説明

液体圧送装置

【課題】 長期に渡って作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることができる液体圧送装置を提供する。
【解決手段】 作動流体導入口11と作動流体排出口13と液体流入口16及び液体排出口17が設けられた密閉容器2内にフロート3とスナップ機構5が配置される。スナップ機構5は密閉容器2内に支持された第1の軸35と、第1の軸35の周りに回転するフロートアーム34及び第1のローラ51と、フロートアーム34に支持された第2の軸55と、第2の軸の周りに回転する第2のローラ52と、第1の軸35に対して第2の軸55よりも離れた位置に設けられた第3の軸58と、第2のローラ52と第3の軸58の間に配置されたコイルバネ54とを具備し、第2ローラ52の移動により第3の軸58をスナップ移動させて作動流体導入口11と作動流体排出口13の開閉を切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水や燃料等の液体を圧送する液体圧送装置に関するものである。本発明の液体圧送装置は、各種蒸気使用装置で発生した復水をボイラーや廃熱利用箇所に送る装置として特に適するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の液体圧送装置は、作動流体導入口と作動流体排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられた密閉容器内にフロートとスナップ機構が配置され、フロートの昇降に応じてスナップ機構を動作させて作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることにより、密閉容器内に溜った液体を液体排出口から圧送する液体圧送装置において、スナップ機構は、密閉容器内に支持された第1の軸と、第1の軸の周りに回転するフロートアーム及び副アームと、フロートアームに支持された第2の軸と、副アームに支持された第3の軸と、第2及び第3の軸の間に配置されたバネとを具備し、第2の軸の移動により副アームをスナップ回転させて作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えるものである。
【0003】
上記従来の液体圧送装置は、副アームとバネを連結する第3の軸が損傷し易いために、比較的短期に作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることができなくなるという問題点があった。これは、第3の軸に対して副アームの回転力が作用するためである。
【特許文献1】特許第2754094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、長期に渡って作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることができる液体圧送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、作動流体導入口と作動流体排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられた密閉容器内にフロートとスナップ機構が配置され、フロートの昇降に応じてスナップ機構を動作させて作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることにより、密閉容器内に溜った液体を液体排出口から圧送する液体圧送装置において、スナップ機構は、密閉容器内に支持された第1の軸と、第1の軸の周りに回転するフロートアーム及び第1のローラと、フロートアームに支持された第2の軸と、第2の軸の周りに回転する第2のローラと、第1の軸に対して第2の軸よりも離れた位置に設けられた第3の軸と、第2のローラと第3の軸の間に配置されたバネとを具備し、第2ローラの移動により第3の軸をスナップ移動させて作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、第1及び第2のローラを用いてスナップ機構を構成することにより、長期に渡って作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えて液体を確実に圧送できるという優れた効果を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の液体圧送装置は、従来技術と同様にフロートの昇降に応じてスナップ機構を動作させて作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることにより、密閉容器内に溜った液体を液体排出口から圧送する。すなわち、フロートの昇降に応じてフロートアームが第1の軸の周りに回転する。このフロートアームの回転に連動して第2のローラが第1のローラと第3の軸を結ぶ線に近付き、バネを圧縮変形せしめる。そして、第2のローラが第1のローラと第3の軸を結ぶ線を越えると、バネが急激に変形を回復し、第3の軸が第1のローラと第2のローラを結ぶ線の延長上に対して初期とは反対側にスナップ移動し、作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換える。このように、第1及び第2のローラを用いてスナップ機構を構成するので、第2のローラが回転する第2の軸に第1のローラの回転力が作用しない。そのため、長期に渡って作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることができることができる。
【実施例1】
【0008】
上記の技術的手段の具体例を示す実施例を説明する。図1は本発明の具体的実施例の液体圧送装置の断面図である。図2は図1のA−A拡大断面図である。図3は図1のスナップ機構部分の拡大断面図である。図1において、本実施例の液体圧送装置1は密閉容器2内にフロート3と切替え弁4及びスナップ機構5が配されたものである。密閉容器2は本体部7と蓋部8が図示しないネジによって結合され、内部に液体溜空間10が形成されたものである。蓋部8には作動流体導入口11,作動流体排出口13,液体流入口16,液体排出口17が設けられている。
【0009】
図2に拡大して示すように、作動流体導入口11の内側に給気弁20が取り付けられ、作動流体排出口13の内側に排気弁21が取り付けられている。給気弁20は弁ケース22と弁体23及び昇降棒24によって構成される。弁ケース22は軸方向に貫通孔を有し、貫通孔の上端面は弁座25として機能する。弁ケース22の中間部には前記した貫通孔と外部とを連通する4つの開口26が設けられている。給気弁20の弁ケース22の先端は作動流体導入口11の中にねじ込まれている。弁体23は球状で作動流体導入口11側にあり、昇降棒24の上端が当接することにより開閉される。昇降棒24は弁ケース22の貫通孔を通って密閉容器2側に抜け、下端に連接軸27を介して連接板28に連結されている。排気弁21は弁ケース29と弁体30と昇降棒31によって構成される。弁ケース29は軸方向に貫通孔を有し、該貫通孔の内部に弁座32があり、弁座32の下から昇降棒31の上端に保持固定された弁体30が当接して開閉を行うものである。昇降棒31の下端は連接軸27を介して連接板28に連結されている。給気弁20と排気弁21で切替え弁4が構成され、給気弁20が開くと排気弁21は閉じ、給気弁20が閉じると排気弁21は開く。
【0010】
フロート3はフロートアーム34と第1の軸35を介してブラケット36によって支持されている。ブラケット36は図示しないネジによって密閉容器2の蓋部8に一体的に取り付けられている。スナップ機構5はフロートアーム34、第1のローラ51、第2のローラ52、コイルバネ54で構成される。フロートアーム34は平行に対向した2枚の板よりなり、左端にフロート3が固着され、右部が前記した第1の軸35によって回転可能に支持されている。従って、フロート3は第1の軸35を中心として上下に揺動する。また、第1の軸35には第1のローラ51が回転可能に支持されている。
【0011】
フロートアーム34の右端部には第1の軸35と平行な第2の軸55が掛け渡されている。第2の軸55には第2のローラ52が回転可能に支持されている。ブラケット36には第1の軸35に対して第2の軸55よりも離れた位置に長孔57が設けられ、長孔57内に第1の軸35と平行な第3の軸58が掛け渡されている。第3の軸58に第3のローラ59が回転可能に支持されている。第2のローラ52と第3のローラ59の間に圧縮あるいは伸張変形する圧縮状態のコイルバネ54が配置されている。第2のローラ52はコイルバネ54と第1のローラ51の間に押圧されて配置されている。第3の軸58には連接板28の下端が連結されている。
【0012】
次に本実施例の液体圧送装置1の作用について、作動流体として蒸気を用いた場合の一連の動作手順を追うことによって説明する。まず液体圧送装置1の外部配管は作動流体導入口11が高圧の蒸気源に接続され、作動流体排出口13は蒸気循環配管に接続される。液体流入口16は外部から液体溜空間10に向かって開く逆止弁(図示せず)を介して蒸気使用装置等の負荷に接続され、液体排出口17は液体溜空間10から外部に向かって開く逆止弁(図示せず)を介してボイラー等の液体圧送先へ接続される。
【0013】
本実施例の液体圧送装置1の液体溜空間10内に復水が無い場合は、図1に示す様にフロート3は底部に位置する。このとき、スナップ機構5は第3の軸58が第1の軸35と第2の軸55を結ぶ線よりも下方に位置する。そのため、切替え弁4における給気弁20が閉じられ、排気弁21が開かれている。そして、蒸気使用装置等の負荷内で復水が発生すると、復水は圧送液体流入口16から液体圧送装置1に流下して、液体溜空間10内に溜る。液体溜空間10内に溜った復水によってフロート3が浮上すると、フロートアーム34が第1の軸35を中心に時計回り方向に回転し、第2の軸55が第1のローラ51と第3のローラ59を結ぶ線に近付き、コイルバネ54を圧縮変形せしめる。そして、第2の軸55が第1のローラ51と第3のローラ59を結ぶ線を越えると、コイルバネ54が急激に変形を回復し、第3のローラ59が第1のローラ51と第2のローラ52を結ぶ線の延長上に対して初期とは反対側の上方にスナップ移動する。これにより、第1の軸58が上方に移動し、給気弁20は作動流体導入口11を開放し、排気弁21は作動流体排出口13を閉じる。
【0014】
作動流体導入口11が開放されると、密閉容器2内に高圧蒸気が導入され、内部の圧力が上昇し、液体溜空間10に溜った復水は、蒸気圧に押されて圧送液体排出口17から図示しない逆止弁を介して外部のボイラーや廃熱利用装置へ排出される。復水の排出によって復水溜空間10内の水位が低下すると、フロート3が降下して、フロートアーム34が第1の軸35を中心に反時計回り方向に回転し、第2の軸55が第1のローラ51と第3のローラ59を結ぶ線に近付き、コイルバネ54を圧縮変形せしめる。そして、第2の軸55が第1のローラ51と第3のローラ59を結ぶ線を越えると、コイルバネ54が急激に変形を回復し、第3のローラ59が第1のローラ51と第2のローラ52を結ぶ線の延長上に対して下方にスナップ移動する。これにより、第1の軸58が下方に移動し、給気弁20は作動流体導入口11を閉じ、排気弁21は作動流体排出口13を開放する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例の液体圧送装置の断面図。
【図2】図1のA−A拡大断面図。
【図3】図1のスナップ機構部分の拡大断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 液体圧送装置
2 密閉容器
3 フロート
4 切替え弁
5 スナップ機構
10 液体溜空間
11 作動流体導入口
13 作動流体排出口
16 液体流入口
17 液体排出口
20 給気弁
21 排気弁
34 フロートアーム
35 第1の軸
51 第1のローラ
52 第2のローラ
54 コイルバネ
55 第2の軸
58 第3の軸
59 第3のローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体導入口と作動流体排出口と液体流入口及び液体排出口が設けられた密閉容器内にフロートとスナップ機構が配置され、フロートの昇降に応じてスナップ機構を動作させて作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることにより、密閉容器内に溜った液体を液体排出口から圧送する液体圧送装置において、スナップ機構は、密閉容器内に支持された第1の軸と、第1の軸の周りに回転するフロートアーム及び第1のローラと、フロートアームに支持された第2の軸と、第2の軸の周りに回転する第2のローラと、第1の軸に対して第2の軸よりも離れた位置に設けられた第3の軸と、第2のローラと第3の軸の間に配置されたバネとを具備し、第2ローラの移動により第3の軸をスナップ移動させて作動流体導入口と作動流体排出口の開閉を切り換えることを特徴とする液体圧送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−187251(P2007−187251A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6221(P2006−6221)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】