説明

液体用熱交換器

【課題】 洗浄及びメンテナンスの容易化を図り、常に良好な衛生状態を維持するとともに、部品コスト及び製造コストの双方の低減を図る。
【解決手段】 外周面2poと内周面2piを有する熱交換筒部2pを少なくとも一部に有する筒状体部2と、一次側供給部3sから供給された一次側流体Wfが熱交換筒部2pにおける外周面2poの全面に対して接触可能な流体収容室Swを有し、かつ熱交換された一次側流体Wfが一次側排出部3eから排出される一次側流体処理部3と、二次側供給部4sから供給された二次側液体Lsが熱交換筒部2pにおける内周面2piの表面を上から流れ落ちることにより当該熱交換筒部2pにおける内周面2piの全面に対して接触可能にし、かつ熱交換された二次側液体Lsが二次側排出部4eから排出される二次側液体処理部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次側流体と二次側液体の熱交換を行う乳処理システムにおける生乳の予備冷却等に用いて好適な液体用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、搾乳機により搾乳された生乳は、集乳が行われるまで冷却装置が付設された貯乳タンクに一時的に貯留される。この貯乳タンクは、バルククーラと呼ばれ、搾乳後の生乳は、送乳配管を経由して、このバルククーラに収容される。しかし、この場合、温かい生乳をそのままバルククーラに供給しても冷却されるまでに時間がかかるため、バルククーラに収容される直前に、移送させる生乳を熱交換器で予備冷却することにより、バルククーラの稼働時間を節約し、省エネルギ性及びランニングコストの低減を図るとともに、生乳の品質劣下が生じないように考慮している。
【0003】
従来、このような予備冷却に用いる熱交換器としては、特許文献1に開示される熱交換器が知られており、同文献1には、冷却水を作るアイスビルダーから冷却水をその外周の冷却ジャケットに循環させ、内部に貯えた牛乳を冷却保冷する貯乳タンクを備えるバルククーラにおいて、搾乳室からの送乳を受けるバランスタンクと、アイスビルダーから冷却水を循環させるプレートクーラ(熱交換器)と、バランスタンクから順次にプレートクーラ及び流量調整バルブを介在させ、貯乳タンクに延設する牛乳搬送手段とを備えたバルククーラにおける冷却保冷システムが開示されている。プレートクーラは、通常、順序よく並べたステンレス素材等により形成した複数のプレートをフレームにより挟むとともに、各プレートを互い違いに組合わせて流体経路を形成し、この経路をシーリング部材により仕切って構成したものであり、一方の経路に生乳を流し、かつ他方の経路に冷却水を流せば、プレートを介して熱交換が行われ、生乳は数℃程度まで冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−215718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した予備冷却に用いる従来の熱交換器(プレートクーラ)は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、この種の熱交換器は、搾乳後の生乳を予備冷却する目的で使用するため、冷却能力の確保が重要であることは勿論のこと、良好な衛生状態を常に維持することも重要な課題となるが、従来のプレートクーラは、その構造上、狭い隙間の流路が組合わさるため、汚れが付着しやすく、かつ蓄積しやすいとともに、洗浄やメンテナンスが容易でない。しかも、内部の汚れ状態を容易に確認できないなど、良好な衛生状態を確保し、かつ維持する観点からは必ずしも望ましいものではない。
【0007】
第二に、構造が複雑化し部品点数が多くなることによるコストアップ、更には製造工数の増大によるコストアップを招き、製品価格の上昇が避けられない。しかも、狭い流路を流す必要があることから、生乳を通過させる際の流量抵抗が大きくなる。結局、流量抵抗を考慮した大型の送乳ポンプが必要となるなど、省エネルギ性の観点及びランニングコストの観点からも更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した液体用熱交換器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、一次側流体Wfと二次側液体Lsの熱交換を行う液体用熱交換器1を構成するに際して、外周面2poと内周面2piを有する熱交換筒部2pを少なくとも一部に有する筒状体部2と、一次側供給部3sから供給された一次側流体Wfが熱交換筒部2pにおける外周面2po(又は内周面2pi)の全面に対して接触可能な流体収容室Swを有し、かつ熱交換された一次側流体Wfが一次側排出部3eから排出される一次側流体処理部3と、二次側供給部4sから供給された二次側液体Lsが熱交換筒部2pにおける内周面2pi(又は外周面2po)の表面を上から流れ落ちることにより当該熱交換筒部2pにおける内周面2pi(又は外周面2po)の全面に対して接触可能にし、かつ熱交換された二次側液体Lsが二次側排出部4eから排出される二次側液体処理部4とを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、一次側流体Wfには、少なくとも、水,溶液,蒸気又は空気の一つを含ませることができるとともに、二次側液体Lsには、搾乳された生乳を適用することができる。一方、筒状体部2における熱交換筒部2pは、円柱形状Fs又は円錐形状Fcに形成することができる。また、筒状体部2は、一体に構成してもよいし、或いは軸方向Daに分割した複数の分割筒体部2a,2b,2cの組合わせにより構成してもよい。さらに、二次側液体処理部4の二次側供給部4sは、二次側液体Lsを、熱交換筒部2pの内周面2pi(又は外周面2po)に対して鉛直方向Dvに供給可能に構成してもよいし、或いは螺旋方向Dsに供給可能に構成してもよい。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係る液体用熱交換器1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 二次側液体処理部4により、二次側供給部4sから供給された二次側液体Lsが、熱交換筒部2pの内周面2pi(又は外周面2po)の表面を上から流れ落ちることにより当該熱交換筒部2pにおける内周面2pi(又は外周面2po)の全面に対して接触可能にしたため、熱交換機能を有する熱交換筒部2pは、極めて単純な形状(経路)により形成することができ、洗浄及びメンテナンスを容易に行うことができる。しかも、二次側液体Lsは、内周面2pi(又は外周面2po)の表面を上から流し落ちるため、汚れが付着しにくく、かつ蓄積しにくいとともに、筒状体部2を少なくとも一部を透明素材により形成すれば、内部の汚れ状態等を容易に確認できるなど、常に良好な衛生状態を維持可能となる。
【0013】
(2) 液体用熱交換器1における全体構造の単純化に伴って部品点数を飛躍的に削減できる。したがって、部品コストの低減、更には製造工数の低減によるコストダウンを図れるなど、製品の低廉化を図れる。しかも、狭い流路を流す必要がないため、二次側液体Lsを通過させる際の流量抵抗をほとんど無視することができ、流量抵抗を考慮した大型の送液ポンプが不要になるなど、省エネルギ性の観点及びランニングコストの観点からも有利になる。加えて、二次側液体Lsの流量が変動しても影響が少なく、二次側液体Lsを安定に冷却することができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、一次側流体Wfには、少なくとも、水,溶液,蒸気又は空気の一つを含ませることができるため、熱交換筒部2pの単純形状ゆえに各種媒体の利用が可能になる。したがって、一次側流体Wfを選定する観点からの設計自由度及び汎用性を高めることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、二次側液体(Ls)に、搾乳された生乳Lsを適用すれば、特に、流動抵抗が大きくなりやすい生乳Lsを予備冷却する際に用いて最適となるとともに、副次的な効果として、送乳配管や送乳ポンプ等を通過して発生した泡を取除く効果も期待できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、筒状体部2における熱交換筒部2pは、円柱形状Fs又は円錐形状Fcに形成できるため、熱交換筒部2pの形状を選定すれば、二次側液体Lsの冷却に熱交換筒部2pの内周面2piを用いるか又は外周面2poを用いるかの選定をはじめ、筒状体部2を各種形態により実施できるなど、多様性及び多機能性の向上に寄与できるとともに、全体のサイズ変更も比較的容易に実現できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、筒状体部2を、軸方向Daに分割した複数の分割筒体部2a,2b,2cの組合わせにより構成すれば、筒状体部2に対する組立及び分解を容易に行うことができるため、更なる洗浄性及びメンテナンス性の向上に寄与できる。
【0018】
(7) 好適な態様により、二次側液体処理部4の二次側供給部4sは、二次側液体Lsを、熱交換筒部2pの内周面2pi(又は外周面2po)に対して鉛直方向Dvに供給可能に構成してもよいし、或いは螺旋方向Dsに供給可能に構成してもよいため、二次側液体Lsの供給方向の選定により、熱交換性能等も含め、設計自由度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適実施形態に係る液体用熱交換器の断面正面図、
【図2】同液体用熱交換器の断面平面図、
【図3】同液体用熱交換器の作用説明図、
【図4】同液体用熱交換器を備える乳処理システムの概要図、
【図5】本発明の変更実施形態に係る液体用熱交換器の外観正面図、
【図6】本発明の他の変更実施形態に係る液体用熱交換器の外観正面図、
【図7】本発明の他の変更実施形態に係る液体用熱交換器の断面正面図、
【図8】本発明の他の変更実施形態に係る液体用熱交換器の一部断面正面図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る液体用熱交換器1の理解を容易にするため、液体用熱交換器1を使用する乳処理システム50の概要について、図4を参照して説明する。
【0022】
乳処理システム50は、処理室80の内部に設けられ、不図示の搾乳機により搾乳された生乳Lsは受乳配管51を介して処理室80に導入される。処理室80には受乳装置52が設置され、受乳配管51により供給された生乳Lsは、一旦、受乳装置52に貯留される。受乳装置52が満杯になれば、送乳ポンプ53が作動し、生乳Lsは、送乳配管54(54a,54b)を通して処理室80に設置されたバルククーラ55に供給されるという基本的な構成を備えている。
【0023】
本実施形態に係る液体用熱交換器1は、送乳配管54の中途、即ち、上流側配管54aと下流側配管54b間に接続して使用する。これにより、温かい生乳Lsは、液体用熱交換器1により数℃程度まで予備冷却され、この後、バルククーラ55に供給される。即ち、温かい生乳Lsをそのままバルククーラ55に供給しても冷却されるまでに時間がかかるため、バルククーラ55に収容される直前に、移送させる生乳Lsを、本実施形態に係る液体用熱交換器1で予備冷却することにより、バルククーラ55の稼働時間を節約し、省エネルギ性及びランニングコストの低減を図るとともに、生乳Lsの品質劣下が生じないようにする。
【0024】
この場合、液体用熱交換器1は、基本構造として、一次側流体処理部3と二次側液体処理部4を備えるため、一次側流体処理部3の一次側供給部3sは、給水管62を介して外部の冷却水供給源61の給水口に接続するとともに、一次側流体処理部3の一次側排出部3eは、排水管63を介して冷却水供給源61の戻り口に接続する。これにより、冷却水(一次側流体)Wfが一次側流体処理部3に対して循環供給される一次側熱交換系が構成される。また、二次側液体処理部4の二次側供給部4sは、前述した上流側配管54aを介して送乳ポンプ53の吐出口に接続するとともに、二次側液体処理部4の二次側排出部4eは、下流側配管54bを介してバルククーラ55の給入口に接続する。これにより、送乳ポンプ53により送り出された乳(二次側液体)Lsが二次側液体処理部4により予備冷却された後、バルククーラ55に供給される二次側熱交換系が構成される。なお、64は給水管62の中途に接続した電磁開閉弁を示すとともに、65は洗浄槽を示し、洗浄時における洗浄水は、下流側配管54bを介して当該洗浄槽65に収容される。
【0025】
次に、本実施形態に係る液体用熱交換器1の具体的な構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0026】
液体用熱交換器1は、図1及び図2に示すように、外周面2poと内周面2piを有する熱交換筒部2pを少なくとも一部に有する筒状体部2を備える。例示の筒状体部2は、上部に位置する上ガイド筒部2pu,中間部に位置する円筒形の熱交換筒部2p及び下部に位置する下ガイド筒部2pdを一体に構成する。この場合、熱交換筒部2pは、上下に同径の円柱形状Fsに形成するとともに、上ガイド筒部2puは熱交換筒部2pの上端から上方へ漸次小径となるように円錐状に延設形成し、かつ下ガイド筒部2pdは熱交換筒部2pの下端から下方へ漸次小径となるように逆円錐状に延設形成する。また、上ガイド筒部2pu,熱交換筒部2p及び下ガイド筒部2pdは、同一素材により一体形成してもよいし、異なる素材により形成した上ガイド筒部2pu,熱交換筒部2p及び下ガイド筒部2pdを組合わせて一体化してもよい。組合わせた場合には、例えば、熱交換筒部2pを、熱伝導性の良好な素材により形成するとともに、上ガイド筒部2pu及び下ガイド筒部2pdは、内部を視認できる透明な素材により形成することも可能となり、この際には、特に、上ガイド筒部2puを通して、熱交換筒部2pにおける内部の汚れ状態等を容易に確認できる利点がある。
【0027】
また、熱交換筒部2pの内周面2piを含む筒状体部2の内部側は、二次側液体処理部4として構成する。二次側液体処理部4は、上ガイド筒部2puの上端に設けた二次側供給部4sを備える。二次側供給部4sは、前述した上流側配管54aが接続され、生乳Lsが流入する接続口11と、この接続口11から流入した生乳Lsを整流する第一の整流手段となる整流室12と、この整流室12の真下に位置し、かつ整流室12から落下した生乳Lsを360゜の全放射方向にガイドし、上ガイド筒部2puの内周面2puiに当たるように傘形に形成した第二の整流手段となる整流盤13を備える。なお、例示の整流盤13は、周方向に所定間隔おきに配した複数本のステー13s…により支持される。一方、二次側液体処理部4は、下ガイド筒部2pdの下端に設けた二次側排出部4eを備える。この二次側排出部4eは、前述した下流側配管54bが接続され、生乳Lsを流出する接続口14を備える。
【0028】
他方、熱交換筒部2pの外周面2poには、一次側流体処理部3を付設する。一次側流体処理部3は、熱交換筒部2pよりも大径に形成し、外周面2poに対して所定の隙間を介在させた外筒板部15m,この外筒板部15mの上下端から中心方向に延設して隙間の上下を閉塞するリング形の上端板部15u及び下端板部15dからなる一次側流体収容部15を備え、この一次側流体収容部15の内部に流体収容室Swが設けられる。また、外筒板部15mの下側には、前述した図4に示す給水管62が接続され、冷却水Wfが流入する接続口16を用いた一次側供給部3sを設けるとともに、外筒板部15mの上側であって、一次側供給部3sに対して、例えば180゜反対側の位置には、前述した図4に示す排水管63が接続され、一次側流体処理部3により熱交換された冷却水Wfが流出する接続口17を用いた一次側排出部3eを設けて構成する。
【0029】
次に、本実施形態に係る液体用熱交換器1の機能(作用)及び使用方法について、図1〜図4を参照して説明する。
【0030】
まず、本実施形態に係る液体用熱交換器1は、図4に示すように、乳処理システム50における送乳ポンプ53とバルククーラ55を接続する送乳配管54の中途に接続して使用する。この場合、液体用熱交換器1は、二次側供給部4sの接続口11を、上流側送乳配管54aに接続し、かつ二次側排出部4eの接続口14を、下流側送乳配管54bに接続するとともに、一次側供給部3sの接続口16を、給水管62に接続し、かつ一次側排出部3eの接続口17を、排水管63に接続する。
【0031】
これにより、外部の冷却水供給源61から、給水管62を通して冷却水Wfが供給される。そして、図3に示すように、供給された冷却水Wfは、液体用熱交換器1の一次側供給部3s(接続口16)を通して、流体収容室Swの下側に流入する。流体収容室Swの全体形状は円筒形となるため、冷却水Wfも円筒形の層となり、熱交換筒部2pにおける外周面2poの全面に接触可能となる。また、流体収容室Swの下側に流入した冷却水Wfは、徐々に上方へ移動する。この際、熱交換筒部2pの外周面2poは冷却水Wfにより冷却される。そして、流体収容室Swの上側に移動し、熱交換された冷却水Wfは、一次側排出部3e(接続口17)を通して排出され、さらに、排水管63を通して冷却水供給源61における戻り口に戻される。例示の冷却水供給源61は循環タイプであり、戻り口に戻された冷却水Wfは、再度冷却され、新たな冷却水Wfとして用いられる。
【0032】
他方、上流側送乳配管54aを通して送られた生乳Lsは、二次側供給部4s(接続口11)に流入する。この際、横方向から流入する生乳Lsは、一旦、整流室12に流入し、この整流室12から下方へ落下する。この場合、整流盤13の略中央に落下し、この後、生乳Lsは、傘形に形成した整流盤13の上面を360゜の全放射方向に流れる。整流盤13を流れた生乳Lsは、上ガイド筒部2puの内周面2puiに当たり、生乳Lsは内周面2puiの表面を伝って流れ落ちるとともに、さらに、熱交換筒部2pの内周面2piの表面を伝って流れ落ちる。したがって、生乳Lsは、内周面2piの表面を上から流れ落ちることにより当該内周面2piの全面に接触可能となるとともに、外周面2poの全面が冷却水Wfにより冷却されているため、生乳Lsは内周面2piの表面に接触することにより、冷却(熱交換)される。この場合、冷却水Wfの温度等を選定し、生乳Lsの温度を数℃程度まで予備冷却することが目標となる。
【0033】
この後、生乳Lsは、下ガイド筒部2pdの内周面2pdiの表面を流れ、二次側排出部4e(接続口14)を通して排出される。そして、排出された生乳Lsは下流側配管54bを通ってバルククーラ55に供給される。図3に、冷却水Wfの流通経路を点線矢印により示すとともに、生乳Lsの流通経路を実線矢印により示す。また、図3には、同一符号となるLsを用いて、生乳が各内周面2pui…の表面を流れ落ちる状態を模式的に示す。
【0034】
よって、このような本実施形態に係る液体用熱交換器1によれば、二次側液体処理部4により、二次側供給部4sから供給された生乳(二次側液体)Lsが、熱交換筒部2pの内周面2piの表面を上から流れ落ちることにより当該熱交換筒部2pにおける内周面2piの全面に対して接触可能にしたため、熱交換機能を有する熱交換筒部2pは、極めて単純な形状(経路)により形成することができ、洗浄及びメンテナンスを容易に行うことができる。しかも、生乳Lsは、内周面2piの表面を上から流し落ちるため、汚れが付着しにくく、かつ蓄積しにくいとともに、筒状体部2を少なくとも一部を透明素材により形成すれば、内部の汚れ状態等を容易に確認できるなど、常に良好な衛生状態を維持可能となる。
【0035】
また、液体用熱交換器1における全体構造の単純化に伴って部品点数を飛躍的に削減できる。したがって、部品コストの低減、更には製造工数の低減によるコストダウンを図れるなど、製品の低廉化を図れる。しかも、狭い流路を流す必要がないため、生乳Lsを通過させる際の流量抵抗をほとんど無視することができ、流量抵抗を考慮した大型の送乳ポンプが不要になるなど、省エネルギ性の観点及びランニングコストの観点からも有利になる。加えて、生乳Lsの流量が変動しても影響が少なく、生乳Lsを安定に冷却することができる。特に、本実施形態に係る液体用熱交換器1では、二次側液体(Ls)として、搾乳された生乳Lsを適用したため、流動抵抗が大きくなりやすい生乳Lsを予備冷却する際に用いて最適となるとともに、副次的な効果として、送乳配管54や送乳ポンプ53等を通過して発生した泡を取除く効果も期待できる。
【0036】
なお、図5〜図8には、本発明の変更実施形態に係る各種液体用熱交換器1…を示す。図5は、筒状体部2の変更、即ち、筒状体部2を、軸方向Daに分割した複数の分割筒体部2a,2b,2cの組合わせにより構成したものである。例示の場合、図1に示した、上部に位置する上ガイド筒部2pu,中間部に位置する熱交換筒部2p,下部に位置する下ガイド筒部2pd,をそれぞれ別体となる独立した部品として形成した。即ち、図5に示すように、上ガイド筒部2puの下端にフランジ31を一体に設けて分割筒体部2aとし、また、熱交換筒部2pの上端と下端にフランジ32と33をそれぞれ一体に設けて分割筒体部2bとし、さらに、下ガイド筒部2pdの上端にフランジ34を一体に設けて分割筒体部2cとした。これにより、対向する各フランジ31と32、33と34を図示を省略したボルトナット等の固定具により着脱可能(分解組立可能)に構成することができる。このような変更実施形態に係る液体用熱交換器1によれば、筒状体部2を、軸方向Daに分割した複数の分割筒体部2a,2b,2cの組合わせにより構成した場合であっても、筒状体部2に対する組立及び分解を容易に行うことができ、更なる洗浄性及びメンテナンス性の向上に寄与できる。
【0037】
図6は、二次側液体処理部4における二次側供給部4sを変更したものである。図1に示した二次側供給部4sは、整流室12及び整流盤13を設けることにより、流入した生乳Lsを熱交換筒部2pの内周面2piに対して鉛直方向Dvに供給できるようにしたが、図6に示す二次側供給部4sは、接続口11を熱交換筒部2pの上端付近の周面に直接設け、生乳Lsを熱交換筒部2pの内周面2piに対して横方向、即ち、螺旋方向Dsに供給できるようにした。これにより、接続口11から流入した生乳Lsは、熱交換筒部2pの内周面2piを螺旋方向Dsに流れ落ちる。したがって、この場合には、図1における上ガイド筒部2puは不要となる。このように、二次側液体処理部4の二次側供給部4sは、生乳Lsを、図1に示すように、熱交換筒部2pの内周面2piに対して、鉛直方向Dvに供給可能に構成してもよいし、或いは図6に示すように、螺旋方向Dsに供給可能に構成してもよく、二次側液体Lsの供給方向の選定により、熱交換性能等も含め、設計自由度をより高めることができる。
【0038】
図7は、液体用熱交換器1の全体レイアウトを変更したものである。図1に示した液体用熱交換器1は、熱交換筒部2pの内周面2piに生乳Lsを供給し、外周面2poに冷却水Wfを供給する場合を例示したが、図7に示す液体用熱交換器1は、熱交換筒部2pの内周面2piに冷却水Wfを供給し、外周面2poに生乳Lsを供給するようにしたものである。このように、熱交換筒部2pの外周面2poと内周面2piは、それぞれ一次側流体処理部3と二次側液体処理部4のいずれにも用いることができる。また、図7は、筒状体部2における熱交換筒部2pは円錐形状Fcに形成した。これにより、生乳Lsが接触する面は傾斜面となるため、生乳Lsは表面を伝って安定に流れ落ちることが可能になる。このように、筒状体部2における熱交換筒部2pは、図1に示すような円柱形状Fs又は図7に示すような円錐形状Fcのいずれにも形成できるため、熱交換筒部2pの形状を選定すれば、二次側液体Lsの冷却に熱交換筒部2pの内周面2piを用いるか又は外周面2poを用いるかの選定をはじめ、筒状体部2を各種形態により実施できるなど、多様性及び多機能性の向上に寄与できるとともに、全体のサイズ変更も容易に実現できる。なお、図7において、41は保護カバー、41dは保護カバー41における傾斜した底面部を示す。
【0039】
図8は、二次側液体処理部4における二次側供給部4sを変更したものである。即ち、上ガイド筒部2puを半球状のドーム形に形成するとともに、二次側供給部4sにおける接続口11を上ガイド筒部2puの内部に延設し、接続口11の内端を、上ガイド筒部2puの内部における天面中央に対向させて配したものであり、これにより、生乳Lsが接続口11を通して供給されれば、比較的簡単な構成により実施できる。その他、図5〜図8において、図1〜図3と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0040】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、各実施形態では、一次側流体(Wf)として、冷却水Wfを使用した場合を示したが、その他、冷却溶液,冷却蒸気又は冷却空気等であってもよい。このように、一次側流体Wfには、少なくとも、水,溶液,蒸気又は空気の一つを含ませることができ、熱交換筒部2pの単純形状ゆえに各種媒体の利用が可能になる。したがって、一次側流体Wfを選定する観点からの設計自由度及び汎用性を高めることができる。また、搾乳した生乳Lsを予備冷却する用途を示したが、他の用途によっては加温(加熱)も可能である。したがって、この場合には、冷却水Wfの代わりに熱湯を用いることができ、一次側流体Wfは、一般的に、水,溶液,蒸気又は空気等を利用できる。さらに、二次側液体Lsも生乳Lsをはじめ、各種の液体を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る液体用熱交換器1は、例示した生乳の予備冷却をはじめ、各種液体の冷却や加温、即ち、醤油等の食品用液体,薬液,オイル,クーラント液,化学溶液等の各種液体の冷却又は加温に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1:液体用熱交換器,2:筒状体部,2p:熱交換用筒部,2po:熱交換用筒部の外周面,2pi:熱交換用筒部の内周面,2a:分割筒体部,2b:分割筒体部,2c:分割筒体部,3:一次側流体処理部,3s:一次側供給部,3e:一次側排出部,4:二次側液体処理部,4s:二次側供給部,4e:二次側排出部,Wf:一次側流体(冷却水),Ls:二次側液体(生乳),Fs:円柱形状,Fc:円錐形状,Da:軸方向,Dv:鉛直方向,Ds:螺旋方向,Sw:流体収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側流体と二次側液体の熱交換を行う液体用熱交換器であって、外周面と内周面を有する熱交換筒部を少なくとも一部に有する筒状体部と、一次側供給部から供給された一次側流体が前記熱交換筒部における外周面(又は内周面)の全面に対して接触可能な流体収容室を有し、かつ熱交換された一次側流体が一次側排出部から排出される一次側流体処理部と、二次側供給部から供給された二次側液体が前記熱交換筒部における内周面(又は外周面)の表面を上から流れ落ちることにより当該熱交換筒部における内周面(又は外周面)の全面に対して接触可能に構成し、かつ熱交換された二次側液体が二次側排出部から排出される二次側液体処理部とを備えることを特徴とする液体用熱交換器。
【請求項2】
前記一次側流体には、少なくとも、水,溶液,蒸気又は空気の一つを含むことを特徴とする請求項1記載の液体用熱交換器。
【請求項3】
前記二次側液体は、搾乳された生乳であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体用熱交換器。
【請求項4】
前記筒状体部における熱交換筒部は、円柱形状又は円錐形状に形成することを特徴とする請求項1,2又は3記載の液体用熱交換器。
【請求項5】
前記筒状体部は、一体に構成し,又は軸方向に分割した複数の分割筒体部の組合わせにより構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体用熱交換器。
【請求項6】
前記二次側液体処理部の二次側供給部は、前記二次側液体を、前記熱交換筒部の内周面(又は外周面)に対して鉛直方向に供給可能又は螺旋方向に供給可能に構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体用熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−228192(P2012−228192A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97565(P2011−97565)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】