説明

液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物

【課題】液晶パネル空隙内部の液晶材料及び電極端子表面の異物の除去性に優れ、環境負荷,毒性が小さく、引火性の低い液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】下記(A),(D),(E)成分および所定量の水を含むことを特徴とする液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物。
(A)下記一般式(1)で示される化合物;5〜60質量%
RR1CH(CH2nO(AO)mH・・・(1)
(式中、RおよびR1は炭素数1〜8、かつ、n=1のときは、RおよびR1の合計炭素数が9以下、n=2のときは、RおよびR1の合計炭素数が8以下となるアルキル基を、nは1〜2の数を、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を、mは2〜10の数を示す。)
(D)炭素数8〜20の炭化水素化合物;3〜40質量%
(E)アニオン性界面活性剤;3〜20質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、消費電力が少ないという利点を有する上、近年高コントラスト化等の技術改良が進んだ結果、多様な画像表示が可能となり、コンピュータ端末表示部、テレビのディスプレイ、携帯電話等の小型パネルなどの幅広い分野に用いられ、その用途が拡大している。
【0003】
この液晶パネルは、10μm以下の所定間隔離して対向・保持させた2枚のガラス基板の周囲を、内部に中空部が形成されるように接着剤で貼り合わせた後、上述の中空部内に液晶を封入して製造される。
この場合、上記2枚のガラス基板内部には、透明導電膜で構成された文字、画像表示用電極が設けられ、この電極に制御用電気信号を印加することで、文字、画像が表示される構成となっている。
【0004】
上記液晶パネルを製造する際、2枚のガラス基板の接着部の外側にミクロンオーダーの微小ギャップが生じ、空隙部が生じることは避けられない。このため、2枚のガラス基板で形成された中空部に液晶材料を注入する際、毛細管現象により空隙部にも液晶材料が侵入してしまう。
しかし、この空隙部には透明電極に電気信号を印加するための電極端子が各々絶縁を保って高密度に形成されていることから、空隙部に侵入した液晶材料をそのまま放置しておくと、この液晶材料が大気中の汚染物質を溶解し、その結果、絶縁不良を起こす場合がある。このため、空隙部に侵入した液晶材料を洗浄、除去する必要がある。
【0005】
ところが、空隙部の間隔は10μm以下と非常に狭いため、侵入した液晶材料を完全に除去するためには、用いる洗浄剤に高度な洗浄能力が必要とされる。
このような液晶パネルの洗浄剤としては、従来、フロン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、メチレンクロライド等に代表される塩素系溶剤が好適に用いられてきたが、世界的な環境対策の一環として、それらの使用規制が行われるようになっている。
【0006】
これに伴い、代替洗浄剤開発の要求が高まった結果、上記塩素系溶剤を用いない新たな洗浄剤として、炭化水素系溶剤や、炭化水素系溶剤とグリコールエーテルとの混合組成物(特許文献1:特開平10−25495公報)等が報告されているが、これらは引火性が高く、取り扱いが困難なものである。
【0007】
ところで、近年における液晶パネルの高密度化技術の進展に伴い、上述した空隙部の間隔が一層狭くなっている一方で、生産効率の向上が要求されていることから、より短時間で洗浄可能な高洗浄能力を有する洗浄剤が求められるようになっている。
さらに、液晶パネル生産の歩留まりの向上も要求されていることから、空隙部に侵入した液晶材料のみならず、電極端子表面上の異物に対する洗浄力も求められるようになってきている。
【0008】
すなわち、液晶パネル製造過程において、マザーガラスから必要に応じて適切な大きさに切断されたガラス基材が用いられるが、この切断時に、ガラスの切粉(通称カレット)が多量に発生する。このカレットが液晶パネル電極端子表面に付着すると、その後の実装工程に大きな支障を与えるため、これを洗浄により除去する必要が生じる。
【0009】
このカレット等の表面異物は、液晶パネルに分子間力で付着するだけでなく、液晶材料等をバインダーとして強固に付着する場合もあり、これを除去する洗浄剤には、より高度な洗浄能力が必要とされる。
このカレット用洗浄剤としては、特許文献2(特開平5−271699号公報)、特許文献3(特開平7−305093号公報)、特許文献4(特開2001−181699号公報)等で開示されたものがある。しかし、いずれもアルカリ系洗浄剤であり、液晶パネルへのダメージが懸念される上、液晶材料の除去には効果がほとんどないことから、液晶材料をバインダーとして固着したカレットを除去することは難しい。
【0010】
このように、現在までのところ、環境負荷および毒性が小さく、引火性の低い洗浄剤であり、空隙部に侵入した液晶材料およびカレット等の液晶パネル電極端子表面異物の両者を洗浄、除去し得る洗浄能力に優れた液晶パネル用洗浄剤は知られていない。
【0011】
【特許文献1】特開平10−25495公報
【特許文献2】特開平5−271699号公報
【特許文献3】特開平7−305093号公報
【特許文献4】特開2001−181699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、液晶パネルの空隙部に侵入した液晶材料の除去性に優れるとともに、カレット等の液晶パネル電極端子表面の異物除去性にも優れ、しかも、環境負荷および毒性が小さく、引火性の低い液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、分岐鎖を有する特定の非イオン性界面活性剤、特定のグリコールエーテル化合物、炭化水素を含有する洗浄剤組成物が、液晶パネルの空隙部の液晶材料に対して高い洗浄力を有し、かつ、カレット等の表面に付着する異物を高い浸透力をもって除去し得ることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
1. 下記(A),(D),(E)成分および所定量の水を含むことを特徴とする液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物、
(A)下記一般式(1)で示される化合物;5〜60質量%
RR1CH(CH2nO(AO)mH・・・(1)
(式中、RおよびR1は炭素数1〜8、かつ、n=1のときは、RおよびR1の合計炭素数が9以下、n=2のときは、RおよびR1の合計炭素数が8以下となるアルキル基を、nは1〜2の数を、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を、mは2〜10の数を示す。)
(D)炭素数8〜20の炭化水素化合物;3〜40質量%
(E)アニオン性界面活性剤;3〜20質量%
を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶パネルの空隙部に侵入した液晶材料の除去性に優れるとともに、カレット等の液晶パネル電極端子表面の異物除去性に優れる液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物を提供することができる。しかも、この洗浄剤組成物は、環境負荷および毒性が小さく、引火性の低いものである上、炭素数12〜15のアルコールエチレンオキシド付加体等を用いていないため、PRTR法(化学物質管理促進法)に規定される届出の必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物は、上述のように、組成物中に、(A)成分を5〜60質量%、(D)成分を3〜40質量%、(E)成分を3〜20質量%、および水を所定量含むものである。
【0017】
ここで、(A)成分の配合量が5質量%未満では、浸透力が低下してカレット等の表面異物の洗浄効果が悪化する可能性が高く、60質量%を超えると、すすぎ性が著しく低下する可能性が高い。より好ましい(A)成分の配合量は、10〜35質量%である。(D)成分の配合量が3質量%未満では、液晶材料の洗浄性が著しく低下する可能性が高く、40質量%を超えると、液安定性の低下を招く可能性が高い。より好ましい(D)成分の配合量は、3〜30質量%である。(E)成分の配合量が上記範囲からはずれると、液安定性が低下する可能性が高い。より好ましい(E)成分の配合量は、6〜10質量%である。水の配合量は、特に限定されるものではないが、組成物に対して少なくとも10質量%以上配合して組成物の引火性の低減を図ることが望ましい。
【0018】
上記(A)成分は、下記一般式(1)で示される中鎖分岐第1級アルコールのアルキレンオキシド付加体である。
RR1CH(CH2nO(AO)mH・・・(1)
(式中、RおよびR1は炭素数1〜8、かつ、n=1のときは、RおよびR1の合計炭素数が9以下、n=2のときは、RおよびR1の合計炭素数が8以下となるアルキル基を、nは1〜2の数を、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を、mは2〜10の数を示す。)
【0019】
ここで、上記RおよびR1としては、炭素数1〜8で、n=1のときは、RおよびR1の合計炭素数が9以下となるアルキル基、n=2のときは、RおよびR1の合計炭素数が8以下となるアルキル基であれば特に制限はなく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、イソブチル、ターシャリーブチル、イソペンチル、イソヘキシル、イソオクチル等を用いることができる。
具体的な、中鎖分岐第1級アルコールとしては、2−エチルヘキサノール、2−エチルヘプタノール、2−エチルブタノール、3−エチルヘキサノール、3−エチルヘプタノール、3−エチルブタノール、2−メチルヘキサノール、2−メチルヘプタノール、2−メチルオクタノール、2−メチルノナノール、2−メチルデカノール等が挙げられるが、好ましくは2−エチルヘキサノール、2−メチルデカノールである。なお、合成アルコールである、例えば、ダイヤドール9、ダイヤドール11(三菱化学(株)製)は、上記分岐第1級アルコールを30〜50質量%含むので、これらの合成アルコールも好適に用いることができる。
【0020】
また、上記AOは炭素数2〜4のオキシアルキレンであり、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレンを単独または混合して用いることができるが、オキシエチレン単独で、またはオキシエチレンおよびオキシプロピレンを混合して用いることが好ましい。
この場合、オキシアルキレンの付加モル数mは2〜10の数であり、好ましくは2〜8である。付加モル数が2未満の場合は液安定性が不安定になる虞があり、一方、10を超えると洗浄性の低下、特に、カレットの洗浄性の低下を招く虞がある。
【0021】
上記(D)成分は、炭素数8〜20、好ましくは炭素数10〜14の炭化水素化合物、好ましくは、パラフィンまたはオレフィン系炭化水素化合物であり、例えば、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカン、n−ヘキサデカン、n−オクタデカン、イソオクタン、イソドデカン、イソオクタデカン、これらに対応する不飽和化合物等を用いることができる。
【0022】
上記(E)成分のアニオン性界面活性剤としては、平均炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸型アニオン性界面活性剤、平均炭素数10〜20のアルキル硫酸塩、平均炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、平均0.5〜8モルのエチレンオキシドを付加したアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩、平均炭素数5〜22の飽和又は不飽和脂肪酸塩等が挙げられる。
【0023】
これらのアニオン性界面活性剤の中でも、浸透力の向上に寄与し、かつ、組成物の曇点を上昇させる性能に優れているという点から、スルホコハク酸型のアニオン性界面活性剤を好適に用いることができる。スルホコハク酸型のアニオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(5)で表されるスルホコハク酸ジアルキル(又はアルケニル)エステル型界面活性剤、下記一般式(6)で表されるスルホコハク酸アミド・エステル混合型界面活性剤および下記一般式(7)で表されるスルホコハク酸モノアミド型界面活性剤の中から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0024】
【化1】

〔式中、R6〜R10は、互いに同一または異種の炭素数3〜22のアルキル基もしくはアルケニル基を示し、Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンを示す。〕
【0025】
上記式(5)〜(7)において、炭素数3〜22のアルキル基もしくはアルケニル基としては、特に限定はなく、例えば、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル等が挙げられ、これらの中でも液安定性等に優れるオクチル、2−エチルヘキシルが好適である。特に、浸透力を高めるということを考慮すると、式(5)で示される化合物のR6およびR7がそれぞれ、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシルであるスルホコハク酸型ジアルキルエステル塩を用いることが好ましい。なお、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンに特に制限はなく、アンモニウムイオンとしては、種々のアミンの4級アンモニウムイオンを用いることができる。
【0026】
また、本発明の洗浄剤組成物は、(B)成分として、下記一般式(2)で示される中鎖分岐一級アルコールのアルキレンオキシド付加体を含んでいてもよい。
RR1CH(CH2nO(AO)jH・・・(2)
(式中、R、R1、nおよびAOは上記と同じ。jは12〜30の数を示す。)
この場合、R、R1、nおよびAOは上記一般式(1)で示される化合物と同様である。また、オキシアルキレンの付加モル数jは12〜30の数であり、好ましくは15〜20である。付加モル数がこの範囲からはずれると、液安定性が低下して曇点が低くなる虞がある。
【0027】
さらに、本発明の液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物は、(C)成分として、下記一般式(3)で示される短鎖アルキル(アルケニル)−一価アルコールのアルキレンオキシド付加体、フェノールのアルキレンオキシド付加体、ベンジルアルコールのアルキレンオキシド付加体を含んでいてもよい。
2O(AO)k3・・・(3)
(式中、R2は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基もしくはベンジル基を、R3は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を、kは1〜5の数を示す。AOは上記と同じ。)
【0028】
ここで、炭素数1〜6のアルキル基およびAOは、上記一般式(1)の化合物で説明したものと同様である。また、アルキレンオキシド付加モル数kは1〜5の数であり、好ましくは1〜3である。付加モル数がこの範囲からはずれると、液晶材料の洗浄性が低下する虞がある。
【0029】
以上で説明した本発明の液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物の製造方法としては、特に限定はなく、常法に従って各成分を配合して調製すればよい。この場合、各成分の配合順序は任意でよいが、水以外の成分を充分に混合した後、水を少量ずつ添加しながら均一な液体組成物となるように調製することが好ましい。
また、本発明の液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物の使用にあたっては、組成物原液で用いることも、さらに水で希釈して水溶液として用いることもできるが、充分な洗浄力を発揮させるという点から、洗浄剤組成物原液で使用することが好ましい。
本発明の液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物で液晶パネルを洗浄する際には、液晶パネルに液晶を充填した後、これを本発明の洗浄剤組成物に投入し、浸漬洗浄、超音波洗浄等すればよい。
【0030】
なお、本発明の液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物には、上記必須成分に加えて、その他の任意成分として、両性界面活性剤、洗浄ビルダー、ハイドロトロープ剤等を組成物に対して1〜30質量%配合し、曇点上昇、洗浄力および液安定性の向上等を図ることもできる。さらに、ベンゾトリアゾール、t−ブチル安息香酸塩等の防錆剤を組成物に対して0.1〜5質量%配合してもよい。
また、液安定性向上や洗浄力向上のために、PRTR法(化学物質管理促進法)の規制に触れない炭素数11以下の直鎖アルコールのアルキレンオキシド付加体を併用してもよい。
【0031】
以上述べたように、本発明の液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物は、上述した(A),(D)および(E)成分を含んで構成されているから、液晶パネルの空隙部に侵入した液晶材料およびカレット等の表面付着物の両者の洗浄に対して優れた洗浄効果を発揮するものである上、引火性も低く、組成物の経時安定性にも優れている。
さらに、本発明では、炭素数12〜15のアルコールエチレンオキシド付加体を用いていないため、環境負荷が少なく、しかも、PRTR法(化学物質管理促進法)に規定される届出の必要もない。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1〜4]
下記表1に示される成分を混合して、液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物を調製した。この場合、水以外の成分を充分に混合した後、水を少量ずつ添加しながら均一な液体組成物となるようにした。
【0034】
【表1】

【0035】
[比較例1〜4]
下記表2に示される成分を混合して、液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物を調製した。この場合、水以外の成分を充分に混合した後、水を少量ずつ添加しながら均一な液体組成物となるようにした。
【0036】
【表2】

【0037】
上記実施例1〜4および比較例1〜4で得られた各液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物について、代表的な液晶パネルを用い、洗浄力、すすぎ性、液安定性を評価した。結果を表3に示した。
なお、各項目は、以下の手法により測定、評価した。
【0038】
[1]洗浄力評価
適切な大きさにカットした5μmの空隙を有する液晶パネルの空隙部位に液晶材料を塗布し、80℃で8時間安定化させて被洗浄サンプルとした。なお、液晶パネルとしては、表面端子部にスペーサーより大きい(5μm以上の)カレットが100〜300個付着しているものを用いた。
上記実施例1〜4および比較例1〜4で調製した各液体洗浄剤組成物の原液中に、液晶パネルを浸漬し、超音波洗浄機(50kHz,200W、SC−20型、サン電子工業(株)製)を用いて50℃で3分間超音波洗浄を行った。
【0039】
続いて、被洗浄パネルを取り出し、50℃のイオン交換水中で1分間、洗浄時と同条件で超音波すすぎを行った後、105℃の恒温乾燥機で60分間乾燥させた。乾燥終了後、偏光顕微鏡(BX−60、オリンパス工業(株)製)を用いて空隙部を観察し、液晶材料の残留を以下の評価基準を用いて評価するとともに、端子表面に残留しているカレットの数をカウントし、以下の方法で除去率を算出した。
【0040】
(1)洗浄性評価1(液晶材料の残留)
◎:完全に洗浄された
○:ほとんど洗浄された
△:少し洗浄された
×:全く洗浄されない
(2)洗浄性評価2(カレットの除去率)
カレットの除去率(%)=(洗浄前のカレット数−洗浄後のカレット数)/(洗浄前のカレット数)×100
【0041】
[2]すすぎ性評価
上記と同様の液晶パネルを用い、エタノール中で充分洗浄して空隙部を完全に洗浄した。その後、上記各実施例および比較例の液体洗浄剤組成物中に液晶パネルを浸漬し、超音波照射により空隙部位に洗浄剤組成物を満たした。このようにして洗浄剤組成物が満たされた液晶パネルを、50℃のイオン交換水に3分間単純に浸漬した後、静かに引き上げ、105℃で60分間乾燥させた。乾燥終了後、顕微鏡(BX−60、オリンパス工業(株)製)を用いて空隙部の洗浄剤組成物の残留性を以下の評価基準に従って評価した。
◎:完全にすすがれて洗浄剤の残留がなかった
○:ほとんどすすがれて洗浄剤の残留がほぼなかった
△:少しすすがれて洗浄剤が多少残留した
×:全くすすがれずに洗浄剤が多量に残留した
【0042】
[3]液安定性
一般に、この種の洗浄剤組成物は、洗浄効率を高めるために加温して用いられることが多く、高温領域での均一性が問題とされるので、高温領域での曇点を液安定性の指標とした。
上記各実施例1〜4および比較例1〜4で調製した液体洗浄剤組成物の原液における曇点を測定し、以下の基準により評価した。
◎:50℃以上
○:40℃以上50℃未満
△:30℃以上40℃未満
×:30℃未満または白濁/分離
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示されるように、実施例1〜4で得られた各液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物は、比較例1〜4と比べ、液晶材料およびカレット双方の洗浄性に優れるとともに、すすぎ性、液安定性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A),(D),(E)成分および所定量の水を含むことを特徴とする液晶パネル用水系液体洗浄剤組成物。
(A)下記一般式(1)で示される化合物;5〜60質量%
RR1CH(CH2nO(AO)mH・・・(1)
(式中、RおよびR1は炭素数1〜8、かつ、n=1のときは、RおよびR1の合計炭素数が9以下、n=2のときは、RおよびR1の合計炭素数が8以下となるアルキル基を、nは1〜2の数を、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を、mは2〜10の数を示す。)
(D)炭素数8〜20の炭化水素化合物;3〜40質量%
(E)アニオン性界面活性剤;3〜20質量%

【公開番号】特開2008−115394(P2008−115394A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302408(P2007−302408)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【分割の表示】特願2003−41390(P2003−41390)の分割
【原出願日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】