説明

液体金属による固体基体表面の湿潤

液体金属により固体基体の表面を濡らす方法であって、高エネルギービームにより前記表面を活性化することと、活性化状態で液体金属を表面に導入することと、を含み、前記表面の温度が前記液体金属の融点よりも高いことを特徴とする液体金属により固体基体の表面を濡らす方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体金属により固体基体表面を濡らす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開公報WO2007/051537は、集光レーザービームを発生するように構成されたレーザー源とレーザー源に対して移動可能な表面材料を運ぶためのキャリアとを含み、表面材料がキャリアにより運ばれた際に再生可能なターゲットエッジ(target edge)を与える、極端紫外線(または極紫外線)(EUV)放射を提供するシステムを示している。集光ビームはターゲットエッジに当たり、EUV放射プラズマ(EUV radiation emitting plasma)を発生するように構成されている。このシステムは、そこに当たる極端紫外線を屈折させることにより極端紫外線を利用するミラーと協働可能である。ミラーは実質的に非球面の表面と、非球面の表面を少なくとも部分的に覆う反射液(reflecting liquid)を供給する手段とを含み、ミラーは非球面の表面に屈折液を均一に分配するようにおよび/または遠心力を利用して制限するように回転可能である。ターゲットエッジおよびミラーの液体コーティングとして望ましい特定の材料は、室温で液体である、68.5%Ga、21.5%Inおよび10%Snの組成を有するガリウム合金、ガリンスタン(Galinstan)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生ずる問題は、このような合金ついて適切に濡れることが可能なように基体表面を調整することである。
【0004】
T.S Sudarshan, M.H. Lim, L. ParkおよびS. H. Changによる"Wetting of metal surfaces with a liquid metal using a plasma interaction technique(プラズマ相互作用法を用いた液体金属による金属表面の濡れ)" J. Vac. Sci. technique A 2 1503 1984は各種の金属基体を水銀で濡らす方法を示している。これは金属基体のプラズマ活性化(plasma activation)に依る。Liang Yin, Stephen J. Meschter, Timothy J. Singterによる"Wetting in the Au-Sn System (Au−Sn系での濡れ)"Acta Materialia 52 (2004) 2873-2888は、静滴法(または液滴法、sessile drop technique)を用いた液体による金の濡れを示している。実験は、ガス状還元雰囲気で、厚さ約20μmの液体錫フィルムを生ずる最適な基体温度/濃度を伴う基体温度(250℃〜430℃)および濃度範囲に亘って行われた。しかしながら、このフィルムはこの液体金属に少なくとも部分的に溶解し得る基体上に形成されている。
【0005】
Tamas Szorenyi, Zoltan Kantor, Zsolt Toth, Peter Heszlerによる"Pulsed laser deposition from solid and molten metals(固体および液体金属からのパルスレーザー堆積)" Applied Surface Science 138-139 (1999) 275-279は、溶融金属の該金属の融点よりもはるかに低い温度に保持した固体基体へのパルスレーザー堆積を示している。液体金属は、従って、はるかに低温の固体基体に接触すると直ちに凝固する。
【0006】
国際公開公報WO2008/029327は、電気的に操作された放電によりEUP放射および/または軟X線を発生させるためのプラズマ放電ランプに関する。ランプは液体金属を被覆した少なくとも2つの電極より成る。プラズマは液体金属に当たった高出力レーザーにより点火される。多孔質基体材料を化学的に処理することにより液体金属のコーティングが塗布される。
【0007】
米国特許公開公報US2001/011545は、半導体ウェハのような材料の表面から汚染粒子を除去するためのレーザー洗浄方法を開示している。これは純粋に洗浄方法であり、液体金属コーティング法の一部を形成するものではない。
【0008】
米国特許公報US4,357,555は、液体金属を被覆したベアリングを有する回転型陽極を示している。濡らす過程は水素ガスの還元雰囲気中でベアリングのシャフトと液体金属とを加熱することから成る。
【0009】
米国特許公報US5,871,848は、ボロンを含むイオンビームを発生するのに使用するために、ボロン合金によりグラファイト基体を濡らす方法を示している。濡らす温度(wetting temperature)で、ボロンはグラファイトと反応し、そしてグラファイトは容易に合金により濡れる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、液体金属により固体基体の表面を濡らす方法であって、高エネルギービームにより前記表面を活性化することと、活性化状態で液体金属を表面に導入することとを含み、前記表面の温度が前記液体金属の融点よりも高いことを特徴とする方法を提供する。
【0011】
高エネルギービームは、濡らされる固体基体の表面から材料を除去し背後の純粋なバルク材料を残すのに十分なエネルギーを伴う、フォトン、電子、イオン、分子もしくは原子のビームまたはこれらの任意の数の組み合わせを含んでよい。この除去工程は、機体の表面を高表面エネルギー状態または活性化状態で残留させ、系全体のエネルギーを減少させる材料と結合する状態にある。液体金属がこの活性な表面に十分に早く導入されると、続いて液体金属はこの活性領域を覆うことができる。活性化と液体金属の堆積との間に遅延があると、続いて表面は非活性化する、または酸化もしくは系内の他の汚染物質により不動態化する。
【0012】
金属基体の場合、清浄化したバルク材料の表面エネルギー(通常、300mN/mから1000mN/m)は、通常金属の表面に見出される酸化物または他の不動態層の表面エネルギーと比べてはるかに大きい。液体金属の表面張力(液体の表面エネルギー)もまた非常に大きい(通常、300mN/mから1000mN/m)ことから、清浄化した高い表面エネルギーの基体が必要である。これは、液体金属は、それ自身に対して非常に大きな親和力を有し、それよりもはるかい低い表面エネルギーを有する任意の表面で液体の玉を形成するであろうことを意味する。高エネルギーの表面は、液体に対し強い親和力を有し、また逆の場合も同様であることから、液体金属が非常に大きい表面エネルギーを有する表面(不動態化していない清浄な金属のような)に堆積する場合、その液体金属はこの表面を濡らす。
【0013】
化学的な視点から、純粋な液体金属は、下層の金属表面が露出している場合のみ、下層の金属基体と金属結合を形成することができる。表面に酸化物層(または窒化物層もしくは有機汚染物質層等)が存在すると、従って、液体金属は、直接、該表面と金属結合を形成することができないであろうし、それ自身とこれらの結合を形成し、できるだけ最小の表面積を露出させ、従って丸くなるであろう。
【0014】
本発明の実施形態は、液体金属の進んでくる端部(またはエッジ)のすぐ前で基体表面を漸次(または徐々に、progressively)活性化する高エネルギービームを用いる。このことは、いくらかの液体金属を基体の表面と合金化させ得るし、またこの合金化は液体金属が表面を濡らすのを助力する。本願発明者らは、しかしながら、濡れは、主として、活性で、高エネルギーの表面領域の液体金属による即時の被覆の結果であると信じている。
【0015】
高エネルギービームは、好ましくはレーザービームであり、最も好ましくはパルスレーザービームであるが、しかし、イオンビーム、原子ビーム、分子ビームまたは電子ビームのような他の高エネルギービームを適切な状況で用いてもよい。
【0016】
ある実施形態では、表面が円対称 (circularly symmetric)で、レーザーによる活性化の間、その軸の周りを回転し、このような回転の間、レーザービームは連続する半径方向の位置に向けられ(または屈折され、または偏向され、deflect)、表面の回転により表面の連続する環状の領域が活性化される。
【0017】
1つの実施形態では、濡らされる表面は、固体基体の実質的に円錐形の内面を含む。この場合、遠心力と重力の少なくとも1つにより、液体金属は円錐形表面の内部の頂点に導入され、活性化した環状領域に分配され得る。
【0018】
別の実施形態では、濡らされる表面は、ディスク(または円盤)の1つの面(または1方の面)を含んでいる。この場合、液体金属浴中でのディスクの端部(またはエッジ)の回転により、液体金属を活性化した環状領域に導入することができる。
【0019】
更なる実施形態では、濡らされる表面は、円筒(またはシリンダー)の外面を含む。この場合、液体金属浴中での円筒下部の回転により、液体金属を活性化した環状領域に導入することができる。
【0020】
さらに、濡らされる表面は、中空の円筒(またはシリンダー)の内面(または内側面)を含んでもよい。この場合、液体金属を円筒の内側に導入することができ、円筒の回転により活性化した環状領域に分配できる。
【0021】
活性化および液体金属を導入する間、基体表面は異なる速度で回転してもよい。
【0022】
好ましくは、レーザーによる活性化および液体金属を導入する間、濡らされる表面は真空中または不活性雰囲気中に保持される。
【0023】
液体金属は、室温で液体であってよく、この場合、濡らす工程において基体を加熱する必要がない。
【0024】
基体はモリブデンであってよく、液体金属はガリンスタンであってよい。
【発明の効果】
【0025】
いずれの先行技術文献も、ガリスタン合金(Galistan alloy)または他の液体金属に対する濡れ性を改善するための基体の高エネルギービームによる活性化を検討していない。
【0026】
本発明の1つの用途は、上述の国際公開公報WO2007/051537で言及されているEUVシステムであるが、しかし液体金属のコーティングは、他の波長での用途およびプラスマシールディングのような他の目的のための用いることが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の好ましい実施形態に係る方法を示す。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
例を介して、また添付の図を参照して、本発明の実施形態を示す。
【0029】
図1では、固体基体1が、液体金属3による濡らされる表面である、略円錐形の内面または窪み2を有する。基体1は、図示しない電気モーターにより様々な速度で駆動可能な、回転可能なプラットフォーム(ターンテーブル)4に載置され、円錐形表面2はこのターンテーブルの回転軸5と実質的に同軸(coaxial)である。ターンテーブルの軸5は、垂直に対し、ある角度で傾斜している。アクチュエータにより制御されたシリンジ(または注射器)6が、ターンテーブル上で円錐形表面2の中心(頂点)に液体金属を落とす位置に載置されている。高出力パルスレーザー7が、回転軸5から任意の選択した半径方向の距離で円錐形表面2に向けることができる非収束ビーム8を生じさせる。ビーム8の方向は、図示しない電気的に制御したプリズムにより制御されている。
【0030】
該方法の実施では、ターンテーブル4は回転させられ、レーザービーム8は最初、円錐形表面2の中心に向けられ、ビームにより照射された表面領域を清浄化および活性化するのに十分な時間そこに保持される。その後直ちに、すなわち清浄化および活性化した表面2の領域が、その通常の不活性な状態に戻る時間を有する前に、シリンジ6より少量の液体金属3が表面2のレーザーにより活性化した領域に落とされる。ターンテーブル4の傾斜および基体1の回転は、重力および遠心力により、液体金属3を分散させてレーザーで活性化した表面2の領域を濡らす。他の実施形態では、活性化した領域は、円錐形表面の下部に形成された液体金属のプールを通って回転し、基体1は液体がこぼれないような角度に維持されている。
【0031】
表面2の最初の、中心の領域が濡れた後、レーザービーム8は、半径方向外側に移動されて、既に活性化し、濡れた領域の周辺を僅かに越えた位置で表面2の乾燥領域に当たり(または作用し、impinge on)、そして既に活性化し濡らした領域に接触して取り囲む、表面2の環状領域を清浄化および活性化するのに十分な時間、そこに保持される。そして、新たに活性化した環状領域が活性な間に、更なる量の液体金属が表面2の中央部に落され、液体金属が重力と遠心力とにより分散し新たに活性化した環状領域を濡らす。
【0032】
このプロセス、すなわち既に活性化し、濡らした領域を取り囲む環状領域を活性化することおよび濡らすことは、円錐形表面2全体が液体金属により濡らされるまで繰り返される。連続したレーザーにより活性化したそれぞれの環状領域は、そのより大きな半径に起因し、先行する(または、前の)領域よりも広い面積を有することから、プロセスのそれぞれの工程で、漸次より多くの量の液体金属がシリンジ6により分配される。回転する円錐の下部に形成する液体金属のプールは、回転する活性化した表面と連続的に相互に作用し、たとえ10−4ミリバールよりも低い真空であっても表面は急速に、通常数秒以内に、不活性になることから、活性化プロセスが液体プールに最も接近して起こさせることにより最も優れた結果が達成される。プロセスの中間段階での表面2の濡れた領域は3Aで示されている。
【0033】
レーザー7は、好ましくは1064nm以下の波長を有しており、10Hzより大きい、好ましくは50Hzより大きい周波数で、好ましくは約5ns〜約50nsのパルス長を有し、好ましくは約50mJ〜約500mJのパルスエネルギーを有するパルスである。レーザービーム8は非収束(非集光)であり、好ましくは約1mm〜約10mmの直径を有する。好ましい実施形態では、固体基体1は濡れのプロセス全体を通して連続して回転している。50Hzの固定されたレーザー繰り返し率に対して、基体の初期回転速度は約100rpmでもよく、これを1またはいくつかのステップで約10rpmまで減少させてもよい。より速い回転速度が、処理領域の環状の面積がより小さい基体の中央により近い領域に用いられ、中心からより離れた領域が処理される場合、処理されるより広い面積を考慮してより遅い回転速度が適用される。回転の下限は、領域の活性が減少してしまう前に活性化した領域が液体のプールと相互作用するという要求により規定され、これは液体プールに如何に近接して領域が活性化されるかに依存する。このような減少した回転速度を用いて、50Hzの固定されたレーザー繰り返し率において、約500mJのレーザーパルスエネルギーと約9nsのレーザーパルス長とを有する、直径1cmの非収束ビームが、処理されている環状領域の長さ1センチメートルあたり約5ショットの割合で当てられる。
【0034】
液体金属3は、ガリウム合金でよく、好ましくはガリスタンでよい。ガリスタン(Galistan)は、室温で液体のガリウム、インジウムおよび錫の合金であり、従って、本方法を室温で実施することが可能となる。ガリスタンは、腐食性であり、アルミニウムのような特定の金属を容易に攻撃する。ガリスタンは、容易に酸素と反応し、従って、空気に曝すと鈍い灰色の酸化物層を形成する。
【0035】
濡らされる固体基体1は、好ましくはモリブデン、またはタングステン、タンタルもしくはステンレス鋼のような他の耐食性を有する金属により形成される。モリブデンは耐食性を有しており、従ってガリスタンおよび他の腐食性の液体からの攻撃に耐えるであろう。
【0036】
活性化および濡らす前に、基体1の円錐形の表面(または円錐表面)2は、好ましくは濡らす工程が始まる前に空気中で紙やすりにより機械的に研磨される。仕上げの研磨面を備えるように、好ましくは18μmの砂粒サイズの紙やすりが用いられる。機械的研磨の後、水で洗浄され、空気中で乾燥してよい。
【0037】
基体の傾斜の角度、すなわち軸5の傾斜角度は、好ましくは、液体金属が基体に沿ってレーザーで活性化した領域まで流れるように調整可能である。傾斜の角度を増加させることにより、基体の表面2に蓄積されたかもしれない余分な液体金属が流れ去り、基体は薄くきれいな液体金属のフィルムの後ろに位置する。
【0038】
液体金属のフィルムは、好ましくは約1μm〜約200μm、好ましくは100μmの厚さを有する。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施形態を示す。図2では、同じまたは相当する部材は図1と同じ参照番号を用いている。
【0040】
本実施形態では、液体金属により濡らされる表面は、ディスク状の基体10の片側の平坦な円形の表面9である。基体10は、電気モーター11により、それ自身の中心軸5の周りを回転可能である。軸5は、実質的に水平に示されているが、しかし水平に対して鋭角であることも可能である。モーター全体およびディスクアセンブリの垂直位置は調整可能であり、ディスク10は該ディスクよりも下方の液体金属3の浴槽よりも高い位置に位置する、または様々な程度で浸漬することが可能である。
【0041】
第2の実施形態の方法の実施において、ディスク10(最初液体金属3の浴槽から離れて持ち上げられている)は回転を始め、レーザービーム8は表面9の外側周辺端部に向けられてこの端部における表面9の環状領域を清浄化および活性化する。清浄化および活性化された表面9の環状領域が、その通常の不活性な状態に戻る時間に達する前に、ディスクがまだ回転したままで、ディスク10の端部が浴槽内に下げられ、ディスクが浴槽内を通って回転すると共に、活性化領域に液体金属3の薄いフィルムが形成される。同時に、ディスク10のレーザービームに対する下方への動きに起因して、レーザービーム8は、既に活性化および濡らされた領域の内側周辺部に隣接(または接触、contiguously)およびすぐ内側に位置する表面9の乾燥した環状領域を清浄化および活性化している。
【0042】
そして、新たに活性化された乾燥した環状領域が活性である間に、ディスク10は更に液体金属の浴槽内へと降下して、新たに活性化した領域も濡らされる。この工程、すなわち、既に活性化し、濡らした領域の内部および隣接する領域を活性化すること及び濡らすことは、表面9全体が、液体金属により漸次、濡らされるまで繰り返される。基体10は、そして、液体金属の浴槽から除去することができ、表面に残存する1μm〜200μmのフィルムと共に濡れが維持される。このフィルムの均一性は、回転する基体の回転速度および余剰な液レベルに依存する。工程の中間段階での表面9の濡れた領域を3Aとして示した。
【0043】
図示しない第3の実施形態では、濡らされる基体表面は、横に向けられた、すなわちその対称軸が実質的に水平な、中空の円筒(またはシリンダー)の内面である。円筒がその軸の周りに回転している間に、高出力パルスレーザービームを用いて表面が清浄化および活性化される。該ビームは、内面の活性化した連続的に隣接した環状帯に間欠的に向けられる。液体金属は、シリンジまたは他のこのようなポンプのような注入システムを用いて、円筒の内部に導入される。円筒が回転することから、円筒の下部に集まる余剰な液体の一部は、均一なフィルムとして円筒の内面の活性化した領域の周りに分配される。
【0044】
また図示しない第4の実施形態では、濡らされる基体表面は、横に向けられ、下部を液体金属の浴槽に浸漬し、それ自身の軸の周りを回転するシリンダーの外面である。この表面は、円筒を回転しながら、高出力パルスレーザービームを用いて清浄化および活性化される。該ビームは、面の活性化した連続的に隣接した環状帯に間欠的に向けられる。表面の活性化された領域が液体金属の浴槽を通過すると。液体金属が被覆され、薄いフィルムを形成する。
【0045】
第2〜第4の実施の形態のレーザー7の特性は、好ましくは、第1の実施形態と同じであり、上述の通り、基体(ディスクまたは円筒)は、好ましくは、濡らす工程全体を通じて連続的に回転している。基体の回転速度は、約10rpm〜約300rpmの間で濡らす工程の間何回も可変であってよい。
【0046】
液体金属は、ガリスタンのような、ガリウム合金であってもよく、また濡らされる固体基体ディスクまたはシリンダーは、上述したモリブデンまたは他の耐食性を有する金属であってよい。活性化および濡らすことの前に、濡らされる基体の表面は、好ましくは、上述のように、紙やすりにより機械的に研磨され、洗浄され、乾燥される。
【0047】
全ての実施形態において、液体金属フィルムの厚さは、異なる速度で基体を回転することにより、または液体金属の温度を変えてその粘度を代えることにより、調整することができる。
【0048】
図示していないがしかし、全ての実施形態において、表面の活性化および表面を濡らすことは、好ましくは、活性な表面の酸化および/または汚染を防止するように、10−4ミリバールより低い値の真空中または不活性雰囲気中で実施される。
【0049】
本発明は、本発明の精神から逸脱することなく改良または変更可能な本明細書に示す実施形態に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属により固体基体の表面を濡らす方法であって、
高エネルギービームにより前記表面を活性化することと、
活性化状態で液体金属を表面に導入することと、
を含み、前記表面の温度が、前記液体金属の融点よりも高いことを特徴とする液体金属により固体基体の表面を濡らす方法。
【請求項2】
高エネルギービームが、濡らされる固体基体の表面から材料を除去し背後の純粋なバルク材料を残すのに十分なエネルギーを有する、フォトン、電子、イオン、分子または原子のビームの任意の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化することが、液体金属の進んでくる端部のすぐ前で前記高エネルギービームを用いて基体表面を漸次、活性化することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高エネルギービームが、レーザービーム、パルスレーザービーム、イオンビーム、原子ビーム、分子ビームまたは電子ビームを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表面が、円対称で、前記活性化することの間、その軸の周りを回転することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記回転の間、レーザービームが、連続する半径方向の位置に向けられ、表面の回転により表面の連続する環状領域が活性化されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
濡らされる表面が、固体基体の実質的に円錐形の内面を含み、
遠心力と重力の少なくとも1つにより、円錐形表面の内部の頂点に液体金属を導入することと、活性化した環状領域に液体金属を分配することとを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
濡らされる表面が、ディスクの1つの面を含み、液体金属浴中でのディスクの端部の回転により、活性化した環状領域に液体金属を導入することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
濡らされる表面が、円筒の外面を含み、液体金属浴中での円筒下部の回転により、活性化した環状領域に液体金属を導入することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
濡らされる表面が、中空の円筒の内面を含み、液体金属を円筒の内側に導入することと、円筒の回転により液体金属を活性化した環状領域に分配することとを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記活性にすることおよび液体金属を導入することの間、基体が、異なる速度で回転することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記活性にすることおよび液体金属を導入することの間、濡らされる表面が、真空中または不活性雰囲気中に保持されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
室温で液体である金属を供給することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基体がモリブデンであり、前記液体金属がガリスタンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
液体金属により固体基板の表面を濡らす装置であって、
前記表面を活性化する高エネルギービーム源と、
活性化状態の間、液体金属を表面に供給する手段と、
を含み、前記表面の温度が前記液体金属の融点よりも高いことを特徴とする液体金属により固体基体の表面を濡らす装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−518955(P2011−518955A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506598(P2011−506598)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002891
【国際公開番号】WO2009/132790
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(501339171)ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン,ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,ダブリン (7)
【Fターム(参考)】