説明

液体燃料混合システム及び液体燃料合成システム、並びに液体燃料混合方法

【課題】各中間タンク内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路で混合させること。
【解決手段】炭化水素原料から転換された複数種類の液体燃料を混合するシステムであって、互いに異なる種類の液体燃料がそれぞれ流入されて貯留される複数の中間タンク80と、各中間タンクに連通されたそれぞれの枝流路88が集合した下流側に設けられる燃料混合流路82と、各中間タンク内の液体燃料の液面位置を検出する液面位置検出手段84と、各中間タンク内の液体燃料を燃料混合流路に、流出量を調整してそれぞれ移送させる複数の移送手段86と、全ての中間タンク内の液体燃料が燃料混合流路で混合されるように、液面位置検出手段が検出した各中間タンクの液面位置に基づいて各移送手段による液体燃料の流出量を制御する制御部98と、を備える液体燃料混合システム100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料混合システム及び液体燃料合成システム、並びに液体燃料混合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスから液体燃料を合成するための方法の一つとして、天然ガスを改質して一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分とする合成ガスを生成し、この合成ガスを原料ガスとしてフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により液体炭化水素を合成し、更にこの液体炭化水素を水素化および精製することで、ナフサ(粗ガソリン)、灯油、軽油、ワックス等の液体燃料製品を製造するGTL(Gas To Liquids:液体燃料合成)技術が開発されている。
【0003】
従来、このGTL技術を利用して液体燃料を製造する液体燃料合成システムにおける液体燃料混合システムとして、互いに異なる種類の液体燃料が流入されて貯留される複数の中間タンクと、各中間タンクに連通されて、それら中間タンクから流出される液体燃料を集合させて移送する燃料混合流路と、を備える構成が知られている。この液体燃料混合システムの燃料混合流路では各中間タンク内に貯留された液体燃料の全種類が混合される必要がある。
【0004】
ところで一般的に、タンクから液体を移送する方法として、下記特許文献1に示される液体定量供給装置を用いる方法が知られている。この液体定量供給装置は、タンク内に収容された液体の液面高さに連動して上下動可能に設けられた容器と、この容器に設けられ、一端がタンクに収容された液体中に浸漬されると共に、他端が容器内において前記液面高さから所定の高さだけ低い位置に位置付けられる液体取出し管と、容器に連通され、タンクから液体取出し管を介して容器内に導かれた液体を外部に供給するためのホースと、このホースからの液体流出量を変化させるための流量調節手段と、を備える構成となっている。
【特許文献1】特開2002−370799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この液体定量供給装置はタンク内の液体を、流量調節手段により予め調節した定量だけ移送させるものであるため、この液体定量供給装置を前述した液体燃料混合システムの全ての中間タンクに利用して各中間タンクから液体を移送した場合、いずれかの中間タンク内の液体燃料が流出して中間タンクが空になってしまう可能性がある。この結果、空になった中間タンクに貯留されていた液体燃料が燃料混合流路に供給されなくなり、燃料混合経路で各中間タンク内に貯留された液体燃料の全種類が混合されなくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、各中間タンク内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路で混合させることができる液体燃料混合システム及びこの液体燃料混合システムを備える液体燃料合成システム、並びに液体燃料混合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る液体燃料混合システムは、炭化水素原料を複数種類の液体燃料に転換する液体燃料混合システムであって、互いに異なる種類の前記液体燃料がそれぞれ流入されて貯留される複数の中間タンクと、各前記中間タンクに連通されたそれぞれの枝流路が集合した下流側に設けられる燃料混合流路と、各前記中間タンク内の前記液体燃料の液面位置を検出する液面位置検出手段と、各前記中間タンク内の前記液体燃料を前記燃料混合流路に、流出量を調整してそれぞれ移送させる複数の移送手段と、全ての前記中間タンク内の前記液体燃料が前記燃料混合流路で混合されるように、前記液面位置検出手段が検出した各前記中間タンクの液面位置に基づいて各前記移送手段による前記液体燃料の流出量を制御する制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る液体燃料混合方法は、炭化水素原料から転換された複数種類の液体燃料を燃料混合流路に移送する液体燃料混合方法であって、互いに異なる種類の前記液体燃料を複数の中間タンクにそれぞれ流入して貯留する液体燃料流入工程と、各前記中間タンク内の前記液体燃料の液面位置を検出する液面位置検出工程と、各前記中間タンク内の前記液体燃料を前記燃料混合流路に、流出量を調整してそれぞれ移送する移送工程と、を備え、前記移送工程の際、全ての前記中間タンク内の前記液体燃料が前記燃料混合流路で混合されるように、前記液面位置検出工程で検出した各前記中間タンクの液面位置に基づいて前記液体燃料の流出量を制御することを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る液体燃料混合システム及び液体燃料混合方法では、液体燃料流入工程として、互いに異なる種類の液体燃料を複数の中間タンクにそれぞれ流入して貯留する。
また、液体燃料流入工程と同時或いは前後のタイミングで、液面位置検出工程として、各中間タンク内の液体燃料の液面位置を検出する。
そして、移送工程として、各中間タンク内の液体燃料を燃料混合流路に、流出量を調整してそれぞれ移送する。
【0010】
特に、移送工程の際、全ての中間タンク内の液体燃料が燃料混合流路で混合されるように流出量を制御する。この際、液面位置検出工程で検出した各中間タンクの液面位置に基づいて流出量を制御するので、中間タンクが空になってしまうのを防止することが可能となり、各中間タンク内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路で確実に混合させることができる。
【0011】
また、本発明に係る液体燃料混合システムでは、前記制御部は、各前記中間タンクの液面位置が各前記中間タンクで予め設定された前記液面位置の上限位置及び下限位置に達したときに前記流出量を制御することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る液体燃料混合方法では、前記移送工程の際、各前記中間タンクの液面位置が各前記中間タンクで予め設定された前記液面位置の上限位置及び下限位置に達したときに前記流出量を制御することが好ましい。
【0013】
この場合、移送工程の際、各中間タンクの液面位置が各中間タンクで予め設定された液面位置の上限位置及び下限位置に達したときに流出量を変更するので、中間タンク内の液体燃料が空になってしまうことを防止した上で、中間タンク内に液体燃料が過度に流入されてしまうことを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明に係る液体燃料混合システムでは、前記制御部は、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記下限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を停止させると共に、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記上限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を開始させることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る液体燃料混合方法では、前記移送工程の際、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記下限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を停止すると共に、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記上限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を開始することが好ましい。
【0016】
この場合、複数の中間タンクのいずれか一つの液面位置がその中間タンクの下限位置に達したときに全ての中間タンク内の液体燃料の流出を停止させると共に、複数の中間タンクのいずれか一つの液面位置がその中間タンクの上限位置に達したときに全ての中間タンク内の液体燃料の流出を開始させるので、各中間タンク内の液体燃料の流出の開始及び停止を一斉に行うだけの簡素な方法で、各中間タンク内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路で混合させることができる。
【0017】
また、本発明に係る液体燃料混合システムでは、前記燃料混合流路には、該燃料混合流路に混合された各前記液体燃料を攪拌させる燃料攪拌手段が備えられていることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る液体燃料混合方法では、前記燃料混合流路に混合された各前記液体燃料を攪拌する燃料攪拌工程を備えていることが好ましい。
【0019】
この場合、燃料攪拌工程として、燃料混合流路内の各液体燃料を攪拌するので、燃料混合流路内を流通した液体燃料を、その後別途撹拌タンク等を設けて攪拌する必要がなく、攪拌に要する工数を削減することができる。
【0020】
また、本発明に係る液体燃料合成システムは、上記本発明に係る液体燃料混合システムを備え、炭化水素原料を複数種類の液体燃料に転換すると共に、転換した前記複数種類の液体燃料をそれぞれ対応する前記中間タンクに流入させることを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係る液体燃料合成システムは、上記本発明に係る液体燃料混合システムを備えているので、炭化水素原料から転換した液体燃料の全種類を燃料混合流路で混合させることができる。
【0022】
また、本発明に係る液体燃料合成システムでは、フィッシャー・トロプシュ合成反応を利用して前記炭化水素原料を前記複数種類の液体燃料に転換することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る液体燃料混合システム及び液体燃料混合システム、並びに液体燃料混合方法によれば、各中間タンク内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路で混合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態にかかるGTL(Gas To Liquids)プロセスを実行する液体燃料合成システム1の全体構成について説明する。図1は、本実施形態にかかる液体燃料合成システム1の全体構成を示す図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態にかかる液体燃料合成システム1は、天然ガス等の炭化水素原料を液体燃料に転換するGTLプロセスを実行するプラント設備である。この液体燃料合成システム1は、合成ガス生成ユニット3と、FT合成ユニット5と、製品精製ユニット7とから構成される。合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガスを生成する。FT合成ユニット5は、生成された合成ガスからフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により液体炭化水素を生成する。製品精製ユニット7は、FT合成反応により生成された液体炭化水素を水素化・精製して液体燃料製品(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
【0027】
まず、合成ガス生成ユニット3について説明する。合成ガス生成ユニット3は、例えば、脱硫反応器10と、改質器12と、排熱ボイラー14と、気液分離器16および18と、脱炭酸装置20と、水素分離装置26とを主に備える。脱硫反応器10は、水添脱硫装置等で構成されて原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分として含む合成ガスを生成する。排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチームを発生する。気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。脱炭酸装置20は、気液分離器18から供給された合成ガスから吸収液を用いて炭酸ガスを除去する吸収塔22と、当該炭酸ガスを含む吸収液から炭酸ガスを放散させて再生する再生塔24とを有する。水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。ただし、上記脱炭酸装置20は場合によっては設けないこともある。
【0028】
このうち、改質器12は、例えば、下記の化学反応式(1)、(2)で表される水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とを用いて天然ガスを改質して、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスを生成する。なお、この改質器12における改質法は、上記水蒸気・炭酸ガス改質法の例に限定されず、例えば、水蒸気改質法、酸素を用いた部分酸化改質法(POX)、部分酸化改質法と水蒸気改質法の組合せである自己熱改質法(ATR)、炭酸ガス改質法などを利用することもできる。
【0029】
CH+HO→CO+3H ・・・(1)
CH+CO→2CO+2H ・・・(2)
【0030】
また、水素分離装置26は、脱炭酸装置20又は気液分離器18と気泡塔型反応器30とを接続する主配管から分岐した分岐ライン上に設けられる。この水素分離装置26は、例えば、圧力差を利用して水素の吸着と脱着を行う水素PSA(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着)装置などで構成できる。この水素PSA装置は、並列配置された複数の吸着塔(図示せず。)内に吸着剤(ゼオライト系吸着剤、活性炭、アルミナ、シリカゲル等)を有しており、各吸着塔で水素の加圧、吸着、脱着(減圧)、パージの各工程を順番に繰り返すことで、合成ガスから分離した純度の高い水素ガス(例えば99.999%程度)を、連続して供給することができる。
【0031】
なお、水素分離装置26における水素ガス分離方法としては、上記水素PSA装置のような圧力変動吸着法の例に限定されず、例えば、水素吸蔵合金吸着法、膜分離法、或いはこれらの組合せなどであってもよい。
【0032】
水素吸蔵合金法は、例えば、冷却/加熱されることで水素を吸着/放出する性質を有する水素吸蔵合金(TiFe、LaNi、TiFe0.7〜0.9Mn0.3〜0.1、又はTiMn1.5など)を用いて、水素ガスを分離する手法である。水素吸蔵合金が収容された複数の吸着塔を設け、各吸着塔において、水素吸蔵合金の冷却による水素の吸着と、水素吸蔵合金の加熱による水素の放出とを交互に繰り返すことで、合成ガス内の水素ガスを分離・回収することができる。
【0033】
また、膜分離法は、芳香族ポリイミド等の高分子素材の膜を用いて、混合ガス中から膜透過性に優れた水素ガスを分離する手法である。この膜分離法は、相変化を伴わないため、運転に必要なエネルギーが小さくて済み、ランニングコストが安い。また、膜分離装置の構造が単純でコンパクトなため、設備コストが低く設備の所要面積も小さくて済む。さらに、分離膜には駆動装置がなく、安定運転範囲が広いため、保守管理が容易であるという利点がある。
【0034】
次に、FT合成ユニット5について説明する。FT合成ユニット5は、例えば、気泡塔型反応器30と、気液分離器34と、分離器36と、気液分離器38と、第1精留塔40とを主に備える。気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニット3で生成された合成ガス、即ち、一酸化炭素ガスと水素ガスとをFT合成反応させて液体炭化水素を生成する。気液分離器34は、気泡塔型反応器30内に配設された伝熱管32内を流通して加熱された水を、水蒸気(中圧スチーム)と液体とに分離する。分離器36は、気泡塔型反応器30の中央部に接続され、触媒と液体炭化水素生成物を分離処理する。気液分離器38は、気泡塔型反応器30の上部に接続され、未反応合成ガス及び気体炭化水素生成物を冷却処理する。第1精留塔40は、気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素を蒸留し、沸点に応じて各留分に分離・精製する。
【0035】
このうち、気泡塔型反応器30は、合成ガスを液体炭化水素に合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素を合成するFT合成用反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に触媒と媒体油とからなるスラリーが貯留された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素を生成する。詳細には、この気泡塔型反応器30では、原料ガスである合成ガスは、気泡塔型反応器30の底部の分散板から気泡となって供給され、触媒と媒体油からなるスラリー内を通過し、懸濁状態の中で下記化学反応式(3)に示すように水素ガスと一酸化炭素ガスとが合成反応を起こす。
【0036】
2nH+nCO→−(CH−+nHO ・・・(3)
【0037】
このFT合成反応は発熱反応であるため、気泡塔型反応器30は内部に伝熱管32が配設された熱交換器型になっており、冷媒として例えば水(BFW:Boiler Feed Water)を供給し、上記FT合成反応の反応熱を、スラリーと水との熱交換により中圧スチームとして回収できるようになっている。
【0038】
最後に、製品精製ユニット7について説明する。製品精製ユニット7は、例えば、WAX分水素化分解反応器50と、灯油・軽油留分水素化精製反応器52と、ナフサ留分水素化精製反応器54と、気液分離器56,58,60と、第2精留塔70と、ナフサ・スタビライザー72とを備える。WAX分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の下部に接続されている。灯油・軽油留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部に接続されている。ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の上部に接続されている。気液分離器56,58,60は、これら水素化反応器50,52,54のそれぞれに対応して設けられている。第2精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素を沸点に応じて分離・精製する。ナフサ・スタビライザー72は、気液分離器60及び第2精留塔70から供給されたナフサ留分の液体炭化水素を精留して、ブタンより軽い成分はフレアガス側へ排出し、炭素数5以上の成分は製品のナフサとして分離・回収する。
【0039】
次に、以上のような構成の液体燃料合成システム1により、天然ガスから液体燃料を合成する工程(GTLプロセス)について説明する。
【0040】
液体燃料合成システム1には、天然ガス田又は天然ガスプラントなどの外部の天然ガス供給源(図示せず。)から、炭化水素原料としての天然ガス(主成分がCH)が供給される。上記合成ガス生成ユニット3は、この天然ガスを改質して合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガスを主成分とする混合ガス)を製造する。
【0041】
具体的には、まず、上記天然ガスは、水素分離装置26によって分離された水素ガスとともに脱硫反応器10に供給される。脱硫反応器10は、当該水素ガスを用いて天然ガスに含まれる硫黄分を例えばZnO触媒で水添脱硫する。このようにして天然ガスを予め脱硫しておくことにより、改質器12及び気泡塔型反応器30等で用いられる触媒の活性が硫黄により低下することを防止できる。
【0042】
このようにして脱硫された天然ガス(二酸化炭素を含んでもよい。)は、二酸化炭素供給源(図示せず。)から供給される二酸化炭素(CO)ガスと、排熱ボイラー14で発生した水蒸気とが混合された上で、改質器12に供給される。改質器12は、例えば、上述した水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とを用いて天然ガスを改質して、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスを生成する。このとき、改質器12には、例えば、改質器12が備えるバーナー用の燃料ガスと空気とが供給されており、当該バーナーにおける燃料ガスの燃焼熱により、吸熱反応である上記水蒸気・炭酸ガス改質反応に必要な反応熱がまかなわれている。
【0043】
このようにして改質器12で生成された高温の合成ガス(例えば、900℃、2.0MPaG)は、排熱ボイラー14に供給され、排熱ボイラー14内を流通する水との熱交換により冷却(例えば400℃)されて、排熱回収される。このとき、排熱ボイラー14において合成ガスにより加熱された水は気液分離器16に供給され、この気液分離器16から気体分が高圧スチーム(例えば3.4〜10.0MPaG)として改質器12または他の外部装置に供給され、液体分の水が排熱ボイラー14に戻される。
【0044】
一方、排熱ボイラー14において冷却された合成ガスは、凝縮液分が気液分離器18において分離・除去された後、脱炭酸装置20の吸収塔22、又は気泡塔型反応器30に供給される。吸収塔22は、貯留している吸収液内に、合成ガスに含まれる炭酸ガスを吸収することで、当該合成ガスから炭酸ガスを除去する。この吸収塔22内の炭酸ガスを含む吸収液は、再生塔24に送出され、当該炭酸ガスを含む吸収液は例えばスチームで加熱されてストリッピング処理され、放散された炭酸ガスは、再生塔24から改質器12に送られて、上記改質反応に再利用される。
【0045】
このようにして、合成ガス生成ユニット3で生成された合成ガスは、上記FT合成ユニット5の気泡塔型反応器30に供給される。このとき、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスの組成比は、FT合成反応に適した組成比(例えば、H:CO=2:1(モル比))に調整されている。なお、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスは、脱炭酸装置20と気泡塔型反応器30とを接続する配管に設けられた圧縮器(図示せず。)により、FT合成反応に適切な圧力(例えば3.6MPaG程度)まで昇圧される。
【0046】
また、上記脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスの一部は、水素分離装置26にも供給される。水素分離装置26は、上記のように圧力差を利用した吸着、脱着(水素PSA)により、合成ガスに含まれる水素ガスを分離する。当該分離された水素は、ガスホルダー(図示せず。)等から圧縮機(図示せず。)を介して、液体燃料合成システム1内において水素を利用して所定反応を行う各種の水素利用反応装置(例えば、脱硫反応器10、WAX分水素化分解反応器50、灯油・軽油留分水素化精製反応器52、ナフサ留分水素化精製反応器54など)に連続して供給する。
【0047】
次いで、上記FT合成ユニット5は、上記合成ガス生成ユニット3によって生成された合成ガスから、FT合成反応により、液体炭化水素を合成する。
【0048】
具体的には、上記脱炭酸装置20において炭酸ガスを分離された合成ガスは、気泡塔型反応器30の底部から流入されて、気泡塔型反応器30内に貯留された触媒スラリー内を上昇する。この際、気泡塔型反応器30内では、上述したFT合成反応により、当該合成ガスに含まれる一酸化炭素と水素ガスとが反応して、炭化水素が生成される。さらに、この合成反応時には、気泡塔型反応器30の伝熱管32内に水を流通させることで、FT合成反応の反応熱を除去し、この熱交換により加熱された水が気化して水蒸気となる。この水蒸気は、気液分離器34で液化した水が伝熱管32に戻されて、気体分が中圧スチーム(例えば1.0〜2.5MPaG)として外部装置に供給される。
【0049】
このようにして、気泡塔型反応器30で合成された液体炭化水素は、気泡塔型反応器30の中央部から取り出されて、分離器36に送出される。分離器36は、取り出されたスラリー中の触媒(固形分)と、液体炭化水素生成物を含んだ液体分とに分離する。分離された触媒は、その一部を気泡塔型反応器30に戻され、液体分は第1精留塔40に供給される。また、気泡塔型反応器30の塔頂からは、未反応の合成ガスと、合成された炭化水素のガス分とが気液分離器38に導入される。気液分離器38は、これらのガスを冷却して、一部の凝縮分の液体炭化水素を分離して第1精留塔40に導入する。一方、気液分離器38で分離されたガス分については、未反応の合成ガス(COとH)は、気泡塔型反応器30の底部に再投入されてFT合成反応に再利用される。また、製品対象外である炭素数が少ない(C以下)炭化水素ガスを主成分とする排ガス(フレアガス)は、外部の燃焼設備(図示せず。)に導入されて、燃焼された後に大気放出される。
【0050】
次いで、第1精留塔40は、上記のようにして気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素(炭素数は多様)を加熱して、沸点の違いを利用して分留し、ナフサ留分(沸点が約150℃未満)と、灯油・軽油留分(沸点が約150〜350℃)と、WAX分(沸点が約350℃より大)とに分離・精製する。この第1精留塔40の底部から取り出されるWAX分の液体炭化水素(主としてC21以上)は、WAX分水素化分解反応器50に移送され、第1精留塔40の中央部から取り出される灯油・軽油留分の液体炭化水素(主としてC11〜C20)は、灯油・軽油留分水素化精製反応器52に移送され、第1精留塔40の上部から取り出されるナフサ留分の液体炭化水素(主としてC〜C10)は、ナフサ留分水素化精製反応器54に移送される。
【0051】
WAX分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の下部から供給された炭素数の多いWAX分の液体炭化水素(概ねC21以上)を、上記水素分離装置26から供給された水素ガスを利用して水素化分解して、炭素数をC20以下に低減する。この水素化分解反応では、触媒と熱を利用して、炭素数の多い炭化水素のC−C結合を切断して、炭素数の少ない低分子量の炭化水素を生成する。このWAX分水素化分解反応器50により、水素化分解された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器56で気体と液体とに分離され、そのうち液体炭化水素は、第2精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、灯油・軽油留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54に移送される。
【0052】
灯油・軽油留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部から供給された炭素数が中程度である灯油・軽油留分の液体炭化水素(概ねC11〜C20)を、水素分離装置26からWAX分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスを用いて、水素化精製する。この水素化精製反応は、上記液体炭化水素の不飽和結合に水素を付加して飽和させ、直鎖状飽和炭化水素を生成する反応である。この結果、水素化精製された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器58で気体と液体に分離され、そのうち液体炭化水素は、第2精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0053】
ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の上部から供給された炭素数が少ないナフサ留分の液体炭化水素(概ねC10以下)を、水素分離装置26からWAX分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスを用いて、水素化精製する。この結果、水素化精製された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器60で気体と液体に分離され、そのうち液体炭化水素は、ナフサ・スタビライザー72に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0054】
次いで、第2精留塔70は、上記のようにしてWAX分水素化分解反応器50及び灯油・軽油留分水素化精製反応器52から供給された液体炭化水素を蒸留して、炭素数がC10以下の炭化水素(沸点が約150℃未満)と、灯油(沸点が約150〜250℃)と、軽油(沸点が約250〜350℃)と、WAX分水素化分解反応器50からの未分解WAX分(沸点約350℃より大)とに分離・精製する。第2精留塔70の下部からは軽油が取り出され、中央部からは灯油が取り出される。一方、第2精留塔70の塔頂からは、炭素数がC10以下の炭化水素ガスが取り出されて、ナフサ・スタビライザー72に供給される。
【0055】
さらに、ナフサ・スタビライザー72では、上記ナフサ留分水素化精製反応器54及び第2精留塔70から供給された炭素数がC10以下の炭化水素を蒸留して、製品としてのナフサ(C〜C10)を分離・精製する。これにより、ナフサ・スタビライザー72の下部からは、高純度のナフサが取り出される。一方、ナフサ・スタビライザー72の塔頂からは、製品対象外である炭素数が所定数以下(C以下)の炭化水素を主成分とする排ガス(フレアガス)が排出される。
【0056】
以上、液体燃料合成システム1の工程(GTLプロセス)について説明した。かかるGTLプロセスにより、天然ガスを、高純度のナフサ(C〜C10:粗ガソリン)、灯油(C11〜C15:ケロシン)及び軽油(C16〜C20:ガスオイル)等のクリーンな液体燃料に、容易且つ経済的に転換することができる。さらに、本実施形態では、改質器12において上記水蒸気・炭酸ガス改質法を採用しているので、原料となる天然ガスに含有されている二酸化炭素を有効に利用し、かつ、上記FT合成反応に適した合成ガスの組成比(例えば、H:CO=2:1(モル比))を改質器12の1回の反応で効率的に生成することができ、水素濃度調整装置などが不要であるという利点がある。
【0057】
次に、図2を用いて、炭化水素燃料を複数種類の液体燃料に転換した後、これら液体燃料を混合させるためにこの液体燃料合成システム1が備える液体燃料混合システム100について説明する。
液体燃料混合システム100は、前述した構成要素に加えて、互いに異なる種類の液体燃料がそれぞれ流入されて貯留される複数の中間タンク80と、各中間タンク80に連通された燃料混合流路82と、各中間タンク80内の液体燃料の液面位置を検出する液面位置検出手段84と、各中間タンク80内の液体燃料を燃料混合流路82に、流出量を調整してそれぞれ移送させる複数の移送手段86と、を備えている。なお以下では、中間タンク80内の液体燃料の液面位置を、単に中間タンク80の液面位置と称する。
【0058】
本実施形態では、中間タンク80は3つ備えられており、これら3つの中間タンク80の満量はいずれも等しくなっている。これら3つの中間タンク80は、第2精留塔70で取り出された軽油が流入される軽油タンクと、第2精留塔70で取り出された灯油が流入される灯油タンクと、及びナフサ・スタビライザー72で取り出されたナフサが流入されるナフサタンク、である。
燃料混合流路82は、内部を液体燃料が流通する配管であり、その一端は、各中間タンク80に対応して設けられた複数の分岐配管(枝流路)88により中間タンク80それぞれと連通されている。つまり、燃料混合流路82は、各中間タンク80に連通されたそれぞれの分岐配管88が集合した下流側に設けられている。また、燃料混合流路82の他端は、混合された液体燃料を貯留する調合タンク92に連通されている。また、燃料混合流路82には、燃料混合流路82に混合された各液体燃料を攪拌させるインラインミキサー(燃料攪拌手段)90が備えられている。なお、前述した下流側とは、液体燃料混合システム100内で液体燃料が流通する方向のうち、中間タンク80から調合タンク92に向く方向を意味する
【0059】
液面位置検出手段84は、各中間タンク80にそれぞれ設けられ、その中間タンク80の液面位置を検出する。また、液面位置検出手段84は、検出した液面位置に関する液面位置データを、後述する制御部98に送出する。
移送手段86は、各中間タンク80に対応して3つ設けられている。図示の例では、各移送手段86は、各中間タンク80に対応した分岐配管88に設けられている。また、各移送手段86は、中間タンク80内の液体燃料を燃料混合流路82に移送させるポンプ94と、このポンプ94により移送される液体燃料の流出量を調整する流量調整弁96と、を備えている。ポンプ94は、ON-OFF制御により液体燃料の定量移送が可能なものである。この移送手段86によれば、ポンプ94のON-OFF制御及び流量調整弁96の流出量調整により、対応する中間タンク80内の液体燃料を、流出量を調整して燃料混合流路82に移送することができる。
【0060】
そして、本実施形態では、この液体燃料混合システム100は、全ての中間タンク80内の液体燃料が燃料混合流路82で混合されるように、液面位置検出手段84が検出した各中間タンク80の液面位置に基づいて各移送手段86による液体燃料の流出量を制御する制御部98を備えている。この制御部98は、各中間タンク80の液面位置が各中間タンク80で予め設定された液面位置の上限位置及び下限位置に達したときに液体燃料の流出量を制御する。
本実施形態では、制御部98は、各液面位置検出手段84、各移送手段86に電気的に接続されており、液面位置検出手段84から送出された液面位置データに基づいて各移送手段86の流出量を後述する方法で算出すると共に、各移送手段86を制御するための制御信号を生成して送出する。また、制御部98は、液面位置データに基づいて各中間タンク80内に貯留されている液体燃料の貯留量を算出可能である。また、制御部98には、中間タンク80ごとの液面位置の上限位置及び下限位置、及び各移送手段86の能力上限が予め記憶されている。なお、制御部98の装置構成は、例えばCPU、RAM及び外部記憶装置を有するコンピュータ等のハードウェアとなっている。
【0061】
ここで、各中間タンク80の液面位置の上限位置及び下限位置は、例えば上限位置がその中間タンク80の満量に対して約80%、下限位置がその中間タンク80の満量に対して約20%が好ましい。また、下限位置は、各中間タンク80に設けられている移送機能のポンプ94が空回りしてしまう位置よりは高い位置が好ましい。以下では、中間タンク80内の液体燃料の上限位置及び下限位置を、単に中間タンク80の上限位置及び下限位置とそれぞれ称する。
【0062】
次に、以上のように構成された液体燃料混合システム100において、その燃料混合流路82で、各中間タンク80内に貯留された液体燃料の全種類を混合させる方法について説明する。以下の説明では、初期段階として各中間タンク80内には、各中間タンク80の液面位置がその中間タンク80の下限位置より高い位置で且つ上限位置より低い位置であるように液体燃料が予め貯留されていると共に、各移送手段86は中間タンク80内の液体燃料の流出を停止しているものとする。
【0063】
まず、液体燃料流入工程として、軽油、灯油及びナフサを各中間タンク80にそれぞれ流入して貯留する。この際、初期段階では各移送手段86は液体燃料の流出を停止しているので、各中間タンク80の液面位置は上昇する。
液体燃料流入工程と並行して、液面位置検出工程として、液面位置検出手段84によって各中間タンク80内の液体燃料の液面位置を検出する。この際、制御部98は、液面位置検出手段84から送出された液面位置データから各中間タンク80の液面位置を取得する。
これら液体燃料流入工程及び液面位置検出工程は、液体燃料合成システム1の上流側でトラブル等が発生しない限り継続的に行われる。
【0064】
そして、液面位置検出工程と並行して、移送工程として、各中間タンク80内の液体燃料を燃料混合流路82に、流出量を調整してそれぞれ移送する。この際、全ての中間タンク80内の液体燃料が燃料混合流路82で混合されるように、液面位置検出工程で検出した各中間タンク80の液面位置に基づいて液体燃料の流出量を制御する。
【0065】
ここで、移送工程における液体燃料の流出量の制御について詳しく説明する。
まず、液体燃料流入工程を経ることにより各中間タンク80の液面位置が上昇するので、所定時間が経過すると3つの中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の上限位置に達する。このとき、制御部98は、全ての移送手段86によってそれぞれが対応する中間タンク80内の液体燃料の流出を開始させる。この際、各中間タンク80の流出量を、仮に流出を開始する時点で全ての中間タンク80に対する液体燃料の流入が停止された場合に、全ての中間タンク80内の液体燃料を一定時間で流出し終えるように設定する。
以下では、この流出量の算出方法について詳しく説明する。
【0066】
まず、第1ステップとして、制御部98は、各中間タンク80の液面位置より、各中間タンク80内に貯留されている液体燃料の貯留量を算出する。
次に、第2ステップとして、制御部98は、液面位置が上限位置に達した中間タンク80を、各中間タンク80の流出量を決めるための基準となる基準タンクとして設定する。以下では、この基準タンク内の液体燃料の貯留量を貯留量Vとする。
次に、第3ステップとして、制御部98は、前のステップで設定された基準タンクについて、そのタンクに対応して設けられている移送手段86の能力上限を、そのタンクの流出量として設定する。以下では、この流出量を流出量Fとする。
【0067】
次に、第4ステップとして、制御部98は、基準タンクについて、仮に流出を開始する時点で液体燃料の流入が停止された場合に、そのタンク内の貯留量Vを流出量Fで流出し終えるために要する時間Tを算出する。なお、(時間T)=(貯留量V)/(流出量F)で求めることができる。
次に、第5ステップとして、制御部98は、基準タンク以外の中間タンク80について、各中間タンク80内の貯留量を時間Tで流出し終えるために要する流出量を算出する。なお、基準タンクと異なる一つの中間タンク80の貯留量を貯留量v、その中間タンク80において求める流出量を流出量fとすると、(流出量f)=(貯留量v)/(時間T)で求めることができる。
【0068】
次に、第6ステップとして、制御部98は、第5ステップで算出した基準タンク以外の中間タンク80における流出量が、各中間タンク80に対応して設けられた移送手段86の能力上限を超えていないか判定する。超えている場合は、その流出量が算出された中間タンク80を前記基準タンクに設定して第3ステップに戻り、第3ステップから第6ステップを繰り返す。超えていない場合は、各中間タンク80について算出した流出量を、各中間タンク80の流出量として設定する。
【0069】
以上のステップを経ることで、3つの中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の上限位置に達したときに設定する各中間タンク80の流出量を算出する。その後、制御部98は、制御信号を生成して各移送手段86に送出する。これにより、各移送手段86は、制御部98が算出した流出量で各中間タンク80内の液体燃料を流出させることができる。
【0070】
移送手段86によって各中間タンク80内の液体燃料が流出されると各中間タンク80内の液面位置が下降するので、時間が経過すると3つの中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の下限位置に達する。このとき、制御部98は、制御信号を生成し、移送手段86によって全ての中間タンク80内の液体燃料の流出を停止させる。そして、移送工程と並行して液体燃料流入工程が実施されているので、液体燃料の流出が停止された後、中間タンク80内には液体燃料が流入して貯留され、液面位置が再度上昇する。
移送工程では、以上に示したように各中間タンク80内の液体燃料の流出量を制御する。この制御により、全ての中間タンク80には液体燃料が、その液面位置が少なくとも各中間タンク80の下限位置に達する量を貯留することができる。
【0071】
移送工程を経て燃料混合流路82内に流入された各液体燃料は、燃料攪拌工程として、インラインミキサー90によって攪拌される。そして、攪拌された液体燃料は、調合タンク92に導入される。なお、調合タンク92に導入された液体燃料は、燃料攪拌工程を経ているのでその後攪拌される必要がなく、攪拌に要する工数を削減することができる。
【0072】
以上に示した液体燃料混合システム100によれば、移送工程において、全ての中間タンク80内の液体燃料が燃料混合流路82で混合されるように流出量を制御する際、液面位置検出工程で検出した各中間タンク80の液面位置に基づいて流出量を制御するので、中間タンク80が空になってしまうのを防止することが可能となり、各中間タンク80内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路82で確実に混合させることができる。
また、仮に液体燃料流入工程において各中間タンク80に流入される液体燃料の流入量が時間によって変化して、各中間タンク80の液体燃料の貯留量が変化する場合であっても、中間タンク80が空になることを防止できる。
【0073】
また、移送工程の際、各中間タンク80の液面位置が各中間タンク80で予め設定された液面位置の上限位置及び下限位置に達したときに流出量を変更するので、中間タンク80内の液体燃料が空になってしまうことを防止した上で、中間タンク80内に液体燃料が過度に流入されてしまうことを防ぐことができる。なお、中間タンク80内に液体燃料が過度に流入された場合には、中間タンク80内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路82で混合させる以前に、液体燃料合成システム1全体を停止せざるを得なくなる恐れがある。しかしながら、本実施形態の液体燃料混合システム100では、中間タンク80内に液体燃料が過度に流入することがないので、このことを要因として液体燃料合成システム1を停止させる恐れがなく、このシステム1を安定して稼動させることが可能となる。その結果、各中間タンク80内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路82で混合させ続けることができる。
【0074】
また、複数の中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の下限位置に達したときに全ての中間タンク80内の液体燃料の流出を停止させると共に、複数の中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の上限位置に達したときに全ての中間タンク80内の液体燃料の流出を開始させるので、各中間タンク80内の液体燃料の流出の開始及び停止を一斉に行うだけの簡素な方法で各中間タンク80内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路82で混合させることができる。
【0075】
また、移送工程において、中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の上限位置に達した際、各中間タンク80の流出量を、仮に流出を開始する時点で全ての中間タンク80に対する液体燃料の流入が停止された場合に、全ての中間タンク80内の液体燃料を一定時間で同時に流出し終えるように設定する。従って、仮に液体燃料合成システム1の上流側でトラブル等が発生して、液体燃料の流入が停止してしまったとしても、各中間タンク80においてその時点で設定されている流出量を維持しながら各中間タンク80内に貯留された液体燃料の全種類を燃料混合流路82で長期間混合させ続けることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る液体燃料合成システム1は、上記液体燃料混合システム100を備えているので、炭化水素原料から転換した液体燃料の全種類を燃料混合流路82で混合させることができる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
例えば、上記実施形態では、液体燃料合成システム1に供給される炭化水素原料として、天然ガスを用いたが、かかる例に限定されず、例えば、アスファルト、残油など、その他の炭化水素原料を用いてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、気泡塔型反応器30における合成反応として、FT合成反応により液体炭化水素を合成したが、本発明はかかる例に限定されない。気泡塔型反応器における合成反応としては、例えば、オキソ合成(ヒドロホルミル化反応)「R−CH=CH+CO+H→R−CHCHCHO」、メタノール合成「CO+2H→CHOH」、ジメチルエーテル(DME)合成「3CO+3H→CHOCH+CO」などにも適用することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、制御部98は、各中間タンク80の液面位置が各中間タンク80の上限位置及び下限位置に達したときに液体燃料の流出量を制御したが、これに代えて、例えば上限位置及び下限位置を設定せずに、中間タンク80の液面位置に基づいて常時流出量を制御しても良い。また、上限位置及び下限位置を設定する場合であっても、両位置の間に1つ或いは複数の中間位置を設定して、上限位置及び下限位置に加えてその中間位置において流出量を制御してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、制御部98は、中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の下限位置或いは上限位置に達したときに、全ての中間タンク80内の液体燃料の流出を制御したが、これに代えて、各中間タンク80の液面位置が下限位置或いは上限位置に達したときにその中間タンク80のみ流出量を制御するように、中間タンク80ごとに独立して流出量を制御してもよい。
また、中間タンク80のいずれか一つの液面位置がその中間タンク80の上限位置に達したときの流出量の算出方法は、上記実施形態に示したものに限られない。例えば、上限位置に達したときに、予め設定した流出量だけ流出するように制御しても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、インラインミキサー90を設けたが無くても構わない。
また、上記実施形態では、中間タンク80を3つとしたが、中間タンク80は複数あれば3つに限られるものではない。更にまた、各中間タンク80の満量を等しいものとしたが、各中間タンク80の容量は互いに異ならせても良い。
また、上記実施形態では、移送手段86をポンプ94と流量調整弁96とを備えるものとしたが、例えば流量調整可能なポンプのみからなる構成としても良い。
【0083】
また、上記実施形態では、各中間タンク80には、初期段階で各中間タンク80の下限位置より高い位置に液面位置があるように液体燃料が貯留されていたが、これに限られない。この場合、例えば液面位置検出手段84に液面位置の推移の方向(上昇或いは下降)を検出させておき、液面位置が中間タンク80の下限位置となったときに、液面位置の推移の方向に基づいて流出量を制御しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る一実施形態の液体燃料合成システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す液体燃料合成システムが備える液体燃料混合システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0085】
1 液体燃料合成システム
80 中間タンク
82 燃料混合流路
84 液面位置検出手段
86 移送手段
88 分岐配管(枝流路)
90 インラインミキサー(燃料攪拌手段)
98 制御部
100 液体燃料混合システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料から転換された複数種類の液体燃料を混合する液体燃料混合システムであって、
互いに異なる種類の前記液体燃料がそれぞれ流入されて貯留される複数の中間タンクと、
各前記中間タンクに連通されたそれぞれの枝流路が集合した下流側に設けられる燃料混合流路と、
各前記中間タンク内の前記液体燃料の液面位置を検出する液面位置検出手段と、
各前記中間タンク内の前記液体燃料を前記燃料混合流路に、流出量を調整してそれぞれ移送させる複数の移送手段と、
全ての前記中間タンク内の前記液体燃料が前記燃料混合流路で混合されるように、前記液面位置検出手段が検出した各前記中間タンクの液面位置に基づいて各前記移送手段による前記液体燃料の流出量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする液体燃料混合システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液体燃料混合システムにおいて、
前記制御部は、各前記中間タンクの液面位置が各前記中間タンクで予め設定された前記液面位置の上限位置及び下限位置に達したときに前記流出量を制御することを特徴とする液体燃料混合システム。
【請求項3】
請求項2に記載の液体燃料混合システムにおいて、
前記制御部は、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記下限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を停止させると共に、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記上限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を開始させることを特徴とする液体燃料混合システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体燃料混合システムにおいて、
前記燃料混合流路には、該燃料混合流路に混合された各前記液体燃料を攪拌させる燃料攪拌手段が備えられていることを特徴とする液体燃料混合システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の液体燃料混合システムを備え、
炭化水素原料を複数種類の液体燃料に転換すると共に、転換した前記複数種類の液体燃料をそれぞれ対応する前記中間タンクに流入させることを特徴とする液体燃料合成システム。
【請求項6】
請求項5に記載の液体燃料合成システムにおいて、
フィッシャー・トロプシュ合成反応を利用して前記炭化水素原料を前記複数種類の液体燃料に転換することを特徴とする液体燃料合成システム。
【請求項7】
炭化水素原料から転換された複数種類の液体燃料を燃料混合流路に移送して混合する液体燃料混合方法であって、
互いに異なる種類の前記液体燃料を複数の中間タンクにそれぞれ流入して貯留する液体燃料流入工程と、
各前記中間タンク内の前記液体燃料の液面位置を検出する液面位置検出工程と、
各前記中間タンク内の前記液体燃料を前記燃料混合流路に、流出量を調整してそれぞれ移送する移送工程と、を備え、
前記移送工程の際、全ての前記中間タンク内の前記液体燃料が前記燃料混合流路で混合されるように、前記液面位置検出工程で検出した各前記中間タンクの液面位置に基づいて前記液体燃料の流出量を制御することを特徴とする液体燃料混合方法。
【請求項8】
請求項7に記載の液体燃料混合方法において、
前記移送工程の際、各前記中間タンクの液面位置が各前記中間タンクで予め設定された前記液面位置の上限位置及び下限位置に達したときに前記流出量を制御することを特徴とする液体燃料混合方法。
【請求項9】
請求項8に記載の液体燃料混合方法において、
前記移送工程の際、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記下限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を停止すると共に、前記複数の中間タンクのいずれか一つの前記液面位置がその中間タンクの前記上限位置に達したときに全ての前記中間タンク内の前記液体燃料の流出を開始することを特徴とする液体燃料混合方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の液体燃料混合方法において、
前記燃料混合流路に混合された各前記液体燃料を攪拌する燃料攪拌工程を備えていることを特徴とする液体燃料混合方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−84984(P2010−84984A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253212(P2008−253212)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】