説明

液晶ディスプレイの使用およびそれらのリサイクル方法

【課題】LCD構成部材のリサイクル処理法を提供する。
【解決手段】LCDが、他の原材料の代替品として少なくとも部分的に使用される。一般に、LCDは、900〜1700℃の温度範囲で熱処理される。対象は、使用済みLCDおよび製造不良LCDを用い、構成部材の分別無しで好ましくは1250〜1350℃の高温処理を行い、毒性産物の生成無しに、貴金属の回収、スラグの道路建設での使用、プラスチックフィルムの燃焼熱のガラスの融解に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)の使用およびそれらのリサイクル方法に関する。
製造されるLCD数およびディスプレイ当たりの平均表示域は、長年にわたって連続的に増加している。LCDは近年TVセットにもまた使用されているので、数年にわたって大幅な成長率もまた予期されうる。
最も重要なLCD用途、たとえばノートブック、モニターおよびTVセットなどは、寿命が長い製品であるが、処分またはリサイクルがより一層重要な役割を果たす。これまで通常行われていた電子機器部品の埋め立て処分は、リサイクル方法によりますます置き換えられており、特にEU directive 2002/96/EC "Waste Electrical and Electronic Equipment"("WEEE")によれば、LCDは、除去および処分またはリサイクルされなければならない。
【背景技術】
【0002】
リサイクルには3つの異なる手段が存在する:
1.LCDは分解され、個々の部品が元の製品に再利用される(たとえば、液晶またはガラスを回収し、新しいLCDの製造に使用される)。
2.LCDは分解され、個々の部品は他の産業または他の製品に使用される。
3.LCDの個々の部品、好ましくは除去された部品は、熱回収の対象とされる。この場合、プラスチックの燃焼は、エネルギー回収に役立つ。
【0003】
新規なLCD製造用のLCDガラスのリサイクルは、たとえば、JP 2001/305501 A、JP 2001/305502 A、JP 2000/24613 AおよびJP 2001/337305 Aに開示される。ガラスは通常表面汚染を含み、加えて一般に異なるガラスは異なる用途に使用されるので、収集を区別しなければならず、技術的に高度な複雑性および高コストとなるため、このタイプのリサイクルには不利である。したがって、たとえば1000℃領域で一般に融解するソーダ石灰ガラスがSTN(超ねじれネマティック)LCDで通常用いられ、1300℃領域で一般に融解するホウケイ酸塩ガラスがTFT(薄膜トランジスタ)LCDに通常使用される。
【0004】
LCD処分の特別な方法が、Berlin company "VICOR"のパイロットプラントで運転され、ディスプレイは手動でケーシング、電子備品および偏向フィルムから分離され、その後約1cmの大きさに切り刻まれる(EDV, Elektronikschrott, Abfallwirtschaft 1993, pp. 231-241)。液晶はその後、窒素/アルゴン雰囲気、最大400℃、大気圧下で炉中で蒸留される。冷却トラップで凝集後、地下埋め立て処分地で最終的な貯蔵にまわされる。炉温は、分子構造によりダイオキシン形成のリスクがある場合以外は、処理中600℃を越えてはならない。生じうる他の材料成分、即ちガラス、プラスチックおよび回路基板、ならびに構造要素は、慣用のリサイクル方法により加工される。該方法では、液晶の分離は、ディスプレイ全体の重量に対し非常に少量である一方(ディスプレイ1トン当たり液晶約1kg)、多数の異なる個々の物質の混合物に相当するため技術的に非常に複雑であり、殊に液晶がその後埋め立て処分されるので、非常に高価であるため不利である。回収された液晶の新規なLCDへの使用は、今日の技術水準では不経済である。これは、JP 2002/126688 Aに記載される、液晶の溶媒でのさらなる抽出方法にもまた適用される。
【0005】
たとえばケーシング部などのプラスチックだけでなく、偏向フィルムおよび他のフィルムは、一般に分離され、加熱回収または他の製品への使用のいずれかの対象となる。そのようなプラスチックのサーマルリサイクルは、たとえば、JP 2002/159955 Aに記載される。
他の製品への個々の部品の使用もまた知られている。したがって、Hockenheim(SAG)の"Strassburger Aufbereitungsgesellschaft"は、LCDを発泡ガラスにするために膨らませる方法を使用する(学位研究課題:"Recycling verfahren fuer Fluessigkristalldisplays"[Recycling Processes for Liquid Crystal Display], Prof. Paffrath, Prof. Schoen, Scala, TU-Darmstadt, 1997-98)。ここで使用されるディスプレイは、製造不良品に主に由来する。それらはLC液体を含み、板ガラスおよび装置(apparatus)ガラスと混合され、切り刻まれて、40μmの粒子サイズの粉塵に粉体化し、発泡剤と混合される。約5〜15nmの直径の発泡ガスビーズを、その後800〜850℃で発泡させる。製品原材料は、既知の水耕栽培(hydroculture)からの膨張粘土に類似し、建築産業、園芸および造園および排水技術における軽量骨材、充填剤、断熱材料、キャリア粒子または吸収材料として使用しうる。
【0006】
ガラスのその後の粉砕を含む、機械的除去、燃焼またはガス化による偏向フィルム除去のさらなる方法およびガラス代替物としてのそれらの使用は、JP 2001/296508 AおよびJP 2001/296509 Aに記載される。これらの方法の欠点は、当該方法から得られたガラスが、非常に汚染され、組成が大きく異なるということである。したがってこれらは、低価値用途にのみ使用される。したがってJP 2000/084531 Aは、LCDが10mm未満の粒子サイズに最初に粉砕される、LCDリサイクル方法を開示する。該方法で粉砕されたLCDは、その後鉄を除去するために1200℃で溶練炉で用いられる。該方法の欠点は、特に10mm未満の粒子サイズへのLCDの手間のかかる粉砕であり、鉄除去のために用途が限定される。
【発明の概要】
【0007】
加えて、エネルギー消費が連続的に増加しており、エネルギー節約のために世界中で大変な努力がなされている。特に工業的な製造においては、方法簡易化、熱回収および/または原材料の置き換えを通じたコストおよび/またはエネルギー消費の削減が試みられている。
したがって、従来技術に基づけば本発明の目的の1つは、従来既知の欠点を有しないLCDリサイクルの経済的な方法の探索にあった。特に液晶および/または偏向フィルムの手間のかかる分離、および異なるタイプのガラスへのディスプレイの手間のかかる仕分けは、方法のエネルギー効率を考慮して避けるべきであった。本発明のさらなる目的は、LCDの新規で見込みのある用途の提供にあった。
【0008】
驚くことに、簡易で、加えて経済的な方法で、LCDを材料リサイクルの対象としうることが見いだされた。
したがって本発明は、LCDが少なくとも部分的に、好ましくは完全に他の原材料の置き換えとして用いられることを特徴とする、LCDの材料リサイクル方法に関する。一般に、LCDは、ここで熱的に900〜1700℃の範囲の温度で、好ましくは1000〜1400℃、特に好ましくは1200〜1400℃の温度で処理される。ここで、熱処理は、特に1200℃より高い温度で処理され、したがって高品質のホウケイ酸ガラスでさえ融解する温度である。
【0009】
本明細書において、「LCD」という用語は、2枚のガラス基板の間に配置される材料、たとえば液晶、透明フィルムおよび接着剤、ならびにディスプレイを連結する電子部品(たとえば電極)をまた、少なくとも1つ含みうる、「ディスプレイ」を意味するものとする。プラスチックケーシング、バックライトおよび適合する場合は偏向フィルムは、あらかじめ分離され、個別にリサイクルされる。しかし、それらはまた、本発明の方法の他の部品にまた直接的にリサイクルされる。LCDは、ガラスが30〜99.8重量%、プラスチックフィルムが0〜60重量%、電子部品および液晶が0.1〜20重量%から本質的になる。
【0010】
本発明の方法では、用いられるLCDは、使用済みLCDおよび製造不良品からのLCDが好ましい。
本明細書において、「熱処理」という用語は、エネルギーキャリア、たとえばガス、石炭およびオイルを通じたエネルギー供給、および/またはLCDに存在する熱エネルギーを利用してLCDを処理することを意味するものとする。熱処理は、通常該目的に必要な設備、たとえば固定炉、融解炉、平炉または回転管炉などを有する熱処理装置、たとえば動力装置(power station)、ガス化プラントおよび燃焼装置、好ましくは燃焼装置で行われる。
【0011】
第一の好ましい態様では、LCDは、細かく砕かれることなく用いられる。該態様は、さらなる技術的な複雑さおよび追加のコストに関連するLCDを細かく砕くことを省略できる点で有利である。第二の好ましい態様では、LCDは細かく砕かれる。しかし細かく砕く種類およびサイズは個々では重要でない。したがって、LCDは破壊されるか、切り刻まれるかまたは粉砕されうる。細かく砕く種類によって、断片の平均サイズは、(破壊の場合)デシメーターの範囲であり、(切り刻まれる場合)センチメーターの範囲であり、(粉砕される場合)ミリメーターの範囲である。
【0012】
本発明の方法は、液晶の複雑な分離が不必要であり、すべての有機生成物が本発明の方法の高温処理により分解されるので、たとえば、ダイオキシンなどの毒性産物生成のリスクを避けることができる点で有利である。
本発明の方法のさらなる利点は、出発材料が、粉砕、破砕、塊状および/または細かく砕かれない状態で用いられ得ることである。
【0013】
加えて、本発明の方法は、材料に加えて、適合する場合はさらにまたLCDの少なくとも部分的なサーマルリサイクルが行われる経済的な方法である。
材料および適合する場合はさらに本発明の少なくとも部分的なサーマルリサイクルが、種々の好ましい態様として行われる。
【0014】
第一の好ましい態様において、LCDは、900〜1400℃の温度範囲、好ましくは1200〜1400℃で選択的に融解される。このように、ディスプレイ製造に用いられる異なる種類のガラスでさえ、ともにリサイクルすることが可能である。ガラスは、一部ソーダ石灰ガラスおよびホウケイ酸ガラスの混合物であるにもかかわらず、純粋な形態で回収される。加えて、たとえば、電極などに由来する金属部分は、該態様では定着し(settle)、ガラスと分離されうる。
温度を連続的に上昇させて、最初に低融解、その後より高融解部分を融解させるという選択的融解方法を実施する手順は、当業者に既知である。
【0015】
このようにして得られた生産物は、たとえば絶縁材料または増量材料(bulking material)などの工業建築材料または道路建設に用いられる。
第二の好ましい態様において、LCDは、他の金属含有製品、たとえば金属含有スラッジおよび/または触媒と混合され、1200〜1400℃、好ましくは1250〜1350℃の温度範囲で熱処理される。
ここで、混合物全体に対するLCDの割合は、好ましくは5〜50重量%の範囲である。
【0016】
該態様において、LCDは、金属含有製品中に存在する卑金属、たとえば鉄、鉛、亜鉛および錫と結合し、貴金属からそれらを分離するために用いられる。本発明中の貴金属は、より狭い意味での貴金属、たとえば金、銀プラチナ、水銀、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウム、および半貴金属(seminoble metal)のニッケル、銅およびコバルトもまた含む。混合物は、融解るつぼ、溶練炉または回転管炉で融解され、その後るつぼに注入される。冷却後、融解物を破壊する。より低い部分が金属を含有し、本質的に貴金属を含むのに対し、より高い部分が卑金属を有するスラグを含む。貴金属を含む部分は、金属回収に回され、卑金属を含むスラグは、たとえば道路建設に使用される。
【0017】
該態様のLCDは、通常使用される、卑金属と結合させるため必ず添加されなければならない炉用砂の少なくとも一部を置き換えるので、該態様は経済的な効率の点で有益である。加えて、上記で説明のように、少なくとも貴金属は分離および回収されるので、LCDの電子部品の少なくとも一部、好ましくは全部が、該態様でまたリサイクルされうる。
【0018】
更に重要な利点は、LCDに存在するプラスチックフィルムによる高いエネルギーインプットである。これは、以下の計算により示される:
典型的に1トンのLCDは、
830kgのガラス(83重量%)
149kgのプラスチックフィルム(14.9重量%)
20kgの電子部品(2重量%)
1kgの液晶(0.1重量%)、からなる。
【0019】
これは、ガラスおよびプラスチックフィルムのみが考慮されるエネルギー対価の上昇を与える。
したがって、たとえばPEフィルムの発熱量は46,000kJ/kgである。150kgのプラスチックフィルムは6,900,000kJの発熱量の上昇をもたらす。使用されるガラス1kgの融解に必要なエネルギーは、3000〜6500kJの範囲である。したがって、830kgのガラスの融解には2,490,000〜5,395,000kJ必要である。
【0020】
これは具体的なエネルギー対価を示しているので、プラスチックフィルムの発熱量は、ガラス融解に要するエネルギーを越えるものであり、すなわち、15重量%のプラスチックフィルムのみで、LCDガラスを融解するのに充分である。その結果、さらなるエネルギーは理論的には必要としない。
加えて、エネルギーインプットは、プラスチックの割合を、有利なことにまたプラスチックケーシングの導入を通じて、増加させるとさらに高まる。
【0021】
したがって、貴金属回収用の本発明の上記した方法において、原材料および/または添加材料としてのLCDの使用は、さらに必要なエネルギーの削減の一因となり、すなわち炉用砂を使用するものと比較してエネルギーを節約する。
該態様のさらなる利点は、LCD中に存在するプラスチックフィルムが金属含有製品を還元するための還元剤として使用できるという事実である。粗金属回収用の金属含有鉱石または生成物の還元的融解において、炭素含有製品、たとえば石炭が、一般に添加される。これは、金属が高い融解温度で還元剤の添加なしで酸化され、さらなる製造工程で、最初に元の金属に還元されなければならないからである。したがって、LCDに存在する炭素含有プラスチックフィルムの使用は、該工程での還元剤として通常使用される炭素含有製品の少なくとも一部、好ましくは全部の置き換えまたは節約が可能である。
【0022】
第三の好ましい態様として、LCDは、回転管炉で原材料および/または添加材料として、1100〜1300℃の温度範囲、好ましくは1150〜1250℃で熱処理される。回転管炉でのLCDの熱処理は、好ましくはその内部層に保護フィルムを形成する。
組成物全体に対する原材料および/または添加材料としてのLCDの割合は、本明細書では1〜20重量%の範囲が好ましい。
【0023】
回転管炉は、通常、産業廃棄物の燃焼中、侵襲性のガスおよび物質に攻撃されるシャモット内面を有する。その結果、これらのシャモット煉瓦は、定期的に交換されなければならない。ケイ酸塩含有製品、たとえば砂の添加は、シャモット内面の寿命を大幅に改善する、保護膜を壁面上に形成することができる。
驚くことに、LCDがケイ酸塩含有生成物の代わりに使用され、同様にシャモット内面上に保護膜を形成しうることが見いだされた。このようにして、購入されるケイ酸塩含有製品、たとえば炉用砂などの置換材料として、LCDが回転管炉で使用可能である。該態様ではプラスチックフィルムの燃焼熱をLCDガラスの融解に利用できるので、LCDの使用はまた、該態様で必要とされるエネルギーの削減をもたらす。
【0024】
したがって、本発明はまた、熱処理装置でのLCDの使用に関する。
本発明の使用において、使用されるLCDは好ましくは使用済みLCDおよび製造不良品からのLCDである。
好ましい態様において、LCDは熱処理装置の原材料および/または添加される材料として使用される。熱処理装置、特に回転管炉での、その内部層に保護膜を形成するためのLCDの使用が特に好ましい。
更に好ましい態様として、LCDは熱処理装置でエネルギーサプライヤーとして使用される。
【0025】
さらに本発明は、金属回収でのLCDの使用に関する。第一の好ましい態様では、LCDは、金属回収における原材料および/または添加材料として使用される。しかしながら、さらに金属回収においてエネルギーサプライヤーとしてのLCDの使用もまた好ましい。
卑金属および貴金属の混合物を含む組成物からの貴金属の回収でのLCDの使用が、特に好ましい。これらの組成物は、天然由来の製品、たとえば鉱石、または工業製品、たとえば触媒、電気もしくは電子スクラップ、金属含有スラッジおよび卑金属および貴金属の混合物を含む他の組成物のいづれかでありうる。特に、LCDは、本明細書では原材料、および/または通常用いられる炉用砂および/または用いられる炭素含有製品の代わりに、少なくとも部分的に用いられる添加材料として使用される。
本発明は、実施例を参照して以下に詳細に説明されるが、それに限定されるものではない。
【0026】
例1(選択的融解)
STN−LCDおよびTFT−LCD、いずれの場合も、2枚のガラス基板、2枚の偏向フィルムおよびコーティングを含む液晶からなり、約1〜3cmに個別に細かく砕かれる。それぞれ個別に100g量りとり、その後混合する。酸化アルミニウムガター(gutter)を20°の角度で取り付け、混合物をより高い位置部分(higher-lying part)に導入する。酸素バーナーでゆっくりと1400℃に加熱する。LCDの個々の部分は、950℃から融解し始め、ガスが活発に発生し、偏向フィルムは燃焼し、ガターの下方に流れる。画分の巧みな収集により、約40%のSTNガラス、約40%のTFTガラス、およびSTNおよびTFTガラスの混合物を含む20%の画分を得ることができる。
【0027】
例2(冶金)
水平に位置した約3.5mの直径、4mの長さを有するガス燃焼炉で、実験を行う。
該実験に用いるLCD混合物は、約40%のTFT−LCDおよび約60%のSTN−LCDからなる。LCDは、ほとんど破砕されていない形態であり、一部、移動操作により10〜50cmの直径の破砕形態である。一部において、LCD中に電子部品がまだ存在する。LCDは、LCDを分解、収集および貯蔵する、電気リサイクル会社に本質的に由来する。
【0028】
バケットホィールローダー(bucket wheel loader)を使用して、金属スクラップ、LCD混合物、炉用砂および石炭を含む添加材料を、約10mの容量の内部刃を有するミキサーに導入し、ゆっくり混合する。正確な組成を表1に記載する。混合後、LCDの大部分が3〜30cmのサイズを有するように、混合操作中、LCDは少なくともある程度破砕される。混合物をその後コンベアベルトにより連続的に炉中に導入し、約550℃で予熱し、数時間かけて約1350℃に加熱して、融解する。融解物を、その後鉄製容器またはれんが張りトラフに移す。冷却後、電子部品中に存在する金属スクラップおよび銅製部品からの貴金属を有する金属画分は、ノッキングにより、容易にLCDのガラス画分を含むスラグ、添加炉用砂および添加材料から分離される。
得られたスラグは、道路建設用のすべての要求を満たす。
【0029】
以下の実験が行われる:
【表1】

【0030】
実験6
実験2の組成の混合物4.8tを完全に冷却された炉に混合物として導入し、その後ゆっくり1300℃に加熱する。一部生成するススを、酸素を燃料ガスに添加することにより同時に直接的に燃焼させる。実験1〜5と比較した相違は、金属画分およびスラグ形成に関して観察されなかった。
【0031】
実験7
600kgの上記のLCD、3000kgの金属スクラップ、600kgの炉用砂および600kgの添加材料を、完全に冷却した炉に個別の成分として導入し、その後ゆっくりと1300℃に加熱する。導入により、より大きいLCDのみが破砕され、より小さいものはほんのわずかに破砕される。一部生成するススを、酸素を燃料ガスに添加することにより同時に直接的に燃焼させる。実験1〜5と比較した相違は、金属画分およびスラグ形成に関して観察されなかった。
【0032】
実験8
実験2の組成の混合物4.8tを完全に冷却された炉に混合物として導入し、その後ゆっくり1400℃に加熱する。一部生成するススを、酸素を燃料ガスに添加することにより同時に直接的に燃焼させる。実験1〜5と比較した相違は、金属画分に関しては観察されなかったが、スラグ形成は、いくぶんガラス状に主観的には判断される。
【0033】
例3(産業廃棄物焼却炉)
約100kgのLCDをそれぞれ含む176個の(120l)ドラム、すなわち、合計で約18tのLCDを使用する。本明細書のLCDは、ほとんど破砕されていない形態、すなわち直径10〜50cmのサイズである。ここで、該混合物は、約70%のTFT−LCDおよび約30%のSTN−LCDからなる。一部において、LCD中に電子部品がまだ存在する。LCDは、LCDを分解、収集および貯蔵する電気リサイクル会社に本質的に由来する。
【0034】
燃焼される産業廃棄物、たとえば、酸、汚染された溶媒または固体を、直径3.5m、長さ11mの巨大な産業廃棄物回転管炉で、ガスを用い、約1200〜1300℃の温度で燃焼する。ドラム中に存在する産業廃棄物およびLCDを、グラブの手法で炉の上部に導入する。炉が、1200〜1300℃の一定温度に維持されるので、ドラムは、導入時に直ちに破裂する。LCDは、24時間にわたり、別に使用されるケイ素またはケイ酸塩含有物質、たとえば炉用砂またはガラスの代わりに連続的に導入される。ケイ素またはケイ酸塩含有物質は、回転管炉のレンガライニング上に保護スラグ膜(=保護層)を形成し、したがって化学的な浸食および迅速な摩耗に対し壁を保護する。保護スラグ膜の品質は、視覚的に評価される。燃焼炉中に導入されるLCDにより形成される保護スラグ膜は、通常用いられるケイ素またはケイ酸塩含有物質により形成される保護スラグ膜と相違しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LCDの材料リサイクル方法であって、LCDが他の原材料の代替品として少なくとも部分的に使用されることを特徴とする、前記リサイクル方法。
【請求項2】
LCDが900〜1700℃の温度範囲で熱的に処理されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
LCDが900〜1400℃の温度範囲で選択的に融解されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
LCDが他の金属含有製品と混合され、1200〜1400℃の温度範囲で熱的に処理されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
金属含有製品が少なくともいくつかのLCDの電子部品を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
LCDが、金属含有製品に存在する卑金属と結合し、かつ貴金属からそれらを分離するために用いられることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
LCDが、該方法で通常用いられる炉用砂の少なくともいくらかと置き換わることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
LCD中に存在するプラスチックフィルムが、金属含有製品を還元するための還元剤として用いられることを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
LCD中に存在するプラスチックフィルムが、該方法で還元剤として通常添加される炭素含有製品の少なくともいくらかと置き換わることを特徴とする、請求項4〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
LCDが、原材料および/または添加材料として1100〜1300℃の温度範囲で回転管炉で熱的に処理されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
原材料および/または添加材料としてのLCDが、回転管炉の内層に保護膜を形成することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
LCDが、該方法で通常用いられるケイ酸塩含有化合物の少なくともいくらかと置き換わることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
熱処理装置における、原材料および/または添加材料としてのLCDの使用。
【請求項14】
回転管炉の内層に保護膜を形成するための熱処理装置における、原材料および/または添加材料としての、請求項13に記載のLCDの使用。
【請求項15】
熱処理装置でのエネルギーサプライヤーとしてのLCDの使用。
【請求項16】
金属回収におけるLCDの使用。
【請求項17】
LCDが原材料および/または添加材料として使用されることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
LCDが、炉用砂および/または炭素含有製品と置き換わるために用いられることを特徴とする、請求項16または17に記載の使用。
【請求項19】
LCDがエネルギーサプライヤーとして用いられることを特徴とする、請求項16〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
LCDが、貴金属および卑金属の混合物を含有する組成物からの貴金属の回収に用いられることを特徴とする、請求項16〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
LCDが、鉱石からの貴金属の回収に用いられることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
LCDが、触媒、電気もしくは電子機器スクラップ、および金属含有スラッジからの貴金属の回収に用いられることを特徴とする、請求項20に記載の使用。

【公開番号】特開2011−121053(P2011−121053A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270889(P2010−270889)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2007−501179(P2007−501179)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】