説明

液晶表示装置

【課題】機械的衝撃に伴って生じる表示ムラを軽減して表示品位を向上させる。
【解決手段】カラーフィルタ124上に配置される画素電極151およびカラーフィルタ124に形成されるコンタクトホール126を介して画素電極151に接続される画素TFT151を含むアレイ基板101と、画素電極151に対向する対向電極153を含む対向基板102と、これら基板101,102間に挟持される液晶層190とを備える。画素電極151は、カラーフィルタ124上でスリットを介して互いに隣接する複数のサブピクセル電極部、およびスリットの一部を横断して複数のサブピクセル電極部を接続するブリッジ配線部3を含み、コンタクトホール126はブリッジ配線部3を収容してブリッジ配線部3を複数のサブピクセル電極部よりも低い位置に設定するよう配置される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶層が一対の電極基板間に挟持される液晶表示素子に関し、特に液晶分子のチルト方向が互いに異なる複数のドメインに分割される液晶層を持つ液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力という特性からOA機器、情報端末、時計、テレビのような様々な分野で応用されている。一般に、液晶表示装置は液晶層が一対の電極基板間に挟持された構造を有する。例えばアクティブマトリクスカラー液晶表示装置では、一方の電極基板がアモルファスシリコンやポリシリコン半導体層を用いた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチング素子、並びにこのスイッチング素子に接続された画素電極、走査線、信号線を有するアレイ基板として形成され、他方の電極基板がカラーフィルタおよび対向電極を有する対向基板として形成される。アレイ基板および対向基板は基板間に配置されるスペーサにより一定の距離に保たれ、さらに液晶材料を封止する外縁シール部材として基板の外縁に沿って配置される接着剤で貼り合わされる。このような液晶表示装置は薄膜トランジスタを用いて画素のスイッチングを行うことにより優れた応答性を得ることができるため、多くの画像情報を表示しなくてはならない携帯テレビあるいはコンピュータの表示モニタとして利用されている。
【0003】
近年では、液晶表示装置の精細度および表示速度の向上が情報量の増大に伴って要求され始めている。精細度の向上はTFTアレイ構造を微細化して画素数を増大することにより行われる。この場合、画素数の増大に伴って液晶分子の配列をより短い時間内に遷移させるために、現在の2倍から数十倍という液晶分子の応答速度を得られるような液晶表示モードが必要となる。この液晶表示モードとしては、例えばネマチック液晶を用いたOCB(Optically Compensated Birefringence)モード、VAN(Vertically Aligned Nematic)モード、 HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、およびπ配列モード、並びにスメクチック液晶を用いた界面安定型強誘電性液晶(SSFLC: Surface−Stabilized Ferroelectric Liquid Crystal)モードおよび反強誘電性液晶(AFLC: Anti−Ferroelectric Liquid Crystal)モードが検討されている。
【0004】
特にVANモードは、従来のツイストネマチック(TN)モードよりも速い応答速度が得られることや、静電気破壊のような不良発生の原因となる従来のラビング工程を垂直配向処理の採用により不要にできることから近年注目されている。さらに、このVANモードは視野角の補償設計が容易であり、視野角は液晶分子のチルト方向が互いに異なる複数のドメインに液晶層の画素領域を分割するマルチドメイン構造により広げることができる。
【0005】
液晶表示装置の画素がVANモードのマルチドメイン構造である場合、電極スリット、絶縁性構造体、あるいは電極起伏のようなチルト制御部がアレイ基板および対向基板の少なくとも一方に形成される。このチルト制御部は画素電極および対向電極から液晶層の画素領域に印加される電場に揺らぎを生成し、この電場の揺らぎにより液晶材料の誘電率異方性に対応させてチルト方向を一律に規定することにより複数のドメインを得る。また、画素電極は通常全体として長方形であることが必要とされるため、各々正方形である複数のサブピクセル電極部に画素電極を分割することにより、これらサブピセル電極部毎に得られるドメイン間の対称性が向上する。
【0006】
上述のチルト制御部が例えばアレイ基板および対向基板の両方に形成される場合、正確にこれら基板の位置合せをしてから貼り合わせないと、視野角補償用にアレイ基板上および対向基板上に配置されるチルト制御部によってそれぞれ得られるドメイン相互間で大きな面積差が生じ、これが表示ムラあるいは透過率低下などの原因となる。近年では、例えばカラーフィルタをアレイ基板側においてスイッチング素子および画素電極間に形成してアレイ基板および対向基板の貼り合わせに必要な位置合せ精度の低減および開口率の向上を図ることがある。
【0007】
しかしながら、チルト制御部がアレイ基板および対向基板の両方に配置される限り、ドメイン相互間の面積差による上述の問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明者等はドメイン分割用のチルト制御部をアレイ基板側のみに配置することについて検討した。ブリッジ配線部は複数のサブピクセル電極部の間隙であるスリットの一部を横断するため、このスリットに依存して液晶層内に生成される電場の揺らぎを乱す。この結果として、液晶分子のチルト方向がスリットに依存する有用なドメインだけでなく、液晶分子のチルト方向がブリッジ配線部に依存する不用なドメインも電場の印加に伴って生じることがある。これを実際に偏光顕微鏡で観察すると、シュリーレンテクスチャと呼ばれる黒線がこれらドメインの境界に観察される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、画像表示中に指で押すなどして液晶表示装置に機械的衝撃を与えた場合、ブリッジ配線部の両端に隣接する位置では、液晶分子が外力により所定の配列状態からどの方向にも配列可能である。実際に液晶分子の配列状態が乱れると、ブリッジ配線部に依存するドメインが大きくなり、これと同時にスリットに依存するドメインが小さくなるという現象が生じる。従って、シュリーレンテクスチャの黒線が長くなり、これが透過率に影響して表示画面上の表示ムラとして視認されるようになる。画像表示のために電場が印加され続けていると、液晶分子がディスクリネーションと呼ばれる配列欠陥の移動を伴って乱れのない元の配列状態に戻るために長い時間を必要とし、表示ムラも液晶分子が元の配列状態に戻るまで無くならない。
【0010】
本発明の目的は上述の問題点を解消し、機械的衝撃に伴って生じる表示ムラを軽減して表示品位を向上できる液晶表示装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、絶縁部材層上に配置される少なくとも1つの画素電極および絶縁部材層に形成されるコンタクトホールを介して画素電極に接続されるスイッチング素子を含むアレイ基板と、画素電極に対向する対向電極を含む対向基板と、アレイ基板および対向基板間に挟持され、画素電極および対向電極間の画素領域において各基板に対して略垂直に配向される液晶分子を含み、液晶分子配列が画素電極および対向電極間の電圧により制御される液晶層とを備え、画素電極は、絶縁部材層上でスリットを介して互いに隣接する複数のサブピクセル電極部、およびスリットの一部を横断して複数のサブピクセル電極部を接続するブリッジ配線部を含み、コンタクトホールはブリッジ配線部を収容してブリッジ配線部を複数のサブピクセル電極部よりも低い位置に設定するように配置される液晶表示装置が提供される。
【0012】
この液晶表示装置では、コンタクトホールがブリッジ配線部を収容してブリッジ配線部を複数のサブピクセル電極部よりも低い位置に設定する。これにより、ブリッジ配線部上の電場を弱めて、液晶分子の配向方向をブリッジ配線部近傍においてスリット近傍と同様にできる。この場合、ブリッジ配線部上でスリットと同様に電場制御されているので、液晶分子の配列が機械的衝撃により乱されても所定の状態に速やかに戻る。すなわち、機械的衝撃に伴って生じる表示ムラを軽減して表示品位を向上することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態に係る透過型アクティブマトリクス液晶表示装置について添付図面を参照して説明する。この液晶表示装置は例えば駆動回路を内蔵した液晶表示パネル100として構成される。
【0014】
図1は液晶表示パネル100の外観を示し、図2は図1に示す液晶表示パネル100の回路構造を概略的に示し、図3は図2に示す画素電極周辺の平面構造を示し、図4は図3に示すIV−IV線に沿って液晶表示パネル100のTFT121を含む断面構造を示し、図5は図3に示すV−V線に沿って列方向の断面構造を示す。
【0015】
図1に示すように、液晶表示パネル100はアレイ基板101と、アレイ基板101に対向する対向基板102と、アレイ基板101および対向基板102間に保持される液晶組成物を含む液晶層190とを備える。アレイ基板101と対向基板102とは液晶層190を取り囲むように配置される外縁シール部材106により貼り合わされる。液晶表示パネル100では、画像を表示するための表示領域103が外縁シール部材106の内側に配置され、駆動回路を配置するための周辺領域104がこの表示領域103の周囲に配置される。この周辺領域104は図3に示す外縁シール部材106の内側において表示領域103を取り囲む額縁状の遮光領域(図示せず)を含む。液晶組成物はアレイ基板101と対向基板102との貼合わせ後に液晶注入口132から注入され、この注入後に封止部材133により封止される。
【0016】
アレイ基板101は、表示領域103において、図2に示すように、マトリクス状に配置されたm×n個の画素電極151、これら画素電極151の行に沿って配置されたm本の走査線Y(Y1〜Ym)、これら画素電極151の列方向に沿って配置されたn本の信号線X(X1〜Xn)、m×n個の画素電極151に対応して走査線Y1〜Ymおよび信号線X1〜Xnの交差位置近傍に画素スイッチング素子として配置されたm×n個の薄膜トランジスタ(画素TFT)121を有し、さらに画素電極151の行に沿って配置されるm本の補助容量線152を有する。走査線Y1〜Ymは信号線X1〜Xnと略直交し、補助容量線152と略平行に配置される。各補助容量線152は対向電極駆動回路等から対向電位VCOMとして得られる所定電位に設定され、対応行の画素電極151と容量結合してそれぞれ補助容量を構成する。
【0017】
また、アレイ基板101は、周辺領域104において、走査線Y1〜Ymを駆動する走査線駆動回路118、信号線X1〜Xnを駆動する信号線駆動回路119を有する。各画素TFT121は対応走査線Yおよび対応信号線Xに接続され、この走査線Yからの駆動電圧により導通し、信号線Xからの信号電圧を対応画素電極151に印加する。
【0018】
図3に示すように、画素電極151は信号線Xおよび補助容量線152によって区画される領域に配置され、電気的に絶縁してこれら信号線Xおよび補助容量線152に僅かに重なる。画素電極151はITO等の透明導電部材からなり、信号線Xおよび補助容量線152は金属等の遮光性導電部材からなる。画素電極151は、スリット2を介して互いに隣接し各々略正方形である一対のサブピクセル電極部1、およびこれらサブピクセル電極部1相互を電気的に接続する配線として形成されるブリッジ配線部3を有する。
【0019】
図4に示すように、アレイ基板101では、それぞれの画素TFT121がガラス基板などの光透過性絶縁基板111A上に形成され、カラーフィルタ124により覆われる。カラーフィルタ124は、各々1列の画素電極151に割り当てられ画素電極151の行方向に繰り返し並べられるストライプ状の赤色フィルタ層R、緑色フィルタ層G、青色フィルタ層Bにより構成される。それぞれの画素電極151はこのカラーフィルタ124上に形成される。また、複数の柱状スペーサ131がこれら画素電極151相互間においてカラーフィルタ124上に形成される。カラーフィルタ124、画素電極151、および柱状スペーサ131は配向膜113Aにより全体的に覆われる。配向膜113Aは、液晶層190の液晶組成物に含まれる液晶分子Lqをアレイ基板101に対して略垂直な方向に配向する。なお、アレイ基板101は、液晶表示パネル100の端部の周辺領域104において、遮光領域に対応して光透過性絶縁基板111A上に形成される遮光層(図示せず)を備える。また、アレイ基板101では、偏光板PL1が液晶層190とは反対側となる絶縁基板111Aの表面に貼り付けられる。
【0020】
他方、対向基板102では、対向電極153がガラス基板などの透明な絶縁基板111B上に形成され、配向膜113Bがこの対向電極153を覆って形成される。対向電極153は、アレイ基板101側の複数の画素電極151全体に対向するように配置されるITO等の透明導電部材からなる。配向膜113Bは、液晶層190の液晶組成物に含まれる液晶分子Lqを対向基板102に対して略垂直な方向に配向する。また、対向基板102では、偏光板PL2が液晶層190とは反対側となる絶縁基板111Bの表面に貼り付けられる。
【0021】
アレイ基板101についてより詳細に説明すると、ポリシリコン半導体層112が絶縁基板111A上に形成され、画素TFT121用にパターニングされ、さらにゲート絶縁膜162により覆われる。画素TFT121は、ゲート絶縁膜162を介して半導体層112の上方に配置されるゲート電極163、このゲート電極163に重なる半導体層112の部分からなるチャネル領域112C、このチャネル領域112Cの両側において半導体層112に不純物をドープすることにより形成されるドレイン領域112Dおよびソース領域112S、ドレイン領域112Dに接続されるドレイン電極188、並びにソース領域112Sに接続されるソース電極189を有する。
【0022】
信号線X、走査線Y、および補助容量線152等の配線部、画素TFT121のゲート電極163、ドレイン電極188、およびソース電極189は、アルミニウムや、モリブデンなどの遮光性導電部材によって形成される。具体的には、走査線Y、補助容量線152、およびゲート電極163がゲート絶縁膜162を覆って形成される例えばモリブデン等の導電層をパターニングすることによりそれぞれ形成される。本実施形態において、ゲート電極163は走査線Yの一部となっている。信号線X、ドレイン電極188、およびソース電極189は走査線Y、補助容量線152、ゲート電極163、およびゲート絶縁膜162を覆う層間絶縁膜176上に形成される例えばアルミニウムの導電層をパターニングすることによりそれぞれ形成される。ここで、ドレイン電極188はゲート絶縁膜162および層間絶縁膜176を貫通するコンタクトホール内でドレイン領域112Dにコンタクトして信号線Xと一体に形成され、ソース電極189はゲート絶縁膜162および層間絶縁膜176を貫通するコンタクトホール内でソース領域112Sにコンタクトして形成される。このとき、半導体層112はゲート絶縁膜162を介して補助容量線152と対向し補助容量Csを形成している。カラーフィルタ124は信号線X、ドレイン電極188、およびソース電極189を覆って形成される。画素電極151は、カラーフィルタ124を貫通するコンタクトホール126内で画素TFT121のソース電極189にコンタクトするように形成される。
【0023】
ちなみに、この液晶表示装置は、カラーフィルタ124が画素TFT121および画素電極151のアレイと共にアレイ基板101上に形成されるCOA(Color filter On Array)構造である。このCOA構造は、カラーフィルタ124を対向基板102上に配置する場合に基板相互をずれなく貼り合わせるために必要とされる高精度な位置合わせを不要にできるため、製造上、材料コストの点からも好ましい。液晶表示装置が上述のように透過型である場合には、カラーフィルタ124の材料がアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ノボラック系樹脂などの透明樹脂であることが透過率、色合いの観点から好ましい。
【0024】
画素電極151はITOなどからなる透明電極であり、画素TFT121はアモルファスシリコン(a−Si)やポリシリコン(poly−Si)などの半導体層と、Al、Mo、Cr、Cu、Ta等の金属層との積層構造を有する能動素子として構成可能である。ブリッジ配線部3はスリット2により画素電極151を分割して得られる一対のサブピクセル電極部1間を接続する配線であることからAl、Mo、Cuなどの導電性金属を用いることができるが、これらサブピクセル電極部1と同じ材質である方が製造工程を増やさないという観点において好ましい。このため、ブリッジ配線部3はカラーフィルタ124上にITOの透明導電部材層を形成し、この透明導電部材層をパターニングすることによりサブピクセル電極部1と一体に形成される。
【0025】
各サブピクセル電極部1は、液晶層190の画素領域に電場を印加すると共に液晶分子Lqの配向方向を規制する電場の揺らぎを生成して画素領域を液晶分子Lqのチルト方向の異なる複数のドメインにそれぞれ分割するような電極パターンに形成される。具体的には、各サブピクセル電極部1が図3に示すようにサブピクセル電極部1の周縁側から内側に伸びるチルト制御用欠落部として形成される複数の電極スリットSLおよびこれら複数の電極スリットSLにそれぞれ隣接して残される複数の電極ストライプSEを含み、電圧印加に伴って互いに略90°の角度をなす4方向に強電場域および弱電場域交互に並べた電場の揺らぎを生成する。負の誘電異方性を示すネマチック液晶材料を用いると、液晶分子Lqが強電場領域と弱電場領域が交互に並ぶ方向と平行な方向にダイレクタを揃えて配向して、4つのドメインを形成する。
【0026】
コンタクトホール126はブリッジ配線部3に対応するカラーフィルタ124の領域に形成される。これにより、ブリッジ配線部3はコンタクトホール126に収容され、各サブピクセル電極部1よりも低い位置に設定される。この場合、ブリッジ配線部3および対向電極153間の距離が画素電極151の電極部1および対向電極153間の距離より長くなり、ブリッジ配線部3上の電場が弱められる。これにより、ブリッジ配線部3上の電場をスリット2上の電場に近づけて、液晶分子Lqの配向方向をブリッジ配線部3近傍においてスリット2近傍と同様にできる。具体的には、ブリッジ配線部3が45°のテーパ角で少なくとも0.5μm、実用上好ましくは1〜2μm程度の深さになるように設定される。
【0027】
ここで、上述の液晶表示装置の製造工程を説明する。アレイ基板101については、最初に画素TFT121用のポリシリコン半導体層112が絶縁基板111上に形成され、二酸化珪素あるいは窒化珪素からなるゲート絶縁膜162がポリシリコン半導体層112を覆って0.15μmの厚さに形成される。走査線Y、ゲート電極163、および補助容量線152は例えばモリブデンの導電層を約0.3μmの厚さでこのゲート酸化膜162上に形成し、これをフォトリソグラフィにより所定形状にパターニングすることにより得られる。続いて層間絶縁膜176が走査線Y、ゲート電極163、および補助容量線152を覆って形成され、コンタクトホールがこの層間絶縁膜176に形成される。この層間絶縁膜176は0.3μmの厚さを持つ例えばアルミニウムの導電層で覆われ、この導電層はドレイン電極188、信号線Y、およびソース電極189を形成するためにパターニングされる。
【0028】
続いて、赤色の顔料を分散させた感光性レジストがスピンナーで全面塗布され、90°Cの温度で10分間乾燥される。この後、紫外線が、赤色フィルタ層Rのための領域を露光するために照射される。ここでは、赤色フィルタ層Rをストライプ状とし、かつ赤色フィルタ層R内にTFT121と画素電極151とをつなぐコンタクトホール126が形成されるようなフォトマスクを用いて露光を行う。また、紫外線の露光量は200mJ/cmに設定される。次に、この感光性レジストは水酸化カリウムを1重量パーセント含む水溶液を用いて20秒間現像処理され、さらに200°Cの温度で、60分間焼成される。これにより、コンタクトホール126を有する赤色フィルタ層Rが形成される。緑色フィルタ層Gおよび青色フィルタ層Bについても、対応色の顔料を分散させた感光性レジストを用いた赤色フィルタ層Rと同様の処理を繰り返すことにより形成される。これにより、各々厚さ1.5μmの赤色フィルタ層R、緑色フィルタ層G、および青色フィルタ層Bがカラーフィルタ124として得られる。このカラーフィルタ124において、コンタクトホール126は補助容量線152の上方領域で画素TFT121のソース電極189を露出するように配置される。その後、画素電極151が厚さ約0.1μmのITOをスパッタリングし、これをフォトリソグラフィでパターニングすることにより形成される。この画素電極151は図3に示すように一対のサブピクセル電極部1およびこれらサブピクセル電極部1を接続する10μm×10μmのブリッジ配線部3を含み、各サブピクセル電極部1は互いに90°異なる4方向への異方性を有する電極パターンとなる。ブリッジ配線部3はカラーフィルタ124のコンタクトホール126内に収容されてソース電極189にコンタクトする。
【0029】
その後、感光性の黒色樹脂がスピンナーで塗布され、90°Cの温度で、10分間乾燥され、さらに紫外線が柱状スペーサ131および表示領域103の外周部(幅3mm)のための領域を露光させるフォトマスクを介して照射される。紫外線の露光量は300mJ/cmに設定される。その後、黒色樹脂がpH=11.5のアルカリ性水溶液を用いた現像処理により選択的に除去され、200°Cの温度で、60分間焼成され、これにより柱状スペーサ131および遮光層が得られる。この後、配向膜112Aが画素電極151、カラーフィルタ124、柱状スペーサ131を覆って70nmの厚さで塗布される。
【0030】
対向基板102については、対向電極153が絶縁基板111B上に形成され、配向膜113Bがこの対向電極153を覆って70nmの厚さで塗布される。
【0031】
こうして得られたアレイ基板101および対向基板102はそれぞれの端面を治具で合わせ、さらにエポキシ系熱硬化樹脂の接着剤をアレイ基板101の外縁に沿って配置される外縁シール部材106として用いて貼合わされる。続いて、負の誘電率異方性を持つ液晶組成物が液晶注入口132からアレイ基板101および対向基板102間で外縁シール部材106で囲まれた空間に注入され、液晶注入口132がこの注入後に紫外線硬化樹脂からなる封止部材133により封止される。
【0032】
本実施形態では、コンタクトホール126が、ブリッジ配線部3を収容してこのブリッジ配線部3を各サブピクセル電極部1よりも低い位置に設定する。これにより、ブリッジ配線部3上の電場を弱めて、液晶分子Lqの配向方向をブリッジ配線部3近傍においてスリット2近傍と同様にできる。この場合、ブリッジ配線部上でスリット2と同様に電場制御されているので、液晶分子Lqの配列が機械的衝撃により乱されても所定の状態に速やかに戻る。すなわち、機械的衝撃に伴って生じる表示ムラを軽減して表示品位を向上することができる。実際に、上述の液晶表示装置の表示領域表面を指で押した場合に相当する圧力を印加したところ、加圧部分に生じた表示ムラは十分な速度で消滅し、同時に高い透過率、安定したドメイン分割による広い視野角特性、良好な応答時間が得られた。
【0033】
次に本発明の第2実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示装置について説明する。この液晶表示装置はブリッジ配線部3付近の断面構造が図6に示すように構成されることを除いて第1実施形態と同様に構成される。このため、第1実施形態と同様部分を同一参照符号で示し、その説明を省略する。
【0034】
この液晶表示装置では、絶縁性構造体4がブリッジ配線部3上に配置される。具体的には、黒色樹脂のパターニングに用いられるフォトマスクにおいて紫外線露光領域のパターンを変更することにより、黒色樹脂の一部が柱状スペーサ131および遮光層に加えて絶縁性構造体4としても残される。ブリッジ配線部3はコンタクトホール126に収容されてサブピクセル電極部1よりも低くなっているため、絶縁性構造体4の上端は対向基板102に接触していない。実際に、上述の液晶表示装置の表示領域表面を指で押した場合に相当する圧力を印加したところ、加圧部分に生じた表示ムラは第1実施形態の約半分の時間で消滅し、かつ高い透過率、安定したドメイン分割による広い視野角特性、良好な応答時間が得られた。また、柱状スペーサ131、遮光層、および絶縁性構造体4とは黒色樹脂という同一材料からなるため、絶縁性構造体4は柱状スペーサ131および遮光層と共通の製造プロセスを利用して形成できる。すなわち、絶縁性構造体4を設けるために独立な製造プロセスを必要とせずに第1実施形態よりも優れた上述のような効果を得ることができる。
【0035】
次に本発明の第3実施形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示装置について説明する。この液晶表示装置はブリッジ配線部3付近の断面構造が図7に示すように構成されることを除いて第1実施形態と同様に構成される。このため、第1実施形態と同様部分を同一参照符号で示し、その説明を省略する。
【0036】
この液晶表示装置では、絶縁性構造体4が柱状スペーサを兼ねてブリッジ配線部3上に配置される。具体的には、黒色樹脂のパターニングで、フォトマスクにおいて紫外線露光領域のパターンを変更することにより、黒色樹脂の一部が遮光層に加えて柱状スペーサを兼ねる絶縁性構造体4としても残される。ブリッジ配線部3はコンタクトホール126に収容されてサブピクセル電極部1よりも低くなっているため、黒色樹脂の厚さは絶縁性構造体4の上端が対向基板102に接触する高さを持つように設定される。また、表示領域103内のスペーサ密度はスペーサ面積により最適化されることになる。この実施形態では、絶縁性構造体4から独立した柱状スペーサを設けることなく第2実施形態と同様な効果を得ることが可能である。
【0037】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲でさらに様々に変形可能である。
【0038】
また、画素電極151は2つのサブピクセル電極部1からなるものに限られず、3つまたはそれ以上からなってもよい。
【0039】
また、上述の実施形態では、配向膜113Aおよび113Bが画素電極151および対向電極153上に配置されたが、構造によっては、用途に応じて種々な絶縁膜をこれらの電極上に介在させてもよい。この場合、絶縁膜は、例えばSiO、SiN、Alなどの無機系薄膜、ポリイミド、フォトレジスト樹脂、高分子液晶などの有機系薄膜などを用いることができる。絶縁膜が無機系薄膜の場合には蒸着法、スパッタ法CVD(Chemical Vapor Deposition)法、あるいは溶液塗布法などによって形成できる。また、絶縁膜が有機系薄膜の場合には、有機物質を溶かした溶液またはその前駆体溶液を用いて、スピンナー塗布法、スクリーン印刷塗布法、ロール塗布法などで塗布し、所定の硬化条件(加熱、光照射など)で硬化させ形成する方法、あるいは蒸着法、スパッタ法、CVD法、などで形成したり、LB (Langumuir−Blodgett)法などで形成することもできる。
【0040】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、機械的衝撃に伴って生じる表示ムラを軽減して表示品位を向上できる液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置である液晶表示パネルの外観を示す図である。
【図2】図1に示す液晶表示パネルの回路構造を概略的に示す図である。
【図3】図2に示す画素電極周辺の平面構造を示す図である。
【図4】図1に示すIV−IV線に沿った液晶表示パネルの断面構造を示す図である。
【図5】図1に示すV−V線に沿った液晶表示パネルの断面構造を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置である液晶表示パネルに設けられブリッジ配線部付近の断面構造を説明するための図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る液晶表示装置である液晶表示パネルに設けられブリッジ配線部付近の断面構造を説明するための図である。
【符号の説明】
1…サブピクセル電極部、2…スリット、3…ブリッジ配線部、4…絶縁性構造体、100…液晶表示パネル、101…アレイ基板、102…対向基板、121…画素TFT、124…カラーフィルタ、126…コンタクトホール、151…画素電極、153…対向電極、90…液晶層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部材層上に配置される少なくとも1つの画素電極および前記絶縁部材層に形成されるコンタクトホールを介して前記画素電極に接続されるスイッチング素子を含むアレイ基板と、前記画素電極に対向する対向電極を含む対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に挟持され、前記画素電極および対向電極間の画素領域において各基板に対して略垂直に配向される液晶分子を含み、液晶分子配列が前記画素電極および前記対向電極間の電圧により制御される液晶層とを備え、前記画素電極は、前記絶縁部材層上でスリットを介して互いに隣接する複数のサブピクセル電極部、および前記スリットの一部を横断して前記複数のサブピクセル電極部を接続するブリッジ配線部を含み、前記コンタクトホールは前記ブリッジ配線部を収容して前記ブリッジ配線部を前記複数のサブピクセル電極部よりも低い位置に設定するように配置されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記アレイ基板は前記ブリッジ配線部上に配置される絶縁性構造体を含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記アレイ基板は前記アレイ基板および前記対向基板間のギャップを規定する柱状スペーサを含み、前記絶縁性構造体は前記柱状スペーサと同一材料からなることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記絶縁性構造体は前記柱状スペーサを兼ねることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記絶縁部材層はカラーフィルタを兼ねることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2004−245952(P2004−245952A)
【公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−33865(P2003−33865)
【出願日】平成15年2月12日(2003.2.12)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】