説明

液化ガス容器の搭載構造

【課題】各液化ガス容器内の液面レベルを検出して各液化ガス容器からの液化ガスの払い出し量を個別に制御しなくても、各液化ガス容器内の液面レベルを自然に揃えて片減りを防止し得るようにする。
【解決手段】液化ガス2を燃料とする車両に複数本の液化ガス容器1を搭載する構造に関し、各液化ガス容器1の貯蔵空間4内における最上部同士を気相連通配管3により相互に接続して連通せしめると共に、前記各液化ガス容器1の貯蔵空間4内における最下部同士も液相連通配管5により相互に接続して連通せしめ、該液相連通配管5を介し前記各液化ガス容器1の液化ガス2をまとめて単一の払い出し配管6に払い出し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス容器の搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LPG(液化石油ガス)を燃料とするLPG自動車は、オットーサイクルエンジンを主とした低公害車であり、その最大の特徴は、黒煙が全く排出されず、PM(粒子状物質)も未処置でも規制値以下で、低NOxであるという点にある。また、DME(ジメチルエーテル)を燃料とするDME自動車は、ディーゼルサイクルエンジンを主とした低公害車であるが、このようなDME自動車においても同様の排出ガス特性が得られる。しかも、LPGやDMEは常温で10気圧以下という比較的低圧な条件下で液化し、体積が250分の1となることから可搬性に優れ、CNG(compressed natural gas:圧縮天然ガス)自動車の200気圧と比較しても積載性や容器構造の面で有利である。
【0003】
このようなLPGやDME等の液化ガスを燃料として軽油エンジンと同等の長距離走行を実現するためには、複数本の液化ガス容器を車両に搭載しなければならないが、LPGやDMEのような液化ガスの場合、液化ガス容器内の液相が気相側の蒸気圧で加圧された状態となっており、一部の液化ガス容器にだけ直射日光が当たる等して温度差が生じた場合、この温度差により各液化ガス容器内の蒸気圧が異なるものとなって、蒸気圧の高い液化ガス容器から先に液化ガスが払い出されて減ってしまうことになるため、各液化ガス容器内の液面レベルを検出して各液化ガス容器からの液化ガスの払い出し量を個別に制御し、各液化ガス容器の液面レベルを揃えて片減りさせないようにする必要があった。
【0004】
即ち、何れかの液化ガス容器における液化ガスが先行して消費され尽くすと、一部の液化ガス容器から液化ガスの蒸発ガスがエンジンに供給され、供給熱量不足によりエンジンが停止する虞れがあるため、液化ガスの蒸発ガスがエンジンに導かれる事態を確実に回避しなければならないからである。
【0005】
尚、この種の液化ガス容器の搭載構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−266899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、各液化ガス容器内の液面レベルを検出して各液化ガス容器からの液化ガスの払い出し量を個別に制御するにあたっては、精度が高く且つ信頼性も高い液面レベルセンサを各液化ガス容器の夫々に装備しなければならず、また、その検出値に基づいて各液化ガス容器の液化ガスの払い出しを行う電磁弁を個別に制御して各液化ガス容器内の液面レベルを管理する制御系が必要となるため、設備コストの高騰を招いてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、各液化ガス容器内の液面レベルを検出して各液化ガス容器からの液化ガスの払い出し量を個別に制御しなくても、各液化ガス容器内の液面レベルを自然に揃えて片減りを防止することが可能な液化ガス容器の搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液化ガスを燃料とする車両に複数本の液化ガス容器を搭載する構造であって、各液化ガス容器の貯蔵空間内における最上部同士を気相連通配管により相互に接続して連通せしめると共に、前記各液化ガス容器の貯蔵空間内における最下部同士も液相連通配管により相互に接続して連通せしめ、該液相連通配管を介し前記各液化ガス容器の液化ガスをまとめて単一の払い出し配管に払い出し得るように構成したことを特徴とするものである。
【0010】
而して、このようにすれば、各液化ガス容器の貯蔵空間内における最上部同士が気相連通配管により相互に連通されるので、各液化ガス容器内の液面レベルより上側の気相領域における蒸気圧が均等化されると共に、各液化ガス容器の貯蔵空間内における最下部同士が液相連通配管により相互に連通されるので、各液化ガス容器内の液面レベルより下側の液相領域におけるヘッド圧が均等化されることになり、各液化ガス容器における液面レベルが同じ高さに揃い、各液化ガス容器から均等に液化ガスが払い出されて払い出し配管を介し車両のエンジンへと供給される。
【0011】
また、本発明においては、各液化ガス容器の適宜位置に液化ガスを貯蔵空間に充填するための燃料充填配管を接続すると共に、気相連通配管に液化ガスの蒸発ガスを抜き出すガス抜き配管を接続することが好ましく、このようにすれば、ガス抜き配管を通して各液化ガス容器から液化ガスの蒸発ガスを抜き出しながら、燃料充填配管を通して各液化ガス容器に液化ガスを高速大容量で供給して充填することが可能となり、各液化ガス容器に対し液化ガスを短時間で充填することが可能となる。
【0012】
更に、本発明においては、各液化ガス容器を縦置きにして並べることが好ましく、このようにすれば、各液化ガス容器が縦長の配置となることにより、液面レベルを下限(車両が揺れても蒸発ガスがエンジンに供給される虞れのない液面レベル)まで下げた時の液化ガスの残量が少なくて済み、各液化ガス容器を横置きにして並べた場合と比較して、同じ充填量でも一充填当たりの航続距離が長くなる。
【0013】
しかも、液化ガスの残量の変化に対する液面レベルの変化が、各液化ガス容器を横置きにして並べた場合よりも大きくなるので、液面レベルセンサによる液面レベルの検出が行い易くなって検出精度の向上が図られる。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明の液化ガス容器の搭載構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0015】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、各液化ガス容器内の液面レベルを検出して各液化ガス容器からの液化ガスの払い出し量を個別に制御しなくても、各液化ガス容器内の液面レベルを自然に揃えて片減りを防止することができるので、精度が高く且つ信頼性も高い液面レベルセンサを各液化ガス容器の夫々に装備したり、各液化ガス容器の液化ガスの払い出しを行う電磁弁を個別に制御して各液化ガス容器内の液面レベルを管理する制御系を構築したりする必要をなくし、設備コストの高騰を招くことなく一部の液化ガス容器から液化ガスの蒸発ガスがエンジンに供給されてしまう事態を防止することができる。
【0016】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、ガス抜き配管を通して各液化ガス容器から液化ガスの蒸発ガスを抜き出しながら、燃料充填配管を通して各液化ガス容器に液化ガスを高速大容量で供給して充填することができるので、各液化ガス容器に対し液化ガスを短時間で充填することができる。
【0017】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、液面レベルを下限まで下げた時の液化ガスの残量が少なくて済み、各液化ガス容器を横置きにして並べた場合と比較して、同じ充填量でも一充填当たりの航続距離を長くすることができ、しかも、液化ガスの残量の変化に対する液面レベルの変化が大きくなることで液面レベルセンサによる液面レベルの検出を行い易くして検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】図1の各液化ガス容器のトラクタへの搭載例を示す側面図である。
【図3】液化ガス容器を横置きにして並べた場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図中1はLPG等の液化ガス2を充填された複数本の液化ガス容器を示し、ここに図示している例では、4本の液化ガス容器1が縦置きに並べられている。
【0021】
ここで、前記各液化ガス容器1は、液化ガス2を加圧保持するために頂部と底部を半球状に丸めた縦方向に細長い円筒状の容器となっており、その容器容量の85%まで液化ガス2が充填されている(これ以上の充填は気相の割合が少なくなり過ぎて異常高温時に容器耐圧が確保できなくなることから法規で制限されている)。
【0022】
そして、前記各液化ガス容器1の頂部同士が気相連通配管3により相互に接続されて前記各液化ガス容器1の貯蔵空間4内における最上部同士が連通されていると共に、前記各液化ガス容器1の底部同士が液相連通配管5により相互に接続されて前記各液化ガス容器1の貯蔵空間4内における最下部同士が連通され、前記液相連通配管5を介し前記各液化ガス容器1の液化ガス2がまとめて単一の払い出し配管6に払い出されるようになっている。
【0023】
ここで、前記気相連通配管3の各液化ガス容器1に対する接続箇所には、蒸発ガス2’の流通を適宜に遮断し得るよう電磁弁7が装備され、また、前記液相連通配管5の各液化ガス容器1に対する接続箇所には、液化ガス2の流通を適宜に遮断し得るよう電磁弁8が装備されており、運転席のキースイッチがオンとなった時に前記各電磁弁7,8が開き且つキースイッチがオフとなった停車時には前記各電磁弁7,8が閉じて安全性が確保されるようになっている。
【0024】
尚、前記気相連通配管3の電磁弁7は安全弁付きの電磁弁となっており、各液化ガス容器1内の圧力が異常に上昇して所定値以上となった時に、図示しない緊急用のポートを開いて蒸発ガス2’を大気開放し得るようにしてある。
【0025】
更に、前記各液化ガス容器1の底部には、液化ガス2を貯蔵空間4に充填するための燃料充填配管9が逆止弁10及び電磁弁11を介して接続されていると共に前記気相連通配管3には、液化ガス2の蒸発ガス2’を抜き出すガス抜き配管12が接続されていて、該ガス抜き配管12を通して各液化ガス容器1から液化ガス2の蒸発ガス2’を抜き出しながら、前記燃料充填配管9を通して各液化ガス容器1に液化ガス2を供給し得るようになっている。尚、ガス抜き配管12を通して抜き出した蒸発ガス2’は、昇圧又は冷却することで液化ガス2に戻して再循環するようにすれば良い。
【0026】
また、ここに図示している4本の液化ガス容器1のうちの1本には、該液化ガス容器1内の液面レベルを検出する液面レベルセンサ13が装備されており、4本の液化ガス容器1を代表して液化ガス2の液面レベルが検出されるようになっている。
【0027】
而して、このようにすれば、各液化ガス容器1の貯蔵空間4内における最上部同士が気相連通配管3により相互に連通されるので、各液化ガス容器1内の液面レベルより上側の気相領域における蒸気圧が均等化されると共に、各液化ガス容器1の貯蔵空間4内における最下部同士が液相連通配管5により相互に連通されるので、各液化ガス容器1内の液面レベルより下側の液相領域におけるヘッド圧が均等化されることになり、各液化ガス容器1における液面レベルが同じ高さに揃い、各液化ガス容器1から均等に液化ガス2が払い出されて払い出し配管6を介し車両のエンジンへと供給される。
【0028】
従って、上記形態例によれば、各液化ガス容器1内の液面レベルを検出して各液化ガス容器1からの液化ガス2の払い出し量を個別に制御しなくても、各液化ガス容器1内の液面レベルを自然に揃えて片減りを防止することができるので、精度が高く且つ信頼性も高い液面レベルセンサ13を各液化ガス容器1の夫々に装備したり、各液化ガス容器1の液化ガス2の払い出しを行う電磁弁8を個別に制御して各液化ガス容器1内の液面レベルを管理する制御系を構築したりする必要をなくし、設備コストの高騰を招くことなく一部の液化ガス容器1から液化ガス2の蒸発ガス2’がエンジンに供給されてしまう事態を防止することができる。
【0029】
また、特に本形態例においては、各液化ガス容器1の底部に液化ガス2を貯蔵空間4に充填するための燃料充填配管9を接続すると共に、気相連通配管3に液化ガス2の蒸発ガス2’を抜き出すガス抜き配管12を接続しているので、ガス抜き配管12を通して各液化ガス容器1から液化ガス2の蒸発ガス2’を抜き出しながら、燃料充填配管9を通して各液化ガス容器1に液化ガス2を高速大容量で供給して充填することができ、各液化ガス容器1に対し液化ガス2を短時間で充填することができる。
【0030】
更に、各液化ガス容器1が縦置きにして並べられているので、各液化ガス容器1が縦長の配置となることにより、液面レベルを下限(車両が揺れても蒸発ガス2’がエンジンに供給される虞れのない液面レベル)まで下げた時の液化ガス2の残量が少なくて済み、各液化ガス容器1を横置きにして並べた場合と比較して、同じ充填量でも一充填当たりの航続距離を長くすることができ、しかも、液化ガス2の残量の変化に対する液面レベルの変化が、各液化ガス容器1を横置きにして並べた場合よりも大きくなるので、液面レベルセンサ13による液面レベルの検出が行い易くなって検出精度の向上を図ることができる。
【0031】
そして、このような搭載構造を採る各液化ガス容器1は、例えば、図2に一例を示す如く、トレーラーを牽引するためのトラクタ14に適用する場合、該トラクタ14のキャブ15の背面に縦置きで並べて搭載することが可能であるが、このキャブ15の背面に櫓を組んで横置きで多段に積み上げることも可能であり、また、バス等における広い天井面に横置きにして複数列で並べることも可能である。
【0032】
ただし、液化ガス容器1を横置きにする場合には、例えば、図3に示す如く、気相連通配管3を各液化ガス容器1の貯蔵空間4内に延ばして上向きに屈曲させることで最上部に連通させ、液相連通配管5を各液化ガス容器1の貯蔵空間4内に延ばして下向きに屈曲させることで最下部に連通させると良い。
【0033】
尚、本発明の液化ガス容器の搭載構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 液化ガス容器
2 液化ガス
2’ 蒸発ガス
3 気相連通配管
4 貯蔵空間
5 液相連通配管
6 払い出し配管
9 燃料充填配管
12 ガス抜き配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを燃料とする車両に複数本の液化ガス容器を搭載する構造であって、各液化ガス容器の貯蔵空間内における最上部同士を気相連通配管により相互に接続して連通せしめると共に、前記各液化ガス容器の貯蔵空間内における最下部同士も液相連通配管により相互に接続して連通せしめ、該液相連通配管を介し前記各液化ガス容器の液化ガスをまとめて単一の払い出し配管に払い出し得るように構成したことを特徴とする液化ガス容器の搭載構造。
【請求項2】
各液化ガス容器の適宜位置に液化ガスを貯蔵空間に充填するための燃料充填配管を接続すると共に、気相連通配管に液化ガスの蒸発ガスを抜き出すガス抜き配管を接続したことを特徴とする請求項1に記載の液化ガス容器の搭載構造。
【請求項3】
各液化ガス容器を縦置きにして並べたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液化ガス容器の搭載構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−241793(P2012−241793A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112207(P2011−112207)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】