説明

液体検査装置

【課題】肉厚の厚い容器であっても、容器内にガソリン等の危険な液体が入っているか否かを判定でき、且つ、液体爆発物や酸・アルカリの液体も正確に判別可能とする。
【解決手段】液体検査装置10は、液体13の入った容器12の重量及び誘電率を計測する重量センサ14及び誘電率センサ15と、容器12の種類ごとの判定基準重量及び判定基準誘電率が記録されたデータベース18と、判定基準重量及び判定基準誘電率、並びに、計測重量と計測誘電率が入力される液体判定部24とを備える。液体判定部24は計測重量と計測誘電率が判定基準重量及び判定基準誘電率を満たすか否か評価し、満たさなければ液体13が危険物であると判断して報知器16を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体検査装置に関するものであり、特に、ペットボトル等の容器内にガソリン等の危険な液体が存在しないかを検査する液体検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旅客機等を利用する旅客には、事故防止の観点から飲料用の容器を含む手荷物検査が実施されているが、最近では、旅客を装ったテロリスト等が前記容器にガソリンなどの液体危険物(可燃物、爆発物等)を入れて機内に持ち込むことがある。
【0003】
従来、前記容器内の液体危険物の存否をチェックできる液体検査装置が開発されている。この液体検査装置は、容器に入れられた液体の誘電率や熱伝導率などの属性値を細かく計測し、該属性値を基準値と比較することにより、前記液体が水を主成分とする安全な飲料水であるか、或いは、ガソリン等の可燃物であるか否かを判定するように構成されている。
【0004】
この検査においては、図5に示すように、先ず、液体1が入った飲料用容器2を誘電率センサ3の一対の電極4,5の間にセットして、容器2の静電容量を計測する。次に、該計測した静電容量に基づいて、容器2内の液体1の誘電率を算出して基準値と比較して、該液体1が危険物であるか否かを判定している。
【0005】
例えば、液体1がエタノール等の可燃物を含む場合は、図6に示すように、エタノールと水とでは誘電率が異なるため、両者の混合割合に応じて混合液の誘電率が変化する。従って、前記誘電率を検知することにより、容器2内にエタノールが入っているか否かを判定することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−274255号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の従来装置は、検査可能な容器の種類を可能な限り多くするために、容器のサイズが280mLから2000mLまでのペットボトル等に対して、適切な液体検査を瞬時に実施できる。
【0007】
特に、肉厚が通常よりも厚い容器、或いは、形状が特殊な容器、例えば、ワインやウイスキー等の洋酒用ボトルを検査する場合は、該ボトル内にガソリン等の危険物が入っているか否かを正確に判定することができない場合がある。正確な判定が困難になる理由は、洋酒用ボトルに入っているワインやウイスキー等の充填量が予め判っていないこと、即ち、該ボトル内の液体の存在量(残存量)を考慮することなく、一定の閾値を判定基準として検査していることによる。又、誘電率のみに基づく液体検査方式においては、近年検査ニーズの高い液体爆発物、麻薬(覚醒剤)、酸・アルカリの液体を判定できないという問題があった。なお、X線や超音波などを使った検査装置が存在するが、これらは検査対象の密度情報を計測する方式であり、これらの方法が危険物検知に有効な理由は爆発物や麻薬あるいは酸・アルカリなどの溶液が一般に水に比べて高い比重を有することに起因する
尚、空港などに於ける容器内液体の検査の目的は、本来、液体の種類を同定するのではなく、ガソリン等の危険物が容器内に入っているか否かを識別する一次スクーリングであり、この点に着目したとき、収集すべき検査データは、容器内の液体のみの属性値に限定されず、検査対象となる容器および内容液体全体に関する有用情報、即ち、液体の入った
容器全体の重量も利用可能であって、該重量を液体検査の判定基準データとして利用することができる。例えば、図7に示すように、ワインのサイズ別の重量分布は、ある基準値を中心とする狭い範囲に限定されるため、前記容器の重量を計測することで、該計測データに基づく一次スクーリングの液体検査が可能になる。
【0008】
そこで、容器の肉厚や形状が特殊な場合でも、該容器内に危険な液体が入っているか否かを正確に判定でき、且つ、該液体が爆発物、麻薬(覚醒剤)又は酸・アルカリの場合でも判定できるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、容器内の液体が安全か危険かを検査する液体検査装置において、液体の入った前記容器の重量を計測する重量センサと、前記容器の種類ごとの判定基準重量が予め記録されたデータベースと、該判定基準重量及び計測重量を入力する液体判定部と、該液体判定部による判定結果を報知する報知器とを備え、前記液体判定部は前記計測重量を前記判定基準重量と比較して、前記液体が危険物であるか否かを判定するように構成してなる液体検査装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、上記データベースには、容器の種類、例えば、容器の形状・寸法やウィスキー、ワイン等の銘柄ごとに、判定基準重量のデータが予め記録されており、該記録データは判定基準重量として液体判定部に取り込まれる。又、液体判定部には重量センサによって計測された計測重量が入力され、この計測重量を判定基準重量と比較することで、容器内の液体が危険物であるか否かが判定される。
【0011】
その結果、例えば計測重量が判定基準重量の範囲にない場合は、容器内に危険な液体が入っていると判断し、その旨を表示ランプ等の報知器により検査官に報知する。従って、容器の肉厚や形状が異なっても、その影響を受けずに液体検査を実施できる。
【0012】
請求項2記載の発明は、容器内の液体が安全か危険かを検査する液体検査装置において、液体の入った前記容器の重量を計測する重量センサと、該容器内の液体の誘電率を計測する誘電率センサと、前記容器の種類ごとの判定基準重量、並びに、判定基準誘電率が予め記録されたデータベースと、該判定基準重量及び判定基準誘電率、並びに、計測重量及び計測誘電率を入力する液体判定部と、該液体判定部による判定結果を報知する報知器とを備え、前記液体判定部は前記計測重量及び計測誘電率を前記判定基準重量及び判定基準誘電率と比較して、前記液体が危険物であるか否かを判定するように構成してなる液体検査装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、データベースには、容器の種類、例えば、容器の形状・寸法やウィスキー、ワイン等の銘柄ごとに判定基準重量、並びに、判定基準誘電率の各データが予め記録されており、これらデータは液体判定部に判定基準データとして取り込まれる。又、液体判定部には重量センサ及び誘電率センサによって計測された計測重量及び計測誘電率が入力され、該計測重量及び計測誘電率を判定基準重量及び判定基準誘電率と夫々比較することで、容器内の液体が危険物であるか否かが判定される。
【0014】
その結果、例えば計測重量が判定基準重量の範囲内にない場合、或いは、計測誘電率が判定基準誘電率の範囲内にない場合は、容器内に危険な液体が入っていると判断し、その旨を表示ランプ等の報知器により検査官に報知する。従って、液体の入った容器の誘電率だけでなく重量も考慮して、液体危険物の存否を識別するので、容器の肉厚や形状が異なっても、その影響を受けずに液体検査を実施できる。
請求項3記載の発明は、上記誘電率センサは上下方向にて複数に分割された検出電極を有し、該複数の検出電極は上記容器の高さ方向に所定間隔を有して配置されている請求項1記載の液体検査装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、複数の検出電極により容器内の液体の液面高さを検出するので、該容器内に液体が満タン状態で入っているか否かが判断される。
【0016】
請求項4記載の発明は、上記検査対象となる容器の種類は、空港等の検査現場に応じて予め持ち込みが許可されたものに限定されている請求項1,2又は3記載の液体検査装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、被検査物すべき容器は、予め指定した種類の容器に限定される。例えば、国際空港等の検査現場に応じて、機内に持ち込み可能なペットボトル等の容器のサイズや銘柄を予め決定しておき、該決定された種別の容器のみを検査し、それ以外は検査しない。尚、被検査物が限定した容器であるか否かは、検査前に容器のバーコードを読み取ることにより自動識別が可能となる。又、全ての液体を入れたボトルを禁止する代わりに限定された容器のみの持込を許容することにより、乗客の不便を最小限にとどめつつ危険物の持込を防止することが可能となる。
【0018】
請求項5記載の発明は、上記データベースはインタネット通信機能を有する請求項1又は2記載の液体検査装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、機器ごとに新たなボトルの判断基準データを入力することなく、ネットワークを介して全ての機器に同様のデータを配信することができ、検査の水準を一定に保つことができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、上記データベースに記録された判定基準重量は、被検査物である容器の銘柄、ボトルの種類若しくは容量等の属性情報を指定して抽出される請求項1,2,3,4又は5記載の液体検査装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、容器内の液体判別を検査する前に、被検査物の属性情報、例えば、銘柄やボトルの種類、容量等の属性情報を指定し、それに基づいてデータベースに記録された判定基準重量データを抽出し、この抽出データを上記計測値と比較することによって、当該容器内の液体が危険物であるか否かが判定される。尚、被検査物の属性情報はキーボードやタッチパネル等によって入力できる。また、ボトルに添付されたバーコードを読み込むことにより入力することも可能である。更に、前記判定基準重量は具体的には標準重量範囲及び許容重量範囲により二段階で設定できる。この場合、属性入力の属性入力ステップにおいて、前記標準重量範囲と計測重量を相互に比較することによって、対象ボトルの種類を推定できる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明は、容器の重量のみの計測により容器内の液体を検査できるので、容器の肉厚が厚い場合、或いは、容器の形状が複雑な場合でも、液体が安全であるか否かを正確かつ容易に判別することができる。又、容器の誘電率を計測する必要がないうえに、従来判別が困難であった液体爆発物、麻薬(覚醒剤)、酸・アルカリに対しても判別することができる。又、データベースには検査対象である容器の正規の重量のみを記録し、誘電率を記録する必要はない。
請求項2記載の発明は、容器の誘電率に加えて重量も考慮して、容器内の液体が危険物であるか否かを識別できるので、容器の肉厚が厚い場合、或いは、容器の形状が複雑な場合でも、液体危険物の存否を正確に判別することができる。更に、液体爆発物、麻薬(覚
醒剤)、酸・アルカリの液体についても、本発明は正確かつ容易に判別することができる。
【0023】
請求項3記載の発明は、容器内の液体が満タン状態であるか否かを検出できるので、請求項2記載の発明の効果に加えて、テロリスト等が検査をすり抜けるために容器内に所定量以下の液体を入れた場合でも、かかる不正な行為を確実にチェックできるメリットを有する。
【0024】
請求項4記載の発明は、例えば化粧品などのような多種多彩な容器に入った液体を検査するためには膨大な判定基準重量の登録が必要となるが、これをあらかじめ指定された容器に限定することにより、請求項1,2又は3記載の発明の効果に加えて、その分だけ判定基準重量のデータも少なくて済み、該判定基準重量をデータベースに記録する手間が省けると共に、精度の高い液体検査を一層迅速に実施することができる。
【0025】
請求項5記載の発明は、容器の種別に関するデータをインタネット経由でデータベースに取り込むことができるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、データベースにデータを登録又は変更する場合に、該データの登録・変更作業をキーボード等で入力する手間を低減させることができる。
【0026】
請求項6記載の発明は、容器内の液体判別を検査する前に、被検査物の属性情報を指定し、それに基づいてデータベースに記録された判定基準重量データを抽出して上記計測値と比較することにより、
請求項1,2,3,4又は5記載の発明の効果に加えて、属性入力の属性入力ステップにおいて、対象ボトルの種類を推定できるため、容器内の液体判別の手順を簡略化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、容器の肉厚や形状が特殊な場合でも、該容器内に危険な液体が入っているか否かを正確に判定でき、且つ、液体爆発物、麻薬(覚醒剤)、酸・アルカリの液体も容易に判定できるという目的を、容器内の液体が安全か危険かを検査する液体検査装置において、液体の入った前記容器の重量を計測する重量センサと、該容器内の液体の誘電率を計測する誘電率センサと、前記容器の種類ごとの判定基準重量、並びに、判定基準誘電率が予め記録されたデータベースと、該判定基準重量及び判定基準誘電率、並びに、計測重量及び計測誘電率を入力する液体判定部と、該液体判定部による判定結果を報知する報知器とを備え、前記液体判定部は前記計測重量及び計測誘電率を前記判定基準重量及び判定基準誘電率と比較して、前記液体が危険物であるか否かを判定することにより達成した。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図3に従って説明する。本実施例の特徴は、検査現場で容器が未開封か開封済みかを入力し、その結果により未開封の場合には直ちに重量計測モードに入って液体検査を行う点である。その際、例えば、予め多数の容器に計測した重量のデータより、容器のカテゴリー(サイズ280mL、350mL等)の重量の許容範囲を定め、その範囲に計測値が入っておれば、容器の種別を画面表示する。ガラスやプラスチックの容器の場合には、その上で誘電率を測定して可燃性液体等の存否をチェックして、異常でなければ合格(安全)判定を表示する。もし重量から容器のカテゴリーを推定できないときは、容器のサイズを入力して判断する。又、開封品の場合も容器のサイズを入力し、それに基づいて誘電率の検査を行うが、この場合、誘電率センサは容器内の液面高さを検出するので、高い精度で液体検査を実施できる。また、開封品の場合においても、透明なボトルの場合、液体の量を例えば10%刻みで目測し入力することにより、重量を予測し判定を下すことも出来る。尚、本実施例の液体検査装置は、特に空港において容器内の液体を検査する際に好適に使用されるが、船舶や列車等の旅客輸送機関、或いは、劇場、スタジアム、官公庁等における容器内の液体の検査にも使用可能である。
【0029】
図1は本実施例に係る液体検査装置のセンサ検出部の回路配線図、図2は液体検査装置の外観構造の説明図であって、液体検査装置には液体判定部及び記憶部等を含むマイクロコンピュータが搭載されている。
【0030】
両図において、11は液体検査装置10上面の一側部に形成された検査台であり、検査台11には検査時に飲料用の容器(ボトル)12が傾斜若しくは直立状態で載置される。本実施例では、検査可能な容器12のサイズや種類は従来に比べて範囲が広く、ペットボトル、洋酒用ボトル、アルミニウム缶、スチール缶又はガラスビンのいずれでもよい。
【0031】
前記検査台11の下側には、液体13の入った容器12の重量を計測するための重量センサ14が設けられ、又、検査台11の側方には、容器12内の液体13の誘電率を測定するための誘電率センサ15が配設されている。更に、検査台11の上側には、青色ランプ16A及び赤色ランプ16Bを備えたアラーム付きの報知器16が取り付けられ、該報知器16は液体検査の結果に応じて自動的に作動する。例えば、容器12内に液体危険物が入っている旨の判定がなされた時は、赤色ランプ16Bが点灯すると共にアラームが鳴動する。
【0032】
又、液体検査装置10上面の他側部にはキーボード17が設けられ、該キーボード17は容器12のサイズ及び銘柄を含む種別に関するデータを記憶部(データベース18)又は判定部(液体判定部24)に入力する。又、キーボード17の上側には液晶表示器19が設置され、液晶表示器19はデータ入力値、センサ計測値及び液体判定結果などを画面表示する。
【0033】
更に、液体検査装置10の前面には赤外線スキャナー方式等のバーコード読み取り機20が取り付けられ、該バーコード読み取り機20は容器12外面に表示されたバーコードを読み取って、容器12のサイズ及び銘柄等の種別に関するデータをデータベース18に入力する。本実施例の液体検査装置10はインタネット通信機能を装備しているため、容器12の最新の種別データをデータベース18に随時直接取り込むことができる。
【0034】
図1に示すように、液体13の誘電率を計測する誘電率センサ15は、検出電極が上下方向において3つに分割され、該3つの検出電極21〜23は容器12の高さ方向において所定間隔を有して配置されている。尚、検出電極21〜23の容器12と反対側には対向電極(図示せず)が近接配置されている。
【0035】
上下両側の検出電極21,23は容器12の上部、下部と対応する高さ位置に夫々配設され、又、中間の検出電極22は容器12の中間部と対応する高さ位置に配設されている。従って、容器12内の液体13の液面高さに応じて、検出電極21〜23による計測値が変化するので、各検出電極21〜23の計測値に基づいて容器12内の液面高さ、即ち、液体13の充填度合を検知することができる。ここに、液体13の充填度合とは、未開封の容器12の満量、即ち、液体13の使用前の正規充填量に対する液量の充填割合をいう。
【0036】
前記重量センサ14及び誘電率センサ15の検出電極21〜23は夫々、CPUからなる液体判定部24にケーブル25〜28により電気的に接続され、各検出電極21〜23による3つの計測値は自動的に表示されるとともに、液体判定部24に選択的に入力できる。又、重量センサ14及び誘電率センサ15の各検出電極21〜23で計測された計測重量及び計測誘電率は、液体判定部24に自動的に送信されるように構成されている。
【0037】
又、液体判定部24にはデータベース18が接続されている。該データベース18は、
液体13の入った容器12の種類ごとの判定基準重量、並びに、液体13の属性データである判定基準誘電率(誘電率のしきい値)が多数、例えば、1万種類以上記録されている。
【0038】
本実施例では判定基準重量としては、図3に示す標準重量範囲A及び許容重量範囲Bを採用している。ここに、標準重量範囲Aとは、特定のボトル種別、例えば、350mLのペットボトルやブルゴーニュタイプのワインの標準的な容器12の重量を基準としたある範囲の重量をいう。この標準重量範囲A以内の重量が計測された場合は、液体判定部24によりその種別(カテゴリー)に属する種類の容器12が検査台11に置かれていると判断される。
【0039】
又、許容重量範囲Bとは標準重量範囲Aと同様に、標準的な容器12の重量を基準としたある範囲の重量をいうが、容器12を特定した上で、当該容器12内の液体13が安全な内容物と判断される閾値を意味し、更に言えば、容器12の製造上避け難い重量のばらつき(統計的な誤差値)を考慮した許容可能な最大範囲をいう。本実施例では、計測重量が許容重量範囲B以内にない場合は、容器12内の液体13が安全でないと判断する。このように、液体13が安全か否かの判定基準として許容重量範囲Bを採用することで、容器12の製造上発生する重量のばらつきを吸収除去できるので、より正確な液体検査を行うことができる。
【0040】
本実施例で検査可能な容器12の種類は、ジュース類、コーヒ類、ミネラルウォータ等が充填されたペットボトルや缶類、或いは、日本酒、焼酎、ウイスキー、ワイン、ブランデー等の酒類が充填されたビン類など多岐に渡り、容器12の形状やサイズの違いによっても種類が異なる。
【0041】
又、液体検査装置10の検査対象となる容器12は、検査現場などの条件に応じて予め決定された種別の容器12に限定することができる。例えば、行政サイドで機内に持ち込みが可能なペットボトル等の容器12の種類を予め決定しておき、該決定された容器12の種類のみを検査とし、それ以外の容器12については検査することなく、機内への持ち込みを禁止するようにしてもよい。
【0042】
而して、前記液体判定部24は、重量センサ14及び誘電率センサ15で計測された計測重量及び計測誘電率について、データベース18に記録された判定基準重量(標準重量範囲A、許容重量範囲B)及び判定基準誘電率と比較して、その結果に応じて容器12内の液体13が安全か否かを評価判定する。この判定結果は報知器16及び液晶表示器19に自動送信して、該報知器16及び液晶表示器19により検査官に瞬時に報知される。
【0043】
本実施例では、アルコール類の容器12の重量計測においては、最初は容器12の重量とのマッチングは行わず、表1に示すようにアルコール飲料を9つのサブカテゴリーに分け、計測した重量からどのカテゴリーの飲料であるかを推定する。実際にはボトルが推定したカテゴリーではない場合には、マニュアルでボトルカテゴリーを入力することも可能である。この場合、当該重量のマニュアル入力により前記カテゴリーの推定が正しくないと判断されたときは、次に重量の近い容器12のカテゴリーを推定する。以下同様の処理を繰り返すことにより、容器12の種別を最終的に同定する。
【0044】
【表1】

【0045】
このようにして、容器12の種別を同定した後に、前記計測重量が重量許容範囲Bに入っていた場合には合格とし、そうでない場合には表1に示したカテゴリーから銘柄ごとの重量データに切り替えて、前記同様の処理を行う。
【0046】
このように、液体検査装置10は容器12の検査に関して、従来計測していた誘電率の検査項目に加えて、ガラスビンを含むサイズの異なる重量を計測し、該計測値を液体検査するためのデータとして用いる。例えば、ワインや洋酒などの入った容器12において、土産品などの目的で開封せずに、テロリスト等によって旅客機内に持ち込まれるケースがあるが、これに対しては次の手順により対応できる。
【0047】
即ち、未開封の容器12に対応するには、開封前の容器12の種類ごとの判定基準値である重量及び誘電率をデータベース18に予め登録しておく。そして、容器12が未開封か開封済みかだけを入力し、未開封の場合には直ちに重量計測モードに入って検査する。その際、容器12のカテゴリー(サイズ280mL、350mL等)の重量許容範囲Bに計測値が入っておれば、容器12の種別を画面表示した上で誘電率の測定を行って可燃性液体等の存否をチェックする。その結果、該計測値が判定基準値に対して所定値以上差異がある場合は、報知器16を作動させて異常な検査結果が得られた旨をオペレータに報知する。
【0048】
本発明は、金属製の容器12の場合は、重量を測定して液体13の種類を判別し、又、非金属製の容器12の場合は、重量センサ14と誘電率センサ15により重量と誘電率を計測し、その組み合わせによって液体13の種類を判定するものである。即ち重量と誘電率の双方もしくは一方の計測値を、データベース18に登録した基準値データと比較して液体13を判定する。この検査原理は、容器12の材質に応じて重量単独、重量と誘電率の組み合わせ、又は誘電率のみのいずれかを測定することで、様々なボトル内の液体13を判定できる、この場合、容器12の材料がスチール缶又はアルミニウム缶、或いは、ガラス又はプラスチック等の非金属の種類を問わずに有効に適用することができる。
【0049】
又、ビン類の容器12、即ち、肉厚が大きいガラス製容器12や特殊な形状のガラス製容器12を検査する場合でも、予めその容器12自体の標準的な正規重量を計測してデータベース18に登録し、この登録データを判定基準として利用する。そして、重量センサ14により得られた計測データと比較することにより、液体13が危険物であるか否かを正確に識別することができる。
【0050】
更に、液体13の誘電率のみのデータに依存する従来の検査方式では、判定困難であった容器12内の液体危険物、即ち、麻薬などの薬物の入った液体、或いは、酸性又はアルカリ性の液体などの毒物液体などに対しても正確且つ有効に識別することができる。
【0051】
次に、本実施例による具体的な検査手順について図4を参照しながら詳述する。最初に、容器12の種別がぺットボトル、金属缶(アルミ缶若しくはスチール缶)、又はアルコールボトルの何れであるかを判断して選択入力する(S1〜S4)。例えば、ペットボトルを選択した場合は、容器12内に液体13が満量(未開封)入っているか否かを判断し、満量であれば容器12の重量を計測して標準重量範囲内であるか否かを判断する。そして、範囲内であれば、液体13の誘電率を計測して、計測値が所定のしきい値(閾値)を満たすか否かを判断する(S5〜S8)。
【0052】
その結果、しきい値以上であれば青色ランプ16Aを点灯表示し、容器12のサイズがデータベース18に登録されていれば、容器12のサイズを入力して、容器12が登録済みのものと同一であるか否かを判断する(S9〜S12)。同一である場合、或いは、S8において計測値が前記しきい値未満である場合は、赤色ランプ16Bを点灯表示した後にクリアして入力待ち状態にセットして、S13に移行する(S16〜S17)。尚、S13では、容器12の入力データに変更がないか否かを判断し、変更の有無に応じてS6又はS18若しくはS20に移行する。
【0053】
又、S7において標準重量範囲を超える場合は、容器12のサイズを入力して容器12の許容重量範囲内であるか否かを判断し、前記範囲内であればS8に移行し、そうでなければS16に移行する(S14〜S15)。
【0054】
一方、S5において、液体13が満量入ってなければ、S18又はS20に移行する。S18では、容器12のサイズを入力し、標準重量範囲内であるか否かを判断し、標準重量範囲以内であれば、誘電率センサ14の3つの検出電極21〜23の何れかを選択して、液体13の誘電率を計測する。そして、該計測値が所定のしきい値を満たすか否かを判断し、しきい値以下であれば、青色ランプ16Aを点灯表示した後に、クリアして入力待ち状態にセットして、S24に移行する(S18〜S23)。
【0055】
尚、S19又はS21においてYESであればS16に移行する。又、前記S24では、容器12の入力データに変更がないか否かを判断し、変更の有無に応じてS6又はS18若しくはS20に移行する。
【0056】
一方、S1において容器12の種別が金属缶の場合は、液体13が満量入っているか否かを判断し、満量でなければ検査不可の表示を行うが、満量であれば容器12の重量を計測して標準重量範囲内であるか否かを判断する。その結果、前記範囲内であれば青色ランプ16Aを点灯表示し、そうでなければ、容器12のサイズを入力して許容重量範囲内であるか否かを判断する。そして、許容重量範囲を越えていれば、赤色ランプ16Bを点灯表示した後にクリアして入力待ちの状態にする(S25〜S35)。
【0057】
又、S1において、容器12の種別がアルコールボトルの場合は、ワイン、ウイスキー又はブランデー等の種別を入力して容器12の重量を計測する。そして、該計測値が標準重量範囲内であるか否かを判断し、標準重量範囲を超える場合は、検査不可の表示を行った後にクリアして入力待ちの状態にする(S36〜S40)。
【0058】
一方、標準重量範囲内であれば、ワイン等の銘柄の第一候補を表示して一致すれば、計測値が許容重量範囲内にあるか否かを判断し、許容重量範囲内であれば、青色ランプ16Aを点灯表示した後にクリアして入力待ちの状態にする(S41〜S45)。尚、S42においてNOの場合は、ワイン等の銘柄の第一候補を除外してS38に戻り、また、S43においてNOの場合は、容器12の入力データを切り替えてS38に戻る(S46〜S47)。
【0059】
以上説明したように、本実施例によれば、データベース18には、容器12の種類、例えば、容器12の形状・寸法サイズやウイスキー、ワイン等の銘柄ごとの判定基準重量データ及び誘電率データが予め記録されており、該記録データは液体判定部24に参照データとして取り込まれる。又、液体判定部24には重量センサ14と誘電率センサ15で検出された計測重量及び計測誘電率が入力され、該計測重量及び計測誘電率を判定基準重量データ及び判定基準誘電率データと比較して、所定範囲内にあるか否かを判断する。
【0060】
而して、前記計測値が所定範囲以外のときは、容器12内の液体13が水を主成分とした安全な溶液ではなく、ガソリン等の危険物であると判断して、その旨をランプ又はアラーム音で報知すると共に画面表示する。従って、本発明は容器12の誘電率のみならず、容器12の重量も考慮して液体13を検査することにより、容器12の肉厚が厚くても、液体13が危険物であるか否かを正確に判別できる。又、液体爆発物、薬物、酸性又はアルカリ性の液体でも判定することができる。
【0061】
更に、複数の検出電極21〜23により容器12内の液体13の液面高さを検知するの
で、容器12内に液体13が満タン状態で入っているか、或いは、それよりも少ないかどうかを把握できる。従って、例えば、テロリスト等が容器12内に所定量以下の液体13を入れた場合でも、これを検知して検査ミスを未然に防止することができる。
【0062】
更に又、被検査物としての容器12の種類は、例えば、航空会社ごとに機内持ち込み可能と決定したペットボトルや所定規格のガラスビンに限定することにより、液体検査を一層正確に実施できる。この場合、容器12が限定されたものであるか否かは、容器12のバーコードを読み取ることで自動的に識別できる。
【0063】
ここで、ガソリン等の可燃性液体を容器12内に充填し、液体13の入った容器12の重量を意図的に変更して、正規重量と同じにすることも想定される。これに対しては、容器12の重量と液体12の誘電率とを組み合わせて判定するので、液体13の充填量の変更に伴う計測値の変更を液晶表示器19にて容易にチェックすることができる。
【0064】
更に、誘電率センサ15の検出部を構成する電極21〜23を容器12の上部、中間部、下部と対応して配置したことにより、液体13の液位が容器12内の正規の上方位置(満量)ではなく中間位置又は下方位置にあっても、容器12内の液体13の誘電率を計測できる。
【0065】
斯くして、容器12内の液体13の充填量を推定できるので、液体13が満量である場合のみ、重量センサ14で重量判定を行い、そうでない場合は誘電率センサ15による誘電率測定のみにより、液体13が危険か否かを判定することができる。
【0066】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施例を示し、液体検査装置のセンサ検出部の回路配線図。
【図2】一実施例に係る液体検査装置の外観構造例を示す斜視図。
【図3】液体検査の判定基準範囲(標準重量範囲及び許容重量範囲)を説明するグラフ。
【図4】本実施例の液体検査装置による液体検査例を示すフローチャート。
【図5】従来の液体検査装置を示す説明図。
【図6】水とエタノールの計測値の違いを説明するグラフ。
【図7】被検査物であるワインボトルの重量分布の一例を説明するグラフ。
【符号の説明】
【0068】
10 液体検査装置
11 検査台
12 容器
13 液体
14 重量センサ
15 誘電率センサ
16 報知器
17 キーボード
18 データベース
19 液晶表示器
20 バーコード読み取り機
21〜23 検出電極
24 液体判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液体が安全か危険かを検査する液体検査装置において、
液体の入った前記容器の重量を計測する重量センサと、
前記容器の種類ごとの判定基準重量が予め記録されたデータベースと、
該判定基準重量及び計測重量を入力する液体判定部と、
該液体判定部による判定結果を報知する報知器とを備え、
前記液体判定部は前記計測重量を前記判定基準重量と比較して、前記液体が危険物であるか否かを判定することを特徴とする液体検査装置。
【請求項2】
容器内の液体が安全か危険かを検査する液体検査装置において、
液体の入った前記容器の重量を計測する重量センサと、
該容器内の液体の誘電率を計測する誘電率センサと、
前記容器の種類ごとの判定基準重量、並びに、判定基準誘電率が予め記録されたデータベースと、
該判定基準重量及び判定基準誘電率、並びに、計測重量及び計測誘電率を入力する液体判定部と、
該液体判定部による判定結果を報知する報知器とを備え、
前記液体判定部は前記計測重量及び計測誘電率を前記判定基準重量及び判定基準誘電率と比較して、前記液体が危険物であるか否かを判定することを特徴とする液体検査装置。
【請求項3】
上記誘電率センサは上下方向にて複数に分割された検出電極を有し、該複数の検出電極は上記容器の高さ方向に所定間隔を有して配置されていることを特徴とする請求項2記載の液体検査装置。
【請求項4】
上記検査対象となる容器の種類は、空港等の検査現場に応じて予め持ち込みが許可されたものに限定されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の液体検査装置。
【請求項5】
上記データベースはインタネット通信機能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の液体検査装置。
【請求項6】
上記データベースに記録された判定基準重量は、被検査物である容器の銘柄、ボトルの種類若しくは容量等の属性情報を指定して抽出されることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の液体検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−157685(P2008−157685A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344801(P2006−344801)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000220000)東京ガス・エンジニアリング株式会社 (15)
【出願人】(591248577)東京理学検査株式会社 (5)
【Fターム(参考)】