説明

液体成分回収装置およびこれを用いた体液成分回収方法

【課題】操作を簡素化して誤操作を防止することができ、さらに、液体の種類を追加して使用する場合にも流路切替用部材の追加を要せず、操作の複雑化が抑制される液体成分回収装置を提供する。
【解決手段】液体中の特定の目的成分を選択的に吸着する吸着部と、前記吸着部の下流側に連通して、2方向に流出口の切り替えを行う流路切替機構と、前記流路切替機構の一方の流出口に接続されて、廃液を回収する廃液回収部と、前記流路切替機構の他方の流出口に接続されて、前記吸着部で吸着された目的成分を回収する成分回収部とを備える液体成分回収装置において、前記吸着部の上流側に、複数の液体をそれぞれ吐出する複数の液体吐出器と、前記複数の液体吐出器のいずれか1つに選択的かつ着脱可能に接続されて、吐出された液体の流路を開閉する流路開閉機構とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中、特には体液中の特定成分の回収に用いる装置であって、操作が簡素化されて誤操作を防止できる液体成分回収装置および液体成分回収システム、並びにこのシステムを用いた体液成分の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液に代表される体液中には種々の成分が含まれており、その中には、線溶系成分などの医療上有用な物質も多く存在する。例えば、糖尿病網膜症の治療方法として、患者自身の血液からプラスミノーゲンを回収し、それをプラスミンに変換して患者に投与する方法が、「プラスミン療法」として知られている。
【0003】
血液中から特定の目的成分を回収するための方法としては、アフィニティクロマトグラフィーを利用する方法が主流となっている。アフィニティクロマトグラフィー法による血液成分の回収方法は、一般的に、(1)血液を特定の吸着材に接触させることによる目的性文の吸着材への吸着、(2)洗浄液で吸着材を洗浄することによる目的成分以外の成分の吸着材からの除去、(3)溶出液を用いた目的成分の吸着材からの分離および回収の各工程を含んでいる。なお、本明細書においては、全血、血漿、血清などを「血液」と総称する。
【0004】
このアフィニティクロマトグラフィー法によって血液成分を回収するための装置として、例えば、目的成分を吸着させる吸着部の上流側に、血液、洗浄液、および溶出液をそれぞれ吐出させるシリンジなどの複数の吐出機構を、複数の三方活栓を介して配置し、吸着部の下流側に、廃液の回収部と目的成分の回収部とを三方活栓を介して配置し、これら複数の三方活栓を必要な手順に応じて切り替えることにより、目的成分を回収するものが提案されている(特許文献1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の装置を用いた場合、手順に応じて必要な流路の切り替えを、複数の三方活栓を操作することにより行わなければならないので、操作が複雑になる。しかも、同一の機能を有する複数の三方活栓を順次操作するので、操作すべき三方活栓を混同しやすく、その結果誤操作を招きやすい。また、上記の装置では、吸着部の上流側に3種類の液体吐出器を配置しているが、回収する目的成分や回収方法の変更、または、より高精度な回収を行うなどの目的で、使用する液体の種類を増やす場合には、装置に活栓などの流路切替機構をさらに追加する必要がある。その結果、操作が一層複雑化するのみならず、装置の大型化やコストの増大にもつながる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−160731号公報
【0007】
本発明は、かかる課題を解決すべく、操作が簡素化されて誤操作を防止することができ、さらに、液体の種類を追加して使用する場合にも流路切替用部材の追加を要せず、操作の複雑化が抑制される液体成分回収装置および液体成分回収システムを提供することを目的とする。さらには、このような液体成分回収システムを用いて、体液中から特定の目的成分を、簡便な操作によって効率的に回収できる体液成分回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明に係る液体成分回収装置は、複数の異なる機能を有する液体にそれぞれ対応する、液体を吐出する複数の液体吐出器のいずれか1つに選択的に着脱可能な、吐出された液体の流路を開閉する流路開閉機構と、前記流路開閉機構の下流側に連通して、前記液体吐出器から吐出された液体中の特定の目的成分を選択的に吸着する吸着部と、前記吸着部の下流側に連通して、少なくとも2方向に流出口の切り替えを行う流路切替機構と、前記流路切替機構の一方の流出口に着脱可能に接続されて、廃液を回収する廃液回収部と、前記流路切替機構の他方の流出口に着脱可能に接続されて、前記吸着部で吸着された目的成分を回収する成分回収部とを備えている。
【0009】
この構成によれば、液体吐出器と流路開閉機構との接続および取り外し、流路開閉機構の開閉、流路切替機構の流路切り替えという、単純かつ互いに混同し難い操作の組み合わせによって、複数の異なる機能を有する液体を用いて液体中の目的成分を回収することができる。したがって、複数の流路切替機構を備える装置に比較して、操作が大幅に簡素化され、誤操作を効果的に防止することができる。さらには、使用する液体の種類を追加する必要がある場合にも、必要に応じて液体吐出器のみを追加すればよく、流路切替機構など他の部品を追加する必要がないので、操作の複雑化を最小限に抑えることが可能になると共に、装置の大型化やコストの増大をも抑制できる。
【0010】
本発明に係る液体成分回収装置の一実施形態として、例えば、前記吸着部が、体液中の目的成分を選択的に吸着する体液成分吸着部であってよい。この場合、回収すべき前記目的成分がプラスミノーゲンであり、前記吸着部が、硬質系多孔質樹脂にL−リジンを固定化した吸着材から構成されていてもよい。このような構成とすることにより、糖尿病網膜症の治療法であるプラスミン療法に用いられるプラスミノーゲンを、効率的に回収することができる。なお、ここでの体液とは、生体に由来する液体のことであり、例えば、血液、臍帯血、リンパ液、骨髄、尿、唾液、涙、汗などを含む。
【0011】
本発明を、上記のように体液中の特定成分を回収する装置に適用する場合には、前記流路切替機構と前記成分回収部との間の流路の途中に、体液採取中や、処理中などに混入する菌を除去する除菌機構を備えていることが望ましい。さらには、前記成分回収部、前記除菌機構、および前記目的成分回収装置のガス抜き孔を形成するエアー針が滅菌された状態で供給されてもよく、前記吸着部材が湿潤状態で滅菌されていてもよく、前記流路開閉機構と前記流路切替機構間に液体が充填された状態で滅菌されていてもよい。このような構成とすることで、より高い安全性を有する目的成分の回収が可能となる。
【0012】
さらに、本発明に係る液体成分回収システムは、複数の異なる機能を有する液体にそれぞれ対応する、液体を吐出する複数の液体吐出器と、上記したいずれかの液体成分回収装置であって、前記流路開閉機構が、前記複数の液体吐出器のいずれか1つに選択的かつ着脱可能に接続されている液体成分回収装置とを備えている。この液体成分回収システムによれば、液体吐出器と流路開閉機構との接続および取り外し、流路開閉機構の開閉、流路切替機構の流路切り替えという、単純かつ互いに混同し難い操作の組み合わせによって、複数の異なる機能を有する液体を用いて液体中の目的成分を回収することができる。したがって、複数の流路切替機構を備える装置に比較して、操作が大幅に簡素化され、誤操作を効果的に防止することができる。さらには、使用する液体の種類を追加する必要がある場合にも、必要に応じて液体吐出器のみを追加すればよく、流路切替機構など他の部品を追加する必要がないので、操作の複雑化を最小限に抑えることが可能になると共に、装置の大型化やコストの増大をも抑制できる。
以上のように、本発明では流路開閉機構から流路切替機構までの間の体積を小さくできるので、成分回収に要する時間を短縮したり、成分回収に要する液体の量を低減することが可能となる。特に、このシステムを、体液中の目的成分を回収するために用いる場合には、成分回収に必要な体液を採取患者の負担を軽減することが可能となる。
また、予め複数の異なる機能を有する無菌の液体を充填した液体吐出器を用いると、使用前の液体の濃度調整などが不要となるためさらに操作性が向上し、濃度の誤りも減らすことができる。
【0013】
本発明に係る液体成分回収システムの一実施形態として、例えば、前記複数の液体吐出器が、流路を洗浄するための洗浄液を吐出する少なくとも1つの洗浄液吐出器と、体液を吐出する体液吐出器と、溶出液を吐出する溶出液吐出器とを含み、前記吸着部が、前記体液吐出器から吐出された体液中の目的成分を選択的に吸着する体液成分吸着部であってもよい。
【0014】
本発明に係る液体成分回収システムが、上記のように体液中の目的成分を回収するためのものであって、洗浄液吐出器を備える場合、体液が吐出される前に流路を洗浄するための洗浄液を吐出する第1洗浄液吐出器と、体液が吐出された後に流路を洗浄するための洗浄液を吐出する第2洗浄液吐出器とを含んでいてもよい。このように2種類の洗浄液吐出器を備えることにより、洗浄の目的に応じて異なる種類の洗浄液を使用することが可能となり、目的成分の回収効率や回収精度を向上させることができる。しかも、このように洗浄液吐出器の数を増やしても、上述のように、操作の複雑化、装置の大型化、およびコストの増加が最小限に抑えられる。
【0015】
また、特に、回収すべき目的成分がプラスミノーゲンである場合には、前記溶出液を、例えば、トラネキサム酸溶液とすることで、糖尿病網膜症の治療法であるプラスミン療法に用いられるプラスミノーゲンを効率的に回収することができる。トラネキサム酸の好適な濃度は0.4mM(モル/L)〜400mM、さらに好ましくは4〜40mMである。
【0016】
また、上記した他の目的を達成するために、本発明に係る体液成分回収方法は、前記流路切替機構の流出口を、前記廃液回収部に接続した状態で、前記流路開閉機構を前記第1洗浄液吐出器に接続し、流路開閉機構によって流路を開き、前記第1洗浄液吐出器から第1洗浄液を吐出して少なくとも前記吸着部を含む流路を洗浄する第1洗浄ステップと、前記流路開閉機構を閉じて前記第1洗浄液吐出器に替えて前記体液吐出器に接続し、流路開閉機構によって流路を開き、前記体液吐出器から体液を吐出して特定の体液成分を前記吸着部に吸着させる吸着ステップと、前記流路開閉機構を閉じて前記体液吐出器に替えて前記第2洗浄液吐出器に接続し、流路開閉機構によって流路を開き、前記第2洗浄液吐出器から第2洗浄液を吐出して少なくとも前記吸着部を含む流路を洗浄する第2洗浄ステップと、前記流路開閉機構を閉じて、前記第2洗浄液吐出器に替えて前記溶出液吐出器に接続する溶出液吐出器接続ステップと、前記流路切替機構の流出口を、前記成分回収部側に切り替える流路切替ステップと、前記溶出液吐出器から溶出液を吐出して、前記吸着部に吸着された体液成分を回収する体液成分回収ステップとを含んでいる。
【0017】
また上記の体液成分回収方法は、前記溶出液吐出器接続ステップの後で、かつ、前記流路切替ステップの前に、前記溶出液吐出器から溶出液を一定量吐出する第3洗浄ステップをさらに含んでいてもよい。
【0018】
この方法によれば、液体吐出器と流路開閉機構との接続および取り外し、流路開閉機構の開閉、流路切替機構の流路切り替えという、単純かつ互いに混同し難い操作の組み合わせによって、複数の異なる機能を有する液体を用いて液体中の目的成分を回収することができる。したがって、複数の流路切替機構を備える装置を用いる方法に比較して、操作が大幅に簡素化され、誤操作を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明に係る液体成分回収装置および液体成分回収システムによれば、操作が大幅に簡素化されて誤操作を防止することができ、液体の種類を追加して使用する場合にも、流路切替用部材の追加が不要であり、操作の複雑化が抑制される。さらには、流路開閉機構から流路切替機構までの間の体積を小さくできることから、使用する体液量の低減および回収時間の短縮が可能となる。例えばプラスミンの回収に用いる場合は、使用する血液量が少なくて済むため、特に有用である。また、本発明に係る体液成分回収方法によれば、上記の液体成分回収装置を用いて、体液中から特定の目的成分を、簡便な操作によって効率的に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体成分回収システムの構成を示す概略図である。この液体成分回収システムは、アフィニティクロマトグラフィー法により血液Bから目的成分Eとしてプラスミノーゲンを回収するための体液成分回収システム1として構成されており、プラスミノーゲンの回収に使用する液体を吐出する液体吐出器3C,3B,3C,3Sと、液体の流路を開閉する流路開閉機構5、目的成分Eであるプラスミノーゲンを選択的に吸着する吸着部7、2方向に流路の切り替えを行う流路切替機構9、廃液Wを回収する廃液回収部11、および目的成分Eであるプラスミノーゲンを回収する成分回収部13を有する液体成分回収装置14とを備えている。
【0022】
液体吐出機構3は、複数(ここでは4つ)の液体吐出器3C,3B,3C,3Sと、これを駆動する共通の駆動部であるシリンジポンプ23とを有しており、血液成分の回収手順に応じて選択されるいずれか1つの液体吐出器3C,3B,3C,3Sのみに、流路開閉機構5が着脱可能に接続されている。流路開閉機構5とその下流側に配置された吸着部7とは、管状の連通チューブによって形成された導入通路15を介して連通されている。吸着部7の下流側には流路切替機構9が接続されている。流路切替機構9が有する2つの流出口のうちの一方である廃液流出口9aに、連通チューブによって形成された廃液導出通路17を介して廃液回収部11が接続されており、他方の成分流出口9bには、除菌機構19を介して成分回収部13が接続されている。
【0023】
本実施形態においては、プラスミノーゲンを回収するために、血液Bのほかに液体として、装置の流路内を洗浄する洗浄液C、および吸着部7に吸着されたプラスミノーゲンを吸着部から分離するための溶出液Sが用いられる。洗浄液Cは、血液Bが吐出される前と後の2回使用される。したがって、複数の液体吐出器3C,3B,3C,3Sは、具体的には、血液吐出前に洗浄液Cを吐出する第1洗浄液吐出器3Cと、血液Bを吐出する体液吐出器3Bと、血液吐出後に洗浄液Cを吐出する第2洗浄液吐出器3Cと、溶出液Sを吐出する溶出液吐出器3Sとを含んでいる。
【0024】
液体吐出器3C,3B,3C,3Sとしては、生体に対して安全であり、液体を収容及び吐出できるものであればどのようなものを用いてもよく、本実施形態では、シリンジ21をシリンジポンプ23に装着して用いている。シリンジ21をシリンジポンプ23と共に使用した場合には、液体の吐出速度を精確に制御できるという利点がある。シリンジ以外にも、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂からなる容器を使用してもよい。具体的には、例えば、採血バッグ、血液成分分離バッグまたは輸血バッグとして使用されるような軟質樹脂製バッグ、試薬ボトルとして使用されるよう軟質樹脂製ボトル、あるいは軟質樹脂製チューブ状容器などを、液体吐出器3C,3B,3C,3Sとして使用することができる。液体吐出器3C,3B,3C,3Sの容量および大きさは、各液体の必要量や使用条件などに応じて適宜設定することができる。
【0025】
洗浄液Cとしては、生体に対して安全であり、装置内を洗浄すること、特に、吸着部7内に存在する目的成分以外の体液成分を吸着部外に流し出すことが可能な液体であれば、どのような種類のものを使用してもよい。本実施形態においては、生理食塩水を洗浄液Cとして使用しているが、これ以外にも、塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液等の各種緩衝液などを使用することができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、第1洗浄液吐出器3Cと第2洗浄液吐出器3Cとに、同じ組成の生理食塩水を充填して洗浄液Cとして用いているが、回収する目的成分Eの種類や、洗浄の目的などに応じて、異なる組成の食塩水、または、異なる種類の洗浄液Cを用いてもよい。また、血液Bの吐出の前後で同一種類・同一組成の洗浄液Cを用いる場合には、1つの洗浄液吐出器3を、血液吐出前と後の2回使用してもよい。血液Bの吐出前の洗浄は省略することも可能である。
【0027】
また、本実施形態においては、血液Bとして血漿を用いているが、血液Bとしてはこれに限らず、人体などから採取された全血や、全血から採取された血清、を用いてもよく、さらには、血液Bの代わりに、臍帯血、リンパ液、骨髄、尿、唾液、涙、汗等の体液など、回収可能な成分を含む液体を用いてもよい。人体からの全血の採取後、迅速に所望の血液成分を回収する必要がある場合には、遠心分離などの前処理操作を省略できるという観点から、未処理の血液(全血)をそのまま体液成分回収システム1に適用することが好ましい。
【0028】
溶出液Sとしては、生体に対して安全であり、吸着部7で吸着された体液成分を溶出させることが可能な液体であれば、どのような種類のものを使用してもよい。本実施形態においては、吸着部7に吸着されるプラスミノーゲンを溶出させることができる溶出液Sとして、トラネキサム酸溶液を使用しているが、これ以外にも、吸着部7で吸着される体液成分を溶出させるのに適したものを適宜選択して用いることができる。例えば、血液成分として、プラスミノーゲンを吸着部7に吸着させた場合には、ε−アミノカプロン酸、および塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液などを用いることができる。
【0029】
流路開閉機構5として、本実施形態では、図2に示す三方活栓31を用いている。図2(a)、(b)は、それぞれ、流路を閉じた状態を示す平面図および正面図、(c)は流路を開いた状態を示す平面図である。この三方活栓31は、一般的に用いられているものであって、円筒状の胴部32の外周に一直線上で互いに反対向きに配置された2本の主分岐管33a,33b、およびこれらの主分岐管33a,33bに対してほぼ直交に配設された副分岐管33cを備え、胴部32の内側に、各分岐管に対応する位置に形成されたほぼT字形の通路35aを内部に有する弁体35が回動自在に挿入されている。弁体35には、レバー37が設けられており、このレバー37を介して弁体35を胴部32内で回動させることにより、2本の主分岐管33a,33bと、弁体35内部のT字形通路35aとで形成される液体の流路の開閉が行われる。本実施形態では、一方の主分岐管33aが液体の流入口となり、他方の主分岐管33bが流出口となる。また、副分岐管33cは、その先端部にキャップ39が液密状態に取付けられており、液体を吐出する際のガス抜き孔として機能する。
【0030】
流入口となる主分岐管33aの外周面の上流端部には、ねじ溝が設けられており、シリンジである液体吐出器3C,3B,3C,3Sをその連結部の内周面に螺合させることにより、液体吐出器3C,3B,3C,3Sと流路開閉機構5とが互いに接続される。一方、流出口となる主分岐管33bの外側には、メス型の連結部材として、円筒状の連結部33eが設けられており、その内周面の下流側にねじ溝が形成されている。
【0031】
吸着部7としては、図3に側面図で示すように、円筒形のカラム41に吸着材43を充填したものを用いている。カラム41は、筒状のカラム本体45と、カラム本体45の両端部外周に螺合して、吸着部7の流入口および流出口をそれぞれ形成する流入側キャップ47および流出側キャップ49とで構成されている。なお、前記カラムは吸着材の流出を防ぐ機構を有していてもよく、例えば、吸着材の粒子及び破片の流出を防ぐメッシュを少なくともカラムの出口側の端に設置してもよい。特にカラム容積が小さい場合には、メッシュをカラムの出入口側ポートやキャップの少なくとも一方に融着するのが好ましい。
【0032】
カラム41の材質は、生体に対して安全性を有するものであればどのような材料を用いてもよいが、本実施形態では、ポリカーボネート樹脂を用いている。また、カラムの形状や大きさは、使用目的や使用環境などに応じて適宜選択することができる。
【0033】
吸着材43を形成する物質は、血液Bから回収しようとする目的成分Eの種類や使用環境などに応じて適宜選択される。目的成分Eとしてプラスミノーゲンを回収する場合には、親水性有機高分子化合物を含む担体に、線溶系成分であるプラスミノーゲンとの親和性を有するリガンドを結合させたものが好ましく使用される。本実施形態においては、硬質系多孔質樹脂、より具体的にはポリメタアクリルメタクリレート(PMMA)系多孔質樹脂にL−リジンを固定化したものを吸着材43として用いている。
【0034】
吸着材には、体液から所望の目的成分が吸着される。吸着材の種類は、採取しようとする目的成分の種類に応じて適宜選択することができる。吸着材としては、例えば、線溶系成分との親和性を有するリガンドと親水性有機高分子化合物を含む硬質系多孔質樹脂からなる担体とから構成される吸着材などが挙げられる。
【0035】
親水性有機高分子化合物は、水、体液、血液などとの適合性に優れている。したがって、親水性有機高分子化合物を含む担体から構成される吸着材は、血液有形成分および血漿タンパクの付着、凝血、溶血などや、血液凝固系の活性化、線溶系の活性化などを生じがたいので、本発明の体液成分回収システムに使用することが好ましい。
【0036】
担体に含有される親水性有機高分子化合物は、分子構造中に架橋構造を含んでいてもよい。親水性有機高分子化合物の概念には、例えば、水で膨潤する有機高分子化合物、水に湿潤しやすい有機高分子化合物などが包含されている。親水性有機高分子化合物の主構造を鎖状有機高分子化合物で構成する場合には、例えば、グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド類、トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類;無水フタル酸、無水マレイン酸などの酸無水物;エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどの多官能エポキシ化合物;エピクロロヒドリンなどの架橋剤などを使用して架橋構造を形成させることが好ましい。
【0037】
親水性有機高分子化合物が有する、親水性発現およびリガンド固定に寄与する官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、第4級アンモニウム基などの解離性を有する基、水酸基、アクリルアミド基、エーテル基などの非イオン性の親水性基などが挙げられる。親水性有機高分子化合物における官能基の数は、目的とする成分をより多く吸着して回収するためには、多いことが好ましいが、その反面、多くなるにしたがって、固定化されたリガンドによる非特異的吸着を生じやすくなる傾向がある。したがって、親水性有機高分子化合物1gあたりの前記官能基の数は、好ましくは50μmol以上、より好ましくは50〜1000μmol、さらに好ましくは170〜500μmolである。
【0038】
親水性有機高分子化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させた親水性(メタ)アクリレート系高分子化合物;酢酸ビニルなどを重合用原料とするポリビニルアルコール系高分子化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのエチレングリコール類を重合させたポリエチレングリコール系高分子化合物;前記ポリビニルアルコール系高分子化合物の存在下で、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させることによって得られた水酸基含有親水性(メタ)アクリレート系共重合体などが挙げられる。
【0039】
より具体的には、親水性(メタ)アクリレート系高分子化合物の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ポリビニルアルコール系高分子化合物の例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。ポリエチレングリコール系高分子化合物の例としては、ポリエチレングリコール(オキシエチレン単位数は、大きすぎると血液成分が粒子内の細孔部に進入しがたくなる傾向があるため、好ましくは3〜500の範囲内の数、より好ましくは3〜200の範囲内の数、さらに好ましくは3〜100の範囲内の数である)、ポリジエチレングリコールなどが挙げられる。また、水酸基含有親水性(メタ)アクリレート系共重合体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジ(メタ)アクリレートをポリビニルアルコールの存在下で重合させることによって得られた共重合体、グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジ(メタ)アクリレートをポリ酢酸ビニルの存在下で重合させることによって得られた共重合体などが挙げられる。
【0040】
また、親水性有機高分子化合物としては、前記以外にも、式:HO−C2m−OH(式中、mは3〜6の整数であり、アルキレン基(C2m)は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、また、水酸基が結合する炭素原子は第1級、第2級および第3級のいずれであってもよい)で表される2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなど3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、エリスリトール、スレイトールなどの4価アルコール;リビトール、アラビニトール、キシリトールなどの5価アルコール;アリトール、ダルシトール、グルシトール、ソルビトール、マンニトール、アルトリトール、イジトールなどの6価アルコールなどの多価アルコールを重合させることによって得られた多価アルコール系高分子化合物が挙げられる。多価アルコール系高分子化合物としては、例えば、ポリグリセリン、ポリエリスリトール、ポリソルビトールなどが挙げられる。また、親水性有機高分子化合物には、単糖類、二糖類(マルチトール、ラクチトールなど)などを重合させることによって得られた高分子化合物も包含される。
【0041】
本発明の体液成分回収システムにおける吸着部を構成する吸着材用の親水性有機高分子化合物の中では、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させることによって得られた親水性(メタ)アクリレート系高分子化合物;酢酸ビニルなどを重合用原料とするポリビニルアルコール系高分子化合物;前記ポリビニルアルコール系高分子化合物の存在下で、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させることによって得られた水酸基含有親水性(メタ)アクリレート系共重合体が、より好ましい。
【0042】
前記例示の親水性有機高分子化合物は、所望により、架橋剤の併用により架橋構造を形成させてもよいことはいうまでもない。また、親水性有機高分子化合物は、吸着材の製造において、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0043】
なお、本明細書において使用する用語「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の総称である。
【0044】
前記親水性有機高分子化合物を得るための重合方法としては、公知の方法が採用可能であり、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、これらの重合法に限定されるものではない。
【0045】
親水性有機高分子化合物の重量平均分子量は、必ずしも限られるものではないが、高圧下や高流量下での構造破壊を防ぐ観点から、一般的には、1000〜1000000が好ましく、3000〜800000がより好ましい。
【0046】
吸着材用の担体は、親水性有機高分子化合物を構成材料として含有する。担体は、その全体が実質的に親水性有機高分子化合物のみから構成されていてもよいが、親水性有機高分子化合物以外の物質からなる基材の表面を親水性有機高分子化合物で被覆したものであってもよく、親水性有機高分子化合物以外の物質と親水性有機高分子化合物との混合物から構成されたものであってもよい。
【0047】
吸着材用の担体は、例えば、球状粒子、破砕状粒子などの任意の粒子形状のものが用いられる。吸着性を高めるには被吸着物質(体液成分)との接触面積が大きいことが好ましいことから、前記形態の中でも球状粒子が特に好ましい。担体には、非多孔性のゲル型のものと、多孔性のポーラス型のものが包含され、本発明ではいずれを用いることもできるが、被吸着物質との吸着性を高める観点から、ポーラス型のものがより好ましい。
【0048】
担体粒子の平均粒径は、必ずしも限られるものではないが、比表面積を大きくして吸着性を高める観点および粘性の高い血漿または全血が通過する際の抵抗を軽減する観点から、一般的には、170μm以上であることが好ましく、170〜1000μmであることがより好ましく、300〜900μmであることがさらに好ましい。なお、前記平均粒径は、例えば、精密粒子分布測定装置〔ベックマンコールター(株)製、商品名:コールターマルチサイザーII〕で測定した粒子の粒度分布において、粒子数が最も多い粒子の粒径として把握することができる。
【0049】
なお、体液などの流体の通過時の抵抗によって担体が変形すると、流体の通過を妨げる可能性があるため、担体は変形しない程度の強度を持たせたものであることが好ましい。
【0050】
吸着材に用いられるリガンドとしては、例えば、塩基性アミノ酸、抗体などの生体由来物質;ジエチルアミノエチル基、トリメチルアミノメチル基などの有機化合物から誘導される基;シリカ、珪酸などの無機化合物などが挙げられる。これらの中では、生体由来物質が好ましく、塩基性アミノ酸がより好ましい。塩基性アミノ酸としては、L−リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられ、中でもL−リジンが好ましい。
【0051】
吸着材は、例えば、公知の方法に従って、担体とリガンド(またはリガンドを与える有機化合物)を結合させることによって得られる。担体とリガンドとの間の結合は、担体を構成する親水性有機高分子化合物とリガンドとの間の化学結合または物理力に基づく結合であることが好ましく、担体とリガンドとの間の結合が強固であることから、担体を構成する親水性有機高分子化合物とリガンドとの間の化学結合が特に好ましい。
【0052】
リガンドを親水性有機高分子化合物に化学的に結合させる方法としては、必ずしも限られるものではないが、例えば、親水性有機高分子化合物中に存在する反応性基をそのままの状態でまたは化学修飾した後に、リガンド分子中に存在する反応性基と化学反応させる方法が挙げられる。親水性有機高分子化合物中に存在する反応性基が水酸基である場合、水酸基の化学修飾には、エピクロロヒドリンを用いたエポキシ化、無水コハク酸を用いたカルボキシル化、N−ヒドロキシスクシンイミドを用いたアミド化などを採用することができる。
【0053】
親水性有機高分子化合物に結合されるリガンドの量は、所望の目的成分をより多く吸着し、回収する観点から、親水性有機高分子化合物1g当り50μmol以上が好ましく、170μmol以上がより好ましい。一方、リガンドの量が多くなるにしたがって非特異的吸着を生じる傾向があるので、非特異的吸着を防止する観点から、親水性有機高分子化合物に結合されるリガンドの量は、親水性有機高分子化合物1gあたり1000μmol以下であることが好ましく、500μmol以下であることがより好ましい。これらの観点を総合して、一般的に、親水性有機高分子化合物に結合されるリガンドの量は、親水性有機高分子化合物1gあたり50μmol以上が好ましく、50〜1000μmolがより好ましく、170〜500μmolがさらに好ましい。
【0054】
吸着材中のリガンドの量は、公知の方法で確認することができる。リガンドがリジンである場合、例えば、第14改正日本薬局方に記載のセミミクロケルダール法により一定重量の吸着材に含有されている窒素原子の量を定量し、その定量された窒素原子の量からリジン量を算出することができる。
【0055】
導入通路15を形成する連通チューブは、生体に対して安全性を有するものであればどのような材質のものを用いてもよいが、γ線滅菌、高圧蒸気滅菌、EOG滅菌、電子線滅菌など公知の滅菌方法に耐える、安全で柔軟な材質であることが好ましく、本実施形態においてはポリエチレン樹脂を使用している。
【0056】
流路切替機構9としては、図4に示す三方活栓51を使用している。図4において、(a)は廃液回収部11側に流路が切替えられている状態を、(b)は成分回収部13側に流路が切替えられている状態を示している。この三方活栓51は、本実施形態において流路開閉機構5として使用する図2の三方活栓31とほぼ同じ構造のものであるが、2つの主分岐管51a,51bの、それぞれの外側にメス型の連結部が設けられている。弁体55は、内部にT字形の通路55aを有する。一方、副分岐管51cの端部の外周面には、オス型の連結部となるねじ溝が形成されている。この三方活栓51において、一方の主分岐管51aが、血液成分等が流入する流入口となり、他方の主分岐管51bが、成分回収部13に連通する成分流出口9bとなり、副分岐管51bが、廃液回収部11に連通する廃液流出口9aとなる。
【0057】
廃液回収部11には、後に詳述するように、洗浄液C、血液Bの吸着部7に吸着されなかった成分、および必要に応じ溶出液の一部が廃液Wとして回収される。廃液回収部11としては、これらの廃液Wを収容可能であればどのような材質の容器を用いてもよいが、本実施形態では樹脂製のバッグをしている。廃液回収部11の容量、大きさ、形状などは、廃液Wの回収量や使用条件などに応じて適宜選択される。また、流路切替機構9と、廃液回収部11とを連通する廃液導出路17を形成する連通チューブは、別体の部材として形成し、螺合などの方法によって廃液回収部11に接続されるように構成してもよいが、廃液回収部11と一体的に形成してもよい。
【0058】
除菌機構19としては、必要な除菌作用を有し、かつ回収すべき目的成分Eを通過させることが可能であればどのようなものを用いてもよく、本実施形態においては除菌フィルタを使用している。除菌フィルタ19は、図1に示すように、円板状に形成された除菌フィルタおよびこれを収容するフィルタケースとからなる本体部19aと、流路切替機構9との接続部および目的成分の流入口を兼ねる除菌フィルタ流入部19bと、本体部19aによって除菌された目的成分を成分回収部13に向けて導出する除菌フィルタ流出部19cとを有している。除菌フィルタ流出部19cには、目的成分Eを成分回収部13に導入するための導入針61が取付けられている。導入針61は、一般に注射針として使用されているものである。
【0059】
目的成分Eを回収する成分回収部13としては、バイアル71を使用している。バイアル71は、瓶状のガラス製容器であるバイアル本体73と、バイアル本体73の開口部を覆うキャップ75とからなる。本実施形態において、目的成分Eであるプラスミノーゲンは、除菌フィルタ19の本体部19aを通過して除菌され、除菌フィルタ流出部を経た後、空気との接触をできるだけ避けるために、図1に示すようにキャップ75を貫通する導入針61を介してバイアル71内に導入される。したがって、キャップ75としては、導入針61が貫通可能であるように材質や形状等が選択されたものを使用することが好ましい。またバイアル本体73の材質は、ガラスに限らず、一般的に用いられている樹脂としてもよい。
【0060】
バイアル71のキャップ75の、導入針61が貫通している場所の近傍には、目的成分Eをバイアル71内に導入する際のガス抜き孔として機能するエアー針77が貫通して設置されている。エアー針77は、除菌のためのフィルタを備えた専用の注射針(エアー針)である。なお、安全性の確保のために、成分回収部13、除菌機構19及びエアー針77が滅菌された状態で供給されることが好ましく、廃液回収部11も滅菌された状態で供給されることがより好ましい。さらには、吸着材43が湿潤状態で滅菌されていてもよく、流路開閉機構5から流路切替機構7間に液体が充填された状態で滅菌されていてもよい。
【0061】
次に、上記の体液成分回収システム1を用いて血液Bから目的成分であるプラスミノーゲンを回収する方法について説明する。
【0062】
最初に、図4に示す流路切替機構9である三方活栓51のレバー57を操作して、流出口を、廃液流出口9a側に切り替えられた状態にしておく。すなわち、三方活栓51を図4(a)に示した状態にしておく。また、このとき、流路開閉機構5である三方活栓31は、図2(a),(b)に示されるように、流路を閉じた状態にしておく。
【0063】
次に、流路開閉機構5を、洗浄液Cである生理食塩水が充填された第1洗浄液吐出器3Cに接続し、必要に応じて洗浄液を少量流して流路開閉機構5内のエアーを副分岐管33cから排出した後、流路開閉機構5である三方活栓31のレバー37を操作して、図2(c)に示すように流路を開く。この状態で、シリンジポンプ23を操作して、洗浄液Cを所定量吐出する。吐出された洗浄液Cは、連通している流路を通って流路開閉機構5、吸着部7等を洗浄し(第1洗浄ステップ)、その後廃液Wとして廃液回収部11に回収される。
【0064】
続いて、流路開閉機構5の流路を閉じた後に、流路開閉機構5を第1洗浄液吐出器3C1から取り外し、血液Bが充填された体液吐出器3Bに接続する。その後、第1洗浄ステップと同様に流路開閉機構5の流路を開き、シリンジポンプ23を操作して血液Bを所定量吐出する。吐出された血液Bは、連通している流路を通って吸着部7に流入し、吸着部7内の吸着材43に目的成分のプラスミノーゲンが吸着される(吸着ステップ)。吸着部7で吸着されなかった血液成分は、廃液Wとして廃液回収部11に回収される。
【0065】
次に、流路開閉機構5の流路を閉じた後、流路開閉機構5を体液吐出器3Bから取り外し、洗浄液Cが充填された第2洗浄液吐出器3Cに接続する。その後、第1洗浄ステップと同様に流路開閉機構5の流路を開き、シリンジポンプ23を操作して洗浄液Cを所定量吐出する。吐出された洗浄液Cは、連通している流路を通って流路開閉機構5、吸着部7等の内部の吸着部7に吸着されなかった成分を洗浄し(第2洗浄ステップ)、廃液Wとして廃液回収部11に回収される。なお、第2洗浄液吐出器3Cは、第1洗浄ステップで使用した第1洗浄液吐出器3Cを再使用してもよい。
【0066】
次に、流路開閉機構5の流路を閉じた後に、流路開閉機構5を第2洗浄液吐出器3Cから取り外し、溶出液Sであるトラネキサム酸溶液が充填された溶出液吐出器3Sに接続する(溶出液吐出器接続ステップ)。溶出液吐出器3Sから溶出液Sを少量吐出し、目的成分Eの濃度が低い溶出液を廃液Wとして廃液回収部11に廃棄する(第3洗浄ステップ)。この第3洗浄ステップにおける溶出液Sの吐出量は、必要に応じて適宜設定可能であるが、流路開閉機構5からカラム、流路切替機構9間の内部体積にほぼ等しく、好ましくは0〜50mL、より好ましくは0.5〜5mLである。
【0067】
次に、流路切替機構9である三方活栓51の三方活栓51のレバー57を操作して、流出口を、図4(b)に示すように、成分流出口9b側に切り替える(流路切替ステップ)。
【0068】
次に、第1洗浄ステップと同様に流路開閉機構5の流路を開き、シリンジポンプ23を操作して溶出液Sを所定量吐出する。吐出された溶出液Sは、吸着部7内に流入し、吸着材43に吸着されたプラスミノーゲンを、吸着材から分離させ、除菌機構19を経て成分回収部13であるバイアル71に回収される(体液成分回収ステップ)。
【0069】
さらに、バイアル71に回収されたプラスミノーゲンは、所定量のウロキナーゼと混合されて活性化され、眼科における後部硝子体剥離の治療に使用するためのプラスミンが得られる。
【0070】
なお、第3洗浄ステップは、省略してもよい。また、本実施形態における上記体液成分回収方法においては、流路開閉機構5と各液体吐出器3C,3B,3C,3Sとの接続、取り外し、流路開閉機構5の開閉、および流路切替機構9の流路切替えの各操作は、手動で行っているが、外部の装置を利用して、自動で行うようにしてもよい。この場合、各液体吐出器3C,3B,3C,3Sの自動切換機構を付加してもよい。
【0071】
上記実施形態に係る体液成分回収システム1によれば、複数の液体吐出器3C,3B,3C,3Sと流路開閉機構5との接続及び取り外し、流路開閉機構5の開閉、および流路切替機構9の流路切替えという、単純で、かつ互いに混同しにくい操作のみの組み合わせによって、複数の異なる機能を有する液体を使用して目的成分を回収することができる。したがって、複数の流路切替機構を有する装置を用いる場合と比較して、操作が大幅に簡素化され、誤操作を防止することができる。また、本実施形態においては、4つの液体吐出器3C,3B,3C,3Sを使用したが、より多数の種類の液体を用いる必要がある場合、すなわち、より多数の液体吐出器を用いる必要がある場合でも、液体成分回収システムの部品としては、必要な液体の種類の数に応じて液体吐出器のみを追加すればよく、流路開閉機構5および流路切替機構9を追加する必要はない。これにより、装置の大型化およびコストの増大が抑えられる。また、操作においても、複数の液体吐出器と流路開閉機構5との接続及び取り外し、流路開閉機構5の開閉、および流路切替機構9の流路切替えの各操作の組み合わせのみで目的成分を回収することができる。したがって、流路開閉機構5および流路切替機構9を追加する場合に比べて、液体種類の追加による操作の複雑化を大幅に抑制することができる。
【0072】
また、流路開閉機構5から流路切替機構9までの間の体積を小さくできることから(具体的には10mL以下、好ましくは5mL以下、さらに好ましくは2mL以下)、使用する体液量の低減、および回収時間の短縮が可能となる。例えば、プラスミンの回収に用いる場合は、使用する血液量が少なくて済むため、特に有用である。
【0073】
また、体液成分回収システム1において、除菌機構19を、吸着部7と成分回収部13との間に設けているので、流路開閉機構5と複数の液体吐出器3C,3B,3C,3Sとの接続及び取り外しを順次繰り返す必要があっても、目的成分の生体に対する安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体成分回収装置および液体成分回収システムを示す概略構成図である。
【図2】(a)は図1の成分回収装置に用いられる流路開閉機構の流路を閉じた状態を示す平面図、(b)はその正面図、(c)は同流路開閉機構の流路を開いた状態を示す平面図である。
【図3】図1の成分回収装置に用いられる吸着部を示す側面図である。
【図4】図1の成分回収装置に用いられる流路切替機構を示す平面図であり、(a)は廃液回収部側に流路が連通している状態を、(b)は成分回収部側に流路が連通している状態を示している。
【符号の説明】
【0075】
1 体液成分回収システム
3C,3B,3C,3S 液体吐出器
5 流路開閉機構
7 吸着部
9 流路切替機構
9a 廃液流出口
9b 成分流出口
11 廃液回収部
13 成分回収部
14 液体成分回収装置
E 目的成分
W 廃液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる機能を有する液体にそれぞれ対応する、液体を吐出する複数の液体吐出器のいずれか1つに選択的に着脱可能な、吐出された液体の流路を開閉する流路開閉機構と、
前記流路開閉機構の下流側に連通して、前記液体吐出器から吐出された液体中の特定の目的成分を選択的に吸着する吸着部と、
前記吸着部の下流側に連通して、少なくとも2方向に流出口の切り替えを行う流路切替機構と、
前記流路切替機構の一方の流出口に着脱可能に接続されて、廃液を回収する廃液回収部と、
前記流路切替機構の他方の流出口に着脱可能に接続されて、前記吸着部で吸着された目的成分を回収する成分回収部と
を備えている液体成分回収装置。
【請求項2】
請求項1において、前記吸着部が、体液中の目的成分を選択的に吸着する体液成分吸着部である液体成分回収装置。
【請求項3】
請求項2において、回収すべき前記目的成分がプラスミノーゲンであり、前記吸着部が、硬質系多孔質樹脂にL−リジンを固定化した吸着材から構成される液体成分回収装置。
【請求項4】
請求項2または3のいずれか1項において、さらに、前記流路切替機構と前記成分回収部との間の流路の途中に、体液中の菌を除去する除菌機構を備えている液体成分回収装置。
【請求項5】
請求項4において、前記成分回収部と、前記除菌機構と、前記成分回収部のガス抜き孔を形成するエアー針とが滅菌された状態で供給される液体成分回収装置。
【請求項6】
請求項5において、さらに、前記廃液回収部が滅菌された状態で供給される液体成分回収装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項において、前記吸着材が湿潤状態で滅菌されてなる液体成分回収装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項において、前記流路開閉機構から前記流路切替機構間に液体が充填された状態で滅菌されてなる液体成分回収装置。
【請求項9】
複数の異なる機能を有する液体にそれぞれ対応する、液体を吐出する複数の液体吐出器と、
請求項1から8のいずれか1項に記載の液体成分回収装置であって、前記流路開閉機構が、前記複数の液体吐出器のいずれか1つに選択的かつ着脱可能に接続されている液体成分回収装置と
を備えている液体成分回収システム。
【請求項10】
請求項9において、前記複数の液体吐出器が、
流路を洗浄するための洗浄液を吐出する少なくとも1つの洗浄液吐出器と、
体液を吐出する体液吐出器と、
溶出液を吐出する溶出液吐出器とを含み、
前記吸着部が、前記体液吐出器から吐出された体液中の目的成分を選択的に吸着する体液成分吸着部である液体成分回収システム。
【請求項11】
請求項10において、体液が吐出される前に流路を洗浄するための洗浄液を吐出する第1洗浄液吐出器と、体液が吐出された後に流路を洗浄するための洗浄液を吐出する第2洗浄液吐出器とを含む液体成分回収システム。
【請求項12】
請求項10または11において、回収すべき目的成分がプラスミノーゲンであり、前記溶出液がトラネキサム酸溶液である液体成分回収システム。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載された液体成分回収システムを用いる体液成分回収方法であって、
前記流路切替機構の流出口を、前記廃液回収部に接続した状態で、前記流路開閉機構を前記第1洗浄液吐出器に接続し、流路開閉機構によって流路を開き、前記第1洗浄液吐出器から第1洗浄液を吐出して少なくとも前記吸着部を含む流路を洗浄する第1洗浄ステップと、
前記流路開閉機構を閉じて前記第1洗浄液吐出器に替えて前記体液吐出器に接続し、流路開閉機構によって流路を開き、前記体液吐出器から体液を吐出して特定の体液成分を前記吸着部に吸着させる吸着ステップと、
前記流路開閉機構を閉じて前記体液吐出器に替えて前記第2洗浄液吐出器に接続し、流路開閉機構によって流路を開き、前記第2洗浄液吐出器から第2洗浄液を吐出して少なくとも前記吸着部を含む流路を洗浄する第2洗浄ステップと、
前記流路開閉機構を閉じて、前記第2洗浄液吐出器に替えて前記溶出液吐出器に接続する溶出液吐出器接続ステップと、
前記流路切替機構の流出口を、前記成分回収部側に切り替える流路切替ステップと、
前記溶出液吐出器から溶出液を吐出して、前記吸着部に吸着された体液成分を回収する体液成分回収ステップと
を含む体液成分回収方法。
【請求項14】
請求項13において、前記溶出液吐出器接続ステップの後で、かつ、前記流路切替ステップの前に、前記溶出液吐出器から溶出液を一定量吐出する第3洗浄ステップをさらに含む体液成分回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−240609(P2009−240609A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92113(P2008−92113)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(301069384)クラレメディカル株式会社 (110)
【出願人】(504417733)
【Fターム(参考)】