説明

液体漂白剤

【課題】 高い漂白力を有し、過酷な使用条件下でも色柄物衣類の脱色を引き起こさない液体漂白剤の提供。
【解決手段】 (a)過酸化水素、(b)ラジカルトラップ剤、及び水を含有し、(a)成分の含有量が0.1〜10質量%であり、(a)成分/(b)成分のモル比が40/1〜1/10である液体漂白剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体漂白剤に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭における衣類の洗濯に使用される衣料用漂白剤は、塩素系漂白剤と酸素系漂白剤に大別される。塩素系漂白剤は高い漂白性能を有するものの、使用できる繊維に制限があり色柄物には使用できず、また独特の臭いを有していることから、これらの欠点のない酸素系漂白剤が現在広く流通している。なかでも液体酸素系漂白剤は、汚れに直接塗布できるなどの利点から最も好まれている製品形態である。
【0003】
しかしながら、これら液体酸素系漂白剤は、塩素系漂白剤に比べて漂白力が弱く、種々の漂白力増強法が開発されている。特許文献1にはアルカリ剤を併用した方法が、また特許文献2には浸透剤を用いた方法が開示されており、これらの方法では、pHを高めた液を塗布することで、高い濃度の漂白剤を効率良く作用させ、漂白性能を高めている。
【0004】
一方、漂白剤の使用においては、衣類に対する安全性も課題として挙げられる。繊維の損傷、劣化、色柄物衣類の染料の脱色を引き起こさないよう改善が求められている。特許文献3及び4には、液体酸素系漂白剤に関して、漂白活性化剤及び溶剤等を用いて洗浄力を高めたうえに、色柄物の脱色を引き起こさない組成が開示されている。しかしながら、これらの組成は、一般消費者の使用実態のなかで実施されることのある更に過酷な使用条件での脱色防止性まで保証するものではない。例えば、より高い汚れ落ちを期待して漂白剤を塗布してから放置しておくと、水分の蒸発により経時的に漂白剤成分の濃度が高まり、衣類の脱色を引き起こす。また、金属製のファスナー、ボタンなどが付いた衣類を洗濯する際は、金属により漂白成分が活性化され、衣類の脱色及び損傷を引き起こす場合がある。また、含金属染料を使用した衣類に用いると、顕著な脱色が引き起こされる。つけおき漂白に使用する際は、日光に直接さらされると過酸化水素が励起されて衣類の脱色を引き起こす場合もある。これらの様々な場面において、衣類を傷めず、安心して漂白剤を使用できるよう更なる改善が望まれている。
【0005】
また、特許文献5には酸化防止剤による有機過酸前駆体の安定化が開示され、特許文献6にはラジカルスカベンジャーを使用した色損傷の低減が開示されている。しかし、配合量も少なく、また、穏やかなファブリック処理を可能とするものではあるが、高い漂白力が望める組成ではない。特許文献7には、液体漂白剤の色調の安定性のために酸化防止剤が使用されているが、使用量が少なく、高い漂白効果は期待できない。
【特許文献1】特開2003−41295号公報
【特許文献2】特開2003−147395号公報
【特許文献3】特開平8−157874号公報
【特許文献4】特開平9−183998号公報
【特許文献5】特開平4−7399号公報
【特許文献6】特表2004−501274号公報
【特許文献7】特開2003−268398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような衣類脱色を引き起こす様々な過酷条件下において、衣類を傷めず、高い漂白性能を有する漂白剤組成物は見出されていない。
【0007】
従って、本発明の課題は、高い漂白力を有し、過酷な使用条件下でも色柄物衣類の脱色を引き起こさない液体漂白剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)過酸化水素、(b)ラジカルトラップ剤、及び水を含有し、(a)成分の含有量が0.1〜10質量%であり、(a)成分/(b)成分のモル比が40/1〜1/10である液体漂白剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体漂白剤によれば、過酷な使用条件下でも色柄物衣類の脱色を引き起こすことなく、高い漂白力を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は過酸化水素である。本発明の液体漂白剤中の(a)成分の含有量は、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜6質量%、より好ましくは1〜4質量%である。
【0011】
[(b)成分]
本発明の(b)成分はラジカルトラップ剤である。本発明において、ラジカルトラップ剤とは、生成したラジカルを無効化する効果のある剤である。一般に過酸化水素による漂白はパーヒドロキシアニオンによって起こると考えられるが、過酸化水素は、光、熱の影響および重金属イオンの触媒作用でヒドロキシルラジカルを生成することがある。ヒドロキシルラジカルは、反応性が高く、繊維の劣化や衣類脱色を引き起こすため、ラジカルトラップ剤で無効化することが有効である。
【0012】
本発明の液体漂白剤中の(b)成分の含有量は、色柄物衣類の脱色を防止するために好ましくは0.01質量%〜40質量%、より好ましくは0.1質量〜30質量%、更に好ましくは0.5質量〜25質量%、更により好ましくは10質量〜25質量%である。
【0013】
ラジカルトラップ剤としては、(1)アミン系、及び(2)フェノール系のものが好ましい。(1)アミン系のラジカルトラップ剤としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン及びフェニル−4−ピペリジニルカーボネートから選ばれる1種以上が挙げられる。(2)フェノール系のラジカルトラップ剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン及び2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノンから選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、(2)フェノール系のラジカルトラップ剤が好ましく、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)及びブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が特に好ましい。
【0014】
[その他の成分]
本発明の液体漂白剤は、更にエステル基、イミド基又はニトリル基を有する漂白活性化剤を好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%含有することで、より優れた効果を得ることができる。
【0015】
特に漂白活性化剤としては下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
〔式中、R1は直鎖又は分岐鎖の炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示し、Zは−SO3M又はCOOMを示す。また、Mは有機又は無機の陽イオンを示す。〕
具体的に好ましい例としては、オクタノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、オクタノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ノナノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、デカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−o−又は−p−ベンゼンカルボン酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0018】
これらの中でも、特にノナノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ−p−ベンゼンカルボン酸、ドデカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸及びこれらの塩が、親油性汚れ漂白効果の点から好ましい。
【0019】
一般式(1)の漂白活性化剤を液体漂白剤中に配合する場合、安定化のために特開平6−207196号公報、特開平7−82591号公報、特開平7−216397号公報、及び特開平7−331289号公報等に記載された安定化技術を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の液体漂白剤において、漂白活性化剤を含有する場合、特に前記一般式(1)で示される漂白活性化剤を含有する場合には、アミンオキシド型界面活性剤を好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%含有することで、漂白活性化剤から生成する有機過酸の生成率が向上し、より優れた漂白力を得ることができる。
【0021】
アミンオキシド型界面活性剤としては下記一般式(2)で示されるものが最も優れた漂白効果を発揮することができる。
【0022】
【化2】

【0023】
〔式中、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つは、エステル結合、アミド結合又はエーテル結合で中断されていてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数6〜22、好ましくは8〜20、特に好ましくは8〜15のアルキル基又はアルケニル基を示し、その他の基は炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕。
【0024】
特には下記一般式(2−a)の化合物から選ばれる化合物が好ましい。
【0025】
【化3】

【0026】
〔式中、Rは炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14の直鎖アルキル基又はアルケニル基であり、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。Rは炭素数1〜5、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−及び−O−から選ばれる基であり、aは0又は1、好ましくは1である。〕
本発明の液体漂白剤には、洗浄効果を高める目的で更に溶剤を配合することが好ましい。溶剤としては(i)炭素数1〜5の1価アルコール、(ii)炭素数2〜12の多価アルコール、(iii)下記の一般式(3)で表される化合物、(iv)下記の一般式(4)で表される化合物、(v)下記の一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化4】

【0028】
〔式中、R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示すが、R及びR10の双方が水素原子となる場合を除く。bは0〜10の数を、cは0〜10の数を示すが、b及びcの双方が0である場合を除く。R11及びR12は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。R13は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕。
【0029】
(i)の炭素数1〜5の1価アルコールとしては、一般的にエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの低級アルコールを配合することにより低温における系の安定性を更に向上させることができる。
【0030】
(ii)の炭素数2〜12の多価アルコールとしては、イソプレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0031】
(iii)の化合物は、一般式(3)において、R、R10がアルキル基である場合の炭素数は1〜4が特に好ましい。また、一般式(3)中、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの平均付加モル数のb及びcは、それぞれ0〜10の数である(b及びcの双方が0である場合を除く)が、これらの付加順序は特に限定されず、ランダム付加したものでもブロック付加したものでもよい。(iii)の化合物の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=2〜3)ポリオキシプロピレン(p=2〜3)グリコールジメチルエーテル(pは平均付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(p=3)グリコールフェニルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。このうち、洗浄力及び使用感の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=1〜4)グリコールモノフェニルエーテルが好ましい。
【0032】
また、(iv)の化合物としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及び1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンが好適なものとして例示され、
(v)の化合物としては、アルキルグリセリルエーテル化合物が好適なものとして例示され、好ましくはR13が炭素数3〜8のアルキル基の化合物である。
【0033】
これらの中でも、本発明の性質を満たすために(i)、(ii)、(iii)及び(v)の水溶性溶剤が好ましく、特にエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル及びポリオキシエチレン(p=1〜4)グリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が好ましい。
【0034】
本発明の液体漂白剤は、このような溶剤を好ましくは0〜20質量%、より好ましくは5〜20質量%含有することが好適である。
【0035】
本発明では、液体漂白剤中に、洗浄漂白効果を高める目的から、界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤としては非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0036】
非イオン界面活性剤としては、一般式(6)の化合物が好ましい。
【0037】
14−T−[(R15O)−H] (6)
〔式中、R14は、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは10〜18、更に好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R15は炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基である。dは好ましくは2〜20、より好ましくは4〜15、更に好ましくは5〜10の数を示す。eは1又は2の数を示す。Tは−O−、−CON−又は−N−であり、Tが−O−の場合はbは1であり、Tが−CON−又は−N−の場合はeは2である。〕
一般式(6)の化合物の具体例として、下記の化合物を挙げることができる。
【0038】
14−O−(CO)−H (6−a)
〔式中、R14は前記の意味を示す。fは4〜15、好ましくは5〜10の数である。〕
14−O−(CO)−(CO)−H (6−b)
〔式中、R14は前記の意味を示す。g及びhは、それぞれ独立に2〜15、好ましくは2〜10の数であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0039】
【化5】

【0040】
〔式中、R14は前記の意味を示す。R16はメチル基、エチル基又は−(CO)−Hである。また、R17は−(CO)−Hである。i及びjは、それぞれ独立に0〜5の数であり、i+jは1〜6である。〕。
【0041】
本発明では、これらの中でも、特に(6−a)及び(6−b)から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤が好ましい。
【0042】
陽イオン界面活性剤としては、下記一般式(7)のモノ長鎖アルキル(もしくはアルケニル)トリ短鎖アルキル型陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0043】
【化6】

【0044】
〔式中、R18は好ましくは炭素数8〜18、より好ましくは10〜18、更に好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R19、R20及びR21は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。Xは陰イオン、好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン又は炭素数1〜3の置換基を1〜3個有していてもよいアリールスルホン酸イオンである。〕。
【0045】
両性界面活性剤としては、前記一般式(2)で示されるアミンオキシド型界面活性剤の他に、下記一般式(8)で示される化合物を用いてもよい。
【0046】
【化7】

【0047】
〔式中、R22は好ましくは炭素数9〜23、より好ましくは9〜17、更に好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R23は好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは1〜4、更に好ましくは2又は3のアルキレン基である。Bは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−及び−O−から選ばれる基であり、kは0又は1の数、好ましくは0である。R24及びR25は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であり、R26はヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキレン基である。Dは、−SO3-又は−OSO3-であり、特に−SO3-が洗浄漂白効果の点から良好である。〕。
【0048】
陰イオン界面活性剤としては、分子中に好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは10〜16、更に好ましくは10〜15のアルキル基又はアルケニル基と、−SOM基又は−OSOM基〔M:対イオン〕を有する陰イオン界面活性剤が好ましい。具体的には上記炭素数を有するアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル及びこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド(以下、EOと表記する)平均付加モル数が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜3であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、炭素数10〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上を配合することが好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩又はアルカノールアミン塩が貯蔵安定性の点から好適である。
【0049】
本発明の液体漂白剤は、漂白洗浄効果の点から、非イオン界面活性剤を好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%含有することが好適であり、陽イオン界面活性剤を好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.1〜1質量%含有することが好適であり、両性界面活性剤を好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%含有することが好適である。
【0050】
本発明の液体漂白剤は、洗浄性を向上させる目的から、アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸を重合して得られるホモポリマー若しくはこれらのモノマーからなるコポリマー、又はこれらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとのコポリマー等のカルボン酸系ポリマーを含有することが好ましい。
【0051】
これらのカルボン酸系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは3,000〜100,000、より好ましくは5,000〜80,000である。重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで求めることが出来る。
【0052】
また、このようなカルボン酸系ポリマーは一部及び/又は全部がアルカリ剤で中和された塩の状態であっても差し支えない。アルカリ剤としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を含む化合物が好ましい。
【0053】
具体的には、好ましくは重量平均分子量3,000〜30,000のポリアクリル酸ナトリウム(若しくはカリウム)又はポリメタクリル酸ナトリウム(若しくはカリウム)、あるいは好ましくは重量平均分子量20,000〜100,000、より好ましくは50,000〜80,000のアクリル酸−マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(もしくはカリウム塩)が良好である。アクリル酸−マレイン酸コポリマーの場合は、アクリル酸/マレイン酸が質量比で5/5〜9/1、好ましくは6/4〜8/2が洗浄効果の点から好適である。
【0054】
本発明の液体漂白剤中のカルボン酸系ポリマーの含有量は、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%である。
【0055】
更に、本発明の液体漂白剤は、金属イオン封鎖剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる金属イオン封鎖剤としては、下記(i)〜(viii)のものが挙げられ、なかでも(ii)、(v)、(vi)及び(vii)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、(ii)から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
(i)フィチン酸等のリン酸系化合物のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(ii)エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸及びその誘導体、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸等のホスホン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(iii)2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等のホスホノカルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(iv)アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(v)ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(vi)ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩
(vii)ゼオライトAに代表されるアルミノケイ酸のアルカリ金属塩又はアルカノールアミン塩
(viii)アミノポリ(メチレンホスホン酸)のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、又はポリエチレンポリアミンポリ(メチレンホスホン酸)のアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩。
【0056】
このような金属イオン封鎖剤の含有量は、液体漂白剤中に好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%である。
【0057】
本発明の液体漂白剤には、上記成分の他に、漂白剤に通常添加される公知の成分を添加することができる。例えば、過酸化水素の安定化剤として公知の硫酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ケイフッ化マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウム等のマグネシウム塩、及び珪酸ソーダのような珪酸塩類を用いることが好ましい。更に、必要に応じてカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールのような再汚染防止剤等を添加することが好ましい。
【0058】
また、本発明の液体漂白剤には、更に種々の化合物を含有させることができる。例えば、過酸化水素の安定化剤として知られているリン酸、バルビツール酸、尿酸、アセトアニリド、オキシキノリンやフェナセチン等に代表されるアミノポリカルボン酸類、及び、DL−α−トコフェロール、没食子酸誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等を添加することが好ましい。これらの安定化剤は、液体漂白剤中に好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%含有させるのが好適である。
【0059】
また、本発明の液体漂白剤には、変退色防止剤として公知の物質を含むことが好ましい。このような物質としてはフェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、チロシン、メチオニン等のアミノ酸及びアミノ酸塩類、及びヒドロキシイミノジ酢酸等のアミノ又はイミド化合物、更にはアクリロニトリルと第四級アンモニウム基を有するアクリロニトリルと共重合可能なモノマーの1種又は二種以上とのコポリマー等である。なお、アミノ酸には光学異性体が存在するが、本発明の効果においては光学異性体は関与しない。従って、化学的に合成したアミノ酸を使用することも可能である。
【0060】
また、本発明の液体漂白剤には、漂白繊維に対する漂白効果を増すために蛍光増白剤として、チノパールCBS(チバ・ガイギー社製)、チノパールSWN(チバ・ガイギー社製)や、カラー・インデックス蛍光増白剤28、40、61、71等のような蛍光増白剤や、漂白性能を向上させるために従来公知の酵素(セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ)を必要に応じて配合することが好ましい。
【0061】
また、本発明の液体漂白剤には、染料や顔料のような着色剤、香料、シリコーン類、殺菌剤、紫外線吸収剤等の種々の微量添加物を適量配合することが好ましい。
【0062】
また、上記成分の他に通常添加される公知の成分を添加することができる。低温での液の安定性及び凍結復元性を改善したり、高温での液分離を防止する目的でハイドロトロープ剤を配合することが好ましい。このようなハイドロトロープ剤としては、一般的には、トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩等に代表される短鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等に代表されるアルコール及び多価アルコール等が好ましい。ハイドロトロープ剤は液体漂白剤中に0〜30質量%程度配合することが好ましい。
【0063】
なお、本発明において、酸化防止剤の一種であるリン系及びイオウ系の過酸化物分解剤は、漂白性能を低下させるため含有しないことが好ましい。また、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸、ピロ亜硫酸、亜スズ酸、アスコルビン酸及びエリソルビン酸などの還元剤を含有しないことが、酸化漂白成分を有効に作用させるために好ましい。
【0064】
本発明では、過酷条件下で発生するラジカルを捕捉することにより、過酸化物及び有機過酸などの漂白成分が有効に漂白性能を発揮し得るため、脱色、衣類損傷を引き起こすことなく高い漂白性能を発揮することが出来る。
【0065】
[液体漂白剤]
本発明の液体漂白剤は、上記(a)成分、(b)成分、及び所望により配合されるその他の成分を水に溶解させた水溶液の形態であり、漂白性能の観点から、本発明の液体漂白剤の20℃におけるpHは、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上が好適である。このような性質を付与する目的から、本発明ではアルカリ剤成分を、液体漂白剤中に好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは3〜7質量%含有することが好ましい。アルカリ剤成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸3カリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸2水素カリウムから選ばれる1種以上が好適であり、特に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムが好ましく、炭酸カリウムが最も好ましい。
【0066】
本発明の液体漂白剤中の(a)成分/(b)成分のモル比は色柄物衣類の脱色を防止するために40/1〜1/10、好ましくは30/1〜1/5、より好ましくは10/1〜1/5、更に好ましくは1/1〜1/4である。水は、各成分を均一に溶解させるために、液体漂白剤中に好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%含有され、イオン交換水又は蒸留水などの重金属又は重金属イオンを極力除いたものを用いることが好ましい。
【0067】
本発明の液体漂白剤は、(a)成分、(b)成分、及び所望により配合されるその他の成分が所定量となるように水に溶解する方法で調製できるが、使用する直前に調製されることが、高い洗浄効果を得る上で好適である。そのために、各成分を別々の容器に収容する容器入りの形態として、適用直前に本発明の液体漂白剤が形成されるような態様とすることができる。その一例として、(a)成分を含む組成物からなるA剤と、その他の成分を含む組成物からなるB剤を、それぞれ分離して保持する容器に収容された2剤型液体漂白剤が挙げられる。この場合、前記界面活性剤及び/又は溶剤は、A剤、B剤の少なくとも一方に配合され、好ましくは両方に配合される。また、2剤型液体漂白剤においてアルカリ剤成分を併用する場合は、(a)成分を含有するA剤とは別のB剤に配合することが好ましい。各成分は、混合後の組成が本発明の範囲となるようにA剤、B剤中に配合される。
【0068】
本発明の液体漂白剤は、繊維製品などの洗浄対象に処理される。処理の方法としては、弱アルカリ性洗剤と共に洗濯浴に希釈して洗濯機などで洗浄する方法を用いても差し支えないが、繊維製品などの洗浄対象に付着した皮脂及び/蛋白汚れに、希釈することなく、直接接触させて洗浄する方法が高い効果を得るために好ましい。接触させる方法としては、繊維製品などの洗浄対象に該液体漂白剤を浸漬させる方法、汚れの付着している部分に直接塗布や滴下して付着させる方法、及びトリガー式スプレーヤーなどのスプレー付き容器に充填してスプレーする方法を挙げることができ、簡便性の点から汚れの付着している部分に直接塗布や滴下して付着させる方法が好ましい。接触させる時間としては洗浄効果の点から好ましくは5〜480分、より好ましくは5〜300分、更に好ましくは10〜300分、特に好ましくは30〜200分が好適である。また、接触させる温度としては好ましくは2〜50℃、より好ましくは5〜40℃である。
【0069】
接触洗浄後の繊維製品などの洗浄対象は水道水ですすぎ洗いをするか、弱アルカリ洗剤と共に洗濯し、すすぎ洗いをすることが好適であり、特に弱アルカリ性洗剤で洗濯することが洗浄効果をより効率よく除去する上で好ましい。すすぎ後は脱水し、自然乾燥または乾燥機により乾燥する。
【実施例】
【0070】
実施例1〜5及び比較例1〜3
表1に示す組成の液体漂白剤を調製した。得られた液体漂白剤を用いて、下記の方法で脱色性及び漂白性能を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<脱色性>
ナフトール染料(下漬け剤;Naphthol AS、顕色剤;Fast Red GBase)で染めた木綿布(10cm×10cm)を用意する。この木綿布に表1の液体漂白剤を1mlづつ塗布し、20℃45%Rhの条件で48時間放置後、水道水ですすぎ、乾燥させた。この操作を20回繰り返し、脱色の程度を下記基準で評価した。
【0072】
脱色性の評価基準
◎;全く脱色していない
○;少しうすくなっているが、全く気にならない
△;部分的に脱色している
×;脱色が布全体に広がっている
<漂白性能>
(1)紅茶汚染布の調製
日東紅茶(黄色パッケージ)80gを3リットルのイオン交換水にて約15分間煮沸後、糊抜きしたさらし木綿でこし、この液に木綿金布#2003を浸し、約15分間煮沸した。そのまま火よりおろし、約2時間程度放置し室温まで放置した後、布を取り出して自然乾燥させ、洗液に色がつかなくなるまで水洗し、脱水、プレス後、10cm×10cmの試験片とし、漂白性能評価に供した。
【0073】
(2)漂白性能の評価
上記(1)で調製した紅茶汚染布4枚に、表1に示す液体漂白剤を1ml/枚の割合で塗布し、30分間放置した。その後、0.0667質量%濃度の市販洗剤溶液を使ってターゴトメーターにて普通洗浄した(80rpm×10分)。その後、水道水ですすぎ、乾燥させ、次式によって漂白率を算出した。
【0074】
【数1】

【0075】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)過酸化水素、(b)ラジカルトラップ剤、及び水を含有し、(a)成分の含有量が0.1〜10質量%であり、(a)成分/(b)成分のモル比が40/1〜1/10である液体漂白剤。
【請求項2】
pHが8以上である、請求項1記載の液体漂白剤。
【請求項3】
繊維製品用である、請求項1又は2記載の液体漂白剤。
【請求項4】
繊維製品に接触させて用いられる、請求項3記載の液体漂白剤。

【公開番号】特開2010−132756(P2010−132756A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309250(P2008−309250)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】