説明

液体容器

【課題】蛇口機構付きの断熱液体容器における蛇口機構の部品交換並びに補修を可能且つ容易にすると共に、液体容器自体の製造工程の煩雑さ並びに容器内残存液体の課題を同時に解消する。
【解決手段】内容器11と、内容器から適宜が間隔を有せしめて配置される外側部材(肩部材13a,13b、外装ケース14、底部材15)で構成され、内容器11と外側部材の間に断熱材12を充填した二重容器体構造の容器本体1を備えると共に、容器本体の内外を貫通して付設される開閉弁312を有する蛇口機構3を備える液体容器において、内容器底部に装着凹部111を形成すると共に、外側部材の当該個所を前記装着凹部底面と対接せしめて貫通孔を形成して蛇口機構3を装着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水等の液体を収納する蛇口機構付きの断熱構造の液体容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛇口機構付き断熱構造の液体容器は、蛇口位置が相応の高さとなるように断熱構造の容器本体に脚部を付設してなり、また断熱構造としては、内容器と外ケースの二重構造の間隙に断熱材を介在させて組み上げた器具と、二重構造の間隙に断熱材を充填(製造時に内部で発泡して固化する)して製造した器具が知られているが、特に後者は容器本体が一体化され堅牢性及び断熱性の点で優れている。
【0003】
具体的には特許文献1(特開平10−216027号公報)及び特許文献2(特開2003−180534号公報)に示されているように、薄金属製の内容器と、内容器を囲んだ外装ケースと、外装ケースの底面を構成する底部材と、容器開口部を形成する肩部材で構成され、これらを組み合わせた状態で樹脂の充填発泡を行って製出している。
【0004】
また前記の断熱材充填タイプの液体容器における蛇口機構の組み込み構造は、特許文献1記載の器具では、内容器の底部の注出筒と接続するジョイントパイプを介して連結した液体流出パイプに弁体を内装し、前記流出パイプを底部材に固定した後、断熱材の充填を行い、前記蛇口機構(文献では注出機構)を容器本体と一体化して組み込んでいる。
【0005】
また特許文献2記載の器具では、容器本体側面に流出パイプ(注出機構)が貫通して設けられているが、前記流出パイプは、樹脂充填前に組み込んだものであるか、容器本体形成後(樹脂充填後)に貫通孔を穿設して流出パイプを組み込んだものであるかは明確でない。
【0006】
【特許文献1】特開平10−216027号公報。
【特許文献2】特開2003−180534号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の対象となる蛇口機構付き断熱液体容器においては、頻繁に開閉操作される蛇口機構を、水漏れ等によって部品交換や修理を必要とする場合がある。しかし蛇口機構の部品交換や修理に際して、蛇口機構全体を容器本体から取り外す必要があると、前記した蛇口機構が容器本体と一体構造に組み込まれている場合には、容器本体の一部(充填材:発泡樹脂)を破壊しなければならないので、現実的には実施されず、物品としての耐久性が蛇口機構の耐久性によって定まってしまう問題がある。
【0008】
また容器本体側壁に貫通孔を形成して蛇口機構を組み込む場合には、蛇口機構の着脱ができるので前記のような問題は生じないが、発泡樹脂が充填された容器本体を穿設加工する必要があるので製造上煩雑であり、また容器側面に貫通孔を形成するので、内容器内に液体が残存してしまうし、仮に容器本体底面に貫通孔を形成して流出パイプを装着しても、流出パイプの上端が内容器底面より上方に突出することになり、やはり内容器内に液体が残存する問題は解消されない。
【0009】
そこで本発明は、容器本体の製造に際して予め貫通孔を形成して、蛇口機構の着脱の問題並びに残存液体の問題を解消する新規な液体容器を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)に係る液体容器は、内容器と、内容器から適宜な間隔を有せしめて配置される外側部材で構成され、内容器と外側部材の間に断熱材を充填した二重容器体構造の容器本体を備えると共に、容器本体の内外を貫通して付設される開閉弁を有する蛇口機構を備える液体容器において、内容器底部に装着凹部を形成すると共に、外側部材の当該個所を前記装着凹部底面と対接せしめて貫通孔を形成し、前記装着凹部に流出口が形成されるように、貫通孔に蛇口機構を装着してなることを特徴とするものである。
【0011】
而して断熱構造の容器本体は、底面部分に予め貫通孔が形成され、貫通孔の内容器側における装着凹部内で蛇口機構の容器側部品が装着されることになるので、蛇口機構の着脱が支障なく実施されると共に、内容器内の液体はすべて容器外に流出させることができる。
【0012】
また本発明(請求項2,3)の液体容器は、前記液体容器において、外側部材を、内容器の肩部に連繋されて容器本体の開口部を形成する肩部材と、内容器の外周を囲繞する外装ケースと、貫通孔を備えると共に、折り畳み脚を付設した底部材で構成したものであり、特に、貫通孔を容器本体底部の外周に近接する偏った位置に形成し、底部材の底面が内容器内底面から所定の距離を有するように設けると共に、底部材における貫通孔周囲部分を外周側が開口した蛇口機構の収納凹部とし、蛇口機構における開閉弁の操作部を容器本体外周側に突出させて、蛇口機構を前記収納凹部に収納装着してなるものである。
【0013】
従って蛇口機構が、容器本体の底面に装着されるが、外周側(蛇口機構の操作部を配した側)の側面は露出するが、他の側面部分は底部材で囲繞されることになり、蛇口機構が容器本体と一体に纏まる。
【0014】
更に本発明(請求項4)は、前記の蛇口機構の収納凹部を備えた底部材において、底部材を、断熱材充填口を設けてなる底部材本体と、底部材本体の上面に所定の空隙を有せしめて内容器底面と対面し、前記充填口から充填される断熱材の対壁となる仕切体とで構成してなるもので、蛇口機構部を容器本体と一体の纏まりのある構成とした場合に、内容器と底部材の底面部分との間隔が大きくなり、当該間隙に断熱材を充填すると、断熱材の過剰使用となるが、仕切体を介在させて、断熱材未充填空間を形成することで、断熱効果を損なわずに、断熱材の効率的使用が実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記の構成のとおりで、容器本体における蛇口機構の取付個所を、内容器底部に形成した装着凹部の内底面に、容器本体形成時に設けた貫通孔としたもので、前記の凹部から蛇口機構に容器内部の液体(飲料)が流出するので、容器内の残存液体が生ずることなく、且つ蛇口機構の着脱によって、部品交換等の補修を容易にしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施の形態について説明する。実施形態に示した液体容器は、容器本体1と、蓋部材2と、蛇口機構3とで構成されている。
【0017】
容器本体1は、内容器11と外側部材の間に断熱材12を充填した二重容器体構造であって、外側部材は、肩部材13a,13bと外装ケース14と底部材15で構成されるものである。
【0018】
内容器11は、薄金属板で形成したもので、底部における外周側に偏った位置に、後述する蛇口機構3の筒状ナット体32が入る大きさの装着凹部111を設け、装着凹部111の内底面には貫通孔112を設けたものである。
【0019】
内側肩部材13aは内容器11の上縁と連繋し、外側肩部材13bは外装ケース14の上縁と連繋される。両肩部材13a,13bは容器本体1の開口部分を形成するもので、持ち手131や、蓋部材2を装着する構造を備えているものである。
【0020】
外装ケース14は、内容器11の周面との間に、断熱材12の充填空間Aが確保できる大きさの筒状体で、薄金属板で形成されるものである。
【0021】
底部材15は、底部材本体15aと、仕切体15bで構成され、底部材本体15aは、前記外装ケース14の下縁に連繋されると共に、内容器11の底面との間に断熱材12の充填空間Aを形成されるように充分に間隔を有するように容器本体1の底面部分を構成するもので、特に貫通孔112と一致する貫通孔151を形成すると共に、前記貫通孔151の周囲部分を外周側が開口した蛇口機構3の収納凹部152とし、更に、断熱材12の充填口153を適宜箇所に設けてなる。
【0022】
更に底部材本体15aの底面には、脚支持部154を垂設すると共に、脚支持部154に折り畳み脚155を付設してなる。
【0023】
仕切体15bは、前記収納凹部152及び充填口153以外の内容器11の底部と対面する範囲に、容器形状の底部材本体15aの内底面(断熱材の対壁)となるように底部材本体15aに付設し、内容器11と外側部材との間の断熱材充填空間Aの一部を、仕切り体15bを隔壁として、底部材15個所における非充填空間Bを形成したものである。
【0024】
前記の各部材で構成される容器本体1は、図4に例示するとおり内容器11と外側部材(肩部材13a,13bと外装ケース14と底部材15)を組み合わせて、充填口153から断熱材用樹脂を注入し、樹脂を発泡固化させて、充填空間Aを断熱材12で充たし、容器本体1を一体化するものである。
【0025】
また前記の肩部材13a,13bには、容器本体1の開口部16の開閉を行う蓋部材2や、携帯時に使用される持ち手(釣り手ハンドル)131を装着するもので、予め肩部材13a,13bには蓋部材2及び持ち手131を装着できる構造に形成しておくものであり、蓋部材2や持ち手131の構造並びに肩部材13a,13bに設ける装着構造は任意である。
【0026】
蛇口機構3は、蛇口本体31と筒状ナット体32と、カバー体33とで構成される。蛇口本体31は、L状パイプ311からなり、前記L状パイプ311内に開閉弁312を組み込むと共に、前記開閉弁312の操作部313を付設し、更に前記L状パイプ311に、前記開閉弁312で流路の開閉がなされる出水口314を設けたものであり、またL状パイプ311の基部立ち上がり部分の外周にネジを周設して連結部315を形成したものである。尚図示例では、連結部315に外挿されるブラケット316を採用している。
【0027】
筒状ナット体32は、貫通孔112,151を挿通できる大きさで、上部にフランジ部321及び流出口となる操作孔(六角孔)322を備えて、装着凹部111内に収まる大きさに形成したもので、フランジ部321の下面にパッキン323を介在させて装着凹部111内に配置し、前記蛇口本体31の連結部315と螺合連結して、水密性を確保して固着される。
【0028】
前記の蛇口本体31と筒状ナット体32の連結固定の際には、操作部(開閉レバー)313及び出水口314は、容器本体1の外周側に突出するようにしてなる。
【0029】
カバー体33は、所定形状の外カバー331と断熱部332で構成され、外カバー331は、容器本体1に固着された蛇口本体31における突出部分(操作部313及び出水口314)を除いた範囲を被覆するもので、その外形状は、収納凹部152の形状と対応させたものである。
【0030】
断熱部332は、前記蛇口本体31を被覆するように固着した際に、蛇口本体31とカバー体33の外カバー331の間隙を埋めるようにしたものである。
【0031】
而して上記の液体容器は、内容器11内に冷水や温水の飲料を収納して携帯し、喫飲時には折り畳み脚155を起立状態とし、操作部313の開閉操作によって出水口314から飲料を放出するものである。
【0032】
特に内容器11の底面の装着凹部111に、流出口となる操作孔322を備えた筒状ナット体32が配置されるので、内容器11内の飲料は、残存することなく全部を容器外に放出できるものである。
【0033】
また蛇口機構3を部品交換や補修のために、容器本体1から外す場合には、カバー体33を取り外した後に、蓋部材2を開けて、開口部16から工具を差し入れて、筒状ナット体32を回し、連結部315との螺合を解除すると、蛇口本体31を容器本体1から容易に取り外すことができ、部品交換や補修を終了すると、取り外しと逆の手順で取り付けられるもので、蛇口機構3の部品交換や補修が、容器本体1を破壊することなく容易に行うことができたものである。
【0034】
また蛇口機構3は、底部材15の収納凹部152内に収められると共に、カバー体33で被覆することで、液体容器全体が外観的に纏まると共に、カバー体33に断熱部332を備えることで、蛇口機構3を装備させたことによる液体容器の断熱効果の低減を抑えることができ、更に蛇口機構3の纏まり収納のために大きくならざるを得ない断熱材12の充填空間Aを、仕切体15bを設けることで非充填空間Bを形成して、断熱材12の無駄をなくしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の全体正面図。
【図2】同底面図。
【図3】同断面図。
【図4】同容器本体の断面図(断熱材充填前)。
【図5】同底面図。
【図6】同要部拡大断面図(貫通孔個所)。
【図7】同図(充填口個所)。
【図8】同蛇口機構の全体斜視図(分解図)。
【図9】同装着説明斜視図。
【図10】同装着状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 容器本体
11 内容器
111 装着凹部
112 貫通孔
12 断熱材
13a 内側肩部材
13b 外側肩部材
131 持ち手
14 外装ケース
15 底部材
15a 底部材本体
15b 仕切体
151 貫通孔
152 収納凹部
153 充填口
154 脚支持部
155 折り畳み脚
16 開口部
2 蓋部材
3 蛇口機構
31 蛇口本体
311 L状パイプ
312 開閉弁
313 操作部
314 出水口
315 連結部
316 ブラケット
32 筒状ナット体
321 フランジ部
322 操作孔(六角孔)
323 パッキン
33 カバー体
331 外カバー
332 断熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容器と、内容器から適宜な間隔を有せしめて配置される外側部材で構成され、内容器と外側部材の間に断熱材を充填した二重容器体構造の容器本体を備えると共に、容器本体の内外を貫通して付設される開閉弁を有する蛇口機構を備える液体容器において、内容器底部に装着凹部を形成すると共に、外側部材の当該個所を前記装着凹部底面と対接せしめて貫通孔を形成し、前記装着凹部に流出口が形成されるように、貫通孔に蛇口機構を装着してなることを特徴とする液体容器。
【請求項2】
外側部材を、内容器の肩部に連繋されて容器本体の開口部を形成する肩部材と、内容器の外周を囲繞する外装ケースと、貫通孔を備えると共に、折り畳み脚を付設した底部材で構成した請求項1記載の液体容器。
【請求項3】
貫通孔を容器本体底部の外周に近接する偏った位置に形成し、底部材の底面が内容器内底面から所定の距離を有するように設けると共に、底部材における貫通孔周囲部分を外周側が開口した蛇口機構の収納凹部とし、蛇口機構における開閉弁の操作部を容器本体外周側に突出させて、蛇口機構を前記収納凹部に収納装着してなる請求項2記載の液体容器。
【請求項4】
底部材を、断熱材充填口を設けてなる底部材本体と、底部材本体の上面に所定の空隙を有せしめて容器底面と対面し、前記充填口から充填される断熱材の対壁となる仕切体とで構成してなる請求項3記載の液体容器。
【請求項5】
蛇口機構が、L状パイプからなり、開閉弁を内装し、操作部及び出水口を外装した蛇口本体と、外形が収納凹部形状と対応し、且つ断熱材を内装したカバー体と、装着凹部内に配置される筒状ナット体で構成され、装着凹部内の筒状ナット体と蛇口本体の基部立ち上がり部分とを貫通孔を通して連結し、前記連結した状態の蛇口本体を、カバー体で被覆してなる請求項3又は4記載の液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−124948(P2010−124948A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301047(P2008−301047)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000111867)パール金属株式会社 (15)
【Fターム(参考)】