説明

液体燃料の混合装置および直接液体燃料電池システム

【課題】回収された水の使用量を調節して,混合燃料の濃度を調節することが可能な,新規かつ改良された液体燃料の混合装置および直接液体燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ウォータチャンバ210および燃料チャンバ230と,上記ウォータチャンバおよび上記燃料チャンバ間に垂直に設置され,所定高さに上記ウォータチャンバおよび上記燃料チャンバを連通する通路が形成されている仕切り250と,を備え,上記ウォータチャンバは,上記燃料電池のカソード電極から回収される水と空気とが流入される第1ポート211を備え,上記燃料チャンバは,上記燃料電池のアノード電極から回収される未反応燃料およびCOが流入される第3ポート231と,液体燃料タンクからの液体燃料が流入される第4ポート232と,上記燃料電池に混合された液体燃料が供給される第5ポート233と,を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液体燃料の混合装置および直接液体燃料電池システムに関し,直接液体燃料電池に供給される液体燃料の濃度を一定に保持する液体燃料の混合装置および直接液体燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直接液体燃料電池(Direct Liquid Feed Fuel Cell)は,メタノール,エタノールのような有機化合物燃料と酸化剤である酸素との電気化学反応により電気を生成する発電装置である。エネルギー密度および電力密度が非常に高く,メタノールなどの液体燃料を直接使用するために,燃料改質器などの周辺装置を必要としない。また,燃料の保存および供給が容易であるという長所を有する。
【0003】
直接液体燃料電池は,図1に図示されているように,アノード電極2とカソード電極3との間に電解質膜1が介在されている構造を有する。アノード電極2とカソード電極3の構造は,それぞれ燃料の供給および拡散のための燃料拡散層22,32と,燃料の酸化/還元反応が起きる触媒層21,31と,電極支持体23,33とを備える。
【0004】
電極反応のための触媒は,低温でも優秀な特性を有する白金のような貴金属触媒が使用されるが,反応副生成物である一酸化炭素による触媒被毒現象を防止するために,ルテニウム,ロジウム,オスミウム,ニッケルのような遷移金属の合金触媒が使用される。電極支持体としては,炭素紙,炭素布などが使用され,燃料の供給と反応生成物の排出とが容易なように,撥水処理して使用される。電解質膜1は,厚さが50μmから200μmである高分子膜であり,水分を含有してイオン伝導性を有する水素イオン交換膜である。
【0005】
直接液体燃料電池のうち,メタノールと水とを混合燃料として使用する直接メタノール燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)の電極反応は,燃料が酸化されるアノード反応と,水素イオンと酸素の還元によるカソード反応とから構成され,反応式は次の通りである。
【0006】
CHOH+HO→CO+6H+6e(アノード反応)・・・反応式1
3/2O+6H+6e→3HO(カソード反応)・・・反応式2
CHOH+3/2O→2HO+CO(総括反応)・・・反応式3
【0007】
酸化反応(反応式1)が起こるアノード電極2では,メタノールと水との反応によって二酸化炭素,水素イオンおよび電子が生成され,生成された水素イオンは,電解質膜1を経てカソード電極3に伝えられる。還元反応(反応式2)が起こるカソード電極3では,水素イオンと外部回路を介して伝えられた電子と酸素との反応により水が生成される。従って,DMFCの総括反応(反応式3)は,メタノールと酸素とが反応して水と二酸化炭素とを生成する反応になる。このとき,メタノール1molが酸素と反応し,2molの水が生成される。
【0008】
このとき使用される液体燃料は,純粋なメタノールではなく,システム内部で発生,または収容された水と混合されたものが使用される(例えば,特許文献1)。高濃度燃料を使用する場合,電解質膜(水素イオン交換膜)での燃料のクロスオーバー(すなわち,燃料がイオン交換膜を通過する現象)による発電性能の低下が大きい。そのため,一般的に0.5molから2mol(2体積%から8体積%)の低濃度メタノールに希釈して使用されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,497,975号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし,高濃度または純粋なメタノールを収容する燃料タンクを備えた現在利用できる直接液体燃料電池システムにおいて,燃料タンクからのメタノールとシステムから回収,または別の水タンクから供給された水との混合液を所定の均一濃度でアノード電極に供給することは難しい。
【0011】
そこで,本発明は,上記問題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的とするところは,回収された水の使用量を調節して,混合燃料の濃度を調節することが可能な,新規かつ改良された液体燃料の混合装置および直接液体燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,直接液体燃料電池に供給される液体燃料を混合する液体燃料の混合装置において:ウォータチャンバおよび燃料チャンバと;上記ウォータチャンバおよび上記燃料チャンバ間に垂直に設置され,所定高さに上記ウォータチャンバおよび上記燃料チャンバを連通する通路が形成されている仕切りと;
を備え,上記ウォータチャンバは,上記燃料電池のカソード電極から回収される水と空気とが流入される第1ポートを備え,上記燃料チャンバは,上記燃料電池のアノード電極から回収される未反応燃料およびCOが流入される第3ポートと,液体燃料タンクからの液体燃料が流入される第4ポートと,上記燃料電池に混合された液体燃料が供給される第5ポートと,を備えることを特徴とする,液体燃料の混合装置が提供される。
【0013】
上記ウォータチャンバには,上記通路の下方に位置して余分の水を回収するための第2ポートがさらに形成されてもよい。
【0014】
上記燃料チャンバの上部には,通気ホールが形成されてもよい。
【0015】
上記燃料チャンバには,ほぼ水平に設置されて上部燃料チャンバおよび下部燃料チャンバを区分する混合板が設置され,上記第3ポートおよび第4ポートが上記混合板の対向する側にそれぞれ連結され,上記混合板には,上記第3ポートおよび第4ポートから流入された液体燃料を上記下部燃料チャンバに送る開孔部が形成されてもよい。
【0016】
上記混合板には,上記第3ポートと上記開孔部との間,および上記第4ポートと上記開孔部との間に複数の平行した流路チャンネルが形成されてもよい。
【0017】
上記混合板には,上記第3ポートと上記開孔部との間,および上記第4ポートと上記開孔部との間にそれぞれ複数の突出部が形成されてもよい。
【0018】
上記通路は,上記下部燃料チャンバと連通されてもよい。
【0019】
上記通路は,上記上部燃料チャンバと連通されるように形成され,上記混合板には,上記通路と連結された引き込み部が形成されてもよい。
【0020】
上記混合板の開孔部は,上記第3ポートおよび上記第4ポート間で,上記第4ポート側に偏って形成されてもよい。
【0021】
上記ウォータチャンバの上部は,上記第1ポートと対向して傾斜面が形成され,上記ウォータチャンバの上部には,大気と連通する通気ホールが形成されてもよい。
【0022】
また,上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,第1面と第2面とを有する電解質膜と,上記第1面に設けられたアノード電極と,上記第2面に設けられたカソード電極と,を備えた少なくとも2つのMEAによる直接液体燃料電池スタックと;上記スタックの中間に介在され,隣接した1つのMEAのアノード電極および他のMEAのカソード電極に接触される少なくとも1枚の導電性バイポーラプレートと;上記スタックの両側終端部にそれぞれ設けられ,対向するMEAに接触される導電性終端プレートと;上記スタックで垂直に貫通して燃料を供給または排出するラインを形成する複数の燃料出入孔と;液体燃料タンクと;上記液体燃料タンクからの液体燃料と上記燃料出入孔からの未反応燃料と水とを混合し,上記燃料出入孔を介して上記アノード電極に液体燃料を供給する液体燃料の混合装置と;を備え,上記液体燃料の混合装置は,ウォータチャンバおよび燃料チャンバと,上記ウォータチャンバおよび上記燃料チャンバ間に垂直に設置され,所定高さに上記ウォータチャンバおよび上記燃料チャンバを連通する通路が形成されている仕切りと,を備え,上記ウォータチャンバは,上記燃料電池スタックのカソード電極から回収される水と空気とが流入される第1ポートを備え,上記燃料チャンバは,上記燃料電池スタックのアノード電極から回収される未反応燃料およびCOが流入される第3ポートと,液体燃料タンクからの液体燃料が流入される第4ポートと,上記燃料電池に混合された液体燃料が供給される第5ポートと,を備えることを特徴とする,直接液体燃料電池システムが提供される。
【0023】
上記ウォータチャンバには,上記通路の下方に位置して余分の水を回収するための第2ポートがさらに形成されており,上記第2ポートに連結され,上記ウォータチャンバに充填された水を排水する第1ポンプをさらに備えてよい。
【0024】
上記燃料チャンバの上部には,通気ホールが形成されてもよい。
【0025】
上記燃料チャンバには,ほぼ水平に設置されて上部燃料チャンバおよび下部燃料チャンバを形成する混合板が設置され,上記第3ポートおよび第4ポートが,上記混合板の対向する側にそれぞれ連結され,上記混合板には,上記第3ポートおよび第4ポートから流入された液体燃料を上記下部燃料チャンバに送る開孔部が形成されてもよい。
【0026】
上記混合板には,上記第3ポートと上記開孔部との間,および上記第4ポートと上記開孔部との間にそれぞれ複数の平行した流路チャンネルが形成されてもよい。
【0027】
上記混合板には,上記第3ポートと上記開孔部との間,および上記第4ポートと上記開孔部との間に複数の突出部が形成されてもよい。
【0028】
上記通路は,上記下部燃料チャンバと連通されてもよい。
【0029】
上記通路は,上記上部燃料チャンバと連通されるように形成され,上記混合板には,上記通路と連結された引き込み部が形成されてもよい。
【0030】
上記混合板の開孔部は,上記第3ポートおよび上記第4ポートの間で,上記第4ポート側に偏って形成されてもよい。
【0031】
上記ウォータチャンバの上部は,上記第1ポートと対向して傾斜面が形成され,上記ウォータチャンバの上部には,大気と連通する通気ホールが形成されてもよい。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように,本願発明によれば,回収された水の使用量を調節して,混合燃料の濃度を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書および図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
図2は,本発明の望ましい実施形態による直接液体燃料電池システムの概略的な構成を図示した図面であり,図3は,図2の液体燃料の混合装置を概略的に図示した斜視図である。図4は,図3のIV−IV線の断面図であり,図5は,図3のV−V線の断面図である。
【0035】
まず,図3および図4を共に参照すれば,液体燃料の混合装置200は,ウォータチャンバ210と,燃料チャンバ230と,それらチャンバ間の仕切り250とからなっている。ウォータチャンバ210には,カソード電極(図7の130)から水と共に空気(または酸化剤),水蒸気が流入される第1ポート211と,ウォータチャンバ210内の水を排水する第2ポート212とが形成されている。ウォータチャンバ210の上部は,第1ポート211に対向する傾斜面214が形成されており,またウォータチャンバ210の上部には,大気と連通される通気ホール216が形成されている。かかる構成により,第1ポート211に流入される混合物は,傾斜面214で衝突し,空気および水蒸気は,通気ホール216を介して外に排出される。
【0036】
一方,上記仕切り250には,上記傾斜面214の下方位置に,ウォータチャンバ210および燃料チャンバ230間の通路252が形成されている。通路252は,ウォータチャンバ210の底面から所定高さに形成される。通路252は,複数のホールまたはスリットから形成可能である。第2ポート212は,第1ポート211より下方に設置され,また通路252の下方に配置される。第2ポート212には,第1ポンプ215が連結され,余分の水を別途のタンク(図示せず)または液体燃料タンク(図2の260)の空き空間に輸送できる。このように余分の水を排水するのは,燃料チャンバ230から直接液体燃料電池スタック100に供給される液体燃料の濃度を調節するためである。
【0037】
図3および図5を共に参照すれば,燃料チャンバ230には,アノード側からの水,CO,未反応燃料が流入される第3ポート231と,燃料タンク260から第2ポンプ262により供給される燃料が流入される第4ポート232と,混合された燃料を燃料電池スタック(図2の100)に供給する第5ポート233とが形成されている。また,燃料チャンバ230には,混合板240が水平に設置されている。この混合板240は,燃料チャンバ230を上部燃料チャンバおよび下部燃料チャンバに区分する。混合板240の側部には,対向して第3ポート231および第4ポート232がそれぞれ連結される。また,混合板240には,第3ポート231および第4ポート232に流入された液体を下部燃料チャンバに送り込む開孔部242が形成されている。燃料チャンバ230の上部には,複数の通気ホール235が形成されており,第3ポート231から未反応燃料と共に流入されたCOは,この通気ホール235を介して外部に排出される。
【0038】
図6は,図3の混合板240の一例を図示した平面図である。図6を参照すれば,混合板240は,第3ポート231および第4ポート232がそれぞれ連結され,第3ポート231および第4ポート232の間には第3ポート231および第4ポート232からの流入方向と垂直方向に開孔部242が形成されている。開孔部242は,図6に図示されているように,たとえば複数のホールであるが,またスリットである場合もある。第3ポート231と開孔部242との間,および第4ポート232と開孔部242との間には,直線突出部243の間に形成されている互いに平行した複数の流路チャンネル244が形成されている。開孔部242は,流れ込む流量の少ない第4ポート232側に偏って形成されてもよい。第3ポート231からの希釈された燃料と,第4ポート232からの液体燃料は,開孔部242を通過しつつ互いに混合される。
【0039】
ウォータチャンバ210に,通路252の高さ以上に水が満たされれば,余分の水は,通路252を通過して燃料チャンバ230に移動し,混合板240を通過した希釈された液体燃料とさらに混合される。このように均一に希釈された液体燃料は,第5ポート233を通過して直接液体燃料スタック100に第3ポンプ(図2の262’)によって供給される。
【0040】
図7は,図2の直接液体燃料電池スタック100の概略的な構成を図示した断面図である。
【0041】
図2および図7を共に参照すれば,直接液体燃料電池システムは,直接液体燃料電池スタック100,液体燃料の混合装置200,液体燃料タンク260,第1ポンプ215,第2ポンプ262,第3ポンプ262’,エアコンプレッサ270,メタノールセンサ236,循環経路280からなっている。
【0042】
燃料電池スタック100には,電解質膜110を中央に,その両側にアノード電極120およびカソード電極130が設けられた複数のMEA(Membrane Electrode Assembly)が電気的に順方向に配置されており,各MEAの間に導電性中間プレート160が介在されている。この導電性中間プレート160は,バイポーラプレートに該当する。そして,スタック100の上下に導電性終端プレート161,162が位置する。導電性中間プレート160は,MEAに接触される面にだけ流路チャンネル143,153が形成されている。導電性終端プレート161,162は,それぞれMEAに接触される面にだけ流路チャンネル143,153が形成されており,それ以外は,導電性中間プレート160と実質的に同じ構造を有する。すなわち,一側(図面で上端側)の導電性終端プレート161の内面に,液体燃料流路チャンネル143が形成され,他側(図面で下端側)の導電性終端プレート162の内面に,空気流路チャンネル153が形成されている。そして,導電性終端プレート161,162の外側表面に,電流集電板171,172が位置する。
【0043】
MEAおよびそれら間の導電性中間プレート160,スタック100上下の導電性終端プレート161,162,電流集電板171,172は,両固定用終端プレート181,182によって,相互固定される。
【0044】
そして,スタック100には,垂直方向への複数の貫通孔である燃料出入孔145,155が形成される。各燃料出入孔145,155には,混合液体燃料または空気がそれぞれ流入され,それぞれ流路チャンネル143,153を通過した後,未反応の燃料(液体燃料または空気)と反応生成物である水,COとがそれぞれ燃料出入孔(図示せず)を通過して排出される。図7には,混合燃料が流入される燃料出入孔145,および空気が流入される燃料出入孔155だけを図示した。適切な流路を形成するために,流動遮断のためのガスケット141などが必要な部分に適用されるが,かかる流路形成構造は,一般的な技術であるから,具体的に説明を行わない。
【0045】
エアコンプレッサ270は,燃料電池スタック100の燃料出入孔155に空気を供給する。
【0046】
第1ポンプ215は,液体燃料の混合装置200の第2ポート212から液体燃料タンク260またはウォータタンク(図示せず)に水を排水するときに使用される。
【0047】
第2ポンプ262は,液体燃料タンク260からの純粋な液体燃料を液体燃料の混合装置200の第4ポート232に供給する。
【0048】
第3ポンプ262’は,液体燃料の混合装置200の第5ポート233から燃料電池スタック100の燃料出入孔155に希釈された液体燃料を供給する。
【0049】
メタノールセンサ236は,第5ポート233から燃料電池スタック100までの間の循環経路280に設置され,アノード電極120に供給される液体燃料(すなわち,メタノール)の濃度を測定する。メタノールセンサ236で測定されたメタノール濃度によって,第1ポンプ215により排出される水の流量を調節でき,また第2ポンプ262により液体燃料の混合装置200に供給される液体燃料の量を制御することもできる。
【0050】
本発明の実施形態において,液体燃料タンク260には,純粋または高濃度の液体燃料,例えばメタノールが収容され,当該メタノールは,循環経路280を介して循環する。一方,本発明の実施形態によれば,水が外部から全面的に供給されるのではなくして,カソード電極130で発生した多量の水を回収してそれをアノード電極120に供給する。従って,排水する水の量は減り,排水された水は,液体燃料タンク260の空き空間に収容することもできる。
【0051】
図8は,1molのメタノール溶液が収容された燃料タンクを使用する燃料電池システムの経時的な出力電圧をフローティングしたグラフである。
【0052】
図8を参照すれば,燃料電池で排出される物質をいずれも排出する場合(EXP1)と,燃料電池で排出される物質をいずれも燃料タンクで回収して使用する場合(EXP2)と,本発明の実施形態にかかる液体燃料の混合装置200を含む燃料電池の場合(EXP3)とを比較した。EXP1の場合,燃料電池に常に1molの濃度のメタノールが供給されるので,出力電圧が一定である。EXP2の場合,経時的に燃料電池に供給されるメタノール濃度が低下し,従って出力電圧が継続的に上昇することが分かる。すなわち,出力電流が継続的に減少し,従って燃料電池の性能が急激に悪化する。EXP3の場合,初期段階では,メタノール濃度のバランスが合わずに不安定であったが,すぐに安定化することが分かる。
【0053】
図9は,本発明の他の実施形態にかかる液体燃料の混合装置200の断面図である。上述の実施形態と実質的に同じ構成要素には,同じ参照番号を使用して詳細な説明は省略する。
【0054】
図9を参照すれば,燃料チャンバ230には,アノード側からの水,CO,未反応燃料が流入される第3ポート231と,燃料タンク260から第2ポンプ262により供給される燃料が流入される第4ポート232と,混合された燃料として燃料電池に供給される第5ポート(図示せず)とが形成されている。燃料チャンバ230には,水平に混合板340が設置されており,この混合板340は,燃料チャンバ230を上部燃料チャンバおよび下部燃料チャンバに区分する。混合板340の側部には,第3ポート231および第4ポート232が,それぞれ対向する側に連結される。通路252は,上部燃料チャンバ230に連結するように形成される。通路252は,混合板340の側部に連結されてもよい。混合板340には,第3ポート231,第4ポート232および通路252に流入された液体を下部燃料チャンバに送り込む開孔部342が形成されている。燃料チャンバ230の上部には,複数の通気ホール235が形成されており,第3ポート231から未反応燃料と共に流入されたCOは,この通気ホール235を介して外部に排出される。
【0055】
図10は,図9の混合板340の一例を図示した平面図である。図9および図10を参照すれば,混合板340は,第3ポート231,第4ポート232が連結される部分と,通路252に流入された水が流れる引き込み口346が形成されている。第3ポート231,第4ポート232および引き込み口346の間には,第3ポート231および第4ポート232からの流入方向と垂直方向に開孔部342が形成されている。開孔部342は,スリットでもよい。第3ポート231,第4ポート232および引き込み口346と,開孔部342との間には複数の突出部348が形成され,流入される液体を分散させる。開孔部342は,流れ込む流量の少ない第4ポート232側に偏って形成されてもよい。第3ポート231からの希釈された燃料と,第4ポート232からの液体燃料および引き込み口346からの水は,開孔部342を通過しつつ互いに混合される。
【0056】
本発明の実施形態によれば,液体燃料の混合装置は,燃料電池から循環される液体量と,液体燃料タンクからのメタノールの流量との混合を調節し,燃料電池に供給される液体燃料の濃度を一定に保持できる。従って,本実施形態にかかる燃料電池からの出力電圧が一定になる。また,純粋または高濃度のメタノールを収容して使用するので,エネルギー保存密度が向上する。
【0057】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は,液体燃料の混合装置および直接液体燃料電池システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】直接液体燃料電池の基本的な構成を示す断面図である。
【図2】本発明の望ましい実施形態による直接液体燃料電池システムの概略的な構成を図示した図面である。
【図3】図2の液体燃料の混合装置を概略的に図示した斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線の断面図である。
【図5】図3のV−V線の断面図である。
【図6】図3の混合板の一例を図示した平面図である。
【図7】図2の直接液体燃料電池スタックの概略的な構成を図示した断面図である。
【図8】1molのメタノール溶液が保存された燃料タンクを使用する燃料電池システムの経時的な出力電圧を示したグラフである。
【図9】本発明の他の実施形態による液体燃料の混合装置の断面図である。
【図10】図9の混合板の一例を図示した平面図である。
【符号の説明】
【0060】
100 燃料電池スタック
110 電解質膜
120 アノード電極
130 カソード電極
141 ガスケット
143 液体燃料の流路チャンネル
145,155 燃料出入孔
153 空気の流路チャンネル
160 中間伝導性プレート
161,162 導電性終端プレート
171,172 電流集電板
181,182 固定用終端パネル
200 液体燃料の混合装置
210 ウォータチャンバ
211 第1ポート
212 第2ポート
214 傾斜面
215 第1ポンプ
216,235 通気ホール
230 燃料チャンバ
231 第3ポート
232 第4ポート
233 第5ポート
236 センサ
240,340 混合板
242,342 開孔部
243 直線突出部
244 流路チャンネル
250 仕切り
252 通路
260 燃料タンク
262 第2ポンプ
262’ 第3ポンプ
270 エアコンプレッサ
280 循環経路
346 引き込み部
348 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接液体燃料電池に供給される液体燃料を混合する液体燃料の混合装置において:
ウォータチャンバおよび燃料チャンバと;
前記ウォータチャンバおよび前記燃料チャンバ間に垂直に設置され,所定高さに前記ウォータチャンバおよび前記燃料チャンバを連通する通路が形成されている仕切りと;
を備え,
前記ウォータチャンバは,前記燃料電池のカソード電極から回収される水と空気とが流入される第1ポートを備え,
前記燃料チャンバは,前記燃料電池のアノード電極から回収される未反応燃料およびCOが流入される第3ポートと,液体燃料タンクからの液体燃料が流入される第4ポートと,前記燃料電池に混合された液体燃料が供給される第5ポートと,を備えることを特徴とする,液体燃料の混合装置。
【請求項2】
前記ウォータチャンバには,前記通路の下方に位置して余分の水を回収するための第2ポートがさらに形成されたことを特徴とする,請求項1に記載の液体燃料の混合装置。
【請求項3】
前記燃料チャンバの上部には,通気ホールが形成されていることを特徴とする,請求項1または2に記載の液体燃料の混合装置。
【請求項4】
前記燃料チャンバには,ほぼ水平に設置されて上部燃料チャンバおよび下部燃料チャンバを区分する混合板が設置され,前記第3ポートおよび第4ポートが前記混合板の対向する側にそれぞれ連結され,前記混合板には,前記第3ポートおよび第4ポートから流入された液体燃料を前記下部燃料チャンバに送る開孔部が形成されていることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の液体燃料の混合装置。
【請求項5】
前記混合板には,前記第3ポートと前記開孔部との間,および前記第4ポートと前記開孔部との間に複数の平行した流路チャンネルが形成されていることを特徴とする,請求項4に記載の液体燃料の混合装置。
【請求項6】
前記混合板には,前記第3ポートと前記開孔部との間,および前記第4ポートと前記開孔部との間にそれぞれ複数の突出部が形成されていることを特徴とする,請求項4または5に記載の液体燃料の混合装置。
【請求項7】
前記通路は,前記下部燃料チャンバと連通されていることを特徴とする,請求項4〜6のいずれかに記載の液体燃料の混合装置。
【請求項8】
前記通路は,前記上部燃料チャンバと連通されるように形成され,前記混合板には,前記通路と連結された引き込み部が形成されていることを特徴とする,請求項4〜6のいずれかに記載の液体燃料の混合装置。
【請求項9】
前記混合板の開孔部は,前記第3ポートおよび前記第4ポート間で,前記第4ポート側に偏って形成されていることを特徴とする,請求項4〜8のいずれかに記載の液体燃料の混合装置。
【請求項10】
前記ウォータチャンバの上部は,前記第1ポートと対向して傾斜面が形成され,前記ウォータチャンバの上部には,大気と連通する通気ホールが形成されていることを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載の液体燃料の混合装置。
【請求項11】
第1面と第2面とを有する電解質膜と,前記第1面に設けられたアノード電極と,前記第2面に設けられたカソード電極と,を備えた少なくとも2つのMEAによる直接液体燃料電池スタックと;
前記スタックの中間に介在され,隣接した1つのMEAのアノード電極および他のMEAのカソード電極に接触される少なくとも1枚の導電性バイポーラプレートと;
前記スタックの両側終端部にそれぞれ設けられ,対向するMEAに接触される導電性終端プレートと;
前記スタックで垂直に貫通して燃料を供給または排出するラインを形成する複数の燃料出入孔と;
液体燃料タンクと;
前記液体燃料タンクからの液体燃料と前記燃料出入孔からの未反応燃料と水とを混合し,前記燃料出入孔を介して前記アノード電極に液体燃料を供給する液体燃料の混合装置と;を備え,
前記液体燃料の混合装置は,ウォータチャンバおよび燃料チャンバと,前記ウォータチャンバおよび前記燃料チャンバ間に垂直に設置され,所定高さに前記ウォータチャンバおよび前記燃料チャンバを連通する通路が形成されている仕切りと,
を備え,
前記ウォータチャンバは,前記燃料電池スタックのカソード電極から回収される水と空気とが流入される第1ポートを備え,
前記燃料チャンバは,前記燃料電池スタックのアノード電極から回収される未反応燃料およびCOが流入される第3ポートと,
液体燃料タンクからの液体燃料が流入される第4ポートと,
前記燃料電池に混合された液体燃料が供給される第5ポートと,を備えることを特徴とする,直接液体燃料電池システム。
【請求項12】
前記ウォータチャンバには,前記通路の下方に位置して余分の水を回収するための第2ポートがさらに形成されており,前記第2ポートに連結され,前記ウォータチャンバに充填された水を排水する第1ポンプをさらに備えることを特徴とする,請求項11に記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項13】
前記燃料チャンバの上部には,通気ホールが形成されていることを特徴とする,請求項11または12に記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項14】
前記燃料チャンバには,ほぼ水平に設置されて上部燃料チャンバおよび下部燃料チャンバを形成する混合板が設置され,前記第3ポートおよび第4ポートが,前記混合板の対向する側にそれぞれ連結され,前記混合板には,前記第3ポートおよび第4ポートから流入された液体燃料を前記下部燃料チャンバに送る開孔部が形成されていることを特徴とする,請求項11〜13のいずれかに記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項15】
前記混合板には,前記第3ポートと前記開孔部との間,および前記第4ポートと前記開孔部との間にそれぞれ複数の平行した流路チャンネルが形成されていることを特徴とする,請求項14に記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項16】
前記混合板には,前記第3ポートと前記開孔部との間,および前記第4ポートと前記開孔部との間に複数の突出部が形成されていることを特徴とする,請求項14または15に記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項17】
前記通路は,前記下部燃料チャンバと連通されていることを特徴とする,請求項14〜16のいずれかに記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項18】
前記通路は,前記上部燃料チャンバと連通されるように形成され,前記混合板には,前記通路と連結された引き込み部が形成されていることを特徴とする,請求項14〜16のいずれかに記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項19】
前記混合板の開孔部は,前記第3ポートおよび前記第4ポートの間で,前記第4ポート側に偏って形成されていることを特徴とする,請求項14〜18のいずれかに記載の直接液体燃料電池システム。
【請求項20】
前記ウォータチャンバの上部は,前記第1ポートと対向して傾斜面が形成され,前記ウォータチャンバの上部には,大気と連通する通気ホールが形成されていることを特徴とする,請求項11〜19のいずれかに記載の直接液体燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−190674(P2006−190674A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375622(P2005−375622)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】