説明

液晶ラベルおよび液晶ラベル連続体

【課題】容易に確実に製造することができる偽造および貼替えを防止した液晶ラベルを提供する。
【解決手段】液晶ラベル20は、透明性を有する基材22を含む。基材22の裏面側において、コレステリック液晶からなる液晶層24が、基材22の周縁に至らないように基材22より小さく設けられる。基材22の裏面側には、液晶層24を覆うように接着剤層26が設けられる。基材22、液晶層24および接着剤層26には、複数の剥離用切れ目28、28、・・・が、基材22の周縁から液晶層24上にのびるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は液晶ラベル、液晶ラベル連続体および液晶ラベル連続体の製造方法に関し、特にコレステリック液晶からなる液晶層を含み、偽造および貼替えを防止した液晶ラベル、液晶ラベルが帯状の剥離材の表面に間隔を隔てて複数仮着された液晶ラベル連続体および液晶ラベル連続体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偽造および貼替えを防止した液晶ラベルが、国際公開第2004/032099号パンフレットに開示されている。この液晶ラベルは、透明または半透明性を有する基材と、コレステリック液晶からなり、基材の裏面側に形成された液晶層と、液晶層の基材とは反対側に形成された背景層と、背景層の液晶層とは反対側に形成された接着剤層を含む液晶ラベルである。また、その液晶ラベルは、それを物品から剥がそうとすると、基材が液晶層から剥離するように構成され、または、液晶層が凝集破壊して基材とともに液晶層の一部分が剥離するように構成されている。この液晶ラベルでは、コレステリック液晶からなる液晶層が用いられているので、偽造を防止することができる。さらに、この液晶ラベルでは、それを物品から剥がそうとすると、基材または基材とともに液晶層の一部分が剥離するので、貼替えを防止することができる(特許文献1参照)。
このように液晶ラベルにおいて貼替えを防止することができれば、液晶ラベルを真正の物品から剥がして偽物の物品に貼替えて、その偽物を真正品であると偽ることを防ぐことができ、液晶ラベルが貼着された物品の真正性の確度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/032099号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている液晶ラベルのようにコレステリック液晶からなる液晶層が基材の裏面側にほぼ全面に設けられた液晶ラベルでは、それを帯状の剥離材の表面に間隔を隔てて複数仮着した状態で製造する場合、帯状の基材、液晶層、背景層、接着剤層および剥離材を積層した帯状の積層体を形成し、その積層体に基材から接着剤層にわたって所定のラベル形状のダイカットを施し、ダイカットの周囲の不要部分(カス)を剥離材から剥離して除去するいわゆるカス上げを行う。
この場合、液晶ラベルとなる部分だけでなく液晶ラベルの周囲の不要部分(カス)にも、比較的に剥離性のあるコレステリック液晶からなる液晶層または比較的に凝集破壊しやすいコレステリック液晶からなる液晶層が設けられるので、相対的に重剥離の(相対的に強い力で剥離する)剥離材が用いられると、液晶ラベルの周囲の不要部分を剥離材から剥離して除去するいわゆるカス上げ時において、不要部分の基材の一部分が液晶層から剥離されてしまい、または、不要部分の液晶層が凝集破壊して基材の一部分および液晶層の凝集破壊部より基材側の一部分が液晶層の凝集破壊部から剥離されてしまい、不要部分の液晶層や接着剤層の一部分が剥離材上で液晶ラベルの周囲に残ってしまうことがある。
そのため、このようなことがなく、容易に確実に製造することができる偽造および貼替えを防止した液晶ラベルが望まれている。
なお、ハードディスクドライブ(HDD)用に貼着される液晶ラベルでは、低分子量のシリコーンの量を極力少なくすることが求められ、低分子量のシリコーンの少ない剥離剤によって剥離材の剥離面を形成すると、その面は相対的に重剥離となるので、上記の問題を起こしやすい。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、容易に確実に製造することができる偽造および貼替えを防止した、液晶ラベルを提供することである。
この発明の他の目的は、容易に確実に製造することができる偽造および貼替えを防止した、液晶ラベルを有する液晶ラベル連続体を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、容易に確実に製造することができる偽造および貼替えを防止した、液晶ラベルを有する液晶ラベル連続体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる液晶ラベルは、透明性を有する基材と、基材の裏面側において基材の周縁に至らないように基材より小さく設けられた、コレステリック液晶からなる液晶層と、液晶層を覆うように基材の裏面側に設けられた接着剤層とを含み、基材において基材の周縁から液晶層上にのびる剥離用切れ目が形成された、液晶ラベルである。
この発明にかかる液晶ラベル連続体は、帯状の剥離材と、剥離材の表面に間隔を隔てて複数仮着されたこの発明にかかる液晶ラベルとを有する、液晶ラベル連続体である。
この発明にかかる液晶ラベル連続体の製造方法は、この発明にかかる液晶ラベル連続体を製造する液晶ラベル連続体の製造方法であって、透明性を有する帯状の基材、帯状の基材の裏面側に間隔を隔てて設けられた複数の液晶ラベル用のコレステリック液晶からなる液晶層、複数の液晶ラベル用の液晶層を覆うように帯状の基材の裏面側に設けられた帯状の接着剤層、および帯状の接着剤層の面であって帯状の基材とは反対側の面に仮着された帯状の剥離材を含む帯状の積層体を形成する工程と、帯状の積層体において帯状の基材から帯状の接着剤層にわたって複数の液晶ラベル用の液晶層の周縁のそれぞれの外側に液晶ラベルの周縁に対応した形状のラベル用切れ目を形成する工程と、帯状の積層体において少なくとも帯状の基材における液晶ラベルの周縁になる部分から液晶ラベル用の液晶層上にのびるように剥離用切れ目を形成する工程と、帯状の積層体において帯状の基材から帯状の接着剤層にわたるラベル用切れ目の外側の不要部分を帯状の剥離材から剥離する工程とを含む、液晶ラベル連続体の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかる液晶ラベルでは、コレステリック液晶からなる液晶層が基材の裏面側において基材の周縁に至らないように基材より小さく設けられ、接着剤層が液晶層を覆うように基材の裏面側に設けられる。そのため、この発明にかかる液晶ラベルを帯状の剥離材の表面に間隔を隔てて複数仮着した状態で製造する場合、液晶ラベルの周囲の不要部分に液晶層が設けられなくてすみ、液晶ラベルの周囲の不要部分を剥離材から剥離して除去するいわゆるカス上げ時に、不要部分の一部領域において、不要部分の基材のみが剥離されたり不要部分の液晶層が凝集破壊されて基材および液晶層の一部分のみが剥離されたりすることがなく、不要部分の液晶層や接着剤層が剥離材に残ることがない。したがって、この発明にかかる液晶ラベルでは、容易に確実に製造することができる。
また、この発明にかかる液晶ラベルでは、コレステリック液晶からなる液晶層が用いられていて液晶層を容易に偽造できないので、偽造を防止することができる。
さらに、この発明にかかる液晶ラベルでは、基材において基材の周縁から液晶層上にのびる剥離用切れ目が形成されているので、それを被貼着体に貼着した後に不法に剥がそうとしても、基材が剥離用切れ目を延長するように破れながら液晶層から剥がれ、または、基材が剥離用切れ目を延長するように破れるとともに液晶層が凝集破壊されて基材および液晶層の一部分が剥がれるため、貼替えられることを防止することができる。
【0008】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明にかかる液晶ラベル連続体の一例を示す平面図解図である。
【図2】図1に示す液晶ラベル連続体の断面図解図である。
【図3】コレステリック相の分子配列を示す図解図である。
【図4】図1に示す液晶ラベル連続体を製造するための積層体を示す断面図解図である。
【図5】図4に示す積層体に切れ目を形成する工程を示す断面図解図である。
【図6】図4に示す積層体から不要部分を剥離する工程を示す斜視図である。
【図7】図4に示す積層体から不要部分を剥離する工程を示す断面図解図である。
【図8】比較例を製造するための積層体に切れ目を形成する工程を示す断面図解図である。
【図9】この発明にかかる液晶ラベル連続体の他の例を示す平面図解図である。
【図10】図9に示す液晶ラベル連続体の断面図解図である。
【図11】図9に示す液晶ラベル連続体を製造するための積層体を示す断面図解図である。
【図12】図11に示す積層体に切れ目を形成する工程を示す断面図解図である。
【図13】図11に示す積層体から不要部分を剥離する工程を示す断面図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はこの発明にかかる液晶ラベル連続体の一例を示す平面図解図であり、図2はその液晶ラベル連続体の断面図解図である。図1に示す液晶ラベル連続体10は、帯状の剥離材12を含む。剥離材12は、たとえば紙等の表面にシリコーン等の剥離剤が塗布されてなる。この剥離材12の表面には、複数の液晶ラベル20、20、・・が、間隔を隔てて剥離可能に仮着されている。
【0011】
液晶ラベル20は、ポリエステルフィルム等のような合成樹脂製シートまたはフィルムからなる透明性を有するたとえば楕円形状の基材22を含む。基材22の裏面には、基材22の周縁に至らないように基材22より小さく部分的に、コレステリック液晶が固定されてなる液晶層24が設けられている。さらに、基材22の裏面には、液晶層24を覆うように、粘着剤などを塗布してなる接着剤層26が設けられている。また、基材22、液晶層24および接着剤層26には、基材22の周縁から液晶層24上にのびるように、たとえば直線状の複数の剥離用切れ目28、28、・・が形成されている。液晶ラベル20は、接着剤層26によって、剥離材12の表面に剥離可能に仮着されている。
【0012】
基材22としては、透明性を有するPETなどのプラスチックフィルム、シートなどを用いることが適する。なお、基材22としては、透明性を有するものであれば半透明のものであってもよい。また、基材22は、透明性を増すようにするとともに、液晶ラベル20を対象物より剥がそうとしたときに液晶層24との間において層間剥離しやすいようにするために、特に液晶層24が形成される側の面が平滑性に優れていることが望ましい。さらに、基材22と液晶層24との間において層間剥離しやすくするためには、基材22において液晶層24が形成される側の面が表面処理されていないことが望ましい。ただし、液晶層24を構成する液晶分子の配向を助長するためには、基材22において液晶層24が形成される側の面に、基材22の長手方向に微細な線状痕が形成されてもよい。
【0013】
液晶層24を構成する液晶組成物としては、コレステリック液晶が選択される。コレステリック液晶は、螺旋構造のコレステリック相あるいはキラルネマチック相(図3参照)を示す化合物を塗工してなる。コレステリック相あるいはキラルネマチック相を示す化合物としては、コレステリルノナノエート、コレステリルミリステート等のほか、たとえば表1に示すようなものがある。
【0014】
【表1】

(表1の注)表1の相転移温度の欄において、Cは結晶性固体、Sはスメクチック相、Sc*はキラルスメクチックC相、Chはコレステリック相、N*はキラルネマチック相、Iは等方性液体を表す。
【0015】
また、たとえば表2に示すような単独でネマチック相を示す化合物に、たとえば表3に示すようなキラル化合物を加えてもキラルネマチック相を形成する(以下、コレステリック相、キラルネマチック相の区別をせずに、コレステリック相と総称する)。
【0016】
【表2】

(表2の注)表2の相転移温度の欄において、Cは結晶性固体、Nはネマチック相、Iは等方性液体を表す。
【0017】
【表3】

(表3の注)ネマチック相を示す液晶にキラル分子を添加すると、キラルネマチック相(N*)が得られる。この場合、その混合液晶のピッチの逆数1/pは、キラル分子のモル濃度xBが小さい領域では、xBに比例する。そのため、1/pxBのことを、キラル分子のねじり力という。
【0018】
この発明にかかる液晶ラベル20の液晶層24は、コレステリック相が固定されたものであり、その固定の方法としては、たとえば、液晶分子の両末端にアクリル基を設け、これを基材22に塗工し、この塗工物をコレステリック相を形成し得る温度まで加熱し、コレステリック相を形成し、紫外線照射をすることにより、UV架橋してコレステリック相を固定する。そのため、温度等、環境が変化しても、コレステリック相は安定して存在する。
あるいは、液晶分子と一般的に用いられるバインダーとの混合物を塗工し、コレステリック相を形成し得る温度に加熱し、コレステリック相を形成し、乾燥し、バインダーでコレステリック相を固定してもよい。
【0019】
液晶層形成用塗液は、溶剤系でも溶媒を含まない非溶剤系でもよい。
溶剤系では、溶剤としてMEK,MIBK等のケトン類、トルエン、酢酸エチル等が好ましい。また、固形分濃度は、特に制限はないが、25〜67%が好ましい。25%を下回ると、画線を鮮明に形成できなくなるおそれがあり、乾燥に要する時間が長くなる。67%を超えると塗液を加熱しないと固体が析出するおそれがある。特に好ましい濃度範囲は、50〜65%である。塗液からの溶剤の蒸発等による固体の析出のおそれをなくすために、塗液を加熱しながら塗工することも行われる。
非溶剤系では、塗工組成物をコレステリック相を形成する最低温度以上、好ましくはコレステリック相を形成する温度領域の温度に加熱しながら塗工を行う。
溶剤系でも、非溶剤系でも、塗工物に形成されているコレステリック相の固定を行うため、コレステリック相を形成する温度範囲に液晶層形成用塗工物を保ったまま、架橋等を行う。これによって、コレステリック相は、温度環境等が変わっても、たとえば常温においても安定的に維持される。
【0020】
コレステリック相からなる液晶層24は、光輝性を示し、見る方向によって連続的に色調が変化する。たとえば、上から垂直に見たときにはグリーンに見え、水平に近い方向に見たときにはブルーあるいは青紫に見えるといったようである。
このコレステリック相を示す液晶層24は、広いスペクトル領域で入射する光の一部の波長領域のみが反射し、これ以外の領域の波長は、すべて透過するという特徴を有する。
そのため、液晶層24に基づいて液晶ラベル20の真正性を識別することができる。
【0021】
この液晶層24は、基材22の縁部を除いた部分の裏面において、全面にわたって形成されるのではなく、液晶層24を形成する液晶層形成用塗液を文字、絵等からなる画線状に塗工して凸文字や抜き文字などの画線を構成するように部分的に形成されている。そのため、液晶層24の形状を認識することによっても、液晶ラベル20の真正性を識別することができる。
【0022】
なお、液晶層において、螺旋のピッチp(図3図示)が大きくなると、長波長側の色が現われ、螺旋のピッチpが小さくなると、短波長側の色が現われる。このピッチを変えるには、キラル化合物を添加した系においては、キラル化合物の添加量を変更すればよい。
【0023】
接着剤層26は、基材22の裏面に、液晶層24を覆うように、たとえばアクリル系、ゴム系等の一般的な粘着剤が塗布されて形成される。
【0024】
また、直線状の複数の剥離用切れ目28、28、・・は、基材22、液晶層24および接着剤層26に、基材22の周縁から液晶層24の端部にわたって、放射状に形成されている。これらの剥離用切れ目28、28、・・は、液晶ラベル20を貼替えようとして被貼着体からラベルを剥がそうとしたときに基材22を破れやすくして剥離しやすくするためのものである。
たとえば、液晶ラベル20を貼替えようとして被貼着体からラベルを剥がそうとすると、剥離用切れ目28、28、・・によって次のような現象が起こることが観察される。
被貼着体からラベルを剥がそうとすると、剥離用切れ目28、28、・・部分で液晶層24からの基材22の剥離が始まり、さらにラベルを剥がそうとすると、剥離が広がり、基材22の破れの進行とも相まって一層剥離が広がり、ついには基材22が液晶層24から剥ぎ取られることになる。したがって、ラベルを壊さずに被貼着体からラベルを剥がすことは極めてむずかしい。
【0025】
上述の液晶ラベル20では、コレステリック液晶からなる液晶層24が基材22の裏面側において基材22の周縁に至らないように基材22より小さく設けられ、接着剤層26が液晶層24を覆うように基材22の裏面側に設けられる。そのため、この液晶ラベル20を帯状の剥離材12の表面に間隔を隔てて複数仮着した状態で製造する場合、液晶ラベル20の周囲の不要部分に液晶層が設けられなくてすみ、液晶ラベル20の周囲の不要部分を剥離材12から剥離して除去するいわゆるカス上げ時において、不要部分の基材のみが剥離されてしまうことがない。したがって、この液晶ラベル20では、容易に確実に製造することができる。
【0026】
また、上述の液晶ラベル20では、コレステリック液晶からなる液晶層24が基材22の裏面側において基材22の周縁に至らないように基材22より小さく設けられるので、液晶層24が基材22の周縁に至るように基材22と同じ大きさに設けられるものと比べて、液晶層24の材料コストを抑えることができる。
【0027】
さらに、上述の液晶ラベル20では、コレステリック液晶からなる液晶層24が用いられていて液晶層24を容易に偽造できないので、偽造を防止することができる。
【0028】
また、上述の液晶ラベル20では、基材22において基材22の周縁から液晶層24上にのびる剥離用切れ目28が形成されているので、それを被貼着体に貼着した後に不法に剥がそうとしても、基材22が剥離用切れ目28を延長するように破れながら液晶層24から剥がれるため、貼替えられることを防止することができる。すなわち、剥離用切れ目28は基材22と液晶層24との間の剥離開始点となるように作用し、液晶層24を基材22の端縁にかからないように内側に設けているにもかかわらず、基材22が液晶層24から確実に剥がれてしまい、ラベルを貼替えることができない。
【0029】
上述の液晶ラベル20は、たとえば、ハードディスクドライブ(HDD)の補償期間の改ざん防止に用いられる。この場合、液晶ラベル20をHDDに設けられたシリアルナンバーやバーコード等を表す商品ラベルの上に貼着し、液晶ラベル20が貼着されたHDDのみを真正品とすることによって、HDDの補償期間がたとえば2年間無償である場合に、たとえば5年前のHDDにおいてシリアルナンバーやバーコードを2年以内前のシリアルナンバーやバーコードに変更することを防止することができる。なお、この場合、HDDのシリアルナンバーやバーコードは、液晶ラベル20の基材22、液晶層24および接着剤層26を通して見ることができる。
【0030】
このように上述の液晶ラベル20は、偽造防止効果および貼替え防止効果が高く、それが貼着された被貼着体の真偽の判定を容易にできる。
【0031】
次に、上述の液晶ラベル20を有する液晶ラベル連続体10の具体的な製造方法の一例について説明する。
【0032】
まず、基材として、特に表面処理が施されていない、帯状で厚さ50μmのPETフィルム(株式会社東洋紡製E−5000)を準備し、別途、基材の裏面に塗工されて液晶層を構成する塗液を準備する。
液晶層形成用塗液としては、次の混合塗液を用いる。
両末端にアクリル基を有するネマチック液晶(BASF社のPaliocolor LC242)・・・55.3重量%
キラル化合物(BASF社のPaliocolor LC756)・・・2.9重量%
紫外線重合開始剤(チバスペシャリティ−ケミカルズ社のIrgacure 369)・・・1.8重量%
溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)・・・40.0重量%
この液晶層形成用塗液をもって、グラビア版により、乾燥後の厚さが3μmとなるように、絵柄を含めて、凸文字または抜き文字の画線を形成するように塗工して、乾燥ゾーン(110〜120℃)を15秒間通過させて乾燥させ、コレステリック相を形成する。その後直ちに、紫外線照射をして、紫外線UV硬化を行い、コレステリック相を固定する。この塗液においてネマチック液晶を形成する温度は、59℃以上120〜124℃以下である。
これによって、基材上に、安定的なコレステリック相からなる液晶層を形成する。
【0033】
次に、紙の表面にシリコーン等の剥離剤が塗工されて剥離剤層が形成された剥離材の剥離剤層側の表面に、粘着剤が塗工されて接着剤層が形成されたものを別途準備し、液晶層が形成された基材の裏面と剥離材の表面に形成された接着剤層の面とを対向させ、両者を積層ローラ間を通過させることにより積層する。このようにして帯状の積層体110が形成される。この積層体110は、図4に示すように、透明性を有する帯状の基材122と、帯状の基材122の裏面側に間隔を隔てて設けられた、コレステリック液晶からなる複数の液晶層24、24、・・と、複数の液晶層24、24、・・を覆うように帯状の基材122の裏面側に設けられた帯状の接着剤層126と、帯状の接着剤層126の面であって帯状の基材122とは反対側の面に仮着された帯状の剥離材12とを含むものである。この積層体110では、複数の液晶ラベル20、20、・・を形成する液晶層24、24、・・が間隔を隔てて設けられている。
【0034】
そして、積層体110の基材122および接着剤層126を適宜な大きさの各液晶ラベル20に成形する切れ目を形成するとともに各液晶ラベル20に複数の剥離用切れ目28、28、・・を形成するために、図5に示すように、ダイカッタ200によって、積層体110の基材122の表面側から剥離材12の表面に至るように切れ目202が形成される。この場合、切れ目202として、図6に示すように、帯状の積層体110において帯状の基材122から帯状の接着剤層126にわたって複数の液晶層24、24、・・の周縁のそれぞれの外側に液晶ラベルの周縁に対応した形状のラベル成形用切れ目(ラベル用切れ目)が形成されると同時に、帯状の積層体110において帯状の基材122から帯状の接着剤層126にわたって液晶ラベルの周縁になる部分から液晶層24上にのびる剥離用切れ目28、28、・・が形成される。
【0035】
それから、図6および図7に示すように、帯状の積層体110において剥離材12と液晶ラベル20とを除いた不要部分、すなわち、帯状の積層体110において帯状の基材122から帯状の接着剤層126にわたるラベル用切れ目の外側の不要部分を、2つの剥離ローラ204、204(図7参照)間を通して帯状の剥離材12から剥離して除去していわゆるカス上げを行う。それによって、液晶ラベル20を有する液晶ラベル連続体10が製造される。この場合、不要部分の一部領域において基材122のみが剥離されることなく基材122および接着剤層126が剥離される。
【0036】
なお、比較例として上述の液晶ラベル連続体10において液晶ラベル20の液晶層24が基材22の裏面全面に設けられているものの場合には、それを製造する場合に、上述の積層体110において基材122の裏面全面に液晶層124が設けられる。
しかしながら、基材122の裏面全面に液晶層124が設けられた積層体110では、図8に示すように、ダイカッタ200で施した切れ目202の周囲の不要部分に液晶層124が存在するため、不要部分を剥離して除去する際に、不要部分の一部領域において基材122のみが液晶層124から剥離されてしまうことがある。
このように不要部分の基材122のみが剥離されてしまうことがないようにするためには、基材122の液晶層124からの剥離強度を基材122から接着剤層126までの不要部分全体の剥離材12からの剥離強度より強くする必要がある。
したがって、そのような比較例は、基材122の接着力を調整したり接着剤層126の粘着剤などを選択したりする必要があって製造しにくい。
【0037】
図9はこの発明にかかる液晶ラベル連続体の他の例を示す平面図解図であり、図10はその液晶ラベル連続体の断面図解図である。図9に示す液晶ラベル連続体10は、図1に示す液晶ラベル連続体10と比べて、特に、液晶ラベル20の液晶層24の光輝性を際立たせるための背景層30が、液晶ラベル20の基材22の裏面に液晶層24を覆うように設けられている。そのため、接着剤層26は、背景層30の面において基材22とは反対側の面に液晶層24や背景層30を覆うように設けられている。また、剥離用切れ目28、28、・・は、基材22、液晶層24および接着剤層26だけでなく背景層30にも形成されている。
【0038】
背景層30は、墨インキや赤、青等の着色インキ等を印刷・塗工することによって形成される。背景層30は、液晶層24の光輝性を際立たせるために形成されるものであって、液晶層24を覆うように基材22の裏面全面にわたって形成されている。特に、背景層30としては、墨インキ等で形成された黒色が、液晶層24の光輝性を際立たせるために優れている。
また、背景層30の色彩によって、液晶層24の目視での色調が変化するので、背景層30を形成するインキの組成や色が重要である。たとえば、背景層30の色が黒のときは、液晶層24を目視すると、グリーンからブルーあるいは青紫の光輝性を示すのに対し、背景層30が赤のときは、液晶層24を目視すると、オレンジから紫の光輝性を示し、また、背景層30が白に近い着色のときには、液晶層24は、乳白色またはパール調を示す。
したがって、背景層30を形成する色を2以上に区分けして形成すると、液晶層24を目視したとき、背景層30の色彩の変化に対応した彩り鮮やかな液晶ラベルとなる。
【0039】
図9に液晶ラベル20は、特に、基材22側から見ると、見る方向によって、緑ないし青紫に変化する鮮やかな光輝性を示す。そのため、液晶層24に基づいて液晶ラベル20の真正性を識別することができる。さらに、液晶層24の形状を認識することによっても、液晶ラベル20の真正性を識別することができる。
【0040】
また、図9に示す液晶ラベル20でも、図1に示す液晶ラベル20と同様に、コレステリック液晶からなる液晶層24が基材22の裏面側において基材22の周縁に至らないように基材22より小さく設けられているため、容易に確実に製造することができる。
【0041】
さらに、図9に示す液晶ラベル20でも、図1に示す液晶ラベル20と同様に、コレステリック液晶からなる液晶層24が基材22の裏面側において基材22の周縁に至らないように基材22より小さく設けられるので、液晶層24が基材22の周縁に至るように基材22と同じ大きさに設けられるものと比べて、液晶層24の材料コストを抑えることができる。
【0042】
さらに、図9に示す液晶ラベル20でも、図1に示す液晶ラベル20と同様に、コレステリック液晶からなる液晶層24が用いられているので、偽造を防止することができる。
【0043】
また、図9に示す液晶ラベル20でも、図1に示す液晶ラベル20と同様に、基材22において基材22の周縁から液晶層24上にのびる剥離用切れ目28が形成されているので、それを被貼着体に貼着した後に不法に剥がそうとしても、基材22が剥離用切れ目28を延長するように破れながら液晶層24から剥がれるため、貼替えられることを防止することができる。すなわち、剥離用切れ目28は基材22と液晶層24との間の剥離開始点となるように作用し、液晶層24を基材22の端縁にかからないように内側に設けているにもかかわらず、基材22が液晶層24から確実に剥がれてしまい、ラベルを貼替えることができない。
【0044】
図9に示す液晶ラベル20も、図1に示す液晶ラベル20と同様に、たとえば、ハードディスクドライブ(HDD)の補償期間の改ざん防止に用いられる。この場合、液晶ラベル20は、HDDのシリアルナンバーやバーコードを見やすくするために、背景層30でシリアルナンバーやバーコードを覆わないように貼着することが好ましい。
【0045】
また、図9に示す液晶ラベル20は、インクジェットプリンタ用用紙の梱包袋の封止材としても用いることができる。なお、図1に示す液晶ラベル20も、インクジェットプリンタ用用紙の梱包袋の封止材としても用いられ得る。
【0046】
次に、図9に示す液晶ラベル20を有する液晶ラベル連続体10の具体的な製造方法の一例について説明する。
【0047】
まず、図1に示す液晶ラベル連続体10を製造する上述の製造方法と同様にして、基材上に液晶層を形成する。
【0048】
次に、背景層を形成するための墨インキ塗液(東洋インキ製造株式会社製PANN ECO)を準備し、この墨インキ塗液を基材の裏面に、液晶層を覆うように、グラビア版により乾燥後の平均厚さ3μmとなるよう塗工する。その後、乾燥ゾーン(70〜80℃)を3秒間通過させて、墨インキ塗液を乾燥する。
このようにして、液晶層を覆う背景層が基材の裏面に形成される。
【0049】
次に、紙の表面にシリコーン等の剥離剤が塗工されて剥離剤層が形成された剥離材の剥離剤層側の表面に、粘着剤が塗工されて接着剤層が形成されたものを別途準備し、基材の裏面側に形成された背景層の面と剥離材の表面に形成された接着剤層の面とを対向させ、両者を積層ローラ間を通過させることにより積層する。このようにして帯状の背景層を有する積層体110が形成される。この積層体110は、図11に示すように、帯状の基材122、液晶層24、背景層130、接着剤層126および剥離材12を積層したものである。この積層体110でも、複数の液晶ラベル20、20、・・を形成する液晶層24、24、・・が間隔を隔てて設けられている。
【0050】
そして、積層体110の基材122、背景層130および接着剤層126を適宜な大きさの各液晶ラベル20に成形する切れ目を形成するとともに各液晶ラベル20に複数の剥離用切れ目28、28、・・を形成するために、図12に示すように、ダイカッタ200によって、積層体110の基材122の表面側から剥離材12の表面に至るように切れ目202を施す。この場合、切れ目202は、積層体110の基材122、背景層130および接着剤層126に対して液晶ラベル20の輪郭に対応して施されるとともに、積層体110の基材122、液晶層24、背景層130および接着剤層126に対して複数の剥離用切れ目28、28、・・に対応して施される。
【0051】
それから、図13に示すように、積層体110において剥離材12と液晶ラベル20とを除いた不要部分(カス)を2つに剥離ローラ204、204間を通して剥離材12から剥離して除去していわゆるカス上げを行う。それによって、図9に示す液晶ラベル20を有する液晶ラベル連続体10が製造される。この場合、不要部分の一部領域において基材122のみが剥離されることなく基材122、背景層130および接着剤層126が剥離される。
【0052】
なお、上述の各液晶ラベル連続体10では、基材22を液晶層24から剥離しやすくするために液晶層24を構成する液晶層形成用塗液にバインダーを全く用いていないが、液晶層形成用塗液にバインダーを少量加えても、その量を抑制することによって、基材22を液晶層24から剥離しやすくできる。
【0053】
また、上述の各液晶ラベル連続体10の液晶ラベル20では基材22が液晶層24から剥離しやすいように形成されているが、被貼着体に貼付けられた液晶ラベル20を被貼着体から剥がそうとしたとき、液晶ラベル20が破壊して偽物のラベルに貼替えられないようにするために、液晶層24の凝集破壊強度を、他の層の凝集破壊強度および各層間の接着強度より弱く構成してもよい。このように構成すれば、液晶ラベル20を被貼着体から剥がそうとしたとき、液晶ラベル20の液晶層24において凝集破壊し、他の偽物の品物にラベルを貼替え、偽物を真正品と見せかけることができなくなる。
【0054】
また、上述の各液晶ラベル連続体10では、直線状の複数の剥離用切れ目28、28、・・が液晶ラベル20に放射状に形成されているが、剥離用切れ目28はたとえば曲線状など他の形状に形成されてもよく、また、放射状に限らず平行して形成されても交差して形成されてもよい。
また、剥離用切れ目28、28、・・は、基材22の表面から剥離材12の表面に至るように形成されているが、これの剥離用切れ目28、28、・・は、基材22を除く液晶層24や接着剤層26あるいは背景層30には形成されなくてもよい。
【0055】
また、上述の各液晶ラベル連続体10の製造方法では、積層体110にラベル用切れ目と剥離用切れ目とがダイカッタで同時に形成されているが、ラベル用切れ目と剥離用切れ目とは順次形成されてもよい。また、ラベル用切れ目と剥離用切れ目とは、レーザで形成されてもよい。
【0056】
さらに、上述の各液晶ラベル連続体10の製造方法では、剥離用切れ目28を形成する切れ目がラベル成形用切れ目からその内側に至るように形成されているが、剥離用切れ目28を形成するにあたりラベル成形用切れ目に交差するように切れ目を設けてもよい。このように剥離用切れ目28を形成する切れ目がラベル成形用切れ目に交差するように形成されれば、剥離用切れ目28を基材22の端部に確実に形成することができる。
【0057】
また、上述の各液晶ラベル連続体10では複数の液晶ラベル20、20、・・が一列に設けられているが、複数の液晶ラベル20、20、・・はたとえば2列など他の配列に設けられてもよい。
【0058】
また、上述の各液晶ラベル連続体10では液晶ラベル20の基材22が楕円形状に形成されているが、液晶ラベル20の基材22はたとえば円形状や多角形状など他の形状に形成されてもよい。
【0059】
また、上述の各液晶ラベル連続体10では液晶ラベル20の液晶層24が画線を形成するように部分的に形成されているが、液晶層24は基材22の裏面において端部を除く全面に形成されてもよい。
【0060】
また、図9に示す液晶ラベル連続体10では背景層30が基材22の裏面側に全面に形成されているが、背景層30は画線を形成するように部分的に形成されてもよい。
【0061】
また、上述の各液晶ラベル連続体10には、液晶ラベル20の基材22と液晶層24との間に、隠蔽性を有するインキなどで隠蔽層が画線を形成するように部分的に形成されてもよい。
【0062】
なお、上述の各液晶ラベル連続体における凸文字および抜き文字は、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等を用いて形成することができるが、その中でも、グラビア印刷、フレキソ印刷が、画線をクリアに形成しやすい等のため好ましく、より好ましくは、グラビア印刷によって形成することである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明によれば、容易に確実に製造することができる偽造および貼替えを防止した液晶ラベルが得られる。
【符号の説明】
【0064】
10 液晶ラベル連続体
12 剥離材
20 液晶ラベル
22 基材
24 液晶層
26 接着剤層
28 剥離用切れ目
30 背景層
110 積層体
122 基材
124 液晶層
126 接着剤層
130 背景層
200 ダイカッタ
202 切れ目
204 剥離ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する基材、
前記基材の裏面側において前記基材の周縁に至らないように前記基材より小さく設けられた、コレステリック液晶からなる液晶層、および
前記液晶層を覆うように前記基材の裏面側に設けられた接着剤層を含み、
前記基材において前記基材の周縁から前記液晶層上にのびる剥離用切れ目が形成された、液晶ラベル。
【請求項2】
帯状の剥離材、および
前記剥離材の表面に間隔を隔てて複数仮着された請求項1に記載の液晶ラベルを有する、液晶ラベル連続体。
【請求項3】
請求項2に記載された液晶ラベル連続体を製造する液層ラベル連続体の製造方法であって、
透明性を有する帯状の基材、前記帯状の基材の裏面側に間隔を隔てて設けられた複数の液晶ラベル用のコレステリック液晶からなる液晶層、複数の前記液晶ラベル用の液晶層を覆うように前記帯状の基材の裏面側に設けられた帯状の接着剤層、および前記帯状の接着剤層の面であって前記帯状の基材とは反対側の面に仮着された帯状の剥離材を含む帯状の積層体を形成する工程、
前記帯状の積層体において前記帯状の基材から前記帯状の接着剤層にわたって前記複数の液晶ラベル用の液晶層の周縁のそれぞれの外側に液晶ラベルの周縁に対応した形状のラベル用切れ目を形成する工程、
前記帯状の積層体において少なくとも前記帯状の基材における液晶ラベルの周縁になる部分から前記液晶ラベル用の液晶層上にのびるように剥離用切れ目を形成する工程、および
前記帯状の積層体において前記帯状の基材から前記帯状の接着剤層にわたる前記ラベル用切れ目の外側の不要部分を前記帯状の剥離材から剥離する工程を含む、液晶ラベル連続体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−237698(P2010−237698A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127662(P2010−127662)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【分割の表示】特願2004−223851(P2004−223851)の分割
【原出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000205306)大阪シーリング印刷株式会社 (90)
【Fターム(参考)】