説明

液晶表示装置

【課題】透過表示および反射表示の際の透過率を保ちつつ、反射表示における色や階調の異常が無く表示品位に優れた半透過型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】アレイ基板101と、アレイ基板101に間隙をおいて対向配置されている対向基板102と、アレイ基板101と対向基板102との間に挟持された負の誘電率異方性を有する液晶層104と、マトリクス状に配置された複数の表示画素PXのそれぞれが透過表示領域20および反射表示領域10を有する液晶表示装置であって、アレイ基板101は、表示画素PXのそれぞれに配置されているとともに、透過電極と反射電極220とを有する画素電極230を備え、対向基板102は、画素電極PXに対向する対向電極173と、対向電極173上に配置された突起210と、を備え、突起210は、反射表示領域10において反射電極220が配置された全領域に対向する位置に配置されている液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に関し、特に、半透過型の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示方法には、外光を利用した反射型液晶表示装置とバックライトを利用した透過型液晶表示装置がある。また、これら反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置との両方の構造を取り入れた半透過型液晶表示装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この半透過型液晶表示は、透過表示領域と反射表示領域の液晶層を通る光の位相差を無くす必要がある。従来、透過表示領域と反射表示領域とを通る光の位相差を無くすための一つの方法として、透過表示領域と反射表示領域とで液晶層の厚みを変えて、液晶層の厚みを最適化したマルチギャップ方式の半透過型液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、マルチギャップ方式を採用せず、反射表示領域と透過表示領域の液晶層厚を略同一にしてコントラスト低下を防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2001−264750号公報
【特許文献2】特開2004−54129号公報
【特許文献3】特開2006−78742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のノーマリーホワイトの半透過型液晶表示装置において、透過表示領域に液晶層の厚みの異なる境界である段差境界部があり、この場合には、段差境界部が反射表示領域内に位置するようにすると、反射表示領域内の段差境界部よりも透過表示領域側で、液晶層が透過表示領域と同じ厚さになるため、反射表示領域内で光の位相差が生じ、反射表示の色や階調の異常が生じる場合があった。
【0006】
また、液晶が垂直配向型の半透過型液晶表示装置においては、視野角補償のために液晶の倒れる方向を規定する突起等を形成する場合があるが、画素ピッチが50μm程度以下になる場合には、開口部分に形成された突起の面積の占める割合が大きくなると、透過率が落ちることがあった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、半透過型表示装置において、透過表示および反射表示の際の透過率を下げずに、表示品位に優れているとともに反射表示領域において、色や階調の異常が無く表示する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、アレイ基板と、このアレイ基板に間隙をおいて対向配置されている対向基板と、前記アレイ基板と前記対向基板との間に挟持された負の誘電率異方性を有する液晶層と、前記アレイ基板の同一面上に形成されている透明電極と反射電極からなる画素電極と、前記対向基板上に形成されている対向電極と、この対向電極上に形成され前記液晶層の液晶の配向を制御する透明な絶縁物と、を備え、前記絶縁物は、前記反射電極に対向する位置に配置され、前記反射電極の全領域を覆うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、半透過型表示装置において、透過表示および反射表示の際に透過率を下げずに、表示品位に優れているとともに反射表示領域において、色や階調の異常が無く表示する液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る液晶表示装置の一実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態に係る液晶表示装置1は、図1に示すように、アレイ基板101と、このアレイ基板101に対向配置されて外縁シール部材103で貼り合わせられた対向基板102と、これらの基板間に形成された液晶層104とを有する液晶表示パネル100を備える。
【0011】
液晶表示パネル100は、マトリクス状に配置された複数の表示画素PXからなる表示領域110と、表示領域110を囲む周辺領域120とを有している。図1に示すように、表示領域110は、外縁シール部材103によって囲まれた領域内に形成され、その外周に沿って周辺領域120が配置されている。
【0012】
表示領域110には、図2に示すように、複数の信号線X1〜Xnと複数の走査線Y1〜Ymが交差するように配置されている。図1に示す周辺領域120において、アレイ基板101は、走査線Y1〜Ymを駆動する走査線駆動回路121と、信号線X1〜Xnを駆動する信号線駆動回路122とを備えている。
【0013】
表示領域110において、アレイ基板101は、各表示画素PXに配置され、マトリクス状に配置されたm×n個の画素電極131を備える。一方、対向基板102は、液晶層104を挟んで全ての画素電極131に対向する対向電極173を備える。
【0014】
ここで、液晶層104に用いる液晶106は、負の誘電率異方性を有している。この液晶106は、画素電極131と対向電極173との間に電圧を印加していない状態、あるいは、しきい値未満の電圧を印加した状態では、アレイ基板101もしくは対向基板102に対し概略垂直に配列する。
【0015】
一方、画素電極131と対向電極173との間にしきい値以上の電圧を印加した状態では、液晶106は、アレイ基板101もしくは対向基板102に対し傾斜あるいは概略平行に配列する。このとき、液晶106は、その傾斜する方位が、電気力線105の向きに概略規定される性質を持つ。
【0016】
また、アレイ基板101は、m×n個の画素電極131に対応して走査線Yおよび信号線Xの交差箇所近傍に、スイッチング素子140として配置されたm×n個の薄膜トランジスタ(TFT)を備える。
【0017】
図3は、周辺領域120と表示領域110の境界近傍における液晶表示パネル100の断面図である。また、図4は、図2に示す走査線Yと信号線Xとの交差箇所近傍におけるアレイ基板101の断面図である。以下に、図3および図4に示す各構成部を説明する。
【0018】
スイッチング素子140のソース電極144は、対応する信号線Xに接続されている(あるいは一体となっている)。スイッチング素子140のゲート電極143は、対応する走査線Yに接続されている(あるいは一体となっている)。スイッチング素子140のドレイン電極145は、画素電極に接続されている(あるいは一体となっている)。
【0019】
また、アレイ基板101は、各画素電極131の箇所に、それと同電位となるように補助容量電極151を備えている。さらに、アレイ基板101は、各補助容量電極151に接続された補助容量線152と、各補助容量線152および対向電極173に接続された対向電極駆動回路123を備えている。対向電極駆動回路123は、各補助容量線152および対向電極173を所定の電位に制御する。補助容量は、各補助容量電極151とそれに接続された補助容量線152によって構成される。
【0020】
図3および図4に示すように、アレイ基板101は、ガラス基板などの透明な絶縁性基板111を有し、その背面側に取り付けられた偏光板PL1を有している。表示領域110においては、絶縁性基板111上に、アンダーコート層112が配置されている。このアンダーコート層112上には、スイッチング素子140が配置されている。
【0021】
このスイッチング素子140は、アンダーコート層112上にはポリシリコン膜によって形成された半導体層141が配置されている。半導体層141は、チャネル領域141Cならびに、その両側にそれぞれ不純物をドープすることによって形成されたドレイン領域141D及びソース領域141Sから構成されている。また、アンダーコート層112上には、不純物ドープされたポリシリコン膜からなる補助容量電極151が配置されている。
【0022】
アンダーコート層112、半導体層141および補助容量電極151の上には、ゲート絶縁膜142が形成される。このゲート絶縁膜142上には、ゲート電極143と、それと一体の走査線Yと、補助容量線152が形成される。補助容量線152の一部は補助容量電極151に対向している。補助容量線152は、走査線Yと同一の材料によって形成され、走査線Yに対して略平行に延びている。
【0023】
ゲート絶縁膜142、ゲート電極143、走査線Yおよび補助容量線152の上には、層間絶縁膜113が配置されている。この層間絶縁膜113上には、ドレイン電極144と、信号線Xと、ソース電極145と、コンタクト電極153が配置されている。
【0024】
信号線Xは、走査線Yおよび補助容量線152に対して略直交するように配置されている。また、信号線X、走査線Y、及び補助容量線152は、遮光性を有する低抵抗材料によって形成される。
【0025】
例えば、走査線Y及び補助容量線152は、モリブデンータングステンによって形成され、信号線Xは、多くの場合、アルミニウムによって形成されたドレイン電極144およびソース電極145は、ゲート絶縁膜142及び層間絶縁膜113を貫通するコンタクトホール114Aおよび114Bをそれぞれ介して、ドレイン領域141Dおよびソース領域141Sにそれぞれ接続されている。
【0026】
また、コンタクト電極153は、ゲート絶縁膜142及び層間絶縁膜113を貫通するコンタクトホール154を介して、補助容量電極151に接続される。コンタクト電極153は、信号線Xと同一材料によって形成され、信号線Xに接続されている。そのため、ソース電極145、画素電極131および補助容量電極151は同電位となる。
【0027】
表示領域110では、層間絶縁膜113、ドレイン電極144、ソース電極145、走査線Y、信号線Xおよびコンタクト電極153の上に、透明樹脂層115がさらに配置されている。周辺領域120では、遮光層116がさらに配置されている。
【0028】
この透明樹脂層115上には、ITO(Indium Tin Oxide)等の光透過性導電部材によって画素電極131が配置されている。画素電極131は、透明樹脂層115を貫通するスルーホール117を介して、スイッチング素子140のソース電極145に接続されている。また、透明樹脂層115上には、例えば、高さ2.0μmの柱状スペーサー118が配置されている。
【0029】
透明樹脂層115および画素電極131の上には、柱状スペーサー118も覆うように、配向膜119が配置される。配向膜119は、液晶層104に含まれる液晶106を、アレイ基板101の基板面に対して略垂直な方向に配向させるものである。
【0030】
一方、対向基板102は、ガラス基板などの透明な絶縁性基板171を有し、その前面側には、偏光板PL2が取り付けられている。表示領域110において、対向基板102は、絶縁性基板171上に、赤のカラーフィルタ層172R、緑のカラーフィルタ層172G、青のカラーフィルタ層172Bが配置されている。これらのカラーフィルタ層上には、全ての画素電極131に対向するように対向電極173が配置されている。
【0031】
対向電極173は、ITO等の光透過性導電部材によって形成されている。対向電極173上には、液晶層104の液晶106を対向基板102の基板面に対して略垂直な方向に配向させる配向膜174が配置されている。アレイ基板101と対向基板102とは、外縁シール部材103で貼り合わせられている。上記の液晶表示装置において、本発明の実施例について以下に説明する。
【0032】
[実施例]
以下、液晶表示装置1の実施例について説明する。図5は、本実施例に係るアレイ基板の表示画素の一構成例の図である。この図に示すように、本実施例に係る液晶表示装置1は半透過型液晶表示装置である。すなわち、本実施例に係る液晶表示装置1の液晶表示パネル100は、表示画素PXのそれぞれが、透過表示領域20および反射表示領域10を有する。
【0033】
図5Aは、対向基板102側から液晶表示パネル100を見た場合の一表示画素PXを概略的に示す平面図である。
【0034】
ここで、外光を反射電極220で反射する部分を反射表示領域10とし、反射電極220が無く、バックライト(図示せず)からくる光を透過する透過電極230のみが配置された部分を透過表示領域20とする。本実施例では、反射表示領域10は、透過表示領域20の間に配置されているとともに、表示画素PXをその長辺と平行な方向d2において略二分する位置に配置されている。
【0035】
上述の通りアレイ基板101上には、画素電極131が設けられている。本実施例においては、画素電極131は、アレイ基板101の同一面上に光透過性導電部材ITOによる透過電極230とアルミニウムによる反射電極220によって構成されている。
【0036】
本実施例の場合、各表示画素PXに透過電極230が配置されている。また、反射電極220は、表示画素PXの長辺に対して平行な方向d2の表示画素PXの中央部分に配置されている。
【0037】
すなわち、図5Aに示すように表示画素PXを対向基板102側から見ると、表示画素PXのd2方向における中央部分には反射電極220が配置され、この反射電極220のd2方向における両側に透過電極230が配置されている。
【0038】
本実施例においては、対向基板102の対向電極173上に、透明樹脂からなる絶縁物の突起210が配置されている。すなわち、突起210は、対向電極173と配向膜174との間に配置されている。
【0039】
この突起210は、アレイ基板101上にある反射電極220と対向するように配置されている。すなわち、突起210は、対向基板102側から液晶表示パネル100を見たときに、反射電極220の全領域を覆うように配置されている。
【0040】
表示画素PXにおいて、突起210は、反射表示領域10の領域にあり、反射表示領域10および透過表示領域20によって構成される画素をd2方向に対して二分する位置に設けられている。また、突起210は、図5Aに示すように、表示画素PXの短辺と平行なd1方向に延びているとともに、図9に示すように、各表示画素PXに配置されている。
【0041】
画素電極131と対向電極173とに電圧を印加すると液晶層104内に電界が生じ、図5Bに示す様に電気力線105が生じる。絶縁性の突起210が対向電極173を覆っている部分があるため、電気力線105は、突起210を境目にしてd2方向に向かって斜め方向に傾いている。液晶106は、電気力線105の傾斜する向きに規定される性質をもつため、その長軸が突起210に向かって傾斜している。
【0042】
すなわち、突起210によって、表示画素PXには液晶層104に含まれる液晶106が略同一の方向に配向する2つの領域が形成される。
【0043】
ここで、図中、αは反射電極のd2方向の幅、また、βは突起210のd2方向の幅を示している。本実施例においては、αは20μm、βは25μmとし、また、配向膜119、174は、100μmの厚さで塗布され、表示画素PXのd1方向のピッチ(d1方向における表示画素PXの中心同士の間隔)は、30μmとなるように作製されている。
【0044】
本実施例では、図5Aに示すように、各表示画素PX内における反射電極220が配置されている領域の面積は、突起210が配置されている領域の面積よりも小さい。このようにするのは、以下の理由からである。
【0045】
本実施例では、図5Aに示すように、反射表示領域10において、反射電極220が配置された領域と突起210が配置された領域とが対向するように配置される。このことによって、突起210は、液晶層104に電圧を印加した際に、液晶106の配向状態を規定する役割を果たす。
【0046】
また、突起210の存在する部分では、絶縁性の突起210によって液晶層104中に印加される電圧が低下するため液晶層104中の光の位相に変化をもたらす。この結果、突起210は、液晶層104中の光の位相を反射表示領域10と透過表示領域20においてほぼ同じにする役割も果たしている。
【0047】
したがって、本実施例においては、反射表示領域10と透過表示領域20との光の位相差は無く、透過表示および反射表示における色や階調の異常を防ぐことができる。
【0048】
上記のような本実施例に係る液晶表示装置の表示を観察した結果、反射表示および透過表示の品位は共に良好であった。
【0049】
[比較例1]
次に、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置1と比較するための第1比較例に係る液晶表示装置について説明する。図6Aは、対向基板102側から見た表示画素PXの平面図である。実施例と本比較例が異なる点は、対向基板102上に絶縁性の透明樹脂からなる突起210が、アレイ基板101上にある反射電極220の一部分のみを覆っている点である。
【0050】
すなわち、図6Aに示すように、本比較例では、1表示画素PX内における反射電極220が配置されている領域は、突起210が配置されている領域よりも大きくなっている。その他の構造は、実施例と同様である。
【0051】
図6Bは、図6Aの線A−Aでの断面を概略的に示す図である。d2方向において、反射電極220の幅αは20μmであって、突起210の幅βは10μmである。その他の条件は、実施例に係る液晶表示装置1と同様の条件で作製した。
【0052】
本比較例に係る液晶表示装置で表示を観察した結果、透過表示の際には問題がなかったが、反射表示の際に階調に反転が有った。
【0053】
[比較例2]
次に、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置1と比較するための第2比較例に係る液晶表示装置について説明する。
【0054】
実施例と本比較例が異なる点は、絶縁性の透明樹脂層200が、アレイ基板101上にある反射電極220の一部分のみを覆っていることである。すなわち、図7Aに示すように、第2比較例では、一表示画素内における反射電極220が配置されている領域は、透明樹脂層200が配置されている領域よりも大きくなっている。
【0055】
図7Bは、図7AのA−Aの簡略した断面図である。図7Bを参照して対向基板102上の積層関係を説明すると、対向基板102の下に透明樹脂層200、この透明樹脂層200の下に対向電極173、この対向電極173の下に突起210、この突起210の下に配向膜174という積層関係になっている。
【0056】
図7Aのd2方向において、反射電極220の幅αは30μmであって、透明樹脂層200の幅γは20μm、突起210の幅βは10μmである。その他の条件は実施例及び第1比較例と同様の条件で液晶表示装置を作製した。
【0057】
本比較例に係る液晶表示装置で表示を観察した結果、透過表示の際には問題がなかったが、反射表示に際に階調に反転が有った。
【0058】
実施例と第1比較例の表示結果について検討すると、実施例のように第1比較例に比べ表示画素PXにおける突起210の部分が占める面積が増加すると、第1比較例に比較してバックライトから出射された光を通し難くする突起210の部分の面積が増加するため、透過表示の透過率が大きく下がると考えられる。
【0059】
しかし、実際には図8に示すように、第1比較例に対する実施例の透過率の減少は、11%程度悪くなるに止まる。また、白色を表示する光の透過度を、黒色を表示する光の透過度で割った値であるコントラスト比(CR)にしても、透過表示では6%程度の減少とその減少率はとても小さく問題無い。
【0060】
また、通常、本実施の形態のように、液晶106が垂直配向型の液晶表示装置においては、透過率が低いほど視野角特性が良くなるように視野角補償板を使用している為、透過率の低い部分があることによって上下/左右の視野角は、第1比較例に比べ実施例は20°視野角が改善される。
【0061】
一方、反射表示の場合は、第1比較例に対する実施例の反射率は、25%増加する。また、反射表示でのコントラスト比においては、72%も増加することから、実施例のような構造にする利点が大きいことがわかる。
【0062】
更に、第1比較例では、反射表示において階調の反転が有るという問題が生じるが、実施例では反射表示に階調の反転は生じず、反射表示における色、階調の異常の問題を解決することができる。このことは、実施例についての説明で述べたように、突起210は、液晶層104に及ぼす電圧を低下させ、液晶層104中を通る光の位相変化を最適にする効果があることを示している。
【0063】
したがって、上記の効果は、反射表示領域10において、突起210が反射電極220を覆えば生ずるのであるから、反射電極220の幅α、突起210の幅βとした場合に、
0<α≦β…(1)式
という条件を満たせば良い。
【0064】
次に、実施例と第2比較例の表示結果を検討すると、透過表示において、第2比較例では、透明樹脂層200があるために、透過率が実施例より低下することが分かる。
【0065】
また、第2比較例では、透明樹脂層200の段差部分において、液晶106の配向に乱れが生じ光漏れを起こす。一方、実施例では、透明樹脂層200のような段差部分がないため、液晶106の配向に乱れが起こらず光漏れが無い。
【0066】
反射コントラスト比は、白表示時の光の透過度を黒表示時の光の透過度で割った値であるから、実施例は第2比較例に比べ黒表示時の光の透過度が小さく、したがって、反射コントラスト比は大きくなる。
【0067】
以上、図8の結果を鑑みると、(1)式の条件を満たせば、実施例のような突起210の構造で十分に透過表示および反射表示で良好な表示を得ることができる。
【0068】
上記の実施の形態に係る液晶表示装置によれば、半透過型表示装置において、透過表示および反射表示の際の透過率を下げずに、表示品位に優れているとともに反射表示における色や階調の異常を無くした液晶表示装置を提供することができる。
【0069】
また、上記の実施の形態に示す突起210は、図9に示すように各表示画素に独立して配置されている。このように配置すると、例えば、図10に示すように、表示画素PXの行に沿ってつながるように配置されている場合に比べて液晶を注入が容易になり、液晶表示装置の製造に係る時間を短縮し、製造歩留まりを改善することができる。
【0070】
さらに、上記の実施の形態では、反射表示領域10において突起210が反射電極220と対向しているとともに、反射表示領域10が透過表示領域20間に配置されている。従って、液晶106が突起210を境界にして2つの方向に配向することから、突起210を上記の様に配置することによって、視野角を補償することが可能となるとともに、透過表示および反射表示の品位を良好にすることができる。
【0071】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記の実施の形態に係る液晶表示装置では、表示画素の短辺方向d1におけるピッチが約30μmであったが、これに限らない。具体的には、d1方向における表示画素PXにおけるピッチが約50μm以下である液晶表示装置に適応するとより効果的である。
【0072】
すなわち、短辺方向d1のピッチが50μm以下においては、上記実施例のようなd2方向で画素電極131を二分する位置に突起210を配置にすることにより、画素電極全体にわたり電気力線105を傾斜させることができるため、電気力線105によって規定される液晶106を安定的に配向分割することができる。
【0073】
また、上記の液晶表示装置では、表示画素は長方形であったが、正方形の場合でも良い。この場合にも、上記の(1)式の条件を満たすことによって、同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置の一例を示す斜視図。
【図2】図1に示す液晶表示装置の構成例を説明するための図。
【図3】図1に示す液晶表示装置の液晶表示パネル構成例を説明するための断面図。
【図4】図1に示す液晶表示装置のアレイ基板の構成例を説明するための断面図。
【図5A】本発明の実施例に係るアレイ基板の表示画素の一構成例を説明するための平面図。
【図5B】本発明の実施例に係るアレイ基板の表示画素の一構成例を説明するための断面図。
【図6A】第1比較例に係るアレイ基板の表示画素の一構成例を説明するための平面図。
【図6B】第1比較例に係るアレイ基板の表示画素の一構成例を説明するための断面図。
【図7A】第2比較例に係るアレイ基板の表示画素の一構成例を説明するための平面図。
【図7B】第2比較例に係るアレイ基板の表示画素の一構成例を説明するための断面図。
【図8】第1実施例、第2実施例、第3実施例および第1比較例、第2比較例の表示を観察した評価結果の一例を示す図。
【図9】本発明の実施例に係る液晶表示装置において、対向基板の突起の一配置例を説明するための図。
【図10】対向基板の突起の他の配置例を説明するための図。
【符号の説明】
【0076】
1…液晶表示装置、10…反射表示領域、20…透過表示領域、100…液晶表示パネル、101…アレイ基板、102…対向基板、104…液晶層、PX…表示画素、210…突起、220…反射電極、230…透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板と、
このアレイ基板に間隙をおいて対向配置されている対向基板と、
前記アレイ基板と前記対向基板との間に挟持された負の誘電率異方性を有する液晶層と、
前記アレイ基板の同一面上に形成されている透明電極と反射電極からなる画素電極と、
前記対向基板上に形成されている対向電極と、
この対向電極上に形成され前記液晶層の液晶の配向を制御する透明な絶縁物と、
を備え、
前記絶縁物は、前記反射電極に対向する位置に配置され、前記反射電極の全領域を覆うことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記画素電極において、前記反射電極は前記透過電極間に設けられている請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記絶縁物は、前記画素電極を略二分する位置に配置されている請求項1または請求項2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記画素電極は略矩形状であって、
前記絶縁物は、前記画素電極の短辺と略平行に延びている請求項1乃至3記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記画素電極は略矩形状であって、
前記画素電極の長辺方向における前記反射電極の幅をαとし、前記画素電極の長辺方向における前記絶縁物の幅をβとすると、0<α≦βの関係となる請求項1乃至4記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−46148(P2008−46148A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218585(P2006−218585)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】