説明

液化システム

【課題】膨張タービンの回転軸を静圧気体軸受で支持するにあたり、軸受にガスを供給するラインに専用圧縮機を設けずに回転軸の支持に必要な圧力のガスを軸受に安定供給可能にする。
【解決手段】液化システム100は、液化原料ガスの圧力が所定部分3b,3cで所定圧P0以上に保たれるように液化原料供給源1からの液化原料ガスを送るフィードライン3と、冷媒を循環させるための冷媒循環ライン5と、所定圧P0以上のガスの供給を受けて膨張タービン14H,14Lの回転軸を回転可能に支持する静圧気体軸受GBと、静圧気体軸受GBにガスを供給するために、フィードライン3の所定部分3b,3cと静圧気体軸受GBのガス入口49とを接続する軸受供給ライン7と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化原料ガスを液化するための液化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば水素ガス、ヘリウムガス及びネオンガスなど常温常圧で気体となる液化原料ガスを液化する液化システムが良く知られている。液化システムは、液化原料ガスを送るフィードライン、冷媒を循環させる冷媒循環ライン及び冷媒で液化原料ガスを冷却するための熱交換器を備えている。冷媒循環ラインを循環する冷媒は、圧縮機で圧縮され、膨張タービンで断熱膨張して降温し、熱交換器で液化原料ガスとの熱交換により昇温し、圧縮機へ戻る。
【0003】
膨張タービンで冷媒を断熱膨張する場合、膨張タービンの回転軸を支持するための軸受が必要になる。軸受に液体軸受が適用されると、オイル等の潤滑剤が膨張タービンを通過する冷媒に混じり、冷媒循環ラインに潤滑剤が流入するおそれがある。このため、軸受には、冷媒と同一のガスを潤滑剤とする気体軸受を適用することが好ましい(特許文献1、2及び非特許文献1参照)。
【0004】
気体軸受は、静圧気体軸受と動圧気体軸受とに大別される。静圧気体軸受は、動圧気体軸受と比べて負荷容量が高い点、液化システムの始動時及び停止時に軸受孔の表面と回転軸の表面との間の摩擦が生じにくい点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−55050号公報
【特許文献2】特開平6−94032号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】熊木ら;太陽日酸技報No.25, p. 44, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、静圧気体軸受を適用する場合、回転軸の支持に必要な所定圧以上の圧力のガスを軸受へと安定的に供給するため、高圧ガス源が必要になる。外部から静圧気体軸受へとガスを供給するためのラインが、フィードライン及び冷媒循環ラインと独立しているような場合、そのラインにガスを昇圧するための専用圧縮機を設ける必要がある。すると、液化システムのコストの増加を招く。
【0008】
静圧気体軸受へガスを供給するためのラインを、冷媒循環ラインのうち冷媒が圧縮機から膨張タービンに向かう部分から分岐させ、圧縮機出口圧力の冷媒を軸受に供給するガスに利用することも考えられる。しかし、液化量の需要が少ないときには、これに合わせて圧縮機が部分負荷運転を行うので、圧縮機の出口圧力が回転軸の支持に必要な圧力よりも低くなるおそれがある。したがって、この場合も、軸受に所定圧以上のガスを安定供給するためには、軸受にガスを供給するためのラインに専用圧縮機を設けなくてはならない。この専用圧縮機は、軸受にガスを供給するラインが独立している場合と比べて小型化可能になるかもしれないが、冷媒循環ライン上の圧縮機が定格運転しているときには無用になるおそれがある。
【0009】
このように、従来、膨張タービンの回転軸を支持するための軸受に静圧気体軸受を適用すると、軸受にガスを安定供給するために専用圧縮機が必要になる(特許文献1、2参照)。したがって、静圧気体軸受が膨張タービンの回転軸の支持に適していると考えられるにも関わらず、専用圧縮機の追加により生ずるコストに照らして、動圧気体軸受が適用されることがある(非特許文献1参照)。
【0010】
そこで本発明は、膨張タービンの回転軸を静圧気体軸受で支持するにあたり、軸受にガスを供給するラインに専用圧縮機を設けなくても、回転軸の支持に必要な圧力のガスを軸受に安定供給可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る液化システムは、液化原料ガスの圧力が所定部分で所定圧以上に保たれるように、液化原料供給源からの液化原料ガスを送るフィードラインと、冷媒を循環させるための冷媒循環ラインと、前記冷媒循環ラインを流れる前記冷媒により前記フィードラインを流れる前記液化原料ガスを冷却するための熱交換器と、前記冷媒循環ラインに設けられ、前記冷媒を膨張により温度低下させる膨張タービンと、前記冷媒循環ラインに設けられ、前記冷媒を圧縮して前記膨張タービンに導く循環系圧縮機と、前記冷媒循環ラインのうち前記循環系圧縮機から前記膨張タービンへ向かう部分を流れる前記冷媒が前記所定圧以上となる高負荷運転と、当該部分を流れる前記冷媒が前記所定圧未満となる低負荷運転とを実施可能なように前記膨張タービン及び前記循環系圧縮機の動作を制御する制御装置と、前記所定圧以上のガスの供給を受けて前記膨張タービンの回転軸を回転可能に支持する静圧気体軸受と、前記静圧気体軸受にガスを供給するために、前記フィードラインの前記所定部分と前記静圧気体軸受のガス入口とを接続する軸受供給ラインと、を備えている。
【0012】
前記構成によれば、軸受供給ラインは、フィードラインの所定部分と静圧供給軸受のガス入口との間を接続しているので、フィードラインを流れる液化原料ガスは、所定部分から軸受供給ラインにも流れていき、軸受供給ラインを介して静圧気体軸受へと供給される。そして、フィードラインを流れる液化原料ガスの圧力は、所定部分において所定圧以上に保たれている。したがって、循環系圧縮機の運転状態及び冷媒の圧力と関係なく、また、軸受供給ラインに専用の圧縮機を設けなくとも、静圧気体軸受に所定圧以上のガスを安定的に供給し、膨張タービンの回転軸を安定的に支持することができる。
【0013】
前記所定部分が、前記フィードラインのうち前記熱交換器の上流側に位置していてもよい。
【0014】
前記構成によれば、静圧気体軸受に常温のガスを供給することができる。
【0015】
前記軸受供給ラインに設けられ、前記軸受供給ラインを流れるガスの圧力を減圧するための圧力調整弁を更に備えていてもよい。
【0016】
前記構成によれば、液化原料ガスを液化するために十分に高い圧力に保つことと、静圧気体軸受に供給されるガスの圧力を回転軸の支持のため必要とされる圧力に調整することとを両立することができる。
【0017】
前記所定部分の上流側で前記フィードラインに設けられ、前記液化原料ガスを圧縮するフィード系圧縮機と、前記静圧気体軸受のガス出口から流出するガスを前記フィードラインに戻すために、前記ガス出口と、前記フィードラインのうち前記フィード系圧縮機の上流側部分との間を接続する軸受ガス戻しラインと、を更に備えていてもよい。
【0018】
前記構成によれば、静圧気体軸受から流出するガスを、液化原料ガス及び軸受に供給されるガスとして再利用することができる。
【0019】
ボイルオフガスを前記フィードラインに戻すためのボイルオフガス戻しラインを備え、前記ボイルオフガス戻しラインが前記軸受ガス戻しラインに接続されていてもよい。
【0020】
前記構成によれば、静圧気体軸受から流出するガスだけでなく、ボイルオフガスをも液化原料ガス及び軸受に供給されるガスとして再利用することができる。
【0021】
前記冷媒が、前記液化原料ガスと同一であってもよい。
【0022】
前記構成によれば、静圧気体軸受に供給されたガスが、膨張タービンで冷媒循環ラインを循環する冷媒と混合しても、異なる種類のガスの混入による問題が生じない。また、膨張タービンでは、冷媒の漏れが発生することもありえるが、仮に漏れが生じても、静圧気体軸受に供給されたガスによって、この漏れ分を補充することができる。
【0023】
前記静圧気体軸受のガス出口から流出するガスを前記冷媒循環ラインに送るために、前記ガス出口と、前記冷媒循環ラインのうち前記膨張タービンから前記圧縮機に向かう部分との間を接続する軸受ガス戻しラインを更に備えていてもよい。
【0024】
前記構成によれば、静圧気体軸受から流出するガスを冷媒として再利用することができる。なお、軸受に供給されるガスと冷媒とは同一であるので、異なる種類のガスの混入による問題を生じさせることなくガスの再利用をすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、静圧気体軸受にガスを供給するラインに専用の圧縮機を設けなくても、膨張タービンの回転軸の支持に必要とされる所定圧以上のガスを静圧気体軸受に安定供給可能な液化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液化システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す膨張タービンの構造を示す断面図である。
【図3】図1に示す液化システムの要部構成を示す概念図である。
【図4】循環系圧縮機の負荷に対する液化原料ガス及び冷媒の圧力を示す線図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る液化システムの要部構成を示す概念図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る液化システムの要部構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、全ての図を通じて同一又は相当の要素には同一の符号を付し、その重複する詳細説明を省略する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る液化システム100の全体構成を示す概念図である。図1に示す液化システム100は、常温常圧で気体となる液化原料ガスを液化する。液化システム100が対象とする液化原料ガスは、沸点が絶対零度に近い極低温であって常温常圧で気体となるもの、例えば水素ガス、ヘリウムガス及びネオンガスである。本実施形態では、特段記載しない限り、液化原料ガスに水素ガスを適用するものとして説明する。
【0029】
この液化システム100は、原料タンク1、液体水素タンク2、フィードライン3、複数の熱交換器4a〜4e、液体水素溜18及び冷媒循環ライン5を備えている。原料タンク1は、液化原料ガスの供給源であり、常温常圧の水素ガスを貯留する。液体水素タンク2は、水素ガスを液化して成る液体水素を貯留する。
【0030】
フィードライン3は、原料タンク1と液体水素タンク2との間を接続している。フィードライン3には、フィード系圧縮機11及びジュールトムソン弁12が設けられている。フィードライン3は、フィード系圧縮機11とジュールトムソン弁12との間において、5つの熱交換器4a〜4e及び液体水素溜18を順次通過する。このように、ジュールトムソン弁12は、液体水素タンク2の上流側、望ましくは液体水素タンク2の直前(すなわち、液体水素溜18の下流側)に設けられている。
【0031】
原料タンク1内の水素ガスは、フィードライン3に沿って液体水素タンク2まで送られる。この過程で、まず、水素ガスがフィード系圧縮機11で昇圧される。フィード系圧縮機11を通過した常温高圧の水素ガスは、熱交換器4a〜4e及び液体水素溜18を通過することで、高圧のまま順次冷却されていく。なお、2段目の熱交換器4bは、液体窒素を貯留した液体窒素タンクである。水素ガスは、当該熱交換器4bを通過することで、液体窒素の温度程度にまで冷却される。他の熱交換器4a,4c,4d,4e及び液体水素溜18には、冷媒循環ライン5が接続されている。水素ガスは、各熱交換器4a,4c,4d,4e及び液体水素溜18を通過するときに、冷媒循環ライン5に沿って流れる冷媒との熱交換により冷却される。液体水素溜18を通過した低温高圧の水素ガスは、続いてジュールトムソン弁12を通過する。これにより、水素ガスは、膨張して液化し、低温常圧の液体状態となる。この液体状態の水素は、液体水素タンク2へと送られ、液体水素タンク2内に貯留される。
【0032】
冷媒循環ライン5は、液化原料ガスの冷媒を循環させる。冷媒循環ライン5は、冷媒充填ライン6を介してフィードライン3と接続されている。冷媒充填ライン6は液化システム100の始動前に開放される。これにより、原料タンク1内の水素ガスを冷媒循環ライン5に充填可能になる。冷媒充填ライン6は液化システム100の稼働時には閉鎖される。これにより、冷媒循環ライン5が閉ループを成し、冷媒としての水素ガスが冷却循環ライン5に沿って循環する。このように、本実施形態では、冷媒が、液化原料ガスと同一の水素ガスである。
【0033】
冷媒循環ライン5上には、2台の圧縮機(高圧循環系圧縮機13H及び低圧循環系圧縮機13L)と、2台の膨張タービン(高圧膨張タービン14H及び低圧膨張タービン14L)とが設けられている。高圧循環系圧縮機13Hは、低圧循環系圧縮機13Lと直列的に設けられている。高圧膨張タービン14Hは、低圧膨張タービン14Lと直列的に設けられている。低圧循環系圧縮機13Lは、冷媒を圧縮して高圧循環系圧縮機13Hに導く。高圧循環系圧縮機13Hは、低圧循環系圧縮機13Lからの冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を高圧膨張タービン14Hに導く。
【0034】
冷媒は、高圧膨張タービン14Hへと導かれる過程で、1段目の熱交換器4a及び2段目の熱交換器4bをこの順で通過する。これにより、冷媒は、後述する寒冷との熱交換により、降温及び降圧していく。高圧膨張タービン14Hには、液体窒素の温度程度まで冷却された冷媒が導かれる。高圧膨張タービン14Hは、循環系圧縮機13L,13Hから導かれた低温高圧の冷媒を、膨張により降温及び降圧させる。高圧膨張タービン14Hからの冷媒は、4段目の熱交換器4dを通過して、低圧膨張タービン14Lに導かれる。低圧膨張タービン14Lも、高圧膨張タービン14Hから導かれた低温高圧の冷媒を、膨張により降温及び降圧させる。
【0035】
低圧膨張タービン14Lからの冷媒は、5段目の熱交換器4e、4段目の熱交換器4d、3段目の熱交換器4c及び1段目の熱交換器4aをこの順で通過して昇温する。1段目の熱交換器4aを通過した冷媒は、低圧循環系圧縮機13Lにより圧縮された冷媒と合流し、高圧循環系圧縮機13Hの入口へと戻される。
【0036】
また、高圧循環系圧縮機13Hからの冷媒は、2段目の熱交換器4bを通過した後、前述した膨張タービン14H,14Lに向かうものと、液体水素溜18に向かうものとで分かれる。液体水素溜18に向かう冷媒は、更に3段目の熱交換器4c、4段目の熱交換器4d及び5段目の熱交換器4eをこの順で通過して降温する。その後、当該冷媒は、ジュールトムソン弁15を通過して液化された後、液体水素溜18へと送られる。液体水素溜18内の冷媒は、フィードライン3に沿って液体水素溜18に送られた水素ガスを冷却する。液体水素溜18からの冷媒は、5段目の熱交換器4e、4段目の熱交換器4d、3段目の熱交換器4c及び1段目の熱交換器4aをこの順で通過して昇温してから、低圧循環系圧縮機13Lの入口へと戻される。このように、熱交換器4a,4c,4d,4eにおいては、低圧膨張タービン14Lから高圧循環系圧縮機13Hに向かう冷媒の寒冷と、液体水素溜18から低圧循環系圧縮機13Lに向かう冷媒の寒冷とが、液化原料ガス及び冷媒の冷却に利用される。
【0037】
図2は、図1に示す高圧膨張タービン14Hの構造を示す断面図である。なお、低圧膨張タービン14Lも、図2に示す構造と同様の構造を有している。図2に示すように、高圧膨張タービン14Hは、ハウジング21、回転軸22及びタービンインペラ23を備えている。回転軸22は、ハウジング21内で上下方向に延び、上下軸線回りに回転可能に支持されている。タービンインペラ23は、回転軸22の下端部に形成されている。
【0038】
ハウジング21は、冷媒入口24、ノズル25及び冷媒出口26を有している。冷媒入口24は、ハウジング21の底部に開口している。ノズル25は、一端において冷媒入口24と連通し、他端においてハウジング21内部のタービンインペラ23の収容部分と連通している。冷媒出口26は、ハウジング21の底中央部に開口しており、これにより前記タービンインペラ23の収容部分がハウジング21外部に連通する。
【0039】
冷媒入口24は、冷媒循環ライン5のうち高圧循環系圧縮機13Hから高圧膨張タービン14Hに向かう経路の下流端部と接続されている。冷媒出口26は、冷媒循環ライン5のうち高圧膨張タービン14Hから熱交換器4dを経て低圧膨張タービン14Lに向かう経路の上流端部と接続されている。高圧循環系圧縮機13Hからの冷媒は、冷媒入口24からハウジング21内部に流入する。冷媒入口24に流入した冷媒は、ノズル25の前記他端よりタービンインペラ23に向けて噴射される。冷媒は、タービンインペラ23の回転に伴い膨張及び降温した後に、冷媒出口26からハウジング21外部に流出する。
【0040】
ハウジング21内には、静圧気体軸受ユニットGBが設けられている。静圧気体軸受ユニットGBは、上静圧スラスト気体軸受27、下静圧スラスト気体軸受28、上静圧ジャーナル気体軸受29、下静圧ジャーナル気体軸受30、上ブロック31及び下ブロック32を有している。これら6つの部品27〜32は、略円筒状に形成され、回転軸22の外周側を取り囲むようにして設けられ、回転軸22の軸線方向に沿って並ぶように配置されている。上静圧スラスト気体軸受27及び下静圧スラスト気体軸受28は、回転軸22の上下中央部から径方向に突出するスラストカラー33を上下方向に挟むようにして配置され、また、スラストカラー33の外縁よりも外周側で互いに接触している。上静圧ジャーナル気体軸受29及び上静圧スラスト気体軸受27は、上ブロック31を上下方向に挟むようにして配置されている。下静圧ジャーナル気体軸受30及び下静圧スラスト気体軸受28は、下ブロック32を上下方向に挟むようにして配置されている。
【0041】
静圧気体軸受ユニットGBは、共通給気通路34と共通排気通路35とを有している。共通給気通路34及び共通排気通路35は、周方向に異なる位置に形成され、6つの部品27〜32を貫くようにして軸線方向に延びている。共通給気通路34は、軸受ガスを各静圧気体軸受の軸受隙間に供給される軸受ガスが流れる通路であり、共通排気通路35は、各静圧気体軸受の軸受隙間から排出された軸受ガスが流れる通路である。なお、上静圧スラスト気体軸受27の軸受隙間は、気体軸受27の下端面とスラストカラー33の上端面との間に形成される。下静圧スラスト気体軸受28の軸受隙間は、気体軸受28の上端面とスラストカラー33の下端面との間に形成される。上静圧ジャーナル気体軸受29の軸受隙間は、気体軸受29の内周面と回転軸22の外周面との間に形成される。下静圧ジャーナル気体軸受30の軸受隙間は、気体軸受30の内周面と回転軸22の外周面との間に形成される。
【0042】
各静圧気体軸受27,28,29,30は、給気溝36,38,40,42と、給気口37,39,41,43とを有している。給気溝36,38,40,42は、軸受27,28,29,30内を共通給気通路34から内周側に向けて延びている。給気口37,39,41,43は、対応する給気溝36,38,40,42を軸受隙間に連通させる。静圧スラスト気体軸受27,28の給気溝36,38は軸線方向に延びており、静圧ジャーナル気体軸受29,30の給気溝40,42は、径方向に延びている。給気溝40は、軸線方向に離れた2つの位置の各々にて、周方向に間隔をおいて設けられている。給気溝42も同様である。
【0043】
上ブロック31及び下ブロック32は、排気溝44,45を有している。上ブロック31の排気溝44は、上静圧スラスト気体軸受27の軸受隙間の内周側及び上静圧ジャーナル気体軸受29の軸受隙間の下側を共通排気通路35に連通させる。下ブロック32の排気溝45は、下静圧スラスト気体軸受28の軸受隙間の内周側及び下静圧ジャーナル気体軸受30の軸受隙間の上側を共通排気通路35に連通させる。なお、静圧スラスト気体軸受27,28の軸受隙間の外周側は、これら軸受27,28に形成された排気溝46を介し共通排気通路35に連通している。上静圧ジャーナル気体軸受29の軸受隙間の上側は、ハウジング21に形成された排気溝47を介し共通排気通路35に連通している。下静圧ジャーナル気体軸受30の軸受隙間の下側は、この軸受30の下部に形成された排気溝48を介し共通排気通路35に連通している。
【0044】
ハウジング21は、軸受ガス入口49及び軸受ガス出口50を有している。軸受ガス入口49は、共通給気通路34と連通している。軸受ガス出口50は、共通排気通路35と連通している。軸受ガス入口49は、軸受供給ライン7の下流端部と接続される。軸受供給ライン7は、膨張タービン14Hのハウジング21内の静圧気体軸受ユニットGBに高圧の軸受ガスを供給する。本実施形態では、軸受ガスの供給源が後述するとおりフィードライン3であり、軸受ガスに水素ガスが利用される。軸受ガス出口50は、軸受ガス戻しライン8の上流端部と接続される。
【0045】
軸受供給ライン7からの軸受ガスは、軸受ガス入口49を介して共通給気通路34に流入する。共通給気通路34に流入した軸受ガスは、給気口37,39,41,43より、各静圧気体軸受27,28,29,30の軸受隙間に噴射される。軸受隙間に噴射された軸受ガスは、排気溝44〜48を介して共通排気通路35に排出される。共通排気通路35内の軸受ガスは、軸受ガス出口50からハウジング21外部に流出する。ハウジング21外部に流出した軸受ガスは、水素ガスの再利用のため、軸受ガス戻しライン8に沿って再利用先へと送られる。
【0046】
このように静圧気体軸受27〜30の軸受隙間に高圧の軸受ガスが供給されることにより、回転軸22をハウジング21内で回転可能に支持することができ、回転軸22のラジアル荷重及びスラスト荷重を良好に支持することができる。起動時及び停止時に、回転軸22の外周面と、静圧ジャーナル気体軸受29,30の内周面との間で摩擦が生じない。このため、高圧膨張タービン14H及び静圧ジャーナル気体軸受29,30の長寿命化を図ることができる。なお、下静圧ジャーナル気体軸受30の軸受隙間と、ハウジング21内部のタービンインペラ23の収容部分との間には、ラビリンス構造51が設けられている。このため、気体軸受30の軸受隙間に噴射された軸受ガスが、前記タービンインペラ23の収容部分に引き込まれるのを良好に抑制することができる。本実施形態では、軸受ガスが液化原料ガスと同一であり、冷媒も液化原料ガスと同一である。このため、仮に軸受ガスがラビリンス構造51を乗り越えて冷媒に混入しても、冷媒に異なる種類のガスが混入するという問題がなくなる。
【0047】
図3は、図1に示す液化システム100の要部構成を示す概念図である。図3では、説明の便宜上、2段目から4段目までの熱交換器4b,4c,4d、液体水素溜18、冷媒充填ライン6、冷媒循環ライン5のうち液体水素溜18で折り返すルート及び低圧循環系圧縮機13Lの図示を省略する。図3には、冷却循環ライン5のうち、高圧循環系圧縮機13Hの出口から低圧膨張タービン14Lの入口に向かうまでの往路5a、及び、低圧膨張タービン14Lの出口から高圧循環系圧縮機13Hの入口に向かうまでの復路5bが示されている。
【0048】
図3中符号3a〜3dは、フィードライン3を成す経路を表わしている。符号3aは、原料タンク1(図1参照)からフィード系圧縮機11の入口に向かう第1経路、符号3bは、フィード系圧縮機11の出口から1段目の熱交換器に向かう第2経路、符号3cは、1段目の熱交換器4aからジュールトムソン弁12の入口に向かう第3経路、符号3dは、ジュールトムソン弁12の出口から液体水素タンク2(図1参照)に向かう第4経路である。
【0049】
図3に示すように、液化システム100は、制御装置10を備えている。制御装置10は、CPU、ROM及び入出力インターフェイスを主体として構成されたマイクロコンピュータである。制御装置10の入力側には、システムを起動させる指令、停止させる指令、液化量の設定値などが入力される。また、制御装置10の入力側には、液化システム100のプロセスデータ(液化原料ガス及び冷媒の温度、圧力、流量や、液化量など)の測定値が入力される。制御装置10の出力側には、フィード系圧縮機11、高圧循環系圧縮機13H、低圧循環系圧縮機13L、高圧膨張タービン14H及び低圧膨張タービン14Lが接続されている。CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを実行する。CPUは、プロセスデータの測定値を監視しながら、液化量が設定どおり得られるようにフィード系圧縮機11、高圧循環系圧縮機13H、低圧循環系圧縮機13L、高圧膨張タービン14H及び低圧膨張タービン14Lを制御する。
【0050】
ジュールトムソン効果による液化を促進するためには、液化原料ガスの流量又は液化量に関わらず、ジュールトムソン弁12の入口圧が高圧となっていることが好ましい。そこで、フィード系圧縮機11は、液化量の設定値に関わらず一定圧運転するように制御される。液化量の設定値が定格であるとき、循環系圧縮機13H,13L及び膨張タービン14H,14Lも定格運転するよう制御される。一方、液化量の設定値が定格未満であるとき、循環系圧縮機13H,13L及び膨張タービン14H,14Lは部分負荷運転するように制御される。このように、制御装置10は、高負荷運転と低負荷運転とを実施可能なように循環系圧縮機13H,13L及び膨張タービン14H,14Lの動作を制御する。このため、液化原料ガスの流量又は液化量の設定値に見合った寒冷が発生する。これにより、液化量の設定値が小さいときに高圧循環系圧縮機13H及び低圧循環系圧縮機13Lが無駄な仕事をして過剰な寒冷が発生するのを好適に防止することができる。この制御を実現する方法としては様々なものを採用しうるが、要するに負荷(液化量)の設定値に対して循環系の圧縮機負荷を変動させる制御方法であれば、どのような方法が採用されてもよい。
【0051】
図4は、循環系圧縮機13H,13Lの負荷に対する液化原料ガス及び冷媒の圧力を示す線図である。図4において、横軸は、循環系圧縮機13H,13Lの負荷(すなわち液化量の設定値に相当)を表わし、縦軸は、圧力を表している。線P3bは、フィードライン3の第2経路3bにおける液化原料ガスの圧力を表している。線P5aは、冷媒循環ライン5の往路5aを流れる冷媒の圧力を表している。線P0は、静圧気体軸受ユニットGBが回転軸22のラジアル負荷及びスラスト負荷を支持しながら該回転軸22を回転可能に支持するために必要とされる圧力の一例であり、軸受ガス入口49に供給される軸受ガスの圧力として最低限確保したい圧力(以下、「所定圧」と称す)を表わしている。
【0052】
図4に示すように、所定圧P0は、循環系圧縮機13H,13Lの負荷の変化に関わらず略一定である。第2経路3bを流れる液化原料ガスの圧力P3bも、循環系圧縮機13H,13Lの負荷の変化に関わらず略一定である。しかも、当該圧力P3bは、前述したジュールトムソン効果による液化促進のため、所定圧P0以上の高い値に保たれる。
【0053】
往路5aを流れる冷媒の圧力P5aは、循環系圧縮機13H,13Lの負荷の変化に応じて変化する。部分負荷運転を実施している或る運転状態S1で、当該圧力P5aは所定圧P0と等しくなる。当該運転状態S1よりも循環系圧縮機13L,13Hの負荷が高くなる高負荷運転を実施しているときには、当該圧力P5aは所定圧P0以上となる一方、当該運転状態S1よりも循環系圧縮機13L,13Hの負荷が低くなる低負荷運転を実施しているときには、当該圧力P5aが所定圧P0未満となる。仮に、往路5aを流れる冷媒が軸受ガスの供給源に利用されると、当該低負荷運転を実施しているときには、膨張タービン14H,14Lの各回転軸22を良好に支持することができなくなるので、軸受供給ライン7に専用圧縮機を設けなくてはならない。
【0054】
図3に戻り、本実施形態では、軸受供給ライン7の上流端が、フィードライン3の第2経路3bに接続されており、第2経路3bを流れる液化原料ガスが、軸受ガスの供給源に利用されている。前述のとおり、第2経路3bを流れる液化原料ガスは、液化量の設定値等に関わらず、所定圧P0以上の高圧を有している。このため、軸受供給ライン7上に軸受ガスを昇圧するための専用圧縮機を設けなくても、循環系圧縮機13H,13L及び膨張タービン14H,14Lの運転状態に関わらず、所定圧P0以上の軸受ガスを静圧気体軸受ユニットGBに安定して供給することができる。これにより、液化システム100のコストの増加を防ぎながら、静圧気体軸受27〜30の適用によって生ずる効果を得ることができる。つまり、負荷容量を大きくすることができるし、液化システム100が起動及び停止を繰り返しても、静圧気体軸受ユニットGB及び回転軸22の磨耗が進行しにくくなる。
【0055】
第1経路3aでは常圧の液化原料ガスが流れ、第4経路3dでは常圧の液化原料ガスが液体状態で流れる。第3経路3cでは、高圧の液化原料ガスが、なるべく降圧することなく、ジュールトムソン弁12の入口に向かって気体状態を維持して流れる。このため、第3経路3cを流れる液化原料ガスの圧力も、循環系圧縮機13H,13Lの負荷の変化に関わらず、所定圧P0以上の高い値に保たれる。本実施形態では、所定圧P0以上の液化原料ガスが気体状態で流れる部分のうち、1段目の熱交換器4aよりも上流側に配置された第2経路3bを流れる液化原料ガスを軸受ガスに利用している。このため、軸受ガスを常温とすることができる。第3経路3cを流れる液化原料ガスが軸受ガスに利用されてもよい。この場合、ハウジング21内での冷媒と軸受ガスとの間の温度差が小さくなり、軸受ガスが冷媒に与える熱的影響を抑えることができる。
【0056】
軸受供給ライン7上には、軸受ガスの圧力を減圧するための圧力調整弁16が設けられている。このような圧力調整弁16を設けると、第2経路3bを流れる液化原料ガスの圧力を液化するために十分に高く保つことと、静圧気体軸受ユニットGBに供給される軸受ガスの圧力を回転軸22の支持のため必要とされる圧力に調整することとを両立することができる。
【0057】
本実施形態では、冷媒循環ライン5上に2つの膨張タービン14H,14Lが設けられている。そこで軸受供給ライン7の下流部が、二股に分かれており、2つの膨張タービン14H,14Lの各軸受ガス入口にそれぞれ接続されている。これにより、各膨張タービンに設けられた静圧気体軸受に高圧の軸受ガスを安定供給可能になる。軸受供給ライン7は、圧力調整弁16よりも下流側で二股に分岐しているので、何れの膨張タービン14H,14Lにも減圧調整後の軸受ガスを供給することができる。
【0058】
軸受ガス戻しライン8は、2つの膨張タービン14H,14Lの各軸受ガス出口50を、フィードライン3の第1経路3aに接続している。このため、軸受ガス出口50から排出された軸受ガスは、軸受ガス戻しライン8に沿って第1経路3aへ戻され、液化原料ガス及び軸受ガスとして再利用される。なお、軸受ガスは、軸受ガス入口49において高圧とされるが、軸受隙間を通過することで降圧し、軸受ガス出口50では常圧程度となる。このため、フィード系圧縮機11よりも下流側の第2経路3bに軸受ガスを戻すことは難しい。本実施形態のように、フィード系圧縮機11よりも上流側の第1経路3aであれば、軸受ガスを昇圧することなく戻すことができる。
【0059】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る液化システム200の要部構成を示す概念図である。以下、上記実施形態との相違を中心にして本実施形態について説明する。
【0060】
図5に示すように、本実施形態に係る液化システム200においては、フィード系圧縮機がフィードライン203上に設けられていない。替わりに、原料タンク201が、上記実施形態におけるフィード系圧縮機11の出口圧力相当にまで予め昇圧されている液化原料ガスを貯留している。この場合、フィードライン203のうち、原料タンク201からジュールトムソン弁12の入口までを流れている気体状態の液化原料ガスの圧力が、高圧循環系圧縮機13H等の負荷に関わらず、所定圧P0以上の高圧に維持される。このように、フィードライン203上には、フィード系圧縮機が必ずしも設けられていなくてもよい。
【0061】
また、この場合、図5に示すように、軸受供給ライン7の上流端を、フィードライン203のうち、原料タンク201から1段目の熱交換器4aまでの経路203bに接続することができる。これにより、上記実施形態と同様、静圧気体軸受ユニットGBに高圧の軸受ガスを安定供給可能となる。1段目の熱交換器4aからジュールトムソン弁12の入口までの経路3cも所定圧P0以上の圧力の液化原料ガスが気体状態で流れる部分となるので、軸受供給ライン7の上流端は当該経路3cに接続されていてもよい。この場合、上記実施形態と同様、ハウジング21内での冷媒と軸受ガスとの間の温度差が小さくなり、軸受ガスが冷媒に与える熱的影響を抑えることができる。
【0062】
本実施形態においては、フィードライン203に、低圧の液化原料ガスが気体状態で流れる部分が存在しないので、軸受ガス戻しライン208の下流端をフィードライン203に接続し、軸受ガスを液化原料ガスとして再利用することが難しい。そこで、図5に示すように、軸受ガス戻しライン208の下流端を冷媒循環ラインの復路5bに接続することができる。このとき、軸受ガス戻しライン208の下流端を、復路5bのうち冷媒の温度が軸受ガスの温度に近い部分、例えば1段目の熱交換器4aから循環系圧縮機13Hに冷媒が戻る部分に接続してもよい。軸受ガスは冷媒と同一のガスであるので、軸受ガスを冷媒として再利用しても、冷媒に異なる種類のガスが混入するという問題がない。軸受ガスに含まれる不純物が冷媒に混入するのを防ぐため、軸受ガス戻しライン208上に不純物を吸着する吸着器が設けられていてもよい。
【0063】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る液化システム300の要部構成を示す概念図である。以下、上記実施形態との相違を中心にして本実施形態について説明する。
【0064】
図6に示すように、本実施形態に係る液化システム300は、第1実施形態と同様、フィードライン3上にフィード系圧縮機11が設けられており、軸受ガス戻しライン308が、軸受ガス出口50をフィードライン3のうちフィード系圧縮機11よりも上流側の経路3aに接続している。また、液化システム300は、液体水素タンク302内で発生したボイルオフガスを戻すボイルオフガス戻しライン309,310を備えている。ボイルオフガス戻しライン309,310は、軸受ガス戻しライン308に接続されている。このため、本実施形態においては、軸受ガスとともにボイルオフガスも、液化原料ガス及び軸受ガスとして再利用することができる。なお、熱交換器4a〜4e、液体水素溜18及び膨張タービン14H,14Lのタービン部は、これらを保冷するためのコールドボックス(低温ボックス)内に収容されている。
【0065】
液体水素タンク302内のボイルオフガスは、液体水素の沸点付近の低温となっている。そこで、ボイルオフガス戻しライン309は、液体水素タンク302から軸受ガス戻しライン308との接続点までの間で、5段目の熱交換器4e、4段目の熱交換器4d、3段目の熱交換器4c及び1段目の熱交換器4aをこの順で通過する。これにより、ボイルオフガスの寒冷を液化原料ガス及び往路5aを流れる冷媒の冷却に利用することができ、冷媒循環ライン5上の循環系圧縮機13H,13L及び膨張タービン14H,14Lの負荷を下げることができる。一方、ボイルオフガス戻しライン310は、液体水素タンク302から軸受ガス戻しライン310との接続点までの間で、何れの熱交換器も通過していない。替わりに、ボイルオフガス戻しライン310上には、液体水素タンク302から軸受ガス戻しライン308に向かうボイルオフガスを加熱するためのヒータ311が設けられている。これにより、温度差を小さくしてボイルオフガスを再利用することができる。
【0066】
これまで、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態の構成は、一例に過ぎず、本発明の範囲内で適宜変更、追加及び省略可能である。例えば、第2実施形態に係る液化システム200に、第3実施形態に係るボイルオフガス戻しラインが適用されてもよい。また、フィードライン3上に圧縮機が設けられている場合であっても、軸受ガス戻しラインの下流端を冷媒循環ラインの往路に接続してもよく、そのうえで、ボイルオフガス戻しラインが適用されてもよい。第3実施形態に係るボイルオフガス戻しライン309,310は、何れか一方が省略されていてもよい。また、両方のボイルオフ戻しライン309,310が適用される場合、液化システムは、何れのラインを利用してボイルオフガスを戻すのかを切換可能に構成されていてもよい。この切換えのため、各ラインに開閉弁が設けられていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、液化原料ガスの供給源を原料タンクとしているが、供給源は、液化原料ガスを生成するプラントであってもよく、この場合、当該プラントで生成された常圧又は高圧の液化原料ガスが、フィードライン3に送り込まれる。また、上記実施形態においては、液化原料ガスを水素ガスとして説明したが、液体ヘリウム、液体ネオンを生産するシステムにも本発明を好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、静圧気体軸受にガスを供給するラインに専用の圧縮機を設けなくても、膨張タービンの回転軸の支持に必要とされる所定圧以上のガスを静圧気体軸受に安定供給可能な液化システムを提供することができるという作用効果を奏し、膨張タービンの回転軸を支持する静圧気体軸受を備えた液化システムに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
100、200、300 液化システム
1、201 原料タンク
2、302 液体水素タンク
3、203、303 フィードライン
4a、4b、4c、4d、4e 熱交換器
5 冷媒循環ライン
7 軸受供給ライン
8、208、308 軸受ガス戻しライン
309,310 ボイルオフガス戻しライン
11 フィード系圧縮機
12 ジュールトムソン弁
13H 高圧循環系圧縮機
13L 低圧循環系圧縮機
14H 高圧膨張タービン
14L 低圧膨張タービン
15 ジュールトムソン弁
16 圧力調整弁
18 液体水素溜
22 回転軸
27 上静圧スラスト気体軸受
28 下静圧スラスト気体軸受
29 上静圧ジャーナル気体軸受
30 下静圧ジャーナル気体軸受
GB 静圧気体軸受ユニット
49 軸受ガス入口
50 軸受ガス出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化原料ガスの圧力が所定部分で所定圧以上に保たれるように、液化原料供給源からの液化原料ガスを送るフィードラインと、
冷媒を循環させるための冷媒循環ラインと、
前記冷媒循環ラインを流れる前記冷媒により前記フィードラインを流れる前記液化原料ガスを冷却するための熱交換器と、
前記冷媒循環ラインに設けられ、前記冷媒を膨張により温度低下させる膨張タービンと、
前記冷媒循環ラインに設けられ、前記冷媒を圧縮して前記膨張タービンに導く循環系圧縮機と、
前記冷媒循環ラインのうち前記循環系圧縮機から前記膨張タービンへ向かう部分を流れる前記冷媒が前記所定圧以上となる高負荷運転と、当該部分を流れる前記冷媒が前記所定圧未満となる低負荷運転とを実施可能なように前記膨張タービン及び前記循環系圧縮機の動作を制御する制御装置と、
前記所定圧以上のガスの供給を受けて前記膨張タービンの回転軸を回転可能に支持する静圧気体軸受と、
前記静圧気体軸受にガスを供給するために、前記フィードラインの前記所定部分と前記静圧気体軸受のガス入口とを接続する軸受供給ラインと、を備えている、液化システム。
【請求項2】
前記所定部分が、前記フィードラインのうち前記熱交換器の上流側に位置する、請求項1に記載の液化システム。
【請求項3】
前記軸受供給ラインに設けられ、前記軸受供給ラインを流れるガスの圧力を減圧するための圧力調整弁を更に備える、請求項1又は2に記載の液化システム。
【請求項4】
前記所定部分の上流側で前記フィードラインに設けられ、前記液化原料ガスを圧縮するフィード系圧縮機と、
前記静圧気体軸受のガス出口から流出するガスを前記フィードラインに戻すために、前記ガス出口と、前記フィードラインのうち前記フィード系圧縮機の上流側部分との間を接続する軸受ガス戻しラインと、を更に備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液化システム。
【請求項5】
ボイルオフガスを前記フィードラインに戻すためのボイルオフガス戻しラインを備え、
前記ボイルオフガス戻しラインが前記軸受ガス戻しラインに接続されている、請求項4に記載の液化システム。
【請求項6】
前記冷媒が、前記液化原料ガスと同一である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液化システム。
【請求項7】
前記静圧気体軸受のガス出口から流出するガスを前記冷媒循環ラインに送るために、前記ガス出口と、前記冷媒循環ラインのうち前記膨張タービンから前記圧縮機に向かう部分との間を接続する軸受ガス戻しラインを更に備える、請求項6に記載の液化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219711(P2012−219711A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85979(P2011−85979)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】