説明

液晶滴下工法用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子

【課題】保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶滴下工法用シール剤を提供する。また、該液晶滴下工法用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂と、光重合開始剤と、熱硬化剤とを含有する液晶滴下工法用シール剤であって、前記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有し、前記(メタ)アクリル樹脂は、水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂と、水素結合性官能基価が0.002mol/g以上の樹脂とを含有し、前記熱硬化剤は、一般式(1)で表される化合物である液晶滴下工法用シール剤。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶滴下工法用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶滴下工法用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示装置の製造方法は、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、従来の真空注入方式から、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されているような(メタ)アクリル樹脂等の光硬化性樹脂と光重合開始剤、及び、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と熱硬化剤を含有する、光、熱併用硬化型の樹脂組成物からなるシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式にかわりつつある。
【0003】
光、熱併用硬化型の樹脂組成物からなるシール剤を用いた滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方にシールパターンを形成する。次いで、シール剤未硬化の状態で液晶の微小滴を基板の枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、シール部に光を照射して光硬化性の樹脂の硬化を行う(仮硬化工程)。その後、加熱して熱硬化性の樹脂の硬化を行い、液晶表示パネルを作製する。
【0004】
通常、シール剤に用いられる樹脂としては、極性の低い液晶に対する汚染を防止するため、水酸基等の水素結合性官能基を有し、極性の高いエポキシ変性の(メタ)アクリル樹脂を多く含有したものが用いられる。また、熱硬化剤としては、反応性に優れることから、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。しかしながら、該水素結合性官能基は、(メタ)アクリル樹脂と有機酸ヒドラジドとの室温での反応を促進させるため、得られるシール剤が、ポットライフが短く、保存安定性に劣るものとなるという問題があった。エポキシ樹脂等の熱硬化性の樹脂の割合を高くすれば保存安定性を向上させることができるが、液晶に溶出して液晶汚染を引き起こし易くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】特開平5−295087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶滴下工法用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶滴下工法用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と、光重合開始剤と、熱硬化剤とを含有する液晶滴下工法用シール剤であって、上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有し、上記(メタ)アクリル樹脂は、水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂と、水素結合性官能基価が0.002mol/g以上の樹脂とを含有し、上記熱硬化剤は、下記一般式(1)で表される化合物である液晶滴下工法用シール剤である。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(1)中、XはCH、CH(OH)、C(OH)、C、CHCH(OH)、CHC(OH)、C(OH)C(OH)、CHCO、COCO、NHのいずれかで表される構造を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者は、シール剤に用いる硬化性樹脂として、水素結合性官能基を多く有し、極性の高い樹脂だけでなく、水素結合性官能基を有さない又は有していても少ない樹脂を含有する(メタ)アクリル樹脂を特定量配合した硬化性樹脂を用い、更に、熱硬化剤として一般式(1)で表される化合物を用いることにより、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶滴下工法用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有する。上記(メタ)アクリル樹脂の含有量が70重量%未満であると、得られるシール剤が液晶汚染を引き起こしやすくなる。上記(メタ)アクリル樹脂の含有量の好ましい下限は75重量%、より好ましい下限は80重量%である。
なお、本明細書において上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0012】
上記(メタ)アクリル樹脂は、2官能以上の光反応性官能基を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られる完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂、イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。また、上記(メタ)アクリル樹脂には、後述する1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基とエポキシ基とを有する樹脂は含まれない。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られるエステル化合物は特に限定されず、単官能のものとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0014】
また、2官能のものとしては、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
また、3官能以上のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られる完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0017】
上記完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂を合成するための原料となるエポキシ化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0018】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱化学社製)、エピクロン850−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jERYX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(新日鐵化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも新日鐵化学社製)、エポリードPB(ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jERYL−7000(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも新日鐵化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱化学社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られる完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、具体的には、例えば、レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製、「EX−201」)360重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸210重量部を、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、5時間反応させることによって得ることができる。
【0020】
上記完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYLRDX63182(いずれもダイセルサイテック社製)、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0021】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0022】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネートは特に限定されず、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,10−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
また、上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネートは特に限定されず、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0024】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体は特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の市販品やエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、完全(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の完全(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートは、具体的には、例えば、トリメチロールプロパン134重量部、重合禁止剤としてBHT0.2重量部、反応触媒としてジブチル錫ジラウリレート0.01重量部、イソホロンジイソシアネート666重量部を加え、60℃で還流攪拌しながら2時間反応させ、次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート51重量部を加え、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、2時間反応させることにより得ることができる。
【0026】
上記ウレタン(メタ)アクリレートで市販されているものとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9260、EBECRYL1290、EBECRYL5129、EBECRYL4842、EBECRYL210、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、EBECRYL2220(いずれもダイセルサイテック社製)、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンSH−500B(いずれも根上工業社製)、U−122P、U−108A、U−340P、U−4HA、U−6HA、U−324A、U−15HA、UA−5201P、UA−W2A、U−1084A、U−6LPA、U−2HA、U−2PHA、UA−4100、UA−7100、UA−4200、UA−4400、UA−340P、U−3HA、UA−7200、U−2061BA、U−10H、U−122A、U−340A、U−108、U−6H、UA−4000(いずれも新中村化学工業社製)、AH−600、AT−600、UA−306H、AI−600、UA−101T、UA−101I、UA−306T、UA−306I等が挙げられる。
【0027】
上記(メタ)アクリル樹脂は、液晶汚染の防止と光硬化性の観点から、1分子中に(メタ)アクロイルオキシ基を2個以上有するものが好ましい。
【0028】
上記硬化性樹脂は、上記(メタ)アクリル樹脂とは別に、1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基とエポキシ基とを有する樹脂を含有してもよい。このような化合物としては、例えば、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。具体的には、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、「N−770」)190gをトルエン500mLに溶解させ、この溶液にトリフェニルホスフィン0.1gを加え、均一な溶液とし、この溶液にアクリル酸35gを還流撹拌下にて2時間滴下した後、更に還流撹拌を6時間行い、次に、トルエンを除去することによって50モル%のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応したノボラック型固形変性エポキシ樹脂を得ることができる(この場合50%部分アクリル化されている)。
【0030】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561(ダイセルサイテック社製)が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリル樹脂は、水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂と、水素結合性官能基価が0.002mol/g以上の樹脂とを含有する。
なお、本明細書において上記水素結合性官能基価とは、下記式により算出される値である。
水素結合性官能基価(mol/g)
=(化合物Xの1分子中の水素結合性官能基数)/(化合物Xの分子量)
【0032】
上記水素結合性官能基としては、水素結合性を有する官能基又は残基等であれば特に限定されず、例えば、OH基、NH基、NHR基(Rは、芳香族又は脂肪族炭化水素、及びこれらの誘導体を表す)、COOH基、CONH基、NHOH基等や、分子内にNHCO結合、NH結合、CONHCO結合、NH−NH結合等の残基を有する基等が挙げられる。
【0033】
上記水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の(メタ)アクリル樹脂としては、上述したものの中では、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
上記水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の(メタ)アクリル樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、EBECRYL1150、EBECRYL150、IRR214、FA2D、IBOA、HDODA、TRPGDA(いずれもダイセルサイテック社製)、M−309、M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−402、M−408、M−450(いずれも東亞合成社製)、A−HD、A−200、APG−200、A−400、A−BPE−4(いずれも新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0035】
上記(メタ)アクリル樹脂における上記水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は15重量%、好ましい上限は50重量%である。上記水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂の含有量が15重量%未満であると、得られるシール剤が保存安定性に劣るものとなることがある。上記水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂の含有量が50重量%を超えると、得られるシール剤が液晶汚染を引き起こすことがある。上記水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂の含有量のより好ましい下限は25重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0036】
上記硬化性樹脂は(メタ)アクリロイルオキシ基を有さないその他のエポキシ樹脂を含有してもよい。特に、上記硬化性樹脂が上記1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基とエポキシ基とを有する樹脂を含有しない場合、上記その他のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
上記その他のエポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0037】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱化学社製)、エピクロン850−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jERYX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(新日鐵化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(新日鐵化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも新日鐵化学社製)、エポリードPB(ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jERYL−7000(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも新日鐵化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱化学社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0038】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、硬化性樹脂の(メタ)アクリロイルオキシ基とエポキシ基との比がモル比で70:30〜95:5になるように上記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する樹脂と上記エポキシ基を有する樹脂とを配合することが好ましい。
【0039】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、一般式(1)で表される化合物である熱硬化剤を含有する。本発明の液晶滴下工法用シール剤は、上述した硬化性樹脂と、一般式(1)で表される化合物である熱硬化剤とを組み合わせて用いることにより、保存安定性や液晶汚染を防止する効果に極めて優れたものとなる。
上記一般式(1)で表される化合物は、少量でも充分に熱硬化を進行させることができるため、配合量を少なくすることで液晶汚染を抑制することができる。
【0040】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド等が挙げられる。なかでも、熱硬化性、接着性、液晶汚染性の観点から、マロン酸ジヒドラジドが好適に用いられる。
【0041】
上記一般式(1)で表される化合物の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は10重量部である。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が0.5重量部未満であると、シール剤の熱硬化を充分に進行させることができなくなる。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が10重量部を超えると、液晶汚染を引き起こし、得られる液晶表示素子の表示性能が低下することがある。上記一般式(1)で表される化合物の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0042】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤は特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等を好適に用いることができる。
また、上記重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACUREOXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(以上、いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。なかでも吸収波長域が広いことから、IRGACURE651、IRGACURE907、ベンゾインイソプロピルエーテル、及び、ルシリンTPOが好適である。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光重合開始剤の含有量が0.1重量部未満であると、本発明の液晶滴下工法用シール剤を充分に硬化させることができないことがある。上記光重合開始剤の含有量が10重量部を超えると、貯蔵安定性が低下することがある。
【0044】
液晶表示素子の作製時にシール剤に光が当たらない部分がある等の場合、本発明の液晶滴下工法用シール剤は、熱ラジカル重合開始剤を含有することか好ましい。上記熱ラジカル重合開始剤を含有することにより、シール剤を確実に硬化させることができる。
【0045】
上記熱ラジカル重合開始剤は特に限定されず、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤であることが好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ開始剤とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイルオキシ基を硬化させることができるラジカル生成する分子量が300以上の化合物を意味する。
また、上記高分子アゾ開始剤は通常光照射によっても分解してラジカルを発生することから、後述する光ラジカル重合開始剤としても機能し得る。
【0046】
上記高分子アゾ開始剤は、10時間半減期温度の好ましい下限が50℃、好ましい上限が90℃である。上記高分子アゾ開始剤の10時間半減期温度が50℃未満であると、得られる液晶滴下工法用シール剤の貯蔵安定性が悪くなることがある。上記高分子アゾ開始剤の10時間半減期温度が90℃を超えると、本発明の液晶滴下工法用シール剤の硬化に高温かつ長時間を要し、パネルの生産性に影響を与えることがある。
なお、本明細書において上記10時間半減期温度とは、不活性ガスの存在下において、一定の温度で10時間熱分解反応を行った際に熱ラジカル重合開始剤の濃度が反応前の濃度の半分になるときの温度である。
【0047】
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量が1000未満であると、高分子アゾ開始剤が液晶に悪影響を与えることがある。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量が30万を超えると、(メタ)アクリル基を有する樹脂への混合が困難になることがある。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
【0048】
上記高分子アゾ開始剤は、例えば、アゾ基を介してポリジメチルシロキサンやポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
ポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられ、市販されているものとしては、例えばVPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0049】
上記高分子アゾ開始剤としては、その他にも特開2008−50572号公報や特開2003−12784号公報に記載された下記一般式(I)で表される高分子アゾ化合物も好適に用いることができる。
【0050】
【化2】

【0051】
式(I)中、R12、R13、R22及びR23は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基又はシアノ基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の数であり、A11及びA12は、高分子鎖であり、Y11及びY12は、それぞれ独立に、−CO−O−、−O−CO−、−NH−CO−、−CO−NH−、−O−又は−S−である。
【0052】
上記一般式(I)中、R12、R13、R22及びR23で表わされる炭素原子数1〜10のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられる。
【0053】
上記一般式(I)中、A11及びA12で表わされる高分子鎖は特に限定されず、例えば、ポリオキシレン鎖、ポリメチレン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリシロキサン鎖、ポリ(メタ)アクリレート鎖、ポリスチレン−酢酸ビニル鎖、ポリアミド鎖、ポリイミド鎖、ポリウレタン鎖、ポリウレア鎖、ポリペプチド鎖等が挙げられる。なかでも、Y11が−O−CO−であり、Y12が−CO−O−である化合物が好ましく、A11及びA12で表される高分子鎖が、ポリエーテル鎖及びポリエステル鎖であるものが、特に安価で製造が容易であるのでより好ましい。
【0054】
上記一般式(I)のうち、A11及びA12がポリエーテル鎖である高分子アゾ化合物の中では、下記一般式(II)で示される化合物が、溶解性がよく、重合開始剤の分子量制御が容易であるので、より好ましい。
【0055】
【化3】

【0056】
式(II)中、R12、R13、R22、R23、a及びbは、上記一般式(I)と同じであり、R11及びR21は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜24のアルキル基を表し、Z11、Z12、Z21及びZ22は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、m、n、s及びtは、それぞれ独立に、0〜1000の数であり、m+nの和、s+tの和は、それぞれ独立に、2以上である。
【0057】
上記一般式(II)中、Z11、Z12、Z21及びZ22で表わされる炭素原子数1〜4のアルキレン基は、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、テトラメチレン、ブチレン、イソブチレン、エチルエチレン、ジメチルエチレン等が挙げられ、R11及びR21で表わされる炭素原子数1〜24のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、ラウリル、ステアリル、ベヘニル等が挙げられる。R11及びR21で表わされる炭素原子数1〜24のアルキル基は、炭素原子数が1〜4であるものが、反応性が高いため好ましい。
【0058】
上記一般式(I)で示される高分子アゾ化合物のA11及びA12がポリエステル鎖であるものの中では、下記一般式(III)で示される化合物が、溶解性が良く、耐水性に優れているため好ましい。
【0059】
【化4】

【0060】
式(III)中、R12、R13、R22、R23、a及びbは、上記一般式(I)と同じであり、Z13及びZ23は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜18のアルキレン基を表し、R31及びR41は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基を表し、p及びuは、それぞれ独立に、1〜1000の数である。
【0061】
上記一般式(III)中、Z13、Z23で表わされる炭素原子数1〜18のアルキレン基は、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、テトラメチレン、ブチレン、イソブチレン、エチルエチレン、ジメチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、1,4−ペンタンジイル、デカメチレン、ウンデカメチレン、1,4−ウンデカンジイル、ドデカメチレン、1,11−ヘプタデカンジイル、オクタデカメチレン等が挙げられ、R31及びR41で表わされる炭素原子数1〜24のアルキル基は、上記一般式(II)におけるR11及びR21として例示したものが挙げられる。R31及びR41で表わされる炭素原子数1〜24のアルキル基は、炭素原子数が1〜4であるものが、反応性が高いため好ましい。
【0062】
上記一般式(III)中、p及びuが20〜100であるものが、反応性が高いため好ましい。
【0063】
上記有機過酸化物は特に限定されず、10時間半減期温度の下限が80℃、上限が150℃のものが好適に用いられる。上記有機過酸化物の10時間半減期温度が80℃未満であると、得られるシール剤の常温における粘度の安定性が乏しくなることがある。上記有機過酸化物の10時間半減期温度が150℃を超えると、得られるシール剤の反応性が乏しくなり、80℃で迅速な硬化ができないことがある。上記有機過酸化物の10時間半減期温度のより好ましい下限は100℃、より好ましい上限は130℃である。
【0064】
上記有機過酸化物としては、具体的には例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系化合物や、1,1−ジ(t−ブチル−オキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール系化合物や、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーオキシエステル系化合物や、ジラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系化合物や、(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネイト等のパーオキシジカーボネイト系化合物や、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネイト等のパーオキシカーボネイト系化合物や、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系化合物や、t−アミルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0065】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、市販品を用いることもでき、有機過酸化物の市販品としては、例えば、パーメックD、パーメックH、パーメックN(いずれも日油社製)、ルペロックスDDM(アルケマ吉富社製)等のケトンパーオキサイド系化合物や、パーヘキサC、パーヘキサMC(いずれも日油社製)、ルペロックス230(アルケマ吉富社製)等のパーオキシケタール系化合物や、パーブチルE、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO(いずれも日油社製)等のアルキルパーオキシエステル系化合物や、パーロイルL、パーロイルSA、パーロイルIB(いずれも日油社製)等のジアシルパーオキサイド系化合物や、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP(いずれも日油社製)等のパーオキシジカーボネイト系化合物や、カヤカルボンAIC−75(化薬アクゾ社製)、ルペロックスTBEC(アルケマ吉富社製)等のパーオキシカーボネイト系化合物や、ルペロックスDI(アルケマ吉富社製)、パーブチルD(日油社製)等のジアルキルパーオキサイド系化合物や、パーメンタH、パークミルP(いずれも日油社製)、ルペロックスTAH(アルケマ吉富社製)等のハイドロパーオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0066】
本発明の液晶滴下工法用シール剤における上記熱ラジカル重合開始剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量が0.1重量部未満であると、上記シール剤を充分に硬化させることができなくなることがある。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量が30重量部を超えると、得られる液晶滴下工法用シール剤の粘度が高くなり、塗布作業性等に悪影響を与えることがある。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0067】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の更なる向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
上記充填剤は特に限定されず、例えば、タルク、石綿、シリカ、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、窒化珪素、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、セリサイト活性白土、窒化アルミニウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機充填剤が挙げられる。
【0068】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
上記シランカップリング剤は特に限定されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0069】
本発明の液晶滴下工法用シール剤は、更に、必要に応じて、粘度調整の為の反応性希釈剤、チクソ性を調整する揺変剤、パネルギャップ調整の為のポリマービーズ等のスペーサー、3−P−クロロフェニル−1,1−ジメチル尿素等の硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他添加剤等を含有してもよい。
【0070】
本発明の液晶滴下工法用シール剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、上記硬化性樹脂と、上記光重合開始剤と、上記一般式(1)で表される化合物である熱硬化剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等とを混合する方法等が挙げられる。この際、含有するイオン性不純物を除去するために、イオン吸着性固体と接触させてもよい。
【0071】
本発明の液晶滴下工法用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶滴下工法用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0072】
上記導電性微粒子は特に限定されず、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0073】
本発明の液晶滴下工法用シール剤及び/又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0074】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、例えば、ITO薄膜等の2枚の電極付き透明基板の一方に、本発明の液晶滴下工法用シール剤等をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により長方形状のシールパターンを形成する工程、本発明の液晶滴下工法用シール剤等が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方の透明基板を重ねあわせる工程、及び、本発明の液晶滴下工法用シール剤等のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶滴下工法用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶滴下工法用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0077】
(硬化性樹脂(A)の合成)
レゾルシン型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製、「デナコールEX−201」)1000重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸649重量部を、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、5時間反応させた。得られた樹脂100重量部を、反応物中のイオン性不純物を吸着させる為にクオルツとカオリンの天然結合物(ホフマンミネラル社製、「シリチンV85」)10重量部が充填されたカラムで濾過し、完全アクリル変性レゾルシン型エポキシ樹脂(硬化性樹脂(A))を得た。
【0078】
(硬化性樹脂(B)の合成)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER828EL」)1000重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸212重量部を、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、5時間反応させた。得られた樹脂100重量部を、反応物中のイオン性不純物を吸着させる為にクオルツとカオリンの天然結合物(ホフマンミネラル社製、「シリチンV85」)10重量部が充填されたカラムで濾過し、50%部分アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(硬化性樹脂(B))を得た。
【0079】
(硬化性樹脂(C)の合成)
ビスフェノールE型エポキシ樹脂(三井化学社製、「エポミックR710」)1000重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸221重量部を、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、5時間反応させた。得られた樹脂100重量部を、反応物中のイオン性不純物を吸着させる為にクオルツとカオリンの天然結合物(ホフマンミネラル社製、「シリチンV85」)10重量部が充填されたカラムで濾過し、50%部分アクリル変性ビスフェノールE型エポキシ樹脂(硬化性樹脂(C))を得た。
【0080】
(硬化性樹脂(D)の合成)
ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製、「YSLV80DE」)1000重量部、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール2重量部、反応触媒としてトリエチルアミン2重量部、及び、アクリル酸229重量部を、空気を送り込みながら90℃で還流攪拌し、5時間反応させた。得られた樹脂100重量部を、反応物中のイオン性不純物を吸着させる為にクオルツとカオリンの天然結合物(ホフマンミネラル社製、「シリチンV85」)10重量部が充填されたカラムで濾過し、50%部分アクリル変性ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(硬化性樹脂(D))を得た。
【0081】
(硬化性樹脂(E)の合成)
反応フラスコに2−ヒドロエキシエチルアクリレート116重量部とβ−プロピオラクトン144重量部を入れ、重合禁止剤としてハイドロキノン0.3重量部を加え、マントルヒーターで90℃に加熱して5時間撹拌した。得られた生成物に無水フタル酸148重量部を加えてさらに5時間撹拌した。続いて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER828EL」)170重量部を加え、90℃で5時間撹拌することで硬化性樹脂(E)を得た。
【0082】
(硬化性樹脂(F)の合成)
反応フラスコに2−ヒドロエキシエチルアクリレート116重量部とγ−バレロラクトン200重量部を入れ、重合禁止剤としてハイドロキノン0.3重量部を加え、マントルヒーターで90℃に加熱して5時間撹拌した。得られた生成物に無水フタル酸148重量部を加えてさらに5時間撹拌した。続いて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER828EL」)170重量部を加え、90℃で5時間撹拌することで硬化性樹脂(F)を得た。
【0083】
(実施例1〜12、及び、比較例1〜4)
表1〜3に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合させることにより実施例1〜12、及び、比較例1〜4の液晶滴下工法用シール剤を調製した。
なお、表1〜3において、硬化性樹脂(G)はビスフェノールAジアクリレート(ダイセルサイテック社製、「EBECRYL1150」)であり、硬化性樹脂(H)はイソシアヌル酸変性トリアクリレート(東亞合成社製、「M315」)であり、硬化性樹脂(I)はトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセルサイテック社製、「IRR214」)である。
【0084】
<評価>
実施例及び比較例で得られた液晶滴下工法用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1〜3に示した。
【0085】
(高温高湿下で駆動した後の液晶表示素子の表示性能)
得られたシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にてITO薄膜付きの透明電極基板に長方形の枠を描く様にシール剤を塗布した。続いて、TN液晶(チッソ社製、「JC−5001LA」)の微小滴を液晶滴下装置にて滴下塗布し、他方の透明基板を、真空張り合わせ装置にて5Paの真空下にて張り合わせた。張り合わせ後のセルを紫外線照射機に投入して3000mJ/cmの紫外線でシール剤を硬化させた後、120℃のオーブンにて60分間シール剤を熱硬化させ、液晶表示素子を得た。得られた液晶表示素子を80℃、90%RHの環境下において36時間保管した後、AC3.5Vの電圧駆動をさせ、中間調のシール剤周辺の色ムラを目視で観察し液晶表示素子の表示性能を評価した。シール剤周辺に、色ムラが全くなかった場合を「◎」、色ムラがほとんどなかった場合を「○」、少し色ムラがあった場合を「△」、色ムラがかなりあった場合を「×」として評価した。
【0086】
(保存安定性)
シール剤を温度25℃、湿度50%RHの雰囲気下で48時間保存した後に、E型粘度計で粘度を測定し、保存前の粘度からの増粘率を下記の式にて計算した。
増粘率(%)=100×(保存後の粘度)/(保存前の粘度)
増粘率が105%未満であった場合を「◎」、105%以上110%未満であった場合を「○」、110%以上120%未満であった場合を「△」、120%以上であった場合を「×」として評価した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、保存安定性に優れ、液晶汚染を引き起こすことがほとんどない液晶滴下工法用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶滴下工法用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、光重合開始剤と、熱硬化剤とを含有する液晶滴下工法用シール剤であって、
前記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂を70重量%以上含有し、
前記(メタ)アクリル樹脂は、水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂と、水素結合性官能基価が0.002mol/g以上の樹脂とを含有し、
前記熱硬化剤は、一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする液晶滴下工法用シール剤。
【化1】

一般式(1)中、XはCH、CH(OH)、C(OH)、C、CHCH(OH)、CHC(OH)、C(OH)C(OH)、CHCO、COCO、NHのいずれかで表される構造を表す。
【請求項2】
(メタ)アクリル樹脂は、水素結合性官能基価が0.002mol/g未満の樹脂を15〜50重量%含有することを特徴とする請求項1記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
熱ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の液晶滴下工法用シール剤と、導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項5】
請求項1、2若しくは3記載の液晶滴下工法用シール剤及び/又は請求項4記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−127998(P2012−127998A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276803(P2010−276803)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】