説明

液体噴射装置

【課題】液体噴射時のクロストークを防止して噴射特性を一定に揃えることが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】同一単位周期T1における第1駆動信号COM1の第1ミドルドット駆動パルスP1aの収縮部p13の始端と、第2駆動信号COM2の第2ミドルドット駆動パルスP2aの収縮部p13の始端までの時間Δt1が、Tc/2以上、Tc以下に設定される。また、第1スモールドット駆動パルスP1bの予備部の始端と、第2スモールドット駆動パルスP2bの予備部の始端までの時間Δt2はTc以上に設定される。そして、隣り合うノズルのうちの一方に対応する圧電振動子は第1駆動信号COM1によって駆動される一方、他方に対応する圧電振動子は第2駆動信号COM2によって駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置に関し、特に、複数の駆動信号を用いて液体の噴射を制御可能な液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴としてノズルから噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、この他、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターに用いられる色材、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイに用いられる有機材料、電極形成に用いられる電極材等、様々な種類の液体の噴射に液体噴射装置が用いられている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドではインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
上記のプリンターに搭載される記録ヘッドは、インクカートリッジ等のインク供給源からのインクを圧力室に導入し、圧力発生手段を作動させて圧力室内のインクに圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用して圧力室内のインクをノズルからインク滴として噴射するように構成されたものがある。このような記録ヘッドでは、記録画像の画質向上に対応するべく、複数のノズルが高密度(例えば、300dpi以上)に配設されている(例えば、特許文献1参照)。これに伴い、各ノズルにそれぞれ連通する圧力室の配列密度も高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように圧力室が高い密度で形成されている構成では、隣り合う圧力室同士を区画する隔壁は非常に薄くなっている。そのため、例えば、あるノズルからインクを噴射する際に、圧力発生手段の駆動による圧力室内のインクの圧力変動に伴って、隔壁が隣の圧力室側に撓む可能性がある。この点に関し、噴射ノズルの両隣に位置するノズルでもそれぞれ同じタイミングで噴射が行われれば両隣の圧力室の内圧も高まるので、隔壁の撓みは抑えることができる。しかし、両隣のノズルの何れか一方でも噴射が行われない場合では、この非噴射ノズルの圧力室側に隔壁が撓む虞がある。そして、インク滴の噴射時に隔壁が隣の圧力室側に撓んでしまうと、その分、噴射ノズルに対応した圧力室に対して圧力損失が発生し、インク滴の飛翔速度の低下やインク滴量の減少等、インク滴の噴射特性が変化する虞がある。
【0006】
このように、噴射ノズルにおいて、この噴射ノズルの両隣のノズルが同時に駆動される場合と、同時に駆動されない場合とで、圧力室内に発生する圧力変動の状態が異なり、これにより噴射ノズルにおける噴射特性が変動する、所謂クロストークが発生する問題があった。このような構成の液体噴射装置は、近年では、粘度が常温(例えば、25℃)で8mPa・s以上の液体(以下、高粘度液体)を噴射する用途にも用いられる場合がある。紫外線を照射することで硬化する紫外線硬化型インクや液晶等は高粘度液体の一種である。この高粘度液体を噴射する場合、粘度が常温で8mPa・s未満の低粘度の液体を噴射する場合と比較して上記のクロストークが生じやすい傾向にある。
【0007】
なお、このような問題は、インクを噴射する記録ヘッドを搭載したインクジェット式記録装置だけではなく、作動面を変形させることで圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることによりノズルから液体を噴射させる他の液体噴射装置においても同様に存在する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射時のクロストークを防止して噴射特性を一定に揃えることが可能な液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体噴射装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体を噴射する複数のノズル、各ノズルにそれぞれ連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動して液体を噴射させるための駆動パルスを含む複数の駆動信号を所定の周期で発生可能な駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段から発生される駆動信号に含まれる駆動パルスを前記圧力発生手段に対して選択的に印加する制御を行う選択制御手段と、
を備え、
前記駆動信号生成手段は、第1駆動パルスを含む第1駆動信号と、同一周期内で前記第1駆動パルスよりも後に発生する第2駆動パルスを含む第2駆動信号と、を発生し、
前記第1駆動パルスの始端から前記第2駆動パルスの始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる圧力振動の固有振動周期Tc以上に設定され、
前記選択制御手段は、隣り合うノズルのうちの一方に対応する圧力発生手段に対して前記第1駆動パルスを印加し、他方に対応する圧力発生手段に対して前記第2駆動パルスを印加することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、第1駆動パルスの始端から前記第2駆動パルスの始端までの時間が固有振動周期Tc以上に設定され、隣り合うノズルのうちの一方に対応する圧力発生手段に対して第1駆動パルスが印加され、他方に対応する圧力発生手段に対して第2駆動パルスが印加されることで、隣接ノズル間において圧力室の内圧が最も高まるタイミングをずらすことが可能となる。したがって、同一周期で駆動されるノズルの数によらず、常に単独でインクを噴射する状態に近い状態で各ノズルからインクを噴射することになるので、噴射特性がばらつくことが抑制される。その結果、隣接するノズル間におけるクロストークを低減することができる。
【0011】
また、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する複数のノズル、各ノズルにそれぞれ連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動して液体を噴射させるための駆動パルスを含む複数の駆動信号を所定の周期で発生可能な駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段から発生される駆動信号に含まれる駆動パルスを前記圧力発生手段に対して選択的に印加する制御を行う選択制御手段と、
を備え、
前記駆動信号生成手段は、第1駆動パルスを含む第1駆動信号と、同一周期内で前記第1駆動パルスよりも後に発生する第2駆動パルスを含む第2駆動信号と、を発生し、
前記第1駆動パルスおよび前記第2駆動パルスは、それぞれ、前記圧力室を予備的に膨張させる膨張要素と、当該膨張要素によって膨張された圧力室を、前記ノズルから液体を噴射させるべく収縮させる収縮要素と、を有し、
前記第1駆動パルスの前記収縮要素の始端と前記第2駆動パルスの前記収縮要素の始端との時間がTc/2以上、Tc以下に設定され、
前記選択制御手段は、隣り合うノズルのうちの一方に対応する圧力発生手段に対して前記第1駆動パルスを印加し、他方に対応する圧力発生手段に対して前記第2駆動パルスを印加することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、第1駆動パルスの収縮要素の始端と第2駆動パルスの収縮要素の始端との時間がTc/2以上、Tc以下とされることにより、圧力室内の液体の圧力が最も高まるタイミングが互いにずれるので、クロストークが抑制される。また、各ノズルから噴射された液体の着弾対象上における着弾位置が著しくずれることが低減される。さらに、第1駆動パルスの収縮要素の始端と第2駆動パルスの収縮要素の始端との時間がTc以下であることで、駆動信号の繰り返し周期が必要以上に長くなることが低減される。
【0013】
また、本発明は、前記ノズルから噴射される際の液体の粘度が、8mPa・s以上である場合に好適である。
即ち、8mPa・s以上の高粘度液体自体の振動の減衰は、低粘度(8mPa・s未満)の液体を比較して早いので、クロストークをより確実に低減することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明は、各ノズルの形成ピッチが、300dpi以上である場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンターの電気的な構成を説明するブロック図である。
【図2】プリンターの内部構成を説明する斜視図である。
【図3】記録ヘッドの要部断面図である。
【図4】ノズルプレートの構成を説明する平面図である。
【図5】駆動信号の構成を説明する波形図である。
【図6】ミドルドット駆動パルスの構成を説明する波形図である。
【図7】スモールドット駆動パルスの構成を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0017】
図1は、プリンター1の電気的な構成を説明するブロック図である。また、図2は、プリンター1の内部構成を説明する斜視図である。
例示したプリンター1は、記録用紙、樹脂フィルム等の記録媒体9(着弾対象の一種)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。記録媒体9は、液体が噴射されて着弾する対象となる着弾対象の一種である。外部装置としてのコンピューターCPは、プリンター1と通信可能に接続されている。プリンター1に画像を印刷させるため、コンピューターCPは、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信する。
【0018】
本実施形態におけるプリンター1は、搬送機構2、キャリッジ用移動機構3、駆動信号生成回路4(駆動信号生成手段の一種)、ヘッドユニット5、検出器群6、及び、プリンターコントローラー7を有する。搬送機構2は、記録媒体9を搬送方向に搬送させる。キャリッジ用移動機構3は、ヘッドユニット5が取り付けられたキャリッジを所定の移動方向(例えば紙幅方向)に移動させる。駆動信号生成回路4は、プリンターコントローラー7から送られた駆動信号の波形に関する波形データに基づいて、アナログの電圧信号を生成する。また、この電圧信号を電力増幅し、駆動信号COMを生成する。本実施形態において駆動信号生成回路4は、第1駆動信号COM1を生成する第1駆動信号生成部4aおよび第2駆動信号COM2を生成する第2駆動信号生成部4bを有している。これらの駆動信号COM1,COM2は、記録媒体9に対する印刷処理(記録処理或いは噴射処理の一種)を実行する際に記録ヘッド8の圧電振動子32(図3参照)に印加されるものである。駆動信号は、図5に一例を示すように、繰り返し発生周期である単位期間T内に駆動パルスを少なくとも1つ以上含む信号である。ここで、駆動パルスとは、記録ヘッド8から液滴状のインクを噴射させるために、圧電振動子32に所定の動作を行わせるものである。なお、各駆動信号COM1,COM2の詳細については後述する。
【0019】
ヘッドユニット5は、記録ヘッド8およびヘッド制御部11を有する。記録ヘッド8は、液体噴射ヘッドの一種であり、ノズル43からインクを記録媒体9に向けて噴射させて、当該記録媒体9の所定の領域に着弾させてドットを形成する。このドットを複数マトリクス状に並べることで記録媒体9に画像等が記録される。ヘッド制御部11は、プリンターコントローラー7からのヘッド制御信号に基づき、記録ヘッド8を制御する。なお、記録ヘッド8の構成については後で説明する。検出器群6は、プリンター1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。この検出器群6には、後述するリニアエンコーダー20や、記録ヘッド8近傍の温度を検出する温度センサー(図示せず)などが含まれる。
【0020】
搬送機構2は、記録ヘッド8の走査方向に直交する方向(副走査方向)に記録媒体9を搬送させるための機構である。この搬送機構2は、搬送モーター14と、搬送ローラー15と、プラテン16と、を有する。搬送ローラー15は、記録媒体9を印刷可能な領域であるプラテン16上まで搬送するローラーであり、搬送モーター14によって駆動される。プラテン16は、印刷中の記録媒体9を支持する。
【0021】
プリンターコントローラー7は、プリンターの制御を行うための制御ユニットである。プリンターコントローラー7は、インターフェース部24と、CPU25と、メモリー26とを有する。インターフェース部24は、外部装置であるコンピューターCPとプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU25は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー26は、CPU25のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、ROM、NVRAM等の記憶素子を有する。CPU25は、メモリー26に格納されているプログラムに従って、各ユニットを制御する。また、プリンターコントローラー7は、コンピューターCPからの印刷データに基づき、記録媒体9上のどの位置にどのような大きさのドットを形成するかを示すドット形成データSIを生成し、当該ドット形成データSIをヘッド制御部11に送信する。そして、ヘッド制御部11は、プリンターコントローラー7からのドット形成データSIに基づき、駆動信号COM1,COM2に含まれる各駆動パルスを選択して圧電振動子32に印加するための選択データを生成する。したがって、これらのプリンターコントローラー7及びヘッド制御部11は、本発明における選択制御手段として機能する。なお、選択データの詳細については後述する。
【0022】
図2に示すように、キャリッジ12は、主走査方向に架設されたガイドロッド19に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ用移動機構3の作動により、ガイドロッド19に沿って記録媒体9の搬送方向に直交する主走査方向に往復移動するように構成されている。キャリッジ12の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー20によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)がプリンターコントローラー7のCPU25に送信される。リニアエンコーダー20は位置情報出力手段の一種であり、記録ヘッド8の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。これにより、プリンターコントローラー7はこのリニアエンコーダー20からのエンコーダーパルスEPに基づいてキャリッジ12(記録ヘッド8)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド8による記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジ12が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジ12が戻る復動時との双方向で記録紙S上に文字や画像等を記録する。
【0023】
上記リニアエンコーダー20からのエンコーダーパルスEPは、プリンターコントローラー7に入力されている。プリンターコントローラー7は、このエンコーダーパルスEPからタイミングパルスPTS(Print Timing Signal)を生成し、このタイミングパルスPTSに同期させて印刷データの転送や駆動信号COMの発生等を行っている。そして、駆動信号生成回路4は、タイミングパルスPTSに基づくタイミングで駆動信号COMを出力する。また、プリンターコントローラー7は、タイミングパルスPTSに基づいて、ラッチ信号LAT等のタイミング信号を生成して記録ヘッド8に出力する。ラッチ信号LATは、記録周期の開始タイミングを規定する信号である。したがって、駆動信号COMの単位周期は、このラッチ信号LATで区切られる区間である。
【0024】
次に、図3を参照しながら記録ヘッド8の構成について説明する。
記録ヘッド8は、ケース28と、このケース28内に収納される振動子ユニット29と、ケース28の底面(先端面)に接合される流路ユニット30等を備えている。上記のケース28は、例えば、エポキシ系樹脂により作製され、その内部には振動子ユニット29を収納するための収納空部31が形成されている。振動子ユニット29は、圧力発生手段の一種として機能する圧電振動子32と、この圧電振動子32が接合される固定板33と、圧電振動子32に駆動信号等を供給するためのフレキシブルケーブル34とを備えている。圧電振動子32は、圧電体層と電極層とを交互に積層した圧電板を櫛歯状に切り分けることで作製された積層型であって、積層方向(電界方向)に直交する方向に伸縮可能な縦振動モードの圧電振動子である。
【0025】
流路ユニット30は、流路基板36の一方の面にノズルプレート37を、流路基板36の他方の面に振動板38をそれぞれ接合して構成されている。この流路ユニット30には、リザーバー39(共通液体室またはマニホールドとも言う)と、インク供給口40と、圧力室41と、ノズル連通口42と、ノズル43と、が設けられている。そして、インク供給口40から圧力室41及びノズル連通口42を経てノズル43に至る一連のインク流路が、各ノズル43に対応して形成されている。
【0026】
図4は、ノズルプレート37の構成を説明する図であり、(a)はノズルプレート37の平面図、(b)は(a)における領域Zの拡大図である。同図において横方向が、記録ヘッド8が記録媒体9に対して移動する主走査方向(相対移動方向)であり、縦方向が、記録媒体9の搬送方向、即ち、副走査方向である。つまり、主走査方向と副走査方向は互いに直交する方向となる。上記ノズルプレート37は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば360dpiに相当する間隔(約71μm))で複数(例えば、360個)のノズル43が副走査方向に沿って列状に穿設された部材であり、本実施形態では、例えば、ステンレス鋼によって作製されている。また、ノズルプレート37は、シリコン単結晶基板によって作製される場合もある。本実施形態におけるノズルプレート37には、4つのノズル列A〜D(ノズル群の一種)が主走査方向に沿って並べられている。
【0027】
上記振動板38は、支持板45の表面に弾性体膜46を積層した二重構造である。本実施形態では、金属板の一種であるステンレス板を支持板45とし、この支持板45の表面に樹脂フィルムを弾性体膜46としてラミネートした複合板材を用いて振動板38を作製している。この振動板38には、圧力室41の容積を変化させるダイヤフラム部47が設けられている。また、この振動板38には、リザーバー39の一部を封止するコンプライアンス部48が設けられている。
【0028】
上記のダイヤフラム部47は、エッチング加工等によって支持板45を部分的に除去することで作製される。即ち、このダイヤフラム部47は、圧電振動子32の自由端部の先端面が接合される島部49と、この島部49を囲む薄肉弾性部50と、からなる。上記のコンプライアンス部48は、リザーバー39の開口面に対向する領域の支持板45を、ダイヤフラム部47と同様にエッチング加工等によって除去することにより作製され、リザーバー39に貯留された液体の圧力変動を吸収するダンパーとして機能する。
【0029】
そして、上記の島部49には圧電振動子32の先端面が接合されているので、この圧電振動子32の自由端部を伸縮させることで圧力室41の容積を変動させることができる。この容積変動に伴って圧力室41内のインクに圧力変動が生じる。そして、記録ヘッド8は、この圧力変動を利用してノズル43からインク滴を噴射させる。
【0030】
図5は、本実施形態における駆動信号生成回路4によって生成される第1駆動信号COM1および第2駆動信号COM2の構成を説明する波形図である。ここで、駆動信号の繰り返し周期である単位周期Tは、記録ヘッド8が記録媒体9に対して相対的に移動しながらインクの噴射を行う際に、画像の構成単位である画素の幅に対応する距離だけノズル43が移動する時間に相当する。
【0031】
本実施形態における単位周期Tは、2つの期間、具体的には、期間T1および期間T2に区切られている。そして、第1駆動信号COM1は、期間T1で発生される第1ミドルドット駆動パルスP1a(本発明における第1駆動パルスの一種)、および、期間T2で発生される第1スモールドット駆動パルスP1b(本発明における第1駆動パルスの一種。)を含む。同様に、第2駆動信号COM2は、期間T1で発生される第2ミドルドット駆動パルスP2a(本発明における第2駆動パルスの一種)、および、期間T2で発生される第2スモールドット駆動パルスP2b(本発明における第2駆動パルスの一種。)を含む。ミドルドット駆動パルスP1a,P2aは、例えば十数plのインク滴を噴射するための駆動パルスであり、スモールドット駆動パルスP1b,P2bは、例えば数plのインク滴を噴射するための駆動パルスである。ミドルドット駆動パルスは、スモールドット駆動パルスよりも相対的にインク滴の重量が大きくなればよく、ミドルドット駆動パルス、スモールドット駆動パルスは上記インク滴重量に限定されない。期間T1における第2駆動信号COM2の第2ミドルドット駆動パルスP2aは、期間T1における第1駆動信号COM1の第1ミドルドット駆動パルスP1aよりも少し遅れて発生する。同様に、期間T2における第2駆動信号COM2の第2スモールドット駆動パルスP2bは、期間T2における第1駆動信号COM1の第1スモールドット駆動パルスP1bよりも少し遅れて発生する。この点の詳細については後述する。
【0032】
図6は、ミドルドット駆動パルスP1a,P2aの構成を説明する波形図である。
尚、以降の記載から圧力室の容積を「膨張」、「収縮」という表現を用いて説明するが、「膨張」とは、直前に印加された波形要素によって所定の容積になっている圧力室に対して、次の波形要素を印加した際に、当該容積から大きい容積に変化した状態を意味する。また、「収縮」とは、直前に印加された波形要素によって所定の容積になっている圧力室に対して、次の波形要素を印加した際に、当該容積から小さい容積に変化した状態を意味する。また、「ホールド」とは、当該波形要素の中に電位の変化が存在せず、直前の波形要素によって所定の容積になった圧力室の状態を変化させないことを意味する。
【0033】
図6に示すように、ミドルドット駆動パルスP1a,P2aは、予備部p11(本発明における膨張要素の一種)と、ホールド部p12と、収縮部p13と、ホールド部p14(本発明における収縮要素の一種)と、復帰部p15とからなる。予備部p11は、基準電位VB(中間電位)から第1最高電位VH1まで一定勾配で電位がプラス(第1の極性)側に変化する波形要素、換言すれば、基準電位VBよりも高い電位に向けて変化する波形要素であり、ホールド部p12は、予備部p11の終端電位である第1最高電位VH1で一定な波形要素である。また、収縮部p13は、第1最高電位VH1から第1最低電位VL1まで電位がマイナス(第2の極性)側に一定の勾配で変化する波形要素、換言すれば、基準電位VBよりも低い電位に向けて変化する波形要素であり、ホールド部p14は、第1最低電位VL1で一定な波形要素であり、復帰部p15は、第1最低電位VL1から基準電位VBまで電位を復帰させるための波形要素である。
【0034】
上記のように構成されたミドルドット駆動パルスP1a,P2aが圧電振動子32に印加されると、まず、予備部p11によって圧電振動子32が収縮する。この圧電振動子32の収縮に伴って圧力室41が基準電位VBに対応する基準容積から第1最高電位VH1に対応する容積まで膨張する。この膨張により、ノズル43におけるメニスカスが圧力室41側に大きく引き込まれると共に、圧力室41内にはリザーバー39側からインク供給口40を通じてインクが供給される。そして、この圧力室41の膨張状態は、ホールド部p12の供給に伴って維持される。
【0035】
ホールド部p12による膨張状態が維持された後、収縮部p13が圧電振動子32に印加されてこれに応じて圧電振動子32が伸長する。この圧電振動子32の伸長に伴い、膨張している圧力室41は第1最低電位VL1に対応する容積まで急激に収縮される。これにより、圧力室41内のインクが加圧されて、ノズル43メニスカスの中央部分が噴射側に押し出され、この押し出された部分が液柱のように伸びる。続いて、ホールド部p14により、圧力室41の収縮状態が一定時間維持される。この間にメニスカスと液柱とが分離し、分離した部分が、ミドルドットに対応するインク滴としてノズル43から噴射されて記録媒体9に向けて飛翔する。このインクの噴射によって減少した圧力室41内のインク圧力が再び上昇するタイミングにあわせて復帰部p15が圧電振動子32に印加される。この復帰部p15の印加により、圧力室41は膨張することで圧力室41が定常容積まで復帰し、圧力室41内のインクの圧力変動(残留振動)が制振される。
【0036】
図7は、スモールドット駆動パルスP1b,P2bの構成を説明する波形図である。
同図に示すように、スモールドット駆動パルスP1b,P2bは、予備部p21(本発明における膨張要素の一種)と、ホールド部p22(維持要素)と、第1収縮部p23(本発明における収縮要素の一種)と、中間ホールド部p24と、第2収縮部p25と、ホールド部p26と、復帰部p27とからなる。予備部p21は、基準電位VBから第2最高電位VH2まで一定勾配で電位がプラス側に変化する波形要素、換言すれば、基準電位VBよりも高い電位に向けて変化する波形要素であり、ホールド部p22は、予備部p21の終端電位である第2最高電位VH2で一定な波形要素である。また、第1収縮部p23は、第2最高電位VH2から基準電位VBよりも低い電位に設定された中間電位VMまで一定勾配で電位がマイナス側に変化する波形要素、換言すれば、基準電位VBよりも低い電位に向けて変化する波形要素であり、中間ホールド部p24は、中間電位VMで一定な波形要素である。さらに、第2収縮部p25は、中間電位VMから第2最低電位VL2まで電位がマイナス側に一定の勾配で変化(下降)する波形要素であり、ホールド部p26は、第2最低電位VL2で一定な波形要素であり、復帰部p27は、第2最低電位VL2から基準電位VBまで電位が復帰する波形要素である。
【0037】
上記のように構成されたスモールドット駆動パルスP1b,P2bが圧電振動子32に印加されると、まず、予備部p21によって圧電振動子32は収縮する。この収縮に伴って圧力室41が基準電位VBに対応する基準容積から第2最高電位VH2に対応する容積まで膨張する(第1の変化工程)。この膨張により、ノズル43におけるメニスカスが圧力室41側に大きく引き込まれると共に、圧力室41内にはリザーバー39側からインク供給口40を通じてインクが供給される。予備部p21は、第1噴射駆動パルスの予備部p11の勾配よりも急な勾配で電位が変化し、これにより、メニスカスがより急激に引き込まれる。ここで、ノズル内周面から遠い位置にあるメニスカスの中央部は、圧力変化に追従してより高速に移動する一方、中央部よりもノズル内周面に近い部分(境界層)ほどその粘性が影響して圧力変化に追従し難いため、移動速度が中央部よりも遅くなる。これにより、第1噴射駆動パルスの場合では、予備部p11によってメニスカス全体が大きく引き込まれるのに対し、第2噴射駆動パルスの場合では、予備部p21によって主にメニスカス中央部がより大きく引き込まれる傾向となる。このようにすることで、後述する液柱を小さくすることができる。そして、この圧力室41の膨張状態は、ホールド部p22の供給期間に同期して維持される(ホールド工程)。
【0038】
ホールド部p22による膨張状態が維持された後、第1収縮部p23が圧電振動子32に印加されてこれに応じて圧電振動子32が伸長する。この圧電振動子32の伸長に伴い、膨張している圧力室41は中間電位VMに対応する中間容積まで収縮される(第2の変化工程)。これにより、圧力室41内のインクが加圧されて、ノズル43におけるメニスカスの中央部分が噴射側に押し出され、この押し出された部分が液柱のように伸びる。続いて、ホールド部p24が供給され、第2の変化工程によっては変化させられた圧力室の容積が僅かな時間だけ維持される(維持工程)。この維持工程により、圧電振動子32の伸長が一時的に停止される。この間では圧力室41内のインクが加圧されないので、その分、液柱の伸びは抑えられる。これにより、第1の噴射駆動パルスの場合、即ち、途中で止めることなく圧力室41を収縮容積まで一気に収縮させる場合よりも液柱の大きさが小さくなる。
【0039】
ホールド部p24によるホールドの後、第2収縮部p25により圧電振動子32が素早く伸長し、圧力室41は、ホールド部p24によって容積変化が抑えられた状態からさらに収縮するまで加圧される(第3の変化工程)。これにより、メニスカス全体が噴射方向に急激に押し出され、液柱の後端部分が加速される。そして、メニスカスと液柱とが分離し、分離した部分が、スモールドットに対応するインク滴としてノズル43から噴射されて記録媒体9に向けて飛翔する。第2収縮部p25の後、ホールド部p26により、第3の変化工程による圧力室41の収縮状態が一定時間維持される。インクの噴射によって減少した圧力室41内のインク圧力が再び上昇するタイミングにあわせて復帰部p27が圧電振動子32に印加される。この復帰部p27の印加により、圧力室41が予備部p21が印加される直前の容積に復帰するまで膨張する。
【0040】
次に、上記プリンター1において、光硬化型インク等の高粘度のインク(高粘度液体の一種)を噴射するための構成について説明する。
ここで、上記プリンター1では、ノズル43が300dpi以上の高密度で配設されているため、隣り合う圧力室41同士を区画する隔壁が薄くなっている。そのため、例えば、あるタイミングでインクの噴射を行うノズル43(噴射ノズル)において、この噴射ノズルの両隣のノズル43でも同時にインクの噴射を行う場合と、両隣のノズル43でインクの噴射を行わない場合(単独でインクを噴射する場合)とで、圧力室41内に発生する圧力変動の状態が異なり、これにより噴射ノズルにおける噴射特性が変動する虞がある。特に、ノズル43から噴射する際の粘度が常温(例えば、25℃)で8mPa・s以上の高粘度インク、例えば、上述した光硬化型インクを噴射する場合、クロストークがより生じやすい傾向にある。
【0041】
このため、本発明に係るプリンターは、同一単位周期内で各ノズル43からインクを噴射する場合において、隣接するノズル43間で、圧力室41内のインクの圧力が最も高まるタイミングを隣接するノズル43間でずらすことにより、上記のクロストークを抑制している。
【0042】
具体的には、同一単位周期T1における第1駆動信号COM1の第1ミドルドット駆動パルスP1aと第2駆動信号COM2の第2ミドルドット駆動パルスP2aに関し、第1ミドルドット駆動パルスP1aの収縮部p13の始端と、第2ミドルドット駆動パルスP2aの収縮部p13の始端までの時間Δt1に関し、圧力室41内のインクに生じる振動のヘルムホルツ周期(固有振動周期)をTcとして、Tc/2≦Δt1≦Tcに設定されている。なお、上記のTcは、一般的には次式(1)で表すことができる。
Tc=2π√〔(Mn+Ms)/(Mn×Ms×(Cc+Ci))〕…(1)
上記式(1)において、Mnはノズル43におけるイナータンス(単位断面積あたりのインクの質量)、Msはインク供給口40におけるイナータンス、Ccは圧力室41のコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化、柔らかさの度合いを示す。)、Ciはインクのコンプライアンス(Ci=体積V/〔密度ρ×音速c〕)である。
【0043】
本実施形態において、図4(b)に示すように、同一ノズル列を構成する各ノズル43に対して通し番号(例えば、#1〜#360)が仮想的に付されており、例えば、奇数番号のノズル43からのインクの噴射には第1駆動信号COM1が用いられる一方、偶数番号のノズル43からのインクの噴射には第2駆動信号COM2が用いられる。なお、奇数番号のノズルおよび偶数番号のノズルに対する駆動信号COM1,2の対応関係は逆であってもよい。連続する奇数番号と偶数番号のノズル43は隣り合っているので、隣り合うノズル43間では、それぞれ異なる駆動信号によりインクが噴射されることになる。即ち、奇数番号のノズル43からミドルドットに対応するインクを噴射する場合には、第1駆動信号COM1の第1ミドルドット駆動パルスP1aが選択されて、当該奇数番号ノズル43に対応する圧電振動子32に印加され、偶数番号のノズル43からミドルドットに対応するインクを噴射する場合には、第2駆動信号COM2の第2ミドルドット駆動パルスP2aが選択されて、当該偶数番号ノズル43に対応する圧電振動子32に印加される。
【0044】
ここで、圧力室41の内圧は、当該圧力室41に連通するノズル43からインクを噴射すべく上記の収縮部p13が圧電振動子32に印加されて当該圧力室41の容積が収縮されたタイミング(即ち、収縮部p13の終端付近)で最も高まる。このため、隣接するノズル43のうちの一方のノズル43に対して第1ミドルドット駆動パルスP1aを用いてインクを噴射させ、他方のノズル43に対して第2ミドルドット駆動パルスP2aを用いてインクを噴射させることで、圧力室41内のインクの圧力が最も高まるタイミングが互いにずれる。即ち、Tc/2≦t1とすることで、第1ミドルドット駆動パルスP1aの収縮部p13による一方のノズル43における圧力変動のピークが過ぎた後に、第2ミドルドット駆動パルスP2aによって他方のノズル43でのインクの噴射が行われる。このため、同一単位周期Tで駆動されるノズル43の数によらず、常に単独でインクを噴射する状態に近い状態で各ノズル43からインクを噴射することになるので、噴射特性がばらつくことが抑制される。その結果、隣接するノズル間におけるクロストークを低減することができる。また、Δt1をTc以下とすることで、同一ノズル列(つまり、同一色のインクが割り当てられたノズル列)における各ノズル43から噴射されたインクの記録媒体上における着弾位置が著しくずれることが低減される。その結果、記録画像等において着弾位置ずれに起因する画質の低下が抑制される。さらに、Δt1をTc以下とすることで、単位周期Tが必要以上に長くなることが低減される。これにより、印刷処理の速度の低下が防止され、高周波駆動に寄与することが可能となる。
【0045】
また、同一単位周期T1における第1駆動信号COM1の第1スモールドット駆動パルスP1bと第2駆動信号COM2の第2スモールドット駆動パルスP2bに関し、上記のミドルドット駆動パルスP1a,P2aと比べて圧力室41の内圧が最も高まるタイミングが明確でない。このため、第1スモールドット駆動パルスP1bの始端(予備部p21の始端)と、第2スモールドット駆動パルスP2bの始端(予備部p21の始端)までの時間Δt2はTc以上(Δt2≧Tc)に設定される。このように、圧力室41の内圧が最も高まるタイミングが明確でない駆動パルス同士についてはΔt2をTc以上とすれば、隣接ノズル間において圧力室41の内圧が最も高まるタイミングをずらすことが可能となる。加えて、高粘度インク自体の振動の減衰は、低粘度(8mPa・s未満)の液体と比較して早いので、クロストークをより確実に低減することが可能となる。なお、高粘度インクと低粘度インクとでは、同一の流路を前提とした場合、振動の周期は変わらない。しかしながら、同一のタイミングで同じ大きさの圧力を加えた場合に、所定時間経過時における振動の振幅は高粘度インクの方が小さくなる。
【0046】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、本発明における駆動パルスとして、図5および図6に例示したが、駆動パルスの形状や数、或いは駆動信号における各噴射駆動パルスの配置は例示したものに限られない。
また、上記実施形態では、本発明における第1駆動パルスと第2駆動パルスが同一の波形である構成を例示したが、第1駆動パルスと第2駆動パルスの波形が異なる場合においても本発明を適用することができる。この場合においても、第1駆動パルスと第2駆動パルスの波形には、上述したような予備部や収縮部は存在する波形であることを前提にすれば、圧力室内の圧力が最も高まるタイミングが明確であるとき、両パルスの収縮部p13の始端同士の時間Δt1を、Tc/2≦Δt1≦Tcに設定することが望ましい。また、圧力室内の圧力が最も高まるタイミングが明確でないときは、両パルスの予備部の始端同士の時間Δt2をTc以上に設定することが望ましい。
【0048】
さらに、上記実施形態では、圧力発生手段として、所謂縦振動型の圧電振動子32を例示したが、これには限られず、例えば、所謂撓み振動型の圧電素子を採用することも可能である。この場合、上記実施形態で例示した駆動パルスPに関し、電位の変化方向、つまり上下が反転した波形となる。
また、圧力発生手段としては圧電素子には限らず、圧力室内に気泡を発生させる発熱素子や静電気力を利用して圧力室の容積を変動させる静電アクチュエーター等の各種圧力発生手段を用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0049】
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、駆動パルスを用いて液体の噴射を行う液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…プリンター,4…駆動信号生成回路,7…プリンターコントローラー,8…記録ヘッド,11…ヘッド制御部,32…圧電振動子,41…圧力室,43…ノズル,S…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する複数のノズル、各ノズルにそれぞれ連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動して液体を噴射させるための駆動パルスを含む複数の駆動信号を所定の周期で発生可能な駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段から発生される駆動信号に含まれる駆動パルスを前記圧力発生手段に対して選択的に印加する制御を行う選択制御手段と、
を備え、
前記駆動信号生成手段は、第1駆動パルスを含む第1駆動信号と、同一周期内で前記第1駆動パルスよりも後に発生する第2駆動パルスを含む第2駆動信号と、を発生し、
前記第1駆動パルスの始端から前記第2駆動パルスの始端までの時間が、前記圧力室内の液体に生じる圧力振動の固有振動周期Tc以上に設定され、
前記選択制御手段は、隣り合うノズルのうちの一方に対応する圧力発生手段に対して前記第1駆動パルスを印加し、他方に対応する圧力発生手段に対して前記第2駆動パルスを印加することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
液体を噴射する複数のノズル、各ノズルにそれぞれ連通する圧力室、及び、当該圧力室内の液体に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を有し、当該圧力発生手段の駆動によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動して液体を噴射させるための駆動パルスを含む複数の駆動信号を所定の周期で発生可能な駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段から発生される駆動信号に含まれる駆動パルスを前記圧力発生手段に対して選択的に印加する制御を行う選択制御手段と、
を備え、
前記駆動信号生成手段は、第1駆動パルスを含む第1駆動信号と、同一周期内で前記第1駆動パルスよりも後に発生する第2駆動パルスを含む第2駆動信号と、を発生し、
前記第1駆動パルスおよび前記第2駆動パルスは、それぞれ、前記圧力室を予備的に膨張させる膨張要素と、当該膨張要素によって膨張された圧力室を、前記ノズルから液体を噴射させるべく収縮させる収縮要素と、を有し、
前記第1駆動パルスの前記収縮要素の始端と前記第2駆動パルスの前記収縮要素の始端との時間がTc/2以上、Tc以下に設定され、
前記選択制御手段は、隣り合うノズルのうちの一方に対応する圧力発生手段に対して前記第1駆動パルスを印加し、他方に対応する圧力発生手段に対して前記第2駆動パルスを印加することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項3】
前記ノズルから噴射される際の液体の粘度が、8mPa・s以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記各ノズルの形成ピッチが、300dpi以上であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196902(P2012−196902A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62828(P2011−62828)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】