ヒーター33(タンク用ヒーター)と、サブタンク25内のインク温度を検出する第1温度センサー32とを備える。制御装置60は、第1温度センサー32の検出温度(第1温度センサー32の位置におけるインクの温度)がサブタンク25におけるインクの目標温度である第1目標温度(目標値)になるようにサブタンク用ヒーター33の発熱制御を行う。
【0080】
また、第2加熱装置72は、サブタンク25から供給された加熱インクを第3インク供給管47の接続管48の部分で加熱する供給路用ヒーター54と、供給路用ヒーター54の熱を伝導して接続管48を加熱する熱伝導体74(加熱ブロック)と、この熱伝導体74の温度を検出する第3温度センサー53とを備える。制御装置60は、第3温度センサー53の検出温度(熱伝導体74の表面温度)が第2目標温度(目標値)になるように供給路用ヒーター54の発熱制御を行う。
【0081】
さらに、保温装置73は、記録ヘッド43内の加熱インクを保温するヘッド用ヒーター45と、ヘッド用ヒーター45の温度を検出する第2温度センサー44とを備える。制御装置60は、第2温度センサー44の検出温度(ヘッド用ヒーター45の表面温度)が記録ヘッド43内のインクを保温すべき第3目標温度(目標値)になるようにヘッド用ヒーター45の発熱制御を行う。
【0082】
次に、第1加熱装置71、第2加熱装置72及び保温装置73の構成を詳細に説明する。図4は、第1加熱装置71を装備するサブタンク25の断面図である。また、図5は、第2加熱装置72の模式断面図である。図6は第2加熱装置72の図5におけるA−A線断面を示す模式部分断面図であり、図7は第2加熱装置72の図6と直交する方向の断面を示す模式断面図である。さらに図8は記録ヘッド43の一部破断した模式側断面図である。
【0083】
まず第1加熱装置71の構成及び機能について説明する。図4に示すように、サブタンク25は、有底円筒状のタンク本体25bと、タンク本体25bの開口を閉塞するカバー部25cとを備えている。サブタンク25は、熱伝導率が比較的小さくかつ耐熱性が高くインクに侵され難い耐食性のある材料を用いている。この材料の一例としてはガラスなどが挙げられる。例えばステンレス等の金属容器を用いて、金属容器の外壁面にヒーターを設けた構成にすると、容器の内周面からインクの内側へ向かって熱が伝わって加熱されるので、インクが第1目標温度(例えば40℃)に加熱されるまでに長めの時間を要する。これに対して本実施形態では、サブタンク用ヒーター33をサブタンク25内のインク中に浸漬しているので、インクの中央付近やや下方に位置するサブタンク用ヒーター33の周辺部分から加熱され、インク全体の平均温度が目標温度に達するまでの所要時間が比較的短く済む。このとき、サブタンク25が金属に比べて熱伝導率の小さい無機材料(例えばガラス)よりなるので、加熱されたインクの熱がサブタンク25の壁部から外部に放熱され難くなっており、この点からも第1目標温度に加熱されるまでの所要時間が短く済む。
【0084】
ここで、サブタンク25へのインクの供給は間欠的に行われる。そして、第1目標温度に加熱されたインク中に常温のインクが流入する。本実施形態では、図4に示すように、サブタンク25内のインク中において、メインタンク15からのインク流入口25d(液体流入部)から所定距離だけ離れた位置に第1温度センサー32を配置している。ここで、第1温度センサー32の配置条件は、インク流入口25dとサブタンク用ヒーター33の中心とを結ぶ仮想線と直交しかつサブタンク用ヒーター33の中心を通る仮想面に対してインク流入口25dと反対側となる位置に、第1温度センサー32を設けることである。これは、仮に温度センサー32がインク流入口25d近傍に位置した場合、インクの流入が開始した時点で直ぐに冷えたインク温度がサブタンク用ヒーター33により検出されてサブタンク用ヒーター33が急加熱される。このとき、インク流入中はそのインク流がサブタンク25内のインクを攪拌する作用を有するので、攪拌されつつインクの温度が上昇し、インク全体の温度が上昇しやすい。しかし、インク流入終了後においては、インク流による攪拌作用がなくなるため、インク流入口付近のインクの温度が局所的に上昇しその局所温度が目標加熱温度に達すると、他の箇所のインク温度が低いにも関わらず、その時点でサブタンク用ヒーター33の加熱が停止されてしまい、サブタンク25内のインクに温度分布ができてしまう。なお、第1温度センサー32の配置条件を決める際のサブタンク用ヒーター33の中心とは、実施形態のように環状のヒーターである場合は、環状の中心となる。
【0085】
これに対して、本実施形態では、図4に示すように、サブタンク25内におけるサブタンク用ヒーター33の配置位置を、インク流入口25dから所定距離だけ離しているので、上記のようなインク流入口25d付近の温度が局所的に目標温度になっているものの、そのインク流入口25dから一番離れた反対側の部分でインクが目標温度よりかなり低くなっている温度分布の発生を回避しやすくなっている。
【0086】
詳しくは、サブタンク25内に流入口(上流端27a)から流入した常温のインクが、インク流入口25dから所定距離だけ流入すると、第1温度センサー32がその常温のインク温度を検出してサブタンク用ヒーター33が発熱する。この発熱したサブタンク用ヒーター33の上側を主に流れようとする流入インクは、温度差による比重の違いや、インク循環管55から還流されるインク流との合流によって下方へ流され易い。そして、このようにインク流入口25dからやや下降しつつ流れるインクは、サブタンク用ヒーター33の近くを通る過程で加熱される。そして、メインタンク15からのインク流入中は、そのインク流により攪拌されながら加熱されるので、サブタンク25内のインクの温度分布が発生し難くい。また、インク循環中は、インク循環管55からのインク流によってインクは攪拌されながら加熱されるので、サブタンク25内のインクの温度分布が発生し難い。
【0087】
また、サブタンク用ヒーター33の周囲でインクが局所的に高温になると、インクに熱による悪影響が生じる虞がある。そのため、そのような熱による悪影響が生じないような位置に第1温度センサー32を配置している。インク加熱中においては、サブタンク用ヒーター33の周辺ほどインク温度が高くサブタンク用ヒーター33から離れるほどインク温度は低くなる温度分布が発生する。例えば第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33から離し過ぎると、サブタンク用ヒーター33の周辺温度がかなり高くなってはじめて第1温度センサー32の位置におけるインク温度が目標加熱温度に達し、その時点ではじめてサブタンク用ヒーター33の発熱が停止される。この場合、サブタンク用ヒーター33の周辺近傍のインク温度がかなり高くなってインクに熱による悪影響が及ぶ虞がある。一方、第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33に近づけ過ぎると、サブタンク用ヒーター33の周辺のインク温度が目標加熱温度に達した時に、サブタンク用ヒーター33から離れた周縁のインク温度が目標加熱温度よりかなり低いにも関わらず、サブタンク用ヒーター33の発熱が停止されてしまう。このため、このような両極端な温度分布の発生を回避できるように、第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33から適度な距離だけ離した位置に配置している。その位置とは、本例では、サブタンク用ヒーター33とメインタンク15からのインク流入が停止したときの液面(例えば図4における液面A2)との中間位置を真ん中に挟んで深さ方向に、液面A2からサブタンク用ヒーター33までの深さの半分の範囲内に設定されている。特に本例では、その深さ方向の範囲のうち、液面A2とサブタンク用ヒーター33との中間位置よりも少しサブタンク用ヒーター33寄りの位置に、第1温度センサー32を配置している。
【0088】
また、サブタンク25内には、第3インク供給管47の上流端側の一部を構成する所定長さの管部47c(管路)が、サブタンク25の底面より少し上方位置をその底面に沿って延びるように挿入されている。インク流入口25dに対して該インク流入口25dから流入したインクがサブタンク25内を横切った反対側となる位置に、管部47cの流入口47dは開口している。ここで、管部47cの挿入位置の条件は、インク流入口25dとサブタンク用ヒーター33の中心とを結ぶ仮想線と直交しかつサブタンク用ヒーター33の中心を通る仮想面に対して、インク流入口25dと反対側となる位置に流入口47dが到達するまで、サブタンク25内を半分以上横断する所定長さだけ管部47cを挿入することである。よって、メインタンク15からサブタンク25内に流入してサブタンク25内を横切る過程でサブタンク用ヒーター33により加熱されたインクや、攪拌されて平均的な温度に加熱されつつ流入口47d付近に流れたインクが、図4に矢印に示すように、管部47cの流入口47dから流入する。このため、サブタンク25内に流入したばかりの常温のインクが、管部47cの流入口47dから第3インク供給管47へ流入することが回避される。
【0089】
管部47cはサブタンク25の底面に沿って延びているので、その管部47c内を流れる過程でサブタンク用ヒーター33の下側を通るときにも加熱される。この管部47cを通るインクが適度に加熱されるように、サブタンク用ヒーター33は、管部47cから上側に適度な距離を保った位置に配置されている。仮に、メインタンク15から間欠的にインクが流入されているタイミングにおいて、加熱不足のインクが管部47cの流入口47dから仮に流入したとしても、管部47c内を流れてサブタンク用ヒーター33の下側を通る過程で加熱されるので、概ね第1目標温度に加熱されたインクがサブタンク25から第3インク供給管47へ流出する。また、メインタンク15からインクが流入されていないときは、サブタンク用ヒーター33は第1目標温度にまで加熱されたインクを保温する程度の発熱に抑えられるので、サブタンク25の底面に沿って延びる管部47cを流れるインクはサブタンク用ヒーター33の下側を通っても、そのサブタンク用ヒーター33自体がさほど発熱しないので、サブタンク25から加熱し過ぎたインクが第3インク供給管47へ流出することもない。さらに、サブタンク25の底面近くを延びている管部47cは、液面A2より少し下側の深さ位置で常温のインクが流入するインク流入口25dに対して、深さ方向においてサブタンク用ヒーター33の位置を間に挟んだ反対側に離れて位置している。このため、管部47cを通るインクが、インク流入口25dから流入したばかりの常温のインクによって冷やされることも回避され易くなっている。
【0090】
また、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43に供給されたインクが、記録ヘッド43から第3インク供給管47を通じてサブタンク25に還流されることで、インク循環管55から加熱インクが流入する。このとき、サブタンク25内でインク流入口25dから常温のインクが流入しているときには、その常温のインクと、インク循環管55から流入した加熱インクとが混ざり合うことで、サブタンク25内のインクの温度が急激に低下することが防止される。また、常温のインクの流入が終わった後の加熱過程でサブタンク25内のインクに温度分布ができていたり、まだ十分温度が安定していないときにも、インク循環管55から流入する目標温度より若干冷めた加熱インクの流入と、その流入の際に発生したインク流による攪拌作用とにより、サブタンク25内のインクの温度の平均化及びインク温度の目標温度への緩やかな収束が進む。よって、サブタンク25で概ね適度な温度に加熱されたインクの温度のばらつきを一層小さく抑えることができる。よって、温度のばらつきを一層小さく抑えた温度の安定したインクを第3インク供給管47へ供給できる。
【0091】
例えば印刷中においてインク循環を行わず記録ヘッド43で必要な分のインクだけを供給する構成とすると、第3インク供給管47において第2加熱装置72がない箇所のインクが冷め易いため、第3インク供給管47の長手方向における位置の違いで温度が異なる温度分布が発生する。第3インク供給管47で一旦発生した温度分布は解消され難いため、記録ヘッド43のインク噴射性能に影響する。これに対して本実施形態では、印刷準備期間から印刷中(液体噴射動作中)さらに印刷終了後の待機期間においてインク循環を行うため、第3インク供給管47内のインクにその長手方向における位置の違いによる有意な温度分布が発生することがない。
【0092】
以上より、サブタンク用ヒーター33は、サブタンク25内において、その底面近くを延びる管部47cよりも少し離れた上方に位置し、かつメインタンク15からのインク流入停止時の液面A2から底面までの深さの半分の深さ位置よりやや底面側に位置する状態で、水平方向において筒状のサブタンク25のほぼ中央に配置されている。そして、第1温度センサー32は、サブタンク用ヒーター33の環状部分の中心よりもインク流入口25d側の端部と反対側の端部寄り(図4において左側端部寄り)に位置し、かつ液面A2からサブタンク用ヒーター33までの深さの半分の中間位置を真ん中に挟む前記範囲内に位置している。特に、第1温度センサー32は、前記範囲のうち中間位置よりもサブタンク用ヒーター33寄りに位置している。
【0093】
こうしてサブタンク25内のインクはサブタンク用ヒーター33によって第1目標温度になるよう加熱されるものの、サブタンク25内でインクの温度分布を無くし切ることが困難であり、またメインタンク15から間欠的に常温のインクが流入するときに温度分布が発生し易い状態にある。このため、サブタンク25から管部47cを通って第3インク供給管47に流出するインクは概ね第1目標温度に加熱されるものの少し温度のばらつきをもっている。
【0094】
次に第2加熱装置72の構造を、図1、図5〜図7を用いて説明する。図1、図5〜図7に示すように、第2加熱装置72は、接続管48が内部に配管される熱伝導体74と、熱伝導体74に設けられた供給路用ヒーター54と、熱伝導体74に設けられて熱伝導体74の温度を検出する第3温度センサー53とを備えている。熱伝導体74は供給路用ヒーター54の熱を伝導して接続管48を加熱する構成となっている。
【0095】
図6及び図7に示すように、熱伝導体74は、四角板状の熱伝導ブロック75と、同じく四角板状でほぼ同サイズの熱伝導プレート76とを備えている。熱伝導ブロック75の熱伝導プレート76と対向する面には複数本の案内溝75aが形成されており、複数本(N本)の接続管48が各案内溝75aに収容された状態で、熱伝導ブロック75と熱伝導プレート76との間に挟み込まれている。図6及び図7に示すように、供給路用ヒーター54は、熱伝導体74の熱伝導ブロック75側の表面に取着されている。また、第3温度センサー53は、熱伝導体74の熱伝導ブロック75側の表面において供給路用ヒーター54から少し離した位置に取着されている。もちろん、第3温度センサー53は、熱伝導体74において供給路用ヒーター54の配置位置と反対側となる熱伝導プレート76側の表面に取着してもよい。
【0096】
本実施形態では、熱伝導体74を構成する熱伝導ブロック75と熱伝導プレート76は、熱伝導率の高いアルミ系金属(例えばアルミニウム又はアルミ合金)よりなり、接続管48はインク耐食性の高い鉄系金属(例えばステンレス)で構成される。そして、熱伝導体74と、案内路74aに収容された接続管48とはロウ付けにより接合されている。もちろん、熱伝導体74の材料が低熱伝導率かつインク耐食性を有する場合には、熱伝導体74の案内路74aを例えば断面円形の流路とし、この流路をそのまま接続管として使用してもよい。
【0097】
図5に示すように、N本(例えば4本)の接続管48は、隣に位置するものとの略一定の間隔を保った略平行な状態で延びていると共に、蛇行した所定経路を描くように配管されている。管径の小さなN本の接続管48は、蛇行経路を描くことにより細長く延びている。接続管48が蛇行経路を描きつつ細長く延びていることで、接続管48と熱伝導体74との接触面積を広く確保でき、かつ熱伝導体74に配管された部分の接続管48とその管内を流れるインクとの接触面積も広く確保できる。このため、供給路用ヒーター54の熱が熱伝導体74を介して接続管48を流れるインクに効率良く伝達できる。
【0098】
また、接続管48は、図5に示すように隣合うもの同士が略一定の間隔を隔てた略平行な状態で蛇行経路を描くように配管されていることにより、接続管48間における温度のばらつきが発生し難い配管構造となっている。例えばN本の接続管をそれぞれ独立したN個の配管エリア内で蛇行経路を描くように配管した場合、インク噴射流量の多い記録ヘッド43と接続された接続管48の配管エリアで温度が他のエリアよりも相対的に低くなり、インク消費量の少ない記録ヘッド43と接続された接続管48の配管エリアで温度が他のエリアよりも相対的に高くなる。この場合、接続管48内のインク温度が接続管48間でばらつき、ひいては記録ヘッド43内のインク温度が記録ヘッド43間でばらつくという問題を招く。
【0099】
これに対して本実施形態のように、N本の接続管48が隣合うもの同士が略一定の間隔を保った状態で熱伝導体74の同一のエリア内に蛇行経路を描くように配管された構成であれば、仮にインク噴射流量の多い記録ヘッド43と対応する接続管48の周辺温度が低下しても、他の接続管48もその温度の低下したエリアを通ることになる。このため、接続管48内のインク温度が接続管48間でばらつくことが発生し難くなっている。
【0100】
また、接続管48が細長く延びていることでその流路抵抗R2が大きくなっており、仮に第4ポンプ50の脈動が共通管47bを通じて各接続管48の入口まで減衰し切れず伝播しても、各接続管48をインクが通るときの大きな動圧によって脈動は減衰して消滅し、記録ヘッド43内に弱い脈動をも伝播されることが回避される。
【0101】
さらに、図5に示す蛇行経路を描くように配管されているN本の接続管48は、ほぼ等しい管路長になっている。そのため、圧力損失の小さな太い共通管47bをインクが流れることで各接続管48の入口箇所でほぼ同じにできたインク圧は、流路長のほぼ等しい各接続管48をインクがそれぞれ通るときにほぼ等しい圧力損失を受けることから、各記録ヘッド43内のインク圧は記録ヘッド43間でほぼ等しくなる。
【0102】
次に保温装置73の構造について図8に基づいて説明する。図8に示すように、記録ヘッド43は、ヘッド本体80と、ヘッド本体80の下部に固定されたヘッド部81とを備える。ヘッド本体80の内部にはインク室82が形成されており、接続管48とインク循環管55は、ヘッド本体80の上部に対してこのインク室82を挟んで対向する位置にそれぞれ接続されている。インク室82には、接続管48と連通する上側部分からヘッド部81側へ至る途中にフィルター83が設けられており、接続管48からインク室82に流入したインクのうちヘッド部81へ流れるインク中の気泡や異物はフィルター83によって除去されるようになっている。
【0103】
インク室82においてフィルター83を通過したインクはヘッド部81に流れ、ヘッド部81の下面であるノズル形成面81aに開口する複数のノズル84からインク滴として噴射される。ヘッド部81には、各ノズル84と連通する不図示の圧力室がノズルと同数設けられ、ノズル84毎に1つずつ設けられた圧力発生素子が圧力室の一つの壁部(振動板)を振動させてその内部のインクに噴射圧を与えることにより、ノズル84からインク滴が噴射されるようになっている。この圧力発生素子の一例としては、例えば圧電素子、静電素子の他、サーマル方式のインクジェットで使用されるヒーターなどを挙げることができる。
【0104】
図8に示すように、インク室82に流入した加熱インクを保温するための保温装置73は、記録ヘッド43の外壁面に設けられている。記録ヘッド43には、ヘッド部81のノズル形成面81aの周縁部からヘッド側部に渡って金属製のヘッドカバー85(加熱部材)が取着されている。ヘッド用ヒーター45はこのヘッドカバー85に接触する状態に設けられている。そして、ヘッド用ヒーター45に設けられた第2温度センサー44は、ヘッド用ヒーター45の表面温度を直接検出するようになっている。
【0105】
このため、第2温度センサー44の検出温度を第3目標温度(保温用の目標温度)に近づけるようにヘッド用ヒーター45を発熱制御する際の温度の制御幅を小さくすることができる。例えば、インク温度やヘッドカバー85、伝熱板86の温度を直接検出する構成とした場合、インクが冷えたことやインクが加熱されたことを検出したときには、ヘッド用ヒーター45は既にかなり冷えていたりかなり加熱されたりしており、ヘッド用ヒーター45の温度の振れ幅が比較的大きくなる。これに対してヘッド用ヒーター45の表面温度を直接検出する構成であると、ヘッド用ヒーター45を略一定温度(第3目標温度)に保持できるので、記録ヘッド43を第3目標温度に保温でき、記録ヘッド43内の加熱インクの保温効果を確保できる。このため、温度の制御幅が大きいときに問題になるオーバーシュートによるインクの加熱し過ぎや冷め過ぎとなる事態を回避できる。そして、ヘッド用ヒーター45の温度の制御幅が小さいことから、記録ヘッド43内のインクが第3目標温度に保温される。
【0106】
また、記録ヘッド43の外壁部には、ヘッド用ヒーター45の表面とヘッドカバー85の表面との両方に接触した状態でこれらの側面を覆うように配置された伝熱板86が設けられている。よって、ヘッド用ヒーター45の熱は、記録ヘッド43の側面に直接伝えられる以外に、伝熱板86を介して記録ヘッド43の側面に伝えられ、さらに伝熱板86及びヘッドカバー85を介してヘッド部81の側部及びノズル形成面81aの周縁部に伝えられる。このとき、ヘッド用ヒーター45の熱はヘッドカバー85にその端面接触部分を介して直接伝えられる他、伝熱板86を経由してヘッドカバー85の側部表面に伝えられる。このため、ヘッド部81の側面及びノズル形成面81aの周縁部に効率よく熱を伝えることができる。よって、保温装置73により、ヘッド部81の圧力室やノズル84内のインクを効果的に保温できる。この結果、ノズル84から噴射されるインク滴の噴射性能が良好になる。
【0107】
本実施形態では、ヘッド本体80は樹脂ベースで形成されており、ヘッド部81のノズル形成面81aを含む部分はヘッド本体80のベース樹脂よりも熱伝導率の高い材料で形成されている。本実施形態では、ヘッド部81のうちノズル形成面81aを含む部分は例えばシリコンにより形成されている。シリコンは、金属ほどではないが樹脂やセラミックに比べ熱伝導率が大きい。よって、ヘッド用ヒーター45の熱を伝熱板86及びヘッドカバー85を介してヘッド部81におけるノズル形成面81aの周縁部及び側壁部に熱を伝導させることで、ヘッド部81全体をヘッド用ヒーター45の温度にほぼ等しい均一な温度に加熱することで、ヘッド部81内のインクを保温することができる。
【0108】
この場合、ヘッド本体80を外側から加熱してもインク室82やその下流の流路、圧力室、ノズル84内のインクに熱を伝えることが困難である。しかし、本実施形態の構成であれば、ヘッド用ヒーター45から伝熱板86を介して熱が伝達されたヘッドカバー85が、ヘッド部81の側部及びノズル形成面81aの周縁部を加熱する。このため、インク室82内のインクが加熱され難いヘッド本体80が樹脂製の記録ヘッド43では、インク室82からその下流側へ送られるうちにインクが徐々に冷める傾向にあるが、ヘッド部81が加熱されることで、インク流路の下流端に位置するノズル84や圧力室内のインクが加熱される。よって、記録ヘッド43内において噴射される前のインクが第3目標温度に適度に保温されているので、記録ヘッド43の良好な噴射性能が確保される。
【0109】
このように加熱システムを構成する第1加熱装置71、第2加熱装置72、保温装置73は、ヒーター、温度センサー、伝熱手段(熱伝導体や伝熱板)などの配置構造により、第1加熱・第2加熱・保温の各機能を実現している。さらに、これらに加え、制御装置60によるヒーター33,45,54のフィードバック制御によっても、第1加熱・第2加熱・保温の各機能を実現している。
【0110】
本実施形態では、制御装置60のコンピューター61は、温度センサー32,44,53が検出した検出温度を目標温度に近づけるように各ヒーター33,45,54をPID制御している。サブタンク用ヒーター33はP重視で温度の制御幅の大きなPID制御が行われ、温度変化に素早く追随する温度制御が行われる。また、供給路用ヒーター54は、P重視であるが、温度の制御幅が小さく、サブタンク用ヒーター33ほどではないが温度変化に比較的速やかに追随するPID制御が行われる。さらに、ヘッド用ヒーター45は、検出温度と目標温度との温度差が他の制御と同じであっても、他の制御に比べ温度の制御幅が一番小さく、ヘッド用ヒーター45に目標温度からずれる温度変化があっても実温度が第3目標温度に滑らかに追随するPID制御が行われる。
【0111】
次に、制御装置60のコンピューター61が実行するインク供給制御及びクリーニング制御について説明する。
さて、コンピューター61は、予め設定された所定周期(例えば1〜100ミリ秒の範囲内の所定時間)毎にインク供給制御ルーチンを実行する。プリンター11の電源オフ時は、各開閉弁30,37,41,51,56は閉弁状態にある。プリンター11の電源が投入されると、コンピューター61は開閉弁30,41,51,56を開弁させると共に第3ポンプ39及び第4ポンプ50を駆動させる。この結果、第3ポンプ39による空気室25a内からの空気の排出動作により空気室25a内が負圧になり、サブタンク25内のインクの液面A2に負圧が作用することでサブタンク25内のインク圧が減圧する。この状態で第4ポンプ50が吐出駆動されることにより、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43にインクが供給される。このとき、第4ポンプ50の吐出駆動によって、インクは第3インク供給管47を通じて例えば20N(cc/分)のインク吐出流量Qpump(=インク供給流量Qin)で供給される。
【0112】
第3インク供給管47のうち共通管47bを流れてN個の接続管48の各入口位置(各分岐箇所)に至るまでインクが流れる距離(流路長)がそれぞれ異なるものの、共通管47bの流路抵抗R1が小さくインクの圧力損失がほとんどないため、N個の接続管48のそれぞれの入口に到達した際のインク供給圧が各接続管48の間でほぼ等しくなる。そして、管径が小さくかつ蛇行経路(蛇道)をとる細長い接続管48を流れるときのインクの流路抵抗R2は非常に大きくなる。このため、各記録ヘッド43内へ供給されるインク供給量が記録ヘッド43間でほぼ等しくなる。また、このとき第4ポンプ50の脈動は、ダンパー52で減衰し切れない僅かな分は接続管48の入口に伝播するが、大きな流路抵抗R2の接続管48を流れるときのインクの動圧により僅かばかり伝播した脈動もほとんど消滅し、記録ヘッド43内に脈動の影響が及ぶことがほぼ防止される。
【0113】
ここで、記録ヘッド43ではノズル84から噴射されたインクの分だけインクが消費される。このとき、記録ヘッド43に供給される流量20(cc/分)のインクのうちそのときのデューティー値Dに応じたインク噴射流量Qh分のインクが消費される。本実施形態では、最大(Full)デューティーで印刷しているとき、記録ヘッド一個当たりのインク消費量が10(cc/分)である。そして、N個全ての記録ヘッド43が最大(Full)デューティーで印刷を行っているときの最大インク噴射流量Qhmax(=10N(cc/分))よりも、多いインク供給流量Qin(=20N(cc/分))のインクが第4ポンプ50(供給ポンプ)により供給される。よって、印刷停止中はもちろん印刷中においても、インク供給流量Qinからインク噴射流量Qh分を差し引いた分のインク循環流量Qout(=Qin−Qh)で記録ヘッド43からインク循環管55を通じてサブタンク25にインクが還流される。このため、最大デューティーで印刷されているときでも、必ずインク循環管55を通ってインクが環流するので、記録ヘッド43からインク循環管55へ一旦流出したインクが、インク循環管55から記録ヘッド43に戻ることはない。よって、インク循環管55へ一旦流出して冷めたUVインクが記録ヘッド43内に再び戻って記録ヘッド43内のインク温度を低下させることによる記録ヘッド43の噴射特性の悪化を回避できる。
【0114】
ROM68には、印刷時のインク供給制御を行うための図9のフローチャートで示される印刷処理ルーチンのプログラムが記憶されている。印刷が開始されると、コンピューター61(詳しくはその内部のCPU67)が図9に示される印刷処理ルーチンを実行することで、印刷時のインク供給制御が行われる。以下、コンピューター61が実行する印刷時のインク供給制御について図9に基づいて説明する。なお、プリンター11の印刷開始前の待機中は、サブタンク25と記録ヘッド43間でインクの循環が行われているが、待機状態のまま所定時間を経過するとインクの循環が停止される。ここでは、印刷ジョブを受け付けたときに、インク循環は停止されているものとする。この場合、第3インク供給管47及びインク循環管55上の各開閉弁51,56と、加減圧装置34における開閉弁37,41は全て閉弁状態にある。なお、加減圧装置34は、サブタンク25の液量の変化に応じて空気室25aの容積が変化するのに連れて、空気室25aを目標圧にすべく適宜駆動される。
【0115】
まずステップS10では、記録ヘッド43へインクを供給するために開閉弁を開弁する。すなわち、第3インク供給管47上の開閉弁51と、インク循環管55上の開閉弁56と、加減圧装置34の開閉弁41とを開弁する。
【0116】
ステップS20では、インク供給経路及び記録ヘッド内のインクの加熱・保温制御を行う。コンピューター61は、プリンター11の電源投入時からインクの加圧・保温制御を開始しており、このステップは、そのうち印刷中に行われる加熱・保温制御の部分を示したものである。すなわち、コンピューター61は、第1温度センサー32の検出結果に基づいてサブタンク用ヒーター33を温度制御する。コンピューター61は、第3温度センサー53の検出結果に基づいて供給路用ヒーター54を温度制御する。さらに、コンピューター61は、第2温度センサー44の検出結果に基づいてヘッド用ヒーター45を温度制御する。
【0117】
ステップS30では、インク供給用の第4ポンプを駆動させる。このとき、第4ポンプ50を最大インク噴射流量Qhmaxよりも多いインク供給流量Qin(Qin>Qhmax)の条件を満たすようにポンプを駆動制御する。
【0118】
ステップS40では、印刷モードと記録ヘッド制御用のデューティー値Dと液頭差Hとに基づく負圧値Pdecになるようサブタンク25の空気室25aを圧力制御する。すなわち、そのときの印刷モードに応じたP3loss(D)を選択し、デューティー値Dと液頭差Hとを用いて、目標負圧値Pdectrgを、式 Pdectrg=Po−Ph(H)−P3loss(D)により算出する。そして、コンピューター61は、圧力センサー58が検出した実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgに一致するように、第3ポンプ39(減圧ポンプ)及び圧力開放弁40を制御する。この結果、空気室25aが目標負圧値Pdectrgになるように制御される。詳しくは、コンピューター61は、実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgよりも絶対値で小さいときには、第3駆動モーター38を駆動して第3ポンプ39を減圧駆動させることで、実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgに一致するまで空気室25aを減圧させる。一方、サブタンク25内のインクが減少して空気室25aの容積が増えると空気室25aの圧力は減少し、このとき実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgよりも絶対値で大きくなる。このように実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgよりも絶対値で大きいときには、コンピューター61は、圧力開放弁40を開弁して空気室25aを大気に開放することで、実負圧値Pdecrealが目標負圧値Pdectrgに一致するまで、小流量で空気を空気室25a内に流入させる。
【0119】
そして、ステップS50では印刷終了か否かを判断し、印刷終了でなければ(つまり印刷中であれば)ステップS20に戻る。そして、S50において印刷終了と判断されるまで、以下同様にS20〜S40の処理を繰り返し実行する。印刷が終了すると、ステップS60において、第4ポンプ50を駆動停止させてインク供給を停止させると共に、その第4ポンプ50の駆動停止後に開閉弁51,56を閉弁させて第3インク供給管47及びインク循環管55の流路を遮断する。
【0120】
次にクリーニングについて説明する。プリンター11は、記録ヘッド43の噴射不良を予防・解消するクリーニング機能を有している。本実施形態のプリンター11では、前述のように、記録ヘッド43のインク室82内におけるインク中の気泡を除去することを目的とする第1クリーニングと、記録ヘッド43のノズル目詰まりの予防・解消を目的とする第2クリーニングとが用意されている。第1クリーニングは、インクカートリッジ交換時、初期充填時、プリンター長期間不使用時などのインク中に気泡が混入する又は混入している虞があるときに行われる。
【0121】
また、プリンター11は、記録ヘッド43毎にノズル目詰まりの有無を検査するノズル検査装置(図示省略)を備えている。制御装置60は、ユーザー操作によりクリーニングの指示を受け付けたとき、及び前回のクリーニング終了時点からの経過時間が不図示のクリーニングタイマーの計時時間に基づき所定時間に達したと判断したときに、ノズル検査装置に各記録ヘッド43のノズル検査を行わせる。第2クリーニングは、ノズル検査装置によるノズル検査結果からノズル目詰まり有りと判定された不良の記録ヘッド43が存在するときに、その不要の記録ヘッド43を対象として選択的に行われる。図2に示すROM68には、図10に示す第1クリーニング処理ルーチンのプログラム、及び図11に示す第2クリーニング処理ルーチンのプログラムが記憶されている。
【0122】
まず第1クリーニングについて説明する。コンピューター61は、インクカートリッジ交換時、初期充填時、プリンター長期間不使用時のうちいずれか一つが該当する第1クリーニング実施時期になると、図10に示す1クリーニング処理ルーチンを実行する。
【0123】
まずステップS110では、第1及び第2開閉弁30,37を閉弁し、第3及び第4開閉弁41,51を開弁する。この結果、第1開閉弁30の閉弁によってサブタンク25とメインタンク15との連通が遮断されると共に、第4開閉弁51の開弁によってサブタンク25と各記録ヘッド43とが連通状態とされ、さらに加減圧装置34においてサブタンク25に対して第2ポンプ36が非連通状態かつ第3ポンプ39が連通状態となる。
【0124】
次のステップS120では、N個(本例では4個)の第5開閉弁56のうち今回の第1クリーニングの対象となるM個の記録ヘッド43に対応するM個の第5開閉弁56を開弁すると共に、残り(N−M)個の開閉弁56を閉弁する。ここで、第1クリーニングは、記録ヘッド43をM個ずつ順番に複数回に分けて行われ、このステップでは、今回行うべき第1クリーニングの対象となるM個の記録ヘッド43(以下、「第1クリーニング対象ヘッド」ともいう)の選択と、その選択したM個の記録ヘッド43に対応するM個の第5開閉弁56を開弁する。
【0125】
詳しくは、第1クリーニングにおけるM個は、クリーニング1回当たりのクリーニング対象の最大個数であって、N個のうちクリーニング対象のK(但し、M≦K≦N)個の液体噴射ヘッドのクリーニングを、少なくとも|[−K/M]|(但し、[]はガウス記号、||は絶対値)回行うことで、K個全ての液体噴射ヘッドのクリーニングを行う。例えばK個分のクリーニングを1個ずつ行う場合(M=1)は、1個ずつのクリーニングをK(=|[−K]|)回行う。また、7個分のクリーニングを2個ずつ行う場合(M=2、K=7)は、2個ずつのクリーニングを3回、1個のクリーニングを1回行うことで、計4(=|[−7/2]|)回のクリーニングを行うことになる。
【0126】
ステップS130では、第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動させる。すなわち、コンピューター61は第4駆動モーター49を駆動させることで第4ポンプ50を駆動する。この結果、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43に供給されたインクが、M本のインク循環管55を通じて再びサブタンク25に還流するインクの循環が行われる。
【0127】
次のステップS140では、第3ポンプ39(減圧ポンプ)を駆動する。すなわち、コンピューター61は第3駆動モーター38を駆動させることで第3ポンプ39を駆動する。第3ポンプ39が駆動されることでサブタンク25が減圧される。すなわち、第3ポンプ39によって空気室25aから空気が排気されることで空気室25aが減圧され、この空気室25aの負圧がインクの液面A2に及ぶことでサブタンク25内のインクが減圧される。
【0128】
そして、ステップS150では、サブタンク25の減圧が完了したか否かを判断する。つまり、コンピューター61は、圧力センサー58が検出するサブタンク25内の空気圧(サブタンク圧)Psubが目標負圧値PDに達した(Psub≦PD)か否かを判断する。Psub≦PDが不成立の間はステップS140における第3ポンプ39の駆動を継続し、Psub≦PDが成立するとステップS160に進む。
【0129】
ステップS160では、第1クリーニング時間を経過したか否かを判断する。コンピューター61は、第4ポンプ50を駆動してインク循環を開始することにより第1クリーニングを開始した時点からの経過時間を不図示のタイマーで計時している。コンピューター61は、そのタイマーの計時時間Tが、第1クリーニングの実施時間である第1クリーニング時間T1(以下、「第1CL時間T1」とも記す)に達した(T≧T1)ことをもって、第1CL時間T1が経過したと判断する。第1CL時間T1を経過していなければ(T≧T1が不成立であると)、そのまま第1クリーニングを継続し、第1CL時間T1を経過すると(T≧T1が成立すると)、ステップS170に進む。
【0130】
ステップS170では、第1クリーニング対象ヘッド(第1CL対象ヘッド)がまだ存在するか否かを判断する。つまりN個全ての記録ヘッド43に対する第1クリーニングを終えておらず、第1クリーニングを実施すべき記録ヘッド43がまだ残っている場合は、第1クリーニング対象ヘッドありと判断する。第1クリーニング対象ヘッドがまだ存在すれば、ステップS120に戻り、次の第1クリーニング対象ヘッドに対して、同様にステップS120〜S160の各処理を実行することで第1クリーニングを施す。そして、N個全ての記録ヘッド43に対して第1クリーニングを実施し、ステップS170において第1クリーニング対象ヘッドがないと判断すると、ステップS180に進む。
【0131】
ステップS180では、第4ポンプ50の駆動を停止させてインクの循環を停止させると共に、第4及び第5開閉弁51,56を閉弁させることで第3インク供給管47及び各インク循環管55を閉じる。さらに、圧力開放弁40を制御して外部からサブタンク25内に小流量で空気を流入させることで、サブタンク25を減圧状態から印刷待機時の標準圧に復帰させる。なお、ステップS140,S150におけるサブタンク25の減圧は、記録ヘッド一個当たりのインク供給流量Qin(=インク循環流量Qout)が、印刷時の値(本例では20(cc/分))のN/M倍になっても、ノズルのインク漏れが発生しないか極めて少ないインク漏れで済むように、記録ヘッド一個当たりのインク供給流量Qinの値に応じて可変の目標負圧値PDに設定されている。
【0132】
この第1クリーニング実施中においては、第4ポンプ50の送り出し流量は印刷中と同じ20N(cc/分)である。この送り出し流量は第4ポンプ50のほぼ能力上限であり、本例では、流量をこれより多くすることはできない。また、本例では、第1クリーニング対象ヘッドの個数Mが「1」であり、1個ずつ順番に記録ヘッド43の第1クリーニングを行う。5本のインク循環管55のうち第1クリーニング対象ヘッドに対応するM本(例えば1本)のインク循環管55が開放され、残り(N−M)本(例えば3本)のインク循環管55は遮断される。このため、M=1の本例では、3本のインク循環管55が遮断されていることから、クリーニング対象の記録ヘッド43に対応する1本のインク循環管55を通ってインクは流量20N(cc/分)で還流される。
【0133】
サブタンク25から第4ポンプ50によって共通管47bへ送り出された流量20N(cc/分)のインクは全て、第1クリーニング対象である1個の記録ヘッド43を通る経路で循環する。印刷時における記録ヘッドN個分の流量20N(cc/分)がすべて一つの記録ヘッド43に流入することで、記録ヘッド43内を流れるインクの流速は速くなる。
【0134】
本例では、図8に示すように、接続管48から記録ヘッド43のインク室82内に流入するインク量は印刷時のN/M倍(例えば4倍)となるため、接続管48から流入してインク循環管55から流出するまでインク室82を流れるインクは、印刷時の流速に比べN/M倍の速い流速で流れることになる。よって、インク室82の上側のコーナーに溜まった気泡やフィルター83に捕捉されていた気泡が、インクのその速い流速によって押し流されて、インク室82から除去される。
【0135】
ここで、記録ヘッド43の一個当たりのインク流量がN/M倍になることで、記録ヘッド43内のインク圧が高くなりノズルからのインク漏れが懸念される。しかし、本実施形態では、第3ポンプ39の駆動によりサブタンク25が減圧されることで、記録ヘッド43内のインク圧も減圧される。このため、記録ヘッド一個当たりのインク流量が大幅に増大したことによるインク室82のインク圧上昇分は、サブタンク25の減圧によるインク減圧分によりほぼ相殺される。この結果、ノズルからインク漏れが発生しないか、仮にインク漏れが発生してもその漏れ量を少なく抑えることができる。
【0136】
また、例えば記録ヘッド一個当たりのインク流量を増大し記録ヘッド内のインクが加圧されるだけの構成であると、その加圧力により気泡が小さく圧縮されてしまいフィルターから気泡が離れにくくなる。これに対し、本例では、インク室82のインクが流量増大分のその加圧を相殺するように減圧されることにより、インク室82のインク中の気泡は減圧がない場合に比べ膨張するので、フィルター83に捕捉された気泡がフィルター83から離れやすくなる。このように記録ヘッド一個当たりのインク流量が増大する第2クリーニングにおいて、インクの減圧を併せて行うことで、ノズルからのインク漏れを防止又は少なく抑えつつ、気泡の除去効果を高めることができる。なお、この第1クリーニングが行われるときには、事前に記録ヘッド43のノズル形成面にキャップを当接するキャッピングが行われ、仮にノズルからインクが漏れても、その漏れたインクはキャップ内に受け止められる。
【0137】
ここで、第1クリーニングにおける減圧制御の目標負圧値PDについて説明する。
第3インク供給管47の流路抵抗Rがインク循環管55の流路抵抗R3よりも大きい(R>R3)ので、クリーニング時においても印刷時と同様に各接続管48の入口箇所でのインク圧Pinがほぼ等しく、このインク圧Pinから接続管48の流路抵抗R2分だけ下降した値が記録ヘッド43内のインク圧Pheadとなる。
【0138】
このとき閉になった開閉弁56と対応する非クリーニング対象の記録ヘッド43内のインク圧Pheadは、接続管48を通じて記録ヘッド43へインクが徐々に流入するに連れて高まり、そのインク圧が入口のインク圧Pinと同じになった時点で接続管48を通るインクの流れが止まる。このため、記録ヘッド43内のインク圧Pheadは、クリーニング開始後しばらくすると入口のインク圧Pinに等しい値に収束する。ここで、入口のインク圧Pinは、サブタンク圧Psub、第4ポンプ50(供給ポンプ)のインク吐出流量Qpump(=Qintotal)、流路抵抗R1を用いて、Pin=Psub−P1loss=Psub−R1・Qpumpで示される。
【0139】
一方、開になった開閉弁56と対応するクリーニング対象の記録ヘッド43のノズル84におけるメニスカスのインク圧Phclは、接続管48を通じて記録ヘッド43へ流入する際のインク供給流量Qinが(N/M)・Qintotal/Nで、接続管48の流路抵抗がR2なので、Phcl=Psub−(N/M)・(P1loss+P2loss−P3loss)+Ph(H)で表される。
【0140】
また、非クリーニング対象の記録ヘッド43のノズル84におけるメニスカスのインク圧Phnclは、Phncl=Psub−P1loss+Ph(H)で表される。
上記の二式から第1クリーニング時のインク圧力Phは、記録ヘッド43の総個数N,クリーニング対象の記録ヘッド43の個数M,液頭差Hが決まれば、サブタンク圧Psubを変化させることで調整できる。そのため、本例では、上記のインク圧Phcl,Phnclを、ノズル84からインクが漏れない程度の値にするように、サブタンク圧Psubの負圧値Pdecを調整している。インクが漏れないときのインク圧をPhtrg2とし、Ph=Phtrg2とするためのサブタンク圧Psubの目標負圧値を、クリーニング対象と非クリーニング対象とでそれぞれPDcl,PDnclとおくと、PDcl,PDnclは、
PDcl=Phtrg2+(N/M)・(P1loss+P2loss−P3loss)−Ph(H)
PDncl=Phtrg2+P1loss−Ph(H)
で表される。そして、上記2式で決まるPDcl,PDnclのうち小さい方を目標負圧値PDに採用する。このため、本実施形態では、第1クリーニングのときは、サブタンク圧Psubを負圧値PDにすることにより、ノズル84からのインク漏れが回避される。
【0141】
次に第2クリーニングについて説明する。クリーニングタイマーが前回のクリーニング終了時点から所定時間を計時し終わったとき、又はユーザー操作によるクリーニングの指示を受け付けたとき、コンピューター61はノズル検査装置に各記録ヘッド43のノズル検査を行わせる。ノズル検査結果からノズル目詰まりがあると判断された記録ヘッド43が存在すると、その記録ヘッド43のみを対象として第2クリーニングを行う。この第2クリーニングを行うときには、コンピューター61は図11に示す第2クリーニング処理ルーチンを実行する。以下、N個の記録ヘッド43のうち第2クリーニングの対象となる記録ヘッド43(以下、第2クリーニング対象ヘッド)がK個あったとして説明する。
【0142】
まずステップS210では、第1、第3及び第5開閉弁30,41,56を閉弁し、第2及び第4開閉弁37,51を開弁する。この結果、サブタンク25とメインタンク15との連通が遮断されると共に、N本のインク循環管55全てが遮断される。また、加減圧装置34においてサブタンク25に対して第2ポンプ36が連通状態かつ第3ポンプ39が非連通の状態となる。
【0143】
ステップS220では、第2ポンプ36(加圧ポンプ)を駆動する。すなわち、コンピューター61は、第2駆動モーター35を駆動させることで第2ポンプ36を駆動する。第2ポンプ36が駆動されることでサブタンク25が加圧される。すなわち、第2ポンプ36によって外部から空気が送り込まれることで空気室25aが加圧され、この空気室25aの加圧力が液面A2に及ぶことでサブタンク25内のインクが加圧される。
【0144】
そして、ステップS230では、サブタンク25の加圧が完了したか否かを判断する。つまり、コンピューター61は、圧力センサー58が検出するサブタンク25内の空気圧Psubが目標加圧値PAに達した(Psub≧PA)か否かを判断する。Psub≧PAが不成立の間はステップS220における第2ポンプ36の駆動を継続し、Psub≧PAが成立するとステップS240に進む。
【0145】
ステップS240では、N個(本例では4個)の第5開閉弁56のうち第2クリーニング対象のK個の記録ヘッド43に対応するK個の第5開閉弁56を開弁する。この結果、サブタンク25の圧力が十分高まった状態でK個の第5開閉弁56が開弁されることで、サブタンク25から加圧インクがK本のインク循環管55を通じてK個の記録ヘッド43へそれぞれ供給される。このとき、第3インク供給管47は閉じられているので、記録ヘッド43のインク室82に加圧インクが一気に供給され、記録ヘッド43のノズルからインクが勢いよく排出される。
【0146】
ステップS250では、第2クリーニング時間を経過したか否かを判断する。コンピューター61は、不図示のタイマーで、K個の第5開閉弁56を開弁して第2クリーニングを開始した時点からの経過時間を計時しており、そのタイマーの計時時間Tが、第2クリーニングの実施時間である第2クリーニング時間T2(以下、「第2CL時間T2」とも記す)に達した(T≧T2)ことをもって、第2CL時間T2が経過したと判断する。第2CL時間T2経過前であれば(T≧T2が不成立であれば)、そのまま第2クリーニングを継続し、第2CL時間T2が経過すると(T≧T2が成立すると)、ステップS260に進む。
【0147】
そして、ステップS260では、K個の第5開閉弁56を閉弁してインク循環管55を閉じることにより第2クリーニングを停止すると共に、加減圧装置34の開閉弁37,41を切り換えて、第3ポンプ39を駆動させてサブタンク25を減圧することにより、サブタンク25を印刷待機時の標準圧まで復帰させる。
【0148】
このように第2クリーニングにおいては、サブタンク25内の空気圧Psubが目標加圧値PAまで高まるのを待ってから第5開閉弁56を開弁するので、無駄なインク消費を減らすことができる。例えば最初に第5開閉弁56を開弁しておき、それから第2ポンプ36を駆動させて加圧を開始する構成とすると、サブタンク25が目標加圧値PAに達するまでの加圧途中の段階で、記録ヘッド43のノズルからインクが少しずつ漏れてしまう。この漏れた分のインクは勢いがなくノズル目詰まりの解消には役立たず、無駄なインクの消費となる。これに対して本実施形態の第2クリーニングでは、サブタンク25を十分加圧してから第5開閉弁56を開弁するので、ノズルから排出されるインクは最初から勢いがありノズル目詰まりの解消に役立つため、無駄なインク消費を抑制できる。
【0149】
また、ノズルクリーニングの方法として、第5開閉弁56を全て閉じた状態で第4ポンプ50を駆動し、サブタンク25から第3インク供給管47を通じて記録ヘッド43へインクを供給することにより、記録ヘッド43のノズルからインクを強制的に排出させる方法も考えられる。しかし、この場合、流路抵抗の大きな接続管48をインクが通る際の圧力損失が大きいため、第2ポンプ36によるサブタンク25の加圧、及び第4ポンプ50の吐出力による上流側での高いインク加圧力を発生させた割に、記録ヘッド43のノズルから排出されるインクの勢いがさほど得られない。これに対して、本実施形態の第2クリーニングでは、流路抵抗の小さなインク循環管55を通じて加圧インクを記録ヘッド43に供給するので、加圧インクがインク循環管55を通る際の圧力損失が小さく、記録ヘッド43のノズルから勢いよくインクを排出させることができる。
【0150】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)第3インク供給管47(供給路)の流路抵抗R(≒R2>R1)と、インク循環管55(循環路)の流路抵抗R3とを、R<R3の関係を満たすように設定した。このため、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことができる。よって、印刷中において、各記録ヘッド43のノズルからのインク漏れを抑えつつ、各記録ヘッド43内のインク圧を許容範囲内に収めて適量のインク滴を噴射できる。
【0151】
(3)第3インク供給管47の共通管47bの流路抵抗R1と、接続管48の流路抵抗R2と、インク循環管55の流路抵抗R3とを、R1<R3<R2の関係を満たすように設定した。よって、各記録ヘッド43に供給されるインク流量を略等しくできるうえ、各記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを小さく抑えつつ各記録ヘッド43内のインク圧を低く保つことができる。また、少なくとも印刷時には、インク循環流量Qoutはインク供給流量Qinに比べ少ないことから、その少ない分だけインク循環管55を小径にしているので、インク循環管55の小型化を図ることができる。
【0152】
(4)記録ヘッド43において、インク圧の変動を±50Pa以内に収めたいという要請からは、接続管48の流路抵抗R2は、インク循環管55の流路抵抗R3の5倍以上にすることが好ましい。よって、R2≧5・R3の関係を満たすことで、どの印刷モードにおいても、記録ヘッド43内のインク圧の変動を±50Pa以内に収めることができるので、記録ヘッド43のノズルからのインク噴射量を安定にすることができる。
【0153】
(5)最大デューティー値Dfull(最大噴射流量)で印刷しているときの記録ヘッド43の最大インク噴射流量Qhmaxよりも多いインク供給流量Qinで記録ヘッド43にインクを供給するようにした(Qin>Qhmax)。よって、最大デューティー値Dfullで印刷しているときでも、記録ヘッド43からインク循環管55へ一旦流出した冷めたインクが再び記録ヘッド43内へ逆流することを防止できる。その結果、記録ヘッド43内のインク温度を適度な値に安定に保つことができ、記録ヘッド43内のインクを噴射に適した低粘度に保持できる。よって、各記録ヘッド43間におけるインクの噴射性能のばらつきを抑え、高い印刷品質を実現できる。
【0154】
(6)接続管48の流路抵抗R2を大きくするために、接続管48を細長く形成しているので、接続管48に第2加熱装置72を設けることにより、第3インク供給管47を流れるインクを効率よく加熱することができる。
【0155】
(9)第1クリーニングにおいては、少なくとも1つの開閉弁を閉じた状態で、第4ポンプを駆動することにより、サブタンク25から記録ヘッド43を経由する循環流路でインクを循環させてクリーニング対象の記録ヘッド43に大きな流量のインクを流すと共に、サブタンク25を減圧するので、記録ヘッド43内のインク中の気泡を効果的に除去することができる。
【0156】
(10)第3ポンプ39によりサブタンク25を減圧することにより、記録ヘッド43内のインク中の気泡が小さくなることを抑制しつつ気泡の除去効果を高められるうえ、記録ヘッド43のノズル84からのインク排出量を少なく抑えることができる。
【0157】
(11)第2クリーニングにおいては、第5開閉弁56を閉弁した状態で第2ポンプ36を駆動し、サブタンク25内のインクが所定圧まで加圧(蓄圧)されるのを待ってから第5開閉弁56を開くので、加圧途中で無駄なインクの排出を抑えつつノズルクリーニングを行うことができる。このとき大きな流路抵抗Rの第3インク供給管47上の第4開閉弁51を閉じ、小さな流路抵抗R3のインク循環管55を経由して加圧インクを記録ヘッド43に送り込む構成なので、サブタンク25から記録ヘッド43へ加圧インクが供給される際の圧力損失が小さく済み、その分、強いノズルクリーニングを行うことができる。さらに、第2クリーニング時に第3インク供給管47内の加熱インクが流れることがほとんどないので、第3インク供給管47内の加熱インクがノズルクリーニングにより排出されてしまう無駄がない。そのため、クリーニング終了後の印刷時には、第3インク供給管47内の低粘度の加熱インクが使用され、良好な印刷を行うことができる。
【0158】
(12)サブタンク用ヒーター33をサブタンク25内のインクに浸漬したので、サブタンク25内のインク全体の平均昇温速度(加熱速度)を高めることができる。
(13)サブタンク25を金属に比べて熱伝導率の低い無機材料で形成したので、サブタンク25内のインクの熱がサブタンク25の壁部を介して放熱し難くすることができる。よって、サブタンク25内のインクの加熱速度を高めることに寄与する。
【0159】
(14)サブタンク25内において第3インク供給管47の上流端側の一部をなす管部47cが、サブタンク25内を底面に沿って横断するように挿入され、その管部47cの流入口47dが、メインタンク15からのインク流入口25dと反対側に位置する。よって、インク流入口25dから流入したばかりでさほど加熱されていないインクが、第3インク供給管47へ送り出されることを回避できる。
【0160】
(15)第1温度センサー32をサブタンク25内のインク中に浸漬したので、サブタンク25内の実際のインク温度が低下してから加熱を開始するまで応答速度を高めることができる。例えばメインタンク15から流入した常温のインクの温度を第1温度センサー32が素早く検出して、速やかにサブタンク用ヒーター33を発熱させることができる。よって、常温のインクが流入中のときでも、概ね第1目標温度に加熱されたインクを第3インク供給管47に供給できる。
【0161】
(16)第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33から適度な所定距離だけ離したので、近づけ過ぎたときに問題になるインクの過加熱による特性変異を招いたり、遠ざけ過ぎたときに問題になる応答性の悪化及びサブタンク25内のインク全体の平均昇温速度の低下を回避できる。特に第1温度センサー32をサブタンク用ヒーター33の中心よりもインク流入口25dと反対側の範囲に配置し、かつメインタンク15からのインク供給停止時の液面A2からサブタンク用ヒーター33までの深さの半分の中心位置を真ん中に挟んでその深さの半分の範囲内(特に前記範囲内において中心位置よりもサブタンク用ヒーター33寄りの位置)に配置した。よって、サブタンク25内に常温インクが流入したときの加熱開始までの応答速度、及びその加熱開始後におけるインク全体の平均昇温速度(サブタンク25内のインク温度分布を平均化した平均温度の上昇速度)をそれぞれ高めることができる。
【0162】
(17)接続管48を熱伝導体74(加熱ブロック)により挟み込んだ状態とし、供給路用ヒーター54の熱が伝導することで全体が供給路用ヒーター54の温度にほぼ等しくなった熱伝導体74により接続管48を加熱する構成とした。よって、ほぼ目標温度に保持された熱伝導体74からの熱伝達により、接続管48内の加熱インクをその温度ばらつきを無くすように加熱することができる。
【0163】
(18)第3温度センサー53を熱伝導体74に設けることで、熱伝導体74の表面温度の検出結果に基づき供給路用ヒーター54を制御する構成とした。そのため、熱伝導体74をほぼ目標温度に保持でき、ほぼ目標温度に保持された熱伝導体74からの熱伝達によって接続管48内の加熱インクをその温度ばらつきを無くすように加熱できる。
【0164】
(19)保温装置73は、ヘッド用ヒーター45の熱を伝導して加熱するヘッドカバー85(加熱部材)をノズル形成面81aの周縁部からヘッド側壁に渡って設けている。よって、ヘッド用ヒーター45の熱は、ヘッドカバー85を介してノズル形成面81aの周縁部に伝わり、記録ヘッド43をその流路の下流端であるノズル84側から目標温度に保温できる。よって、ノズル84やノズル84の直ぐ上流側付近の液体を適度な加熱温度に保温できることから、ノズル84から低粘度のインクを噴射させて、良好な噴射を実現できる。
【0165】
(20)第2温度センサー44をヘッド用ヒーター45に設け、ヘッド用ヒーター45の表面温度の検出結果に基づきヘッド用ヒーター45を制御する構成とした。よって、ヘッド用ヒーター45を目標温度に保持でき、その目標温度に保持されたヘッド用ヒーター45の熱をヘッドカバー85を介してノズル形成面81aの周縁部に伝達できるので、たとえヘッド本体80が樹脂製であっても、ヘッド部81を目標温度に保温できる。その結果、ノズル84やノズル84の直ぐ上流側付近の液体を適度な加熱温度に保温でき、良好なインク滴の噴射を実現できる。
【0166】
(21)ヘッド用ヒーター45の熱を伝熱板86を介してヘッドカバー85に伝えるので、ヘッドカバー85への熱伝達を効率よく行うことができる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0167】
・第2クリーニングは、第3ポンプ39(加圧ポンプ)を駆動して行う方法に限定されない。例えば第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動することにより第2クリーニングを実施することもできる。すなわち、インク循環管55に設けられたN個の第5開閉弁56を閉弁状態とし、第4ポンプ50を駆動する。各記録ヘッド43の下流側のインク循環管55が、閉じられた第5開閉弁56によりインクが流れることを遮断された状態で、第4ポンプ50の駆動によって第3インク供給管47を通じて各記録ヘッド43にインクが送り込まれるので、記録ヘッド43内のインク圧が一気に高まり、そのノズルからインクが勢いよく排出される。
【0168】
・実施形態において、ノズル目詰まりを解消する第2クリーニング(ノズルクリーニング)を行う構成及び方法として、図12に示すものを採用できる。例えば第5開閉弁56を全て閉じた状態で、第4ポンプ50を駆動させることにより、記録ヘッド43のノズルからインクを排出させる構成及び方法を採用できる。この場合、図12に示すように、第3インク供給管47から並列に分岐する各接続管48上にN個の第6開閉弁90を設け、各第6開閉弁90を全て閉じた状態で第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動させることにより、各第6開閉弁90より上流側のインクを蓄圧する。そして、インク圧が十分高まった時点(蓄圧終了時点)でクリーニング対象の記録ヘッド43に対応するM個の第6開閉弁90を選択的に開弁させることでノズルクリーニングは実現される。このように、インク循環管55上に設けた第5開閉弁56と、サブタンク25から各記録ヘッド43へ第3インク供給管47を通じてインクを送り出す第4ポンプ50と、接続管48上の第6開閉弁90とによっても、ノズルクリーニングを実施できる。この場合、第3インク供給管47に蓄えられていた加熱インクが記録ヘッド43に供給されてインクを排出するクリーニングが行われるが、クリーニング終了後には記録ヘッド43内は加熱インクで充填されているので、次の印刷は加熱インクが噴射されて良好に行われる。これに対し、前記実施形態のように、インク循環管55を経由して加圧インクを供給方向とは反対向きに逆流させた場合は、インク循環管55内の冷めたインクが記録ヘッド43内に流入し、その後、記録ヘッド43内のインクが加熱されるまでしばらく印刷を開始することができない。これに対し、この第2クリーニングではインクの流れが供給方向なので、ノズルクリーニング終了後において記録ヘッド43内は加熱インクで充填されているので、温度が安定するまでの比較的短い時間を待つ程度で印刷を開始することができる。
【0169】
・図12におけるN個の第6開閉弁90を開閉選択することで、第1クリーニングを行ってもよい。すなわち、N個の第6開閉弁90のうちクリーニング対象として選択したM個の第6開閉弁90を開弁状態とした後、第4ポンプ50(供給ポンプ)を駆動し、クリーニング対象のM個の記録ヘッド43を経由する循環経路でインクを循環させる。もちろん、図12に示すようにインク循環管55にも第5開閉弁56がある場合は、少なくともクリーニング対象の記録ヘッド43に対応するM個の第5開閉弁56を開弁状態にすることは言うまでもない。このような第1クリーニングを行う場合、閉じた第6開閉弁90により遮断された非クリーニング対象の記録ヘッド43のインク圧Phnclは考慮する必要がないので、サブタンク圧Psubの負圧値PDとしてPhclを設定すればよい。さらに、供給ポンプである第4ポンプ50の配置位置を還流方向へ液体の送り出しが可能な状態でインク循環管55側に移し、第3インク供給管47(供給路)を通る経路をインクを流して第2クリーニングを行う構成も採用できる。この場合、N個の第6開閉弁90を閉じた状態で第3ポンプ39(加圧手段)を駆動してサブタンク25を加圧することで蓄圧状態とし、蓄圧(加圧)完了後、M個の第6開閉弁90を開き、第3インク供給管47(供給路)を通ってインクをM個の記録ヘッド43に送り込むことで第2クリーニングを行う。なお、第1クリーニングと第2クリーニングを共に第6開閉弁90の開閉選択により行う場合は、インク循環管55上の第5開閉弁56を廃止してもよい。
【0170】
・実施形態において、タンクとしてのサブタンク25は、各記録ヘッド43に個別対応する複数備えた構成であってもよい。この場合、インク循環管55の下流端は各サブタンク25にそれぞれ挿入又は接続する。
【0171】
・実施形態において、メインタンクとサブタンクのうち一方のみを採用することで、タンクを1つだけとし、その1つのタンクと記録ヘッド43との間でインクを供給及び循環させる構成としてもよい。また、インクカートリッジをそのままタンクとして使用する構成でもよい。この場合、インクカートリッジをホルダー部に装着すると、インクカートリッジが供給路の上流端及び循環路の下流端と接続されると共に、第2ポンプ36、第3ポンプ39及び圧力開放弁40と繋がる流路の一端部とも接続されるようにすればよい。また、インクカートリッジはケース内にインクが直接貯留されていてもよいし、ケース内にインクパックを収容する構成でもよい。
【0172】
・実施形態において、各インク循環管55の途中に可変絞り弁を1つずつ設け、可変絞り弁の絞り量を調整することにより、各インク循環管55の流路抵抗R3を一斉に又は個別に調整してもよい。例えばデューティー値Dに応じて可変絞り弁の絞り量を調整する制御を行い、記録ヘッド43内のインク圧を適切な値に調整する構成を採用してもよい。
【0173】
・実施形態において、サブタンク25を減圧するときの負圧値を次の方法で取得してもよい。印刷データ(液体噴射処理データ)を解析して単位時間当たりの印刷ドット数を求め、その求めた印刷ドット数の値からインク噴射流量(cc/分)を予測し、その予測したインク噴射流量に応じた負圧値をテーブルデータを参照するなどして取得する。例えば印刷データに基づきその印刷を終えるまでの過程(つまり印刷期間中)における最大インク噴射流量Qhm(cc/分)を求め、この最大インク噴射流量Qhmに一定値Qoを加算してインク供給流量Qin(=Qhm+Qo)を求めてもよい。例えば一定値Qoは、必要なインク循環流量Qout、又はインク循環流量Qout+マージン流量の値とする。この場合、印刷の開始から終了までの間、一定値Qo以上のインクが常に循環路を流れることになる。
【0174】
・さらに、印刷データ(液体噴射処理データ)を解析し、印刷中において現在より10ミリ秒〜10秒の範囲内の所定時間経過後における噴射流量を解析結果に基づき逐次演算して予測し、その時々の噴射流量に応じた負圧値になるようサブタンク25をリアルタイムで減圧制御する構成も採用できる。なお、前記所定時間は、サブタンク25内を負圧値(目標負圧値)にする圧力制御を開始してから実際にサブタンク25内がその負圧値になるまでの所要時間と、このサブタンク25内が目標負圧値になってからノズル内のインクメニスカスの液圧が所望圧になるまでの所要時間との和で表される応答時間に相当する。
【0175】
・実施形態において、インク供給流量Qinを可変としてもよい。例えば、印刷モード(噴射モード)に応じてQhmaxが可変である場合は、Qin>Qhmaxの関係を満たす範囲でQinを可変とする。また、印刷データ(液体噴射処理データ)を解析してインク噴射流量Qhを予測できる場合は、その予測したインク噴射流量Qhに応じてQin>Qhmaxの関係を満たすように、Qinを可変とする構成としてもよい。また、インク循環流量Qoutがなるべく一定となるように、Qin=Qh+Qoutcnst(但し、Qoutcnstは一定値)を満たすインク供給流量Qinでインクを供給する構成も採用できる。この構成によれば、各記録ヘッド43間でインク噴射流量Qhが異なっても、常にインク循環流量Qoutを一定(=Qoutcnst)にできるので、記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきをほぼ解消できる。
【0176】
・実施形態において、流路抵抗の関係を、R3<R1<R2としてもよい。この場合、第3インク供給管47の流路抵抗Rは、接続管48の流路抵抗R2でおおよそ決まるので、R>R3の関係が成り立つことには変わりない。このように各流路抵抗の中でインク循環管55の流路抵抗R3を一番小さくすることで、記録ヘッド43内のインク圧の変動を一層小さくして、記録ヘッド43間でのインク圧のばらつきを一層小さくすることができる。この結果、記録ヘッド43間でのインク滴のサイズ(又は重量)のばらつきを小さくすることができる。
【0177】
・実施形態において、第3インク供給管47を記録ヘッド43毎に1本ずつ設けてもよい。この構成でも、第3インク供給管47の流路抵抗Rとインク循環管55の流路抵抗R3との関係が、R>R3を満たせば、同様の効果を得ることができる。
【0178】
・循環路をもたないプリンターに加熱システムを適用することもできる。この場合、循環系がなく供給系だけとなるが、サブタンク25、第3インク供給管47(供給路)、記録ヘッド43の加熱はできる。
【0179】
・管部47c(管路)は、サブタンク25の底面と略平行に延びるように挿入されていればよい。例えば管路は、サブタンク用ヒーター33の上側をサブタンク25の底面(又は液面)と略平行な状態で延びるように挿入されていてもよい。さらには、管路は、サブタンク25の底面(又は液面)と略平行な方向と交差する方向に延びるように挿入されていてもよい。
【0180】
・加熱ブロックは、板状に限定されず、直方体状、立方体状、円柱状、錘状であってもよく、さらに表面と裏面のうち少なくとも一面に、接続管が内部を通っている部分(接続管の配管経路)に沿って延びる凸条を有する板状ブロックでもよい。また、加熱ブロックにより接続管が被覆されていれば足り、加熱ブロックは、接続管を2つの部材(ブロックとプレート)で挟み込む構造に限定されず、例えば加熱ブロックに形成した貫通孔に接続管を貫通させた構造でもよい。
【0181】
・タンクは液体噴射ヘッドに対して重量方向で下側又は同一高さに配置されてもよい。この場合、液体噴射ヘッド内に必要なインク圧を確保するため、印刷動作(液体噴射動作)中に、タンクを減圧するのではなく、加圧手段により加圧する構成としてもよい。
【0182】
・加熱手段は、タンクと供給路のうち一方に設けただけの構成でもよい。また、液体噴射ヘッドに加熱手段(保温手段)が設けられていなくてもよい。この場合、液体噴射ヘッドの保温性を高めることを目的とし、液体噴射ヘッド内の室や流路を保温性の高い材料で覆うことが望ましい。
【0183】
・本発明を適用するインクジェット式プリンターは、ラインプリンター、シリアルプリンター、ページプリンターのどれであってもよい。
・前記実施形態において、循環路は、特許文献1のように1本の循環復路と複数本の排出路とを備えた構成としてもよい。
【0184】
・前記実施形態において、特許文献1のようにメインタンク(インクタンク)から各液体噴射ヘッドに供給路を通じて液体を供給する構成としてもよい。
・前記実施形態において、遮断手段は、第4開閉弁51のような開閉弁に限定されず、例えば第4ポンプ50であってもよい。例えば第4ポンプ50がギヤポンプのような液体の流れを遮断できるものであれば、第4ポンプ50を遮断手段とすることもできる。この場合、第4開閉弁51は廃止してもよい。
【0185】
・液体の一例であるインクを供給/供給停止する手段(液体供給手段)は、液頭差を利用して供給する方式の場合は、供給路の途中に設けられた開閉弁であってもよい。すなわち、開閉弁を開弁すると液頭差を利用してタンクから液体が液体噴射ヘッドに供給され、開閉弁を閉弁するとタンクから液体噴射ヘッドへの液体の供給が停止される構成である。
【0186】
・記録ヘッド43は、圧電式記録ヘッド、静電式記録ヘッド、サーマル式記録ヘッドでもよい。
・デューティー値Dに応じてサブタンク25の負圧値を可変としたが、負圧値は一定でもよい。
【0187】
・実施形態において、記録ヘッド43を色毎に(1色につき)1個とし、接続管48及び循環管55を色毎に1本ずつとした構成でもよい。さらに複数色分のノズルを有する1個の記録ヘッドに対して色数分の接続管48及び循環管55が接続された構成でもよい。
【0188】
・実施形態において、インク循環管55を無くし、液体をサブタンク25と記録ヘッド43間で循環させない構成も採用できる。この場合、共通管47bの流路抵抗R1と接続管48の流路抵抗R2とを、R1<R2の関係を満たせば(特に5・R1<R2を満たすことが好ましい)、記録ヘッド43間のインク圧のばらつきを小さく抑制できるうえ、第4ポンプ50からのインクの脈動が記録ヘッド43に伝播することを防止できる。
【0189】
・液体としてのインクは、UVインクに限定されず、例えば熱硬化型インクでもよいし、水系又は油系の顔料インクや染料インクでもよい。
・ターゲットは、樹脂フィルムに限定されず、用紙、布、金属フィルムでもよい。
【0190】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【0191】
上記実施形態及び変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記液体噴射ヘッドの液体噴射動作中は、前記タンクから前記供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を前記循環路を通じて前記タンクへ還流させることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【0192】
この発明によれば、液体噴射ヘッドの液体噴射動作中は、タンクから供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を循環路を通じてタンクへ還流させるので、第2加熱手段が供給路の全域を加熱する訳ではなく、一部を加熱するだけの構成であっても、供給路内の液体にその長手方向の位置の違いによる温度分布が発生することを回避できる。よって、第2加熱手段が供給路の一部を加熱するだけの構成であっても、温度の安定した液体を供給路から液体噴射ヘッドへ供給することができる。
【0193】
(ロ)前記管路は、前記タンク用ヒーターの下側又は上側を通る経路で前記タンクの底面と略平行に延びる状態で挿入されていることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【0194】
この発明によれば、管路は、タンク用ヒーターの下側又は上側を通る経路でタンクの底面と略平行に延びるように挿入されているので、管路を流れるときにも液体はタンク用ヒーターの熱により加熱される。よって、液体流入路から流入したばかり加熱前の液体が供給路へ送られることを回避しつつ、温度ばらつきの比較的小さな適度な温度に加熱された液体をタンクから供給路へ供給することができる。
【0195】
(ハ)前記ヘッド本体は樹脂ベースで形成されており、前記ヘッド部の前記ノズル形成面を含む部分は前記ヘッド本体のベース樹脂よりも熱伝導率の高い材料で形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。
【0196】
この発明によれば、ヘッド部のノズル形成面を含む部分はヘッド本体のベース樹脂よりも熱伝導率の高い材料で形成されているので、ヘッド用ヒーターの熱を熱伝導部材を介してヘッド部のノズル形成面の周縁部及び側壁に伝達することで、ヘッド部内のインクを安定な温度に加熱できる。
【0197】
(ニ)前記循環路は、前記N個の液体噴射ヘッドにそれぞれ連通するN本設けられており、前記供給路の流路抵抗Rと前記循環路の流路抵抗R3との関係が、R>R3に設定されていることを特徴とする請求項3乃至8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【0198】
この発明によれば、クリーニング時の流れ方向において液体噴射ヘッドに対して上流側の供給路の流路抵抗Rと下流側の循環路の流路抵抗R3とが、R>R3の関係にあるので、閉とされた開閉弁と対応する液体噴射ヘッド内の液圧についてもなるべく低く抑えることができる。このため、クリーニング対象以外の液体噴射ヘッドから液体が排出されることを回避できるか、又は液体が排出されるにしてもその排出量を少なく抑えることができる。
【符号の説明】
【0199】
11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、13…インクカートリッジ、14…ホルダー部、15…メインタンク、18…第1インク供給管、21…攪拌装置、25…タンクとしてのサブタンク、25d…インク流入口(液体流入部)、26…第1液体供給部、27…第2インク供給管、28…第1駆動モーター、29…第1ポンプ、30…第1開閉弁、31…サブ側残量センサー、32…第1温度検出手段としての第1温度センサー、33…サブタンク用ヒーター、34…加減圧装置、35…加圧手段を構成する第2駆動モーター、36…液体送出手段及び加圧手段を構成する第2ポンプ(加圧ポンプ)、37…第2開閉弁、38…減圧手段を構成する第3駆動モーター、39…減圧手段を構成する第3ポンプ(減圧ポンプ)、40…減圧手段を構成する圧力開放弁、41…第3開閉弁、42…インク噴射ユニット、43…液体噴射ヘッド(液体噴射手段)としての記録ヘッド、44…第3温度検出手段としての第2温度センサー、45…ヘッド用ヒーター、46…第2液体供給部、47…供給路としての第3インク供給管、47b…共通路としての共通管、47c…管部(管路)、48…接続路としての接続管、49…第4駆動モーター、50…液体送出手段を構成するとともに供給ポンプとしての第4ポンプ、51…遮断手段としての第4開閉弁、52…ダンパー、53…第2温度検出手段としての第3温度センサー、54…供給路用ヒーター、55…循環路としてのインク循環管、56…開閉弁としての第5開閉弁、57…搬送手段を構成する搬送モーター、58…圧力センサー、60…制御装置、61…コンピューター、62…ヘッド駆動制御部、63…モーター駆動制御部、64…弁駆動制御部、65…ヒーター駆動制御部、67…CPU、68…ROM、69…RAM、71…第1加熱装置(第1加熱手段)、72…第2加熱装置(第2加熱手段)、73…保温装置(保温手段)、74…熱伝導体、75…熱伝導ブロック、76…熱伝導プレート、80…ヘッド本体、81…ヘッド部、82…インク室、83…フィルター、84…ノズル、85…ヘッドカバー(熱伝導部材)、86…伝熱板(熱伝導部材)、90…第6開閉弁、S1…共通管の流路断面積、S2…接続管の流路断面積、S3…インク循環管の流路断面積、R…流路抵抗、R1…共通路の流路抵抗としての共通管の流路抵抗、R2…接続路の流路抵抗としての接続管の流路抵抗、R3…循環路の流路抵抗としてのインク循環管の流路抵抗、A1,A2…液面、Anozl…インクメニスカス表面高さ、H…液頭差、Qin…インク供給流量(液体供給流量)、Qh…インク噴射流量、Qhmax…最大インク噴射流量(最大液体噴射流量)、Qhm…最大インク噴射流量(最大液体噴射流量)、Qout…インク循環流量(還流流量)、D…デューティー値、Dfull…最大デューティー値、Ph…記録ヘッド内のインク圧力、PA…目標加圧値、PD…目標負圧値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置において、
液体を貯留するタンクと液体噴射ヘッドとを連通する供給路と
前記タンクに設けられると共に第1温度検出手段と該第1温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるタンク用ヒーターとを有する第1加熱手段と、
前記供給路に設けられると共に第2温度検出手段と該第2温度検出手段の検出結果に基づき温度制御される供給路用ヒーターとを有する第2加熱手段と、
前記液体噴射ヘッドに設けられると共に第3温度検出手段と該第3温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるヘッド用ヒーターとを有する第3加熱手段と、を備え、
前記第1加熱手段は、前記タンク用ヒーターを前記タンクに貯留された液体中に浸漬する状態に配置し、
前記第2加熱手段は、前記供給路の被加熱部分を被覆すると共に前記供給路用ヒーターから伝導される熱で加熱される金属製の加熱ブロックを含み、
前記第3加熱手段は、前記液体噴射ヘッドの外壁部に設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記第1温度検出手段は、前記タンク内の液体に浸漬される位置に設けられて液体の温度を検出し、
前記第2温度検出手段は、前記加熱ブロックに設けられて該加熱ブロックの温度を検出し、
前記第3温度検出手段は、前記ヘッド用ヒーターに設けられて該ヘッド用ヒーターの温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記タンクから前記供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を前記タンクへ還流させる循環路を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記タンクには液量の減少が検出されたときに補充される液体が流入する液体流入部が設けられ、
前記タンク内には、前記供給路と連通する管路が、前記タンク内を半分以上横断する長さで挿入されており、前記管路の液体流入口は、前記液体流入部と前記タンク用ヒーターの中心とを結ぶ仮想線と直交しかつ前記中心を通る仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記第1温度検出手段は、前記仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置で液体の温度を検出することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドは複数備えられ、
前記供給路は、前記各液体噴射ヘッドに並列に接続された複数本の接続路を有すると共に、前記複数本の接続路において共通の前記加熱ブロックに被覆されており、
前記複数本の接続路において前記加熱ブロックに被覆された部分は、互いに略平行な状態を保ちつつ蛇行経路を描くように延びていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドは、ノズルが形成されるノズル形成面を有すると共に少なくとも前記ノズル形成面を含む部分が樹脂より熱伝導率の高い材料で形成されたヘッド部を有し、
前記第3加熱手段は、前記ヘッド用ヒーターの熱を伝導する熱伝導部材を有し、前記熱伝導部材は、前記液体噴射ヘッドの前記ヘッド部に対して前記ノズル形成面の周縁部から側壁に渡って設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記第1加熱手段では、前記第1温度検出手段の検出結果に基づき前記タンク内の液体の温度が目標値になるように前記タンク用ヒーターが温度制御され、
前記第2加熱手段では、前記加熱ブロックの表面温度が目標値になるように前記供給路用ヒーターが温度制御され、
前記第3加熱手段では、前記第3温度検出手段の検出結果に基づき前記ヘッド用ヒーターの表面温度が保温用の目標値になるように当該ヘッド用ヒーターが温度制御されることを特徴とする請求項3乃至7のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記液体噴射ヘッドはN(但し、N≧2)個設けられ、
前記循環路に前記液体噴射ヘッド毎に設けられた複数の開閉弁と、
前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプとを更に備え、
前記N個の液体噴射ヘッドのうち少なくとも1つに対してクリーニングを行う場合には、クリーニング対象のM個(但し、M<N)の液体噴射ヘッドと対応するM個の開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記M個の液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させることを特徴とする請求項3乃至8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記循環路に設けられた開閉弁と、
前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプと、
前記タンクを減圧する減圧手段とを更に備え、
前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させると共に、前記減圧手段を駆動して前記タンクを減圧させることを特徴とする請求項3乃至8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記タンクを加圧する加圧手段と、
前記循環路に前記液体噴射ヘッドに対応して設けられた開閉弁と、
前記タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体が流れることを一時的に遮断可能に前記供給路に設けられた遮断手段とを更に備え、
前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記供給路を遮断した状態かつ前記循環路上の開閉弁を閉じた状態で、前記加圧手段を駆動して前記タンク内を加圧状態とした後、前記開閉弁を開くことで前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を排出することを特徴とする請求項3乃至10のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置において、
液体を貯留するタンクと液体噴射ヘッドとを連通する供給路と
前記タンクに設けられると共に第1温度検出手段と該第1温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるタンク用ヒーターとを有する第1加熱手段と、
前記供給路に設けられると共に第2温度検出手段と該第2温度検出手段の検出結果に基づき温度制御される供給路用ヒーターとを有する第2加熱手段と、
前記液体噴射ヘッドに設けられると共に第3温度検出手段と該第3温度検出手段の検出結果に基づき温度制御されるヘッド用ヒーターとを有する第3加熱手段と、を備え、
前記第1加熱手段は、前記タンク用ヒーターを前記タンクに貯留された液体中に浸漬する状態に配置し、
前記第2加熱手段は、前記供給路の被加熱部分を被覆すると共に前記供給路用ヒーターから伝導される熱で加熱される金属製の加熱ブロックを含み、
前記第3加熱手段は、前記液体噴射ヘッドの外壁部に設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記第1温度検出手段は、前記タンク内の液体に浸漬される位置に設けられて液体の温度を検出し、
前記第2温度検出手段は、前記加熱ブロックに設けられて該加熱ブロックの温度を検出し、
前記第3温度検出手段は、前記ヘッド用ヒーターに設けられて該ヘッド用ヒーターの温度を検出することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記タンクから前記供給路を通じて前記液体噴射ヘッドに供給された液体を前記タンクへ還流させる循環路を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記タンクには液量の減少が検出されたときに補充される液体が流入する液体流入部が設けられ、
前記タンク内には、前記供給路と連通する管路が、前記タンク内を半分以上横断する長さで挿入されており、前記管路の液体流入口は、前記液体流入部と前記タンク用ヒーターの中心とを結ぶ仮想線と直交しかつ前記中心を通る仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記第1温度検出手段は、前記仮想面に対して前記液体流入部と反対側となる位置で液体の温度を検出することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドは複数備えられ、
前記供給路は、前記各液体噴射ヘッドに並列に接続された複数本の接続路を有すると共に、前記複数本の接続路において共通の前記加熱ブロックに被覆されており、
前記複数本の接続路において前記加熱ブロックに被覆された部分は、互いに略平行な状態を保ちつつ蛇行経路を描くように延びていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記液体噴射ヘッドは、ノズルが形成されるノズル形成面を有すると共に少なくとも前記ノズル形成面を含む部分が樹脂より熱伝導率の高い材料で形成されたヘッド部を有し、
前記第3加熱手段は、前記ヘッド用ヒーターの熱を伝導する熱伝導部材を有し、前記熱伝導部材は、前記液体噴射ヘッドの前記ヘッド部に対して前記ノズル形成面の周縁部から側壁に渡って設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記第1加熱手段では、前記第1温度検出手段の検出結果に基づき前記タンク内の液体の温度が目標値になるように前記タンク用ヒーターが温度制御され、
前記第2加熱手段では、前記加熱ブロックの表面温度が目標値になるように前記供給路用ヒーターが温度制御され、
前記第3加熱手段では、前記第3温度検出手段の検出結果に基づき前記ヘッド用ヒーターの表面温度が保温用の目標値になるように当該ヘッド用ヒーターが温度制御されることを特徴とする請求項3乃至7のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記液体噴射ヘッドはN(但し、N≧2)個設けられ、
前記循環路に前記液体噴射ヘッド毎に設けられた複数の開閉弁と、
前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプとを更に備え、
前記N個の液体噴射ヘッドのうち少なくとも1つに対してクリーニングを行う場合には、クリーニング対象のM個(但し、M<N)の液体噴射ヘッドと対応するM個の開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記M個の液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させることを特徴とする請求項3乃至8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記循環路に設けられた開閉弁と、
前記供給路に設けられて前記タンクから前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給ポンプと、
前記タンクを減圧する減圧手段とを更に備え、
前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記開閉弁を開にした状態で、前記供給ポンプを駆動することにより、前記液体噴射ヘッドを通る経路で液体を循環させると共に、前記減圧手段を駆動して前記タンクを減圧させることを特徴とする請求項3乃至8のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記タンクを加圧する加圧手段と、
前記循環路に前記液体噴射ヘッドに対応して設けられた開閉弁と、
前記タンクから前記液体噴射ヘッドへ液体が流れることを一時的に遮断可能に前記供給路に設けられた遮断手段とを更に備え、
前記液体噴射ヘッドのクリーニングを行う場合は、前記供給路を遮断した状態かつ前記循環路上の開閉弁を閉じた状態で、前記加圧手段を駆動して前記タンク内を加圧状態とした後、前記開閉弁を開くことで前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を排出することを特徴とする請求項3乃至10のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−51172(P2011−51172A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200907(P2009−200907)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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