説明

液晶表示装置および有機EL表示装置

【課題】画面が一方向に曲率を有する曲面である液晶表示パネルのコントラストの変化を防止する。
【解決手段】シリンドリカルな曲面を有する液晶表示パネルにおいて、上偏光板103がカラーフィルタ基板102の上に貼り付けられている。上偏光板103は湾曲方向に引っ張り応力を受けている。引っ張り応力は上偏光板103の偏光特性に悪影響を与える。本発明によれば、上偏光板103の吸収軸Aを液晶表示パネルの湾曲方向と一致させることによって、上偏光板103の偏光特性の変化を防止することができる。これによって長期間にわたって、コントラストの優れた画像を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、特に表示画面が曲面となっている液晶表示装置あるいは有機EL表示装置等の薄型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、ディスプレイ装置を薄くできること、重量が大きくならないこと等から、コンピュータ用ディスプレイ、携帯電話用端末等からTV等にいたるまで、需要が拡大している。液晶表示装置はまた、画面が平面であることも特徴の一つとなっている。
【0003】
一方、液晶表示装置は薄くすることが出来るという点から色々な場所へ設置できる可能性を有している。設置場所は平坦な面に限らず、曲面を有した場所にも設置したいという要望もある。曲面を有した設置場所としては、例えば、円柱、電車、バス等の壁面等である。一方、ディスプレイ装置自体を曲面にする必要がある装置も存在する。例えば、パチンコ、スロットマシーン遊技機、ゲームセンタに存在する各種遊技機である。このような遊技機のディスプレイに液晶表示装置を使用しようとすると、液晶表示装置を湾曲する必要がある。さらに、需要が拡大している携帯電話についても視認性を向上したいという要望から、表示部を曲面にしたいという要請もある。
【0004】
しかし、湾曲したガラス基板等を使用して液晶表示パネルを製造するのは非常に難しい。そこで、フラットなガラス基板を使用してフラットな液晶表示パネルを製造し、その後、液晶表示パネルを湾曲させることが行なわれている。フラットな液晶表示パネルを均一に湾曲させることには工夫を要する。
【0005】
「特許文献1」には、偏光板が温度および湿度の影響によって吸収軸方向に沿って湾曲する性質を利用して、曲面を有する液晶表示パネルを形成する技術が記載されている。すなわち、偏光板をTFT基板およびカラーフィルタ基板等から成る液晶セルに接着したあと、特定温度および湿度の恒温槽にある時間放置すると特定曲面の液晶表示パネルが形成される。
【0006】
「特許文献2」には、フラットな液晶表示パネルを湾曲させる際、凹面側に1軸延伸フィルムを貼り付け、この液晶表示パネルを40℃から200℃の雰囲気中に10分から24時間放置することによって湾曲させる技術が記載されている。すなわち、1軸延伸フィルムが延伸方向で収縮することを利用して液晶表示パネルを湾曲させるものである。
【0007】
【特許文献1】特開平8−286174号公報
【特許文献2】特開2006−106079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液晶表示パネルは、液晶セルの上側と下側に偏光板を接着して形成される。液晶セルは薄膜トランジスタ(TFT)や画素電極が形成されたTFT基板とカラーフィルタ等が形成されたカラーフィルタ基板との間に液晶が挟持されたものである。曲面を有する液晶表示パネルは液晶セルと偏光板が同時に湾曲されて形成される。
【0009】
偏光板は一般にPVAフィルムを一方向に延伸し、ヨウ素を浸漬させて形成される。この時、延伸方向にヨウ素分子が並ぶために、その延伸方向が吸収軸となる。したがって、液晶表示パネルにおいて、延伸方向、すなわち、吸収軸方向に垂直な向きに張力が印加され続けると、偏光特性が劣化する。液晶表示パネルには位相差フィルムが使用される場合もあるが、位相差フィルムも上記と同様に一軸延伸して作成するものがある。したがって、偏光板と同様延伸軸方向、すなわち、吸収軸方向に垂直な向きに張力が印加され続けると、光学特性が劣化する。湾曲した液晶表示パネルでは表面の光学フィルムに定常的な応力が印加されるために、光学フィルムの特性が劣化し、コントラスト等の表示特性が劣化する。
【0010】
「特許文献1」および「特許文献2」に記載の技術は一軸延伸フィルムが特定方向に湾曲しやすい技術を用いて液晶表示パネルを湾曲させるものである。しかしながら、これらの文献には、偏光板等の延伸方向、すなわち、吸収軸方向に垂直な向きに張力が印加され続けると、光学特性が劣化するというような問題点の記載も示唆もない。
【0011】
本発明の課題は、曲面を有する液晶表示装置あるいは有機EL表示装置等の薄型表示装置において、偏光板、あるいは、位相差板等の一軸延伸の光学フィルムの光学特性が劣化しない構成を得ることである。一方、有機EL表示装置において、コントラストを上げるために、有機EL表示装置の画面に円偏光板を用いることがあるが、この場合の円偏光板等の光学特性の変化を防止することも本発明に課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以上のような課題を解決するために、画面が一方向に曲率を有する曲面となっている液晶表示装置において、上偏光板の吸収軸の方向を画面の曲率の方向と特別な関係とすることによって、偏光板の光学特性の変化を防止するものである。すなわち、偏光板が張力を受けるように湾曲している場合は、偏光板の吸収軸の方向、すなわち延伸軸方向を画面が湾曲している方向と一致させ、偏光板が圧縮応力を受けるように湾曲している場合は偏光板の吸収軸の方向を画面が直角方向に湾曲している方向と直角な方向に一致させる。有機EL表示装置の場合は円偏光板を構成する位相差板あるいは偏光板の延伸軸の方向を円偏光板が引っ張り応力あるいは圧縮応力を受ける場合によって上記液晶表示装置の場合と同様に変化させる。具体的な手段は次のとおりである。
【0013】
(1)画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な画面を有しており、前記第1の偏光板は、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向に吸収軸を有することを特徴とする液晶表示装置。
【0014】
(2)前記第2の偏光板は前記液晶表示パネルが曲率を有する方向と直角方向に吸収軸を有することを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0015】
(3)画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な画面を有しており、前記第1の偏光板は、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向に略々吸収軸を有し、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向の軸と前記第1の偏光板の吸収軸とのなす角度は10度±5度であることを特徴とする液晶表示装置。
【0016】
(4)前記第2の偏光板の吸収軸と前記液晶表示パネルが曲率を有する方向と直角方向とのなす角度は10度±5度であること特徴とする(3)に記載の液晶表示装置。
【0017】
(5)画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側凹な画面を有しており、前記第1の偏光板は、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向と直角な方向に吸収軸を有することを特徴とする液晶表示装置。
【0018】
(6)前記第2の偏光板は前記液晶表示パネルが曲率を有する方向に吸収軸を有することを特徴とする(5)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(7)画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側凹な画面を有しており、前記第1の偏光板の吸収軸と、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向と直角な方向とのなす角度は10度±5度であることを特徴とする液晶表示装置。
【0020】
(8)前記第2の偏光板の吸収軸と前記液晶表示パネルが曲率を有する方向とのなす角度は10度±5度であること特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【0021】
(9)有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、前記有機EL表示パネルの画面は前記シール板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な曲面となっており、前記シール板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と一致することを特徴とする有機EL表示装置。
【0022】
(10)有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、前記有機EL表示パネルの画面は前記シール板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凹な曲面となっており、前記シール板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と直角方向であることを特徴とする有機EL表示装置。
【0023】
(11)有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、前記有機EL表示パネルの画面は前記OLED基板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な曲面となっており、前記OLED基板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と一致することを特徴とする有機EL表示装置。
【0024】
(12)有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、前記有機EL表示パネルの画面は前記OLED基板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凹な曲面となっており、前記OLED基板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と直角方向であることを特徴とする有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、画面が一方向に曲率を有する外側に凸である曲面である液晶表示装置において、カラーフィルタ基板上に貼り付けられる上偏光板の吸収軸、すなわち延伸軸の方向を画面が湾曲している方向と一致させるので、偏光板の偏光特性が変化することを防止することが出来る。また、TFT基板の下側に貼り付けられる下偏光板の吸収軸、すなわち延伸軸の方向を画面が湾曲している方向と直角方向に一致させるので、下偏光板の偏光特性の変化を防止することが出来る。
【0026】
画面が一方向に曲率を有する外側に凹である曲面である液晶表示装置においても偏光板の吸収軸、すなわち、延伸軸の方向を、偏光板が引っ張り応力を受けるか、圧縮応力をうけるかによって変化させるので、偏光板の偏光特性の変化を防止することが出来る。したがって、長期間、コントラスト等、画質の変化しない信頼性の高い液晶表示装置を得ることが出来る。
【0027】
有機EL表示装置において、コントラスを上げるために円偏光板を用いる場合も、円偏光板を構成する位相差板あるいは偏光板の延伸軸の方向を、円偏光板が引っ張り応力をうけるか圧縮応力を受けるかによって変化させるので、長期間、画像のコントラスが変化しない有機EL表示装置を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明の液晶表示装置を表側から見た外観斜視図であり、図1において、TFTや画素が形成されたTFT基板101とカラーフィルタ基板102の間には図示しない液晶が挟持されている。TFT基板101には、回路を駆動するためのドライバチップを取り付けたり、外部から映像信号、電源等を供給するフレキシブル配線基板を取り付けたりするためのスペースが必要なので、カラーフィルタ基板102よりも大きく作られている。カラーフィルタ基板102の上には上偏光板103が、TFT基板101の下には下偏光板104が接着されている。
【0029】
図1の液晶表示パネル10は一方向に曲率をもって湾曲している。図1では省略されているが、液晶表示パネル10は、曲率を持ったフレーム11、あるいは、曲率を持った面カバーに沿わせることによって曲率が形成される。すなわち、後で説明するように、TFT基板101あるいはカラーフィルタ基板102は容易に湾曲するように、研磨によって薄くなっている。
【0030】
図1の上偏光板103はカラーフィルタ基板102に沿って湾曲している。図1の上偏光板103の矢印Aで示す方向が延伸軸方向である。図1において、上偏光板103の延伸軸方向、すなわち、吸収軸方向が湾曲方向となっている。図2は偏光板の構造である。偏光板は、一定方向に振動する光のみを通す偏光子1031を、TACと呼ばれるトリアセチルセルロースによってサンドイッチしたものである。偏光子1031は一般にPVAフィルムを一方向に延伸し、ヨウ素を浸漬させて作られる。このとき、延伸方向にヨウ素が並ぶために、延伸方向が吸収軸となる。
【0031】
偏光子1031は機械的に弱いため、TACフィルム1032(トリアセチルセルロースフィルム)によってサンドイッチされ、偏光板の強度を確保している。偏光板はカラーフィルタ基板102に接着して使用されるために、一方のTACフィルム1032には粘着材が設置されている。この粘着材によって偏光板がカラー基板に強く接着される。図3において、偏光板がカラーフィルタ基板102に接着されるまでは、粘着層1033は離型フィルム1034によって保護されている。また、粘着材が設置されていないTACフィルム1032は、偏光板が液晶表示パネル10に接着されるまで、保護フィルム1035によって保護されている。
【0032】
偏光板は以上のような構造であるために、偏光板の吸収軸方向、すなわち、延伸軸方向と直角な方向に張力が印加され続けるとヨウ素分子の配列に乱れが生じ、コントラス等の劣化を生ずる。しかし、本発明においては、偏光板の、つまり、偏光子1031の延伸軸方向、すなわち、吸収軸方向に張力が印加されるため、偏光板の光学特性の劣化が無い。
【0033】
図3は図1に示した液晶表示パネル10を裏から見た図である。液晶表示パネル10の構成は図1で説明したと同様である。図3において、下偏光板104がTFT基板101に取り付けられている。下偏光板104の構成は図2で説明したと同様である。図3において、下偏光板104はTFT基板101に強く接着しているために、液晶表示パネル10が湾曲した状態では下偏光板104に圧縮応力がかかることになる。そうすると、図3における下偏光板104は延伸軸方向を湾曲方向と一致させる必要はなく、むしろ延伸軸方向を液晶表示パネル10が湾曲していない方向としたほうが良い。したがって、図3における矢印Aで示す下偏光板104の延伸軸方向、すなわち、吸収軸方向は、液晶表示パネル10の湾曲方向と直角な方向となっている。
【0034】
上偏光板103と下偏光板104の吸収軸を直角にするか並行にするかは、表示モードがノーマリブラックかノーマリホワイトかによって異なってくる、あるいは、液晶の駆動方法、すなわち、TNか、IPS(In Plane Awitching)か、VA(Vertical Alignment)か等によっても異なってくる。一方、曲面を有する液晶表示パネル10においては、張力による偏光板の特性への影響は上偏光板103のほうが大きい。したがって、表示方式によって、必要な場合は、上偏光板103の吸収軸を液晶表示パネル10の湾曲方向と一致させるだけでも効果を上げることが出来る。
【0035】
偏光板は粘着層1033を介してカラーフィルタ基板102あるいはTFT基板101に貼り付けられるが、製造誤差によって偏光板の吸収軸を液晶表示パネル10の湾曲方向の軸あるいはそれと直角な方向の軸(液晶表示パネル10の軸という)と完全には合わせられない場合がある。このような場合はでも偏光板の吸収軸と液晶表示パネル10の軸とは5度以内で一致していれば効果を上げることが出来る。
【0036】
一方、液晶表示パネル10の画面の軸と偏光板の軸を積極的にずらせたい場合がある。例えば、人間が偏光特性を持ったサングラスを使用して液晶表示パネル10を視認する場合、サングラスの吸収軸と液晶表示パネル10の上偏光板103の吸収軸とが直角になったりすると、不自然な画面となる。人間は液晶表示パネル10の画面を水平方向に見ることが多い。したがって、上偏光板103の吸収軸を液晶表示パネル10に軸とは、ずらせたほうが良い場合もある。
【0037】
図4はその例である。図4において、上偏光板103の吸収軸の方向と、上偏光板103の湾曲方向との角度θは10度である。この場合も製造バラつきを考慮してθの値は10度±5度としても所定も効果を上げることは出来る。図5は下偏光板104の湾曲方向と下偏光板104の吸収軸の関係である。図5において、下偏光板104の湾曲方向と直角な方向Cと下偏光板104の吸収軸Aの方向の角度θは10度である。この場合も製造バラつきを考慮してθの値は10度±5度としても所定も効果を上げることは出来る。
【0038】
以下の実施例で、本発明を具体的な表示装置に適用する場合を説明する。
【実施例1】
【0039】
図6は実施例1の表示装置の外観図である。図6は画面が外側に凸なディスプレイである。このような表示装置は駅の円柱に設置されるディスプレイ、あるいは、アミューズメント用途、例えば、スロットマシン遊戯機等で使用されるディスプレイ等である。図6において、液晶表示パネル10は外側に湾曲している。外側に湾曲した液晶表示パネル10は、図1あるいは図3で示したと同様な構成である。すなわ、ガラス基板を薄くすることによって液晶表示パネル10を曲げやすくし、曲面を持ったフレーム11に収容することによって画面が曲面を有する液晶表示パネル10を形成する。なお、図6では省略しているが、液晶表示パネル10の上は透明な面カバー8によって覆われている。すなわち、面カバー8がフレーム11と液晶表示パネル10との間に設置されている。
【0040】
図6において、液晶表示パネル10は湾曲したフレーム11によって表示部を残して覆われている。液晶表示パネル10の背面にはバックライト20が設置されている。このバックライト20は後で説明するように種々の光学部品と光源とから構成されている。
【0041】
画面が湾曲した液晶表示パネル10をガラス基板を用いて形成することが出来れば、従来の液晶製造技術を利用でき、コスト的に、また、信頼性的に非常に有利である。ガラスをどの程度湾曲することができるかはガラスの板厚との兼ね合いで決まる。
【0042】
図7(a)は液晶表示パネル10の板厚とガラスを破壊せずに湾曲することが出来る範囲を示す図である。図7(b)は図7(a)のパラメータを示す図である。図7(b)に示すように、液晶表示パネル10はTFTや画素電極が形成されたTFT基板101と、カラーフィルタ等が形成されたカラーフィルタ基板102を有し、TFT基板101とカラーフィルタ基板102の間に液晶層114が挟持されている。そして液晶層114はシール材113によってシールされている。
【0043】
液晶表示パネル10を構成するガラス基板は例えば、0.7mm、あるいは0.5mmというように規格化されている。したがって、より曲率をつけるためにガラス基板を薄くする場合は、液晶表示パネル10を形成後、ガラス基板の外側を研磨して薄くする。研磨は機械研磨と化学研磨が併用される。この場合、TFT基板101とカラーフィルタ基板102の両方を研磨する。液晶層114は数μmであり、液晶表示パネル10全体の厚さtを考えれば無視することが出来る。
【0044】
図7(a)において、縦軸は液晶表示パネル10の曲率半径である。この曲率半径の定義は図7(b)に示すように、液晶表示パネル10内側の曲率半径である。図7(a)における横軸のガラス厚さとは液晶表示パネル10全体の厚さtを表す。すなわち、図7(a)において横軸が0.2mmのときはTFT基板101またはカラーフィルタ基板102の厚さは0.1mmである。
【0045】
図7(a)における直線Gはガラスの破壊限界線を示す。すなわち、直線Gよりも下であると、ガラス基板が破壊し、この直線Gより上であればガラス基板が破壊することは無い。曲率半径をRとし、液晶表示パネル10の厚さをtとしたとき、直線GはR=400tの関係になる。すなわち、曲率半径Rが厚さの400倍以下になるとガラス基板が破壊することになる。しかしながら、ガラスにキズ等が存在すれば、直線Gよりわずかに上側でもガラスは破壊する。したがって、実際の製品では直線Gの2倍の裕度を持たせ、R=800tの直線上あるいはそれよりも上側の領域を使用することが望ましい。本実施例による製品では、ガラス基板と曲率の関係では、図7(a)に示すように、直線Gよりも上側に余裕をもって設定される。
【0046】
図8は図6のA−A断面分解図である。図8において、フレーム11の額縁部には所定の曲率が形成されている。このフレーム11の額縁部の曲率によって液晶表示パネル10の表示部に所定の曲率を持たせる。フレーム11の下には透明な面カバー8が設置される。面カバー8にも所定の曲率が形成されており、この面カバー8に液晶表示パネル10を沿わせることによって液晶表示パネル10に所定の曲率を持たせる。また、面カバーは液晶表示パネル10を保護する役割も有する。
【0047】
面カバー8の下には液晶表示パネル10が設置される。液晶表示パネル10の構成は図1等で説明したと同様である。液晶表示パネル10は所定の曲面が形成出来る程度の薄さまでにガラス基板が研磨されている。すなわち、液晶表示パネル10製作時点では液晶表示パネル10は平面であるが、液晶表示パネル10をフレーム11内に設置するさい、液晶表示パネル10に曲面が形成されて所定の曲面を持った画面が設定される。TFT基板101とカラーフィルタ基板102の合計の板厚と曲率半径の関係は図2に示す直線Gよりも上側にある必要があることはいうまでも無い。
【0048】
液晶表示パネル10の下側にはバックライト20が設置されている。バックライト20は種々の光学シート、導光板208、LED9等で形成されている。本実施例では光源としてLED9が使用されている。LED9は導光板208のサイドに設置されている。サイドに設置することによって液晶表示装置の厚さを小さくすることが出来る。導光板208はサイドからのLED9の光を液晶表示パネル10側に向ける役割を持つ。なお、図8では光源がサイドに設置されているが、表示装置によっては、光源が光学部品の下部に設置されることがある。この場合は、導光板の代わりに光を拡散する拡散板が使用される。
【0049】
導光板208の上面には凹部2081が形成されており、この凹部2081に光学シートを載置することによって光学シートの位置を固定する。導光板208の上面に形成された凹部2081は、液晶表示装置の画面の曲面と同一の曲面が形成されている。この導光板208を光学シートを介して液晶表示パネル10に押し付けることによって、フレーム11の曲面と相俟って液晶表示パネル10の画面に所定の曲面が形成される。本実施例における導光板208は厚さ2mmの板状であるが、導光板208は均一な板厚である必要はない。例えば、導光板208の上面は表示装置の画面の曲面と同一曲面として、下面は平面としてもよい。導光板208はポリカーボネート等で形成され、ある程度の剛性をもっている。
【0050】
LED9からの光のうち、液晶表示パネル10と反対側に向かう光は反射シート206で反射されて液晶表示パネル10側に向かう。導光板208を出た光は下拡散シート204を透過する。下拡散シート204は導光板208から出た光を均一にする役割を持つ。
【0051】
下拡散シート204の上には下プリズムシート203が設置される。下プリズムシート203には一定ピッチで例えば、画面横方向に延在するプリズムが多数形成されており、バックライト20から画面の縦方向に広がろうとする光を液晶表示パネル10の画面鉛直方向に集束する。すなわち、プリズムシートを使用することによって正面輝度を上げることが出来る。下プリズムシート203の上には上プリズムシート202が設置される。上プリズムシート202には一定ピッチで下プリズムシート203とは直角方向、例えば、画面縦方向に延在するプリズムが多数形成されている。これによって、バックライト20から、画面横方向に広がろうとする光を液晶表示パネル10の面と鉛直方向に集束する。このように、下プリズムシート203と上プリズムシート202を用いることによって画面の縦、横方向に広がろうとする光を画面の鉛直方向に集束することが出来る。
【0052】
上プリズムシート202の上には上拡散シート201が設置されている。プリズムシートには一定方向に延在するプリズムが例えば、50μmピッチで形成されている。すなわち、50μmのピッチによって明暗の縞が形成されることになる。一方液晶表示パネル10には、一定ピッチで走査線が画面横方向に、あるいはデータ信号線が画面縦方向に形成されている。したがって、走査線ピッチあるいはデータ信号線のピッチによって明暗の縞が形成される。そうするとプリズムの明暗の縞と液晶表示パネル10の明暗の縞とが干渉を起こし、モアレを発生する。上拡散シート201は拡散作用によってこのモアレを軽減する役割を有する。
【0053】
本実施例のように、外側に凸な画面を有する液晶表示装置において、上偏光板103の吸収軸を図1のように、画面の湾曲方向と一致させているので、長期間の使用においても偏光板の変更特性が変化せず、良好な画質を維持することが出来る。また、下偏光板104の吸収軸を画面の湾曲方向と直角方向に設定することによってこの効果をさらに上げることが出来る。
【実施例2】
【0054】
実施例1は液晶表示装置の画面が外側に凸の場合である。本発明は画面が凹である液晶表示装置の場合にも適用することが出来る。図9は液晶表示パネル10の視野角特性である。液晶表示パネル10の画質の問題点の一つは、画面を見る角度によって、輝度、色度等が変化することである。図9は通常のTN方式の液晶表示装置における視野角特性である。図9において、縦軸は輝度を表す。画面鉛直方向から見た場合の輝度を100%としている。図9の横軸は画面を見る角度である。すなわち、鉛直方向から画面を見た場合を0度とし、鉛直方向からずれる角度を横軸に取っている。図9に示すように、液晶画面を垂直方向から30度ずらしてみると輝度は40%近くにまで減少してしまうことになる。また、輝度の減少は各色毎に異なるために、視野角によって色が変化してしまうという問題も生ずる。
【0055】
この視野角特性は液晶表示装置の方式によって異なる。例えば、液晶分子をTFT基板101と平行方向に回転させることによって光の透過を制御するIPS(In Plane Switching)方式の液晶は通常のTN方式の液晶に比して優れた視野角特性を示す。いずれにせよ、画面が平面あるいは画面が外側に凸の場合は液晶表示パネル10の視野角特性を向上させて対処する必要がある。
【0056】
図10は本発明による画面の曲面が外側に凹である液晶表示装置を携帯電話60に使用した例である。携帯電話60のような小型のディスプレイであっても、画面に特定の曲率を設けることによって視認性がよくなる。一方、画面が小さいために、画面に曲率を設けても、ディスプレイの厚さに対する影響はわずかである。
【0057】
図11は図10に使用される液晶表示装置の分解斜視図である。図10において、透明面カバー8はサイドフレーム64にセットされる。面カバー8がサイドフレーム64の溝にセットされると面カバー8に特定の曲面が形成される。なお、面カバー8に予め曲率を形成しておいてもよい。面カバー8は透明なプラスチックで形成されているので、曲面を形成することは容易である。
【0058】
透明面カバー8の下には液晶表示パネル10が設置される。図11で使用される液晶表示パネル10の外観図を図12および図13に示す。図12は液晶表示パネル10を表側から見た図であり、図13は液晶表示パネル10を裏側からみた図である。図12および図13に示す液晶表示パネル10の構成は図1および図3に示す液晶表示パネル10の構成と同様であるが、曲率の方向が逆である。
【0059】
すなわち、本実施例においては、上偏光板103は圧縮応力を受ける構成であるから、上偏光板103の吸収軸Aは液晶表示パネル10の湾曲方向とは直角方向となっている。一方、下偏光板104は引っ張り応力を受けているので、偏光板の吸収軸Aは液晶表示パネル10の湾曲方向と同じ方向となっている。なお、液晶表示パネル10の湾曲方向と偏光板の吸収軸との角度の誤差は±5度以内であれば効果を上げることが出来ることは図4および図5で説明したと同様である。また、表示装置の使われ方によって、液晶表示パネル10の湾曲方向と偏光板の吸収軸との角度を10±5度程度形成しても効果を上げることも図4および図5で説明したと同様である。
【0060】
TFT基板101とカラーフィルタ基板102と液晶層114とで形成される液晶セルは湾曲可能とするために、TFT基板101とカラーフィルタ基板102を研磨して薄くすることは実施例1と同様である。液晶セルに上偏光板103および下偏光板104を接着して液晶表示パネル10が形成されるが、このようにして形成された液晶表示パネル10は薄く剛性が小さいために、容易に面カバー8の曲率に沿って曲面が形成される。
【0061】
図11に戻り、液晶表示パネル10のTFT基板101はカラーフィルタ基板102よりも大きく作られている。TFT基板101上にはドライバチップ61が設置され、また、液晶表示パネル10に外部から電源、信号等を供給するためのフレキシブル配線基板62が接続される。
【0062】
液晶表示パネル10の下側周辺には遮光テープ65が設置される。バックライト20からの光が液晶表示パネル10周辺に漏れてコントラストを低下させることを防止するためである。遮光テープ65の下側には光学シート類200が設置される。図11においては、光学シート類200は1枚のように省略して描かれているが、実際は図8に示したと同様、上拡散シート201、上プリズムシート202、下プリズムシート203、下拡散シート204等が設置される。各シートの役割は実施例1で説明したとおりである。但し、図11における光学シートの曲げ方向は図8とは逆である。
【0063】
光学シート類200の下には導光板208が設置されている。導光板208の上面は液晶表示パネル10の画面と同じ曲面が形成されている。導光板208の上面の曲面に光学シート類が沿って設置されるために、光学シート類も液晶表示パネル10の画面と同じ曲面となる。導光板208の側面にはLED9を搭載したLED用フレキシブル配線基板91が設置される。図11においては、導光板208の短辺側からLED9からの光が供給される。LED9フレキシブル配線基板91の下にはLED9からの光が漏れることを防止するための光源用遮光テープ66が設置される。
【0064】
これらの光学部材は樹脂で形成されたモールド63に収容される。モールド63の下側には反射シート206が設置される。反射シート206は液晶表示パネル10と反対側に向かうLED9からの光を反射して液晶表示パネル10側に向ける役割をもつ。これらの液晶表示パネル10、バックライト20等は金属で形成された裏カバー13によって保持される。
【0065】
本実施例における液晶表示パネル10の画面の曲面はシリンドリカルであれば容易に形成することが出来る。この場合の曲率を持つ方向は画面の長軸方向である。本実施例における画面の大きさは対角で2.75インチ、長軸方向の曲面の曲率半径は例えば、185mm程度である。曲率はわずかではあるが、視認性に対する影響は非常に大きい。一方、曲率をつけても画面が小さいために液晶表示装置の厚さへの影響はわずかである。
【0066】
本実施例でのTFT基板101およびカラーフィルタ基板102の厚さは0.15mmであり、液晶セルの厚さとしては0.3mmである。図7(a)のグラフに示すように、液晶セルの厚さが0.3mmであれば、曲率半径185mmは余裕をもって形成することが出来る。画面に曲率をつけても、本実施例における液晶表示装置の厚さ、すなわち、液晶表示パネル10とバックライト20を合わせた厚さは12mm程度に抑えることが出来る。
【0067】
図14は携帯電話60等、手で持つ機器の場合の画面の適正な曲率半径を評価する模式図である。携帯電話60は手で持って表示画面を見る。目と画面の距離は概ね20cmから30cmと考えられる。したがって、ディスプレイの半径を15cmから40cm程度の凹画面とすれば視認性を格段に向上することが出来る。曲率をつける方向は画面の長軸方向でも短軸方向でもよいが、長軸方向に曲率を付けるとより視認性に対する効果が増す。
【0068】
以上のように、本発明によれば、画面が一方向に曲率を有する外側に凹である曲面を有する液晶表示パネルにおいて、カラーフィルタ基板に貼り付けられる上偏光板の吸収軸方向を液晶表示パネルの湾曲方向と直角方向に一致させるので、上偏光板の偏光特性の変化を抑えることが出来る。また、TFT基板に貼り付けられる下偏光板の吸収軸の方向を液晶表示パネルの湾曲方向と一致させるので、下偏光板の偏光特性の変化を防止することが出来る。このように、本発明によれば、長期間コントラストの優れた画像を有する画面の曲面が外側に凹である液晶表示装置を得ることが出来る。
【実施例3】
【0069】
図15は本実施例の液晶表示装置をいわゆるスロットマシーン遊技機50に使用した例である。スロットマシーン遊技機50の表示画面51は大型の液晶画面51で形成されている。液晶画面51の中央付近3箇所は長方形の孔が形成されている。この長方形の孔部に表面に種々の情報が書き込まれたドラム52がセットされる。遊戯者は各ボタンを制御しながら、液晶画面51の情報とともに、回転するドラム52で遊戯をすることになる。
【0070】
図16は従来方式における、図15に示すスロットマシーン遊技機50のA−A断面において、ドラム52と液晶表示装置のみを取り出した断面図である。図16において表示部51は液晶表示装置で形成され、液晶表示パネル10とバックライト20とで構成されている。液晶表示装置の中央部には矩形の孔が形成されており、この部分に種々の情報が書き込まれたドラム52が設置されている。遊戯中このドラム52が矢印のように回転する。
【0071】
しかし、図16に示すような従来の方法は回転するドラム52と液晶表示装置とを連動しなくてはならず、機械的な構成が複雑となる。また、スロットマシーン遊技機50等は遊戯者をあきさせないために、頻繁にモデルチェンジをする必要がある。モデルチェンジのたびにドラム52の交換含む、スロットマシーン遊技機50の変更が必要となり、スロットマシーン遊技機等の遊戯場の経営者にとって経済的な負担が大きい。
【0072】
図17は本実施例の液晶表示装置をスロットマシーン遊技機50に適用した例である。図16に示す従来例と異なるところは、図17ではドラム52を用いず、本発明における画面が湾曲した液晶表示装置を用いている点である。図17においては、湾曲した液晶表示画面にドラムが回転しているような画像を表示させる。これによって遊戯者はドラムが回転しているという錯覚を生じ、図16に示すように、実際のドラムが回転している場合と同様に遊戯を楽しむことが出来る。
【0073】
本実施例の有利な点は、モデルチェンジをする場合も、ドラム52の交換等は必要なく、ソフトの変更だけで済むということである。この点、遊戯場経営者の経済的な負担は大幅に軽減することが出来る。図17に示すように、スロットマシーン遊技機50に使用される液晶表示パネル10は曲率半径が小さい。したがって、液晶表示パネル10を湾曲させたときの上偏光板103および下偏光板104の曲率半径も小さくなり、引っ張り応力、圧縮応力もその分大きくなる。
【0074】
図17において、上偏光板103は大きな引張り応力を受け、下偏光板104は大きな圧縮応力を受けている。図17に使用される液晶表示パネル10を図1あるいは図3に示すような構成とすることによって、長時間の使用によっても偏光板の光学特性の劣化を防止することが出来る。本発明は図17に示すような曲率半径の小さい曲面を持つディスプレイに使用すると特に効果が大きい。
【実施例4】
【0075】
薄型の表示装置としては、液晶表示装置の他に有機EL表示装置がある。有機EL表示装置も湾曲して使用することが可能である。また、本発明を湾曲した有機EL表示装置に適用することが出来る。図18は本発明を有機EL表示装置に適用した場合の例を示す断面模式図である。図18において画面は外側に凸であるが、図18の曲率を有する方向と直角な方向には曲率は無いものとする。
【0076】
図18において、ガラスで形成されたOLED(Organic Light Emitting Device)基板上に、発光をする有機EL層73、および有機EL層73を制御するTFT、信号線、電源線等が形成されている。有機EL層73は水分が存在すると特性が劣化する。水分による有機EL層73の劣化を防止するために、OLED基板72に対向してシール板75を設置し、シール材113によって内部の有機EL層73を封止する。なお、シール板75には乾燥材74が設置されており、シール内部の水分を除去する。OLED基板72およびシール板75を組み合わせた状態が有機EL表示パネルである。
【0077】
シール板75は樹脂で形成される場合もあるが、樹脂は水分を透しやすいため、内側に金属の薄膜を形成する場合もある。一方、シール板75をガラスで形成する場合もある。この場合は、OLED基板72とシール基板がガラスで形成されることになる。有機EL表示パネルを湾曲可能とするために、OLED基板72とシール基板を研磨して薄くする。この場合、有機EL表示パネルの強度が弱くなるために、透明な樹脂で形成された補強板71が取り付けられている。なお、補強板71を取り付けるか否かはOLED基板72等の機械的強度による。
【0078】
シール板75の上には円偏光板76が接着によって取り付けられている。円偏光板76は外部からの反射光を防止するために取り付けられる。円偏光板76はλ/4位相差板と偏光板とから構成される。すなわち、光が円偏光板76を2回通ると偏光方向が90度回転することになる。外部から円偏光板76をとおり、OLED基板72を反射した光が再び外部へ出ようとすると再び円偏光を受けるために、この光は偏光板の吸収軸によって吸収されてしまい、再び外部に出てくることが出来ない。したがって、外光の影響を防止し、コントラストの高い画像を得ることが出来る。
【0079】
円偏光板76は位相差板と偏光板によって構成されている。有機EL表示パネルを湾曲させる場合、偏光板の吸収軸を偏光板が引っ張り応力を受ける方向と一致させることは液晶表示パネル10の場合と同様である。また、位相差版も偏光板と同様に一軸延伸して作成される。したがって、本実施例において、位相差板の延伸方向を有機EL表示パネルの湾曲方向と一致させることによって、位相差板の特性の変化を防止することが出来る。
【0080】
ところで、有機EL表示装置は有機EL層73からの発光がOLED基板72と反対の方向に向かい、シール板75側に画像を形成するトップエミッション型と、有機EL層73からの発光がOLED基板72側に向かい、OLED基板72側で画像を形成するボトムエミッション型とがある。図18はトップエミッション型の有機EL表示装置の例である。
【0081】
図18はトップエミッション型で画面が外側に凸の場合である。この場合は円偏光板76は引っ張り応力を受けるので、円偏光板76を構成する位相差板および偏光板の延伸軸の方向は有機EL表示パネルが曲率を持つ方向と一致させている。しかし、トップエミッション型で、画面が外側に凹の場合は、円偏光板76は圧縮応力を受けるので、円偏光板76を構成する位相差板および偏光板の延伸軸方向は、有機EL表示パネルが曲率を持つ方向と直角の方向と一致させる必要がある。
【0082】
図19はボトムエミッション型の有機EL表示装置の場合の有機EL表示パネルの断面図である。図19における画面は外側に凸である。そして図19の画面の曲率を有する方向と直角な方向には曲率は無いものとする。図19において、OLED基板72側に有機EL層73からの光が出射されて画像が形成されるので、OLED基板72側に円偏光板76が取り付けられている。
【0083】
OLED基板72に形成された有機EL層73はシール板75によってシール材113を介して封止されている。外部からの水分の浸入を防止するためである。シール板75の内側には乾燥材74が設置されている。図19においては、補強板71は使用されていない。図19において、円偏光板76がTFT基板101に取り付けられている。この場合、円偏光板76は引っ張り応力を受けているので、円偏光板76を構成する位相差板および偏光板の延伸軸は有機EL表示パネルの湾曲方向と一致している。
【0084】
ボトムエミッションの場合で、画面が外側に凹の場合も曲率の向きが反対になるだけで、基本的な構成は図19と同様である。しかし、この場合は、円偏光板76は図19と異なり、圧縮応力を受けることになる。したがって、円偏光板76を構成する位相差板および偏光板の延伸軸は有機EL表示パネルの湾曲方向と直角な方向と一致している。
【0085】
以上の説明においては、円偏光板76を構成する位相差板と偏光板はいずれも一軸方向に延伸されて形成されているとして説明した。しかし、位相差板は一軸方向に延伸せずに形成される場合もありうる。この場合は偏光板の延伸軸方向を、上記のような例とすればよい。
【0086】
また、位相差板あるいは偏光板の延伸軸の方向と有機EL表示パネルが曲率を有する方向とは製造誤差等によってばらつくが、有機EL表示装置の場合も、±5度以内であれば所定の効果を得ることが出来る。
【0087】
以上説明したように、本発明を湾曲した有機EL表示装置に使用することによって、偏光板と位相差板とで構成される円偏光板76の特性変動を防止することが出来、長期にわたってコントラストの優れた有機EL表示装置を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の液晶表示パネルを表から見た斜視図
【図2】偏光板の構成図
【図3】本発明の液晶表示パネルを裏から見た斜視図
【図4】本発明の上偏光板の斜視図
【図5】本発明の下偏光板の斜視図
【図6】実施例1の液晶表示装置の斜視図
【図7】ガラスの厚さと曲率の関係を示すグラフである。
【図8】実施例1の液晶表示装置の分解断面図である。
【図9】液晶表示パネルの視野角特性の例である。
【図10】携帯電話の外観斜視図である。
【図11】携帯電話用液晶表示装置の分解斜視図である。
【図12】凹状の画面を有する液晶表示パネルの表側斜視図である。
【図13】凹状の画面を有する液晶表示パネルの裏側斜視図である。
【図14】凹状の画面を視認する場合の模式図である。
【図15】スロットマシーン遊技機の正面図である。
【図16】スロットマシーン遊技機の部分断面模式図である。
【図17】スロットマシーン遊技機に本発明を使用した例である。
【図18】トップエミッション型有機EL表示装置に本発明を使用した例である。
【図19】ボトムエミッション型有機EL表示装置に本発明を使用した例である。
【符号の説明】
【0089】
8…面カバー、 9…LED、 10…液晶表示パネル、 11…フレーム、 13…裏カバー、 20…バックライト、 50…スロットマシーン遊技機、 51…スロットマシーン遊技機の表示部、 52…ドラム、 60…携帯電話、 61…ドライバチップ、 62…フレキシブル配線基板、 63…モールド、 64…サイドフレーム、 65…遮光テープ、 71…補強板、 72…OLED基板、 73…発光部、 74…乾燥材、 75…シール板、76…円偏光板、 101…TFT基板、 102…カラーフィルタ基板、 103…上偏光板、 104…下偏光板、 113…シール材、 114…液晶層、 201…上拡散シート、 202…上プリズムシート、 203…下プリズムシート、 204…下拡散シート、 206…反射シート、 208…導光板、 1031…偏光子、 1032…TACフィルム、 1033…粘着層、 1034…離型フィルム、 1035…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な画面を有しており、前記第1の偏光板は、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向に吸収軸を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の偏光板は前記液晶表示パネルが曲率を有する方向と直角方向に吸収軸を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な画面を有しており、前記第1の偏光板は、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向に略々吸収軸を有し、
前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向の軸と前記第1の偏光板の吸収軸とのなす角度は10度±5度であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
前記第2の偏光板の吸収軸と前記液晶表示パネルが曲率を有する方向と直角方向とのなす角度は10度±5度であること特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凹な画面を有しており、前記第1の偏光板は、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向と直角な方向に吸収軸を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
前記第2の偏光板は前記液晶表示パネルが曲率を有する方向に吸収軸を有することを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
画素電極およびTFTが形成されたTFT基板と、カラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶が挟持され、前記カラーフィルタ基板には第1の偏光板が取り付けられ、前記TFT基板には第2の偏光板が取り付けられている液晶表示パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凹な画面を有しており、前記第1の偏光板の吸収軸と、前記液晶表示パネルが曲率を持つ方向と直角な方向とのなす角度は10度±5度であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2の偏光板の吸収軸と前記液晶表示パネルが曲率を有する方向とのなす角度は10度±5度であること特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、
前記有機EL表示パネルの画面は前記シール板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な曲面となっており、
前記シール板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と一致することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項10】
有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、
前記有機EL表示パネルの画面は前記シール板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凹な曲面となっており、
前記シール板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と直角方向であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項11】
有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、
前記有機EL表示パネルの画面は前記OLED基板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凸な曲面となっており、
前記OLED基板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と一致することを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項12】
有機EL層が形成されたOLED基板と、前記OLED基板と対向してシール板が形成された有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置であって、
前記有機EL表示パネルの画面は前記OLED基板側に形成され、前記有機EL表示パネルは一方向に曲率を有する外側に凹な曲面となっており、
前記OLED基板側には位相差板と偏光板を含む円偏光板が設置され、前記位相差板または前記偏光板の延伸軸の方向は前記有機EL表示パネルが曲率を有する方向と直角方向であることを特徴とする有機EL表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−92998(P2009−92998A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264473(P2007−264473)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】