説明

液晶素子を製造する方法、液晶素子、及び液晶素子を製造する装置

【課題】より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する方法を提供する。
【解決手段】基板に設けられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する方法は、高分子液晶のガラス転移温度以上高分子液晶の透明点未満の温度で高分子液晶の層に圧力を加えることなく又は高分子液晶の層に1000Pa以下の圧力を加えながら高分子液晶の層にせん断力を加えることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子を製造する方法、液晶素子、及び液晶素子を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶素子を製造する方法、液晶素子、及び液晶素子を製造する装置に関連するいくつかの技術が、開示されている。
【0003】
例えば、特開平2−123331号公報(特許文献1)の第1頁左下欄第5行目から第9行目までには、"基板上に積層された高分子液晶にずり応力を与えて配向させる方法であって、ずり応力を与えながら高分子液晶の温度を等方相を示す温度域から液晶相を示す温度域まで連続的に低下させることを特徴とする高分子液晶の配向方法"が、開示されている。
【0004】
また、特許文献1の第4頁左下欄第16行目から右下欄第3行目までには、"銅板には、高分子液晶層2の1cm当たり500gの圧力をかけ、銅板を2cm/secの移動速度で移動させて、高分子液晶にずり応力をかけて配向させた"ことが、開示されている。
【0005】
さらに、特許文献1の第5頁左上欄第1行目から第3行目までには、"得られた高分子液晶層を実施例1と同様の手法で偏光顕微鏡観察した結果、明暗コントラスト比は1:600であった"ことが、開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される高分子液晶の配向方法のような、従来の高分子液晶の配向方法を用いた場合には、高分子液晶の配向が十分ではないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−123331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第一の目的は、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する方法を提供することである。
【0009】
本発明の第二の目的は、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を提供することである。
【0010】
本発明の第三の目的は、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、基板に設けられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する方法において、前記高分子液晶のガラス転移温度以上前記高分子液晶の透明点未満の温度で前記高分子液晶の層に圧力を加えることなく又は前記高分子液晶の層に1000Pa以下の圧力を加えながら前記高分子液晶の層にせん断力を加えることを含むことを特徴とする、液晶素子を製造する方法である。
【0012】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様である液晶素子を製造する方法によって製造されることを特徴とする、液晶素子である。
【0013】
本発明の第三の態様は、第一の基板に設けられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する装置において、前記高分子液晶の層を加熱する手段、前記高分子液晶の層に提供される第二の基板を吸着する手段、及び前記第二の基板を吸着する手段によって吸着された前記第二の基板を前記第一の基板に対して相対的に移動させる手段を含むことを特徴とする、液晶素子を製造する装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一の態様によれば、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する方法を提供することが可能になる。
【0015】
本発明の第二の態様によれば、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を提供することが可能になる。
【0016】
本発明の第三の態様によれば、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明による液晶素子を製造する方法の例及び本発明による液晶素子の例を概略的に説明する図である。
【図2】図2は、本発明による液晶素子を製造する装置の例を概略的に説明する図である。
【図3】図3は、本発明による液晶素子を製造する装置の例における中空体の第一の例を概略的に説明する図である。
【図4】図4は、本発明による液晶素子を製造する装置の例における中空体の第二の例を概略的に説明する図である。
【図5】図5は、本発明による液晶素子を製造する装置の例における中空体の第三の例を概略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0019】
図1は、本発明による液晶素子を製造する方法の例及び本発明による液晶素子の例を概略的に説明する図である。図1(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、本発明による液晶素子を製造する方法の例におけるステップを説明する図である。
【0020】
図1(a)、(b)、及び(c)には、第一の基板101に設けられた高分子液晶の層107を含む液晶素子108を製造する方法が示されている。
【0021】
まず、図1(a)に示すように、第一の基板101に配向制御前の高分子液晶の層102を設ける。
【0022】
図1(a)、(b)、及び(c)に示されるような本発明による液晶素子を製造する方法における高分子液晶は、高分子液晶のガラス転移温度以上高分子液晶の透明点未満の温度で高分子液晶の層に圧力を加えることなく又は高分子液晶の層に1000Pa以下の圧力を加えながら高分子液晶の層にせん断力を加えることが可能である限り、特に限定されないが、高分子液晶の数平均分子量は、好ましくは、2000以上30000以下、より好ましくは、3000以上20000以下である。高分子液晶の数平均分子量が、2000以上である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102により効果的にせん断力を加えることが可能になる。高分子液晶の数平均分子量が、30000以下である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102により容易にせん断力を加えることが可能になる。
【0023】
ここで、第一の基板101は、第一の基板101を吸着することが可能な第一のステージ103に吸着されている。また、ステージ103は、温度を調節することが可能なステージである。さらに、ステージ103は、互いに直交する三つの軸の方向、すなわち、図1(a)に示すX、Y、及びZ軸の方向に移動させることが可能なステージである。ここで、第一の基板101は、配向制御前の高分子液晶の層102の側に、高分子液晶を配向させる配向膜を有することが好ましい。この場合には、後述するように、配向制御前の高分子液晶の層102における高分子液晶の配向を制御した後に、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の制御された配向をより安定化させることが可能になる。
【0024】
一方、第一の基板101に設けられた配向制御前の高分子液晶の層102には、さらに第二の基板104が設けられる。
【0025】
第一の基板101と同様に、第二の基板104は、第二の基板104を吸着することが可能な第二のステージ105に吸着されている。また、ステージ103と同様に、ステージ105は、温度を調節することが可能なステージである。さらに、ステージ105は、図1(a)に示すX、Y、及びZ軸の方向に移動させることが可能なステージである。第一の基板101と同様に、第二の基板104は、配向制御前の高分子液晶の層102の側に、高分子液晶を配向させる配向膜を有することが好ましい。この場合には、後述するように、配向制御前の高分子液晶の層102における高分子液晶の配向を制御した後に、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の制御された配向をより安定化させることが可能になる。
【0026】
なお、図1(a)、(b)、及び(c)に示すように、第一のステージ103及び第二のステージ105が、それぞれ、第一のステージ103の温度及び第二のステージ105の温度を調節することが可能であるので、第一の基板101及び第二の基板104に挟まれた配向制御前の液晶高分子の層102の温度をより良好に制御することが可能になる。
【0027】
次に、第一のステージ103及び第二のステージ105の間の間隔を調整することによって、第一の基板101及び第二の基板104の間隔を制御する。図1(a)においては、Z軸方向における第一のステージ103及び第二のステージ105の間の相対的な位置を調整することによって、第一のステージ103及び第二のステージ105の間の間隔を調整する。これにより、配向制御前の高分子液晶の層102に加わる圧力を調整することが可能になる。ここで、配向制御前の高分子液晶の層102に圧力が加わらないように、又は、配向制御前の高分子液晶の層102に1000Pa以下の圧力を加えるように、第一の基板101及び第二の基板104の間隔を制御する。
【0028】
次に、配向制御前の高分子液晶の層102の温度が、高分子液晶のガラス転移温度以上高分子液晶の透明点未満の温度であるように、第一のステージ103の温度及び第二のステージ105の温度を制御する。配向制御前の高分子液晶の層102の温度が、高分子液晶のガラス転移温度以上である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102における高分子液晶の配向をより容易に制御することが可能になる。また、配向制御前の高分子液晶の層102の温度が、高分子液晶の透明点未満の温度である場合には、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の配向をより良好に安定化させることが可能になる。
【0029】
ここで、高分子液晶のガラス転移温度以上高分子液晶の透明点未満の温度は、配向制御前の高分子液晶の層102の粘度が、好ましくは、1N・s・m−2以上1000N・s・m−2以下、より好ましくは、5N・s・m−2以上500N・s・m−2以下、である温度である。配向制御前の高分子液晶の層102の粘度が、1N・s・m−2以上である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102により効果的にせん断力を加えることが可能になる。また、配向制御前の高分子液晶の層102の粘度が、1000N・s・m−2以下である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加える液晶素子を製造する装置の負荷を低減することが可能になると共に、配向制御後の液晶高分子の層106の凝集又は破壊を低減することが可能になる。
【0030】
なお、配向制御前の高分子液晶の層102に加わる圧力及び配向制御前の高分子液晶の層102の温度が、それぞれの所望の値が得られるまで、配向制御前の高分子液晶の層102に加わる圧力及び配向制御前の高分子液晶の層102の温度の調整を繰り返す。
【0031】
次に、配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加えるように、第一のステージ103に吸着された第一の基板101に対して第二のステージ105に吸着された第二の基板104を相対的に移動させる。図1(a)においては、第一のステージ103に吸着された第一の基板101を静止させる一方で、第二のステージ105に吸着された第二の基板104をX軸方向に移動させている。第一の基板101及び第二の基板104に挟まれた配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加えることによって、配向制御前の高分子液晶の層102における高分子液晶の配向を制御することが可能になる。
【0032】
ここで、せん断力は、配向制御前の高分子液晶の層102に生じるせん断応力が、好ましくは、100N・m−2以上1000000N・m−2以下、より好ましくは、1000N・m−2以上100000N・m−2以下、であるように、配向制御前の高分子液晶の層102に加えられる。なお、配向制御前の高分子液晶の層102に生じるせん断応力は、配向制御前の高分子液晶の層102に加えるせん断力のせん断速度(1/s)及び配向制御前の高分子液晶の層102の粘度(N・s・m−2)の積で表わされる。配向制御前の高分子液晶の層102に生じるせん断応力が、100N・m−2以上である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102により効果的にせん断力を加えることが可能になる。配向制御前の高分子液晶の層102に生じるせん断応力が、1000000N・m−2以下である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加える液晶素子を製造する装置の負荷を低減することが可能になると共に、配向制御後の液晶高分子の層106の凝集又は破壊を低減することが可能になる。
【0033】
また、配向制御前の高分子液晶の層102に加えられるせん断力のせん断速度は、好ましくは、10s−1以上10000s−1以下、より好ましくは、50s−1以上5000s−1以下である。なお、配向制御前の高分子液晶の層102に加えられるせん断力のせん断速度は、第一の基板101に対する第二の基板104の相対的な移動の速度/配向制御前の高分子液晶の層102の厚さ(第一の基板101及び第二の基板104の間の間隔)で表される。配向制御前の高分子液晶の層102に加えられるせん断力のせん断速度が、10s−1以上である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102により効果的にせん断力を加えることが可能になる。配向制御前の高分子液晶の層102に加えられるせん断力のせん断速度が、10000s−1以下である場合には、配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加える液晶素子を製造する装置の負荷を低減することが可能になると共に、配向制御後の液晶高分子の層106の凝集又は破壊を低減することが可能になる。
【0034】
さらに、配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加える時間は、好ましくは、0.1秒以上5.0秒以下、より好ましくは、0.2秒以上1.0秒以下である。配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加える時間が、0.1秒以上である場合には、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の配向のムラを低減することが可能になる。配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加える時間が、5.0秒以下である場合には、配向制御後の液晶高分子の層106の凝集又は破壊を低減することが可能になる。
【0035】
その結果、図1(b)に示すように、第一のステージ103に吸着された第一の基板101及び第二のステージ105に吸着された第二の基板104の間に配向制御後の高分子液晶の層106が得られる。
【0036】
さらに、図1(c)に示すように、第二のステージ105から第二の基板104を脱着させる。そして、例えば、図1(c)に示すように、空気のような冷却用気体を第二の基板104に吹き付ける冷却手段によって、配向制御後の高分子液晶の層106を冷却する。すなわち、配向制御前の高分子液晶の層102にせん断力を加えた後に、例えば、冷却手段を用いて、配向制御後の高分子液晶の層106を冷却することが好ましい。この場合には、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の配向をより良好に安定化させることが可能になる。
【0037】
ここで、配向制御後の高分子液晶の層106は、好ましくは、配向制御後の高分子液晶の層106の粘度が20N・s・m−2以上である温度まで、冷却される。この場合には、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の配向をより良好に安定化させることが可能になる。また、配向制御後の高分子液晶の層106は、より好ましくは、高分子液晶のガラス転移温度未満の温度まで冷却される。この場合には、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の配向をさらに良好に安定化させることが可能になる。
【0038】
なお、第一の基板101及び第二の基板104の少なくとも一方が配向膜を有する場合には、配向制御後の高分子液晶の層106における高分子液晶の配向が、配向膜によって安定化されることがある。この場合には、図1(c)に示すような、空気のような冷却用気体によって配向制御後の高分子液晶の層106を冷却する工程を省略することが可能なこともある。
【0039】
このようにして、図1(c)に示すように、配向が安定化させられた高分子液晶の層107が得られる。その結果、第一の基板101に配向が安定化させられた高分子液晶の層107を含む液晶素子108が得られる。すなわち、図1(a)、(b)、及び(c)に示すような液晶素子を製造する方法によって図1(c)に示すような液晶素子108が製造される。なお、液晶素子108の用途は、特に限定されるものではないが、液晶素子108を、例えば、光ディスク装置における波長板などに用いることが可能である。
【0040】
よって、図1(a)、(b)、及び(c)に示すような本発明による液晶素子を製造する方法の例によれば、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する方法を提供することが可能になる。また、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を提供することが可能になる。
【0041】
なお、高分子液晶の層における高分子液晶の配向の程度を、例えば、偏光顕微鏡におけるクロスニコル観察によって確認することができる。
【0042】
図2は、本発明による液晶素子を製造する装置の例を概略的に説明する図である。図2には、第一の基板201に設けられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する装置200が示されている。
【0043】
まず、図2を用いて液晶素子を製造する装置200の構成を説明する。液晶素子を製造する装置200は、図示されていない第一の基板201を提供する手段及び図示されていない第二の基板202を提供する手段を含むことがある。液晶素子を製造する装置200を用いて液晶素子を製造するときには、第一の基板201に配向制御前の高分子液晶の層が提供されると共に、配向制御前の高分子液晶の層に第二の基板202が提供される。すなわち、配向制御前の高分子液晶の層は、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれる。なお、第一の基板201及び第二の基板202の少なくとも一方が、配向制御前の高分子液晶の層の側に、高分子液晶を配向させる配向膜を有することもある。
【0044】
液晶素子を製造する装置200は、第一の基板201を吸着する手段及び第二の基板202を吸着する手段を含む。すなわち、第一の基板201及び第二の基板202は、それぞれ、第一の基板201を吸着する手段及び第二の基板202を吸着する手段によって吸着される。
【0045】
ここで、第一の基板201を吸着する手段は、第一の中空体203を含む。第一の中空体203の壁の少なくとも一部分は、第一の多孔質の部材204を含む。第一の多孔質の部材204の材料としては、例えば、セラミックの材料及び焼結された金属が挙げられる。また、第一の多孔質の部材204は、第一の基板201を介して配向制御前の高分子液晶の層を加熱するための第一のヒーター205を含む。さらに、第一の多孔質の部材204の温度を測定するための第一の温度計206が、第一の多孔質の部材204に設けられている。加えて、第一の基板201を吸着する手段は、第一の中空体203の内部を排気する手段を含む。第一の中空体203の内部を排気する手段は、第一の中空体203の内部の気体を吸引する真空ポンプ207及び第一の中空体203の内部の気体の排気を制御する第一の真空バルブ208を含む。
【0046】
一方、第二の基板202を吸着する手段は、第二の中空体209を含む。第二の中空体209の壁の少なくとも一部分は、第二の多孔質の部材210を含む。第二の多孔質の部材210の材料としては、例えば、セラミックの材料及び焼結された金属が挙げられる。また、第二の多孔質の部材210は、第二の基板202を介して配向制御前の高分子液晶の層を加熱するための第二のヒーター211を含む。さらに、第二の多孔質の部材210の温度を測定するための第二の温度計212が、第二の多孔質の部材210に設けられている。加えて、第二の基板202を吸着する手段は、第二の中空体209の内部を排気する手段を含む。第二の中空体209の内部を排気する手段は、第一の中空体203の内部の気体を吸引する真空ポンプ207と共通のものである第二の中空体209の内部の気体を吸引する真空ポンプ207及び第二の中空体209の内部の気体の排気を制御する第二の真空バルブ213を含む。
【0047】
また、液晶素子を製造する装置200は、第一の基板201を吸着する手段によって吸着された第一の基板201を第二の基板202に対して相対的に移動させる手段又は第二の基板202を吸着する手段によって吸着された第二の基板202を第一の基板201に対して相対的に移動させる手段を含む。図2に示す液晶素子を製造する装置200は、第一の基板201を吸着する手段によって吸着された第一の基板201を第二の基板202に対して相対的に移動させる手段を有する。第一の基板201を吸着する手段によって吸着された第一の基板201を第二の基板202に対して相対的に移動させる手段は、互いに直交する三つの軸、すなわち、図2に示すX、Y、及びZ軸の方向に、第一の基板201を吸着する手段を移動させる手段を有する。例えば、図2に示すような、X及びY軸の方向に第一の基板201を吸着する手段を移動させる手段としてのXYステージ214並びにZ軸の方向に第一の基板201を吸着する手段を移動させる手段としてのZステージ215が含まれる。
【0048】
さらに、液晶素子を製造する装置200は、第一の基板201及び第二の基板202の間に設けられた高分子液晶の層に加わる圧力を測定する手段としてのロードセル216を含む。
【0049】
加えて、液晶素子を製造する装置200は、配向制御前及び後の高分子液晶の層を冷却する手段をさらに含む。配向制御前及び後の高分子液晶の層を冷却する手段(冷却手段)は、空気ボンベ又は液体窒素ボンベのような冷却用気体を供給する手段217、冷却用気体を供給する手段217から供給される冷却用気体の圧力を調整する圧力調整バルブ218、第一の中空体203の内部への冷却用気体の供給を制御する第一の供給バルブ219、及び、第二の中空体209の内部への冷却用気体の供給を制御する第二の供給バルブ220を含む。冷却用気体としては、例えば、空気又は窒素などが挙げられる。
【0050】
次に、図2を用いて液晶素子を製造する装置200の動作を説明する。図2に示すような液晶素子を製造する装置200を用いると、図1(a)、(b)、及び(c)に示すような液晶素子を製造する方法を実施することによって、液晶素子を得ることができる。最初に、第一の真空バルブ208、第二の真空バルブ213、第一の供給バルブ219、及び第二の供給バルブ220の全てを閉じておく。
【0051】
まず、図示されていない第一の基板201を提供する手段によって、第一の中空体203の第一の多孔質の部材204に第一の基板201を提供する。なお、第一の基板201は、第一の多孔質の部材204を覆うようなサイズを有する。次に、真空ポンプ207を稼働させると共に第一の真空バルブ208を開くことによって、第一の中空体203の内部を排気する。このとき、第一の基板201は、第一の中空体203の第一の多孔質の部材204に吸着及び固定される。
【0052】
次に、第一の基板201に配向制御前の高分子液晶の層が提供される。ここで、第一の多孔質の部材204に含まれる第一のヒーター205及び第一の多孔質の部材204に設けられた第一の温度計206を用いて、第一の基板201を介して配向制御前の高分子液晶の層を加熱してもよい。
【0053】
次に、図示されていない第二の基板202を提供する手段によって、配向制御前の高分子液晶の層に第二の基板202を提供する。なお、第二の基板202は、第二の多孔質の部材210を覆うようなサイズを有する。このようにして、配向制御前の高分子液晶の層は、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれる。次に、Zステージ215を用いて、第一の中空体203及び第一の基板201をZ方向に移動させることによって、第二の中空体209の第二の多孔質の部材210を第二の基板202に接触させる。次に、真空ポンプ207を稼働させたまま、第二の真空バルブ213を開く。このとき、第二の基板202は、第二の中空体209の第二の多孔質の部材210に吸着及び固定される。
【0054】
次に、Zステージ215を用いて、第一の中空体203及び第一の基板201をZ方向に移動させることによって、第一の基板201及び第二の基板202の間の間隔を調整する。このとき、ロードセル216を用いて、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御前の高分子液晶の層に加わる圧力を測定する。そして、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御前の高分子液晶の層に圧力が加わらないように、又は、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御前の高分子液晶の層に加わる圧力が1000Pa以下であるように、第一の基板201及び第二の基板202の間の間隔を調整する。
【0055】
次に、第二の多孔質210に含まれる第二のヒーター211及び第二の多孔質の部材210に設けられた第二の温度計212を用いて、第二の基板202を介して配向制御前の高分子液晶の層を加熱する。
【0056】
また、必要に応じて、圧力調整バルブ218を用いて冷却用気体を供給する手段217から供給される冷却用気体の圧力を調整すると共に、第一の供給バルブ219及び/又は第二の供給バルブ220を開くことによって、第一の中空体203の内部及び/又は第二の中空体209の内部に冷却用気体を供給する。この場合には、第一の中空体203及び/又は第二の中空体209に供給された冷却用気体によって、第一の多孔質の部材204及び/又は第二の多孔質の部材210を介して、第一の基板201及び/又は第二の基板202が冷却される。その結果、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御前の高分子液晶の層を冷却することが可能になる。
【0057】
このとき、第一の基板の201の温度及び第二の基板の202の温度が同じになるように、すなわち、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御前の高分子液晶の層における温度分布が均一になるように、第一のヒーター205による第一の基板201の加熱、第二のヒーター212による第二の基板202の加熱、並びに、冷却用気体による第一の基板201及び/又は第二の基板202の冷却を調整する。
【0058】
そして、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御前の高分子液晶の層の温度が、高分子液晶のガラス転移温度以上高分子液晶の透明点未満の温度になるように、第一の基板201及び第二の基板202の温度を調整する。これにより、配向制御前の高分子液晶の層の粘度を調整する。
【0059】
なお、配向制御前の高分子液晶の層に圧力が加わらない又は配向制御前の高分子液晶の層に加わる圧力が1000Pa以下であると共に配向制御前の高分子液晶の層の温度が高分子液晶のガラス転移温度以上高分子液晶の透明点未満の温度である(配向制御前の高分子液晶の層の粘度が所望の粘度である)ことを実現するまで、上述したような方式で、第一の基板201及び第二の基板202の間の間隔の調整並びに第一の基板201及び第二の基板202の温度の調整を繰り返す。
【0060】
次に、配向制御前の高分子液晶の層に圧力が加わらない又は配向制御前の高分子液晶の層に加わる圧力が1000Pa以下であると共に配向制御前の高分子液晶の層の温度が高分子液晶のガラス転移温度以上高分子液晶の透明点未満の温度である条件で、配向制御前の高分子液晶の層にせん断力を加える。
【0061】
図2に示すような液晶素子を製造する装置200においては、XYステージ214によってX及びY軸の方向の少なくとも一方に、例えば、図2に示すようにX軸の方向に、第一の基板201を吸着する手段を移動させる。すなわち、XYステージ214を用いて、X軸の方向に、XYステージ214に設けられたZステージ215、Zステージ215に設けられた第一の中空体203、並びに第一の中空体203の第一の多孔質の部材204に吸着及び固定された第一の基板201を、第二の基板202に対して相対的に移動させる。これにより、X及びY軸の方向の少なくとも一方において、例えば、図2に示すようにX軸の方向において、配向制御前の高分子液晶の層にせん断力を加えることが可能になる。配向制御前の高分子液晶の層に加えるせん断力のせん断速度、配向制御前の高分子液晶の層にせん断力を加える時間、及び、配向制御前の高分子液晶の層に生じるせん断応力は、XYステージ214によって引き起こされる第一の基板201の移動の速度によって調整される。
【0062】
このように配向制御前の高分子液晶の層にせん断力を加えた(配向制御後の高分子液晶の層が得られた)後に、必要に応じて、圧力調整バルブ218を用いて冷却用気体を供給する手段217から供給される冷却用気体の圧力を調整すると共に、第一の供給バルブ219及び/又は第二の供給バルブ220を開くことによって、第一の中空体203の内部及び/又は第二の中空体209の内部に冷却用気体を供給する。この場合には、第一の中空体203及び/又は第二の中空体209に供給された冷却用気体によって、第一の多孔質の部材204及び/又は第二の多孔質の部材210を介して、第一の基板201及び/又は第二の基板202が冷却される。その結果、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御後の高分子液晶の層を冷却することが可能になる。
【0063】
好ましくは、配向制御前の高分子液晶の層にせん断力を加えた後に、圧力調整バルブ218を用いて冷却用気体を供給する手段217から供給される冷却用気体の圧力を調整すると共に、第二の供給バルブ220を開くことによって、第二の中空体209の内部に冷却用気体を供給する。この場合には、冷却用気体が第二の中空体209に供給されることによって、第二の中空体209の第二の多孔質の部材210に吸着及び固定されていた電第二の基板202を第二の多孔質の部材210から脱着させると共に、第二の多孔質の部材210から冷却用気体を噴出させることによって第二の基板202を急速に冷却することが可能になる。その結果、第一の基板201及び第二の基板202の間に挟まれた配向制御後の高分子液晶の層を急速に冷却することが可能になる。このようにして、配向が安定化させられた高分子液晶の層が得られる。その結果、第一の基板201に設けられた配向が安定化させられた高分子液晶の層を含む液晶素子が得られる。
【0064】
よって、図2に示すような本発明による液晶素子を製造する装置の例によれば、より良好に配向させられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する装置を提供することが可能になる。
【0065】
なお、高分子液晶の層における高分子液晶の配向の程度を、例えば、偏光顕微鏡におけるクロスニコル観察によって確認することができる。
【0066】
図3は、本発明による液晶素子を製造する装置の例における中空体の第一の例を概略的に説明する図である。図3(a)及び図3(b)は、それぞれ、本発明による液晶素子を製造する装置の例における中空体の第一の例の断面図及び平面図である。
【0067】
図3(a)及び図3(b)に示すような中空体300は、例えば、図2に示す第一の中空体203及び第二の中空体209として用いられる。図3(a)及び図3(b)に示すように、中空体300は、中空体の壁301を含む。中空体の壁301には、中空体の内部302(空洞)に連通する第一のパイプ303及び第二のパイプ304が設けられる。第一のパイプ303には、中空体の内部302を排気する手段が接続される。一方、第二のパイプ304には、中空体の内部302に冷却用気体を供給する手段が接続される。また、中空体の壁301の少なくとも一部分は、多孔質の部材305を含む。なお、多孔質の部材305は、高分子液晶の層を加熱する手段としてのヒーター306を含むものであってもよい。
【0068】
例えば、基板を多孔質の部材305に吸着及び固定する場合には、図3(a)及び(b)に示すように、第一のパイプ303に接続された中空体の内部302を排気する手段を稼働させることによって、中空体の内部302を排気する。これにより、中空体の内部302及び多孔質の部材305の気孔に存在する気体の圧力が大気圧と比べて減少させられる。そして、基板の大きさが、多孔質の部材305の大きさ以上である場合には、基板を多孔質の部材305へ吸着及び固定することが可能になる。
【0069】
また、例えば、多孔質の部材305及び多孔質の部材305に吸着された基板の温度を上昇させる場合には、図3(a)に示すように、ヒーター306が加熱される。
【0070】
加えて、例えば、多孔質の部材305及び多孔質の部材305から脱着した基板の温度を下降させる場合には、図3(a)及び(b)に示すように、第二のパイプ304に接続された冷却用気体を供給する手段を稼働させることによって、中空体の内部302に冷却用気体を供給する。これにより、中空体の内部302及び多孔質の部材305の気孔に存在する気体の圧力が大気圧と比べて増加させられる。その結果、多孔質の部材305に吸着された基板を多孔質の部材から脱着させると共に、中空体の内部302に供給された冷却用気体を多孔質の部材305の気孔を通じて噴出させることが可能になる。それに応じて、多孔質の部材305及び多孔質305から脱着した基板を冷却することが可能になる。
【0071】
図4は、本発明による液晶素子を製造する装置の例における中空体の第二の例を概略的に説明する図である。
【0072】
図4に示す中空体400は、例えば、図2に示す第一の中空体203及び第二の中空体209として用いられる。図4に示すように、中空体400は、中空体の壁401を含む。中空体の壁401には、中空体の内部402(空洞)に連通する第一のパイプ403及び第二のパイプ404が設けられる。第一のパイプ403には、中空体の内部402を排気する手段が接続される。一方、第二のパイプ404には、中空体の内部402に冷却用気体を供給する手段が接続される。また、中空体400には、単数又は複数のじゃま板405が設けられている。加えて、中空体の壁401の少なくとも一部分は、図示していない多孔質の部材を含む。なお、多孔質の部材は、高分子液晶の層を加熱する手段としてのヒーターを含むものであってもよい。
【0073】
例えば、基板を多孔質の部材に吸着及び固定する場合には、図4に示すように、第一のパイプ403に接続された中空体の内部402を排気する手段を稼働させることによって、中空体の内部402を排気する。これにより、基板の大きさが、多孔質の部材の大きさ以上である場合には、基板を多孔質の部材へ吸着及び固定することが可能になる。
【0074】
また、例えば、多孔質の部材及び多孔質の部材から脱着した基板の温度を下降させる場合には、図4に示すように、第二のパイプ404に接続された冷却用気体を供給する手段を稼働させることによって、中空体の内部402に冷却用気体を供給する。これにより、多孔質の部材に吸着された基板を多孔質の部材から脱着させると共に、中空体の内部402に供給された冷却用気体を、中空体に設けられた単数又は複数のじゃま板405を迂回して及び多孔質の部材の気孔を通じて噴出させることが可能になる。ここで、中空体の内部402に供給された冷却用気体が、中空体に設けられた単数又は複数のじゃま板405を迂回して中空体の内部402を流動するため、多孔質の部材をより良好に冷却することが可能になると共に多孔質の部材から噴出する冷却用気体の温度をより低下させることが可能になる。それに応じて、多孔質の部材及び多孔質から脱着した基板をより効率的に冷却することが可能になる。
【0075】
図5は、本発明による液晶素子を製造する装置の例における中空体の第三の例を概略的に説明する図である。
【0076】
図5に示す中空体500は、例えば、図2に示す第一の中空体203及び第二の中空体209として用いられる。図5に示すように、中空体500は、中空体の壁501を含む。中空体の壁501には、中空体の内部502(空洞)に連通する第一の分岐パイプ503及び第二の分岐パイプ504が設けられる。第一の分岐パイプ503には、中空体の内部502を排気する手段が接続される。一方、第二の分岐パイプ504には、中空体の内部502に冷却用気体を供給する手段が接続される。また、中空体の壁501の少なくとも一部分は、図示していない多孔質の部材を含む。なお、多孔質の部材は、高分子液晶の層を加熱する手段としてのヒーターを含むものであってもよい。
【0077】
例えば、基板を多孔質の部材に吸着及び固定する場合には、図5に示すように、第一の分岐パイプ503に接続された中空体の内部502を排気する手段を稼働させることによって、中空体の内部502を排気する。これにより、基板の大きさが、多孔質の部材の大きさ以上である場合には、基板を多孔質の部材へ吸着及び固定することが可能になる。
【0078】
また、例えば、多孔質の部材及び多孔質の部材から脱着した基板の温度を下降させる場合には、図5に示すように、第二の分岐パイプ504に接続された冷却用気体を供給する手段を稼働させることによって、中空体の内部502に冷却用気体を供給する。これにより、多孔質の部材に吸着された基板を多孔質の部材から脱着させると共に、第二の分岐パイプ504の分岐した複数のパイプから中空体の内部502に供給された冷却用気体を多孔質の部材の気孔を通じて噴出させることが可能になる。ここで、冷却用気体が、第二の分岐パイプ504の分岐した複数のパイプを通じてより均一に中空体の内部502に供給されるため、多孔質の部材をより均一に冷却することが可能になると共に多孔質の部材から噴出する冷却用気体の温度をより均一化することが可能になる。それに応じて、多孔質の部材及び多孔質から脱着した基板をより均一に冷却することが可能になる。
【0079】
[実施例]
次に、本発明の実施例を具体的に説明することにする。なお、例1〜5が実施例であり、例6は比較例である。
【0080】
[合成例1]高分子液晶(A−1)の合成
下記の化学反応式(1)に従って、高分子液晶(A−1)を合成した。
【0081】
【化1】

10mLのねじ口試験管に4.0gの液晶性モノマー(P6OCB)、40mgの重合開始剤(和光純薬社製,商品名「V40」)、120mgの1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)、及び4.8gのN,N−ジメチルホルムアミドを投入し、ねじ口試験管内の空気を窒素で置換した後、ねじ口試験管を密閉した。ねじ口試験管を80℃の恒温槽にて18時間撹拌振とうさせ、上記液晶性モノマーの重合を行った。
【0082】
生成物をメタノール中で洗浄して未反応の液晶性モノマーを除去した後、生成物をテトラヒドロフランに溶解させ、得られた溶液をメタノール中に滴下して、生成物の再沈精製を行った。その後、生成物を真空乾燥器にて40℃で2時間乾燥させて、3.60g(収率90%)の白色の高分子液晶(A−1)を得た。高分子液晶(A−1)の数平均分子量(Mn)は7200であり、ガラス転移点(Tg)は20℃、透明点(Tc)は120℃、及び純度は99%超であった。
【0083】
[サンプル前駆体の作製]
[前駆体作製例1]
一軸配向処理が施されたガラス基板(縦10cm、横10cm)を130℃に加熱し、当該基板の上へ、高分子液晶(A−1)0.030gを載置して溶融させた。この状態で3分間保持することにより高分子液晶の脱気を行い、その後室温まで冷却して、サンプル前駆体Bを作成した。
【0084】
[前駆体作製例2]
一軸配向処理が施されたガラス基板(縦10cm、横10cm)を130℃に加熱し、当該基板の上へ、高分子液晶(A−1)0.030gを載置し溶融させた。この状態で3分間保持することにより高分子液晶の脱気を行った。つぎに、一軸配向処理が施された別のガラス基板を溶融した高分子液晶の上に重ね合わせた。このとき、2枚のガラス基板の配向軸が同じになるように調整した。高分子液晶の厚さが10μmになるように、ガラス基板の上から0.2MPaの圧力で10分間押圧し、その後室温まで冷却してサンプル前駆体Cを形成した。
【0085】
[前駆体作製例3]
一軸配向処理が施されたガラス基板を石英ガラス基板(縦10cm、横10cm)へ変更した以外は、作製例2と同様にして、サンプル前駆体Dを形成した。
【0086】
[サンプルの作製]
[例1]
前記サンプル前駆体Bを、130℃へ加熱した液晶素子を製造する装置の下ステージ上へ載せ、ガラス基板を下ステージへ吸着固定させた。その後、もう1枚の配向処理が施されたガラス基板を上ステージへ吸着固定した。この時、2枚のガラス基板の配向軸が同じになるように調整した。
【0087】
下ステージを上昇させ、基板間のギャップが10μmになったところで10分間保持した。このときのロードセル圧力の表示は5.0N(高分子液晶の層にかかる圧力が500Paに相当する)であった。
【0088】
上下ステージの温度を60℃まで冷却した後、速度10mm/sで0.5秒の間、下ステージのみをX方向に動かし、高分子液晶層へせん断応力100000(N/m)((せん断速度1000(1/s)×高分子液晶層のせん断粘度100(N・s/m))を印加した。この後、冷風を基板へ吹き当て、50℃まで冷却してサンプル1を作製した。例1の条件を表1に示す。
【0089】
[例2]
前記サンプル前駆体Cを、80℃へ加熱した液晶素子を製造する装置の下ステージ上へ載せ、基板を下ステージへ吸着固定させた。その後、下ステージを上昇させ、上の基板が上ステージに当たったところで10分間保持した。ロードセル圧力の表示は5.0N(500Paに相当する)であった。上下ステージの温度を60℃まで冷却した後、速度10mm/sで0.5秒の間、下ステージのみをX方向に動かし、高分子液晶層へせん断応力100000(N/m)((せん断速度1000(1/s)×せん断粘度100(N・s/m))を印加した後、冷風を基板へ吹き当て、50℃まで冷却してサンプル2を作製した。例2の条件を表1に示す。
【0090】
[例3]
サンプル前駆体Dを用いた以外は、表1に示す条件により、例2と同様の方法でサンプル3を作製した。
【0091】
[例4]
サンプル前駆体Cを用いて、せん断速度を100(1/s)に変更した以外は、表1に示すように、例2と同様の方法でサンプル4を作製した。
【0092】
[例5]
サンプル前駆体Cを用い、80℃でせん断応力を印加した以外は、表1に示すように、例2と同様にしてサンプル5を作成した。例5では、高分子液晶層のせん断粘度は10(N・s/m)であった。
【0093】
[例6]
サンプル前駆体Cを用い、ロードセル圧力の表示が490N(高分子液晶層にかかる圧力が49000Paに相当)となるように圧力を印加し、高分子液晶層にせん断応力100000(N/m)印加した以外は、例2と同様の方法でサンプル6を作成した。
【0094】
【表1】

なお、表中「形態」欄の「後挟込」は、製造装置のステージ上で、上側の基板を載置する態様を意味し、「先挟込」は、2枚の基板で高分子液晶を挟持したサンプル前駆体を製造装置のステージ上に載置する態様を意味する。
[配向サンプルの評価]
上記で作成した配向サンプル1〜5を、2枚の偏光板をクロスニコル状態にした間に挟み込み、クロスニコル観察を行った。サンプルの配向軸と一方の偏光板の軸とのなす角度を0°にした際に暗視野が観察され、45°にした際に明視野が観察され、液晶が一軸配向していることがわかった。また、いずれのサンプルにおいても高いコントラスト比が得られており、高分子液晶の配向度が高いことが分かる。
【0095】
一方、サンプル6は、サンプルの配向軸と一方の偏光板の軸とのなす角度をどのように設定した場合にも明視野が観察され、完全な暗視野が確認されなかったことから、ランダム配向していることが分かった。
【0096】
明視野と暗視野の透過率をそれぞれ測定し、(明視野の透過率/暗視野の透過率)の計算式によりコントラスト比を計算した。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

[例7]
サンプル前駆体Cについて、例2の操作によって配向処理を行うかわりに、80℃で10分間アニール処理を行ったもののコントラスト比は500程度であった。また、60℃で10分間アニール処理を行ったものは、ほとんど配向しておらず、コントラスト比は100以下であった。
【符号の説明】
【0098】
101 第一の基板
102 配向制御前の高分子液晶の層
103 第一のステージ
104 第二の基板
105 第二のステージ
106 配向制御後の液晶高分子の層
107 配向が安定化させられた高分子液晶の層
108 液晶素子
200 液晶素子を製造する装置
201 第一の基板
202 第二の基板
203 第一の中空体
204 第一の多孔質の部材
205 第一のヒーター
206 第一の温度計
207 真空ポンプ
208 第一の真空バルブ
209 第二の中空体
210 第二の多孔質の部材
211 第二のヒーター
212 第二の温度計
213 第二の真空バルブ
214 XYステージ
215 Zステージ
216 ロードセル
217 冷却用気体を供給する手段
218 圧力調整バルブ
219 第一の供給バルブ
220 第二の供給バルブ
300 中空体
301 中空体の壁
302 中空体の内部
303 第一のパイプ
304 第二のパイプ
305 多孔質の部材
306 ヒーター
400 中空体
401 中空体の壁
402 中空体の内部
403 第一のパイプ
404 第二のパイプ
405 じゃま板
500 中空体
501 中空体の壁
502 中空体の内部
503 第一の分岐パイプ
504 第二の分岐パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する方法において、
前記高分子液晶のガラス転移温度以上前記高分子液晶の透明点未満の温度で前記高分子液晶の層に圧力を加えることなく又は前記高分子液晶の層に1000Pa以下の圧力を加えながら前記高分子液晶の層にせん断力を加えること
を含む
ことを特徴とする、液晶素子を製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶素子を製造する方法において、
前記せん断力は、前記高分子液晶の層に生じるせん断応力が100N・m−2以上1000000N・m−2以下であるように、前記高分子液晶の層に加えられる
ことを特徴とする、液晶素子を製造する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶素子を製造する方法において、
前記高分子液晶のガラス転移温度以上前記高分子液晶の透明点未満の温度は、前記高分子液晶の層の粘度が1N・s・m−2以上1000N・s・m−2以下である温度であることを特徴とする、液晶素子を製造する方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶素子を製造する方法において、
前記高分子液晶の層に前記せん断力を加えた後に、冷却手段を用いて前記高分子液晶の層を冷却することをさらに含む
ことを特徴とする、液晶素子を製造する方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の液晶素子を製造する方法によって製造されることを特徴とする、液晶素子。
【請求項6】
第一の基板に設けられた高分子液晶の層を含む液晶素子を製造する装置において、
前記高分子液晶の層を加熱する手段、
前記高分子液晶の層に提供される第二の基板を吸着する手段、及び
前記第二の基板を吸着する手段によって吸着された前記第二の基板を前記第一の基板に対して相対的に移動させる手段
を含むことを特徴とする、液晶素子を製造する装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶素子を製造する装置において、
前記高分子液晶の層を冷却する手段をさらに含む
ことを特徴とする、液晶素子を製造する装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の液晶素子を製造する装置において、
前記第二の基板を吸着する手段は、中空体及び前記中空体の内部を排気する手段を含むと共に、
前記中空体の壁の少なくとも一部分は、多孔質の部材を含む
ことを特徴とする、液晶素子を製造する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−108268(P2012−108268A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256297(P2010−256297)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】