説明

液晶シール剤、それを用いた液晶表示パネルの製造方法及び液晶表示パネル

【課題】本発明の目的は、高真空下で処理しても可使時間に優れ、高温高湿下でさらされた環境下でも優れた信頼性を発揮することのできる、液晶シール剤を提供することにある。また、それを用いた液晶表示パネルの製造方法、及び、液晶表示パネルを提供することにある。
【解決手段】(1)パラベンゾキノン誘導体を必須成分として含有する液晶シール剤組成物であり、また、1液光及び/又は熱硬化型液晶シール剤であって、(1)パラベンゾキノン誘導体を液晶シール剤100重量部中に0.001〜1重量部含有することを特徴とする液晶シール剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶シール剤に関するものであり、さらに詳細には液晶滴下工法に対応可能な液晶滴下工法用シール剤に関する。また、液晶表示パネルの製造方法および液晶表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめ各種機器の表示パネルとして軽量、高精細の特徴を有した液晶表示パネルが広く使用されるようになってきている。これらのこのような液晶表示パネルの製造方法としては、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性のシール剤組成物を液晶表示用のガラス基板に塗布して、プレキュア処理を行った後、対向基板を貼り合わせて加熱圧締接着し、液晶封入用セルを形成した後、真空中で液晶を注入する。その後、液晶注入口を封孔し、液晶表示パネルを製造するといった方法が従来から広く行われてきた。
このような液晶表示パネルの製造に用いられるシール剤としては、例えば、特許文献1のように、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性シール剤が提案されている。
しかしながら、このような熱硬化性シール剤は、硬化させるために、120℃〜150℃の温度で数時間の時間を要し、さらに、液晶の注入に時間がかかることから、生産性を向上させることが困難となっていた。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献2、3等に記載のように、光及び熱硬化性液晶シール剤を用いた、液晶滴下工法と呼ばれる液晶表示パネルの製造方法が提案されている。
液晶滴下工法では、まず、液晶表示パネルを構成する2枚の基板の一方にディスペンサーまたはスクリーン印刷により四角形のシールパターンを形成する、次いで、その基板のシール枠内又は対となる基板に、液晶の微小滴を滴下塗布しシール剤未硬化の状態で2枚の基板を高真空下で重ね合わせ後、シール部に紫外線を照射して仮硬化を行う。その後、加熱によりアフターキュアを行い、液晶表示パネルを製造する。
このような液晶滴下工法に用いる液晶シール剤組成物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のメタクリル化物等のエポキシ(メタ)アクリレートのラジカル重合性樹脂が使用されている。このようなエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を使用した場合、該液晶シール剤組成物を使用する際、高真空下で脱泡処理しディスペンサー用のシリンジに充填する工程の際や、ディスペンサーを使用しシリンジで長時間描画する際に、シリンジ内で嫌気重合やレドックス重合の影響によりゲル化が起こりやすく、その結果、可使時間の低下やシール内に異物が発生するという問題があった。
【0004】
このため、フェノチアジンやパラメトキシフェノールなどの連鎖移動型の重合禁止剤を添加することが広く知られているが、このような重合抑制剤は、酸素の存在下では有効に機能するが、低酸素下では、重合抑制効果が低いだけでなく、添加量を多くすると、ラジカル硬化性を損ない、液晶表示パネルの表示ムラや信頼性に影響がでる恐れがあり、十分な方策とはいえなかった。
また、近年の液晶表示パネルの用途としてカーナビゲーション等より高い温度の環境下で使用される用途が増えており、高温保管などより厳しい環境下での信頼性を求められるようになってきている。このような高温環境下で使用した場合、シール部分の分解熱劣化による信頼性低下等の問題が懸念される。また、従来の液晶滴下工法用液晶シール剤を使用した場合、シール剤を熱硬化した際に、加熱により(メタ)アクリル酸エステルまたはそのオリゴマー成分のエステル部位が熱分解することによる分解生成物が液晶への汚染性低下を引き起こす原因ともなっていた。
【特許文献1】WO2004/039885号公報
【特許文献2】特開2001−133794号公報、
【特許文献3】特開2002−214626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高真空下で処理しても可使時間に優れ、高温高湿下でさらされた環境下でも優れた信頼性を発揮することのできる、液晶シール剤を提供することにある。また、それを用いた液晶表示パネルの製造方法、及び、液晶表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の事情に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明による液晶シール剤を用いることにより、従来技術では困難であった、ディスペンスの際にシール切れが少なくさらに可使時間に優れ、高温環境下でも信頼性に優れる液晶表示パネルを提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1](1)パラベンゾキノン誘導体を必須成分として含有する液晶シール剤組成物。
[2] 1液光及び/又は熱硬化型液晶シール剤であって、(1)パラベンゾキノン誘導体を液晶シール剤100重量部中に0.001〜1重量部含有する[1]に記載の液晶シール剤組成物。
[3](2)1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂を含有する[1]に記載の液晶シール剤組成物。
[4] さらに、(3)熱ラジカル重合開始剤及び/又は光ラジカル重合開始剤を液晶シール剤100重量部中に0.1〜5重量部を含有する[3]に記載の液晶シール剤組成物。
[5] さらに、液晶シール剤100重量部中に(4)フィラー1〜30重量部、(5)エポキシ樹脂1〜30重量部、(6)熱潜在性エポキシ硬化剤1〜10重量部含有する[4]に記載の液晶シール剤組成物。
[6] [1]〜[5]記載のいずれかの液晶シール剤を用い、一方の液晶表示パネル用基板にシールパターンを形成する工程と、該液晶シール剤が未硬化の状態で液晶の微小液滴を該パネル基板のシールパターンの枠内に滴下塗布する工程と、他方の該パネル用基板と液晶の微小液滴が塗布された透明基板とを重ね合わせる工程と、からなることを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
[7] [1]〜[5]記載のいずれかの液晶シール剤を用い、一方の液晶表示パネル用基板にシールパターンを形成する工程と、他方の該パネル用基板に液晶の微小液滴を滴下塗布し、該液晶シール剤が塗布されたパネル基板とを、該液晶シール剤が未硬化の状態で重ね合わせる工程と、からなることを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
[8] [6]又は[7]記載の液晶表示パネルの製造方法により得られた液晶表示パネル。
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高真空下で処理しても可使時間に優れ、高温高湿下にさらされた環境下でも優れた信頼性を発揮することのできる、液晶シール剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の液晶シール剤は(1)パラベンゾキノン誘導体を必須成分とするものであり、特に、液晶滴下工法用シール剤として有用である。また、1液光及び/又は熱硬化性樹脂の液晶シール剤である。更に(2)1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂、(3)熱ラジカル重合開始剤及び/又は光ラジカル重合開始剤を含有する樹脂組成物である。また、(4)フィラー、(5)エポキシ樹脂、(6)熱潜在性エポキシ硬化剤、(7)その他の添加剤を含有しても良い。
以下、その構成成分について具体的に説明する。
【0009】
(1)パラベンゾキノン誘導体
パラベンゾキノン誘導体としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0010】
【化1】


【0011】
(式中、R1〜R4は各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、またはフェニル基を表わす。)
式(1)を満たす、化合物としては例えば、パラベンゾキノン、トルキノン、ターシャリーブチルパラベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチルパラベンゾキノン、2,5−ジフェニルパラベンゾキノン等が挙げられ、中でも好ましくはパラベンゾキノン、トルキノン、ターシャリーブチルパラベンゾキノンが挙げられる。
【0012】
これら(1)パラベンゾキノン誘導体は、シール剤系内に発生したラジカルを直接補足する付加反応型重合禁止剤であるため、高真空で脱泡し、高真空下でシリンジにシール剤を充填した場合、つまり、シール剤系内に溶存酸素が少ない場合でも重合抑制効果が高い。このため、高真空で脱泡することが可能なため、シール剤のディスペンスの際にシール切れが起こりにくいだけでなく、室温で長時間使用してもシリンジ内部でシール剤のゲル化が起こりにくいため、従来のシール剤より長時間使用可能となる。
【0013】
一方、従来一般的に使用されているフェノチアジンやパラメトキシフェノールのような、連鎖移動型重合禁止剤は系内に酸素が存在する場合にのみ重合抑制効果が発揮される。作用機構としては、発生したラジカルがシール剤系内の酸素に結合しパーオキシラジカルを形成する、そのパーオキシラジカルに対して連鎖移動型重合禁止剤が水素を供給し、安定なラジカルを形成した後、安定なパーオキサイドを形成すると考えられている。
【0014】
本発明に使用する(1)パラベンゾキノン誘導体は、シール剤成分の熱分解を抑える効果もある。このためシール剤加熱硬化の際に、シール剤成分として使用している樹脂成分、例えば(メタ)アクリレートまたはそのオリゴマー成分の熱分解が抑制される。したがって液晶への分解生成物の溶け込みによる液晶汚染が抑制される。さらには、製造された液晶表示パネルにおいては、高温下での加熱保管下でも、シール剤が劣化しにくいため液晶の表示不良が抑えることが可能となり、従来よりも高温保管下で信頼性の高い液晶表示パネルの製造が可能となる。
【0015】
重合抑制剤として、フェノチアジン、N,N‘−ジフェニルパラフェニレン等のジフェニルアミン類、ハイドロキノン、ターシャリーブチルハイドロキノン、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール、パラメトキシフェノール、4-メトキシ−1−ナフトール等のハイドロキノン類など公知の連鎖移動型重合禁止剤を、光及び/又は熱ラジカル重合性等の所望の特性が損なわれない範囲で組み合わせて使用することも可能である。
成分(1)パラベンゾキノン誘導体の使用量は後述の液晶シール剤100重量部中に0.001〜1重量部含有することが望ましい。上記範囲であればディスペンサーを使用した塗布ライフが良好で、かつ、光及び/又は熱によるラジカル硬化性が損なわれないので得られた液晶表示パネルの表示特性、高温保管下での信頼性が良好である。
【0016】
(2)1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂
本発明に使用される、(2)1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂は、1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはこれらのオリゴマー、アリルアルコール誘導体、ビニル化合物等が挙げられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはこれらのオリゴマーとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレート及び/又はジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート及び/又はジメタクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート及び/又はジメタクリレート;ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート及び/又はジメタクリレート;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリアクリレート及び/又はジ又はトリメタクリレート;ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート及び/又はジメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又は、そのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はトリメタクリレート、又は、そのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリアクリレート及び/又はポリメタクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート及び/又はジメタクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート及び/又はジメタクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート及び/又はジメタクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸アクリレート及び/又はジメタクリレート;ネオペンチルグルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのオリゴアクリレート及び/又はオリゴメタクリレート等が挙げられる。
【0018】
また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂の(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
上記アリルアルコール誘導体としては特に限定されず、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルエステル樹脂類等が挙げられる。上記、ビニル化合物の具体例としては例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
また、1分子内にエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性官能基と、エポキシ基を併せ持った化合物も好適に使用可能である。
【0020】
本願発明に用いる成分(2)として、1分子内にエチレン性不飽和結合を有する官能基とエポキシ基等の異種の官能基を併せ持つ化合物も好適に使用可能である。この場合、1分子内にエチレン性不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基が好ましく、異種の官能基としてはエポキシ基が好ましい。この場合、成分(2)の樹脂骨格内にエポキシ基と(メタ)アクリル基を併せ持っているので、液晶シール剤中の他の成分(5)との相溶性が高くなり、シール外観が向上し、さらに接着信頼性を発現することが可能となる。
【0021】
本発明の(2)1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂は、数平均分子量が300〜2000の範囲にあり、かつFedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)が10.0〜13.0(cal/cm1/2の範囲にあることが好ましい。数平均分子量がこの範囲であると、当該ラジカル重合性樹脂の液晶に対する溶解性、拡散性が低くなり、得られる液晶パネルの表示特性が良好となるので好ましい。また後述の(5)エポキシ樹脂に対する相溶性も良好となるため好ましい。数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定できる。
【0022】
溶解度パラメータ(sp値)の算出方法にはさまざまな手法や計算方法が存在するが、本発明において用いられる理論溶解度パラメータはFedorsが考案した計算法に基づくものが好ましい(日本接着学会誌、vol.22、no.10(1986)(53)(566)など参照)。この計算法では、密度の値を必要としないため、溶解度パラメータを容易に算出することができる。上記Fedorsの理論溶解度パラメータ(sp値)は、以下の式で算出される。
【0023】
【数1】

【0024】
溶解度パラメータ(sp値)が上記範囲内にあると上記成分(2)の液晶に対する溶解性が小さく、液晶に対する汚染性が抑制され、液晶パネルの表示特性が良好となり好ましい。
【0025】
本発明の成分(2)は、上述したものを数種類組み合わせた混合物であってもよい。この場合には、これらの混合組成物の全体としての理論溶解度パラメータ(sp値)は、混合される各1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂のモル分率の和に基づき算出でき、その値は上述の10.0〜13.0(cal/cm31/2であることが好ましい。
成分(2)の使用量は、液晶シール剤100重量部中に5〜60重量部の範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、光及び/又は熱ラジカル硬化物の接着性が良好となり好ましい。
【0026】
(3)熱ラジカル重合開始剤及び/又は光ラジカル重合開始剤
本発明に用いる(3)熱ラジカル重合開始剤及び/又は光ラジカル重合開始剤に関しては、光または熱エネルギーを吸収することによって、分解してラジカル種を発生する性質を有する化合物であれば特に限定されず、公知の熱ラジカル重合開始剤及び/又は光ラジカル重合開始剤を使用することが可能である。
【0027】
上記化合物成分(3)のうち光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず公知の材料を使用することが可能である。例えば、具体的には例えば以下のものが挙げられる。具体例としては、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類等の化合物が挙げられる。
【0028】
上記化合物のうち熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類などが挙げられる。
成分(3)の使用量は、液晶シール剤100重量部中に0.01〜5.0重量部とすることが好ましい。成分(3)の量が多すぎるとディスペンス安定性が悪くなり、少なすぎると光ラジカル硬化性、又は、熱ラジカル硬化性が悪くなる。
【0029】
また、本発明に使用する熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は40℃〜80℃が好ましく、50℃〜70℃であることがより好ましい。理由は以下の通りである。
既に述べたとおり、液晶シール用硬化性樹脂組成物は加熱硬化時の粘度が低下しすぎるとシール剤への液晶のリーク等の問題が発生する。したがって、加熱硬化時の粘度低下を抑制することが好ましいが、これは硬化反応を促進させゲル化を早めることによっても達成できる。すなわち熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度を80℃以下、さらには70℃以下とすると、上記組成物が硬化される際に(通常硬化温度は80〜150℃)、ラジカルが発生しやすく硬化反応が促進され、加熱硬化時の粘度低下が軽減される。
【0030】
しかし、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が低すぎると、室温でも硬化反応が進行しやすくなりシール剤の安定性が損なわれる。すなわち熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が40℃、好ましくは50℃以上であれば、保存時や、基板への塗布工程(通常は室温で行われる)におけるシール剤の安定性に優れる。
以上から、成分(3)として使用する熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は上記範囲とすることが好ましい。
【0031】
前述のように(2)熱ラジカル重合開始剤は公知のものを用いることができ、好適には有機過酸化物、アゾ化合物等が含まれる。
有機過酸化物としては、公知のものを使用できるが、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートに分類される有機過酸化物が好ましい。上記した熱ラジカル重合開始剤は任意に組み合わせて使用できる。
10時間半減期温度とは、熱ラジカル重合開始剤を不活性ガス下、一定の温度で10時間熱分解反応を行った際に熱ラジカル重合開始剤の濃度が元の半分になるときの温度である。具体的には、以下のようにして求められる。
【0032】
熱分解反応を1次反応式として取り扱うと、以下の式の関係が成り立つ。
[数2]
ln(C/C)=kd×t
:熱ラジカル重合開始剤の初期濃度
:熱ラジカル重合開始剤のt時間後の濃度
kd:熱分解速度定数
t:反応時間
半減期は熱ラジカル重合開始剤の濃度が半分になる時間、すなわち、C=C/2となる場合である。よってt時間に熱ラジカル発生剤が半減期になる場合は以下の式が成り立つ。
[数3]
kd=(1/t)・ln2
一方、速度定数の温度依存性はアレニウスの式で表されから、以下の式が成立する。
[数4]
kd=Aexp(−ΔE/RT)
(1/t)・ln2=Aexp(−ΔE/RT)
A:頻度因子
ΔE:活性化エネルギー
R:気体定数(8.314J/mol・K)
T:絶対温度(K)
AおよびΔEの値は、J.Brandrupら著、「ポリマーハンドブック」(第4版)、第1巻、第II/1頁、John Wiley&Sons,Inc.Publication出版、(発行年1998年)(Polymer Hand Book fourth edition volum1)に記載されている。
以上から、t=10時間とすれば、10時間半減期温度Tが求められるのである。
【0033】
(4)フィラー
液晶シール剤の粘性の制御を容易にし、硬化後の液晶シール剤の強度を向上し、また、線膨張性を抑えて接着信頼性を向上させるためにフィラーを使用する。
このフィラーには通常電子材料分野で使用可能なのものであればいずれでもよい。具体的には例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラー類、また、本発明の特性を損なわない範囲で、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びこれらと共重合可能なモノマー類を共重合した共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子等の公知の有機フィラーも使用可能である。
【0034】
上記フィラーの形状としては、特に限定されず、球状、板状、針状等の定形物または非定形物が挙げられる。
液晶シール剤中のフィラーの使用量は、液晶シール剤100重量部あたり、1〜30重量部含有することが好ましく、5〜25重量部含有することが更に好ましい。液晶シール剤中のフィラーの使用量が上記範囲内であれば、硬化後の液晶シール剤の接着強度が良好となるので好ましい。
【0035】
(5)エポキシ樹脂
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物である。中でも、その軟化点温度が40℃以上であって、常温で固体であるものが好ましく、さらにその数平均分子量が500〜2000の範囲内のものが好ましい。このようなエポキシ樹脂は、液晶に対する溶解性や拡散性が低いため、製造される液晶表示パネルの表示特性が良好となる。本発明の(a)ラジカル硬化性樹脂に含まれるアクリル酸エステルモノマーおよび/またはメタクリル酸エステルモノマーあるいはこれらのオリゴマーに対して優れた相溶性を示す。なお、エポキシ樹脂の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレンを標準として測定することができる。また、エポキシ樹脂としては、分子蒸留法などにより高純度化を行ったものを使用することが好ましい。
【0036】
(5)の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等で代表される芳香族ジオール類及びそれらをエチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコール変性したジオール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られた芳香族多価グリシジルエーテル化合物;フェノール又はクレゾールとホルムアルデヒドとから誘導されたノボラック樹脂、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等で代表されるポリフェノール類と、エピクロルヒドリンとの反応で得られたノボラック型多価グリシジルエーテル化合物;キシリレンフェノール樹脂のグリシジルエーテル化合物類等が具体的な例として挙げられる。
【0037】
より具体的には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂の群から選ばれる少なくとも1つの樹脂又はその混合物であれば好適に使用可能である。
エポキシ樹脂は液晶シール剤100質量部中に、1〜30質量部含有されることが好ま
しく、5〜20質量部含有されることがさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量が上記範囲にあると、当該シール剤により得られた液晶表示パネルの接着信頼性が発現する。
【0038】
(6)熱潜在性エポキシ硬化剤
(6)熱潜在性エポキシ硬化剤としては、公知のものが使用できるが一液型で粘度安定性が良好な配合物を与えることができる点から、具体的には有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても組み合わせて使用しても良い。
これらのうち、熱潜在性エポキシ硬化剤としては、アミン系潜在性硬化剤であって、かつ、その融点、または、環球法による軟化点温度が、70℃以上であるものがより好ましい。アミン系潜在性硬化剤の融点又は環球法による軟化点温度が、70℃以上であると、室温での粘度安定性を良好に保持でき、スクリーン印刷やディスペンサー塗布において、より長時間使用することが可能となる。
【0039】
アミン系潜在性硬化剤で、その融点、または、環球法による軟化点温度が70℃以上である熱潜在性エポキシ硬化剤の具体例としては、例えば、ジシアンジアミド(融点209℃)等のジシアンジアミド類;、アジピン酸ジヒドラジド(融点181℃)、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点120℃)、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド(融点160℃)、ドデカン二酸ジヒドラジド(融点190℃)、セバシン酸ジヒドラジド(融点189℃)等の有機酸ジヒドラジド;、2,4−ジアミノ―6―[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン(融点215℃〜225℃)、2−フェニルイミダゾール(融点137〜147℃)等のイミダゾール誘導体等が挙げられる。また、味の素ファインテクノ社製、アミキュアMY−24(軟化点120℃)、アミキュアMY−H(軟化点131℃)、ADEKA社製、アデカハードナーEH4339S(軟化点120℃〜130℃)、アデカハードナーEH4357S(軟化点73〜83℃)、ピイ・ティ・アイ・ジャパン社製、オミキュアー94(融点126〜136℃)、オミキュアー52(融点220℃〜230℃)等の市販の変性アミン系熱潜在性硬化剤も好適に使用可能である。
【0040】
熱潜在性エポキシ硬化剤は、液晶シール剤100重量部中に、通常1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部の量で含有される。この範囲で熱潜在性エポキシ硬化剤が含まれていれば、得られる液晶表示パネルの接着信頼性が発現され、また、液晶シール剤の粘度安定性も維持できる。
本願発明に使用される熱潜在性エポキシ硬化剤は、水洗法、再結晶法などにより、高純度化処理を行ったものを使用することがより好ましい。
【0041】
(7)その他の添加剤
本発明では必要に応じて更に、ラジカル連鎖移動剤、変性ゴム等の応力緩和剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤、導電性粒子等の添加剤の使用が可能である。
ラジカル連鎖移動剤としてはアルファメチルスチレンダイマー類、メルカプト基含有チオール類、ジフェニルジスルフィド等のジスルフィド類、末端不飽和メタクリル酸エステルn量体類、ポリフィリンコバルト錯体類等が挙げられる。また、所望のセルギャップを確保するためスペーサー等を配合しても良い。
【0042】
[液晶シール剤の調整方法]
本願発明の液晶シール剤の調整は特に限定はない。混合には、例えば、双腕式攪拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機、遊星式撹拌機等すでに公知の混練機械を介して行って良く、最終的にフィルターを用いてろ過を実施し、真空脱泡処理後にガラス瓶やポリ容器に密封充填され、貯蔵、輸送される。なお、粘度安定性を維持するため、調整時に本願発明の液晶シール剤にかかる温度としては、−15℃〜35℃が好ましく、より好ましくは10℃〜30℃未満である。
【0043】
本願発明の液晶シール剤は、25℃においてE型粘度計による2.5rpmの粘度が50〜500Pa・sであることが好ましく、より好ましくは25℃においてE型粘度計による2.5rpmの粘度が150〜450Pa・sの範囲にある。その範囲の初期粘度特性を保持させることで、塗布ムラのない塗布作業性を発揮出来るため、好ましい。特に25℃においてE型粘度計による2.5rpmの粘度が50Pa・s以上の初期粘度であれば塗布後のシール形状保持性が優れることから好ましく、25℃においてE型粘度計による2.5rpmの粘度が150Pa・s以上の初期粘度であればより好ましい。また450Pa・s以下の初期粘度であれば、ノズル径が0.15〜0.5mm径のディスペンス塗布性が確保でき好ましい。
【0044】
本発明の液晶表示パネル用シール剤を用いて、液晶表示パネルを製造する方法としては特に限定されず、例えば、一方の液晶表示パネル用基板の外周付近に本発明の液晶滴下工法用シール剤を使用してシールパターンを形成する工程と、液晶滴下工法用液晶表示パネル用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小液滴を液晶表示パネル用基板のシールパターンの枠内に滴下塗布する工程と、他方の液晶表示パネル用基板と、液晶の微小液滴が塗布された液晶表示パネル用基板とを重ね合わせる工程と、液晶滴下工法用液晶表示パネル用シール剤に光及び/又は熱を与えて硬化させる工程とを有する方法;一方の液晶表示用パネルの外周付近に本発明の液晶滴下工法用シール剤を用いてシールパターンを形成する工程と、液晶滴下工法用液晶表示パネル用シール剤が未硬化の状態でシールパターンが形成される液晶表示パネル用基板と、液晶の微小液滴が塗布された液晶表示パネル用基板とを重ねあわせる工程と液晶滴下工法用シール剤に光及び/又は熱を与えて効果させる工程とを有する方法等が挙げられる。これらの液晶表示パネルの製造方法も本発明に包含される。
【0045】
本発明に用いる液晶表示パネル用基板の対向する面には、配向膜が形成されていても良い。上記配向膜としては特に限定されず、例えば、公知の有機配向剤や無機配向剤からなるものを用いることができる。
本発明の液晶滴下工法用シール剤を用い、本発明の製造方法によって製造された液晶表示パネルは、粘度安定性、接着性、配線部分下の遮光部硬化性に優れた液晶表示パネルを与えることができる。これらの液晶表示パネルも本発明に包含される。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これに限定されたものではない。なお、例中に記載の%および部は、それぞれ重量%、重量部を意味する。また、下記例中で用いた原材料および試験方法は以下のとおりである。
[使用原料]
(1)パラベンゾキノン誘導体
以下の2種の化合物を選定使用した。
成分(1)−1:パラベンゾキノン(精工化学社製)
成分(2)−2:2,5−ジターシャリーブチルパラベンゾキノン(精工化学社製)
(2)1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂、以下の樹脂に対し、トルエンを用いて希釈し、超純水にて洗浄する工程を繰り返して、高純度化処理を行い使用した。
成分(2)−1:合成例1のビスフェノールF型エポキシ樹脂変性モノメタクリレート
[合成例1]
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた500mlの四つ口フラスコにビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポトートYDF−8170C:東都化成社製)160g、アクリル酸72g、トリエタノールアミン0.2gを仕込み、乾燥エア気流下、110℃、5時間加熱攪拌してアクリル変性エポキシ樹脂を得た。得られた樹脂は超純水にて12回洗浄し、ビスフェノールF型エポキシ樹脂変性モノメタクリレート(分子量398)を合成した。
成分(2)−2:合成例1のビスフェノールF型エポキシ樹脂変性ジメタクリレート
以下のように合成したものを用いた(合成例2)。
【0047】
[合成例2]
攪拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた500mlの四つ口フラスコにビスフエノールF型エポキシ樹脂(エポトートYDF−8170C:東都化成社製)160g、アクリル酸72g、トリエタノールアミン0.2gを仕込み、乾燥エア気流下、110℃、5時間加熱攪拌してアクリル変性エポキシ樹脂を得た。得られた樹脂は超純水にて12回洗浄し、ビスフェノールF型エポキシ樹脂変性ジメタクリレート(分子量484)を合成した。
【0048】
(3)光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤
成分(3)−1:光ラジカル重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンであるチバスペシャリティ・ケミカルズ社製・商品名「イルガキュア184」を使用した。
成分(3)−2:熱ラジカル重合開始剤として ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) (商品名 V−601:和光純薬製、10時間半減期温度65℃)を選定使用した。
【0049】
(4)フィラー
無機フィラーとして、アドマテックス社製球状シリカ、「アドマファインA−802」(1次平均粒子径0.7μm)を使用した。
(5)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1: o−クレゾールノボラック型固形エポキシ樹脂(EOCN−1020−55:日本化薬社製、環球法による軟化点55℃、エポキシ当量215g/eq)を選定使用した。
(6)潜在性エポキシ硬化剤
潜在性エポキシ硬化剤1: 1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(アミキュアVDH−J:味の素ファインテクノ社製、融点120℃)を選定使用した。
(7)その他の添加剤
シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシ(商品名「KBM−403」:信越化学工業社製)、および、連鎖移動剤としてチオリンゴ酸を選定使用した。
【0050】
(液晶表示パネルの液晶表示状態テスト)
透明電極及び、配向膜を付した40mm×45mmガラス基板(EHC社製、RT−DM88PIN)上に、5μmのガラスファイバーを1重量部添加した液晶シール剤を、ディスペンサー(ショットマスター;武蔵エンジニアリング社製)にて0.5mmの線幅、50μmの厚みで35mm×40mmの枠型に描画し、貼り合わせ後のパネル内容量に相当する液晶材料(MLC−11900−000:メルク社製)をディスペンサーを使用して精密に滴下した。さらに対となるガラス基板を90Paの減圧下で重ね合わせ、荷重をかけ固定した。
貼り合せた液晶表示パネルについて、実施例1、実施例2、実施例4、実施例5、比較例1、比較例2についてはウシオ電機製紫外線照射装置を使用し、100mW/cm2の紫外線照射照度で3000mJの照射エネルギーで光硬化を行った。光源にはメタルハライドランプを使用し、積算光量の測定には340nm〜390nmの測定波長範囲を有し、ピーク感度波長が365nmの紫外線積算光量計(トプコン社・UVR−T35)を使用した。紫外線による光硬化後、さらに、循環式オーブンにて120℃、60分加熱硬化し、液晶表示パネルを作製した。
【0051】
実施例3、比較例3については、循環式オーブンにて70℃、30分で仮硬化し、さらに120℃、60分加熱硬化し、液晶表示パネルを作製した。
作製した液晶表示パネルを、直流電源装置を用い5Vの印加電圧で駆動させた際の液晶シール剤近傍の液晶表示機能が駆動初期から正常に機能するか否かでパネル表示特性の評価判定を行った。該判定方法は、シール際まで液晶表示機能が発揮出来ている場合を表示特性が良好であるとして記号○で、またシール際の近傍0.3mmを超えて表示機能の異常を見た場合を表示特性が著しく劣るとして記号×と表示した。
【0052】
(液晶表示パネルの高温保管後表示状態テスト)
上記液晶表示パネルを循環式オーブン内で100℃、144時間加熱保管後のその液晶パネルを、直流電源装置を用い5Vの印加電圧で駆動させた際の液晶シール剤近傍の液晶表示機能が駆動初期から正常に機能するか否かでパネル表示特性の評価判定を行った。該判定方法は、シール際まで液晶表示機能が発揮出来ている場合を表示特性が良好であるとして記号○で、またシール際の近傍0.3mmを超えて表示機能の異常を見た場合を表示特性が著しく劣るとして記号×と表示した。
【0053】
(シール剤のディスペンスライフテスト)
液晶シール剤50gを、容量200mlのステンレス製カップに入れ、脱泡装置に入れ、EME社製脱泡装置・シリンジ充填装置、UFO−S5にて自転500rpm、公転700rpm、真空度−100kPaの条件で5分間脱泡し、その後、5分間かけて大気圧に開放し、脱泡処理を2回行った。さらに、自転400rpm、公転600rpm、真空度−95kPaの条件で、日立製ディスペンサーSLD520A用、ステンレス製シリンジに移送した。
上記シリンジを日立製ディスペンサーSLD520Aにセットし、圧力0.4MPa、高さ35μm、描画速度100mm/s、断面積6000μmの塗布条件で370mm、横470mm、厚み0.7mmの無アルカリガラス上に塗布を行い、1日ごとにディスペンス塗布性の確認を行った。判定方法は、5日以上塗布可能であった場合、ディスペンスライフが良好であるとして記号〇で、また、ディスペンス塗布可能な日数が5日未満であった場合ディスペンスライフが劣るとして記号×と表示した。
【0054】
(実施例1)
O−クレゾールノボラックエポキシ樹脂(EOCN−1020−55 日本化薬社製)5部を、合成例1のビスフェノールF型エポキシ樹脂変性モノメタクリレート35部に100℃で1時間加熱溶解させて均一溶液とした。冷却後さらに、合成例2のビスフェノールF型エポキシ樹脂変性ジメタクリレート40部、パラベンゾキノン0.01部(精工化学社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバスペシャリティケミカル社製)2部、無機フィラーとして球状シリカ(アドマファインA−802、アドマテックス社製)を15部、熱潜在性エポキシ硬化剤として、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(アミキュアVDH−J 味の素社製)3部、及び、添加剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1部を加え、ミキサーで予備混合し、次に3本ロールで固体原料が5μm以下になるまで混練し、目開き10μmのフィルター(ADVANTEC社製、MSP−10−E10S)でろ過した後、遊星式攪拌機により真空攪拌脱泡処理して液晶シール剤(P1)を得た。
【0055】
(実施例2〜5、比較例1〜3)
[表1]に示した所定配合量の各原材料を実施例1と同様な製造方法で液晶シール剤、実施例2〜5(P2〜P5)、比較例1〜3(C1〜C3)を得た。
表1にその結果を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
[表1]の結果から明らかなように、本願発明の液晶シール剤は、液晶表示パネルのシール近傍の初期表示特性、高温保管後表示特性、および、得られた液晶シール剤組成物のディスペンスライフに非常に優れることが確認された。
【0058】
一方、比較例1はパラベンゾキノン誘導体を使用しなかった例であるが、ディスペンスライフが劣っている。比較例2、比較例3は本発明範囲外の重合抑制剤を使用した例であるが、液晶表示パネルの表示特性が著しく劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)パラベンゾキノン誘導体を必須成分として含有する液晶シール剤組成物。
【請求項2】
1液光及び/又は熱硬化型液晶シール剤であって、(1)パラベンゾキノン誘導体を液晶シール剤100重量部中に0.001〜1重量部含有する請求項1に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項3】
(2)1分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有するラジカル硬化性樹脂を含有する請求項1に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項4】
さらに、(3)熱ラジカル重合開始剤及び/又は光ラジカル重合開始剤を液晶シール剤100重量部中に0.01〜5.0重量部を含有する請求項3に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項5】
さらに、液晶シール剤100重量部中に(4)フィラー1〜30重量部、
(5)エポキシ樹脂1〜30重量部、(6)熱潜在性エポキシ硬化剤1〜10重量部
含有する請求項4に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のいずれかの液晶シール剤を用い、一方の液晶表示パネル用基板にシールパターンを形成する工程と、該液晶シール剤が未硬化の状態で液晶の微小液滴を該パネル基板のシールパターンの枠内に滴下塗布する工程と、他方の該パネル用基板と液晶の微小液滴が塗布された透明基板とを重ね合わせる工程と、からなることを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5に記載のいずれかの液晶シール剤を用い、一方の液晶表示パネル用基板にシールパターンを形成する工程と、他方の該パネル用基板に液晶の微小液滴を滴下塗布し、該液晶シール剤が塗布されたパネル基板とを、該液晶シール剤が未硬化の状態で重ね合わせる工程と、からなることを特徴とする液晶表示パネルの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の液晶表示パネルの製造方法により得られた液晶表示パネル。

【公開番号】特開2009−42409(P2009−42409A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206101(P2007−206101)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】