説明

液体用紙容器用包装材料およびその包装材料から製造される液体用紙容器

【課題】紙容器形成時の加熱によるピンホールの発生を防止し、バリア性の高い包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】外側面から、最外層であるポリエチレン層、紙基材層、酸化チタンを含むコート層、中間層であるポリエチレン層、バリア層、最内層であるポリエチレン層の順に積層された、液体用紙容器用包装材料を提供する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材料に関し、具体的には、液体用紙容器の内側に発生するピンホールを防止した液体用紙容器用包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体用紙容器は、内容物の保存性、容器としての強度やガスバリア性等を確保するため各種の積層体を包装材料として用いて形成される。この包装材料としては、基材となる紙の両面にポリエチレンを使用した樹脂層を設けたものが基本的な構造として知られている。そして、液体用紙容器に用いられる包装材料として、外側からポリエチレン層/紙基材層/ポリエチレン系樹脂/蒸着フィルム/ポリエチレン系樹脂の層構成となったものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−148895号公報(0027段落、0029段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の液体用紙容器の包装材料を組み立てて接着する際には、通常、充填機上において接着位置にホットエアー(熱風)を吹き付けて接着性のポリオレフィン系樹脂を溶融させ、プレスして熱溶着する。その際に紙から水分が蒸発して液体用紙容器の内面層の接着性のポリオレフィン系樹脂を通過することにより、当該内面層においてピンホール(包装材料の内面から紙に達する微少な穴)が発生するおそれがある。液体用紙容器の包装材料において加熱によりピンホールが発生した場合には、バリア機能が低下し、内容物の漏れや胴膨れが発生する可能性がある。
【0005】
特に蒸着フィルムを用いた液体用紙容器においては、トップ部及びボトム部をシールする際にピンホールが生じやすい。そのため、従来の技術ではシーラント層に、低温シール性がよいメタロセン系触媒を使用した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いている。この場合に、低温でのシールが可能となりピンホールが生じない温度領域で作業できる。しかし、LLDPEは密度が低いため滑り性が悪く、AB剤やスリップ剤を添加したり、多層構成にしたりする必要があり、製造コストを上げる要因となっていた。また、メタロセン系触媒を使用したLLDPEは、切れ性も悪いため抜き型の刃の消耗も早い傾向にある。
【0006】
一方、シーラント層にメタロセン系触媒を使用したLLDPEを用いずに、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いた蒸着フィルム等のバリア層を有する積層体を包装材料に用いた液体用紙容器も知られている。この場合は、ピンホールが生じない温度領域でのシールは困難であるため、紙基材層とバリア層との中間層の樹脂厚み通常の2倍以上の厚みにすることにより、ピンホールを生じにくくしている。この方法では、前記のメタロセン系触媒を使用したLLDPEを用いた包装材料よりも安定したシールが可能な温度領域が狭くなり、製造上の管理が難しい。また、樹脂の厚みが増すため、紙容器自体が硬くなり、成形不良を引き起こし、その結果製造コストが上がることもある。
また、バリア層としてアルミニウム箔を用いた場合、ピンホールは生じないものの、アルミニウム箔自体が前記水蒸気の影響を受け、バブリングおよび白化を起こしていた。
【0007】
よって、本発明は、加熱によるピンホールの発生、もしくはアルミニウム箔のバブリングおよび白化を防止し、バリア性の高い包装材料を提供することを目的とする。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討した結果、紙容器の内側となる面に酸化チタンを含むコート層を設けた積層体を包装材料として用いることにより、紙容器の内側の樹脂層におけるピンホールの発生、およびアルミニウム箔のバブリングおよび白化が防止できることを見いだした。
【0009】
つまり、本発明は、外側面から、最外層であるポリエチレン層、紙基材層、酸化チタンを含むコート層、中間層であるポリエチレン層、バリア層、最内層であるポリエチレン層の順に積層された、液体用紙容器用包装材料、およびこの包装材料を用いて形成された液体用紙容器である。
好ましくは、前記コート層が紙基材層に隣接して形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成を採用することにより、液体用紙容器を包装材料から組み立てる際に、加熱により生じる水蒸気が、バリア層や最内層のポリエチレン層に達することを防止し、その結果、ピンホールの発生が抑えられた液体用紙容器を提供することができる。このようなピンホールの発生が抑えられた液体用紙容器はバリア性が高く、内容物の漏れや胴膨れが発生することを防止できる。
またピンホールの発生を抑えることができるため、上記のメタロセン系触媒を使用したLLDPE以外のポリエチレン系樹脂も使用でき、シール時の温度幅が広くなる。また、中間層の樹脂厚みも抑えることができる。そのため、製造時のコストを抑え、滑り等の機械特性においても良好な包装材料を提供することができる。
さらに、従来からバリア層としてアルミニウム箔を用いた場合は、ピンホールは生じていないものの、アルミニウム箔自体が前記水蒸気の影響を受け、バブリングおよび白化を起こし、バリア層として機能できなかったが、本発明により、アルミニウム箔をバリア層としても使用することができる。
【0011】
また、本発明の包装材料より形成された液体用紙容器はバリア層を有することにより、内容物の風味が外側に逃げて風味が変化することを防止する。さらに最内層に低密度ポリエチレンを使用した場合は、最内層の滑り性が高くなり、機械適正が向上するとともに、シールの可能な温度の幅が広がり、広範な温度範囲におけるシールが可能になるため、包装容器作成のための時間やコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明の包装材料の層構成の各例を示す図である。
【0013】
図1は、本発明の液体用紙容器用包装材料10における、最外層であるポリエチレン層11、紙基材層12、酸化チタンを含むコート層13、中間層であるポリエチレン層14、バリア層15、最内層であるポリエチレン層16を積層したものを示した図である。
以下に、本発明の液体用紙容器用包装材料10の各層について説明する。
【0014】
最外層であるポリエチレン層11は、主にポリエチレンを含み、紙基材層12の外部を保護すると共に、液体用紙容器用包装材料10の端部においては、加熱されて後述する最内層となるポリエチレン層16と貼り合わせられる。
ここで使用するポリエチレンとして、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、等が具体的に挙げられる。シール性、加工適正等の観点から低密度ポリエチレンが好ましい。低密度ポリエチレンとしては、エチレン単独の重合体が好ましく、具体的に高圧法エチレン単独重合体が好適に用いられる。
また、エチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用してもよい。
低密度ポリエチレンの密度は、通常、低密度ポリエチレンといわれる範囲であれば特に限定されないが、0.90〜0.925g/cmであり、そのメルトインデックスM.I.も特に限定されず、通常、1〜20であり、融点は100℃〜120℃である。
【0015】
最外層であるポリエチレン層11の形成方法は、特に限定されないが、例えば、紙基材層12の一方の面に押出コーティングすることにより形成される。押出コーティングの加工条件としては、通常、押出温度280〜330℃、ラインスピードは100〜300m/min.の範囲で設定される。該ポリエチレン層11の厚さも特に限定されないが、通常、10〜60μmである。
最外層であるポリエチレン層11は液体用紙容器の外側表面となる層であるが、さらにその上に印刷層を設けてもよい。印刷層に用いられる印刷インキの密着性向上を図るために、該ポリエチレン層11の表面に表面処理(例えば、コロナ処理等)を施すことが好ましい。
【0016】
紙基材層12は、本発明の液体用紙容器を構成する基本素材となることから、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができる。紙としては、主強度材であり、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種紙基材を使用することができる。紙基材層12はこれらの紙を複数層重ねたものであってよい。また使用する紙は、坪量80〜600g/m、好ましくは坪量100〜450g/mのものを使用することができる。紙の厚さは、110〜860μm、好ましくは140〜640μmのものを使用することができる。
なお、紙基材には、例えば、文字、図形、記号その他の所望の絵柄を通常の印刷方法により任意に形成することができる。
【0017】
酸化チタンを含むコート層13は、 酸化チタンを含むコート層13は、酸化チタンを含む塗工液を紙基材層12に塗布し、紙基材層12の片面に酸化チタン粒子が敷き詰められたものである。
酸化チタンの製法としては、硫酸法・塩素法等、特に限定されないが、粒子径の小さい二酸化チタンを製造しやすい硫酸法がより好ましい。また、酸化チタンの結晶構造に関しても、ルチル型、アナターゼ型、ブルカルト型等限定されないが、結晶系の密度が大きく且つ熱的に安定なルチル型がより好ましい。
酸化チタンの粒径は特に限定されないが、平均粒径が10μm以下であることが好ましい。酸化チタンの平均粒径が10μmより大きい場合、紙基材層12に酸化チタンが均一に配列されずに隙間が発生するため、耐ピンホール効果が落ちてしまう場合がある。
【0018】
酸化チタンを含むコート層13は、酸化チタンの他に、バインダー樹脂を含む。このバインダー樹脂として、一般に使用されているバインダー樹脂を使用することができるが、具体的に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ラテックス樹脂等を使用することができる。これらを用いることで、例えば、中間層であるポリエチレン層14との接着性を上げ、密着性を上げることで、より隠蔽性を高めることが可能になる。
【0019】
酸化チタンを含むコート層13を塗工するための塗工液は、溶媒に酸化チタン、バインダー樹脂、さらに任意に他の顔料や添加剤を含むことができる。溶媒として、通常、水、アルコール(例えばイソプロピルアルコール)を使用することができる。添加剤として、顔料分散剤、消泡剤、発泡防止剤、粘度調整剤、滑沢剤、耐水化剤、保水剤、色材、印刷適正改良剤等が用いられる。
【0020】
酸化チタンを含むコート層13を形成する塗工液に含まれる酸化チタン、バインダー樹脂および溶媒の配合割合は特に限定されないが、一般に酸化チタン100質量部に対し、バインダー樹脂10質量部〜30質量部、溶媒40質量部〜100質量部の割合で配合される。
【0021】
酸化チタンを含むコート層13の塗工方法は、特に限定されないが、従来から知られている塗工方法を使用することができ、具体的に、グラビアコート、ロールコート、エアナイフコート、ブレードコート、ショートドウェル、キャストコート等の塗工方法が用いられる。
【0022】
酸化チタンを含むコート層13の厚さは、特に制限されないが、一般に0.5〜10μmで、好ましくは2〜8μmで、均一に紙基材層12上に形成されていることが好ましい。0.5μm未満の場合、耐ピンホール効果が低く不十分な場合がある。10μmより厚く形成させる場合は、塗工液の粘度が高くなり、均一に塗布することが困難になり、製造適正が悪くなる場合がある。また、塗工可能な粘度調整をした場合に、2度塗りする必要があり、好ましくない。
【0023】
紙基材層12に酸化チタンを含むコート層13を予め形成された材料を用いて、ポリエチレン層などの他の層を積層することができ、また、紙基材層12に酸化チタンを含む塗工液でコートして、インラインで他の層を形成させることもできる。
【0024】
中間層であるポリエチレン層14と酸化チタンを含むコート層13の密着性を確保するため、さらに酸化チタンを含むコート層13の表面にコロナ処理、火炎処理、アンカーコート処理等の表面処理を行うことができる。また、後述するバリア層15側の表面にはインラインでコロナ処理、中間層であるポリエチレン層14のバリア層15側にも適宜オゾン処理を行ってもよい。
【0025】
なお、酸化チタンを含むコート層は、通常、印刷の下地もしくは遮光目的で設けられる。しかしながら、本発明は紙容器の内側となる面、すなわち液体用紙容器用包装材料10の印刷層を設けない面に、酸化チタンを含むコート層13を設け、紙基材層12から発生する水分が最内層であるポリエチレン層16に通過することを防止して、ピンホールの発生を防止している。
【0026】
中間層であるポリエチレン層14は、酸化チタンを含むコート層13とバリア層15の接着性を高める機能及び耐ピンホール性を付与する機能を有し、ポリエチレン系樹脂を使用する。ここで使用するポリエチレン系樹脂としては、最外層であるポリエチレン層11と同様な材料を使用することができる。また、この他、メタクリル酸・エチレン共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、その他のエチレンと他のオレフィンまたは不飽和カルボン酸もしくはそのエステル化合物との共重合体を1種または2種以上用いてもよい。中間層であるポリエチレン層14で使用するポリエチレン系樹脂の密度は、特に限定されないが、0.90〜0.95g/cmであり、そのメルトインデックスM.I.も特に限定されないが、通常1〜20程度である。
【0027】
中間層であるポリエチレン層14の形成方法は特に制限されないが、押出コーティング等の方法を使用することができる。また、後述するように他の層と同時に形成されてよい。中間層であるポリエチレン層14の厚さは、特に限定されないが、通常、15〜60μmである。なお、酸化チタンを含むコート層13により最内層であるポリエチレン層16のピンホール発生を防止できることから、中間層であるポリエチレン層14は15〜30μmの厚さでも、本発明の効果を奏することができる。従来は、この中間層であるポリエチレン層を厚くすることでピンホールの発生を制御することができたが、紙自体の成形性に不都合が生じて、製造コストの上昇を招いていた。本発明により、この中間層を薄くすることも可能であり、従来のこのような問題も解決できる。
【0028】
バリア層15は、中間層であるポリエチレン層14と最内層であるポリエチレン層16との間に設けられ、気体(例えば、酸素や二酸化炭素)および液体の透過を防止して、容器の内容物の風味等を保持し、容器としての強度を確保するために設けられる。バリア層15の材料としては、強度やガスバリア性を有し、内容物の風味劣化等を防止できるものであれば特に制限されないが、例えば、MXナイロン、無機酸化物の蒸着フィルム、金属の蒸着フィルム、アルミニウム箔等が用いられる。
【0029】
MXナイロンの中で、ナイロンMXD6を使用することが好ましい。ナイロンMXD6は、メタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応から得られ、主鎖中に芳香族環を有する結晶性ナイロンである。このナイロンMDXは主鎖中の芳香族環により良好なバリア性を有する。また、ナイロンMDX6は、清涼飲料等の液体内容物に直接接することができる素材であるため、包装材料端面に施すスカイブ等の処理が不要であり、工程の簡略化が可能である。さらにナイロンMDXはナイロンと同程度の強度を有するため、補強層を施す必要がなく、製造コストの低減が可能になる。
【0030】
ナイロンMXD6を使用する場合は、バリア層15を形成する樹脂の20〜100質量%含有することが好ましい。ナイロンMXD6の含有量が20質量%未満の場合、十分なバリア性が認められない場合がある。また、ナイロンMXD6と他の樹脂とを用いてバリア層15を形成する場合は、他の樹脂として、脂肪族ナイロン、芳香族ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体、芳香族ポリアミド系ナノンポジット(例えば、三菱ガス化学株式会社、Imperm103)、ポリアミドナノコンポジット(例えば、宇部興産株式会社、UBE NCH NYON 1022C2、5034C2)等が用いられる。
【0031】
バリア層15にMXナイロンを用いる場合、その厚さは特に制限されるものではないが、通常、3〜60μmである。バリア層15の厚さが3μm未満であるとバリア性が不十分な場合があり、また60μmを超えると紙容器を成形するときに、こしが硬くなり成形が困難になる場合がある。
【0032】
無機酸化物の蒸着フィルムは、PET、ナイロン、ポリオレフィン等のフィルムに、無機酸化物が蒸着されたものである。無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等が用いられる。バリア層15に無機酸化物の蒸着フィルムが用いられる場合のこの層の厚さは、通常6〜50μmである。しかしながら、この厚さのほとんどはフィルムが占め、無機酸化物の蒸着膜の厚さは、通常、50〜2000オームストロング(Å)であり、好ましくは100〜1000Åである。
【0033】
金属の蒸着フィルムは、PET、ナイロン、ポリオレフィン等のフィルムに、金属が蒸着されたものである。金属としては、アルミニウム等が用いられる。バリア層15に無機酸化物の蒸着フィルムが用いられる場合のこの層の厚さは、通常6〜50μmである。しかしながら、この厚さのほとんどはフィルムが占め、金属の蒸着膜の厚さは、通常、50〜2000オームストロング(Å)であり、好ましくは100〜1000Åである。
【0034】
なお、バリア層15に、無機酸化物もしくは金属の蒸着フィルムを使用する場合には、蒸着膜が中間層であるポリエチレン層14に直接接することになる。このとき、このポリエチレン層14は、紙基材層12とバリア層15の蒸着膜とを強固に接着させる役割を果たす。
【0035】
バリア層15として、アルミニウム箔を用いた場合は、通常6〜20μmである。この時、さらに耐熱性を付与するために、バリア層15と最内層であるポリエチレン層16の間に耐熱層として、PETやナイロン等の樹脂を用いた層を設けてもよい。
【0036】
バリア層15の形成方法は特に制限されないが、バリア層15にアルミニウム箔、蒸着フィルムを用いる場合は、紙基材層12とバリア層15とを、中間層であるポリエチレン層14を用いてサンドイッチラミネーションすることが一般的である。その際、接着の状況により、バリア層15にコロナ処理を行ってもよく、また中間層であるポリエチレン層14の樹脂面にオゾン処理を施してもよい。また、紙基材層12の面に対しても、コロナ処理、フレーム処理、アンカーコート処理等を施してもよい。
【0037】
バリア層15に、MXナイロンを用いた場合は、中間層であるポリエチレン層14、バリア層15、最内層であるポリエチレン層16を共押出コーティングして形成してもよい。また、ポリエチレン層/接着層/MXナイロン/接着層/ポリエチレン層の順に積層されたフィルムを予め作製しておいて、このフィルムを中間層であるポリエチレン層14でサンドイッチラミネーションしてもよい。
この時に、接着層として使用できる樹脂は特に限定されないが、一般に無水マレイン鎖グラフトポリマーを使用することができる。このときの接着剤層の厚さは通常2〜10μm、好ましくは3〜6μmである
【0038】
最内層であるポリエチレン層16は、図1に示すように、紙基材層12の酸化チタンを含むコート層13側に設けられる。この最内層であるポリエチレン層16は、紙容器成形の際、このポリエチレン層16同士、もしくは最外層であるポリエチレン層11と熱融着する。また、内容物と直接接する層である。このため、スリップ剤、アンチブロック(AB)剤、酸化防止剤等の添加剤を含まないポリエチレン樹脂(例えば、無添加の低密度ポリエチレン等)を用いることが好ましい。
【0039】
最内層であるポリエチレン層16としては、上述の最外層であるポリエチレン層11と同じものを使用することが可能である。この中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)または中密度ポリエチレン(MDPE)を使用することが好ましい。
最内層であるポリエチレン層16に中密度ポリエチレンもしくは低密度ポリエチレンを使用した場合、最内層の滑りが高くなり、機械適正がよくなり、安価で製造できる。さらにこれらの樹脂を使用することにより、シールする温度の可能な範囲が広がり、包装容器作成のための時間やコストを低減することができる。
【0040】
バリア層15にアルミニウム箔を用いた場合に、最内層であるポリエチレン層16に中密度ポリエチレンを使用することが好ましい。この場合に、内容物の収着等が起きにくくなり、内容物のフレーバー等の官能が改善される。
【0041】
本発明の液体用紙容器用包装材料10の厚さは、特に限定されないが、通常150〜700μmである。中間層であるポリエチレン層14の厚さが15〜30μmである場合には、前記包装材料10の厚さは105〜655μmとすることができる。
【0042】
本発明の液体用紙容器用包装材料10の製造方法は、特に制限されないが、通常、まず紙基材層12に酸化チタンを含むコート層13を形成するための塗工液を塗布して乾燥させる(80〜120℃)。前記コート層と反対側の面に最外層であるポリエチレン層11、前記コート層側に中間層であるポリエチレン層14、バリア層15、最内層であるポリエチレン層16を積層することにより調製する。
なお、バリア層15にMXナイロンを使用した場合は、前記中間層14、前記バリア層15、前記最内層16を、前記コート層13に共押出コーティングで形成してもよい。
【0043】
本発明の液体用紙容器用包装材料10用いて液体用紙容器を製造する方法は、通常以下のように行われる。本発明の液体用紙容器用包装材料を形成した後、必要に応じて印刷面を設けて、これを打抜き、端面をスカイブ・へミング加工して内容物が端面に接しないようにした後、充填装置内で紙容器の底部およびトップ部を熱風加熱、火炎加熱等によりヒートシールして紙容器とする。
【0044】
本発明の紙容器の形状は、用途・目的等に応じて適宜決定することができる。例えば、ゲーベルトップ型、ブリック型、フラットトップ型等の形状やカップ型等の形状が挙げられる。また、紙容器の注出口には、ポリエチレン製のキャップ、プルタブ型の開封機構等を適宜設けてもよい。
【0045】
本発明の紙容器の内容物も、特に限定されないが、例えば、牛乳、ジュース、ミネラルウォーター、緑茶、紅茶、ウーロン茶、日本酒、焼酎等の飲料、食用油、醤油、みりん、食酢、固形物等の入った調味料等の食品、シャンプー、リンス、機械油等の非食品等、様々な液体を内容物とすることができる。本発明の液体用紙容器は、特にバリア性が高いため、風味の劣化を防止する必要がある内容物、例えば、日本酒、焼酎、ワイン、ジュース、コーヒー等に好適に使用される
【実施例】
【0046】
以下に、実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0047】
(実施例1)
実施例1の液体用紙容器用包装材料20を具体的に図2に示した。
坪量320g/mの液体用紙容器用原紙(ポトラッチ社)からなる紙基材層22の一方の面に、下記の酸化チタンを含むコート層用塗工液Aをボーズロールによりコーティングした。この後、100℃で乾燥させた。酸化チタンを含むコート層23の厚さは平均5μmであった。
【0048】
<酸化チタンを含むコート層用塗工液A>
酸化チタン(平均粒径 6μm) 55質量%
スチレンブタジエン系樹脂 10質量%
水 30質量%
IPA 2質量%
その他 3質量%
【0049】
紙基材層22の酸化チタンを含むコート層23が形成された反対の面に、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I.;3.8、融点109℃)を押出コーティング(押出し温度300〜320℃、スピード200m/min.)して、厚さ17μmの最外層であるポリエチレン層21を形成した。また、紙基材層22における前記コート層23が形成された面では、前記コート層23側から順に、LDPE(中間層であるポリエチレン層24)10μm/接着層27 5μm/MXナイロン(バリア層25)5μm/接着層28 5μm/LDPE(最内層であるポリエチレン層26)20μmの層構成を有する積層体を共押出ラミネートした(押出し温度290〜320℃、スピード200m/min.)。
中間層であるポリエチレン層24に用いた低密度ポリエチレン樹脂は、密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I.;3.8、融点109℃であった。また最内層であるポリエチレン層26に用いた低密度ポリエチレン樹脂は、無添加であって、密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I.;3.8、融点109℃であった。
またMXナイロンは、S6011(三井ガス化学社製)を用い、各接着層はモディックM545(接着性ポリオレフィン:三菱化学社製)を用いた。
【0050】
(実施例2)
実施例2の液体用紙容器用包装材料30を具体的に図3に示した。
坪量400g/mの液体用紙容器用原紙(ポトラッチ社)からなる紙基材層32に、実施例1と同じ塗工液Aを用いて、同様に酸化チタンを含むコート層33を形成した。
【0051】
紙基材層32の前記コート層33を有する面の反対面にLDPE20μmを押出ラミネートした(最外層であるポリエチレン層31)(押出し温度300〜320℃、スピード200m/min.)。紙基材層32の前記コート層33が形成されている面に、フレーム処理を行いながら、SiOx−PETからなる厚さ12μmの蒸着面にインラインコロナ処理を施しながら、EMAA樹脂(密度:0.93g/cm、M.I.:8、融点:99℃)からなる中間層であるポリエチレン層34でサンドイッチラミネーションを行った(押出し温度270〜295℃、スピード150m/min.)。この際、EMAA樹脂が接する前記コート層面およびEMAA樹脂面にオゾン処理を行った。この中間層であるポリエチレン層34の厚さは20μmであった。更に、SiOx−PET層(バリア層35)のPET層上に、ウレタン系のアンカーコート剤(AC剤)を塗布しながらLDPEフィルム(厚さ40μm)を対向させ、LDPE20μm(37)(ここでは、LDPEフィルムとバリア層35を接着させる機能を有する)で、サンドイッチラミネーション(押出し温度280〜320℃、スピード150m/min.)を行って、実施例2の液体用紙容器用包装材料30を調製した。
なお、ここで使用したLDPEは、実施例1と同じである。
【0052】
この液体用紙容器用包装材料30は、外側から、LDPE20μm(31)/紙基材400g/m(32)/酸化チタンを含むコート層(33)/EMAA20μm(34)/SiOx−PET12μm(35)/LDPE20μm(37)/LDPE40μm(36)である。
【0053】
(実施例3)
SiOx−PETの代わりに、アルミ蒸着PETフィルムを用いて積層した以外は、実施例2と同様にして、本発明のこの液体用紙容器用包装材料を作成した。(アルミ蒸着PETの厚み12μm)
【0054】
(実施例4)
実施例4の液体用紙容器用包装材料40を具体的に図4に示した。
この包装材料では、バリア層45としてアルミニウム箔を用いた。
具体的には、予め、アルミニウム箔6μm/PET12μm/中密度ポリエチレン(MDPE)で構成されるフィルムを、二液硬化型ウレタン系接着剤を用いてドライラミネーションにより作製した(このときに使用したMDPEの密度:0.931g/cm、M.I.:2、融点:120℃)。
実施例2と同じ紙基材を用いて、実施例2と同様に、酸化チタンを含むコート層43を紙基材層42に作製した。前記コート層43と反対側の紙基材層42の面に、LDPEを20μm押出ラミネートにより積層した(押出し温度300〜320℃、スピード200m/min)。前記コート層43にフレーム処理を行いながら、予め作製した上記フィルムのアルミニウム箔の面を対向させて、EMAA樹脂を(中間層であるポリエチレン層44として)、サンドイッチラミネーションを行い(押出し温度270〜295℃、スピード150m/min)、液体用紙容器用包装材料40を作成した。
【0055】
この液体用紙容器用包装材料40は、外側から、LDPE20μm(41)/紙基材400g/m(42)/酸化チタンを含むコート層5μm(43)/EMAA20μm(44)/アルミニウム箔6μm(45)/PET12μm(47)/MDPE60μm(46)である。
ここで、PET層は耐熱層として機能する。
【0056】
(比較例1〜4)
酸化チタンを含むコート層を形成しなかった他は、実施例1〜4と同様にして比較例1〜3の包装材料を作製した。
【0057】
実施例および比較例の包装材料について、ピンホールの発生状況、シール性の関係を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
(評価方法)
充填機(ディー・エヌ・ケー社製、型番:DR−10)を用い、熱風により各包装材料を各温度に熱し、ピンホールの発生状況を調べた。結果を表1に示す。なお、ピンホールの発生が認められないもしくは少ないもの(具体的に1cmあたり0〜1個)を○、ピンホールの発生が若干認められるもの(1cmあたり2〜5個)を△、ピンホールの発生が多いもの(1cmあたり6個以上)を×とした。
また、実施例4および比較例4では、バリア層としてアルミニウム箔を使用しているため、ピンホールは生じないが、バブリングおよび白化の状況で判断した。○は白化なし、△は部分的に白化が認められたもの、×は全体的にALが白化したものである。
【0059】
シール性は、充填機(ディー・エヌ・ケー社製、型番:DR−10)を用い、熱風により各包装材料を各温度に熱してシールした場合に、しっかりと接着したものを○、接着したものの剥がれやすいものを△、接着しないものを×とした。
【0060】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の液体用紙容器用包装材料10の模式断面図である。
【図2】実施例1の液体用紙容器用包装材料20の模式断面図である。
【図3】実施例2の液体用紙容器用包装材料30の模式断面図である。
【図4】実施例4の液体用紙容器用包装材料40の模式断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 液体用紙容器用包装材料、
11 最外層であるポリエチレン層
12 紙基材層
13 酸化チタンを含むコート層
14 中間層であるポリエチレン層
15 バリア層
16 最内層であるポリエチレン層
20 液体用紙容器用包装材料
21 最外層であるポリエチレン層
22 紙基材層
23 酸化チタンを含むコート層
24 中間層であるポリエチレン層
25 バリア層
26 最内層であるポリエチレン層
27、28 接着層
30 液体用紙容器用包装材料
31 最外層であるポリエチレン層
32 紙基材層
33 酸化チタンを含むコート層
34 中間層であるポリエチレン層
35 バリア層
36 最内層であるポリエチレン層
37 接着層
40 液体用紙容器用包装材料、
41 最外層であるポリエチレン層
42 紙基材層
43 酸化チタンを含むコート層
44 中間層であるポリエチレン層
45 バリア層
46 最内層であるポリエチレン層
47 耐熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面から、最外層であるポリエチレン層、紙基材層、酸化チタンを含むコート層、中間層であるポリエチレン層、バリア層、最内層であるポリエチレン層の順に積層された、液体用紙容器用包装材料。
【請求項2】
前記コート層が紙基材層に隣接して形成される請求項1に記載の液体用紙容器用包装材料。
【請求項3】
前記コート層は、酸化チタンおよびバインダー樹脂を含むコート剤から形成される、請求項1または2に記載の液体用紙容器用包装材料。
【請求項4】
前記酸化チタンの平均粒径が10μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体用紙容器用包装材料。
【請求項5】
前記コート層が0.5〜10μmの厚さで形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体用紙容器用包装材料。
【請求項6】
前記バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂またはラテックス樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の液体用紙容器用包装材料。
【請求項7】
前記バリア層は、MXナイロン、無機酸化物の蒸着フィルム、金属の蒸着フィルム、またはアルミニウム箔の1種または2種以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体用紙容器用包装材料。
【請求項8】
前記中間層の厚さが15〜30μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体用紙容器用包装材料。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体用紙容器用包装材料から製造される液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−220841(P2009−220841A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65704(P2008−65704)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】