説明

液体洗浄剤組成物

【課題】ポリマー系ビルダーと高濃度の界面活性剤とを含有する液体洗浄剤組成物において、保存安定性を保ち、溶解性の低下を解消する。
【解決手段】(A)界面活性剤の特定量、(B)ポリエーテル鎖部分(i)と特定のモノエチレン性不飽和単量体の重合単位を含んで構成されるポリマー鎖部分(ii)とを有する高分子化合物の特定量、及び水を含有し、(A)界面活性剤として(a1)特定のアルコキシル型の非イオン界面活性剤を特定範囲で含有する液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物、特には衣類等の繊維製品用の液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まってきており、環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。従来の洗浄剤より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。
【0003】
しかしながら、このような界面活性剤濃厚系の液体洗浄剤組成物は、組成物自体の保存安定性に加えて、ビルダー成分が安定配合しにくいという課題がある。例えばポリアクリル酸系ポリマーは、泥の分散性、再汚染防止性に優れることが知られているが、一般に界面活性剤水溶液系には安定配合しにくくなり、更には保存により、白濁や相分離などの分離や、基材が溶液中で固体として析出してくる場合がある。
【0004】
更に、液体洗浄剤において、洗浄成分である界面活性剤濃度を増加させると増粘やゲル化が起こりやすくなる。この問題に対して有機溶剤を多量に配合し、水分量を低下させることで増粘やゲル化を抑さえる方法があるが、洗浄時の際に水で希釈されることで液晶を形成し、溶解性不良を起こすという課題がある。
【0005】
特許文献1〜3には、特定の非イオン界面活性剤を配合した濃縮タイプの液体洗剤組成物が記載されているが、水に対する溶解性に課題があり、またポリマーの安定配合に関する示唆は無い。
【0006】
特許文献4及び5にはポリエチレングリコールなどのポリエーテル化合物を主鎖とし、アクリル酸又はメタクリル酸を主なモノマーとするモノエチレン性モノマーを、該ポリエーテル化合物にグラフト重合させたポリマーを配合する液体洗浄剤が記載されている。該先行技術には、高濃度界面活性剤系の開示があるが、希釈時の溶解性不良について考慮するものではない。
【0007】
特許文献6には、水溶性の無機塩を多量に配合することで非イオン界面活性剤を塩析させ、該非イオン界面活性剤と水不溶性固体を分散させるために、2種のセグメントを有するポリマーが開示されている。該ポリマーとしてポリエチレングリコールアクリル酸エステルとアクリル酸を重合したポリマーを含有する濃厚系固体分散型の液体洗浄剤が開示されている。該先行技術は、多相を形成している液体洗浄剤中の液滴化した非イオン界面活性剤とそれに付随する水不溶性固体物質を塩濃度が高く調製された水相中に安定に分散させる技術であり、均一系ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−7705号公報
【特許文献2】特開2008−7706号公報
【特許文献3】特開2008−7707号公報
【特許文献4】特開平10−60476号公報
【特許文献5】特開平10−60496号公報
【特許文献6】特開2004−155937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高分子化合物(以下、ポリマー系ビルダーという場合もある)と高濃度の界面活性剤とを含有する液体洗浄剤組成物において、組成物の保存安定性を保つこと、且つ水で組成物を希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下を解消することである。また、本発明の他の課題は、高分子化合物と高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤組成物を容器に充填した液体洗浄剤物品を保存した際に生じる容器の変形を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、界面活性剤(A)〔以下、(A)成分という〕を40〜80質量%、下記高分子化合物(B)〔以下、(B)成分という〕を0.3〜8質量%、及び水を含有する液体洗浄剤組成物であって、(A)成分として下記一般式(1)で示される非イオン界面活性剤(a1)〔以下、(a1)成分という〕を組成物中に30〜70質量%含有する液体洗浄剤組成物に関する。
(a1)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−(AO)xH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、AOは炭素数2〜5のオキシアルキレン基であり、xは平均付加モル数である。xは16〜35の数であって、このうちAOとしてオキシエチレン基を平均11モル以上含む。〕
(B)成分:(i)炭素数2〜5のエポキシド由来の重合単位を含んで構成されるポリエーテル鎖部分と(ii)アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位を含んで構成されるポリマー鎖部分とを有し、(i)及び(ii)の一方が幹鎖となり、他方が枝鎖となったグラフト構造を有する高分子化合物
【0011】
また本発明は、液体洗浄剤組成物の収容部を有するプラスチック容器であって、前記収容部が曲げ弾性率(JIS K7171)が2000MPa以上のプラスチックから構成され、且つ肉厚が0.3〜1.5mmであるプラスチック容器に、上記本発明の液体洗浄剤組成物を充填してなる液体洗浄剤物品に関する。
【0012】
なお、本発明では重合単位とは、単量体1つに対応する高分子化合物中の構造単位を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリマー系ビルダーと高濃度の界面活性剤とを含有する液体洗浄剤組成物において、組成物の保存安定性を保つこと、水で組成物を希釈する際のゲル化形成等による溶解性の低下の無いこと、を達成できる液体洗浄剤組成物が提供される。また、かかる液体洗浄剤組成物を容器に充填した液体洗浄剤物品は、保存安定性に優れ、保存による容器の変形も生じない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<(A)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、界面活性剤を含有し、界面活性剤として、(a1)成分を必須成分として含有する。
【0015】
(a1)成分の一般式(1)中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、炭素数10〜16、更に10〜14の炭化水素基が好ましい。また、R1は直鎖の炭化水素基が好ましい。また、R1の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R1は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
【0016】
一般式(1)の化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、炭素数8〜22のアルコールに、炭素数2〜5のアルキレンオキシドを付加反応することによって得ることができる。なお本発明では前記アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドを必ず使用する。
【0017】
ここで、炭素数2〜5のアルキレンオキシドの平均付加モル数xは、16〜35である。xが16以上であれば、水で希釈する際に液晶を形成して溶解性を低下させることを十分に抑制できる。また、xが35以下であれば、組成物の安定性が良好となる。xは、17〜30、更に18〜25が好ましい。また、一般式(1)の化合物はAOとしてオキシエチレン基を平均11モル以上、好ましくは平均13モル以上、より好ましくは平均15モル以上有する。AOのすべてがオキシエチレン基であってもよい。xは(a1)成分製造時のR1OHで示されるアルコールに対する炭素数2〜5のアルキレンオキシドの反応割合であってもよい。
【0018】
(a1)成分は、(a1)成分を構成している個々の化合物のうち、AO付加モル数が0〜5である化合物の割合が、(a1)成分を構成している全化合物中の0〜6モル%であり、且つAO付加モル数が50以上(測定条件などから70以下)である化合物の割合が(a1)成分を構成している全化合物の0〜5モル%であることが好ましい。なお、平均付加モル数がxの範囲を外れるポリオキシアルキレンアルキルエーテル型の非イオン界面活性剤を併用する場合、(a1)成分との混合物が一般式(1)の条件を満たしていれば、(a1)成分であるものとする。その場合、該混合物は、前記のAO付加モル数の分布条件を満たすことが好ましい。
【0019】
また、溶解性、安定性の観点から、(a1)成分が下記一般式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。
1O−(C24O)m/(A’O)nH (1−1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、A’Oは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であり、mは15〜30の数であり、nは1〜5の数である。“/”はC24O基及びA’O基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
【0020】
一般式(1−1)の化合物は、炭素数8〜22のアルコールに、エチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドとをランダム又はブロック的に付加反応することによって得ることができる。
【0021】
また、一般式(1−1)中のmはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、保存安定性、溶解性、及び洗浄性能の点から下限値は15以上、好ましくは16以上であり、上限値は好ましくは27以下、より好ましくは24以下である。nは炭素数3〜5のアルキレンオキシドの平均付加モル数であり、洗浄性能の点から下限値は1以上、好ましくは2以上であり、上限値は5以下、好ましくは4以下である。なお、前記一般式(1)との関係においてx=m+nである。
【0022】
一般式(1−1)中のA’Oであるオキシアルキレン基は、炭素数3〜5アルキレンオキシドを付加反応させることによって得られるものであり、付加反応により結合した部分はメチル分岐ないしプロピル分岐した構造を有する。A’Oは、プロピレンオキシドを付加反応させて得られるオキシプロピレン基(以下、POと表記する場合がある)が好ましい。
【0023】
本発明では特に、プロピレンオキシドの平均付加モル数nが1〜4、更には2〜4であって、且つエチレンオキシドの平均付加モル数mが15〜27、更には16〜24モル付加である化合物を用いることが、保存安定性、溶解性、洗浄性能に優れた液体洗浄剤組成物を得られることから最も好ましい。
【0024】
一般式(1−1)において“/”は、本発明の(a1)成分のC24O基であるオキシエチレン基(以下、EOと表記する場合がある)及びAO基の関係がランダム結合でもブロック結合でもいずれでもよく、
1O−(A’O)n−(EO)mH (1−1−1)
1O−(EO)m−(A’O)nH (1−1−2)
1O−[(EO)m1・(A’O)n]−(EO)m2H (1−1−3)
1O−(EO)m1−[(A’O)n・(EO)m2]H (1−1−4)
1O−(EO)m1−(A’O)n−(EO)m2H (1−1−5)
〔式中、R1、m、n、EO、A’Oは前記の意味であり、m1、m2は平均付加モル数であって、m=m1+m2である。“・”はランダム結合であることを示す。〕
であってもよいことを意味している。またA’Oのnは複数のブロック体として分かれていてもよい。一般式(1−1−1)〜(1−1−5)で示される化合物は、R1OHに対するアルキレンオキシドの反応割合及び反応順序を考慮することで調製することができる。
【0025】
一般式(1−1)中のR1−O−の酸素原子に結合するR1の炭素原子が第1炭素原子であるものは、第2炭素原子による化合物よりも洗浄力に優れる。特にR1は直鎖アルキル基がよく、第1炭素原子を有するものが好ましい。R1の炭素原子が該第1炭素原子の場合、保存安定性の点から、前記一般式(1−1−2)、(1−1−4)又は(1−1−5)の化合物が好ましく、このなかでも一般式(1−1−5)がより好ましい。特に、R1−O−に結合するオキシアルキレン基がオキシエチレン基である化合物の割合が、(a1)成分を構成している化合物中の75モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることが最も好ましい。このような化合物は、脂肪族アルコールに最初にエチレンオキシドを付加させた後、未反応のアルコールを除去するか、或いは最初にエチレンオキシドを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。例えば、前記一般式(1−1−2)のm又は前記一般式(1−1−4)もしくは一般式(1−1−5)のm1で示される平均付加モル数が、6モル以上、特には8モル以上の化合物である。
【0026】
安定性をさらに高める上で、一般式(1−1)中に末端が−EO−Hの構造を有する化合物が70モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることが好ましい。この数値以上であると、低温での安定性に優れるようになる。このような化合物は、一般式(1−1)を製造する上で、A’Oの元となる炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加反応工程を終えてから、最後にエチレンオキシドだけを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。例えば、前記一般式(1−1−3)又は一般式(1−1−5)のm2で示される平均付加モル数が6モル以上、特には8モル以上の化合物である。
【0027】
本発明では、一般式(1−1)において、R1が、酸素原子と結合する第1炭素原子を有する直鎖のアルキル基であって、前記R1−O−EO−や−EO−Hのモル%の条件を満たす化合物が最も好ましい。本発明において、R1−O−EO−や−EO−Hの割合はC13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0028】
(a1)成分の配合量は、組成物中、30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%である。R1が直鎖率90%以上、特には実質100%の直鎖アルキル基の化合物を用いる場合は、(a1)成分の配合量は40〜60質量%が好ましい。ここで、(a1)成分についての直鎖率(%)とは、〔直鎖アルキル基を有する(a1)成分のモル数〕/〔(a1)成分の全モル数〕×100である。本発明ではこのように界面活性剤濃度が高くとも、洗濯の際の水希釈によるゲル化を起こすことなく洗浄力が得られる。
【0029】
(A)成分としては、(a1)成分以外に、陰イオン界面活性剤(a2)〔以下、(a2)成分という〕を併用することが、低温での溶解性の点から好ましく、泥汚れ再付着防止性に影響することなく、(B)成分を安定に配合でき、更には皮脂汚れに対する洗浄力を向上させることから特に好ましい。
【0030】
(a2)成分の含有量は、(a1)成分との関係から後述する比率を満たすことが好ましい。
【0031】
陰イオン界面活性剤としては、例えば下記(a2)−1〜(a2)−5が使用できるが、(B)成分を安定に配合でき、優れた洗浄性能及び溶解性を得る点で、(a2)−1、(a2)−2、(a2)−4が好ましく、更に(a2)−1を含有することがより好ましい。(a2)−1を含有する場合(a2)成分中の80質量%以上、特には90質量%を占めることが、(B)成分を安定に配合でき、優れた洗浄性能及び溶解性を得る点で最も好ましい。また(a2)−4を泡調整剤として含有する場合は、低温安定性の点から(a2)成分中、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0032】
(a2)−1:平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩
(a2)−2:平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシエチレン基の1つ又は2つがオキシプロピレン基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(a2)−3:平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩
(a2)−4:平均炭素数8〜20の脂肪酸塩
(a2)−5:平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシエチレン基の1つ又は2つがオキシプロピレン基であってもよい、平均付加モル数が1〜5のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0033】
(a2)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、液体洗浄剤中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(a2)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミン〔後述する(E)成分のアルカリ剤として用いるアルカノールアミン〕で中和することが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、(a1)成分の製造工程を経て、或いは金属イオン封鎖剤やその他の陰イオン性化合物の塩として含有する可能性があるが、保存安定性の点から金属イオン濃度は、低いことが好ましく、実質的には組成物中5質量%以下、更には3質量%以下、特には0.5質量%以下であることが好ましい。
【0034】
本発明の液体洗浄剤組成物では、(B)成分を安定に配合でき、優れた皮脂洗浄性能が得られる点で、組成物中の(a1)成分と(a2)成分の含有量の合計(a1)+(a2)が好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、及び好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0035】
なお(a2)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(a2)成分の質量とする。
【0036】
また、本発明の液体洗浄剤組成物では、(B)成分を安定に配合でき、優れた皮脂洗浄性能及び溶解性を得る点で、(a1)/(a2)は質量比として25/75〜90/10が好ましく、50/50〜85/15が更に好ましく、55/45〜80/20が特に好ましい。皮脂洗浄性能の点から(a1)/(a2)成分の割合が下限値以上であることが好ましく、(B)成分を安定に配合でき、優れた皮脂洗浄性能、及び溶解性を得る観点から上限値以下であることが好ましい。(a1)成分は(a2)成分を併用することで、組成物の皮脂洗浄性能を高め、更に液晶形成を抑制することで溶解性をより高めることが可能となる。
【0037】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a1)成分及び(a2)成分以外の界面活性剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。その他界面活性剤としては、下記の(a3)〜(a5)が挙げられる。
【0038】
(a3)(a1)成分に該当しない非イオン界面活性剤〔以下、(a3)成分という〕
例えば、下記(a3)−1〜(a3)−3などが挙げられる。
(a3)−1:次の一般式で表されるアルキル多糖界面活性剤。
31−(OR32x'y'
〔式中、R31は炭素数8〜18の鎖式炭化水素基、好ましくはアルキル基、R32は炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖、好ましくはグルコースに由来する残基、x’は平均値0〜6の数、y’は平均値1〜10、好ましくは2〜4の数を示す。〕
(a3)−2:炭素数7〜21のアルキル基を有する脂肪酸アルカノールアミドもしくは、そのエチレンオキシド化合物、又はポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
(a3)−3:炭素数8〜22のアルキル基を有するポリグリセリル(平均重合度2〜5)モノアルキルエーテル
【0039】
(a4)陽イオン界面活性剤〔以下、(a4)成分という〕
例えば、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)であって、好ましくは途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数8〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基である陽イオン界面活性剤を挙げることができる。本発明では、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。
【0040】
(a5)両性界面活性剤〔以下、(a5)成分という〕
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0041】
(a3)〜(a5)成分の含有量は、本発明の液体洗浄剤組成物中、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が最も好ましく、また15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下が最も好ましい。なお、(a3)〜(a5)成分のうち(a3)成分は(a1)成分と合わせて、〔(a1)+(a3)〕/(a2)の質量比が、前記(a1)/(a2)の質量比の範囲内に入ることが好ましい。また第4級アンモニウム塩については、対陰イオンを除いた質量を該第4級アンモニウム塩の質量とし、3級アミンについては、窒素原子に結合する基のうち、有機基以外を水素原子に置換した構造の質量を該3級アミンの質量とする。
【0042】
本発明の液体洗浄剤組成物において、洗浄性能、安定性、溶解性の観点から、(A)成分の含有量は、組成物中、40〜80質量%であり、下限値は好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、上限値は好ましくは75質量%以下である。
【0043】
<(B)成分>
(B)成分は、(i)炭素数2〜5のエポキシド由来の重合単位を含んで構成されるポリエーテル鎖部分〔以下、(i)鎖部分という〕と(ii)アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位を含んで構成されるポリマー鎖部分〔以下、(ii)鎖部分という〕、とを有する高分子化合物であり、(i)鎖部分及び(ii)鎖部分の一方が幹鎖となり、他方が枝鎖となったグラフト構造を有する高分子化合物である。
【0044】
(B)成分として更に好ましくは、末端を除いて、枝鎖が炭素数2〜5のエポキシド由来の重合単位からなるポリエーテル鎖であるか、或いは枝鎖がアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位からなるポリマー鎖である高分子化合物である。特に好ましくは、この枝鎖条件に加えて、枝鎖との結合部の重合単位及び末端を除いて、幹鎖が炭素数2〜5のエポキシド由来の重合単位からなるポリエーテル鎖であるか、或いは幹鎖がアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位とからなるポリマー鎖である高分子化合物である。
【0045】
(i)鎖部分は、炭素数2〜5のエポキシド、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル)などのエポキシ基を有する一種以上のエポキシド由来の重合単位を含んで構成されるポリエーテル鎖である。(i)鎖部分の平均重合度は、保存安定性の観点から、(i)鎖部分が幹鎖になる場合は、枝鎖との結合部分の重合単位を含んだ上で、好ましくは10〜100、更に好ましくは15〜80であり、(i)鎖部分が枝鎖になる場合は、枝鎖当り好ましくは10〜100、更に好ましくは15〜80である。また(i)鎖部分の末端は水酸基でもよく、メチル基、フェニル基又はベンジル基でキャップされていてもよい。
【0046】
(i)鎖部分は、安定性の観点より、最も好ましくはポリオキシアルキレン鎖であり、更にはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、特にはエチレンオキシド由来の重合単位より構成されるポリオキシアルキレン鎖を基礎とする。この場合、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、(i)鎖部分が幹鎖になる場合は、枝鎖との結合部分の重合単位を含んだ上で、好ましくは10〜100、更に好ましくは15〜80、特に好ましくは19〜30であり、(i)鎖部分が枝鎖になる場合は、枝鎖当り好ましくは10〜100、更に好ましくは15〜80、特に好ましくは19〜30である。平均付加モル数が10モル以上であれば常温以上の安定性が良好となり、100モル以下であれば低温安定性が良好となる。
【0047】
(ii)鎖部分は、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位を含んで構成される。なおマレイン酸単量体由来の重合単位は無水マレイン酸経由で合成されるものを含む。(ii)鎖部分は、前記不飽和カルボン酸単量体以外のモノエチレン性不飽和単量体由来の重合単位を含むことができる。その他の重合単位は、非イオン性又はアニオン性の単量体由来の重合単位が好ましい。例えば前記以外の不飽和カルボン酸由来の重合単位を含んでいてもよい。アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸以外に併用できる不飽和カルボン酸としては、フマル酸、イタコン酸を挙げることができる。また、アリルアルコール等の不飽和アルコール単量体由来の重合単位などを挙げることができる。本発明では特に(ii)鎖部分が幹鎖の場合は、例えば、
・不飽和アルコール単量体や不飽和カルボン酸単量体などのエチレン性不飽和単量体に炭素数2〜5のエポキシドが付加した単量体、或いは
・不飽和アルコール単量体や不飽和カルボン酸単量体などのエチレン性不飽和単量体に重合単位が炭素数2〜5のオキシアルキレンであるポリアルキレングリコールが結合した単量体、
を、(i)鎖部分が結合した単量体として用いて(B)成分を製造してもよい。以下、(i)鎖部分が結合した単量体をマクロモノマーという場合がある。
【0048】
(ii)鎖部分において、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位が占める割合は、(ii)鎖部分が枝鎖である場合、枝鎖を占める全重合単位中、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%であり、最も好ましくは実質的に前記不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位から構成されていることである。また(ii)鎖部分が幹鎖である場合は、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位が占める割合は、枝鎖との結合部分を除いた幹鎖を占める全重合単位中、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%であり、最も好ましくは実質的に前記不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位から構成されていることである。
【0049】
本発明の(B)成分は(i)鎖部分及び(ii)鎖部分の一方が幹鎖となり、他方が枝鎖となったグラフト構造を有する高分子化合物であり、このような高分子化合物を得る方法としては、(1)幹鎖及び枝鎖となるポリマー鎖部分を予め別々に重合し、グラフト化する方法、(2)幹鎖となるポリマー鎖部分から枝鎖となる単量体をグラフト重合する方法、(3)幹鎖となる単量体と、枝鎖のポリマー鎖部分を有する単量体を共重合する方法、などを挙げることができる。
【0050】
<(i)鎖部分を幹鎖にする場合>
(i)鎖部分を幹鎖にする場合、その合成には特開昭55−71710号公報、特開昭59−62614号公報に記載の製造方法を用いることができる。たとえば、窒素気流下で、90℃以上、好ましくは100〜200℃でポリエーテル化合物を攪拌しながら、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体と開始剤を別々に、且つゆっくりと滴下することによって、酸型の本発明の(B)成分の高分子化合物を得ることができる。塩にする場合は、冷却後水酸化ナトリウム等のアルカリ剤で中和することによって、容易に得ることができ、また陰イオン性界面活性剤と同じく、酸型のままで組成中に添加し、組成中で中和してもよい。
【0051】
本発明の(B)成分としては、ポリエーテルの幹鎖に、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体を含むモノエチレン性不飽和単量体をグラフト重合した高分子化合物を用いることができ、それを上に例示した製造方法を用いて合成するにあたり使用するポリエーテル化合物としては、次の一般式(B1)で表されるものが好ましい。
Y−O(CH2CH2O)nH (B1)
(式中、Yは水素原子、メチル基、フェニル基又はベンジル基、好ましくはメチル基又はフェニル基であり、nは平均付加モル数であり、10〜100の数である。)
【0052】
(i)鎖部分を幹鎖とし(ii)鎖部分を枝鎖とする場合、(B)成分である高分子化合物単位質量当りの(i)鎖部分の炭素数2〜5のエポキシドに由来する重合単位が占める割合は40〜99質量%が好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、特に好ましくは60〜85質量%である。また、高分子化合物単位質量当りの(ii)鎖部分のアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位が占める割合は1〜60質量%が好ましく、より好ましくは10〜50質量%であり、特に好ましくは15〜40質量%である。
【0053】
<(ii)鎖部分を幹鎖にする場合>
(ii)鎖部分を幹鎖にする場合、その合成には、例えば特開2003−20788号公報に記載の製造方法を用いることができる。たとえば、窒素気流下で、50℃以上、好ましくは60℃以上で重合溶媒であるポリエーテル化合物を撹拌しながら、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体、(i)鎖が結合した単量体、開始剤を別々に、且つゆっくりと滴下することによって、酸型の本発明の高分子化合物を得ることができる。塩にする場合は、冷却後水酸化ナトリウム等のアルカリ剤で中和することによって、容易に得ることができ、また陰イオン性界面活性剤と同じく、酸型のままで組成中に添加し、組成中で中和してもよい。
【0054】
本発明の(B)成分は、前記したように、(i)鎖部分が予め結合した単量体(マクロモノマー)を、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体を含むモノエチレン性不飽和単量体とともに共重合させたものであってもよく、また、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体を含むモノエチレン性不飽和単量体の重合体に、エチレンオキシド等のアルキレンオキシドやグリシジルエーテルなどの重合性の単量体を付加させたものでもよい。本発明では前者による方法で得られた(B)成分が好ましく、特には(ii)鎖部分は、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位と、不飽和アルコール単量体や不飽和カルボン酸単量体などのエチレン性不飽和単量体に(i)鎖部分に相当する前記炭素数2〜5のエポキシドが付加したマクロモノマー、或いは不飽和アルコール単量体や不飽和カルボン酸単量体などのエチレン性不飽和単量体に重合単位が炭素数2〜5のオキシアルキレンであるポリアルキレングリコールが付加したマクロモノマー由来の重合単位とから本質的になることが好ましい。
【0055】
(ii)鎖部分を幹鎖とし(i)鎖部分を枝鎖とする場合、(B)成分である高分子化合物単位質量当りの(i)鎖部分の炭素数2〜5のエポキシドに由来する重合単位が占める割合は30〜98質量%が好ましく、より好ましくは40〜89質量%である。また、高分子化合物単位質量当りの(ii)鎖部分のアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位が占める割合は1〜60質量%が好ましく、より好ましくは10〜50質量%であり、特に好ましくは15〜40質量%である。なお、この場合は、枝鎖との結合部の重合単位及び末端部分の重合単位は、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位には算入しないものとする。
【0056】
本発明の(B)成分は(ii)鎖部分を幹鎖とし、(i)鎖部分を枝鎖とする高分子化合物が保存安定性の上で好ましい。特には安定性、特にpH安定性の観点から、(B)成分としては、下記一般式(B2)で表される2つの重合単位から構成される高分子化合物(ランダム、交互、ブロック重合のいずれでもよい)、が好ましい。該高分子化合物は、(ii)鎖部分を幹鎖とし、その構造中に一般式(B3)で表される(i)鎖部分を枝鎖として有する高分子化合物である。
【0057】
【化1】

【0058】
〔式(B2)中、A1は水素原子を表し、A2は水素原子又は−COOX1、好ましくは水素原子を表し、A3は水素原子又はメチル基を表し、A4は−COOX2を表し、かつ、A1、A2及びA3中の合計炭素数は0又は1であり、X1及びX2は、具体的にはそれぞれ独立に又は同時に水素原子、1価もしくは2価の金属、アンモニウム基、又は有機アミン基を表す。A5は水素原子を表し、A6は水素原子又は−COOX1、好ましくは水素原子を表し、A7は水素原子又はメチル基を表し、A8は、−COO−Z、又は−CH2−O−Zを表し、かつ、A5、A6及びA7中の合計炭素数は0又は1であり、Zは下記一般式(B3)の基を表す。
−(AO)n−Y (B3)
(式(B3)中、Aは1種類以上の炭素数2〜3のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2のアルキレン基を表し、Yは水素原子、メチル基、フェニル基又はベンジル基、好ましくは水素原子、メチル基、さらに好ましくは水素原子を表し、nは平均付加モル数であり、好ましくは10〜100、さらに好ましくは15〜80の数を表す。)〕
【0059】
前記一般式(B2)の高分子化合物を構成する重合単位の割合は、〔−C(A5)(A6)−C(A7)(A8)−〕の重合単位の割合が、該高分子化合物の単位質量当たり、40〜99質量%となる範囲に設定されることが好ましく、更には50〜90質量%が好ましく、特には60〜85質量%質量%が好ましい。安定性の観点から下限値以上が好ましく、洗浄性の点から上限値以下が好ましい。
【0060】
最も好ましい(B)成分は、一般式(B2)において、A1が水素原子、A2が水素原子、A3が水素原子又はメチル基、A4が−COOX2、A5が水素原子、A6が水素原子、A7が水素原子又はメチル基、A8が−COO−Z、又は−CH2−O−Zで、Zは一般式(B3)において、Aが炭素数2のアルキレン基、Yが水素原子又はメチル基で表される高分子化合物であり、具体的には、(メタ)アクリル酸/ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸/ポリエチレングリコールアリルエーテル共重合体、(メタ)アクリル酸/メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル共重合体、及びそれらの塩である。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味である。
【0061】
本発明に用いられる(B)成分は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で、カラムに東ソー(株)製G4000PWXL+G2500PWXL(2本連結)、検出器に示差屈折率計を使用し、溶離液を0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=9/1(容量比)、標品をポリエチレングリコールとした条件で測定した場合の重量平均分子量が2000〜20万のものが好ましく、5000〜10万のものがより好ましい。
【0062】
本発明の液体洗浄剤組成物中の(B)成分の含有量は、保存安定性、泥汚れ洗浄力の点で、0.3〜8質量%であり、下限値は1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましい。また上限値は5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。なお、(B)成分が(i)鎖部分が幹鎖であり(ii)鎖部分が枝鎖である場合は、保存安定の観点から、組成物中の含有量は2.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0063】
<(C)水混和性有機溶剤>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(B)成分を安定に配合でき、優れた溶解性を得る点で、水混和性有機溶剤〔以下、(C)成分という〕を含有することが好ましい。(C)成分としては、(B)成分を安定に配合でき、優れた洗浄性能及び溶解性を得る点で、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である有機溶剤を指す。
【0064】
水混和性有機溶剤としては、(c1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(c2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、又はヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール類やグリセリン、(c3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、又は重量平均分子量400〜4000のポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール類、(c4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、又は1−エトキシ−2−プロパノールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、(c5)グリセリン−1,3−ジメチルエーテル、エチルグリセリルエーテル、グリセリン−1,3−ジエチルエーテル、グリセリントリエチルエーテル、イソもしくはノルマルペンチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、又は2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの炭素数1〜8のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル類、(c6)エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類、が挙げられる。
【0065】
(C)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(c1)〜(c6)の分類から選ばれる2種以上を併用することが好ましく、より好ましくは(c2)、(c4)及び(c6)の分類から選ばれる2種以上、特に好ましくは(c2)及び(c6)の各分類から選ばれる2種以上を併用することで効果的に組成物の粘度調整、ゲル化抑制を達成できる。
【0066】
(C)成分の含有量は、(B)成分を安定に配合でき、優れた溶解性を得る点で、組成物中、5〜40質量%が好ましく、10〜35質量%が更に好ましく、(a1)成分としてR1が直鎖率が90%以上、特には実質的に100%のアルキル基の化合物を用いる場合は15〜30質量%が好ましい。
【0067】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(B)成分を安定に配合でき、優れた溶解性を得る点で、水を含有する。水の含有量は、組成物中、5質量%以上が好ましく、8〜40質量%、特に10〜30質量%が好ましい。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0068】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(A)〜(C)成分及び水の合計が85質量%以上、更に90質量%以上、特に95質量%以上を占めることが好ましい。
【0069】
<その他の成分>
以下、本発明の液体洗浄剤組成物に配合できるその他の成分について説明する。
〔(D)アルカリ剤〕
本発明の液体洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(D)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的なアルカノールの炭素数が2〜4の1〜3つのアルカノール基を有するアルカノールアミンを挙げることができる。このうちアルカノールはヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、メチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、特にはモノエタノールアミンが最も好ましい。(D)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。
【0070】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(D)成分を、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なおアルカノールアミンは、(a2)成分の塩などの対イオンとして配合することもでき、それらの量も(D)成分として算入する。
【0071】
〔(E)成分〕
本発明の液体洗浄剤組成物は、キレート剤〔以下、(E)成分という〕を含有することができる。(E)成分のキレート剤は、液体洗浄剤に用いられる公知のものを用いることができ、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、
アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属または低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(a2)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0072】
(E)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜4質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%である。
【0073】
〔その他の成分〕
更に本発明の液体洗浄剤組成物には、次の(I)〜(XI)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(I)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤〔(B)成分の高分子化合物を除く〕
(II)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(III)過酸化水素、過炭酸ナトリウムまたは過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(IV)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(V)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(VI)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(VII)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(VIII)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(IX)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(X)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(XI)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0074】
以下に本発明の液体洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。本発明では(B)成分以外の再汚染防止剤及び分散剤として(I)を、本効果を損なわない程度で配合してもよい。但し、界面活性剤濃度が高まってくると、特に(a1)成分のエチレンオキシドの平均付加モル数mが16以上の化合物を用いる場合は、実質含有しないことが好ましい。(II)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(III)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(VI)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(V)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(VI)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(VII)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(VIII)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(IX)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(X)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(XI)のその他の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0075】
なお、上記任意成分のうち(IX)、(X)は液体洗浄剤組成物の安定性に影響を及ぼすのでその配合には特に注意を要する。
【0076】
本発明の液体洗浄剤組成物のpHはJIS K3362:1998記載の20℃で測定する。(B)成分を安定に配合でき、優れた洗浄性能を得る点で、6〜11、特には8〜10(25℃)が好ましい。
【0077】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(C)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0078】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物の粘度とする。
【0079】
また本発明の液体洗浄剤組成物は、使用上の観点から等方性の1相から構成される液体であることが好ましい。等方的であることは、例えばクロスニコルによる目視観察、或いはX線回折により構造が存在していないことを確認することで確かめられる。1相であることは、例えば目視で透明であること、顕微鏡等で観察した場合に相分離が認められないこと、遠心分離しても2相以上に分離しないこと、等により確認できる。
【0080】
本発明の液体洗浄剤組成物は、容器、例えば計量キャップとボトルとを含んで構成されるプラスチック容器に充填して容器入り液体洗浄剤物品とすることができる。ボトルの材質としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル(PVC)等のプラスチックを用いることができる。本発明の液体洗浄剤組成物を充填するための容器としては、プラスチック材の成型容器の内圧減少による減圧変形抑制の観点から、液体洗浄剤組成物の収容部を有するプラスチック容器であって、前記収容部が曲げ弾性率(JIS K7171)が2000MPa以上、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは3000MPa以下のプラスチックから構成され、且つ肉厚が0.3〜1.5mmであるプラスチック容器が好ましく、通常は、ボトルがこのような曲げ弾性率と肉厚を満たすものが使用される。容器変形の理由としては、本発明の液体洗浄剤組成物は非イオン界面活性剤を高濃度で配合するため、ボトル内の空間に存在する酸素が溶解することが推測される。また、光の透過は酸素の溶解性を促進することから、液体洗浄剤組成物の収容部の光透過率は波長600nm〜700nmの範囲の光について15%以下であることが好ましい。通常は、ボトルがこのような光透過率を有する。遮光性を高めるために酸化チタンやカーボンブラックを、容器を構成するプラスチックに添加することができる。
【0081】
また、詰め替え用の容器に充填した物品として、本発明の液体洗浄剤組成物は、保存安定性の観点から、可撓性の積層樹脂フィルムを貼り合わせて形成した袋に封入されるのが好ましい。
【0082】
更に、袋本体の上部端縁部の一部に注出流路を有するノズル部を設け、レーザー加工やスコア加工等を施し、手で袋上端縁部を開封することでノズル部吐出口を形成できるものが使い易さの観点から好ましく、袋の形状としては、スタンディングパウチ形式の袋は、取り扱い易く、好ましい形式である。
【0083】
袋を形成するフィルムとしては、可撓性の単層樹脂フィルムを使用することも可能であるが、積層樹脂フィルムが使用するのが一般的である。積層樹脂フィルムの基材層としては、延伸ナイロンフィルム(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、シーラント層として無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バリヤー層としてアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM−PET)、セラミック蒸着ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム箔等を例示することができる。
【0084】
特に、長期保存時のデラミネーション(層間剥離)の発生を抑制する観点から、積層樹脂フィルムは3層以上からなる構成とし、中間層と最内層の間に印刷インキ(インキ層)が介在しない構成が好ましい。デラミネーションに対する抑制効果が高く、生産適性や落下強度、開封性や包材コストの面を考慮すると、外層(液体洗浄剤組成物に接する層から最も遠い層)より、PET(好ましくは厚さが9〜25μm)/[インキ層+接着剤層]/ONy(好ましくは厚さが15〜25μm)/接着剤層/LLDPE(好ましくは厚さが60〜200μm)の積層フィルムが最も好ましい。
【0085】
本発明の液体洗浄剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用として好適である。
【実施例】
【0086】
合成例1:合成ポリマー(1)の合成
ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数23)モノメタクリル酸エステル/メタクリル酸=75/25(質量比)共重合体〔合成ポリマー(1)〕を以下のように合成した。
【0087】
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)142g、イオン交換水400gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、80℃まで昇温した。そこへ、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均モル数23)モノメタクリル酸エステル(NK−エステルM−230T、新中村化学(株)製)750g、メタクリル酸(和光純薬(株)製)250g、2−メルカプトエタノール(和光純薬(株)製)8gをプロピレングリコール590g、イオン交換水30gに溶解させた液と過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)8g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)4gをイオン交換水146gに溶解させた液を別々に2時間かけて滴下した。滴下終了後1時間80℃で攪拌した後、過硫酸ソーダ8g、30%過酸化水素溶液4gをイオン交換水74gに溶解させた液を5分かけて添加した。1時間80℃で攪拌した後、過硫酸ソーダ8g、30%過酸化水素溶液4gをイオン交換水74gに溶解させた液を5分かけて添加し、1時間80℃で攪拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー溶液2500g(ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られた合成ポリマー(1)のGPC測定の結果、重量平均分子量は5.0万(ポリエチレングリコール換算)であった。また合成ポリマー(1)は、(i)鎖部分を枝鎖、(ii)鎖部分を幹鎖とするものであり、(i)鎖部分の炭素数2〜5のエポキシドの重合単位が占める割合が、高分子化合物単位質量当り63質量%、(ii)鎖部分のアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の単量体が占める割合が、高分子化合物単位質量当り26質量%の化合物であった。
【0088】
合成例2:合成ポリマー(2)の合成
ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数23)モノメタクリル酸エステル/メタクリル酸=65/35(質量比)共重合体〔合成ポリマー(2)〕を以下のように合成した。
【0089】
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)127g、イオン交換水299gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、80℃まで昇温した。そこへ、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数23)モノメタクリル酸エステル(NK−エステルM−230T、新中村化学(株)製)650g、メタクリル酸(和光純薬(株)製)350g、2−メルカプトエタノール(和光純薬(株)製)11gをプロピレングリコール600g、イオン交換水37gに溶解させた液と過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)11g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)4gをイオン交換水191gに溶解させた液を別々に2時間かけて滴下した。滴下終了後1時間80℃で攪拌した後、過硫酸ソーダ11g、30%過酸化水素溶液4gをイオン交換水95gに溶解させた液を5分かけて添加した。1時間80℃で攪拌した後、過硫酸ソーダ11g、30%過酸化水素溶液4gをイオン交換水95gに溶解させた液を5分かけて添加し、1時間80℃で攪拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー溶液2500g(ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られた合成ポリマー(2)のGPC測定の結果、重量平均分子量は4.6万(ポリエチレングリコール換算)であった。合成ポリマー(2)は、(i)鎖部分を枝鎖、(ii)鎖部分を幹鎖とするものであり、(i)鎖部分の炭素数2〜5のエポキシドの重合単位が占める割合が、高分子化合物単位質量当り59質量%、(ii)鎖部分のアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の単量体が占める割合が、高分子化合物単位質量当り35質量%の化合物であった。
【0090】
合成例3:合成ポリマー(3)の合成
ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル/アクリル酸=75/25(質量比)共重合体〔合成ポリマー(3)〕を以下のように合成した。
【0091】
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)587g、イオン交換水367g、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル300g、80%アクリル酸水溶液(東亞合成化学(株)製)6.3gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル300g、80%アクリル酸水溶液125g、イオン交換水75gを混合した液と、過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)10.3g、イオン交換水41.3g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)10.2gを混合した液を別々に150分かけて滴下した。滴下終了後、80%アクリル酸水溶液119gと、過硫酸ソーダ9.8g、イオン交換水39.3g、30%過酸化水素溶液9.6gを混合した液を別々に285分かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で攪拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー溶液2000g(ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られた合成ポリマー(3)のGPC測定の結果、重量平均分子量は2.2万(ポリエチレングリコール換算)であった。合成ポリマー(3)は、(i)鎖部分を枝鎖、(ii)鎖部分を幹鎖とするものであり、(i)鎖部分の炭素数2〜5のエポキシドの重合単位が占める割合が、高分子化合物単位質量当り71質量%、(ii)鎖部分のアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の単量体が占める割合が、高分子化合物単位質量当り25質量%の化合物であった。
【0092】
実施例1〜21及び比較例1〜5
表1〜4に示す各成分を混合して、実施例及び比較例の組成物を得た。得られた各組成物を用い、下記の各評価を行った。結果を表1〜4に示す。なお、実施例1〜21の組成物は、等方性の1相から構成される液体組成物であった。
【0093】
(1)泥再付着防止性能試験法
木綿の白布(金巾2003布)を10cm×10cmに裁断し、5枚1組とした。評価用洗剤水溶液1リットルに園芸用鹿沼赤土を加え、ターゴトメーターにて次の条件で試験を行った。
<実験条件>
洗浄時間 10分
洗剤濃度 0.033質量%
水の硬度 4°
水の温度 20℃
すすぎ 20℃水道水にて5分間流水すすぎ
再汚染防止能は、洗浄前の原布(白布)及び試験後の汚染布の460nmにおける反射率を自記色彩計(島津製作所製)にて測定し、次式によって再汚染防止率を求めた。
再汚染防止率(%)=(試験後の反射率/原布の反射率)×100
【0094】
(2)保存安定性評価
50mLのサンプルビン(No.6広口規格ビン、ガラス製、直径40mm、高さ80mmの円筒形)に、液体洗浄剤組成物を40mL充填し、蓋をした後、50℃又は20℃で20日間静置した。組成物の安定性は、目視で外観を観察し、下記の基準で判定した。
○;液晶、結晶を形成していない均一液体相であり、液安定性に優れる。
×;液晶形成、又は結晶形成、又は分離、又は析出が認められる。
【0095】
(3)溶解性評価
液体洗浄剤組成物とイオン交換水を、〔(液体洗浄剤組成物の質量)/(液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量〕×100=5〜95質量%となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプルを準備し、20℃の恒温室で1日間静置した後、このサンプルの20℃における粘度を以下の条件で測定し、以下の基準で判定した。これは20℃の水に対する溶解性モデル試験である。
測定機器 東京計器(株)製 デジタルB型粘度計(型番; DV M−B)
測定条件 60r/min 60秒
○;すべてのサンプルの粘度が1500mPa・s未満である。これは、水による希釈時に液晶形成や結晶形成等により増粘しないことを意味し、溶解性に優れると判断できる。
×;サンプルの中に粘度が1500mPa・s以上のものがある。これは水による希釈時に液晶形成、又は結晶形成等により増粘する場合があることを意味し、溶解性が劣ると判断される。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
(注)表中の成分は以下のものである。なお、(E)のモノエタノールアミンは(a2−2)成分由来のアルカノールアミンを含む量として記載している。
【0101】
(a1)成分
(a1−1):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均20モル付加させたもの
(a1−2):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均18モル、プロピレンオキシドを平均2モルの順にブロック付加させたもの。このうちR1−O−EOの化合物は90モル%以上であった。
(a1−3):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均9モル、プロピレンオキシドを平均2モル、エチレンオキシドを平均9モルの順にブロック付加させたもの。このうちR1−O−EOの化合物は85モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、90モル%以上であった。
(a1−4):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均18モル、プロピレンオキシドを平均2モル、ランダム付加させたもの。このうちR1−O−EOの化合物は85モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、90モル%以上であった。
(a1−5):ドバノール23(商標)(三菱化学社製、炭素数13のβ位メチル分岐、分岐鎖アルキル含有率が20質量%)にエチレンオキシドを平均18モル、プロピレンオキシドを平均2モルの順にブロック付加させたもの。このうちR1−O−EOの化合物は、90モル%以上であった。
(a1−6):炭素数12〜14の2級アルコールにエチレンオキシドを平均20モル付加させたもの
(a1−7):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均7モル、プロピレンオキシドを平均2モル、エチレンオキシドを平均7モルの順にブロック付加させたもの。このうちR1−O−EOの化合物は80モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、85モル%以上であった。
(a1−8):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均15モル、プロピレンオキシドを平均2モル、エチレンオキシドを平均15モルの順にブロック付加させたもの。このうちR1−O−EOの化合物は90モル%以上であって、−EO−Hの化合物は、95モル%以上であった。
【0102】
(a2)成分
(a2−1):炭素数10〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸
(a2−2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(炭素数10〜14の直鎖アルキル、エチレンオキシド平均付加モル数3、モノエタノールアミン塩、但し表1〜4記載の濃度は酸型に換算)
(a2−3):ルナックL−55(商品名)(ヤシ油系脂肪酸;花王株式会社製)
【0103】
(a3)成分
(a3−1):炭素数12〜14の2級アルコールにエチレンオキシドを平均3モル付加させたもの〔ソフタノール30(商品名)、株式会社日本触媒製〕
(a3−2):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均12モル付加させたもの
(a3−3):炭素数10〜14の1級直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均40モル付加させたもの
【0104】
(B)成分
(b−1):合成例1記載の合成ポリマー(1)
(b−2):合成例2記載の合成ポリマー(2)
(b−3):合成例3記載の合成ポリマー(3)
(b−4):特開平10−60476号公報の段落0020の合成例1の方法で合成した高分子化合物〔(i)鎖部分を幹鎖、(ii)鎖部分を枝鎖とする高分子化合物〕
【0105】
(C)成分
(c−1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(c−2):プロピレングリコール
(c−3):トリエチレングリコールモノフェニルエーテル
(c−4):エタノール
【0106】
ポリマー(1):ポリアクリル酸(重量平均分子量1万)
蛍光染料:チノパールCBS−X(商品名)(チバスペシャリティケミカルズ製)
酵素:エバラーゼ16.0L−EX(商品名)(プロテアーゼ、ノボザイム社製)
色素(1):緑色202号
【0107】
なお、実施例2〜16、19〜21に関しては、前記(2)の保存安定性評価を温度10℃で20日の静置として行っても○であり、更に前記(3)の溶解性評価を10℃の恒温室で1日間静置した後、10℃における粘度を測定して行っても○であった。更に、実施例3、9、10、13〜16、19〜21に関しては、前記(2)の保存安定性評価を温度5℃で20日の静置として行っても○であり、更に前記(3)の溶解性評価を5℃の恒温室で1日間静置した後、5℃における粘度を測定して行っても○であった。
【0108】
また下記方法に従って皮脂汚れを多く含む襟あか布に対する洗浄力を調べたところ、実施例のうち1〜5、7〜10、13〜18、20〜21は、指標洗剤と比べて、明確な優位性が得られた。
*洗浄力評価
JIS K3362:1998 記載の襟あか布を調製する。JIS K 3362:1998記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じ、表1〜4の液体洗浄剤組成物と洗浄力判定用指標洗剤の洗浄力を比較した。
【0109】
また、保存安定性の評価として、詰め替え用製品とした場合、すなわち、液体洗浄剤組成物を袋状容器に充填した場合についても行なった。該容器を形成するフィルムとして、外層(液体洗浄剤組成物に接する層から最も遠い層)より、PET12μm/[インキ層+接着剤層]/ONy15μm/接着剤層/LLDPE150μmの積層フィルムを用い、幅120mm×高さ215mm、底部折込幅34.5mmの大きさの自立袋を形成した。本袋に前記評価において好適な結果が得られた、実施例1〜21の液体洗浄剤組成物を320g充填し、上部をヒートシールすることで密封した。これらプラスチック容器に袋詰めされた容器入り液体洗浄剤を20℃にて20日保管したが、内部の組成物に分離等の異常はみられず安定性は良好であった。また、デラミネーション確認の加速試験として、65℃にて14日保管したが、いずれもフィルムのデラミネーションは発生しなかった。
【0110】
また、ボトル、該ボトルの口部に取り付けられた本体キャップ、該本体キャップに着脱可能で装着される計量キャップを含む容器を用いた場合についても保存安定性の評価を行なった。酸化チタンを1.0質量%添加したPET樹脂(曲げ弾性率〔JIS K7171〕:2400MPa、波長600〜700nm間の光透過率:10%以下)を用いて製造された満容量438mL、最大外径61mm、胴部外径59mm、高さ190mm、ボトルの胴部平均肉厚0.5mmの円筒状ボトルに、実施例1〜21の液体洗浄剤組成物を400g充填し、予め計量キャップ(計量容量26mL)が装着された本体キャップをボトルに嵌合させて、密封した。これらプラスチック容器に充填された容器入り液体洗浄剤を20℃にて20日保管したが、内部の組成物に分離等の異常やボトル側面の減圧変形はみられず、安定性は良好であった。また、減圧変形の加速試験として、40℃にて14日間保管した場合と約1ヶ月間の日光曝露において、いずれもボトル側面の減圧変形は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤(A)〔以下、(A)成分という〕を40〜80質量%、下記高分子化合物(B)〔以下、(B)成分という〕を0.3〜8質量%、及び水を含有する液体洗浄剤組成物であって、(A)成分として下記一般式(1)で示される非イオン界面活性剤(a1)〔以下、(a1)成分という〕を組成物中に30〜70質量%含有する液体洗浄剤組成物。
(a1)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−(AO)xH (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、AOは炭素数2〜5のオキシアルキレン基であり、xは平均付加モル数である。xは16〜35の数であって、このうちAOとしてオキシエチレン基を平均11モル以上含む。〕
(B)成分:(i)炭素数2〜5のエポキシド由来の重合単位を含んで構成されるポリエーテル鎖部分と(ii)アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選ばれる一種以上の不飽和カルボン酸単量体由来の重合単位を含んで構成されるポリマー鎖部分とを有し、(i)又は(ii)はいずれかが幹鎖となり、他方が枝鎖となったグラフト構造を有する高分子化合物
【請求項2】
(A)成分として陰イオン界面活性剤(a2)〔以下、(a2)成分という〕を含有し、(a1)成分と(a2)成分の含有量の合計が(a1)+(a2)=40〜80質量%であり、(a1)成分と(a2)成分の質量比が(a1)/(a2)=25/75〜90/10である、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a1)成分が下記一般式(1−1)で表される非イオン界面活性剤である、請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
1O−(C24O)m/(A’O)nH (1−1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、A’Oは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であり、mは15〜30の数であり、nは1〜5の数である。“/”はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
【請求項4】
(C)成分として水混和性有機溶剤を5〜40質量%含有する、請求項1〜3何れかに記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
水を5質量%以上含有する、請求項1〜4何れかに記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
一般式(1−1)中のAOがオキシプロピレン基である、請求項3〜5何れかに記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
一般式(1)又は一般式(1−1)中のR1が直鎖の炭化水素基である、請求項1〜6何れかに記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項8】
(A)〜(C)成分及び水の合計が、組成物中の85質量%以上を占める、請求項1〜7何れかに記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項9】
液体洗浄剤組成物の収容部を有するプラスチック容器であって、前記収容部が曲げ弾性率(JIS K7171)が2000MPa以上のプラスチックから構成され、且つ肉厚が0.3〜1.5mmであるプラスチック容器に、請求項1〜8何れかに記載する液体洗浄剤組成物を充填してなる液体洗浄剤物品。

【公開番号】特開2010−275468(P2010−275468A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130608(P2009−130608)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】