説明

液体用紙容器及びその製造方法

【課題】加熱によるピンホールの発生を防止し、バリア性の高い液体用紙容器を提供する。
【解決手段】外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、下記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、中間層及び最内層の層厚の合計は、30〜94μmである液体用紙容器により、上記課題を解決する。中間層の層厚が15〜57μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体用紙容器及びその製造方法に関し、特に、ピンホールの発生を防止した液体用紙容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体用紙容器は、内容物の保存性、容器としての強度やガスバリア性等を確保するため各種の積層体からなる包装材料を用いて形成されている。そして、このような液体用紙容器に用いられる包装材料として、接着性ポリオレフィン系樹脂を含有する内面層と、該内面層の外側に位置しポリアミド樹脂を含有するバリアー層と、紙を主体とする支持体の両面にオレフィン系樹脂層を設けてなり該バリアー層の外側に位置する基材層と、を有する包装材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−179543
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の液体用紙容器の包装材料を組み立てて接着する際には、通常、接着位置にホットエアー(熱風)を吹き付けて接着性のポリオレフィン系樹脂を溶融させて接着する。その際に液体用紙容器の構成材料(上述の接着性のポリオレフィン系樹脂)においてピンホールが発生するおそれがある。液体用紙容器の包装材料において加熱によりピンホールが発生した場合には、バリア機能が低下し、内容物の漏れが発生する可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、加熱によるピンホールの発生を防止し、バリア性の高い液体用紙容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、本発明の液体用紙容器は、外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、下記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmであることを特徴とする液体用紙容器である。
【0006】
【化1】

これによれば、中間層及び最内層の層厚の合計を所定の範囲内としたことにより、紙容器の積層体を加熱しても低密度ポリエチレンからなる各層にピンホールが発生しにくくなる。また、バリア層に化学式(1)のポリアミド樹脂を用いることにより、バリア性が高く、強度もある液体用紙容器を提供することができる。さらに、第一接着層及び第二接着層を有することにより、液体用紙容器を構成する各層を強固に接着できる。
【0007】
上記本発明の液体用紙容器において、前記中間層の層厚が15〜57μmであることを特徴とする。
【0008】
これによれば、特に、中間層の層厚を所定の範囲内にしたことにより、加熱しても低密度ポリエチレンからなる各層にピンホールが発生しにくくなるとともに、第二接着層及び最内層の層厚が比較的薄くなるため、最内層の低密度ポリエチレンが厚いことにより樹脂臭が発生し、当該樹脂臭が液体用紙容器の内容物に移り、内容物の味や風味が変わってしまうことが防止される。また、樹脂に吸着される内容物のフレーバーも少なくなることからも、味や風味が変わってしまうことが防止される。
【0009】
上記本発明の液体用紙容器において、前記中間層の層厚/前記最内層の層厚が0.41〜3.8であることを特徴とする。
【0010】
これによれば、中間層の層厚と最内層の層厚との割合を所定の範囲内にしたことにより、加熱しても低密度ポリエチレンからなる各層にピンホールが発生しにくくなるとともに、第二接着層及び最内層の層厚が比較的薄くなるため、最内層の低密度ポリエチレンが厚いことにより樹脂臭が発生し、当該樹脂臭が液体用紙容器の内容物に移り、内容物の味や風味が変わってしまうことが防止される。
【0011】
上記本発明の液体用紙容器において、前記中間層、前記第一接着層、前記第二接着層及び前記最内層の層厚の合計は、43〜100μmであることを特徴とする。
【0012】
これによれば、各層の層厚の合計を上記範囲内にすることにより、加熱時のピンホールの発生を防止することができる。
【0013】
上記本発明の液体用紙容器において、前記中間層及び前記第一接着層の合計層厚が25〜60μmであることを特徴とする。また、上記本発明の液体用紙容器において、前記中間層及び前記第一接着層の合計層厚/前記第二接着層及び前記最内層の合計層厚が0.625〜3.3であることを特徴とする。
【0014】
これによれば、中間層及び第一接着層の合計層厚と、第二接着層及び最内層の合計層厚との割合を所定の範囲内にしたことにより、加熱しても低密度ポリエチレンからなる各層にピンホールが発生しにくくなるとともに、第二接着層及び最内層の層厚が比較的薄くなるため、最内層の低密度ポリエチレンが厚いことにより樹脂臭が発生し、当該樹脂臭が液体用紙容器の内容物に移り、内容物の味や風味が変わってしまうことが防止される。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の液体用紙容器の製造方法は、外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、上記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmである液体用紙容器の製造方法であって、前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層、前記最内層を前記基材層に対して共押出ラミネートしたことを特徴とする。
【0016】
これによれば、低密度ポリエチレンからなる各層にピンホールが発生しにくくなるとともに、バリア性が高く、強度もあり、液体用紙容器を構成する各層が強固に接着された液体用紙容器を製造することができる。また、各層を共押出ラミネートすることにより、極薄い第一接着層、第二接着層を安定して形成できるとともに、中間層、バリア層を比較的厚く、その他の層を比較的薄く形成することが可能となり、特に、最内層の低密度ポリエチレンが厚いことにより樹脂臭が発生し、当該樹脂臭が液体用紙容器の内容物に移り、内容物の味や風味が変わってしまうことが防止される。
【0017】
上記課題を解決する液体用紙容器の製造方法は、外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、上記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmである液体用紙容器の製造方法であって、前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層、前記最内層からなるフィルムを前記基材層に対してサンドイッチラミネートしたことを特徴とする。
【0018】
これによれば、低密度ポリエチレンからなる各層にピンホールが発生しにくくなるとともに、バリア性が高く、強度もあり、液体用紙容器を構成する各層が強固に接着された液体用紙容器を製造することができる。また、中間層、第一接着層、バリア層、第二接着層、最内層からなるフィルムを公知の共押出法、インフレーション法、Tダイ法等により予め作製しておくこともでき、フィルムをサンドイッチラミネートするタイミング等を考慮せずに安定して液体用紙容器を製造することができる。
【0019】
上記課題を解決する本発明の液体用紙容器の製造方法は、外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、上記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmである液体用紙容器の製造方法であって、前記基材層の前記最外層を有しない側に低密度ポリエチレンからなる層を形成し、その後、前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層及び前記最内層を積層したことを特徴とする。
【0020】
これによれば、予め基材層に低密度ポリエチレンからなる層を形成しておくことにより、これに各手法により形成されたフィルムをサンドイッチラミネートし、または、各層を共押し出しラミネートすることにより、ラミネート温度を比較的低温にしても接着性を有するとともに、樹脂臭をさらに低減することも可能となる。また、貼り合わせられた低密度ポリエチレンからなる各層が中間層として機能し、中間層を比較的厚く形成することが可能となる。
【0021】
上記本発明の液体用紙容器の製造方法において、前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層及び前記最内層を形成する際に、前記バリア層を中心として厚さが対称となるように共押出を行うことを特徴とする。
【0022】
これによれば、バリア層を中心として厚さが対称である五層の共押出フィルムを用い、または、同様の五層を形成できるよう共押出ラミネートを行うことにより、安定して共押出の工程を行うことができる。このとき、五層を構成する材料について、中間層と最内層を同じくし、第一接着層と第二接着層とを同じくし、三種(低密度ポリエチレン、接着剤、化学式(1)で示されるポリアミド樹脂)の材料を用いることが好ましく、共押出の工程を行う際の安定性がさらに増す。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液体用紙容器及びその製造方法によれば、紙容器の積層体を加熱しても低密度ポリエチレンからなる各層にピンホールが発生しにくくなり、バリア機能の低下が防止された液体用紙容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照して説明する。図1は本発明の紙容器を形成する積層体の層構成の一例を示す説明図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の液体用紙容器を形成する積層体10は、外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層11、紙からなる基材層12、低密度ポリエチレンからなる中間層13、第一接着層14、下記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層15、第二接着層16及び低密度ポリエチレンからなる最内層17、を少なくとも積層したものである。以下に、積層体10を構成する各層について説明する。
【0026】
最外層11は、低密度ポリエチレンからなり、基材層12の外部を保護すると共に、積層体10の端の部分においては、加熱されて後述する最内層17と貼り合わせられる。低密度ポリエチレン(LDPE)としては、具体的に、高圧法エチレン単独重合体、あるいはエチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好適に用いられる。この低密度ポリエチレンの密度は、通常、低密度ポリエチレンといわれる範囲であれば特に限定されないが、0.91〜0.94g/cm程度であり、そのメルトインデックスM.I.も、特に限定されないが、通常、1〜20程度である。
【0027】
最外層11の形成方法は、特に限定されないが、例えば、基材層12の一方の面に押出コートすることにより形成される。最外層11は、紙容器の表面となる層であるが、さらに表面に印刷層を設けることができ、印刷層に用いられる印刷インキの密着性の向上を図るために表面に例えばコロナ処理等の表面処理を施すことが好ましい。最外層11の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜60μm程度である。
【0028】
基材層12は紙からなり、この紙は、紙容器を構成する基本素材となることから賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができる。紙としては、例えば、主強度材であり、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種の紙基材を使用することができる。基材層12は、これらの紙を複数層重ねたものであってもよい。また、紙は、秤量80〜600g/m程度、好ましくは秤量100〜450g/m程度であり、厚さ110〜860μm程度、好ましくは140〜640μm程度のものを使用することができる。なお、紙基材には、例えば、文字、図形、記号、その他の所望の絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができる。
【0029】
中間層13は、低密度ポリエチレンからなり、基材層12とバリア層15との接着性を高めること及び耐ピンホール性を付与する機能を有する。中間層13の材料としては、最外層11の低密度ポリエチレンと同様の材料を用いることができる。中間層13の形成方法及び厚さについては後述する。
【0030】
第一接着層14は、中間層13とバリア層15と間に設けられ、両層の接着性を向上させる。第一接着層14の材料としては、接着性ポリオレフィン系樹脂を主体とした材料が用いられる。接着性ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のαポリオレフィン、およびポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリジオレフィンと、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、カルボン酸アミドないしイミド、アルデヒド、ケトン等に基づくカルボニル基を単独で、あるいはシアノ基;ヒドロキシ基;、エーテル基;、オキシラン環等との組み合わせ有するエチレン系不飽和単量体の1種または2種以上との共重合体等を使用することができる。
【0031】
より具体的には、
A.エチレン系不飽和カルボン酸:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等、
B.エチレン系不飽和無水カルボン酸:無水アクリル酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸等、
C.エチレン系不飽和エステル:アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、マレイン酸モノエチルまたはジエチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、γ−ヒドロキシメタクリル酸プロピル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、β−N−エチルアミノエチルアクリレート等、
D.エチレン系不飽和アミドないしイミド:アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等、
E.エチレン系不飽和アルデヒドないしケトン:アクロレイン、メタクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルブチルケトン等、のエチレン系不飽和単量体との共重合体等、
を用いることができる。
【0032】
このような接着性ポリオレフィン系樹脂が含有される第一接着層14の中にはポリオレフィン樹脂、特にポリエチレンを含有させることもできる。この場合、第一接着層14中の接着性ポリオレフィン系樹脂の含有率は40質量%以上が好ましい。接着性ポリオレフィン系樹脂の含有率が40質量%未満であるとバリア層15との接着性が低下するので好ましくない。第一接着層14の形成方法及び厚さについては後述する。
【0033】
バリア層15は、上記の化学式(1)で示されるポリアミド樹脂(以下、ナイロンMXD6という)を含有し、容器としての強度やガスバリア性を確保する。ナイロンMXD6はメタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応から得られ、主鎖中に芳香族環をもつ結晶性ナイロンである。そして、主鎖中の芳香族環により、良好なバリア性を有する。また、ナイロンMXD6は、清涼飲料等の液体内容物に直接接触してもよい素材であるため、包装材料端面に施すスカイブ等の処理が不要となり、工程の簡略化が可能となる。さらに、ナイロンMXD6は、ナイロンと同程度の強度を有するため、補強層を設ける必要がなく、製造コストの低減が可能となる。
【0034】
ナイロンMXD6は、バリア層15に20〜100質量%程度含有されることが好ましい。ナイロンMXD6の含有量が20質量%未満では充分なバリア性が得られない。なお、バリア層15がナイロンMXD6と他の樹脂からなる場合には、他の樹脂は、例えば、ナイロンMXD6以外の脂肪族ナイロン、芳香族ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体、芳香族ポリアミド系ナノコンポジット(例えば、三菱ガス化学(株)Imperm103)、ポリアミド系ナノコンポジット(例えば、宇部興産(株)UBE NCH NYLON 1022C2、5034C2)等が用いられる。
【0035】
バリア層15の厚さは3〜60μm程度が好ましい。バリア層15の厚さが3μm未満であるとバリア性が十分発現できず、60μmを超えると紙容器を成形する際、こしが固くなり成形が困難となるばかりでなく、コスト的にも高価となり好ましくない。バリア層15の形成方法については後述する。
【0036】
第二接着層16は、バリア層15と最内層17と間に設けられて、両層の接着性を向上させる。第二接着層16の材料としては、第一接着層14と同様の材料(接着剤)を用いることができる。第二接着層16の形成方法及び厚さについても後述する。
【0037】
最内層17は、低密度ポリエチレンからなり、容器形成の際に最内層17同士、あるいは、最内層17と最外層11とを熱融着するための層であり、紙容器の内容物と接する層となる。最内層17の材料としては、最外層11の低密度ポリエチレンと同様の材料を用いることができる。上述のように、最内層17は、容器の内容物と接するため、内容物が牛乳等である場合には、添加剤のない低密度ポリエチレン(無添加の低密度ポリエチレン)を用いる。最内層17の形成方法及び厚さについては後述する。
【0038】
ここで、中間層13、最内層17、第一接着層14及び第二接着層16の厚さについて詳述する。本発明の液体用紙容器においては、中間層13及び最内層17の層厚の合計が30〜94μmであることに特徴を有している。中間層13及び最内層17の層厚の合計は、好ましくは40〜80μmである。このことにより、低密度ポリエチレンからなる各層の厚さが十分にあるため、積層体10が加熱された場合にも各層にピンホールが発生しにくくなる。
【0039】
特に、中間層13の層厚は、15〜57μmであり、最内層17の層厚が15〜37μmであることにより、最内層17の層厚を比較的薄くすることができる。また、中間層13の層厚/最内層17の層厚の割合を0.41〜3.8として、最内層17の層厚を比較的薄くすることができる。このように、低密度ポリエチレンからなる最内層17の層厚を比較的薄くすることにより、最内層17のポリエチレン臭が強くならないため、紙容器の内容物に臭いが移ることが防止され、特に内容物が飲食物である場合に飲食物の風味が変わることが防止される。なお、中間層13の層厚は、より好ましくは25〜50μmであり、最内層17の層厚は、より好ましくは15〜30μmである。また、中間層13の層厚/最内層17の層厚の割合を0.83〜3.33とすることが好ましい。
【0040】
また、液体用紙容器の積層体10が第一接着層14及び第二接着層16も含めて層厚を考えると、中間層13、第一接着層14、第二接着層16及び最内層17の層厚の合計は、43〜100μmであり、50〜90μmであることが好ましい。このとき、中間層13及び第一接着層14の合計層厚が25〜60μmであり、好ましくは30〜55μmである。第二接着層16及び最内層17の合計層厚が18〜40μmであり、好ましくは20〜35μmである。さらに、中間層13及び第一接着層14の合計層厚/第二接着層16及び最内層17の合計層厚の割合が0.625〜3.3であり、好ましくは0.86〜2.75である。また、このとき、第一接着層14の厚さは3〜10μm程度であり、第二接着層16の厚さは3〜10μm程度である。なお、第一接着層14や第二接着層16の厚さを他の層の厚さに単純に足した場合、合計層厚の値の範囲があわない場合もあるが、上記合計層厚の各範囲内でそれぞれの層厚を調整することが好ましい。
【0041】
これらの層構成からなる積層体10の厚さは、特に限定されないが、通常、150μm〜700μm程度である。
【0042】
ここで、積層体10における中間層13、第一接着層14、バリア層15、第二接着層16及び最内層17の形成方法について説明する。これらの五層13〜17の形成方法は特に限定されないが、例えば、中間層13、第一接着層14、バリア層15、第二接着層16、最内層17をまとめて共押出ラミネートすることができる。これらの五層13〜17を共押出ラミネートにより基材層12上に直接形成する場合には、ラミネート温度は特に限定されないが、これらの層の基材層12への接着性を考慮すると、300〜320℃程度である。
【0043】
また、これらの五層13〜17の形成方法としては、例えば、中間層13、第一接着層14、バリア層15、第二接着層16、最内層17からなるフィルムを基材層12の最外層11を有しない側にサンドイッチラミネートすることもできる。これらの五層13〜17からなるフィルムは、共押出法により作製することもできるし、インフレーション法やTダイ法により作製することも可能である。
【0044】
また、基材層12の最外層11を有しない側に予め中間層13の一部となる低密度ポリエチレンからなる層を形成しておき、この層に上述の各手法により他の中間層13、第一接着層14、バリア層15、第二接着層16、最内層17を積層することも可能である。このとき、予め基材層12に形成された低密度ポリエチレンからなる層と、後から積層した中間層13とが併せて中間層13として機能し、比較的厚い(上述の好ましい厚さの範囲となる)中間層13を形成することができる。このように基材層12の最外層11を有しない側に予め中間層13の一部となる低密度ポリエチレンからなる層を形成しておいた場合の五層13〜17を積層する際のラミネート温度は、特に限定されないが、例えば、280〜300℃程度と、比較的低くすることができ、樹脂臭をさらに低減することができる。
【0045】
中間層13、第一接着層14、バリア層15、第二接着層16、最内層17を積層する際には、この五層13〜17についてバリア層15を中心として厚さが対称となるように共押出を行うことが好ましい。この共押出の工程としては、共押出ラミネートを行う場合と共押出フィルムを作製する場合を含むものとする。このように、バリア層15を中心として厚さが対称である五層の共押出フィルムを作製し、又は共押出ラミネートを行うことにより、安定して共押出フィルムを作製できる。なお、このように共押出を行う際には、材料も三種(低密度ポリエチレン、接着剤、化学式(1)で示されるポリアミド樹脂)用い、厚さと同様にバリア層15を中心として対称に同じ材料を用いることが好ましい。
【0046】
この他に、これらの五層13〜17は、まず中間層13、第一接着層14及びバリア層15を共押出ラミネートにより形成し、その後、第二接着層16及び最内層17を共押出ラミネートにより形成することができる。また、まず中間層13及び第一接着層14を共押出ラミネートにより形成し、その後、バリア層15、第二接着層16及び最内層17を共押出ラミネートにより形成することもできる。
【0047】
なお、これらの五層13〜17は、各層を順次形成することも可能である。このように、種々の方法で積層体10における五層13〜17を形成することが可能であるが、材料を三種類(低密度ポリエチレン、接着剤、化学式(1)で示されるポリアミド樹脂)用いて五層13〜17とした共押出ラミネート又は共押出フィルムを用いる手法が好ましく用いられる。この手法により、極薄い第一接着層14及び第二接着層16を容易に形成することが可能となる。
【0048】
積層体10を用いた紙容器の製造は、通常、次のようにして行われる。すなわち、前述の層構成からなる積層体10のシートの外面に印刷を行った後、打ち抜き、端面をスカイブ・ヘミングして内容物が端面に接触しないようにし、充填装置内で底部及びトップ部を熱風加熱、火炎加熱等によりヒートシールして紙容器とする。
【0049】
この紙容器の形状については、用途・目的等に応じて適宜に決定すればよく、例えばゲーベルトップ型、ブリック型、フラットトップ型等が挙げられる。また、この紙容器の注出口には、たとえばポリエチレン製のキャップ、プルタブ型の開封機構等を適宜に設けてもよい。
【0050】
紙容器の内容物も、特に限定されず、牛乳、ジュース、ミネラルウォーター、緑茶、紅茶、ウーロン茶、日本酒、焼酎等の飲料や、食用油、醤油、みりん、食酢、固形物の入った調味料等の食品、シャンプー、リンス、機械油等の非食品等、様々な液体を内容物とすることができる。
【実施例】
【0051】
実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0052】
(実施例1)
秤量313g/mのミルク原紙の一方の面に、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I;3.7)を押出コートして厚さ17μmの最外層を形成した。
【0053】
また、ミルク原紙の他方の面に、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I;3.7)からなる厚さ35μmの中間層、接着剤(三井化学株式会社製;アドマー(登録商標)NF528)からなる厚さ6μmの第一接着層、上記化学式(1)で示すポリアミド樹脂(ナイロンMXD6)からなる厚さ5μmのバリア層、接着剤(三井化学株式会社製;アドマー(登録商標)NF528)からなる厚さ5.4μmの第二接着層、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I;3.7)からなる厚さ19.6μmの最内層、をこの順に積層されるように300℃において共押出ラミネートした。
【0054】
このようにして、LDPE17μm/ 紙313g/m /LDPE35μm/第一接着層6μm/MXD6 5μm/第二接着層5.4μm/LDPE19.6μmの順に積層された実施例の積層体を製造した。なお、このとき、中間層の層厚/最内層の層厚の割合は1.79であり、中間層及び第一接着層の合計層厚/第二接着層及び最内層の合計層厚の割合は1.64であった。
【0055】
(比較例)
実施例の中間層の厚さを8.7μmとし、第一接着層の厚さを5.4μmとした他は、実施例と同様にして、比較例の積層体を製造した。
【0056】
(評価方法)
実施例及び比較例の積層体について、ピンホールの発生状況、接着性、風味劣化の程度について、評価した。
【0057】
ピンホールの発生状況は、充填機(ディー・エヌ・ケー社製、型番:DR−10)を用い、ホットエアー(熱風)により積層体を各温度に熱し、ピンホールの発生状況を調べた。結果を表1に示す。なお、ピンホールの発生がないか少ないもの(具体的に1cmあたり0〜1個程度)を○、ピンホールの発生が少しあるもの(具体的に1cmあたり2〜5個程度)を△、ピンホールの発生が多いもの(具体的に1cmあたり6個以上)を×、とした。
【0058】
接着性は、ピンホール発生状況の評価と同様に、充填機(ディー・エヌ・ケー社製、型番:DR−10)を用い、ホットエアー(熱風)により積層体に各温度に成形したときの、トップシール部の接着性を調べた。結果を表1に示す。接着性の基準は、最内層樹脂間で界面剥離をしないときに○、一部界面剥離をするものを△とした。
【0059】
風味劣化の程度は、340℃にてオレンジ100%ジュースを充填し、10℃にて1週間保管後、パネラー5名により官能評価試験を行った。このときの風味劣化が少ない順に5点から1点で各パネラーが採点した結果の平均点を表1に示す。
【0060】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の紙容器を形成する積層体の層構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 積層体
11 最外層
12 基材層(紙層)
13 中間層
14 第一接着層
15 バリア層
16 第二接着層
17 最内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、下記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、
前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmであることを特徴とする液体用紙容器。
【化1】

【請求項2】
前記中間層の層厚が15〜57μmであることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器。
【請求項3】
前記中間層の層厚/前記最内層の層厚が0.41〜3.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体用紙容器。
【請求項4】
前記中間層、前記第一接着層、前記第二接着層及び前記最内層の層厚の合計は、43〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体用紙容器。
【請求項5】
前記中間層及び前記第一接着層の合計層厚が25〜60μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体用紙容器。
【請求項6】
前記中間層及び前記第一接着層の合計層厚/前記第二接着層及び前記最内層の合計層厚が0.625〜3.3であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体用紙容器。
【請求項7】
外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、上記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmである液体用紙容器の製造方法であって、
前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層、前記最内層を前記基材層に対して共押出ラミネートしたことを特徴とする液体用紙容器の製造方法。
【請求項8】
外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、上記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmである液体用紙容器の製造方法であって、
前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層、前記最内層からなるフィルムを前記基材層に対してサンドイッチラミネートしたことを特徴とする液体用紙容器の製造方法。
【請求項9】
外面側から、低密度ポリエチレンからなる最外層、紙からなる基材層、低密度ポリエチレンからなる中間層、第一接着層、上記化学式(1)で示されるポリアミド樹脂を含有するバリア層、第二接着層及び低密度ポリエチレンからなる最内層、を少なくとも積層してなり、前記中間層及び前記最内層の層厚の合計は、30〜94μmである液体用紙容器の製造方法であって、
前記基材層の前記最外層を有しない側に低密度ポリエチレンからなる層を形成し、その後、前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層及び前記最内層を積層したことを特徴とする液体用紙容器の製造方法。
【請求項10】
前記中間層、前記第一接着層、前記バリア層、前記第二接着層及び前記最内層を形成する際に、前記バリア層を中心として厚さが対称となるように共押出を行うことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の液体用紙容器の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−44208(P2008−44208A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221014(P2006−221014)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】