説明

液体水相中の液体フッ素化油相のエマルジョン

液体水相中の液体油相のエマルジョンであって、a)エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より多くの、ヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せ、b)界面活性剤、およびc)水を含むエマルジョンは、化粧用配合物または化粧用濃縮物に有用である。ヒドロフルオロエーテルは、式(I)Cnmo−O−Cxyzで示され、式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体水相中の液体フッ素化油相のエマルジョン、および化粧用途におけるそのようなエマルジョンの使用に関する。
【0002】
相互参照の記載
本発明は、2006年2月24日に出願された米国仮特許出願第60/776573号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロフルオロエーテルおよびペルフルオロエーテルは、化粧製品に性能および美的利点を与えることができる特種な物質である。それらは、製薬分野において、例えば、酸素担体として、造影剤において、または診断薬においても有用である。さらに、それらは、洗浄組成物、例えば、織物柔軟仕上げ剤においても有用である。しかし、これらの物質は水または化粧油に不溶性であり、極めて低い界面エネルギーを有するので、それらは、化粧製品に容易に組み込むことができず、乳化するのが極めて困難である。ヒドロフルオロエーテルまたはペルフルオロエーテルを含むエマルジョンの調製に多くの研究努力がなされている。
【0004】
欧州特許出願第EP372848号は、ペルフルオロエーテルと、11.5〜17の範囲のHLB値を有する非イオン性(non-ionic)フッ素不含界面活性剤および水とを攪拌することによって製造される、3000〜8000の分子量を有するペルフルオロポリエーテルの水性エマルジョンを開示している。エマルジョンは織物柔軟仕上げ剤として使用し得る。
【0005】
米国特許第6113919号は、フルオロカーボンエマルジョン、および特に代用血液として使用することができる酸素担体としてのその使用を開示している。欧州特許第EP1146956号は、a)0.1〜99重量部のヒドロフルオロエーテル、およびb)99.1〜1重量部の水を含み、a)およびb)の合計が100部である、ミクロエマルジョンを開示している。ミクロエマルジョンは、ミクロエマルジョンの総重量の5〜30%の界面活性剤を使用することによって形成され、ミクロエマルジョンに存在する界面活性剤の総量の少なくとも50重量%はフッ素化界面活性剤である。欧州特許第EP1146956号は、洗浄剤、溶媒および送達系として有用なミクロエマルジョンを開示している。この欧州特許に論じられているように、ミクロエマルジョンはいくつかの点でエマルジョンと異なる。ミクロエマルジョンは、100nm未満の粒度を一般に有し、通常、適切な条件下に自発的に形成され、熱力学的に安定である。しかし、そのような小さい粒度を有する分散相は、必要な界面張力減少を生じるために、類似エマルジョンより多くの界面活性剤を必要とする。
【0006】
米国特許第5612043号は、化粧品および皮膚科に使用するための水中油型エマルジョンを開示している。それは、少なくとも以下の成分を含有する。0.5〜50、好ましくは5〜20重量%のペルフルオロポリエーテル、0.5〜10、好ましくは1〜3重量%のフルオロ界面活性剤、0.1〜0.3重量%の補助乳化剤、0.5〜10重量%の脂肪アルコール、および10〜90重量%のゲル化水性相。ゲル化剤は、エマルジョンの0.1〜60重量%の範囲であり得る。強烈な攪拌および80℃への加熱が、エマルジョンの調製に必要である。
【0007】
米国特許出願第2004/0116323号は、油相の密度および水性相の密度の差が0.007またはそれ未満の、透明液体油中水型または水中油型エマルジョンの形態の芳香組成物を開示している。分散相は、組成物の5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。連続相は、組成物の50〜95重量%、好ましくは65〜90重量%である。油相は、フッ素化油、例えばヒドロフルオロエーテルを含む。
【0008】
開示されている水中油型エマルジョンは、多くの用途において、特に化粧製品においてまたは化粧製品として、多くの利点を与えるが、初期減少量の水を使用する新規フッ素化水中油型エマルジョンを見出すことが有利であり、それによって、化粧製品のテクスチャー、感覚、コンシステンシー、貯蔵性、および活性剤の送達性の調節に関して、配合者に明確な利点を与える。他の成分のために、配合物により多くのスペースを与え、かつフッ素化油を組み入れるために最終製品を特別に配合する必要をなくすのに有効な方法で、フッ素化油を配合物に送達することが特に有利であると考えられる。
【0009】
米国特許出願第2004/0120975号は、10〜99重量%の過フッ素化化合物および1〜9重量%の水性媒体を含む化粧品担体としての、発泡水中油型エマルジョンを開示している。過フッ素化水中油型分散物において、油性媒体は、水性媒体から物理的に分離している。水性相をアニオンまたは親水性乳化剤と混合して、基剤二液発泡体を形成する。形成後に気泡を安定させるために非イオン性乳化剤が使用される。過フッ素化化合物を含む油相が、増加する添加速度で、水性発泡体に添加される。残念なことに、このような発泡組成物は、種々の短所を有する。例えば、それらは、輸送および保存に不都合であり、限られた貯蔵安定性を有し、最終用途が限定される。従って、米国特許出願第2004/0120975号は、初期減少量の水を使用する新規水中油型エマルジョンを見出す要求を満たしていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
意外にも、50重量%より多いヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを含む、液体水相中の液体フッ素化油相のエマルジョンを製造し得ることが見出された。
【0011】
本発明の1つの態様は、化粧用配合物または化粧用濃縮物の形態の、液体水相中の液体油相のエマルジョンであって、下記の物質を含むエマルジョンである。
a)エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より以上の、ヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せであって、該ヒドロフルオロエーテルは、式(I)で示される。
【化6】

(式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする);
b)界面活性剤;および
c)水。
【0012】
本発明の他の態様は、液体水相中の液体油相のエマルジョンであって、下記の物質を含むエマルジョンである。
a)エマルジョンの総重量に基づいて少なくとも50重量%の、式(I)で示されるヒドロフルオロエーテル:
【化7】

(式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする);
b)界面活性剤;
c)水;および
d)ペルフルオロエーテル。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、化粧用配合物または化粧用濃縮物を調製するプロセスであって、少なくとも以下の物質を混合することによって、液体水相中の液体油相のエマルジョンを製造する工程を含む方法である。
a)エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より多い、前記式(I)で示されるヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテル、またはそれらの組合せ;
b)界面活性剤;および
c)水。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、以下の物質を含む液体水相中の液体油相のエマルジョンの、化粧用配合物または化粧用濃縮物における、または化粧用配合物または化粧用濃縮物としての、使用である。a)エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より以上の、前記式(I)で示されるヒドロフルオロエーテル;b)界面活性剤;および、c)水。
【0015】
本発明のさらに他の態様は、液体水相中の液体油相のエマルジョンを調製するプロセスであって、少なくとも以下の物質を、混合する工程を含む方法である。
a)エマルジョンの総重量に基づいて少なくとも50重量%の、前記式(I)で示されるヒドロフルオロエーテル;
b)界面活性剤;
c)水;および、
d)ペルフルオロエーテル。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のエマルジョンは、液体水相中に液体油相を有する。これは、エマルジョンが実質的に発泡されていないことを意味する。「実質的に発泡されていない」とは、気相が本発明のエマルジョンに存在する場合に、気相の容量が、エマルジョンの総容量に基づいて、20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であることを意味する。最も好ましくは、気相がエマルジョンに組み込まれていない。
【0017】
本発明の1つの態様において、液体水相中の液体油相のエマルジョンが、化粧用配合物または化粧用濃縮物の形態であり、エマルジョンの総重量に基づいて、50重量%より多い、好ましくは少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%、特に、少なくとも75重量%の式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテル、またはそれらの組合せを含む。式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せの上限量は、エマルジョンの総重量に基づいて、好ましくは99%まで、より好ましくは95%までである。式(I)のヒドロフルオロエーテルとペルフルオロエーテルとの組合せを含むエマルジョンにおいて、式(I)のヒドロフルオロエーテルの量は、式(I)のヒドロフルオロエーテルおよびペルフルオロエーテルの総重量に基づいて、好ましくは80〜99%、より好ましくは90〜99%、最も好ましくは95〜99%である。
【0018】
本発明の他の態様において、液体水相中の液体油相のエマルジョンは、少なくとも50重量%、典型的に50重量%より多い、好ましくは少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%、特に、少なくとも75重量%の、式(I)のヒドロフルオロエーテル、および付加量のペルフルオロエーテルを含む。そのようなエマルジョンにおいて、付加量のペルフルオロエーテルは、式(I)のヒドロフルオロエーテルおよびペルフルオロエーテルの総重量に基づいて、好ましくは1〜20%、より好ましくは1〜10%、最も好ましくは1〜5%に過ぎない。
【0019】
式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテル、またはそれらの組合せは、「内相(internal phase)」とも呼ばれる分散油相を形成する。最も好ましくは、本発明のエマルジョンは、高内相比率(HIPR)水中油型エマルジョンである。一般に、HIPRエマルジョンは、セル(cells)を分離する薄膜を形成する連続層に分散した少なくとも74%の容量部分における多面セルの分散相(等半径の球の最も密集した配置)を特徴とする。
【0020】
式(I)のヒドロフルオロエーテルにおいて、
【化8】

nは、1〜12、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4の数字であり;mは、0〜25、好ましくは0〜21、より好ましくは0〜13、最も好ましくは0〜9の数字であり;oは、0〜25、好ましくは0〜21、より好ましくは0〜13、最も好ましくは0〜9の数字であり;m+o=2n+1であり;xは、1〜12、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4の数字であり;yは、0〜25、好ましくは0〜21、より好ましくは0〜13、最も好ましくは0〜9の数字であり;zは、0〜25、好ましくは0〜21、より好ましくは0〜13、最も好ましくは0〜9の数字であり;y+z=2x+1であり;但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする。
【0021】
好ましくは、ヒドロフルオロエーテルは式I’で示され、
【化9】

nは、1〜12、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4の数字であり;xは、1〜12、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4の数字である。
【0022】
ヒドロフルオロエーテルの特定の例は、C49−O−CH3、C49−O−C25、C49−O−C37、C511−O−C25、C37−O−C49、およびC49−O−C49である。最も好ましいヒドロフルオロエーテルは、C49−O−C25である。
【0023】
本発明のエマルジョンは、1、2またはそれ以上の種類の式Iのヒドロフルオロエーテルを含んでよいが、式Iのヒドロフルオロエーテルの総量は、本明細書に示されている範囲内であるべきである。
【0024】
本発明のエマルジョンが、低沸点(これは、一般に、周囲圧力および温度において100℃未満、典型的に、周囲圧力および温度において80℃未満の沸点を意味する)の式(I)のヒドロフルオロエーテルを主に含む場合、エマルジョンの安定性を高めるために、少なくとも110℃の沸点、好ましくは少なくとも125℃の沸点の式(I)のヒドロフルオロエーテル、またはペルフルオロエーテルも含むことが一般に望ましい。より高い沸点の式(I)のヒドロフルオロエーテル、またはペルフルオロエーテルの量は、式(I)の全てのヒドロフルオロエーテルおよび任意にペルフルオロエーテルの総重量に基づいて、好ましくは1〜20%、より好ましくは1〜10%、最も好ましくは1〜5%である。
【0025】
本明細書において使用される「ペルフルオロエーテル」という用語は、炭素原子、フッ素原子および酸素原子から本質的になる完全フッ素化モノマーまたはポリマー化合物を意味する。
【0026】
好ましくは、ペルフルオロエーテルは、室温および大気圧において液体であるペルフルオロポリエーテルである。本発明のエマルジョンに使用できるペルフルオロポリエーテルは、ペルフルオロアルキレンオキシド単位またはペルフルオロオキセタン環を含む化合物である。特に、ペルフルオロポリエーテルは、以下から選択される反復単位を含有する。
(A)鎖に沿って統計的に分布したC24OおよびCF2O;
(B)鎖に沿って統計的に分布したC24O、C36OおよびCFZO(ここで、Zは、FまたはCF3である);
(C)鎖に沿って統計的に分布したC36OおよびCFZO(ここで、Zは、FまたはCF3である);または
【化10】

(D)オキセタン環
(式中、A、TおよびXは、互いに同じかまたは異なり、ペルフルオロオキシアルキル、ペルフルオロポリオキシアルキルまたはペルフルオロアルキル基である)。
【0027】
ペルフルオロポリエーテルの末端基は、互いに同じかまたは異なってもよく、好ましくは、基F、CF3、C25およびC37から選択される。数平均分子量は、一般に500より多く、特に1,000〜10,000の範囲である。粘度値は、一般に、20℃において30〜5,000cSt(30×10-6〜5,000×10-62/sに対応する)である。
【0028】
ペルフルオロポリエーテルの特定の例を以下に示す。
(i)
【化11】

(ここで、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、FまたはCF3であり、pおよびqは整数であり、p/q比は5〜40の範囲である);これらの化合物およびそれらの調製方法は、英国特許第1104482号に記載されている;
(ii)
【化12】

(ここで、RfはC25またはC37であり、rは2より大きい整数、好ましくは10〜100である);これらの化合物およびそれらの調製方法は、米国特許第3242218号に記載され;そのような化合物の例は、DEMNUMの商標で市販されている(Daikin Industiries,Ltd.製造);
(iii)
【化13】

(ここで、ZはFまたはCF3であり、p、qおよびsは整数であり、p+s+qの合計は10〜300であり、s/q比は0.5〜5の範囲であり、p/(s+q)比は0.01〜0.4の範囲である);これらの化合物およびそれらの調製方法は、米国特許第3665041号に記載されている;
(iv)
【化14】

(ここで、sおよびtは互いに同じかまたは異なる整数であり、s/t比は0.5〜1.5である);これらの化合物の例およびそれらの製造方法は、米国特許第3715378号および第3665041号に記載され;そのような化合物の例は、FOMBLIN Zの商標で、Montefluos Ltd.,Montedison Group,Italyによって市販されている;
(v)
【化15】

(ここで、uは4〜500の整数である);そのような化合物の例は、KRYTOXの商標でDu Pont de Nemoursによって市販されている;
(vi)
【化16】

(ここで、aおよびbは、独立に、0〜3の整数である);
(vii)イタリア特許出願第19496 A/85に記載されているオキセタン構造を有する化合物;
(viii)CF2CF2CF2O単位を含むペルフルオロポリエーテル、およびCF2CF2O単位を含むペルフルオロポリエーテル;そのようなペルフルオロポリエーテルおよびそれらの調製は、EP特許出願公開第148482号および米国特許第4523039号に記載されている。
【0029】
前記の式において、p、q、r、s、tおよびuは、重量平均分子量が500より多く、好ましくは1,000〜10,000であるように選択されるのが好ましい。
【0030】
本発明のエマルジョンにおける好ましい液体ペルフルオロポリエーテルは、ペルフルオロポリメチルイソプロピルエーテルであり、それらは、IUPAC名トリフルオロメチル−ポリ[オキシ−2−トリフルオロメチル−1,1,2−トリフルオロエチレン]−ポリ[オキシ−ジフルオロメチレン]−トリフルオロメチルエーテルとして公知である。好ましいペルフルオロポリメチルイソプロピルエーテルは、以下の化学構造を有する。
【化17】

(式中、vおよびwは整数であり、v/w比は5〜40であり、vおよびwは、重量平均分子量が500より多い、好ましくは1,000〜10,000であるように選択される)。
【0031】
これらの化合物は、一般に、Montefluos S.p.Aによって製造され、Fomblin HCおよびFomblin Yの商品名で市販されている。そのような化合物は、米国特許第4803067号、第4959171号および第5093023号に開示され、それらは参照により全体が本明細書に組み込まれる。そのようなFomblin化合物の例は以下の製品である。Fomblin HC製品、例えば、1500の重量平均分子量を有するFomblin HC−04、3200の重量平均分子量を有するFomblin HC−25、および6250の重量平均分子量を有するFomblin HCR;Fomblin Y製品、例えば、1,500の重量平均分子量を有するFomblin Y04、3,000の重量平均分子量を有するFomblin Y25、および6,000〜7,000の重量平均分子量を有するFomblin YR。
【0032】
本発明のエマルジョンは、1、2またはそれ以上の種類のペルフルオロエーテルを含むことができる。
【0033】
化粧用配合物または化粧用濃縮物の形態の、本発明のエマルジョンは、以下の物質を含むことができる。i)1、2またはそれ以上の種類の式Iのヒドロフルオロエーテル、またはii)1、2またはそれ以上の種類のペルフルオロエーテル、またはiii)1、2、またはそれ以上の種類の式Iのヒドロフルオロエーテルと、1、2またはそれ以上の種類のペルフルオロエーテルとの組合せ;但し、それらの総量は、エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より多いものとする。
【0034】
本発明のエマルジョンは、エマルジョンを安定化するための界面活性剤b)も含む。界面活性剤の量は、エマルジョンの総重量に基づいて、好ましくは0.5%から、より好ましくは1%から、最も好ましくは2%から、好ましくは20%まで、より好ましくは10%まで、最も好ましくは5%までである。有用な界面活性剤は、非イオン性(nonionic)、アニオンまたはカチオン界面活性剤、または非イオン性界面活性剤とアニオン界面活性剤との組合せ、または非イオン性界面活性剤とカチオン界面活性剤との組合せを含む。
【0035】
好適な非イオン性界面活性剤は、米国特許第3929678号(Laughlinら)および米国特許第4285841号(Barratら)に開示されている。エマルジョンの安定化に好適な非イオン性界面活性剤の例は、以下の物質である。ポリエチレングリコール脂肪酸モノ−およびジエステル(例えば、PEG−8ラウレート、PEG−10オレエート、PEG−8ジオレエート、およびPEG−12ジステアレート)、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル(例えば、PEG−40グリセリルラウレートおよびPEG−20グリセリルステアレート)、アルコール−油エステル交換生成物(例えば、PEG−35ヒマシ油、PEG−25トリオレエート、およびPEG−60コーングリセリド)、ポリグリセリル化(polyglycerized)脂肪酸(例えば、ポリグリセリル−2−オレエートおよびポリグリセリル−10トリオレエート)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、プロピレングリコールモノラウレート)、モノ−およびジグリセリド(例えば、グリセリルモノオレエートおよびグリセリルラウレート)、ステロールおよびステロール誘導体(例えば、コレステロール)、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノラウレートおよびPEG−20ソルビタンモノラウレート)、ポリエチレングリコールアルキルエーテル(例えば、PEG−3オレイルエーテルおよびPEG−20ステアリルエーテル)、糖エステル(例えば、スクロースモノパルミテートおよびスクロースモノラウレート)、ポリエチレングリコールアルキルフェノール(例えば、PEG−10−100ノニルフェノール、およびPEG−15−100オクチルフェノールエーテル)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー108およびポロキサマー182)、および低級アルコール脂肪酸エステル(例えば、エチルオレエートおよびイソプロピルミリステート)。
【0036】
好適なイオン性界面活性剤の例は、以下の物質である。脂肪酸塩(例えば、ラウリン酸ナトリウム、およびナトリウムラウリルスカルコシネート(scarcosinate))、胆汁酸塩(例えば、コール酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウム)、リン脂質(例えば、卵/大豆レシチンおよびヒドロキシレシチン)、リン酸エステル(例えば、ジエタノールアンモニウムポリオキシエチレン−10オレイルエーテルホスフェート)、カルボキシレート(例えば、エーテルカルボキシレート、ならびにモノおよびジグリセリドのクエン酸エステル)、アシルラクチレート(例えば、脂肪酸のラクチルエステル(lactylic esters)、およびプロピレングリコールアルギネート)、スルフェートおよびスルホネート(例えば、エトキシル化アルキルスルフェート、アルキンベンゼンスルホン、およびアシルタウレート)、ならびにアルキル、アリール、およびアルキル−アリールスルホネートおよびホスフェート。好適なカチオン界面活性剤の例は、第四アンモニウム塩、ならびにN−アルキルジアミンおよびトリアミンのヒドロクロリド塩である。
【0037】
好ましい非イオン性界面活性剤は、以下の物質を含む。約1〜22個のエチレンオキシド単位を有するC8〜C18アルキルエトキシレート(いわゆる狭ピーク(narrow peaked)アルキルエトキシレートを含む)、およびC6〜C12アルキルフェノールアルコキシレート、特にエトキシレートおよび混合エトキシレート/プロポキシレート、アルキルジアルキルアミンオキシド、アルカノイルグルコースアミド、およびそれらの混合物。他の有用な非イオン性界面活性剤は、アルキルフェノールのポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンオキシド縮合物である。この種の市販非イオン性界面活性剤は、Igepal(登録商標)CO−630(GAF Corporationによって市販);および、Triton(登録商標)X45、X−114、X−100およびX−102(全てRohm & Haas Companyによって市販)を含む。これらの化合物は、一般に、アルキルフェノールアルコキシレート、好ましくはアルキルフェノールエトキシレートと称される。他の有用な非イオン性界面活性剤は、脂肪族アルコールと、1〜25molのエチレンオキシドとの縮合生成物である。脂肪族アルコールのアルキル鎖は、直鎖または分岐鎖、第一級または第二級であってよく、一般に、8〜22個の炭素原子を含有する。この種の市販非イオン性界面活性剤の例は、以下の製品である。Tergitol(登録商標)15−S−9(C11〜C15直鎖第二級アルコールと9molエチレンオキシドとの縮合物)、Tergitol(登録商標)24−L−6NMW(狭い分子量分布を有する、C12〜C14第一級アルコールと6molエチレンオキシドとの縮合物)(両方ともThe Dow Chemical Corporationによって市販);Neodol(登録商標)45−9(C14〜C15直鎖アルコールと9molエチレンオキシドとの縮合物)、Neodol(登録商標)23−6.5(C12〜C13直鎖アルコールと6.5molエチレンオキシドとの縮合物)、Neodol(登録商標)45−7(C14〜C15直鎖アルコールと7molエチレンオキシドとの縮合物)、Neodol(登録商標)45−4(C14〜C15直鎖アルコールと4molエチレンオキシドとの縮合物)(それらはShell Chemical Companyによって市販);およびKyro(登録商標)EOB(C13〜C15アルコールと9molエチレンオキシドとの縮合物)(The Procter & Gamble Companyによって市販)。他の市販非イオン性界面活性剤は、Shell Chemical Co.によって市販されているDobanol 91−8(登録商標)、およびHoechstによって市販されているGenapol UD−080(登録商標)を含む。この種類の非イオン性界面活性剤は、一般に、「アルキルエトキシレート」と称される。他の有用な非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシドと、プロピレンオキシドおよびプロピレングリコールの縮合によって形成される疎水性塩基との、縮合生成物である。この種の化合物の例は、BASFによって市販されているいくつかの市販Pluronic(登録商標)界面活性剤である。他の有用な界面活性剤は、エチレンオキシドと、プロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応から得られる生成物との、縮合生成物である。この種の非イオン性界面活性剤の例は、BASFによって市販されているいくつかの市販Tetronic(登録商標)化合物を含む。半極性非イオン性界面活性剤は、水溶性アミンオキシドを含む特種な非イオン性界面活性剤である。これらのアミンオキシド界面活性剤は、特に、C10〜C18アルキルジメチルアミンオキシドおよびC8〜C12アルコキシエチルジヒドロキシエチルアミンオキシドを含む。他の非イオン性界面活性剤は、アルキルポリサッカリドである。5または6個の炭素原子を含有する任意の還元サッカリドを使用することができ、例えば、グルコース、ガラクトースおよびガラクトシル部分を、グルコシル部分の代わりに使用することができる。脂肪酸アミド界面活性剤、C12〜C18ベタインおよびスルホベタイン(スルタイン)も公知の界面活性剤である。
【0038】
最も好ましい非イオン性界面活性剤は、直鎖アルキルエトキシレート、例えば、UniqemaからのBrijシリーズを含み、これらは、ラウリル、ステアリル、セチルまたはオレイルアルコールから誘導されるポリエチレンオキシド脂肪エーテルである。ラウリルアルコールまたはセチルアルコールから誘導されるポリエチレンオキシド脂肪エーテル、特にポリエチレンオキシド(4)ラウリルエーテル(商標Brij 30で市販);ポリエチレンオキシド(23)ラウリルエーテル(商標Brij 35で市販);および、ポリエチレンオキシド(20)セチルエーテル(商標Brij 58で市販)が特に好ましい。他の好ましい非イオン性面活性剤は、第二級アルコールエトキシレート、例えば、The Dow Chemical CompanyからのTergitol(商標)15−Sシリーズである。
【0039】
好ましくは、エマルジョンは、オストワルド熟成を防止するために、即ち、分散相の小さい液体粒子からより大きい液体粒子への油分散相の拡散を防止するために、添加剤を含有し得る。オスワルド熟成を防止するのに使用される添加剤は、高水不溶性の物質であり、該物質は、1)連続水性相において無視し得る拡散率を有し、2)分散相、例えば、天然油、例えば綿実油またはヒマワリ油;油相相溶性ポリマー、例えばポリイソブテンまたはポリエチレン;長鎖パラフィン、例えばヘキサデカン;またはシリコーン、例えばシリコーン油またはジメチコーンと相溶性である。好ましくは、オスワルド熟成を防止するのに使用される添加剤は、油分散相および添加剤の重量に基づいて、5重量%以下、より好ましくは2重量%以下の量で使用される。少なくとも50重量%の式(I)のヒドロフルオロエーテルを含む本発明の実施形態において、少なくとも110℃の沸点を有する前記のペルフルオロエーテルまたはヒドロフルオロエーテルを添加剤として使用して、オスワルド熟成を防止することができる。
【0040】
任意に、本発明のエマルジョンは、エマルジョンの油相において式(I)のヒドロフルオロエーテル、またはペルフルオロエーテルと混和性の非フッ素化希釈剤を含む。非フッ素化物質の例は、アルコール、例えば、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールまたは1−オクタノール、アルカン、例えばC5〜C12アルカン、イソドデカン、Isopar HまたはIsopar M、グリコールエーテルまたはグリコールエステル、例えばイソプロピルミリステートおよびイソプロピルパルミテート、またはシリコーン、例えばシクロメチコーン、ジシロキサン、トリシロキサン、Dow Corning OS−10またはDow Corning OS−20である。本発明のエマルジョンは、水不溶性物質も含んでよく、該物質は、式(I)のヒドロフルオロエーテル、またはペルフルオロエーテルと混和性でないか、または部分的にのみ混和性であり、例えば、ケトン、例えばアセトン、塩素化溶媒、芳香族溶媒、鉱油、ジメチコーン、セテアリールイソノナノエート、オクチルドデカノエート、およびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。任意の付加的希釈剤は一般に、エマルジョンの総重量に基づいて0%〜40%、好ましくは0%〜30%、より好ましくは0%〜10%で本発明のエマルジョンに存在する。
【0041】
本発明のエマルジョンに任意で存在してもよい他の成分は、補助剤または有益物質(benefit agents)、例えば、芳香剤、酸化防止剤、キレート化剤、UVフィルター、防腐剤、粘稠化剤、化粧活性成分、モイスチャライザー、保湿剤、皮膚軟化剤、乳白剤、真珠光沢付与物質、顔料、着色剤、染料または消泡剤を含み得る。任意付加的成分は、一般に、エマルジョンの総重量に基づいて0〜5%、好ましくは0.5〜3%、より好ましくは0.1〜1%で本発明の組成物に存在する。
【0042】
本発明のエマルジョンは、水も含む。その量は、エマルジョンにおける他の成分の重量%に依存する。防腐剤を水に添加するのが有利である。
【0043】
本発明のエマルジョンは、一般に、0.2ミクロン(μm)より大きい、典型的に、0.5ミクロン(μm)より大きい容積平均粒度を有する。本発明のエマルジョンは、一般に、Coulter LS 230 Laser Light Scattering Particle Sizer(Coulter Corp.)を使用して測定して50ミクロン(μm)まで、好ましくは20ミクロンまで、より好ましくは10ミクロンまで、最も好ましくは5ミクロンまでの、容積平均粒度を有する。
【0044】
エマルジョンは、種々の方法、好ましくは、当分野において周知のバッチ(batch)および連続法を含む機械的分散法によって、調製することができる。好ましい連続法(一般に、Pateらによって米国特許第5539021号、第3欄、第15行〜第6欄、第27行に記載;その箇所は参照により本明細書に組み込まれる)において、連続水性相を含有する第一流れを、第一導管に流し、第二導管に流される分散油相の第二流れと連続的に合流させる。第一および第二流れを、安定化量の界面活性の存在下に合流させて、分散剤に入れる。界面活性剤を第一流れまたは第二流れのいずれかに添加するか、または分離第三流れとして添加するが、好ましくは油相を含有する流れに添加する。流れの比率は、式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを含む前記パーセンテージの油相を有するエマルジョンを得るように、エマルジョン領域内で調節される。連続法における油相:水相:界面活性剤の流れの重量比は、一般に5〜10:1〜15:1、好ましくは10〜40:1〜4:1、より好ましくは10〜30:2:1、最も好ましくは15〜25:2:1である。エマルジョンを調製するのに使用される好ましい方法が、連続法である場合、油相は導管を流動し得るべきである。
【0045】
周囲温度において、溶媒で希釈せずに、流動可能であるのに充分に低い粘度である式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを使用する場合、エマルジョンを、周囲温度において、溶媒を使用せずに調製するのが好ましい。これに対して、周囲温度で固体であるかまたは高粘性液体であるために、周囲温度で導管を流動できない式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを使用する場合、それは熱または溶媒添加によって流動可能にすることができる。少量、例えば、5重量%以下、好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下の水相溶性物質、即ち、それ自体で、水中油型エマルジョンを形成することができない物質を、油相の乳化前に、油相に添加することができる。そのような水相溶性物質の例は、流動性調節剤、例えば、カルボマー、アクリル酸コポリマー、ポリアクリルアミド、ポリサッカリド、天然ゴム、およびクレー;防腐剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル;保湿剤、例えばグリセロール;pH調節剤;およびそれらの混合物である。
【0046】
意外にも、本発明のエマルジョンは、バッチ法で製造し得ることも見出された。バッチ法において、油相:水相:界面活性剤の比率は、好ましくは一般に、3〜40:2〜8:1、好ましくは4〜30:3〜6:1、より好ましくは5〜20:4〜5:1である。好ましくは、界面活性剤および水を前記の比率で合わせる。ある場合には、界面活性剤を溶融させ、均質水性相を形成するために、加熱することが望ましい。好ましくは、水性相を任意加熱段階後に室温に冷却し、剪断力に付し、その間に式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを添加する。しかし、バッチ法より小さい粒度およびより高い安定性のエマルジョンが一般に得られるので、前記の連続法が一般に好ましい。
【0047】
本発明のエマルジョンは、驚くほど安定である。一般に、それらは50℃の温度で少なくとも4週間にわたって、または45℃の温度で少なくとも12週間にわたって、容積平均粒度の容易に認め得る増加を伴わずに、安定であることが見出された。一般に、本発明のエマルジョンは、多重凍結融解サイクルにも安定である。本発明のエマルジョンを、部分化粧用配合物と任意の容量比で合わせて、前進した(advanced)化粧製品を製造し得る。本明細書において使用される「部分化粧用配合物」とは、1つまたはそれ以上の仕上げ成分を指し、これは、本発明のエマルジョンと合わせた際に、前進した、好ましくは完成した、化粧製品を形成する。「前進した化粧製品」という用語は、完成化粧製品、または本発明のエマルジョンと部分化粧用配合物とを合わせる前より完成品に近い製品を指す。好ましくは、前進した化粧製品は、消費者用に包装または販売される準備ができた完成化粧製品である。極端な場合、本発明のエマルジョンは、完成製品の全ての成分を含有してよく、部分化粧用配合物は水だけである。この場合、本発明のエマルジョンは完成品の濃縮物であり、これを水で希釈するだけで完成品が形成される。前進した化粧製品を調製するために、室温でブレンドするだけで一般に充分である。通常、特殊な処理法またはブレンド装置は必要ない。
【0048】
本発明によれば、部分化粧用配合物に一般に見られる成分、例えば、色、芳香、流動性調節剤、pH調節剤、および他の成分、例えば、活性剤、美観改変剤、および参照により本明細書に組み込まれるWO 01/54663、p.15〜p.22に記載されている補助剤を含むエマルジョンを調製することができる。しかし、前記成分を、本発明のエマルジョンに含まないことが望ましいと考えられる。例えば、色、芳香、流動性またはpHは、部分化粧用配合物に含んで、乳化した式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを主に含有する本発明のエマルジョンと合わせた場合に、より容易に調節し得る。本発明のエマルジョンおよび部分化粧用配合物は、同時に、または任意の順序で、合わせることができる。さらに、2つ以上のエマルジョンを部分化粧用配合物と合わせて、前進した化粧製品を形成することができる。例えば、1つまたはそれ以上の本発明エマルジョンを、水、増粘剤、芳香剤および着色剤を含有する部分化粧用配合物と合わせて、ボディーローションを形成することができる。完成化粧製品の例は、ハンドローション、ボディーローション、ボディーウォッシュ、コンディショナー、シャンプー、フェーシャルクリーム、フェーシャルローション、フェーシャルマスクおよびサンスクリーン組成物である。化粧製品に式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを組み込むことにより、化粧製品は、優れた保護特性および拡がり(spreading)特性を有する。
【0049】
本発明のプロセスは、調節された粒度を有するエマルジョンを再生する容易性、エマルジョンの長い貯蔵安定性、およびエマルジョンにおける少ない水の量により、化粧製品を配合する簡単かつ柔軟な方法を与える。
【0050】
a)少なくとも50重量%の式(I)のヒドロフルオロエーテル、b)界面活性剤、c)水、およびd)ペルフルオロエーテルを含む本発明のエマルジョンは、限定的ではないが、特に、化粧用組成物または化粧用濃縮物において、または化粧用組成物または化粧用濃縮物として、有用である。他の用途は、生物活性剤を投与するための治療用または診断用組成物である。薬学的使用の例は、特に代用血液としてまたは代用血液の製造用の濃縮物として、使用することができる酸素担体である。診断用途の例は、特にX線撮影法、超音波撮影法または核磁気共鳴画像法による診断に役立つ造影剤である。エマルジョンは、洗浄剤または織物柔軟仕上げ組成物においても有用である。エマルジョンは、熱伝導流体、例えば潤滑剤、または金属加工流体しても有用である。エマルジョンは、紙、生地または組積造(masonry)のような材料の表面特性を改質するための被覆剤としても有用である。しかし、化粧用組成物または化粧用濃縮物における、または化粧用組成物または化粧用濃縮物としての使用が、特に好ましい。
【0051】
以下の実施例は、例示目的に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。全てのパーセンテージは、他に指定されない限り重量による。エマルジョンの粒度は、Beckman Coulter LS 230 Particle Size Analyzerを使用して測定される。
【実施例】
【0052】
実施例1(連続法)
3Mからの98%のCF−76 Cosmetic Fluid(エチルペルフルオロブチルエーテル、エチルペルフルオロイソブチルエーテル、密度=1.43g/mL)および2%のFomblin HC−25(商標)の油相流れを、室温で、2”(2インチ、5.08cmに相当)Oakesローターステーターミキサーに、10mL/分で供給する。Fomblin HC−25は、密度=1.9g/mLおよび重量平均分子量3200を有するペルフルオロポリメチルイソプロピルエーテルの商標である。以下の流れもミキサーに供給する。i)1.2mL/分における水性流れであって、室温を有し、水および防腐剤パッケージ(水性流れの総重量に基づいて0.6%フェノキシエタノール、0.2%EDTA、および0.2%ソルビン酸カリウム)を含有する水性流れ、およびii)0.6mL/分における界面活性剤流れであって、50% Brij 30(ポリエチレンオキシド(4)ラウリルエーテルの商標)と50% Brij 35(ポリエチレンオキシド(23)ラウリルエーテルの商標)との混合物である界面活性剤流れ。界面活性剤流れは、50℃の温度で供給し、ミキサーに入る前に、水の流れと合流させる。ミキサーは、15℃のジャケット温度において1000rpmで稼動させる。これらの条件で形成されたエマルジョンは、組成物の総重量に基づいて87.9%の分散油相を含み、1.1ミクロン(μm)の容積平均粒度を有する。
【0053】
実施例2(連続法)
100%のFomblin HC−25(ペルフルオロポリメチルイソプロピルエーテルの商標)の油相流れを、室温で、実施例1と同じ2”Oakesローターステーターミキサーに、20mL/分で供給する。1.8mL/分における実施例1と同じ水性流れ、および1.2g/分における実施例1と同じ界面活性剤流れも、ミキサーに供給する。水の流れおよび界面活性剤流れを、実施例1のように合流させ、ミキサーを実施例1のように稼動させる。これらの条件で形成されたエマルジョンは、92.7%の分散油相を含み、3.2ミクロンの容積平均粒度を有する。
【0054】
実施例3(バッチ法)
9.3gの水、1.5gのBrij 35(ポリエチレンオキシド(23)ラウリルエーテルの商標)、および0.6gのBrij 58(ポリエチレンオキシド(20)セチルエーテルの商標)を、2oz(60mL)のガラスジャーで合わせ、これを加熱して界面活性剤を溶融させ、混合して均質溶液を形成する。一旦界面活性剤溶液が均質になったら、それを室温に冷却し、Cowlesブレードミキサーによって500rpmで攪拌する。界面活性剤溶液を攪拌すると共に、CF−76 Cosmetic Fluidの油相を、40.1gがエマルジョンに組み込まれるまでゆっくり添加する。このエマルジョンは、78%の分散油相を含み、21.7ミクロン(μm)の容積平均粒度を有する。室温で2日後に、このエマルジョンの表面に透明な水層が形成し始めるが、エマルジョンの粒度は顕著に変化しない。2日後に、容積平均粒度は18.9ミクロンである。
【0055】
実施例4(バッチ法)
15gの水、2.5gのBrij 30(ポリエチレンオキシド(4)ラウリルエーテルの商標)、および2.5gのBrij 35(ポリエチレンオキシド(23)ラウリルエーテルの商標)を、2oz(60mL)のガラスジャーで合わせ、これを加熱して界面活性剤を溶融させ、混合して均質溶液を形成する。一旦界面活性剤溶液が均質になったら、それを室温に冷却し、IKA Ultra Turexミキサーによって11,000rpmで攪拌する。界面活性剤溶液を攪拌すると共に、98%のCF−76 Cosmetic Fluidおよび2%のFomblin HC−25からなる実施例1と同じ油相を、49.25gがエマルジョンに組み込まれるまで、ゆっくり添加する。このエマルジョンは、71.1%の分散油相を含み、1.82ミクロンの容積平均粒度を有する。
【0056】
実施例5(バッチ法)
10.5gの水、および3.57gのTergitol 15−S−12(C11−15 pareth−12(アルキルオキシポリエチレンオキシエタノール)のThe Dow Chemical Companyの商標)を、実施例4のように、合わせ、加熱し、冷却し、攪拌する。98%のCF−76 Cosmetic Fluidおよび2%のFomblin HC−25からなる実施例1と同じ油相を、42.38gがエマルジョンに組み込まれるまで、ゆっくり添加する。このエマルジョンは、75.1%の油相を含み、0.99ミクロンの容積平均粒度を有する。
【0057】
実施例6(バッチ法)
16.65gの水、および5.57gのTergitol 15−S−12を、実施例5のように、合わせ、加熱し、冷却し、攪拌する。100%のFomblin HC−25(ペルフルオロポリメチルイソプロピルエーテル)からなる油相を、23.22gがエマルジョンに組み込まれるまで、ゆっくり添加する。このエマルジョンは、51.2%の油相を含み、10.23ミクロンの容積平均粒度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧用配合物または化粧用濃縮物の形態の、液体水相中の液体油相のエマルジョンであって、
a)式(I)、
【化1】

(式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする)
で示される、エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より多い、ヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せ;
b)界面活性剤;および
c)水
を含む、エマルジョン。
【請求項2】
少なくとも60重量%の式(I)のヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
液体水相中の液体油相のエマルジョンであって、
a)エマルジョンの総重量に基づいて少なくとも50重量%の、式(I)で示されるヒドロフルオロエーテル、
【化2】

(式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする);
b)界面活性剤;
c)水;および
d)ペルフルオロエーテル
を含む、エマルジョン。
【請求項4】
少なくとも60重量%の式(I)のヒドロフルオロエーテルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項5】
ペルフルオロエーテルが、炭素原子、フッ素原子および酸素原子から本質的になり、ペルフルオロアルキレンオキシド単位またはペルフルオロオキセタン環を含む、ペルフルオロポリエーテルである、請求項1から4のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項6】
50ミクロンまでの容積平均粒度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項7】
エマルジョンの総重量に基づいて20重量%までの、3個またはそれ以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシル化化合物をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項8】
化粧用配合物または化粧用濃縮物の調製プロセスであって
a)式(I)、
【化3】

(式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする)
で示される、エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より多い、ヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せ;
b)界面活性剤;および
c)水
を少なくとも混合することによって、液体水相中の液体油相のエマルジョンを調製する工程を含む、プロセス。
【請求項9】
a)式(I)
【化4】

(式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする)で示される、エマルジョンの総重量に基づいて50重量%より多い、ヒドロフルオロエーテル、ペルフルオロエーテルまたはそれらの組合せ;
b)界面活性剤;および
c)水
を含む、化粧用配合物または化粧用濃縮物における、または化粧用配合物または化粧用濃縮物としての、液体水相中の液体油相のエマルジョンの使用。
【請求項10】
液体水相中の液体油相のエマルジョンの調製プロセスであって、少なくとも
a)エマルジョンの総重量に基づいて少なくとも50重量%の、式(I)で示されるヒドロフルオロエーテル、
【化5】

(式中、nは1〜12の数字であり、mは0〜25の数字であり、oは0〜25の数字であり、m+o=2n+1であり、xは1〜12の数字であり、yは0〜25の数字であり、zは0〜25の数字であり、y+z=2x+1であり、但し、mおよびyは同時にゼロでなく、oおよびzは同時にゼロでないものとする);
b)界面活性剤;
c)水;および
d)ペルフルオロエーテル
を混合する工程を含む方法。

【公表番号】特表2009−531297(P2009−531297A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556316(P2008−556316)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/001124
【国際公開番号】WO2007/106213
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】