説明

液晶化合物の製造方法

【課題】
フェノール性水酸基を有する中心部前駆体とカルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行う液晶化合物の製造方法であって、エステル化反応後において、効率よく有機塩類が除去でき、目的とする液晶化合物を高純度で効率よく単離できる液晶化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】
不活性溶媒中、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物とを反応させることにより、前記中心部前駆体のフェノール性水酸基と側鎖部前駆体のカルボキシル基とがエステル結合してなる液晶化合物を含む反応液を得る工程(I)、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加して全容を攪拌した後、反応液に、水及び所望により水に混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行う工程(II)、及び、工程(II)で得られた処理液に、第2のアルコールの所定量を添加して、前記液晶化合物を結晶化させる工程(III)を含む液晶化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行う液晶化合物の製造方法であって、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離することができる液晶化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸を混合酸無水物に誘導し、このものとフェノール性水酸基を反応させることによりエステル化を行う円盤状液晶化合物の製造方法が特許文献1に報告されている。
しかしながら、この製造方法により棒状液晶化合物を工業的に製造する場合には、反応後の処理操作における抽出工程において、分液性が非常に悪くなり、抽出操作が困難を極めるため、この方法をそのまま適用することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−95467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行う液晶化合物の製造方法であって、エステル化反応後において、効率よく有機塩類が除去でき、また、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離することができる液晶化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行って得られた反応液から、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離する方法について鋭意研究した。その結果、エステル化反応により得られた反応液に少量のアルコールを添加して全容を攪拌した後、水及び所望により水に混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行うと、有機塩類を水層側に効率よく除去することができ、更にその後、分離した有機層にアルコールを添加することで、目的とする液晶化合物の結晶を高純度で効率よく単離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして本発明によれば、下記(1)〜(7)の液晶化合物の製造方法が提供される。
(1)不活性溶媒中、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物とを反応させることにより、前記中心部前駆体のフェノール性水酸基と側鎖部前駆体のカルボキシル基とがエステル結合してなる液晶化合物を含む反応液を得る工程(I)、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加して全容を攪拌した後、反応液に、水及び所望により水に混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行う工程(II)、及び、工程(II)で得られた処理液に、第2のアルコールの所定量を添加して、前記液晶化合物を結晶化させる工程(III)を含む液晶化合物の製造方法。
(2)前記中心部前駆体が、式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、X〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−N(R)R、又は−O−C(=O)−N(R)Rを表す。ここで、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
及び/又はRがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕
である(1)に記載の液晶化合物の製造方法。
(4)前記中心部前駆体が、式(2)
【0009】
【化2】

【0010】
〔式中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−OR、又は−C(=O)−ORを表す。ここで、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、又は−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)〕
で表されるアジン化合物である(2)に記載の液晶化合物の製造方法。
(4)側鎖部前駆体の混合酸無水物が、式(3)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、nは1〜20の整数を表す。)
で示されるカルボン酸の混合酸無水物である(1)〜(3)のいずれかに記載のキラル化合物の製造方法。
(5)前記第1のアルコールとして、式:R−OH(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるアルコールを用いる(1)〜(4)のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
(6)前記第1のアルコールとして、メタノールを用いる(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
(7)前記第2のアルコールとして、式:R−OH(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるアルコールを用いる(1)〜(6)のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
(8)前記第2のアルコールとして、メタノールを用いる(1)〜(7)のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体とのエステル化反応を行う液晶化合物の製造方法であって、エステル化反応後において、効率よく有機塩類が除去でき、その処理液にアルコールを添加することで、目的とする液晶化合物を高純度で効率よく単離することができる液晶化合物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】液晶硬化膜の偏光顕微鏡の観察写真図であり、配向欠陥が全く見られない場合である。
【図2】液晶硬化膜の偏光顕微鏡の観察写真図であり、配向欠陥が部分的に見られる場合である。
【図3】液晶硬化膜の偏光顕微鏡の観察写真図であり、全面にわたって配向欠陥が存在する場合である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、不活性溶媒中、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物とを反応させることにより、前記中心部前駆体のフェノール性水酸基と側鎖部前駆体のカルボキシル基とがエステル結合してなる液晶化合物を含む反応液を得る工程(I)、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加して全容を攪拌した後、反応液に、水及び所望により水と混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行う工程(II)、及び、工程(II)で得られた処理液に、第2のアルコールの所定量を添加して、前記液晶化合物を結晶化させる工程(III)を含む液晶化合物の製造方法である。
【0016】
(液晶化合物)
本発明の対象とする液晶化合物は、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体のフェノール水酸基と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体のカルボキシル基とがエステル結合してなる、棒状の液晶化合物である。
【0017】
(中心部前駆体)
本発明に用いる中心部前駆体は、分子内に、フェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、分子内に、ベンゼン環等の芳香環と、該芳香環に結合する水酸基を有する化合物)であればよいが、分子内に、フェノール性水酸基及びアジン結合を有する化合物がより好ましい。
中心部前駆体におけるフェノール性水酸基の数は、特に限定されないが、通常1〜4、好ましくは1〜3、特に好ましくは2である。
【0018】
これらの中でも、本発明においては、前記中心部前駆体として、下記式(1)
【0019】
【化4】

【0020】
で示される化合物がより好ましい。
式(1)中、X〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−N(R)R、又は−O−C(=O)−N(R)Rを表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0021】
〜Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
これらの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。
【0022】
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、又は前記X〜Xの置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基と同様の、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0023】
また、R及び/又はRがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0024】
がアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又はC(=O)−が介在していてもよい。これらの中でも、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−が好ましい。
ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合は除かれる。
【0025】
前記Rの、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在するアルキル基の具体例としては、−CH−CH−O−CH−CH、−CH−CH−S−CH−CH、−CH−CH−O−C(=O)−CH、−CH−CH−C(=O)−O−CH、−CH−O−C(=O)−O−CH−CH、−CH−CH−NR−C(=O)−CH、−CH−CH−C(=O)−NR−CH、−CH−NR−CH−CH、−CH−CH−C(=O)−CH等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、本発明の製造方法においては、原料の入手しやすさ、及び光学特性に優れた液晶化合物の混合物が得られる観点から、前記式(1)で示される化合物として、前記式(1)中、X〜Xがそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、−OR、又は−C(=O)−ORである化合物が好ましく、式(2)
【0027】
【化5】

【0028】
で示される化合物が特に好ましい。
式(2)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−OR、又は−C(=O)−ORを表す。ここで、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、又は−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)
【0029】
前記中心部前駆体の多くは公知物質であり、公知の方法により製造することができる。例えば、分子内に、アジン結合とフェノール性水酸基を有する化合物は、下記に示す方法により製造することができる(特開平10−59919号公報、特開平11-140446号公報等参照)。
【0030】
【化6】

【0031】
(式中、X〜Xはそれぞれ独立して、前記と同じ意味を表す。
及びDは、水素原子;又はt−ブチルジメチルシリル基、ベンジル基、アセチル基等のフェノール性水酸基の保護基(D’);を表す。)
【0032】
すなわち、ヒドラジン(ヒドラジン一水和物)に、アルデヒド化合物(10a)及びアルデヒド化合物(10b)を順次反応させて化合物(11)を得る。化合物(11)において、D及びDが水素原子である場合には、このものが目的とする中心部前駆体となる。また、化合物(11)において、D及びDがD’である場合には、化合物(11)のフェノール性水酸基の保護基D’を公知の方法により脱保護して、目的とする中心部前駆体(1)を得ることができる。
【0033】
(カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物)
本発明に用いるカルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物は、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体と、他の種類の酸(カルボン酸又はスルホン酸等)から誘導される酸無水物である。
【0034】
すなわち、本発明に用いるカルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物は、例えば、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体が式:A−COOH(Aは任意の有機基を表す。以下にて同じ。)で表される化合物の場合、式:A−C(=O)−O−C(=O)−B(Bは任意の有機基を表す。以下にて同じ。)、又は、式:A−C(=O)−O−SO−B等で表される化合物である。
【0035】
前記カルボキシル基を有する側鎖部前駆体としては、液晶化合物の側鎖部となり得る側鎖部前駆体であって、分子内にカルボキシル基を有する化合物であればよいが、分子末端に、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等の重合性基を有するものが好ましい。また、側鎖部前駆体が有するカルボキシル基の数は特に限定されないが、通常1〜4、好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
これらの中でも、本発明においては、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体として、下記式(3)
【0036】
【化7】

【0037】
(式中、nは1〜20の整数を表し、1〜10の整数が好ましい。)で示される化合物が好ましい。
【0038】
カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物は、例えば、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体を、塩基の存在下、他のカルボン酸ハライド又はスルホン酸ハライド等と反応させることにより得ることができる。
【0039】
用いる他のカルボン酸ハライドとしては、例えば、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、ベンゾイルクロライド等が挙げられる。
用いるスルホニルハライドとしては、例えば、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、フェニルスルホニルクロライド、パラトルエンスルホニルクロライド等が挙げられる。
他のカルボン酸ハライド又はスルホン酸ハライドの使用量は、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体に対して、通常1〜10倍モルである。
【0040】
用いる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;が挙げられる。
塩基の使用量は、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体に対して、通常1〜10倍モルである。
【0041】
カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物を得る反応の反応温度は、通常、0℃から溶媒の還流温度、好ましくは10℃〜50℃である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常、数分から数十時間、好ましくは数十分から数時間である。
【0042】
混合酸無水物を得る反応に用いる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、より収率よく目的物を得ることができる観点から、分子内に、エーテル基、エステル基、カルボニル基及びアミド基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有する溶媒が好ましい。
【0043】
分子内に、エーテル基、エステル基、カルボニル基及びアミド基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有する溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等の、分子内にエーテル基を有する溶媒;
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の、分子内にエステル基を有する溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の、分子内にカルボニル基を有する溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の、分子内にアミド基を有する溶媒;等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒の使用量は、前記カルボキシル基を有する側鎖部前駆体1gに対して、通常1〜100gである。
【0044】
本発明に用いるカルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物としては、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体を、塩基の存在下、他の種類のカルボン酸ハライド又はスルホン酸ハライド等と反応させて得られる反応液より単離したものであっても、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物として市販されているものであってもよい。また、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体を、塩基の存在下、他の種類のカルボン酸ハライド又はスルホン酸ハライド等と反応させて得られる反応液をそのまま次の反応に用いてもよい。
【0045】
本発明において用いるカルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物として、下記式(4)
【0046】
【化8】

【0047】
(式中、nは1〜20の整数を表し、1〜10の整数が好ましい。Rは、メチル基、トリフルオロメチル基等のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;を表す。)で示される化合物が特に好ましい。
【0048】
(工程(I))
本発明の製造方法は、前記フェノール性水酸基を有する中心部前駆体とカルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物とを反応させることにより、前記中心部前駆体のフェノール性水酸基と側鎖部前駆体のカルボキシル基とがエステル結合してなる液晶化合物を含む反応液を得る工程(I)を有する。
【0049】
工程(I)における反応を、前記フェノール性水酸基を有する中心部前駆体として、前記式(1)で表される化合物を、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物として、前記式(4)で表される化合物を用いる場合を例にして下記に示す。
【0050】
【化9】

【0051】
(式中、X〜X、n及びRは前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(1)で表される化合物(フェノール性水酸基を有する中心部前駆体)と、式(4)で表される混合酸無水物(カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物)とを、塩基の存在下に反応させることにより、エステル結合を有する式(5)で表される液晶化合物を得ることができる。
【0052】
工程(I)は、例えば、(i)前記フェノール性水酸基を有する中心部前駆体の溶媒溶液に、所定量の前記カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物及び塩基を添加して、全容を攪拌する方法、又は、(ii)前記カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物の溶媒溶液に、所定量の前記フェノール性水酸基を有する中心部前駆体及び塩基を添加して、全容を攪拌する方法により実施することができる。なかでも、収率よく目的物が得られること、及び生産効率の観点から、(ii)の方法が好ましい。
また、この場合、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物を調製した反応液からカルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物を単離することなく、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物を調製した反応液に、所定量のフェノール性水酸基を有する中心部前駆体及び塩基を添加して、全容を攪拌するようにしてもよい。
【0053】
前記カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物の使用量は、前記フェノール性水酸基を有する中心部前駆体に対して、通常2〜5当量である。
【0054】
工程(I)における反応に用いる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、より収率よく目的物を得ることができる観点から、分子内に、エーテル基、エステル基、カルボニル基及びアミド基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有する溶媒が好ましい。
【0055】
例えば、分子内に、エーテル基、エステル基、カルボニル基及びアミド基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基を有する溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等の、分子内にエーテル基を有する溶媒;
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の、分子内にエステル基を有する溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の、分子内にカルボニル基を有する溶媒;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の、分子内にアミド基を有する溶媒;等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒の使用量は、前記フェノール性水酸基を有する中心部前駆体1gに対して、通常1〜100gである。
【0056】
工程(I)における反応に用いる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;が挙げられる。
塩基の使用量は、前記カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物に対して、通常1〜5倍モルである。
【0057】
また、この場合、反応を促進する目的で、反応液に4−ジメチルアミノピリジンを添加することも好ましい。
4−ジメチルアミノピリジンの添加量は、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体混合酸無水物に対して、通常0.01〜1倍モルである。
【0058】
工程(I)における反応の反応温度は、通常、0℃から溶媒の還流温度、好ましくは10℃〜50℃である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常、数分から数十時間、好ましくは数十分から数時間である。
【0059】
(工程(II))
次いで、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加して全容を攪拌した後、反応液に、水及び所望により水に混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行う。
【0060】
すなわち、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加し、全容を攪拌することにより、その後における分液操作において、有機塩類を水層側へ効率よく除去することができ、目的とする液晶化合物を高純度な結晶として単離することができる。
【0061】
ここで用いる第1のアルコールとしては、特に限定されないが、収率よく目的とする液晶化合物を結晶化させる観点から、式:R−OH(式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基等の、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるアルコールが好ましい。なかでも、炭素数1〜3の一価のアルコールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0062】
第1のアルコールの添加量は、液晶化合物の種類や用いる反応溶媒の種類にも依存し、液晶化合物の結晶を析出させることなく、その後の分液操作において、不純物である有機塩類を効率よく水層側へ除去できる量であればよい。本発明においては、かかるアルコールの添加量を半経験的に定めることができる。
第1のアルコールの添加量は、前記フェノール性水酸基を有する中心部前駆体1gに対して、通常0.5〜5g、好ましくは1〜3gである。
【0063】
工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加して全容を攪拌する時間は、特に限定されないが、通常数分から数時間である。また、攪拌するときの温度は、通常0〜50℃、好ましくは10〜40℃である。
【0064】
その後、反応液に、水及び所望により水に混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行う。
水に混和しない有機溶媒は、より効率よく分液操作を行うために添加される。例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;等を用いることができる。
また、用いる水は、より分液性を高める観点から、食塩水、硫酸アンモニウム等の無機塩を水に溶解したものが好ましく、食塩水よりが好ましい。
【0065】
次いで、上記した分液操作により分離した有機層を分取する。なお、分取した有機層を、所望により水(食塩水等)で洗浄することを繰り返してもよい。
【0066】
(工程(III))
次いで、工程(II)で得た有機層(処理液)に、第2のアルコールの所定量を添加して、目的とする液晶化合物を結晶化させることで、目的とする液晶化合物を単離することができる。
【0067】
ここで用いる第2のアルコールとしては、前記第1のアルコールとして用いることができるものとして列記したものと同様のものが挙げられる。なかでも、炭素数1〜3の一価のアルコールが好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0068】
第2のアルコールの添加量は、液晶化合物の種類や用いる反応溶媒の種類にも依存し、目的とする液晶化合物の高純度な結晶を、反応液から収率よく析出させることができる量であればよい。本発明においては、かかるアルコールの添加量を半経験的に定めることができる。
【0069】
また、本発明においては、所望により、第2のアルコールとともに水を添加してもよい。第2のアルコールとともに水(蒸留水、脱イオン水又は超純水が好ましい。)を添加することにより、より高純度な液晶化合物の結晶を効率よく析出させることができる場合がある。水を添加する場合、水添加量は、第2のアルコール1gに対し、通常0.01〜10gの範囲である。
【0070】
次いで、析出した結晶をろ取し、必要により、得られる粗結晶を第2のアルコールで洗浄あるいは再結晶を繰り返すことにより、目的とする液晶化合物の高純度品を得ることができる。
【0071】
以上のようにして得られる液晶化合物の具体例としては、下記式(5)で示される化合物が挙げられ、下記式(5a)で示される化合物が特に好ましい。
【0072】
【化10】

【0073】
(式中、X〜X、nは前記と同じ意味を表す。)
【0074】
【化11】

【0075】
(式中、X、nは前記と同じ意味を表す。)
本発明により得られる液晶化合物の結晶は、硫黄原子含有イオン残存量が少ない極めて高純度なものである。本発明により得られる液晶化合物の結晶に含まれる硫黄原子含有イオン残存量は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0076】
硫黄原子含有イオン残存量は、例えば、得られた液晶化合物をクロロホルム/トリエチルアミンの混合液に溶解させた溶液を超純水により抽出し、分取した水相を自動燃焼装置(ヤナコ社製)にセットし、950℃で燃焼させたガスを、水/1M NaHCO水溶液/1M NaCO水溶液/30% H=2000/0.6/5.4/0.4(v/v/v)の吸収液に吸収させ、吸収させたガスをイオンクロマト装置を用いて測定することができる。
【0077】
本発明の製造方法により得られる液晶化合物を用いることにより、オイリーストリークと呼ばれる配向欠陥の少ない、高品質な液晶硬化膜を得ることができる。
【実施例】
【0078】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(製造例1)中心部前駆体(A)の合成
【0079】
【化12】

【0080】
冷却器、温度計及び滴下漏斗を備えた4つ口反応器に、窒素気流中で、ヒドラジン1水和物80.0g(1.6mol)を、メチルアルコール288.0gと水288.0gの混合溶媒に溶解した溶液を0℃に冷却した。この溶液中に、3−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(I)144.0g(0.8mol)をメチルアルコール288.0gと水658.0gの混合溶媒に混合して得たスラリー液を、0℃〜10℃で添加し、全容を5℃で3時間撹拌した。析出した結晶をヌッチェにて吸引濾過し、水144.0gで洗浄して、3−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド=ヒドラゾン(II)の含水結晶217.1gを得た。次に、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(III)127.0g(1.0mol)のメチルアルコール256.0g溶液に、上記で得たヒドラゾン(II)の含水結晶217.1gを、0℃〜10℃で2時間かけて徐々に加えた。得られた反応混合物を、15℃に昇温して2時間撹拌し、さらに、メチルアルコール512.0gを添加して25℃で5時間撹拌した。析出した結晶をヌッチェにて吸引濾過し、メチルアルコール200.0gで洗浄することで、式(A)で示される中心部前駆体(A)196.3g(収率82%)を得た。
【0081】
中心部前駆体(A)の構造は、H−NMRで同定した。
H−NMR(400MHz、CDCl、TMS、δppm):11.10(s,1H)、8.61(s,1H)、8.58(s,1H)、8.27(d,1H,J=2.2Hz)、8.01(dd,1H,J=2.0Hz,J=8.6Hz)、7.75(d,2H,J=8.6Hz)、7.06(d,1H,J=8.4Hz)、6.90(d,2H,J=8.4Hz)、5.21(s,1H)、4.00(s,3H)
【0082】
(実施例1)式(1a)で表される液晶化合物(1a)の合成
【0083】
【化13】

【0084】
窒素気流下、下記式(3a)
【0085】
【化14】

【0086】
に示される側鎖部前駆体(日本シイベルへグナー社製)73.1g(0.25mol)をテトラヒドロフラン208.8gに溶解させ、メタンスルホニルクロライド28.7g(0.25mol)を添加して0℃に冷却し、その溶液にトリエチルアミン26.3g(0.26mol)を滴下した。0℃で1時間撹拌後、4−ジメチルアミノピリジン1.5g(0.013mol)、中心部前駆体(A)29.8g(0.10mol)を添加し、さらに、トリエチルアミン27.3g(0.27mol)を滴下し、全容を20℃で2時間撹拌した。
反応液にメタノールを29.8g加え1時間撹拌した後、得られた処理液に酢酸エチル104.4g、及び10重量%食塩水149.2gを加えて分液し、有機層を分取した。得られた有機層を5重量%食塩水149.2gで洗浄した後、メタノール250.6gを加えて結晶化を行い、式(1a)で示される液晶化合物(1a)の粗結晶72.0gを得た。得られた粗結晶にトリエチルアミン0.4g、酢酸エチル372.9g、及びろ過助剤2.2gを添加し、全容を40℃で1時間撹拌後、30℃に冷却し、ろ過助剤及び不溶分をろ過により除去した。次に、得られたろ液にメタノール447.5gを加えて結晶化を行い、粗結晶67.8gを得た。更に、得られた粗結晶にトリエチルアミン0.3g、酢酸エチル335.6g、ろ過助剤2.0gを添加し、全容を40℃で1時間撹拌後、30℃に冷却し、ろ過助剤及び不溶分をろ過により除去した。次いで、得られたろ液にメタノール402.7gを加えて結晶化を行い、液晶化合物(1a)を61.8g得た。
【0087】
液晶化合物(1a)の構造は、H−NMRで同定した。
H−NMR(400MHz、CDCl、TMS、δppm):8.70(s,2H)、8.49(s,1H)、8.18−8.11(m,4H)、7.93(d,2H,J=7.6Hz)、7.40−7.26(m,4H)、6.99(d,4H,J=6.8Hz)、6.41(d,2H,J=17.2Hz)、6.13(dd,2H,J=13.2Hz,21.2Hz)、5.83(d,2H,J=13.0Hz)、4.20−4.06(m,8H)、3.60(s,3H)、1.85−1.70(m,8H)、1.57−1.20(m,8H)
【0088】
(硫黄原子含有イオン残存量測定)
実施例1で得た液晶化合物(1a)の1.3重量部をクロロホルム/トリエチルアミン=15重量部/0.05重量部の混合溶液に溶解させ、さらに超純水30重量部を加えて3分間撹拌した。静置後、水層を分取し、その水層を試験液をした。
試験液を自動燃焼装置(ヤナコ社製)にセットし、950℃で燃焼させたガスを水/1M NaHCO水溶液/1M NaCO水溶液/30%H=2000/0.6/5.4/0.4(v/v/v)の吸収液に吸収させ、吸収させたガスをイオンクロマト装置(DIONEX社製:ICS−500、IonPaccAS12A(4.0x250mm)、IonPaccAG12A(4.0x50mm))を用いて測定し、硫黄原子含有イオン残存量を測定した。
【0089】
(配向性の評価)
液晶混合物100重量部をシクロペンタノン153重量部に溶解して溶液とした。これに、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア1919)を3.3重量部、キラル剤6.0重量部、界面活性剤(1重量%のシクロペンタノン溶液として使用)11.6重量部を添加して溶解した溶液を調製し、試験液とした。
【0090】
ここで、液晶混合物として、重合性液晶化合物(1a)1.80重量部、及びLC7228(アデカ社製、下記式(X))
【0091】
【化15】

【0092】
20重量部からなる混合物を、キラル剤としてLC756(BASF社製、下記式(Y))
【0093】
【化16】

【0094】
を、界面活性剤としてセイミケミカル社製、KH−40を、それぞれ使用した。
試験液を、バーコーター(テスター産業社製:SA−203 バーコーター Rod No.8 シャフト径12.7mm)を用いて、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きのガラス基板に塗布した後、ホットプレート上にて100℃で3分間乾燥させた。
得られた皮膜に、水銀ランプで1000mJ/cmに相当する紫外線を照射して厚さ4μmの硬化膜を得た。
この硬化膜を偏光顕微鏡で観察し、オイリーストリークと呼ばれる配向欠陥の量を目視で確認して判定した。
【0095】
偏光顕微鏡の観察写真図を図1〜3に示す。図中、オイリーストリークと呼ばれる配向欠陥は黒い線として観察される。評価は5段階で判定し、配向欠陥が全く見られない場合(図1)を5、配向欠陥が部分的に見られる場合(図2)を3、全面に渡って配向欠陥が存在する場合(図3)を1と、それぞれ判定した。よって、値が大きいほど良い結果であることを示している。また、図で示されていない評価の2及び4については、顕微鏡写真の結果から目視にて図の中間と判断した場合にその評価とした。
【0096】
(比較例1)
窒素気流下、側鎖部前駆体(3a)(日本シイベルへグナー社製)73.1g(0.25mol)をテトラヒドロフラン208.8gに溶解させ、メタンスルホニルクロライド28.7g(0.25mol)を添加して得られた溶液を0℃に冷却し、そこへ、トリエチルアミン26.3g(0.26mol)を滴下した。全容を0℃で1時間撹拌後、4−ジメチルアミノピリジン1.5g(0.013mol)、中心部前駆体(A)29.8g(0.10mol)を添加し、次いでトリエチルアミン27.3g(0.27mol)を滴下し、全容を20℃で2時間撹拌した。
反応液にメタノールを372.9g加えて、結晶化を行い、重合性液晶化合物(1a)の粗結晶76.3gを得た。得られた粗結晶にトリエチルアミン0.3g、酢酸エチル335.6g、炭酸水素ナトリウム3.7gを添加し、45℃で1時間撹拌後、30℃に冷却し、重曹をろ過により除去した。次いで、得られたろ液にメタノール402.7gを加え結晶化を行い、粗結晶64.5gを得た。更に、得られた粗結晶にトリエチルアミン0.3g、酢酸エチル335.6g、ろ過助剤3.4gを添加し、40℃で1時間撹拌後、30℃に冷却し、ろ過助剤及び不溶分をろ過により除去した。次いで、得られたろ液にメタノール402.7gを加え結晶化を行い、液晶化合物(1a)の粗結晶を61.8g得た。
得られた粗結晶を乾燥させ、更に、乾燥粗結晶にトリエチルアミン0.3g、酢酸エチル302.0g、ろ過助剤3.1gを添加し、40℃で1時間撹拌後、30℃に冷却し、ろ過助剤及び不溶分をろ過により除去した。次いで、得られたろ液にメタノール360.4gを加え結晶化を行い、液晶化合物(1a)を50.8g得た。
【0097】
(比較例2)
窒素気流下、側鎖部前駆体(3a)(日本シイベルへグナー社製)73.1g(0.25mol)をテトラヒドロフラン208.8gに溶解させ、メタンスルホニルクロライド28.7g(0.25mol)を添加した。得られた溶液を0℃に冷却し、その溶液にトリエチルアミン26.3g(0.26mol)を滴下した。0℃で1時間撹拌後、4−ジメチルアミノピリジン1.5g(0.013mol)、中心部前駆体(A)29.8g(0.10mol)を添加し、次いでトリエチルアミン27.3g(0.27mol)を滴下した。20℃で2時間撹拌後、酢酸エチル104.4g、10%食塩水149.2gを加え分液した。この際、非常に分液性が悪く、乳化傾向になったが、可能な限り分液するまで待って分液した。得られた有機層にメタノール250.6gを加え結晶化を行い、液晶化合物(1a)を59.3g得た。
【0098】
比較例1、2で得られた液晶化合物(1a)のそれぞれについて、実施例1で得た液晶化合物(1a)の場合と同様にして、硫黄原子含有イオン残存量を測定し、配向性の評価を行った。
【0099】
実施例1、及び比較例1、2における重合性液晶化合物(1a)の収率、実施例1、比較例1、2で得た液晶化合物(1a)の残存硫黄原子含有イオン分析結果(ppm)、及び、実施例1、比較例1,2で得られた液晶化合物(1a)を用いて得られた液晶硬化膜の配向性の評価結果を表1にまとめて示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1より、実施例1では収率よく目的とする重合性液晶化合物(1a)が得られ、硫黄原子含有イオンの残存量も少なく、このものを用いて、配向性に優れた液晶硬化膜を形成できることがわかかる。
一方、実施例1と同様の反応を行った後、反応液に少量のメタノールを添加して攪拌後、分液する操作を行わずに、反応液に大量のメタノールを添加して液晶化合物(1a)を得た比較例1では、実施例1に比して、液晶化合物(1a)の単離収率も低く、硫黄原子含有イオンの残存量も多く、得られる液晶硬化膜の配向性も実施例1に比して劣っていた。
また、実施例1と同様の反応を行った後、反応液に少量のメタノールを添加することなく、水と酢酸エチルを添加して、分液して得られた有機層から液晶化合物(1a)を得る比較例2では、液晶化合物(1a)の単離収率は実施例1とほぼ同等であったが、硫黄原子含有イオンの残存量が非常に多く、得られる液晶硬化膜の配向性が著しく劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中、液晶化合物の中心部となり得る、フェノール性水酸基を有する中心部前駆体と、前記液晶化合物の側鎖部となり得る、カルボキシル基を有する側鎖部前駆体の混合酸無水物とを反応させることにより、前記中心部前駆体のフェノール性水酸基と側鎖部前駆体のカルボキシル基とがエステル結合してなる液晶化合物を含む反応液を得る工程(I)、工程(I)で得られた反応液に、第1のアルコールの所定量を添加して全容を攪拌した後、反応液に、水及び所望により水と混和しない有機溶媒を添加して分液操作を行う工程(II)、及び、工程(II)で得られた処理液に、第2のアルコールの所定量を添加して、前記液晶化合物を結晶化させる工程(III)を含む液晶化合物の製造方法。
【請求項2】
前記中心部前駆体が、式(1)
【化1】

〔式中、X〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−N(R)R、又は−O−C(=O)−N(R)Rを表す。
ここで、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
及び/又はRがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。
ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕
である請求項1記載の液晶化合物の製造方法。
【請求項3】
前記中心部前駆体が、式(2)
【化2】

〔式中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−OR、又は−C(=O)−ORを表す。ここで、Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、又は−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−が2以上隣接して介在する場合を除く。)〕
で表されるアジン化合物である請求項2に記載の液晶化合物の製造方法。
【請求項4】
側鎖部前駆体の混合酸無水物が、式(3)
【化3】

(式中、nは1〜20の整数を表す。)
で示されるカルボン酸の混合酸無水物である請求項1〜3のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
【請求項5】
前記第1のアルコールとして、式:R−OH(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるアルコールを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
【請求項6】
前記第1のアルコールとして、メタノールを用いる請求項1〜5のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
【請求項7】
前記第2のアルコールとして、式:R−OH(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるアルコールを用いる請求項1〜6のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。
【請求項8】
前記第2のアルコールとして、メタノールを用いる請求項1〜7のいずれかに記載の液晶化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−57635(P2011−57635A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210450(P2009−210450)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】