説明

液体噴霧投与装置

【課題】気体圧力によらず、生体内の目的部位に応じた液体投与面積を選択できる液体噴霧投与装置を提供すること。
【解決手段】液体噴霧投与装置1は、薬液11aが充填されている薬液充填部2と、薬液11aを生体12aの目的部位(患部12b)に噴霧する噴霧部3と、印加電圧を発生し、噴霧部3における薬液11aに印加電圧を印加する電圧印加部5と、噴霧部3を噴霧部3の挿入方向に沿って移動させることで、患部12bの形状に応じて噴霧部3の噴霧口31cを体内にて噴霧部3の挿入方向に沿って移動させる噴霧部移動機構7と、から構成され、薬液11aを投与する際、カテーテル移動機構7によって噴霧口31cを移動させることで、患部12bに応じた薬液投与面積を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を含む液体(例えば薬液)を被検体における目的部位に噴霧投与する液体噴霧投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体である例えば患者や動物である生体内の所望する部位に治療用の薬液を含む液体を効率よく投与するために、薬液は、この部位(患部)に極力近い場所から投与されることが望ましいと考えられている。また新薬として開発が進められる例えば核酸医薬なども、体内代謝分解による効能劣化を懸念して、患部に局所的に投与することが好適であると考えられている。このように薬液を、必要な部位に、必要な量を確実に投与することができ、患者に対する副作用を低減させることが望まれている。
【0003】
以下に、特許文献1における薬液投与方法について図8を参照して説明する。
このような薬液投与方法において、例えば微粒子状の薬液である治療薬(以下、微粒子化治療薬)を、体内の標的部位である例えば心臓にデリバリーするカテーテル120、及びカテーテルアセンブリー110が開示されている。デリバリーされる微粒子化治療薬には、例えばエアゾル型と、ドライパウダー型がある。これら2つのタイプは、超音速流を生み出す付勢機構によって微粒子化治療薬を付勢し、微粒子化治療薬を、カテーテル120内の静止状態から標的部位に向けた移動状態へと移行させて、心臓にデリバリーする。なお付勢機構は、例えば加圧ガス、真空、求心力、プランジャー、電位の傾き等を用いて微粒子化治療薬を付勢する。
【0004】
固形物/流体比の高い治療薬はデリバリー管腔を通過し難くなるため、場合により溶媒を使用して実用的な固形物/流体バランスを実現する必要があるが、その場合には使用溶媒が標的部位に対して有害、または治療薬と適合しないといった問題が出てくる。
【0005】
そのため特許文献1では、送達管腔内の通過を容易にした治療薬を標的部位に効率的にデリバリーするためのデリバリー装置及び方法を提供するとしている。
【0006】
デリバリー装置において、付勢機構が電位の傾きを用いる場合、カテーテルアセンブリー110はカテーテル120を有し、カテーテル120は、全長にわたる内腔内と、活性電極を含む近位端130と、対極とノズル180とを含む遠位端135を有していることが開示されている。
【0007】
またカテーテルアセンブリー110は、電気エネルギー源である例えば電池またはパルス発生器を有し、電気エネルギー源に活性電極と対極が接続されている。帯電した治療薬は、活性電極を経てデリバリーされ、活性電極と対極の回路により形成される電位の傾きに沿って移動し、カテーテル120のノズル180を通って標的部位に至る。例えば送達される治療薬がプラスに帯電している場合には、アノードが活性電極となりカソードが対極となって電気回路を完成させ、デリバリーされる治療薬がマイナスに帯電している場合には、カソードが活性電極となりアノードが対極とすることが、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特表2006−527023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1では、加圧ガスや真空やプランジャー等の気体圧力が利用されると、薬液と共に比較的大きな容量の気体も送達することになる。そのため気体の流れによって、薬液は、目的部位(患部)に選択的に送達されず、目的部位の周辺に位置する周辺部位にも浮遊送達されることが懸念される。
【0009】
このため、目的部位において疾病に応じた薬液投与面積が管理されず、目的部位では必要とされる薬液量が少なく、目的部位(患部)以外では、不必要な薬液が付着することによる副作用を誘発しやすい等の問題が想像される。
【0010】
また、肺や消化器官や腹腔等の生体管腔部においては、気体圧力の供給による生体管腔部の膨張や、生体管腔部の呼吸周期乱れ誘発の問題が少なからず考えられる。
【0011】
また付勢機構が電位の傾きを用いる場合、気体による生体管腔部の膨張や呼吸周期乱れ誘発の問題は少ないと考えられるが、特許文献1においては、その明確な図が開示されておらず、構成や作用や効果が不明確である。
【0012】
よって本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、気体圧力によらず、生体内の目的部位に応じた液体投与面積を選択できる液体噴霧投与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は目的を達成するために、体内に挿入され、前記体内の目的部位に液体を噴霧投与する液体噴霧投与装置において、前記液体を充填する液体充填部と、一端にて前記液体充填部と接続し他端にて前記液体を噴霧する噴霧口を有するカテーテルと、電圧を発生し、前記カテーテルの内部の前記液体を介して前記噴霧口における前記液体に前記電圧を印加する電圧印加部と、前記カテーテルを前記カテーテルの挿入方向に沿って移動させることで、前記目的部位の形状に応じて前記噴霧口を前記体内にて前記カテーテルの挿入方向に沿って移動させるカテーテル移動機構と、を具備することを特徴とする液体噴霧投与装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体圧力によらず、生体内の目的部位に応じた液体投与面積を選択できる液体噴霧投与装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る第1の実施形態について図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。
図1に示すように液体噴霧投与装置1は、主要部として、液体(例えば薬液11a)が充填されている液体充填部(以下、薬液充填部)2と、薬液充填部2に充填されている薬液11aを体内(例えば被検体である患者などの生体12a)の所望部位である目的部位(例えば患部12b)に噴霧する噴霧部3と、印加電圧を発生し、噴霧部3における薬液11aに印加電圧を印加する電圧印加部5と、噴霧部3を噴霧部3の挿入方向に沿って移動させることで、患部12bの形状に応じて噴霧部3の噴霧口31cを体内にて噴霧部3の挿入方向に沿って移動させる噴霧部移動機構7と、から構成されている。
【0016】
薬液充填部2には、薬液11aを充填している薬液タンクであるディスポシリンジ21と、ディスポシリンジ21に充填されている薬液11aを噴霧部3のカテーテル31に送液するピストン22が設けられている。ここで、ピストン22は、ディスポシリンジ21の長手軸方向に沿ってカテーテル31側に移動することで、薬液11aをディスポシリンジ21からカテーテル31に送液している。
【0017】
噴霧部3には、一端31aにてディスポシリンジ21と接続し、生体12a内に挿入される他端31bからディスポシリンジ21に充填されている薬液11aを生体12a内の患部12bに噴霧(吐出、放出)させるカテーテル31が設けられている。なお一端31aは、体外(生体12aの外側)に配置される。
【0018】
カテーテル31は、他端31bにて薬液11aを薬液微粒子11bとして患部12bに噴霧する噴霧口31cを有する。カテーテル31は、例えば、非導電性材料の四フッ化樹脂製(テフロン(登録商標)製)で柔軟な可撓性を有し、外径略0.3mm、内径略0.1mm、長さ略2000mmを有する細管である。噴霧口31cの直径は、略0.1mmとなる。カテーテル31は、図1に示すように内視鏡13aの鉗子チャンネル13b内を挿通し、噴霧口31cを患部12bに対向配置させる。その際、噴霧口31cは、カテーテル31が噴霧部移動機構7によってカテーテル31の挿入方向に沿って往復移動することで、患部12bに近づく、または離れる。
【0019】
電圧印加部5には、電圧発生回路41と電極コンタクト部材42と電圧印加電極51が設けられている。
電圧発生回路41は、後述する電池15a等の電源から例えば1kV以上の印加電圧である高電圧を発生し、高電圧を電極コンタクト部材42を介して電圧印加電極51に供給する。電圧発生回路41は、図示しない動作開始スイッチ等によって動作を制御され、高電圧の発生を制御される。また電圧発生回路41は、高電圧の極性を、+側極性、または−側極性のどちらかに選択する。
【0020】
電極コンタクト部材42は、電圧印加電極51における高電圧の印加を集中させるために、印加方向に先細な針形状を有し、例えばステンレス製の電極が好適である。また電極コンタクト部材42は、一般的な電気接触子の金メッキされたコンタクトプローブなどでもよい。
【0021】
また電圧発生回路41からは、液体噴霧投与装置1の外部の生体12aの一部と接触する0V電位となるグランドバンド14aが液体噴霧投与装置1の外部に引き出されている。本実施形態において、この生体12aの一部は、図1に示すように例えば指14bである。これにより生体12a内の患部12bは、グランドとなる。つまり患部12bは、高電圧が印加する部位である例えば後述する噴霧口31cにおける薬液11aとは電位の異なる部位となる。
【0022】
また電圧発生回路41の内部には、高電圧の安全性対策として、図示しない例えば高抵抗回路や過電流検出回路等が組み込まれている。高抵抗回路として、電極コンタクト部材42には、スパークや生体12aへの電撃を防止する保護用の高抵抗が直列に配置されている。また、過電流検出回路は、電圧発生回路41が電圧印加電極51に高電圧を供給した際に流れる電流を検出し、電流値が予め設定された設定値以上になったときに、電圧発生回路41を停止させ、高電圧の発生を停止させる。なお、生体12aへの安全性を加味すると、過電流検出回路における設定値は、約100μA以下、または少なくとも約10μA以下に設定されることが好適である。
【0023】
なお高電圧の安全性対策として上記に限定する必要はなく、例えば電圧発生回路41は、後述する薬液送液機構6と連携し、ディスポシリンジ21内の薬液11aがなくなると(例えばピストン22がカテーテル31側にまで移動すると)、高電圧の発生を停止する。言い換えると電圧発生回路41は、薬液送液機構6が薬液11aを送液中にのみ、高電圧を発生して、高電圧を供給する。
【0024】
なお電圧発生回路41には、電池15a等の電源を高電圧にまで昇圧(発生)する図示しないトランス等が設けられていてもよい。
【0025】
また電圧発生回路41には、予め設定された印加電圧の極性や印加電圧の大きさや印加継続時間の組み合わせ等を格納しているテーブルを記憶する図示しない記憶部が設けられていても良い。印加継続時間とは、例えば電圧印加電極51に高電圧を供給し、電圧印加電極51に対して薬液11aに高電圧を印加させる印加時間である。電圧発生回路41は、電圧印加電極51に高電圧を供給する際、薬液11aの使用用途に応じてテーブルを呼び出し、使用用途に対応する印加電圧の極性や印加電圧の大きさや印加継続時間の少なくとも1つを規定しても良い。
【0026】
また電圧発生回路41には、図示しない外部スイッチと接続している図示しないコントロール端子が内蔵されても良い。例えばダイヤルである外部スイッチが使用者によって操作されることで、電圧発生回路41は、例えば印加電圧の極性と、印加電圧の大きさと、印加電圧の印加継続時間等の少なくとも1つを調節しながら設定し、制御しても良い。
なお電圧発生回路41が印加電圧の大きさを変えると、薬液微粒子11bの径は可変となる。
【0027】
電圧印加電極51は、電圧発生回路41から電極コンタクト部材42を介して供給された高電圧をカテーテル31内の薬液11aに印加する電極である。詳細には、電圧印加電極51は、カテーテル31内の薬液11aを介して噴霧口31cにおける薬液11aに高電圧を印加する。これにより薬液11aは、帯電され且つ霧化状の微粒子(薬液微粒子11b)として噴霧口31cから噴霧される。その際、高電圧が+側極性の場合は、薬液微粒子11bは+側極性に帯電し、高電圧が−側極性の場合は、薬液微粒子11bは−側極性に帯電する。一般に生体12aは0V近傍になっており、また本実施形態ではグランドバンド14aによって生体12aは0Vになっているため、生体12aと噴霧口31cにおける薬液11a(帯電している薬液微粒子11b)は電位が異なる。よって+側極性、又は一側極性に帯電している薬液微粒子11bは、積極的に噴霧口31cにおける薬液11aとは電位の異なる部位である生体12aの患部12bに付着する。
【0028】
電圧印加電極51は、導電性の金属製や導電性樹脂製や導電性膜が形成された樹脂製の円管形状をなし、一端31aと例えば図示しない接着剤等により強固に接合されている。よって電圧印加電極51は、生体12aの外側に配置される。電圧印加電極51の内径はカテーテル31の内径と略同一であり、内径部分には薬液11aが接触する。電圧印加電極51は、カテーテル31内の薬液11aが内径部分に接触することで、薬液11aに高電圧を印加する。
【0029】
電圧印加電極51は、電極コンタクト部材42と着脱自在である。また電圧印加電極51とディスポシリンジ21は、螺合により締結されており、また着脱自在である。つまりディスポシリンジ21とピストン22による構成部材と、カテーテル31と電圧印加電極51による構成部材は、着脱可能であり、ディスポザブル部品として、症例に応じて使用後廃棄される。
【0030】
また液体噴霧投与装置1には、薬液11aをディスポシリンジ21から噴霧口31cに送液する液体送液機構(以下、薬液送液機構)6が設けられている。
薬液送液機構6には、駆動部であるモータ61と、モータ61を制御する制御回路62と、モータ61と接続し、モータ61の回転運動が伝達されるボールネジ63と、ボールネジ63と噛み合い、ピストン22と着脱自在であり、ボールネジ63からモータ61の回転運動を伝達されることで、ボールネジ63に沿って移動し、これによりピストン22をディスポシリンジ21の長手軸方向に沿って移動させる可動部64が設けられている。
【0031】
制御回路62は、モータ61の回転数を制御することでディスポシリンジ21から噴霧口31cに送液される薬液11aの送液量を制御し、モータ61の回転速度を制御することでディスポシリンジ21から噴霧口31cに送液される薬液11aの送液速度を制御する。モータ61は、制御回路62からの指示に基づいて回転し、ボールネジ63を介して可動部64を移動させて、ピストン22をディスポシリンジ21の長手軸方向に沿ってカテーテル31側に移動させる。これにより薬液11aは、ディスポシリンジ21から噴霧口31cに送液される。この送液される薬液11aは、電圧印加電極51によって印加されている。詳細には薬液11aは、ディスポシリンジ21から一端31aに送液され、電圧印加電極51によって印加され、一端31aから噴霧口31cに送液される。
【0032】
なお制御回路62は、ディスポシリンジ21から噴霧口31cまでの予め設定された薬液11aの送液量(モータ61の回転数)や薬液11aの送液速度(モータ61の回転速度)の組み合わせを格納しているテーブルを記憶する図示しない記憶部を有していても良い。制御回路62は、薬液11aを送液する際、薬液11aの使用用途に応じてテーブルを呼び出し、使用用途に対応する送液量や送液速度等の少なくとも1つを規定してもよい。
【0033】
また制御回路62には、図示しない外部スイッチと接続している図示しないコントロール端子が内蔵されても良い。例えばダイヤルである外部スイッチが使用者によって操作されることで、制御回路62は、例えば薬液11aの送液量(モータ61の回転数)や送液速度(モータ61の回転速度)の少なくとも1つを調節しながら設定し、制御しても良い。
なお制御回路62が送液速度を変えると、薬液微粒子11bの径は可変となる。
【0034】
薬液送液機構6と電圧発生回路41には、電池15aから電力が供給される。
【0035】
例えばゴムなどの電気絶縁部であるディスポシリンジ固定枠15cには、薬液11aが充填されたディスポシリンジ21とピストン22と電圧印加電極51とカテーテル31が接続した状態で挿通している。挿通している状態において、電圧印加電極51が電極コンタクト部材42と接続し、ピストン22が可動部64と接続することで、液体噴霧投与装置1が構成される。
【0036】
これら薬液充填部2と電圧印加部5と薬液送液機構6と電池15aとディスポシリンジ固定枠15cは、第1の筐体15bに内蔵されている。
【0037】
なお電圧印加電極51は、ディスポシリンジ固定枠15cの内部にて電極コンタクト部材42と接続するため、電圧印加電極51と電極コンタクト部材42は、ディスポシリンジ固定枠15cと第1の筐体15bによって外部との接触を防止されている。
【0038】
第1の筐体15bには、ピストンが移動する部分において、指等の挟みこみ防止する開閉式の透明な樹脂製のカバー15dが配置されている。
【0039】
またディスポシリンジ21とピストン22とカテーテル31及び電圧印加電極51は、薬液送液機構6である可動部64及び電圧印加部5である電極コンタクト部材42から着脱自在の構成であり、ディスポザブル部品として、症例に応じて使用後廃棄される。
【0040】
そのため上述したようにディスポシリンジ21とピストン22とカテーテル31及び電圧印加電極51が使用後廃棄された際、電圧印加部5と薬液送液機構6と電池15aと第1の筐体15bとディスポシリンジ固定枠15cとカバー15d等は、例えば未使用のディスポシリンジ21とピストン22とカテーテル31及び電圧印加電極51に接続し、リユース部品として再利用可能である。
【0041】
また第1の筐体15bは、第2の筐体15eに載置されている。この第2の筐体15eには、噴霧部移動機構7が内蔵されている。
噴霧部移動機構7は、第1の筐体15bをカテーテル31の挿入方向に沿って移動させることで、カテーテル31をカテーテル31の挿入方向に沿って移動させるカテーテル移動機構7である。このカテーテル移動機構7は、カテーテル31をカテーテル31の挿入方向に沿って移動させることで、患部12bの形状に応じて噴霧口31cを生体12a内でカテーテル31の挿入方向に沿って移動させる。
【0042】
カテーテル移動機構7には、駆動部であるモータ71と、モータ71と接続し、モータ71の回転運動が伝達されるボールネジ73と、ボールネジ73と噛み合い、ボールネジ73からモータ71の回転運動を伝達されることで、ボールネジ73に沿って往復移動し、これにより第1の筐体15bをカテーテル31の挿入方向に沿って往復移動させる可動部74が設けられている。
【0043】
モータ71は、電池15aから電力が供給される。
また制御回路62は、モータ71の回転数を制御することで噴霧口31cの移動距離を制御し、モータ71の回転速度を制御することで噴霧口31cの移動速度を制御する。なお制御回路62は、移動速度の値を一定に設定する。なお移動速度は、一定であればよく、その値は所望であり限定されない。モータ71は、制御回路62からの指示に基づいて回転し、ボールネジ73を介して可動部74を移動させて、第1の筐体15bを一定速度で往復移動させる。これにより噴霧口31cは、生体12a内において、カテーテル31の挿入方向に沿って一定速度で往復移動する。
【0044】
このようにカテーテル移動機構7は、噴霧口31cをカテーテル31の挿入方向に沿って所望する距離(範囲)を往復移動させ、所望する一定の速度で移動させる。なおカテーテル移動機構7が噴霧口31cをカテーテル31の挿入方向に沿って一定速度で移動させている際に、電圧印加部5はカテーテル31内の薬液11aに高電圧を印加する。
【0045】
なお制御回路62は、予め設定された噴霧口31cの移動距離(モータ71の回転数)や移動速度(モータ71の回転速度)の組み合わせを格納しているテーブルを記憶する図示しない記憶部を有していても良い。制御回路62は、薬液11aを送液する際、薬液11aの使用用途に応じてテーブルを呼び出し、使用用途に対応する移動距離や、移動速度の少なくとも1つを規定してもよい。
【0046】
また制御回路62には、図示しない外部スイッチと接続している図示しないコントロール端子が内蔵されても良い。例えばダイヤルである外部スイッチが使用者によって操作されることで、制御回路62は、例えば噴霧口31cの移動距離や移動速度の少なくとも1つを調節しながら設定し、制御しても良い。
【0047】
次に本実施形態における動作方法について説明する。
ディスポシリンジ21は、電圧印加電極51と螺合により締結し、カテーテル31と一体化する。
【0048】
所望する量の薬液11aがディスポシリンジ21に充填され、ピストン22がディスポシリンジ21に配置される。
【0049】
ディスポシリンジ21と電圧印加電極51とカテーテル31は、互いに接続した後、ディスポシリンジ固定枠15c内に挿通され、ピストン22が第1の筐体15b内に配置される可動部64と接続し、電圧印加電極51が電極コンタクト部材42と接続する。またカバー15dが閉じられる。これにより液体噴霧投与装置1が構成される。
【0050】
カテーテル31は、内視鏡13aの鉗子チャンネル13bを挿通し、内視鏡13aに設けられている図示しない観察光学系によって患部12bを観察しながら、噴霧口31cを患部12bに対向するように配置させる。
【0051】
液体噴霧投与装置1は、図示しない動作開始スイッチ等により使用者から動作開始を指示されると、制御回路62にモータ61とモータ71を回転させる。これによりピストン22がディスポシリンジ21の長手軸に沿ってカテーテル31側に移動し、ディスポシリンジ21に充填されている薬液11aをカテーテル31に押し出す。またカテーテル移動機構7が第1の筐体15bを介してカテーテル31をカテーテル31の挿入軸方向に沿って一定速度にて往復移動させ、噴霧口31cをカテーテル31の挿入軸方向に沿って一定速度にて往復移動させる。
【0052】
薬液11aは、カテーテル移動機構7によって一定速度にて往復移動しているディスポシリンジ21からカテーテル移動機構7によって一定速度にて往復移動している噴霧口31cにピストン22によって送液される。その際、電圧発生回路41から発生した高電圧が、電極コンタクト部材42を介して電圧印加電極51に供給される。この高電圧は、電圧印加電極51によってカテーテル31内の薬液11aに印加される。つまりカテーテル31内の薬液11aには、高電圧が印加される。
【0053】
印加された噴霧口31cにおける薬液11aは、図1に示すように往復移動する噴霧口31cから霧化状の帯電した薬液微粒子11bとして噴霧される。
詳細には、噴霧口31cにおける薬液11aは、外部の空気との間に液体と気体における界面を形成している。この界面に電圧が作用すると、界面は薬液11aの表面に働く静電気力によって電気流体力学的に不安定になり、不安定点が発生する。この不安定点から帯電した霧化状態の薬液微粒子11bが噴霧される。また界面に高電圧が作用し、噴霧口31cにおける界面の電界密度が臨界値に達すると、薬液11aの表面から細い液糸が引き出され、さらに液糸が伸縮する。このとき、液糸の先端から薬液11aが、多数の薬液微粒子11bとして、細い液糸から分裂する。さらに、高電圧の値が大きくなると、細い液糸における界面はさらに不安定になり、多数の不安定点が同時に発生する。薬液11aは、これら不安定点から、帯電した完全な霧化状態の薬液微粒子11bとして噴霧口31cから多数噴霧される。
【0054】
なおカテーテル31は非導電性材料の四フッ化樹脂製を有しているため、薬液11aはカテーテル31内に滞留することなく噴霧される。
【0055】
上述したように高電圧が薬液11aに印加された際、噴霧口31cにおける薬液11aと生体12aの間には、電位差が生じる。つまり電圧発生回路41は、高電圧を発生し、高電圧を薬液11aに印加させることで、噴霧口31cにおける薬液11aと生体12aの間に電位差を生じさせる。このとき噴霧口31cから生体12aに向かって図2に示すような電気力線16が形成される。噴霧され、帯電している上述した薬液微粒子11bは、噴霧口31cからこの電気力線16に従って、噴霧口31cにおける薬液11aとは電位の異なる部位であり、電気力線16が形成された範囲内の生体12aに向けて投与される。その際、帯電している薬液微粒子11bは、電位が0Vである生体12aに付着する。つまり薬液11aは、薬液微粒子11bとして噴霧口31cにおける薬液11aとは電位の異なる部位である生体12a内の患部12bにのみ、投与される。
【0056】
詳細には、図1と図2に示すように、薬液微粒子11bは噴霧口31cから円形状に拡大しながら投与され、管腔12cの内周面に付着する。
その際、カテーテル移動機構7が第1の筐体15bをカテーテル31の挿入方向に一定速度にて沿って往復移動させると、噴霧口31cも生体12a内の管腔12cを一定速度にてカテーテル31の挿入方向に沿って往復移動し、患部12bに応じた薬液投与面積が選択される。これにより薬液微粒子11bは、一定速度にて往復移動する噴霧口31cから放出され、選択された薬液投与面積である管腔12cの所望する長さにおける内周面に投与される。
【0057】
この場合、噴霧口31cの移動距離は薬液投与面積に相当し、移動速度は単位面積当りの薬液投与量に相当する。なおカテーテル移動機構7が一定速度で第1の筐体15bを移動させると、噴霧口31cの移動速度も一定になる。これにより、単位面積当りの薬液投与量は均一になる。
【0058】
このように本実施形態は、薬液11aを患部12bに投与する際に、気体圧力によらずカテーテル移動機構7によって噴霧口31cを移動させることで、患部12bに応じた薬液投与面積を選択することができる。
【0059】
また噴霧口31cの移動距離は薬液投与面積に相当する。よって本実施形態は、カテーテル移動機構7によって噴霧口31cの移動距離を可変に構成することで、生体12a内の患部12bの形状に応じて投与面積を選択できる。
また噴霧口31cの移動速度は単位面積当りの薬液投与量に相当する。よって本実施形態は、移動速度をカテーテル移動機構7によって一定に制御することで、患部12bに対して均一に薬液11aを投与することができる。
つまり本実施形態は、疾患など患部12bの形状(大きさ)に合わせて、カテーテル移動機構7の往復移動距離と移動速度を制御することにより薬液投与面積を自由に選択することができる。よって本実施形態は、患部12bの周辺部位には薬液11aを付着させず、副作用を低減した最適な投与形態を実現することができる。
【0060】
また本実施形態は、患部12bに投与する際のカテーテル移動機構7による噴霧口31cの往復移動回数を、1回とは限定せず、設定された移動距離を往復することも可能である。これにより本実施形態は、薬液11aを患部12bに重ね塗りのように重畳投与でき、往復回数によって薬液量を設定できる。
【0061】
なお、早期癌等の疾患を診断するために診断薬が生体12a内に投与されるが、患部12bが認識と診断される際、患部12bと非患部(例えば管腔12c)の検出差を大きくすることが求められる。このため、診断薬は、患部12bに均一性よく(単位面積当りの投与量を等しく)投与されることが望まれる。本実施形態において、薬液微粒子11bは+極性、または−極性に帯電し、薬液微粒子11b同士は生体12aに付着するまで反発するため、互いに融合し結合することはない。また薬液微粒子11bは生体12aに付着後も微小に帯電性を有している。後から投与される薬液微粒子11bは、先に投与され、生体12aに付着している薬液微粒子11bに反発するため、避ける傾向がある。そのため生体12aの表面においては、薬液微粒子11bは比較的単層の状態で付着しやすい。
このため本実施形態は、生体12a内の患部12bに応じた所定の薬液投与面積(範囲)の生体12aの表面にのみ、均一に薬液11aを投与することが可能となり、診断薬などで患部12bのみを検出しやすくすることができる。
【0062】
また本実施形態は、薬液微粒子11bを帯電させているため、選択した薬液投与面積にのみ薬液11aを投与することができる。
【0063】
また本実施形態は、図2に示すように電気力線16が形成された範囲内の生体12aに対して薬液11aを噴霧口31cから円形状に拡大させながら噴霧することができる。よって本実施形態は、カテーテル移動機構7により噴霧口31cをカテーテルの挿入方向に沿って往復移動させることで、管腔12cの所望する範囲の内周面に薬液11aを投与することができる。
【0064】
また本実施形態は、薬液11aをディスポシリンジ21内やカテーテル31内部にて霧化せず、薬液11aを霧化した状態で噴霧口31cまで送気せず、また薬液11aの患部12bへの投与に気体圧力を用いていない。本実施形態は、カテーテル31内に薬液11aを充填し、薬液11aを噴霧口31cにて霧化し、電気力線16に従って患部12bに投与する。よって本実施形態は、薬液11aがカテーテル31内に残留することを防止できるとともに、気体圧力によって薬液11aが拡散して患部12bに投与される量が減少することを防止できる。また、噴霧口31cから薬液11aが垂れて患部12b以外の部位に付着することも防止できる。よって本実施形態は、生体12a内の患部12bに薬液11aを適正量投与することができる。
【0065】
また本実施形態は、薬液11aの導電率が1×10−10(S/m)〜1×10−1(S/m)の範囲内であれば、薬液送液機構6によって制御される薬液11aの送液速度と、電圧印加部5である電圧発生回路41によって制御される印加電圧の大きさの少なくとも一方を変えることによって、薬液微粒子11bの径を可変にすることができる。
例えば本実施形態は、印加電圧を大きくすることで、薬液微粒子11bの径を小さくすることができる。
また例えば本実施形態は、薬液送液機構6によって送液速度を大きくすることで、不安定点が発生する時間を短くすることができる。これにより薬液微粒子11bは完全な霧化状態になる前の状態で噴霧されるため、薬液微粒子11bの径は大きくなる。よって本実施形態は、送液速度を大きくすることで薬液微粒子11bの径を大きくすることができる。また本実施形態は、噴霧口31cの穴径を小さくすることにより、薬液微粒子11bの径を小さくすることができる。
これにより本実施形態は、患部12bにあわせて、最適な薬液微粒子11bの径を選択でき、生体12a内の患部12bに応じた薬液投与面積を選択した状態で、患部12bに最適な径を有する薬液微粒子11bを生体12a内の患部12bに応じた薬液投与面積に投与することができる。
【0066】
本実施形態は、例えば、薬液11aが導電率1×10−6(S/m)を有する蒸留水であり、噴霧口31cの直径が略0.1mm、印加電圧が略+5kV、送液速度が略0.1mL/分の場合、略20μm〜略60μmの径を有する薬液微粒子11bを生体12a内の患部12bに応じた薬液投与面積に投与することができる。
【0067】
また本実施形態は、薬液送液機構6によって送液速度を大きくさせ、電圧印加部5である電圧発生回路41によって印加電圧を大きくさせることで、薬液微粒子11bの径を維持したまま、単位時間当りの薬液11aの投与量を増加させることができる。
【0068】
また例えば薬液微粒子11bが帯電していない場合、薬液微粒子11bには、薬液微粒子11bの表面張力により球状形状を維持しようとする力が働く。この力は、薬液微粒子11bの径が小さいほど強く作用する。そのため薬液微粒子11bが帯電していないと、薬液微粒子11bは生体12aの表面に付着せずに舞い上がるドライフォグ現象が発生しやすい。薬液11aを投与する場合、投与量は正確に管理すべき項目である。そのため本実施形態では、薬液微粒子11bを帯電させている。これにより本実施形態は、薬液微粒子11bを患部12bに積極的に付着させることができるため、生体12a内の患部12bに応じた薬液投与面積に投与でき、さらに患部12bへの薬液11aの投与量を正確に管理することができる。
【0069】
特に、呼吸器系の肺や肺胞などに薬液11aを投与する場合、帯電していない薬液微粒子11bは、呼吸の吐き出しにより、口から排出されやすい。このため、呼吸器療法等で使用されるネブライザーなどには、吸い込み時に合わせて薬液11aを噴霧するなどの呼気と連動した薬液噴霧動作が必要である。しかし本実施形態は、薬液微粒子11bを帯電させているため、呼吸の吐き出しに関わらず、薬液11aを患部12bに応じた薬液投与面積に付着させることができる。また本実施形態は、薬液微粒子11bを帯電させるため、例えば肺における患部12bに噴霧口31cを接近させることで、さらに呼吸の吐き出しに関わらず、薬液11aを患部12bに応じた薬液投与面積に投与させることができる。
【0070】
また本実施形態は、動作開始スイッチ等による電圧発生回路41のON、OFFにより高電圧の発生を制御でき、この高電圧の印加の有無に応じて噴霧を瞬時に開始及び停止することができる。これにより本実施形態は、電圧発生回路41にて任意の印加継続時間を設定し、電圧発生回路41のON、OFFによる印加の有無を制御することで、患部12bに必要な時間だけ薬液微粒子11bを投与することができる。つまり本実施形態は、正確な投与時間管理、言い換えれば投与量の管理をできる。
【0071】
また本実施形態は、グランドバンド14aによって電圧発生回路41と指14bを接触させ、生体12aを0Vの電位とし、噴霧口31cにおける薬液11aと電位の異なる部位としている。これにより本実施形態は、帯電した薬液微粒子11bを確実に患部12bに付着させることができるため、生体12a内の患部12bに選択的に薬液11aをより容易に投与することができる。また本実施形態は、グランドバンド14aによって生体12a自身が帯電した薬液微粒子11bを受け取ることによる+極性側電位、または一極性側電位になることを防止でき、安全性を向上させることができる。
【0072】
また本実施形態は、電圧印加部5である電圧発生回路41によって、印加電圧の極性と、印加電圧の大きさと、印加電圧の印加継続時間の少なくとも1つを制御でき、薬液送液機構6である制御回路62によって薬液11aの送液量と送液速度の少なくとも1つを制御できる。これにより本実施形態は、薬液微粒子11bの噴霧状態を確認しながら、薬液微粒子11bの径や投与量や投与管理時間を所望に変更できる。
【0073】
また図2に示すように、カテーテル31は、他端31b近傍において、噴霧口31cと管腔12c表面の距離を全周に渡ってほぼ等しくするために、カテーテル31の挿入方向における管腔12c内の略中心軸にカテーテル31を支持する支持部材32である例えばバルーン等を有していても良い。
これにより本実施形態は、薬液投与の均一性を向上させることができる。
【0074】
また本実施形態は、図1に示すようにカテーテル31を内視鏡13aの鉗子チャンネル13bに挿通させ、カテーテル31をカテーテル31の挿入方向に沿って進退移動させて観察光学系によって患部12bを観察しながらでも、投与位置を認識しながら薬液を投与することもできる。
【0075】
さらに本実施形態は、観察光学系によって取得した観察画像を画像処理して、投与された薬液を可視化し、一定の画像濃度になるまで、投与や往復移動を繰り返すことを実施しても良い。このとき本実施形態は、薬液自身の波長成分に応じた励起光を照射するなどの観察により、薬液を画像処理にて認識しやすくすることもできる。
【0076】
なお電圧印加電極51は、体外、且つ薬液11aに接触できる場所に配置されていればよく、例えば、一端31a近傍やディスポシリンジ21に配置されてもよい。
【0077】
次に本発明に係る第2の実施形態について図3を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。図3は、本実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。
【0078】
本実施形態においてカテーテル31は、電圧印加電極51内に内装されたOリング53により、カテーテル31の挿入軸方向に対する周方向に移動可能に自由支持され、薬液11aの水密が保持されている。
【0079】
また本実施形態においてカテーテル移動機構7には、駆動部であるモータ81と、モータ81の軸ギヤ82と噛み合う回転ギヤ83が設けられている。
モータ81は、第1の筐体15b内に配置され、電池15aから電力が供給される。軸ギヤ82は、第1の筐体15bの外部に突出している。回転ギヤ83は、第1の筐体15bから延出されるカテーテル31の外周面31eと接合している。回転ギヤ83は、軸ギヤ82からモータ81の回転運動が伝達されことで回転し、カテーテル31をカテーテルの31の挿入方向に対する周方向に移動させる(回転させる)。これにより噴霧口31cもカテーテルの31の挿入方向に対する周方向に移動する。つまりカテーテル移動機構7は、噴霧口31cをカテーテル31の挿入方向を中心に回転させる。
【0080】
制御回路62は、モータ81の回転数を制御することでカテーテル31(噴霧口31c)の回転量を制御し、モータ81の回転速度を制御することでカテーテル31(噴霧口31c)の回転速度を制御する。なお制御回路62は、回転速度値を一定に設定する。なお回転速度は、一定であればよく、その値は所望であり限定されない。モータ81は、制御回路62からの指示に基づいて回転し、軸ギヤ82を介して回転ギヤ83を一定速度で回転させて、カテーテル31を一定速度で回転させる。
【0081】
なお制御回路62は、カテーテル31の回転量(モータ81の回転数)や回転速度(モータ81の回転速度)の組み合わせを格納しているテーブルを記憶する図示しない記憶部を有していても良い。制御回路62は、薬液11aを送液する際、薬液11aの使用用途に応じてテーブルを呼び出し、使用用途に対応する回転量や回転度等の少なくとも1つを規定してもよい。
【0082】
また制御回路62には、図示しない外部スイッチと接続している図示しないコントロール端子が内蔵されても良い。例えばダイヤルである外部スイッチが使用者によって操作されることで、制御回路62は、例えばカテーテル31の回転量(モータ81の回転数)や回転速度(モータ81の回転速度)の少なくとも1つを調節しながら設定し、制御しても良い。
【0083】
本実施形態における動作方法は、第1の実施形態と略同様であるため詳細な説明は省略する。
【0084】
なお上述した第1の実施形態において薬液11aは、噴霧口31cから図2に示すように円形状に拡大しながら噴霧されるが、周(径)方向の噴霧量には、薬液11aと、噴霧口31cの加工精度と、によりバラツキが発生することがある。
【0085】
しかしながら本実施形態において、カテーテル31はモータ81により生体12a内で回転するため、周方向の噴霧量のバラツキが防止され、周方向の投与量が均一化する。
【0086】
これにより本実施形態は、気体圧力によらず、患部12bに応じた薬液投与面積をカテーテル31の周方向にも選択でき、また生体12a内面全体に薬液11aを投与できる。また本実施形態は、患部12bに対して投与量をより均一化でき、患部12bの単位面積当りの投与量をより正確に管理することができる。
【0087】
なお本実施形態において、周方向の噴霧量を均一化するために回転速度は速いことが好適である。また本実施形態においてカテーテル31の1秒間あたりの回転数は、生体12a内での安全性と生体12aの表面への薬液投与量(噴霧口31cの移動速度)の観点から、十数回転/秒が好適である。
【0088】
次に本発明に係る第3の実施形態について図4を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。図4は、本実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。
【0089】
本実施形態においてカテーテル31は、外径略0.1mm、長さ略2mを有する長尺であり、柔軟性のあるPTFE製を有している。
【0090】
また本実施形態においてカテーテル移動機構7は、生体12aの外側、且つ第1の筐体15bの外側にて長尺のカテーテル31を図示しないローラ内に巻き上げる巻き上げ機構である。
【0091】
カテーテル移動機構7は、図示しないモータによってカテーテル31を巻き上げても良いし、手動によって巻き上げでも良い。なおカテーテル移動機構7は、モータを制御する図示しない制御回路を有していてもよい。制御回路は、モータの回転数を制御することでカテーテル31の巻き上げ量を制御し、モータの回転速度を制御することでカテーテル31の巻き上げ速度を制御する。
【0092】
制御回路は、カテーテル31の巻き上げ量(モータの回転数)やカテーテル31の巻き上げ速度(モータの回転速度)の組み合わせを格納しているテーブルを記憶する図示しない記憶部を有していても良い。制御回路は、カテーテル31が巻き上げられる際、薬液11aの使用用途に応じてテーブルを呼び出し、使用用途に対応する巻き上げ量や巻き上げ速度等の少なくとも1つを規定してもよい。
【0093】
また制御回路には、図示しない外部スイッチと接続している図示しないコントロール端子が内蔵されても良い。例えばダイヤルである外部スイッチが使用者によって操作されることで、制御回路は、例えばカテーテル31の巻き上げ量(モータの回転数)やカテーテル31の巻き上げ速度(モータの回転速度)の少なくとも1つを調節しながら設定し、制御しても良い。
【0094】
また巻き上げ量や巻き上げ速度は、手動によって調整されても良い。
【0095】
本実施形態における動作方法は、第1の実施形態と略同様であるため詳細な説明は省略する。
【0096】
これにより本実施形態は、患部12bが長尺の管腔12c全域であっても、気体圧力によらず、管腔12cに応じた薬液投与面積を選択でき、また管腔12cに均一に薬液11aを噴霧投与することができる。
【0097】
またカテーテル31が長尺の管腔12cを移動する際、例えば第1の実施形態では、カテーテル移動機構7によって第1の筐体15bが長距離を移動する必要があり、液体噴霧投与装置1が大型化してしまう。しかしながら本実施形態は、カテーテル移動機構7によってカテーテル31を巻き上げさせて噴霧口31cを移動させ、第1の筐体15bを移動させない。よって本実施形態は、液体噴霧投与装置1を小型にすることができる。
【0098】
また本実施形態は、生体12aへの安全性と薬液11aの投与量の観点から最適な巻き上げ速度を制御回路によって設定することができる。またカテーテル31が柔軟性を有しているため、本実施形態は屈曲した生体12a内の管腔12cにもカテーテル31を容易に進入させ、生体12a内の管腔12cから容易に回収することができる。
【0099】
次に本発明に係る第4の実施形態について図5乃至図8を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。図5は、本実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。図6は、本実施形態における鉗子チャンネルを挿通しているカテーテルの他端の概略図であり、薬液を噴霧する際、鉗子チャンネルの開口部よりも噴霧口が前方に配置される状態を示す図である。図7は、本実施形態における鉗子チャンネルを挿通しているカテーテルの他端の概略図であり、薬液を噴霧する際、鉗子チャンネルの開口部よりも噴霧口が後方に配置される状態を示す図である。なお本実施形態におけるカテーテル移動機構は、第1の実施形態と同様であるため図6において図示を省略している。
【0100】
本実施形態におけるカテーテル31の周辺には、カテーテル31が挿通可能なグランド電極部材となる導電性の金属製又は樹脂製の管が配置されている。グランド電極部材は、例えば本実施形態において内視鏡13aの鉗子チャンネル13bである。また鉗子チャンネル13bは、外部グランドと接地されている。これにより噴霧口31cは、鉗子チャンネル13bを介して外部グランドと接地されている。
【0101】
カテーテル移動機構7は、噴霧口31cをカテーテル31の挿入方向に沿って移動させ、カテーテル31の挿入方向において、噴霧口31cを鉗子チャンネル13bの開口部13cよりも図6に示すように前方、または図7に示すように後方に配置する。このようにカテーテル移動機構7は、カテーテル31の挿入方向における噴霧口31cの配置位置を調整し、噴霧口31cとグランド電極部材である鉗子チャンネル13bの相対的な位置関係を調整する。
【0102】
また本実施形態における電圧発生回路41は、単一電圧を発生し、電極コンタクト部材42を介して単一電圧を電圧印加電極51に供給する。
【0103】
第1の実施形態と同様に薬液11aは印加されると、噴霧口31cから生体12aに向かって電気力線16が形成される。薬液11aは、帯電された薬液微粒子11bとして噴霧口31cからこの電気力線16に従って、電気力線16が形成された範囲内の生体12aに向けて選択的に投与される。
【0104】
その際、図6に示すように噴霧口31cが開口部13cよりも前方に配置されると、噴霧口31cと生体12aの距離が狭まるので、電気力線16が作用する生体12aの範囲は狭まる。つまり生体12a内の患部12bに応じて薬液投与面積が狭く選択され、薬液11aは気体圧力によらず狭い薬液投与面積を有する患部12bに集中的に投与される。
【0105】
また図7に示すように噴霧口31cが開口部13cよりも後方に配置されると、噴霧口31cから鉗子チャンネル13bに向かって、図6に示す電気力線16よりも疎な、すなわち広がった電気力線18が形成される。そのため生体12aには、広がった電気力線18が作用するため、これらが作用する生体12aの範囲は、図6に示す電気力線16が作用する範囲よりも広くなる。
【0106】
この場合、薬液11aは、薬液微粒子11bとして、上記同様に電気力線18に従って生体12a内の患部12bに向かって投与される。また薬液11aは、電気力線18に従って鉗子チャンネル13bの開口部13cの外周稜線方向にも引き付けられながら、生体12a内の患部12bに向かって噴霧される。よって薬液11aは、図6に示す状態に比べて広がりながら噴霧され、気体圧力によらず広い薬液投与面積を有する患部12bに拡散的に投与される。
【0107】
つまり本実施形態は、カテーテル移動機構7によって噴霧口31cと開口部13cの相対的な位置関係を調整することで、気体圧力によらず、患部12bに応じた薬液11aの薬液投与面積を調整することができる。
すなわち本実施形態は、患部12bに対して、集中して薬液11aを噴霧投与、また拡散して薬液11aを噴霧投与することを無段階に調整でき、必要とされる患部12bの薬液投与面積を自在に選択することができる。
【0108】
また例えば、カテーテル31の外径が略0.3mm、開口部13cの直径が略2mmの場合、本実施形態は、カテーテル移動機構7によって噴霧口31cを開口部13cより数mmを後方に配置するだけで、薬液11aを拡散的に噴霧することができる。
【0109】
また本実施形態は、内視鏡13aに設けられている図示しない観察光学系によって患部12bを観察しながらでも、薬液投与面積を無段階に調整することが可能となる。
【0110】
また本実施形態は、カテーテル移動機構7によって噴霧口31cとグランド電極部材である鉗子チャンネル13bの相対的な位置関係を調整したが、これに限定する必要はなく、カテーテル31を観察しながら手動でカテーテル31の挿入方向に移動させる、または第3の実施形態における巻き上げ機構を用いても良い。
【0111】
また本実施形態は、グランド電極部材を、カテーテル31が挿通する管である鉗子チャンネル13bとしたが、薬液投与面積を無段階に調整できるのであればこれに限定する必要はない。
【0112】
なお上述した各実施形態において、カテーテル31は、複数の噴霧口31cを有してもよい。これにより本実施形態は、カテーテル31の挿入方向への薬液11aの投与量を増加させることができる。またカテーテル31は、他端31bにおける外周面31eに少なくとも1つの噴霧口31cを有していてもよい。これにより本実施形態は、カテーテル31の径(周)方向への薬液11aの投与量を増加させることができる。
【0113】
このように本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、第1の実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。
【図2】図2は、薬液が支持部材を有するカテーテルから噴霧される状態を示す図である。
【図3】図3は、第2の実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。
【図4】図4は、第3の実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。
【図5】図5は、第4の実施形態における液体噴霧投与装置の概略図である。
【図6】図6は、第4の実施形態における鉗子チャンネルを挿通しているカテーテルの他端の概略図であり、薬液を噴霧する際、鉗子チャンネルの開口部よりも噴霧口が前方に配置される状態を示す図である。
【図7】図7は、第4の実施形態における鉗子チャンネルを挿通しているカテーテルの他端の概略図であり、薬液を噴霧する際、鉗子チャンネルの開口部よりも噴霧口が後方に配置される状態を示す図である。
【図8】図8は、従来のカテーテルアセンブリーの一実施態様を示す図である。
【符号の説明】
【0115】
1…液体噴霧投与装置、2…薬液充填部、3…噴霧部、5…電圧印加部、6…薬液送液機構、7…噴霧部移動機構(カテーテル移動機構)、11a…薬液、11b…薬液微粒子、12a…生体、12b…患部、12c…管腔、15b…第1の筐体、15e…第2の筐体、16,18…電気力線、21…ディスポシリンジ、22…ピストン、31…カテーテル、31c…噴霧口、32…支持部材、41…電圧発生回路、42…電極コンタクト部材、51…電圧印加電極、61…モータ、62…制御回路、63…ボールネジ、64…可動部、71…モータ、73…ボールネジ、74…可動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入され、前記体内の目的部位に液体を噴霧投与する液体噴霧投与装置において、
前記液体を充填する液体充填部と、
一端にて前記液体充填部と接続し他端にて前記液体を噴霧する噴霧口を有するカテーテルと、
電圧を発生し、前記カテーテルの内部の前記液体を介して前記噴霧口における前記液体に前記電圧を印加する電圧印加部と、
前記カテーテルを前記カテーテルの挿入方向に沿って移動させることで、前記目的部位の形状に応じて前記噴霧口を前記体内にて前記カテーテルの挿入方向に沿って移動させるカテーテル移動機構と、
を具備することを特徴とする液体噴霧投与装置。
【請求項2】
前記液体を前記液体充填部から前記噴霧口に送液する液体送液機構と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の液体噴霧投与装置。
【請求項3】
前記カテーテル移動機構は、前記噴霧口を前記カテーテルの挿入方向に沿って所望する範囲を往復移動させることを特徴とする請求項2に記載の液体噴霧投与装置。
【請求項4】
前記カテーテル移動機構は、前記噴霧口を前記カテーテルの挿入方向に沿って所望する一定速度で移動させることを特徴とする請求項3に記載の液体噴霧投与装置。
【請求項5】
前記カテーテル移動機構は、前記噴霧口を前記カテーテルの挿入方向を中心に回転させることを特徴とする請求項3に記載の液体噴霧投与装置。
【請求項6】
前記カテーテル移動機構が前記噴霧口を前記カテーテルの挿入方向に沿って一定速度で移動させている際に、前記電圧印加部は前記液体に前記電圧を印加することを特徴とする請求項3に記載の液体噴霧投与装置。
【請求項7】
前記カテーテルが挿通可能なグランド電極部材と、を具備し、
前記カテーテル移動機構は、前記噴霧口を前記カテーテルの挿入方向に沿って移動させることで、前記噴霧口と前記グランド電極部材の相対的な位置関係を調整し、前記液体の投与面積を調整することを特徴とする請求項3に記載の液体噴霧投与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−82186(P2009−82186A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252050(P2007−252050)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】