説明

液体描画装置

【課題】被吸入流動体の選択的な吸引排出により吸入排出量の超微小量化、描画の超精密化、装置の超小型化を図ることができるとともに、描画速度に優れ、生産性の高い液体描画装置を提供する。
【解決手段】被吸入流動体10を吸入排出する吸入排出手段11と、吸入排出手段11に被吸入流動体10を吸入させる吸入駆動部30と、被吸入流動体10を貯留する被吸入部20と、吸入排出手段11から被吸入流動体10を排出させる排出駆動部50と、排出された被吸入流動体10を被描画媒体61へ転写する描画部60と、吸入排出手段11に当接し回転する複数のローラ40と、を備え、吸入排出手段11は、開口部と該開口部に通じる空間を有する吸入排出セル12が複数配列された無端状のベルト部材であり、複数のローラ40に掛け渡されて回転し、吸入排出セル12ごとに、被吸入流動体10を被吸入部20において吸入して描画部60において排出する連続処理が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被吸入流動体を選択的に吸引排出する手段を備え、被描画媒体に描画を行う液体描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドを用いて基材(被描画媒体)上に液滴を着弾させることにより描画を行う描画装置が知られているが、このような描画装置は、半導体基板の配線パターンや液晶表示装置におけるカラーフィルターの画素パターンの描画等といった産業用途にも広く利用されている。
例えば、電気回路配線は、マスクを用いてのエッチングやメッキ等の複製技術にて行われてきたが、従来の技術では少量多品種な昨今の顧客ニーズに適応することが困難になってきており、金属ナノ粒子材料を用いたインクジェット方式による随時描画可能な技術の開発が行われている。
【0003】
しかしながら、高粘度な金属ナノ粒子を微細形状に描画する技術として、従来のインクジェット方式による描画では達成が困難である。これに対し、高粘度材料を微細形状に描画する方法として、静電吸引力にて高粘度材料を飛翔させる方法(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
特許文献1には、帯電した溶液の液滴を基材に吐出する液体吐出装置において、先端部から液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、ノズル内に溶液を供給する溶液供給手段と、ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備え、ノズル内の溶液が当該ノズル先端部から凸状に盛り上がった凸状メニスカスを形成させ、電界を集中させて高電圧にて液滴を飛翔させる技術が記載されている。
しかしながら、規定されたサイズのノズルは微細であり、高粘度材料を流動させるのは非常に困難であることが予想される。
【0005】
特許文献2には、インク担持体の一部を画像情報に従って加熱し、インク担持体とインクの界面あるいは界面近傍でインクを沸騰させ、沸騰により発生した気泡の圧力によってインクを飛翔させると同時に、電界発生用電極部によりインクに静電的な吸引力を作用させて飛翔を促進させ、画像記録を行う方法が記載されている。
しかしながら、飛翔しない液滴を再度回収する必要があり、液濃度変化等による品質低下が懸念される。
【0006】
一方、インク等の液体材料を選択的に吸引排出することにより、吸引排出量の超微小量化と描画の超精密化をはかり、高粘度な液材料を微細(例えば50μm以下)に描画することができる技術が特許文献3に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3には、浸透現象により液材料(被吸入流動体)を吸引空間内に吸入するための誘導体を用い、該誘導体を吸引空間外へ露出させることにより前記液材料の吸引及び排出を選択的に行う技術が記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載された描画装置のインクジェットヘッドに相当する吸引排出手段の形態はスタンプ状であり、連続描画が困難であり、描画速度や生産性の点で不十分であるという問題がある。
一方、生産性を高めるために、多数のインクジェットヘッドを千鳥状等に配列することにより長尺、大型なラインヘッドを構成したヘッドユニットを用いて描画を行う描画装置が知られているが、装置の小型化が困難となる。
【0009】
本発明の課題は、被吸入流動体の選択的な吸引排出により吸入排出量の超微小量化、描画の超精密化、装置の超小型化を図ることができるとともに、描画速度に優れ、生産性の高い液体描画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る液体描画装置は、
被吸入流動体を吸入排出する吸入排出手段と、
前記吸入排出手段に前記被吸入流動体を吸入させる吸入駆動部と、
前記吸入排出手段に吸入される前記被吸入流動体を貯留する被吸入部と、
前記吸入排出手段から前記被吸入流動体を排出させる排出駆動部と、
排出された前記被吸入流動体を被描画媒体へ転写する描画部と、
前記吸入排出手段に当接し回転する複数のローラと、を備え、
前記吸入排出手段は、開口部と該開口部に通じる空間を有する吸入排出セルが複数配列された無端状のベルト部材であり、複数の前記ローラに掛け渡されて回転し、前記吸入排出セルごとに前記被吸入流動体を前記被吸入部において吸入し前記描画部において排出する連続処理が可能であることを特徴とする液体描画装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体描画装置によれば、被吸入流動体の選択的な吸引排出により吸入排出量の超微小量化、描画の超精密化、装置の超小型化を図ることができるとともに、描画速度に優れ、生産性の高い液体描画装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液体描画装置の一実施態様を示す概略構成図である。
【図2】被吸入部における吸入排出手段及び駆動部の構成例を示す模式図である。
【図3】被吸入部の開口部と吸入排出手段の開口部の一例を示す拡大図である。
【図4】吸入排出手段が被吸入部において被吸入流動体を吸入する流れの一例を示す説明図である。
【図5】描画部における吸入排出手段及び排出電源部の構成例を示す模式図である。
【図6】吸入排出手段が描画部において被吸入流動体を排出する流れの一例を示す説明図である。
【図7】吸入排出手段が描画部において被吸入流動体を排出する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る液体描画装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
図1は、本発明の液体描画装置の一実施態様を示す概略構成図である。
図1に示すように、本発明の液体描画装置は、被吸入流動体10を吸入排出する吸入排出手段11と、吸入排出手段11に被吸入流動体10を吸入させる吸入駆動部30と、吸入排出手段11に吸入される被吸入流動体10を貯留する被吸入部20と、吸入排出手段11から被吸入流動体10を排出させる排出駆動部50と、排出された被吸入流動体10を被描画媒体61へ転写する描画部60と、吸入排出手段11と当接し回転する複数のローラ40とを備える。
吸入排出手段11は、開口部と該開口部に通じる空間を有する吸入排出セル12が複数配列された無端状のベルト部材であり、複数のローラ40に掛け渡されて回転し、被吸入流動体10を被吸入部20において吸入して描画部60において排出する連続処理が可能である。
【0015】
ローラ40の回転が無端状ベルト部材の吸入排出手段11に伝達され、吸入排出手段11は、図1では矢印の時計回りの方向に回転移動する。
回転移動は、例えば、無端状ベルト部材である吸入排出手段11の長さを300mmとして、ローラの回転が伝達されることによる移動速度を100mm/秒、周回速度を20rpmとすることができる。
【0016】
吸入排出手段11が図面の左から右方向へ移動して、被吸入部20へ到達した時点で、被吸入部20内部の被吸入流動体10を選択的に吸入排出手段11の内部に吸入する。次いで、吸入排出手段11が被描画部60へ到達してきた時点で、吸入排出手段11内部の被吸入流動体10を吐出させ、被描画部へ転写する。ここで、描画部60において移動プレート62を吸入排出手段11と同方向に、ほぼ同速度で移動させることにより、位置精度の良い転写を行うことができる。
【0017】
なお、被吸入部20と吸入駆動部30の設置数は、図1ではA及びBの2つが設置されているが、特に限定されず、必要に応じて適宜選択することができる。
被吸入部20に収容される被吸入流動体10としては、描画するのに用いられる液体であれば特に限定されず、必要に応じて適宜選択することができ、複数の被吸入部20にそれぞれ異なった被吸入流動体10を収容することができる。例えば、図1のAの被吸入部20には水を媒体とする金属ナノ粒子(例えば、銀、銅等の導電性ナノ粒子)を収容し、Bの被吸入部20には絶縁性の紫外線硬化樹脂を収容することができる。
【0018】
図2は、図1のAまたはBの拡大図であり、被吸入部20における吸入排出手段11及び吸入駆動部30の構成例を示す模式図である。
図2に示すように、吸入排出手段11は、吸入排出セル12と、吸入排出セル12に収容され被吸入流動体10に接触する誘導材14と、誘導材14に電荷を与える誘導材駆動部13とを備える。
誘導材14は、電荷を与えられることにより吸入排出セル12の前記開口部に向かって移動し、
誘導材14が前記開口部から外部に向かって露呈することにより、被吸入流動体10に接触し、誘導材14が元の位置に戻ることにより被吸入流動体10が吸入排出セル12の空間内に吸入され、次いで誘導材14が前記開口部から外部に向かって移動することにより吸入された被吸入流動体10が前記開口部から排出される。
【0019】
吸入排出セル12の材料としては、例えば、撥水性が高く絶縁性を有するシリコーンゴム材料(接触角度110°)または、プラスチック材料などが挙げられる。
吸入排出セル12の寸法としては、例えば、図2中aで示す隔壁17の高さが約0.1mmであることが好ましく、図3中gで示す隔壁17のピッチが約0.05mmであることが好ましい。
なお、吸入排出セル12は、図3に示すように、開口部が垂直断面において幅方向に鋭角に突出した端部を有し、該開口部の幅eが、隔壁により形成されるセル内部空間の幅fよりも狭い構造を有することが好ましい。
図3に示す例においては、fで示すセル内部空間の幅は0.04mm、eで示す開口部の幅は0.035mmであるが、この値に限定されない。
【0020】
吸入排出セル12の開口部を鋭角に突出した端部を有するエッジ形状とすることにより、被吸入流動体10の不要な流入を防ぎ、被吸入部20と吸入排出セル12とが移動により離れて行く際の被吸入流動体10の分離が容易となる。さらに、吸入排出セル12の開口部の幅を更に小さくすることによって、被吸入流動体10の排出時に電界集中が起きやすくなり、低電圧で飛翔させることができるようになる。
【0021】
吸入排出セル12は、開口部に向かって通じる空間を有し、空間は隔壁17により区画されてなり、前記開口部と隔壁17とで、被吸入流動体10に対する濡れ性が異なる領域を有することが好ましい。
具体的には、図3に示すように、吸入排出セル12の開口部周辺17aは、被吸入流動体10に対する濡れ性が小さい材料で構成されるか濡れ性を小さくするために撥水処理されてなり、吸入排出セル12の内部空間を形成する隔壁17の壁面17bは、被吸入流動体10に対する濡れ性が高い材料で構成されるか濡れ性を高めるために親水処理されてなることが好ましい。
吸入排出セル12の開口部周辺(吸入時に液体が接触している部分)17aは、被吸入流動体10に対して濡れ性が低い撥水材料、例えばシリコーンゴムを使用し、材料が撥水性に富まない材料の場合は、フッ素皮膜やシリコーン皮膜を形成する撥水処理を施すことが好ましい。一方、吸入排出セル12内部空間を形成する隔壁17の壁面17bには、放電処理等により濡れ性を高くする処理(親水処理、接触角度10°)を施すことが好ましい。
このように吸入排出セル12の開口部周辺を撥水性、内壁を親水性とすることにより、
被吸入流動体10の不要な流入を防ぐことができ、また一度吸入された被吸入流動体が毛細管現象により奥部までとりこまれる効果が得られる。
【0022】
誘導材14は液体状またはゲル状である。誘導材14としては、被吸入流動体10と同じ媒体を使用することができ、例えば、水にPVA(ポリビニルアルコール)を添加して粘度を高くしたものなどが挙げられる。
誘導材14は、吸入排出セル12内に収容され、その量としては、被吸入流動体10の吸入量を想定した量とすることが好ましい。例えば、図2に示すように、隔壁17の高さでもある吸入排出セル12の深さaが0.1mmの場合、誘導材14はbで示す0.04〜0.08mmの位置に満たされることが好ましい。cで示す0〜0.04mmの位置はガス空間である。
図2及び図3に示した例において、隔壁17のピッチgが0.05mmであって、形成される内部空間の幅fが縦横とも約0.04mmである場合、被吸入流動体10の吸入排出セルの1区画(空間)あたりの吸入量は約40ピコリットルとなる。
【0023】
誘導材駆動部13は、隔壁17と接合した絶縁性の支持体16と、支持体16に少なくとも一部を支持された電極15とからなる。
【0024】
電極15は、図に示す上下方向の端部は支持体から露出しており、それぞれ誘導材14と後述する吸入駆動部30及び排出駆動部50の接点電極と接続することができる。なお、図示していないが、図の奥行方向にも同様の形状の構造の誘導材駆動部13の電極15が配置されている。
【0025】
支持体16の材質としては、例えば、絶縁性のシリコーンゴムが挙げられる。電極15の材質としては、導電性材料(例えば、銅、タングステン、黒鉛等)が挙げられる。
図2中dで示す支持体16の厚み(高さ)としては約0.1mmが好ましく、電極15の直径としては約0.02mmが好ましい。
電極15は支持体16から上方向に吸入排出セル12の空間内に突出し、突出部分の高さは約0.08mmが好ましい。電極15の下方は支持体16の底部まで連通している。
【0026】
吸入駆動部30は、描画に応じた電気信号を発信する駆動用電源33と、吸入用電源33と接続された吸入用電極32と、グランド36に接続された除電用電極35とからなる。
吸入用電極32は、導電性材料からなる接点電極31を備え、誘導材駆動部13を構成する電極15と接して、前記電気信号を送る。除電用電極35は、グランド36に接続され、導電性材料からなる接点電極34を備え、誘導材駆動部13を構成する電極15と接して残留した電荷を除去する。
接点電極31,34は、誘導材駆動部13を構成する複数の電極15をまたがないように配置されている。
【0027】
接点電極31,34を構成する導電性材料としては導電性液体が好ましく、例えば、水銀が挙げられる。このような接点電極により、誘導材駆動部13の電極15と確実に接触状態を保つことが出来、導通することが出来る。
吸入用電源33と接続された吸入用電極32の接点電極31は、誘導材14を帯電させて移動させる。なお、吸入用電源33から発信される電気信号の電圧は50〜400V程度である。誘導材14に残留した電荷は、除電用電極35により除去される。
なお、図示していないが、図の奥行方向にも同様の形状の構造の吸入駆動部30が配置されている。
【0028】
被吸入部20は、被吸入流動体10を貯留する容器21と、誘導材駆動部の電極15と相対する対向電極24とを備え、容器21には、被吸入流動体10が外部から補給される吸入流動体補給口22と、被吸入流動体10が吸入排出手段11へ吸引される開口部23とが形成されている。
【0029】
電極15が、誘導材14を電荷のクーロン力により、吸入排出セル12開口部方向へ移動させた状態と、元の状態とに選択的に変化させることにより、被吸入部20に貯留した被吸入流動体10に誘導材14を接触させて、被吸入流動体10を吸入排出セル12内に吸引することができる。この動きを、図4(1)〜(5)により説明する。
【0030】
図4は吸入排出セル12への被吸入流動体10の選択的な吸入の流れの一例を示した図である。
まず、図4(1)に示すように、吸入排出手段11が図面の左から右の方向へ移動して吸入排出セル12の開口部と被吸入流動体10とが接近する。次いで(2)に示すように、吸入用電極32の接点電極31と電極15とが接触する。吸入駆動部30の電圧(吸入用電源33)をONにすることにより電圧(応答速度2kHz以上)が発生し、誘導材14が帯電する。帯電した誘導材14は、電極との斥力や対向電極24及び被吸入流動体10との引力により、被吸入部20側へ移動する。同時に、被吸入流動体10も、相対的に誘導材14に引き寄せられて移動する。なお、吸入駆動部30の電圧(吸入用電源33)がOFFの場合には、誘導材14の移動は起こらないため、被吸入流動体10は吸入されない(図示せず)。
【0031】
さらに吸入排出手段11が移動し、図4(3)に示すように接点電極31と電極15とが離れ、電荷が対向電極24側から除去されて非帯電の状態になった誘導材14が帯電前の位置に移動しようとする。これにより被吸入流動体10が吸入排出セル12内に取り込まれる。
次いで、図4(4)に示すように、除電用電極35の接点電極34と電極15とが接触することにより、誘導材14の電荷はさらに除去され、大気圧により元の位置に戻ろうとして、被吸入流動体10はさらに吸入排出セル12内に取り込まれ、図4(5)に示すように吸入が完了する。
【0032】
次に、吸入排出セル12内に取り込まれた被吸入流動体10の排出について図5〜図7により説明する。
図5は、描画部60における吸入排出手段11及び排出駆動部50の構成例を示す模式図である。
図5に示すように、排出駆動部50は、常時高電圧を発生している排出用電源53と、排出用電源53に接続された排出用電極52と、グランドに接続された除電用電極55とからなる。排出用電極52は、排出用電源53に接続され、導電性材料からなる接点電極51を備え、誘導材駆動部13を構成する電極15と接する。除電用電極55は、グランドに接続され、導電性材料からなる接点電極54を備え、誘導材駆動部13を構成する電極15と接して残留した電荷を除去する。
排出用電源53は、常時高電圧(400〜4000V)を発生している。図示していないが、図面の奥行き方向も同様な断面形状でつながっている。
【0033】
接点電極51,54を構成する導電性材料としては導電性液体が好ましく、例えば、水銀が挙げられる。このような接点電極により、誘導材駆動部13の電極15と確実に接触状態を保つことが出来、導通することが出来る。
【0034】
描画部60は、被描画媒体を吸入排出手段11と連動して移動させる基板からなる移動プレート62と、グランドと接続された導電性を有する材料からなる対向電極63とを備える。
被描画媒体61は、被吸入流動体10が転写される箇所であり、表面は被吸入流動体10との濡れ性の良い表面処理(例えば、大気圧プラズマ処理、UVオゾン処理、酸化チタン塗布等)が施されていることが好ましい。
移動プレート62は、被描画媒体61を移動させる基板であり、平坦性を維持する材料(例えば、ステンレス系等)からなる。
対向電極63は、導電性がある材料(例えば、銅、ステンレス、黒鉛等)からなり、グランド(電圧0)につながっている。また、移動プレート62に対向電極63の作用(導電性)を持たせた一体の一部品構成としても良い。
【0035】
電極15が、電荷のクーロン力により誘導材14を吸入排出セル12の開口部方向へ移動させた状態と元の状態とを選択的に変化させることにより、吸入排出セル12内に吸引された被吸入流動体10が吸入排出セル12の開口部から排出される。この動きを、図6(1)〜(4)により説明する。
【0036】
図6は、吸入排出セル12からの被吸入流動体10の選択的な排出の流れの一例を示した図である。
図6(1)に示す初期状態において、排出用電源53は常時ON状態であるが、排出用電源と接続された排出用電極52と誘導材駆動部13の電極15とが接していないので、電荷は発生していない。
次いで図6(2)に示すように、吸入排出手段11が図面の右から左方向へ移動し、排出用電極52と電極15とが接すると、電圧が発生し、誘導材14及び被吸入流動体10が帯電する。帯電した誘導材14及び被吸入流動体10は、対向電極63に引き寄せられて移動し、被描画媒体61に接触する。
【0037】
さらに吸入排出手段11が移動して、図6(3)に示すように排出用電極52と電極15とが離れ、除電用電極55と電極15とが接すると、誘導材14及び被吸入流動体10の電荷が除電用電極55の接点電極54から除去される。すると、誘導材14及び被吸入流動体10は大気圧により元の位置に戻ろうとする。しかしながら、被描画媒体61の濡れ性の良い表面処理により、図6(4)に示すように、誘導体14と被吸入流動体10とが分離して、被吸入流動体10のみが被描画媒体61に転写される。
【0038】
図7(1)及び(2)は、吸入排出セル12からの被吸入流動体10の選択的な排出の流れの他の例として、コロナ放電による被吸入流動体10の被描画媒体61への飛翔及び転写を示した図である。
排出用電極52と電極15とが接して、高電圧(例えば、2.5kV)が発生する場合、コロナ放電によるイオン風により被吸入流動体10が被描画媒体61へ飛翔する。この場合、描画部の対向電極63は無くてもよい。
【0039】
ここで、被吸入流動体10に対し、表面張力や粘度が大きい誘導材14を用いることにより、誘導材14は飛翔することなく、被吸入流動体10のみを飛翔させることができる。
例えば、水にPVA(ポリビニルアルコール)を添加することにより高粘度化した誘導材14を使用することができる。
また、コロナ放電の1mm以内はストリーマ状の放電を発生するので、吸入排出手段11の開口部から被描画媒体61の距離をその範囲以内に設定することにより、被吸入流動体10は飛散することなく飛翔して被描画媒体61に転写される。
【符号の説明】
【0040】
10 被吸入流動体
11 吸入排出手段
12 吸入排出セル
13 誘導材駆動部
14 誘導材
15 (誘導材駆動部の)電極
16 支持材
17 セル隔壁
20 被吸入部
21 容器(貯留容器)
22 被吸入流動体補給口
23 開口部
24 対向電極
30 吸入駆動部
31 接点電極
32 吸入用電極
33 吸入用電源
34 接点電極
35 除電用電極
36 グランド
40 ローラ
50 排出駆動部
51 接点電極
52 排出用電極
53 排出用電源
54 接点電極
55 除電用電極
60 描画部
61 被描画媒体
62 移動プレート
63 対向電極
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特許第3956222号公報
【特許文献2】特開2000−263789号公報
【特許文献3】特許第4549761号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸入流動体を吸入排出する吸入排出手段と、
前記吸入排出手段に前記被吸入流動体を吸入させる吸入駆動部と、
前記吸入排出手段に吸入される前記被吸入流動体を貯留する被吸入部と、
前記吸入排出手段から前記被吸入流動体を排出させる排出駆動部と、
排出された前記被吸入流動体を被描画媒体へ転写する描画部と、
前記吸入排出手段に当接し回転する複数のローラと、を備え、
前記吸入排出手段は、開口部と該開口部に通じる空間を有する吸入排出セルが複数配列された無端状のベルト部材であり、複数の前記ローラに掛け渡されて回転し、前記吸入排出セルごとに前記被吸入流動体を前記被吸入部において吸入し前記描画部において排出する連続処理が可能であることを特徴とする液体描画装置。
【請求項2】
前記吸入排出手段は、前記吸入排出セルと、前記吸入排出セルに収容され電荷の授受により該吸入排出セル内を移動して前記被吸入流動体を前記吸入排出セル内外に誘導する誘導材と、前記吸入駆動部または前記排出駆動部と前記誘導材との電荷の授受を仲介する誘導材駆動部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体描画装置。
【請求項3】
前記吸入排出手段の移動に伴い、所定の前記吸入排出セルが前記被吸入部の位置に来たとき、前記吸入駆動部から前記誘導体に電荷が与えられて該誘導材が前記開口部へ移動することにより前記被吸入流動体に接触し、ついで前記誘導材から前記電荷が除去されて該誘導材が元の位置に戻ることにより前記被吸入流動体が前記吸入排出セル内に吸入され、
前記吸入排出セルが前記描画部の位置に来たとき、前記排出駆動部から前記誘導材に電荷が与えられて該誘導材が前記開口部側へ移動することにより前記吸入された被吸入流動体が該開口部から排出されることを特徴とする請求項2に記載の液体描画装置。
【請求項4】
前記被吸入部は、前記被吸入流動体を貯留する容器と、前記誘導材駆動部の電極と相対する対向電極とを備え、
前記容器には、前記被吸入流動体が外部から補給される吸入流動体補給口と、前記被吸入流動体が前記吸入排出手段へ吸引される開口部とが形成されていることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の液体描画装置。
【請求項5】
前記吸入駆動部は、
描画に応じた電気信号を発信する吸入用電源と、
前記吸入用電源と接続され、導電性材料からなる接点電極を備え、前記誘導材駆動部の電極と接して前記電気信号を送る吸入用電極と、
グランドに接続され、導電性材料からなる接点電極を備え、前記誘導材駆動部の電極と接して残留した電荷を除去する除電用電極とからなり、
前記接点電極は、前記誘導材駆動部の複数の電極をまたがないように配置されていることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の液体描画装置。
【請求項6】
前記排出駆動部は、
常時高電圧を発生している排出用電源と、
前記排出用電源と接続され、導電性材料からなる接点電極を備え、前記誘導材駆動部の電極と接する排出用電極と、
グランドに接続され、導電性材料からなる接点電極を備え、前記誘導材駆動部の電極と接して残留した電荷を除去する除電用電極とからなることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の液体描画装置。
【請求項7】
前記接点電極を構成する導電性材料が、水銀であることを特徴とする請求項5または6に記載の液体描画装置。
【請求項8】
前記描画部は、被描画媒体を前記吸入排出手段と連動して移動させる移動プレートと、グランドと接続された導電性を有する材料からなる対向電極とを備えることを特徴とする請求項2から7のいずれかに記載の液体描画装置。
【請求項9】
前記吸入排出セルは、前記開口部が垂直断面において幅方向に鋭角に突出した端部を有し、前記開口部の幅が、該開口部に向かって通じる空間の幅よりも狭い構造を有することを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載の液体描画装置。
【請求項10】
前記吸入排出セルの前記開口部の周辺は、前記被吸入流動体に対する濡れ性が小さい材料で構成されるか濡れ性を小さくするために撥水処理されてなり、前記吸入排出セルの空間を形成する隔壁の壁面は、前記被吸入流動体に対する濡れ性が高い材料で構成されるか濡れ性を高めるために親水処理されてなることを特徴とする請求項2から9のいずれかに記載の液体描画装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−34947(P2013−34947A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173583(P2011−173583)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】