説明

液体噴霧装置

【課題】 液体噴霧装置の設計変更や制御変更等の大がかりな変更無しに、液体噴霧装置で生成する液体微粒子の噴霧流量を任意に制御することが可能な液体噴霧装置を提供する。
【解決手段】 凸部24aと凹部44とから構成されるノズル固定位置調整手段を有することによって、第1ノズル40の固定位置が軸方向で調整でき、第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離が任意の幅に設定可能であることにより、容易に液体噴霧装置1で生成する液体微粒子S2の噴霧流量を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を加熱気化して噴霧する液体噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消臭、消毒等の液体薬剤の微粒子を空気中に放出する液体噴霧装置が知られている(例えば、特許文献1)。この種の液体噴霧装置を図13に示す。液体噴霧装置80は、二流体噴霧装置と称されるもので、気化液(水等の気化可能な液体)を収容した第1タンク(図示しない)と、第1タンク内に一端を差し込まれた気化液管路81と、気化液管路81の他端が入口に接続された気化器82と、気化器の出口に接続された第1ノズル83と、噴霧液(消臭、消毒等の液体薬剤)を収容した第2タンク(図示しない)と、第2タンク内に一端を差し込まれた噴霧液管路84と、噴霧液管路84の他端に接続された第2ノズル85と、両ノズルを直交向きで保持するノズルホルダ86と、から構成されている。
【0003】
この液体噴霧装置80は、以下のようにして噴霧液の噴霧を行う。即ち、ポンプ(図示しない)を作動させて第1タンク内の気化液を加熱状態にある気化器82内の多孔質素子に送り込むと、該気化液が加熱気化してその蒸気が第1ノズル83の先端から噴出される。また、該噴出蒸気によって第2タンク内の噴霧液が第2ノズル85の先端に吸い上げられ、更に吸い上げられた噴霧液が第1ノズル83の先端から噴出した噴出蒸気と衝突して微粒子を生成し、この微粒子が前方へと噴霧される。
【特許文献1】特開平7−60166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した液体噴霧装置80において、生成された微粒子の噴霧流量を変えるためには、液体噴霧装置80を解体して第1ノズル83又は第2ノズル85を交換する方法、ポンプを交換してポンプ圧力を変更する方法、制御システムを変更する方法等が挙げられるが、いずれも液体噴霧装置80全体の設計変更を必要とするので、設置コストが上昇してしまう。したがって、液体噴霧装置80では容易に噴霧流量を調整できないという問題点を有している。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体噴霧装置の設計変更や制御変更等の大がかりな変更無しに、液体噴霧装置で生成する液体微粒子の噴霧流量を任意に制御することが可能な液体噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の液体噴霧装置は、気化器に固定され、該気化器で生成された蒸気が噴出される第1ノズルと、消臭液、消毒液等の液体が導出される第2ノズルとを有し、該各ノズルの先端を所定間隔をおいて近接配置し、該第1ノズルの蒸気噴出圧力により該第2ノズルから液体を導出し、且つ霧化噴霧する液体噴霧装置において、前記第1ノズルを軸方向に移動可能で且つ軸方向の複数箇所で固定可能なノズル固定位置調整手段を有する構成となっている。
【0007】
請求項1の発明によれば、第1ノズルから噴出した蒸気と、第2ノズルの先端に導出された液体とを衝突させることにより、液体微粒子を生成する液体噴霧装置が、第1ノズルを軸方向に移動可能で且つ軸方向の複数箇所で固定可能なノズル固定位置調整手段を有するので、第1ノズルの位置を軸方向で調整することが可能である。これにより、第1ノズルの先端と第2ノズルの先端との距離が任意の幅に設定され、第1ノズルの先端と第2ノズルの先端との距離に応じて第2ノズルの先端側の圧力が変化する。これにより、第2ノズルの先端に吸い上げられる第2液体の量が変化する。
【0008】
尚、請求項1に記載の液体噴霧装置において、前記ノズル固定位置調整手段は、前記気化器に設けられ前記第1ノズルが軸方向に移動可能に嵌め込まれる蒸気導出口を有するとともに、該第1ノズルの外面又は該蒸気導出口の内面の一方には凸部を、他方には該凸部が係脱自在に係合する凹部をそれぞれ有し、該凸部又は該凹部の少なくとも一方は該第1ノズルの嵌め込み方向に間隔をおいて複数有していても良い(請求項2)。
【0009】
また、請求項2記載の液体噴霧装置において、前記ノズル固定位置調整手段は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとを保持するノズルホルダに設けられ前記第1ノズルが軸方向に移動可能に嵌め込まれるノズル挿入口を有するとともに、該第1ノズルの外面又は該ノズル挿入口の内面の一方には凸部を、他方には該凸部が係脱自在に係合する凹部をそれぞれ有し、該凸部又は該凹部の少なくとも一方は該第1ノズルの嵌め込み方向に間隔をおいて複数有していても良い(請求項3)。
【0010】
また、請求項2又は請求項3記載の液体噴霧装置において、前記凸部及び前記凹部を環状に形成しても良い(請求項4)。
【0011】
また、請求項2又は請求項3記載の液体噴霧装置において、前記凸部を一部に形成し、前記凹部を環状又は一部に形成しても良い(請求項5)。
【0012】
また、請求項2乃至請求項5の何れか一項に記載の液体噴霧装置において、前記凹部を複数有し、隣接する該凹部を連通させて形成された誘導溝を有していても良い(請求項6)。
【0013】
また、請求項1記載の液体噴霧装置において、前記ノズル固定位置調整手段は、前記気化器に設けられ前記第1ノズルが軸方向に移動可能に嵌め込まれる蒸気導出口を有するとともに、該第1ノズルの外面又は該蒸気導出口の内面の一方には第1ノズルの嵌め込み方向に螺旋状に形成した凸部を、他方には該凸部が螺合自在に嵌合する凹部をそれぞれ有していても良い(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体噴霧装置によれば、第1ノズルを軸方向に移動可能で且つ軸方向の複数箇所で固定可能なノズル固定位置調整手段を有することによって、第1ノズルの固定位置が軸方向で調整され、第1ノズルの先端と第2ノズルの先端との距離が任意の幅に設定可能であることにより、容易に液体噴霧装置で生成する液体微粒子の噴霧流量を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1乃至図8は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は本発明の第1実施形態に係る液体噴霧装置の全体概略図、図2は本発明の第1実施形態に係る気化器及び第1ノズルを示す概略断面図、図3は本発明の第1実施形態に係る第1ノズルを示す斜視図、図4は本発明の第1実施形態に係る第1ノズルのA−A’方向の概略断面図、図5は本発明の第1実施形態に係る第1ノズルのB−B’方向の概略断面図、図6は第1実施形態の実験例に係る噴霧流量を示すグラフ、図7は第1実施形態に係る第1ノズルの他の一例を示す斜視図、図8は第1実施形態に係る第1ノズルの他の一例を示す斜視図を示す。
【0016】
まず、液体噴霧装置の全体構造を図1を参照して説明する。本発明の液体噴霧装置1は、図1に示すように、水等の気化液11を貯蔵した気化液タンク10(第1タンク)と、気化液タンク10内に一端を差し込まれた第1管路12と、第1管路12に介装されたポンプ13と、第1管路12の他端にその入口を接続された気化器20と、気化器20の出口に接続及び連通し、小径の金属管である第1ノズル40と、消臭液、消毒液等の噴霧液31を貯蔵した噴霧液タンク30(第2タンク)と、噴霧液タンク30内に一端を差し込まれた第2管路32と、第2管路32の他端に接続及び連通し、小径の金属管である第2ノズル33と、から構成されている。この第2ノズル33は、第2管路32の他端に確実に固定されている。また、両ノズル40,33は共に、ノズルホルダ34によって直交向きに保持されている。
【0017】
気化液タンク10に貯蔵された気化液11は、図1の矢印に示すように、ポンプ13の作動で気化液タンク10から第1管路12を通じて吸い上げが可能である。ポンプ13の吐出側は第1管路12を通して気化器20に接続され、ポンプ13の作動で気化液11を汲み上げて気化器20に給送するようになっている。
【0018】
気化器20は、図2に示すように、金属製のハウジング21と、ハウジング21の内部である気化室22と、気化液11の導入口23と、気化液11の蒸気導出口24とから主に構成されている。導入口23には、第1管路12の他端が接続されている。また、気化室22内には金属焼結体等を利用した気化素子25が充填され、第1管路12から気化室22内に導入された気化液11の気化を促進するようになっている。また、ハウジング21には、パネル状のヒータ26が組み込まれ、このヒータ26への通電で気化室22内の気化液11を加熱する。また、ハウジング21の好適部位には、例えばサーミスタ等による温度センサ27が配置され、気化室22内の温度が加熱により気化液11の気化が瞬時に可能な設定温度T℃になるように制御されている。さらに、気化室22に設けられた蒸気導出口24の内面には、第1ノズル40が軸方向に移動可能に嵌め込まれている。なお、蒸気導出口24は、エンジニアリング樹脂で構成されているので、第1ノズル40の形状に沿うことができる。
【0019】
第1ノズル40は、図2及び図3に示すように、貫通孔41を円心に有する中空円筒状の形状をしている。また、第1ノズル40の後端部43は、気化室22の蒸気導出口24に接続及び連通されている。さらに、第1ノズル40の前端部42は、蒸気導出口24に軸方向に移動できるように嵌め込まれている。
【0020】
また、液体噴霧装置1に備えられた噴霧液タンク30には、図1に示すように、噴霧液31が貯蔵されている。この噴霧液31は、第1ノズル40の蒸気噴出圧力により第2管路32を通して第2ノズル33の先端に導出される。
【0021】
上記のように構成された液体噴霧装置1は二流体噴霧装置と称されるもので、以下のようにして噴霧液31の噴霧が行われる。即ち、ポンプ13を作動させて気化液タンク10内の気化液11を加熱状態にある気化器20内の気化素子25に送り込むと、気化液11が加熱気化してその蒸気S1が第1ノズル40の先端から噴出される。
【0022】
このとき、第1ノズル40の先端から噴出された蒸気S1によって、第2ノズル33の先端周辺に負圧が生じ、この負圧を利用して噴霧液タンク30内の噴霧液31が第2ノズル33の先端に吸い上げられる。そして、吸い上げられた噴霧液31と蒸気S1とが衝突して霧化され、液体微粒子S2を生成し、この液体微粒子S2が前方へと吹き出される。
【0023】
以上のような液体噴霧装置1において、本実施形態の特徴的構成となるノズル固定位置調整手段の構造について、主に図2乃至図5を参照して、さらに詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の液体噴霧装置1は、第1ノズル40を軸方向(図2に示す白抜き矢印の方向)に移動可能で且つ軸方向の複数箇所(本実施形態では3箇所)で固定可能なノズル固定位置調整手段を有する。このノズル固定位置調整手段は、図2及び図3に示す第1ノズル40の軸方向に間隔をおいて配置された凹部44と、図4及び図5に示す気化器20の蒸気導出口24の内面に設けられ、凹部44が係脱自在に係合する凸部24aとから構成されている。
【0025】
凹部44は、図2及び図3に示すように、環状に形成され、第1ノズル40の前端部42と後端部43との間の外面に、軸方向に等間隔で配置している。また、環状の凹部44を配することにより露出した軸部45は金属で構成され、貫通孔41を完全に被覆しているので、気化液11の蒸気S1の漏れを防止している。
【0026】
凸部24aは、図4及び図5に示すように、蒸気導出口24の内面に設けられ、複数の凹部44のうち一箇所に係脱自在に係合するようになっている。
【0027】
以上のように構成された第1ノズル40を軸方向に移動させる際の作用について説明する。まず、蒸気導出口24に第1ノズル40を挿入し、図2に示す白抜き矢印の軸方向に、即ち蒸気導出口24に向かうように、又は遠ざかるように第1ノズル40を移動させる。第1ノズル40を移動させることによって、凹部44と凸部24aとが段階的に係合する。これにより、第1ノズル40の固定位置が段階的に調節され、図1に示す第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離Lxを任意の幅に設定することが可能である。
【0028】
そして、第1ノズル40の固定位置が調節された後、気化器20で生成した蒸気S1が蒸気導出口24から第1ノズル40の先端部42に向い、第1ノズル40の先端部42から蒸気S1が噴出される。
【0029】
このとき、図1に示す第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離Lxに応じて、第2ノズル33の先端側の圧力が変化する。これにより、第2ノズル33の先端に導出される噴霧液31の量が変化し、液体噴霧装置1において生成する液体微粒子S2の噴霧流量を任意に制御することができる。
【0030】
ここで、第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離Lxに対する液体微粒子S2の噴霧流量を比較した一例を図6に示す。尚、この実施例に用いた第1ノズル40の直径d1は1.5mm、第1ノズル40の貫通孔41の内径d2は0.5mm又は0.6mm、軸部45の幅aは0.2mm、ノズル固定位置調整手段の幅bは0.8mm、凹部44の深さcは0.2mmにそれぞれ設定されている。
【0031】
図6に示すように、第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離Lxが狭くなるほど、第2ノズル33の先端に吸い上げられる噴霧液31の量が多くなるので、生成される液体微粒子S2の噴霧流量が増加することが分かった。また、第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離Lxが広くなるほど、第2ノズル33の先端に吸い上げられる噴霧液31の量が少なくなるので、生成される液体微粒子S2の噴霧流量が減少することが分かった。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る液体噴霧装置1によれば、凸部24aと凹部44とから構成されるノズル固定位置調整手段を有することによって、第1ノズル40の固定位置が軸方向で調整でき、第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離が任意の幅に設定可能である。これにより、容易に液体噴霧装置1で生成する液体微粒子S2の噴霧流量を制御することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る液体噴霧装置1によれば、凹部44と凸部24aとが係合することにより、第1ノズル40の先端から蒸気S1が噴出する際において、第1ノズル40と蒸気導出口24との固定位置がずれることを防止できる。
【0034】
尚、本実施形態は、第1ノズル40の外面に環状に形成された凹部44を設けたが、図7及び図8に示すように、第1ノズル50の外面の一部分に複数の凹部51を設けても良い。なお、第1ノズル50を有する液体噴霧装置1のその他の構成、作用は、上述した通りである。
【0035】
図9は本発明の第2実施形態を示すもので、図9は本発明の第2実施形態に係る第1ノズルを示す斜視図である。尚、前記第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0036】
第1実施形態の第1ノズル40は、環状に形成された複数の凹部44が等間隔に設けられているが、本実施形態の第1ノズル55は、図9に示すように、隣接する凹部44を連通させて形成した誘導溝56を有する点で異なる。
【0037】
以上のように構成された第1ノズル55を軸方向に移動させる際の作用について説明する。まず、凸部24aが誘導溝56に嵌合するように、蒸気導出口24に第1ノズル55を挿入する。続いて、図9に示す白抜き矢印の軸方向に、即ち蒸気導出口24に向かうように、又は遠ざかるように第1ノズル55を移動させながら、第1ノズル55の固定位置を調整する。このとき、凸部24aは移動方向を誘導溝56によって誘導されるので、容易且つ迅速に移動できる。そして、所望の固定位置に調整できたら、第1ノズル55を半回転させて、第1ノズル55を蒸気導出口24に係合させて固定する。
【0038】
本実施形態によれば、誘導溝56によって、第1ノズル55を容易且つ迅速に所望の固定位置に移動させることができる。なお、その他の構成、作用は、前記第1実施形態と同様である。
【0039】
図10は本発明の第3実施形態を示すもので、図10は本発明の第3実施形態に係る第1ノズルを示す斜視図である。尚、前記第2実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0040】
第2実施形態の第1ノズル55は、隣接する凹部44を連通させて形成した誘導溝56を有するが、本実施形態の第1ノズル60は、図10に示すように、外面に第1ノズル60の嵌め込み方向に螺旋状に形成した凹部61が設けられている点で異なる。このとき、気化器20の蒸気導出口24の内面には、凹部61が螺合自在に嵌合可能な凸部24aが設けられている。
【0041】
以上のように構成された第1ノズル60を軸方向に移動させる際の作用について説明する。まず、凸部24aが凹部61に嵌合するように、蒸気導出口24に第1ノズル60を挿入する。続いて、凸部24aが凹部61に嵌合した状態で、第1ノズル60を時計回り又は反時計回りに回転させる。第1ノズル60を回転させると、図10に示す白抜き矢印の軸方向に、即ち蒸気導出口24に向かうように、又は遠ざかるように第1ノズル60が移動し、第1ノズル60の固定位置を調整できる。そして、第1ノズル60を所望の固定位置に調整できたら、第1ノズル60の回転を停止して、第1ノズル60を蒸気導出口24に嵌合させて固定する。
【0042】
本実施形態によれば、螺旋構造の凹部61によって、第1ノズル60の移動が容易になり、迅速に所望の固定位置に調整できる。なお、その他の構成、作用は、前記第2実施形態と同様である。
【0043】
図11は本発明の第4実施形態を示すもので、図11は本発明の第4実施形態に係るノズルホルダ及び第1ノズルの側面断面図を示す。尚、前記第3実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0044】
前記第3実施形態の液体噴霧装置1は、ノズル固定位置調整手段を気化器20と第1ノズル60に設けていたが、本実施形態はノズル固定位置調整手段を、図11に示すように、ノズルホルダ65と第1ノズル40に設けている点で異なる。前記第3実施形態のノズル固定位置調整手段は、気化器20の設定位置がずれると第1ノズル60の設定位置もずれてしまい、第1ノズル40と第2ノズル33との距離Lxに変化が生じてしまうおそれがあった。この点において、本実施形態は、第1ノズル40と第2ノズル33がノズルホルダ65に固定されているので、第1ノズル40と第2ノズル33との距離Lxに変化が生じてしまうことを防止できる。
【0045】
ノズルホルダ65は、ノズル固定具66によって、気化器20と接続されている。また、気化器20とノズルホルダ65との間にはOリング67が設けられ、気化器20で生成した蒸気S1が外部に漏れないようになっている。さらに、ノズルホルダ65は、第1ノズル40と第2ノズル33とが直交向きになるように、それぞれを保持している。
【0046】
第1ノズル40は、軸方向に移動できるように、ノズルホルダ65のノズル挿入口68に挿入されている。第2ノズル33は、ノズルホルダ65の第2ノズル側に確実に固定されている。
【0047】
本実施形態のノズル固定位置調整手段は、図11に示すように、第1ノズル40の軸方向に間隔をおいて配置された凹部44と、ノズルホルダ65のノズル挿入口68内面に設けられ、凹部44が係脱自在に係合する凸部68aとから構成されている。
【0048】
凹部44については、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
凸部68aは、図11に示すように、ノズルホルダ65のノズル挿入口68内面に設けられ、複数の凹部44のうち一箇所に係脱自在に係合するようになっている。
【0050】
以上のように構成された第1ノズル40を軸方向に移動させる際の作用について説明する。まず、ノズルホルダ65のノズル挿入口68に第1ノズル40を挿入し、図11に示す白抜き矢印の軸方向に、即ちノズルホルダ65に向かうように、又は遠ざかるように第1ノズル40を移動させる。第1ノズル40を移動させることによって、凹部44と凸部68aとが段階的に係合する。これにより、第1ノズル40の固定位置が段階的に調節され、第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離Lxを任意の幅に設定することが可能である。なお、ノズルホルダ65は、エンジニアリング樹脂で構成されているので、移動する第1ノズル40の形状に沿うことができる。
【0051】
そして、第1ノズル40の固定位置が調節された後、気化器20で生成した蒸気S1が蒸気導出口24から第1ノズル40の先端部42に向い、第1ノズル40の先端部42から蒸気S1が噴出する。
【0052】
このとき、図1に示す第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離Lxに応じて、第2ノズル33の先端側の圧力が変化する。これにより、第2ノズル33の先端に導出される噴霧液31の量が変化し、液体噴霧装置1において生成する液体微粒子S2の噴霧流量を任意に制御することができる。
【0053】
本実施形態によれば、凸部68aと凹部44とから構成されるノズル固定位置調整手段を有することによって、第1ノズル40の固定位置が軸方向で調整でき、第1ノズル40の先端と第2ノズル33の先端との距離が任意の幅に設定可能である。これにより、容易に液体噴霧装置1で生成する液体微粒子S2の噴霧流量を制御することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、凹部44と凸部68aとが係合することにより、第1ノズル40の先端から蒸気S1が噴出する際において、第1ノズル40と蒸気導出口24との固定位置がずれることを防止できる。なお、その他の構成、作用は、前記第1実施形態乃至前記第3実施形態と同様である。
【0055】
尚、前記第1実施形態乃至第4実施形態のノズル固定位置調整手段を構成する凹部44,51,61は、凸状の形状をした凸部であっても良い。また、凹部44,51,61が凸状の形状をした凸部である場合において、蒸気導出口24の内面又はノズル挿入口68内面に設けられた凸部24a,68aは、凹状の形状をした凹部であっても良い。ここで、前記第1実施形態の凹部44が凸部71である場合における一例を図12に示す。第1ノズル70のように、前記第1実施形態の凹部44が凸部71の場合には、蒸気導出口24の内面には、凹状の形状をした凹部72を設ける。これにより、第1ノズル70の凸部71が蒸気導出口24の内面の凹部72に係脱自在に係合することができる。また、前記第1実施形態で述べたように、蒸気導出口24はエンジニアリング樹脂で構成され、且つ凸部71の厚みは0.2mm程度である。これにより、第1ノズル70を軸方向に移動させる場合において、蒸気導出口24の内面は第1ノズル40の凸部71の形状に沿うことができるので、滑らかに第1ノズル40の軸方向の移動ができる。また、前記第4実施形態の凸部68aが凹部72である場合においても、ノズルホルダ65はエンジニアリング樹脂で構成されているので、第1ノズル40の凸部71の形状に沿うことができ、同様の効果を示す。
【0056】
また、前記第1実施形態乃至第4実施形態のノズル固定位置調整手段を構成する凹部44,51,61、又は凸部24a,68aの一方が1箇所以上設けられていれば良い。または、凹部44,51,61及び凸部24a,68aの両方が複数設けられていても良い。凹部44,51,61及び凸部24aの両方が複数設けられている場合には、凹部44,51,55,61と凸部24aとの係合する力が一層増大するので、第1ノズル40,50,55,60と蒸気導出口24との固定位置がずれることを一層防止できる。また、凹部44,51,61が凸状の形状をした凸部であり、凸部24aが凹状の形状をした凹部である場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体噴霧装置の全体概略図
【図2】第1実施形態に係る気化器及び第1ノズルを示す概略断面図
【図3】第1実施形態に係る第1ノズルを示す斜視図
【図4】第1実施形態に係る第1ノズルのA−A’方向の概略断面図
【図5】第1実施形態に係る第1ノズルのB−B’方向の概略断面図
【図6】第1実施形態の実験例に係る噴霧流量を示すグラフ
【図7】第1実施形態に係る第1ノズルの他の一例を示す斜視図
【図8】第1実施形態に係る第1ノズルの他の一例を示す斜視図
【図9】本発明の第2実施形態に係る第1ノズルを示す斜視図
【図10】本発明の第3実施形態に係る第1ノズルを示す斜視図
【図11】本発明の第4実施形態に係るノズルホルダ及び第1ノズルを示す概略断面図
【図12】第1実施形態に係る気化器及び第1ノズルの他の一例を示す概略断面図
【図13】本発明の従来例に係る概略正面図
【符号の説明】
【0058】
1…液体噴霧装置、10…気化液タンク、11…気化液、12…第1管路、13…ポンプ、20…気化器、24…蒸気導出口、24a,68a…凸部、30…噴霧液タンク、31…噴霧液、32…第2管路、33…第2ノズル、40,50,55,60,70…第1ノズル、44,51,61…凹部、56…誘導溝、34,65…ノズルホルダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化器に固定され、該気化器で生成された蒸気が噴出される第1ノズルと、消臭液、消毒液等の液体が導出される第2ノズルとを有し、該各ノズルの先端を所定間隔をおいて近接配置し、該第1ノズルの蒸気噴出圧力により該第2ノズルから液体を導出し、且つ霧化噴霧する液体噴霧装置において、
前記第1ノズルを軸方向に移動可能で且つ軸方向の複数箇所で固定可能なノズル固定位置調整手段を有する
ことを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項2】
前記ノズル固定位置調整手段は、前記気化器に設けられ前記第1ノズルが軸方向に移動可能に嵌め込まれる蒸気導出口を有するとともに、該第1ノズルの外面又は該蒸気導出口の内面の一方には凸部を、他方には該凸部が係脱自在に係合する凹部をそれぞれ有し、該凸部又は該凹部の少なくとも一方は該第1ノズルの嵌め込み方向に間隔をおいて複数有する
ことを特徴とする請求項1記載の液体噴霧装置。
【請求項3】
前記ノズル固定位置調整手段は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとを保持するノズルホルダに設けられ前記第1ノズルが軸方向に移動可能に嵌め込まれるノズル挿入口を有するとともに、該第1ノズルの外面又は該ノズル挿入口の内面の一方には凸部を、他方には該凸部が係脱自在に係合する凹部をそれぞれ有し、該凸部又は該凹部の少なくとも一方は該第1ノズルの嵌め込み方向に間隔をおいて複数有する
ことを特徴とする請求項1記載の液体噴霧装置。
【請求項4】
前記凸部及び前記凹部を環状に形成した
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の液体噴霧装置。
【請求項5】
前記凸部を一部に形成し、前記凹部を環状又は一部に形成した
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の液体噴霧装置。
【請求項6】
前記凹部を複数有し、隣接する該凹部を連通させて形成された誘導溝を有する
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか一項に記載の液体噴霧装置。
【請求項7】
前記ノズル固定位置調整手段は、前記気化器に設けられ前記第1ノズルが軸方向に移動可能に嵌め込まれる蒸気導出口を有するとともに、該第1ノズルの外面又は該蒸気導出口の内面の一方には第1ノズルの嵌め込み方向に螺旋状に形成した凸部を、他方には該凸部が螺合自在に嵌合する凹部をそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項1記載の液体噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−297190(P2006−297190A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118365(P2005−118365)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】