説明

液冷システム及び液冷システムを有する電子機器

【課題】筐体内の複数の発熱体を効率よく液冷することができる液冷システム及び液冷システムを有する電子機器を提供する。
【解決手段】複数の発熱体2に密着固定される複数の受熱部3が、パイプ6とチューブ7によって放熱部4と循環ポンプ5とに接続され、このとき少なくとも一の受熱部3を他の受熱部3と並列接続して配管系を構成し、小さい循環ポンプ5でも配管の中に充填された冷媒が十分循環できるように配管抵抗を抑制するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器内に設けられた複数の発熱部品を効率的に冷却するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱部と放熱部とをチューブで環状に接続して冷媒を循環させる冷却システムについては、特許文献1に開示されているノート型パーソナルコンピュータ内の発熱体を液冷する技術が知られている。この特許文献1には、冷却液ポンプが、CPUを含む少なくとも1つの発熱部と放熱部との間をチューブで環状に接続して冷却液を循環させるものが記載されており、この冷却液ポンプの吸込み側は、冷却液が循環するチューブの放熱側に接続され、冷却液ポンプの吐出し側は、冷却液が循環するチューブの受熱側に接続されているものが記載されている。ここでは発熱部と放熱部と冷却液ポンプがチューブで直列に接続される。
【特許文献1】特開2003−263244号公報(第2頁,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、複数の発熱部を有する機器について特許文献1に開示されている直列の循環経路しかない液冷システムを適用すると、複数の発熱部に対してそれらすべてを通過するように循環経路を形成する必要があるため、発熱部を経由した冷媒が暖められて温度が上昇し、発熱部での冷媒の入口側を上流側、出口側を下流側としたとき、下流側の冷媒温度が高くため、この発熱部の下流側に配される他の発熱部が十分冷却されないおそれがある。
すなわち、通常冷却対策は、デザインや電気的・メカ的な面から部品の配置を決定した後で行うため、発熱する部品への冷媒の循環経路が制約されて循環経路が長くなりがちであり、冷却効率が不十分となり熱的に厳しい発熱部品を下流側に配置することができない不都合があった。
また、発熱部が複数あるとき、これら発熱部と放熱部とを配管で直列接続すると管路抵抗が大きくなり、必要流量を確保するのに容量の大きなポンプとしたり、管径を大きくしたりする必要が生じ筐体の小型化にとって不都合であった。
【0004】
かかる点に鑑み本発明は、複数の発熱体を効率的に冷却することができる液冷システム及び液冷システムを有する電子機器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は、複数の発熱部を有する液冷システムにおいて、発熱部からの熱を吸熱する受熱部と、この受熱部から熱交換により熱を奪う冷媒と、この冷媒から熱交換により熱を放散する放熱部と、受熱部と放熱部とを接続し、満たされた冷媒が循環自在とされる配管とから構成され、複数設けられる受熱部のうちの少なくとも1つの受熱部が、他の受熱部と並列に配管で接続されたものである。
【0006】
また、本発明は上記記載の液冷システムにおいて、冷媒の循環を配管に配設したポンプにより行うものである。
【0007】
さらに、本発明は上記記載の液冷システムにおいて、配管に冷媒の流量調節機構を備えたものである。
【0008】
このように構成した本発明液冷システムによれば、冷媒の経路が複数の発熱部に対し並列接続されるため、効率よく発熱部を冷却することができると共に、複数の各々の経路の長さが抑制され不必要な配管を抑えることができるため配管抵抗による圧力損失を小さくすることができ、循環ポンプの小型化を図ることができる。
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、複数の発熱部品を冷却する液冷システムを有する電子機器において、発熱部からの熱を吸熱する受熱部と、熱交換して受熱部から熱を奪う冷媒と、この冷媒から熱交換により熱を放散する放熱部と、受熱部と放熱部とを接続し、満たされた冷媒が循環自在とされる配管とから構成され、複数設けられる受熱部のうちの少なくとも1つの受熱部が、他の受熱部と並列に配管で接続されたものである。
【0010】
また、本発明は上記記載の液冷システムを有する電子機器において、冷媒の循環を配管に配設したポンプにより行うものである。
【0011】
さらに、本発明は上記記載の液冷システムを有する電子機器において、配管に冷媒の流量調節機構を備えたものである。
【0012】
このように構成した本発明液冷システムを有する電子機器によれば、冷媒の経路が複数の発熱部に対し並列接続されるため、効率よく発熱部を冷却することができると共に、複数の各々の経路の長さが抑制され不必要な配管を抑えることができるため配管抵抗による圧力損失を小さくすることができ、小型の循環ポンプを備えればよくなり、筐体をより小型にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明液冷システムによれば、発熱部を効率よく冷却することができると共に、省スペース化を図ることができ経済性に優れたものとすることができる。
【0014】
本発明液冷システムを有する電子機器によれば、液冷システムの部品の省スペース化によりその筐体を小型化することができ、小型の循環ポンプでよいのでこのポンプ駆動電圧を抑えることができ騒音の低減や長期信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明液冷システム及び液冷システムを有する電子機器を実施するための最良の形態の例を図1〜図11を参照して説明する。
図1は本例の液冷システムを有する筐体の斜視図を示し、この筐体の内部に複数設けられた発熱体が循環する冷媒により冷却される。ここで、液冷システムに用いられる冷媒として、例えば、純水、不凍液を含有する水などが挙げられる。
図1において1は筐体を示し、この筐体1内に冷却すべき発熱体2が2つ設けられている。そして、この発熱体2,2のそれぞれを冷却するため、筐体1内に搭載される2つの受熱部3,3、放熱部4、ポンプ5、パイプ6、チューブ7により液冷システムが構成される。
【0016】
受熱部3は、図1及び図2に示すように、発熱体2に熱的に接触するように密着固定されるものであり、発熱体2から受熱部3への伝熱における熱抵抗を小さくするため、発熱体2と受熱部3との間に図示しない伝熱シートや伝熱グリースなどを介在させる。そして、受熱部3は、図2に示すように、内部に空間が形成されると共に、冷媒8を流すことができるように両端に孔を設け、この孔に後述するパイプ6,6が接合される。この受熱部3は、発熱体2から伝熱された熱を効果的に冷媒8に伝えるため金属で作製され、受熱部3の受熱面は発熱体2と十分な接触を行うことができるように形成される。
【0017】
放熱部4は、図1に示すように、発熱体2から受熱部3を介して伝達されて暖められた冷媒8から熱を放散させるためものであり、放熱効率を大きくするため伝熱性が良好な金属で作製するのが望ましく、内部に空間が形成されると共に、冷媒8を流すことができるように両端に孔が設けられる。ここで放熱部4の内部は図3に示すように、空間に複数の壁9を設け、冷媒8が流れるときできるだけ放熱部4の内壁との間で熱交換がし易いようになされる。
また、放熱部4から外気への伝達を効率よく行うため、図1に示すように、放熱部4の外面に複数のフィンを取り付け表面積を大きくし、なおかつ放射による放熱効率を上げるため、アルミニウム素材に対するアルマイト処理とすることが望ましい。
そして、放熱部4は大容量の冷媒を貯えておけるようにし、蒸発などによる自然な冷媒の液減りに対して、リザーブタンクの機能も併せ持つようにする。
【0018】
受熱部3、放熱部4、ポンプ5間を接続するための、図1に示されるパイプ6は金属製のもの、チューブ7はゴムなどの柔軟性を有する樹脂製のものを用いる。柔軟性の樹脂製のチューブ7を用いるのは、全て金属製のパイプ6を用いると衝撃や振動などにより位置ズレの力が働いたとき局部的に応力集中を引き起こし、破損に至り液漏れなどを生じさせるおそれがあるため、適所に柔軟性を有する樹脂製のチューブを用い、位置ズレの力を緩衝させ、応力が集中しないようにするためである。
ここで、パイプ6は図2に示すように部品に直接接合されたり、管継手を介して部品に接続される。また、チューブ7は管継手とこれに接続される柔軟性の樹脂製のチューブからなるものである。
【0019】
本例の液冷システムは、図1に示すように、2つの受熱部3,3は、パイプ6とチューブ7によって互いに並列に配管して接続される。そして、内部に充填された冷媒8がポンプ5の駆動により輸送される際、ポンプ5の下流にある配管の分岐で冷媒8が分流されて2つの受熱部を通り発熱体2から熱を受け取り、その後分流されている冷媒8が統合されて放熱部4に供給され循環するようになされている。
すなわち、冷媒8の循環により発熱体2からの熱が、受熱部3→冷媒8→放熱部4と内部の壁9→放熱部4の外壁のフィン→外気の順に伝えられて暖められた冷媒8から熱が奪われて冷却され、電子機器が起動中の間、循環する冷媒8により発熱体4が冷却され続ける。
【0020】
このように図1に示す液冷システムでは、ポンプ5に対して受熱部3,3が並列接続されるため、直列接続のときと比べ2つの発熱体2,2は略同じに冷却されるだけでなくポンプ5から見た配管抵抗も略半減されるのでポンプ5を大きなものとする必要がない。
なお、流量は管路抵抗、ポンプ5の能力によって決定されるため、必要十分な流量が確保できるように、ポンプ5の能力・配置、パイプ6、チューブ7の仕様が決められる。
複数の発熱体に対して各受熱部で必要とされる必要流量は、次式となる。
必要流量 ≧ 総発熱量/( 冷媒密度 × 冷媒比熱 × 冷媒温度差 )
ここで、≧としたのは、発熱体2と冷媒8との間に伝熱損失があるため、右辺で見積もった値より大きな流量とする必要があるためである。
【0021】
このように構成した本例の冷却システムによれば、複数の受熱部3のそれぞれに放熱部4で冷却された冷媒8が分岐されて流されるため、発熱体2を効率よく冷却することができる。また、複数の各々の経路の長さが抑制され不必要な配管を抑えることができるため複数の受熱部3を直列接続する場合と比べ、本例のような並列接続では、配管による圧力損失が小さくなり負荷が小さくなるためその分容量の小さい小型のポンプ5を採用することができ冷却システムを省スペースで構成することができ経済性に優れたものとすることができる。
また、本例の液冷システムを有する電子機器によれば、冷却システムの部品の省スペース化によりその筐体を小型化することができるだけでなく、循環ポンプも小型でよいのでポンプ駆動電圧を抑えることができ騒音の低減や長期信頼性を向上させることができる。
【0022】
なお、2つの発熱体2を有する図1例に対しこれより多くの発熱体2を有するときは、例えば図4に示すように、複数の受熱部3を直列接続としてもよい。この場合、直列とされる受熱部3のうち下流側に配される方の発熱体2は、上流側に配される受熱部3に密着固定される発熱体2より発熱量の小さいものとする。また、一般に受熱部3を複数直列接続すると配管抵抗が大きくなり流量が小さくなりがちなので、必要十分な冷媒流量が確保できるように、配管径、循環ポンプ5の容量が決められる。
また、部品レイアウト上、発熱体2が狭小な領域に複数個実装される場合、図5に示すように、1つの受熱部3に発熱体2を複数個密着固定し、冷却するようにしてもよい。
【0023】
また、配管系をパイプ6やチューブ7で構成するのでなく、図6及び図7に示すように、比較的厚くても軽量化できるアルミニウムやマグネシウムなどの金属やその合金による板状のプレート10の内部に冷媒8の循環路11を設け、このプレート10の所定位置に発熱体2を伝熱シートなどを介して密着固定するようにしてもよい。
なお、プレート10の構造としては、図6に示す単一部材で構成されていても、図7に示す複数の部材で構成されていてもよい。図7に示すように複数の部材に分割した構造のプレート10では、それぞれの部材単位では流路が短くなるので作製が容易となる。
また、全体としての放熱量を多くするため、図8に示すように、受熱部3に放熱フィンを取り付け受熱部3自体からも放熱できるようにしてもよい。
【0024】
また、受熱部3,3で必要流量を確保するためにポンプ5を複数用いてもよく、例えばポンプ5の配置を図10に示すように並列に設けられた受熱部3,3の各々に接続したり、図9に示すように直列接続したりすることができる。
受熱部3の各々の冷媒8の流量制御を精度よく行わせたいとき、図9に示す受熱部3ごとにポンプ5を接続し、単に流量を増加させるとき、図10に示す並列に配設された受熱部3,3に対してポンプ5,5を直列に接続する。
【0025】
また、それぞれの受熱部3における冷媒8の流量を最適化するため、図9及び図10に示すように、流量コントロールユニット13を各受熱部3に接続される配管に設けてもよい。
この流量コントロールユニット13の例としては、配管の径に対して流路の一部にオリフィスを設けたり、配管の内径より小径部を設けることで管路抵抗を調整して所望の流量となるようにした単純な構成のものでもよい。図11に示す部品は、管路に小径部を設けるようにした流量コントロールユニット13の例であり、図11A及びBに示すように部品の両側に管継手を接続するためのねじ孔が設けられ、略中央部に小径とされた流路が形成される。
また、他の流量コントロールユニット13の例としては、冷媒8の流量を電気信号に変換する検出器を有するものでもよい。検出器を有する流量コントロールユニット13では、検出された電気信号を基に所望の流量になるようにポンプ駆動電圧を制御することができる。
【0026】
また、放熱部4は、図1例では一筐体に一面の場合で示したが、放熱部4を複数面で構成し一筐体に複数に分けて取り付けてもよいものである。
さらに、上述例では、チューブ7は柔軟性のある樹脂製として説明したが、これに限らず薄肉のステンレスパイプなどの金属に螺旋状もしくは一山ずつ波付けしたフレキシブルチューブを用いてもよく、配管継手については特に言及していないが、食い込み継手や面シール継手などを用いることができる。
【0027】
本発明の液冷システム及び液冷システムを有する電子機器は、上述例に限ることなく本発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成をとりうることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明液冷システム及び液冷システムを有する電子機器の実施の形態の例を示す模式図である。
【図2】図1例の受熱部の構造を説明する断面模式図である。
【図3】図1例の放熱部の構造を説明する断面模式図である。
【図4】本発明液冷システムの配管系の他の形態の例を示す模式図である。
【図5】本発明液冷システムの受熱部の他の形態の例を示す模式図である。
【図6】本発明液冷システムの配管系の他の形態の例を示す模式図である。
【図7】本発明液冷システムの配管系の他の形態の例を示す模式図である。
【図8】本発明液冷システムの受熱部の他の形態の例を示す模式図である。
【図9】本発明液冷システムの配管系の他の形態の例を示す模式図である。
【図10】本発明液冷システムの配管系の他の形態の例を示す模式図である。
【図11】図9及び図10例の流量コントロールユニットの構造の例を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0029】
2…発熱体、3…受熱部3、4…放熱部、5…循環ポンプ、6…パイプ、7…チューブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱部を有する液冷システムにおいて、
前記発熱部からの熱を吸熱する受熱部と、
該受熱部から熱交換により前記熱を奪う冷媒と、
該冷媒から熱交換により前記熱を放散する放熱部と、
前記受熱部と前記放熱部とを接続し、満たされた前記冷媒が循環自在とされる配管とから構成され、
複数設けられる前記受熱部のうちの少なくとも1つの前記受熱部が、他の前記受熱部と並列に前記配管で接続された
ことを特徴とする液冷システム。
【請求項2】
請求項1記載の液冷システムにおいて、
前記冷媒の循環を前記配管に配設したポンプにより行う
ことを特徴とする液冷システム。
【請求項3】
請求項1記載の液冷システムにおいて、
前記配管に前記冷媒の流量調節機構を備えた
ことを特徴とする液冷システム。
【請求項4】
複数の発熱部品を冷却する液冷システムを有する電子機器において、
前記発熱部からの熱を吸熱する受熱部と、
熱交換して前記受熱部から前記熱を奪う冷媒と、
該冷媒から熱交換により前記熱を放散する放熱部と、
前記受熱部と前記放熱部とを接続し、満たされた前記冷媒が循環自在とされる配管とから構成され、
複数設けられる前記受熱部のうちの少なくとも1つの前記受熱部が、他の前記受熱部と並列に前記配管で接続された
ことを特徴とする液冷システムを有する電子機器。
【請求項5】
請求項4記載の液冷システムを有する電子機器において、
前記冷媒の循環を前記配管に配設したポンプにより行う
ことを特徴とする液冷システムを有する電子機器。
【請求項6】
請求項4記載の液冷システムを有する電子機器において、
前記配管に前記冷媒の流量調節機構を備えた
ことを特徴とする液冷システムを有する電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−216906(P2006−216906A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30793(P2005−30793)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】