説明

液体抜き取り装置

【課題】 電力用コンデンサのケーシング内に収容された絶縁油を短時間、かつ安価に抜き取ることができる抜き取り装置を提供する。
【解決手段】有底円筒状の装置本体2の先端面を、ケーシングCにON、OFF切り替え可能な磁石4によって密着固定する。装置本体2には、電動モータ8及び減速装置9によって回転及び前進後退させられ、ケーシングCに貫通孔を明ける孔明け工具11を設ける。装置本体2には、その内部に排油孔2dを介して連通した配管14を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力用コンデンサのケーシング等の大型の容器内に収容された液体を抜き取るための液体抜き取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変電所に設置されている電力用コンデンサから絶縁油を抜き取る場合には、コンデンサを重機で持ち上げて上下逆向きにする。そして、コンデンサのケーシングの上端部に設けられた注油口から絶縁油を抜き取っていた。しかし、この抜き取り方法では、莫大な時間と費用が必要であるため、絶縁油を短時間で容易に抜き取ることができる抜き取り装置の開発が要望されていた。
【0003】
そこで、この出願の発明者は、下記特許文献1に記載されている孔明け装置によってコンデンサのケーシングに孔を明けた後、その孔にホース等を接続して絶縁油を抜き取ることを考えた。
【0004】
【特許文献1】特開平5−138415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法では、孔明けが完了してからその孔にホースを接続するまでの間に多量の絶縁油がコンデンサから外部に漏れ出てしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、開口部を有する容器状の装置本体と、この装置本体に取り付けられた吸着手段と、上記装置本体の内部に回転可能に、かつ上記開口部に向かって接近、離間する方向へ移動可能に設けられた孔明け工具と、上記装置本体に設けられ、上記孔明け工具を回転させとともに、前進後退させる駆動手段と、上記装置本体の内部に接続された排出管とを備えたことを特徴としている。
この場合、上記装置本体には、開口部に沿って環状に延びるシール部材が設けられていることが望ましい。
また、上記装置本体の内部に磁石が設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明の液体抜き取り装置によって例えば変電所で用いられているコンデンサから絶縁油を抜き取る場合には、吸着手段により装置本体の開口部をコンデンサのケーシングの外面に固定する。その後、駆動手段によって孔明け工具を駆動し、ケーシングに孔を明ける。すると、ケーシング内に収容された絶縁油が孔から装置本体内に流入する。装置本体内に流入した絶縁油は、排出管から外部に排出され、例えば廃油用のドラム缶等に収容される。したがって、絶縁油の抜き取りに際しては、コンデンサを重機で持ち上げたり、上下を逆にする必要がない。よって、抜き取りに要する時間及び費用を大幅に少なくすることができる。しかも、ケーシングから流出した絶縁油は、直ちに装置本体によって受け止められるから外部に漏れ出ることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、この発明に係る液体抜き取り装置の一実施の形態を示す。こ実施の形態の液体抜き取り装置1は、変電所の電力用コンデンサから絶縁油を抜き取るためのものである。勿論、液体抜き取り装置1は、コンデンサの絶縁油の抜き取り以外にも用いることができる。
【0009】
液体抜き取り装置1は、装置本体2を有している。装置本体2は、円筒状をなしており、先端が開口し、基端が底部2aによって閉じられている。装置本体2の先端面2bは、液体の抜き取り対象物の外形に対応した形状に形成されている。この実施の形態では、コンデンサのケーシングCが円筒状をなす外周面を有していることから、円筒面の一部によって形成されている。装置本体2の開口部の内周面には、シール部材3が開口部に沿って環状に設けられている。このシール部材3がケーシングCの外面に押し付けられると、装置本体2とケーシングCとによって形成される内部空間が外部に対して密封される。
【0010】
装置本体2の外周面には、複数の磁石(吸着手段)4が設けられている。各磁石4は、装置本体2の周方向へ互いに離間して配置されている。磁石4は、ハンドル4aを図1に示すON位置に回動させると、磁石4が励磁状態になって吸着面4bに磁力が作用する。その磁力によって装置本体2の先端面2b及びシール部材3がケーシングCの外面に押し付けられる。その結果、装置本体2がケーシングCに密着状態で固定される。その一方、ハンドル4aをON位置からOFF位置までほぼ90°回動させると、磁石4が消磁状態になり、吸着面4bに磁力が作用しなくなる。したがって、装置本体2をケーシングCから取り外すことができる。
【0011】
装置本体2の底部2aには、取付孔2cが形成されている。この取付孔2cは、装置本体2の軸線から偏心した位置に配置されているが、軸線上に配置してもよい。取付孔2cには、取付部材5が嵌合されている。この取付部材5は、全周にわたって装置本体2に溶接固定されている。したがって、取付孔2cと取付部材5との間は、完全に密封状態になっている。取付部材5の中央部には、貫通孔5aが形成されている。
【0012】
取付部材5の取付孔2cから外部に突出した部分には、支持部材6が固定されている。つまり、支持部材6が装置本体2に取付部材5を介して固定されている。支持部材6は、装置本体2に直接固定してもよい。支持部材6には、二つの把持部6a,6bが設けられている。各把持部6a,6bを両手で持つことにより、液体抜き取り装置1を両手で支持することができる。
【0013】
支持部材6には、孔あけ装置7が設けられている。孔明け装置7は、支持部材6に設けられた電動モータ8を有している。電動モータ8は、その出力軸8aの軸線を貫通孔5aの軸線と一致させて配置されている。出力軸8aには、減速装置9及びチャック10が装置本体2側に向かって順次設けられている。減速装置9は、出力軸8aの回転を所定の割合で減速してチャック10に伝達する。しかも、減速装置9は、電動モータ8が正転するときには、チャック10を低速で正転させつつ装置本体2側へ接近移動させる。電動モータ8が逆転しているときには、チャック10を低速で逆転させつつ装置本体2から離間移動させる。
【0014】
チャック10には、孔明け工具11の基端部が着脱可能に取り付けられる。孔明け工具11の先端部は、貫通孔5aを回動可能にかつ軸線方向へ移動可能に貫通して装置本体2内に入り込んでいる。孔明け工具11と貫通孔5aとの間は、シール部材Sによってシールされている。装置本体2内に入り込んだ孔明け工具11の先端部には、ホールソー部11aが設けられている。孔明け工具11の先端面の中央部には、装着孔11bが形成されており、この装着孔11bには、孔明け工具11の一部をなすドリル12が挿脱可能に固定されている。ドリル12の先端部は、ホールソー部11aの先端から所定距離だけ突出させられている。
【0015】
電動モータ8を起動して正転又は逆転させると、減速装置9が孔明け工具11を正転又は逆転させながら、前進後退させる。したがって、この実施の形態では、電動モータ8及び減速装置9によって駆動手段が構成されている。なお、減速装置9及びチャック10の構造は、周知のものであり、それぞれの構造自体はこの発明との関連性がない。そこで、減速装置9及びチャック10の構造についてはその説明を省略する。
【0016】
装置本体2の底部2aには、排油孔2dが形成されている。この排油孔2dは、できる限り外周側に配置することが望ましい。場合によっては、装置本体2の周壁部2eに設けてもよい。装置本体2をケーシングCに取り付ける場合には、排油孔2dができる限り下側に位置するように装置本体2がケーシングCに取り付けられる。排油孔2dは、フィルター13によって覆われている。排油孔2dには、ゴムホース、フレキシブル管等からなる配管(排出管)14及び開閉弁15が接続されている。配管14には、絶縁油排出用のポンプを接続してもよい。
【0017】
装置本体2の周壁部2bの内周面には、電磁石16が設けられている。この電磁石16は、ホールソー部11a及びドリル12によってケーシングCに孔明け加工を行ったときに発生する切屑を磁気吸着するためのものである。電磁石16に代えて永久磁石を設けてもよい。
【0018】
上記構成の液体抜き取り装置1によってコンデンサのケーシングC内に収容された絶縁油を抜き取る場合には、まず装置本体2の先端面2bをケーシングCの外周面の下端部に押し付ける。その状態を維持しつつ磁石4を励磁する。すると、磁石4の磁力によって先端面2b及びシール部材3がケーシングCの外周面に密着される。その後、電磁石16を励磁するとともに、電動モータ8を起動して正転させる。モータ8を正転させると、孔明け工具11が正転しつつ前進する。そして、ドリル12がまずケーシングCを貫通する。その後、ホールソー部11aがケーシングCに貫通孔を明ける。このとき、ドリル12がホールソー部11aの回転中心として機能する。ドリル12及びホールソー部11aによる孔明け加工時に発生する切屑は、電磁石16によって磁気吸着される。
【0019】
ホールソー部11aによる孔明けが完了したら、電動モータ8を逆転させる。すると、孔明け工具11が逆転しつつ後退し、元の位置まで戻る。ホールソー部11aがケーシングCから抜け出ると、ケーシングC内に収容された絶縁油がホールソー部11aによって形成された貫通孔を通って装置本体2内に流入する。その後、開閉弁15を開くと、絶縁油が排油孔2dから配管14を通って外部に流れる。このとき、絶縁油に含まれる微細な切屑等の固形物や水分等は、フィルター13によって取り除かれる。なお、絶縁油は、廃油用のドラム缶や廃油槽に貯蔵され、再利用又は無害の状態に処理された上で廃棄される。絶縁油の抜き取りが完了したら、磁石4を消磁状態にし、抜き取り装置1をケーシングCから取り外す。そして、他のコンデンサからの絶縁油の抜き取りに供する。
【0020】
このように、抜き取り装置1によってコンデンサから絶縁油を抜き取り際には、装置本体2をケーシングCに磁石4によって固着するだけでよく、コンデンサを重機等によって持ち上げたり、上下を逆にしたりする必要が無い。したがって、抜き取りに要する時間及び費用を大幅に少なくすることができる。しかも、孔明け工具11によってケーシングCに形成された貫通孔が装置本体2によって密封状態に囲まれているから、ケーシングC内の絶縁油が外部に漏れ出てしまうような事態を確実に防止することができる。
【0021】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、ケーシングCが鋼材(磁性材)で構成されている関係から吸着手段として磁石4が用いられているが、ケーシング1が非磁性材で構成されている場合には、磁石4に代えて真空吸着手段が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施の形態を示す図であって、図2のY−Y線に沿う断面図である。
【図2】図1のX矢視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 液体抜き取り装置
2 装置本体
3 シール部材
4 磁石(吸着手段)
11 孔明け工具
8 電動モータ(駆動手段)
9 減速装置(駆動手段)
14 配管(排出管)
16 電磁石(磁石)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器状の装置本体と、この装置本体に取り付けられた吸着手段と、上記装置本体の内部に回転可能に、かつ上記開口部に向かって接近、離間する方向へ移動可能に設けられた孔明け工具と、上記装置本体に設けられ、上記孔明け工具を回転させとともに、前進後退させる駆動手段と、上記装置本体の内部に接続された排出管とを備えたことを特徴とする液体抜き取り装置。
【請求項2】
上記装置本体には、開口部に沿って環状に延びるシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体抜き取り装置。
【請求項3】
上記装置本体の内部に磁石が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体抜き取り装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−136900(P2008−136900A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323364(P2006−323364)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(391037814)株式会社東京エネシス (24)
【Fターム(参考)】