液晶表示装置
【課題】
FSCモードを用いた単純マトリックス駆動において、良好なマトリックス特性を確保する事により、色分解能を確保するとともに、合成容易な液晶材料を用いる事により、安価で高性能な液晶表示装置を提供する事を目的とする。
【解決手段】
1本以上の行電極と、一本以上の列電極が形成された基板と、該基板間に狭持された反強誘電性液晶物質と、独立した3原色光が順次発光する照明装置とを有するフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において、該反強誘電性カラー液晶表示装置に三角波を印加した時のヒステリシス曲線の立ち上がり側の飽和電圧304の80%における透過光強度332が最大透過光強度330に対し、3%以上の透過光強度を実現させる反強誘電性液晶物質を含有することを特徴とする。
また上記表示装置に諧調表示を可能にするためには、データ電圧に対し時間幅変調を施す事を特徴とする。
FSCモードを用いた単純マトリックス駆動において、良好なマトリックス特性を確保する事により、色分解能を確保するとともに、合成容易な液晶材料を用いる事により、安価で高性能な液晶表示装置を提供する事を目的とする。
【解決手段】
1本以上の行電極と、一本以上の列電極が形成された基板と、該基板間に狭持された反強誘電性液晶物質と、独立した3原色光が順次発光する照明装置とを有するフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において、該反強誘電性カラー液晶表示装置に三角波を印加した時のヒステリシス曲線の立ち上がり側の飽和電圧304の80%における透過光強度332が最大透過光強度330に対し、3%以上の透過光強度を実現させる反強誘電性液晶物質を含有することを特徴とする。
また上記表示装置に諧調表示を可能にするためには、データ電圧に対し時間幅変調を施す事を特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の制御方法に関し、より詳細には3原色のバックライトを時分割発光させカラー表示を行うカラー光源型の単純マトリクスフィールド色順次駆動の反強誘電性液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能液晶ディスプレーの主流は現在、材料としてはネマティック液晶を、表示品位を向上させるためには、基板にTFTなどの非線形スイッチング素子を配設したアクティブ表示装置となっている。一方ADL,Chandani等によって発見された反強誘電性液晶を用いたパネルは、単純マトリックス駆動でありながら上記アクティブ表示素子と比較しても遜色のない画像品位が得られることから、多くの研究と開発の努力が重ねられており、現在まで多くの研究成果が発表されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
従来、液晶パネルのカラー化については、バックライトは白色光を用いながら、絵素を構成する画素には、それぞれ赤、緑、青(以後R,G,Bと略記する)のフィルターをセル内の電極に合わせながら形成し、RGBそれぞれの3つの画素を1絵素とする方式が一般的であった。
【0004】
ただ前記フィルター方式のカラー化の技術は、カラーフィルターおよび偏光板による光の吸収のため、ややもすると表示が暗く、解像度が低く、高品質のカラー画像を表示させることは困難な状況であった。
【0005】
これらの欠点を解決し、表示を明るく保ちながら、解像度を上げる技術として、近年バックライトとして白色光の替わりに赤(R)、緑(G)、青(B)の光を発光するLEDを順次発光させ、1つの画素で1つの絵素を形成するフィールド色順次発光モード(Field Sequential Colorモード 以後FSCモードと略記する)が注目されている。
【0006】
このFSCモードを用いたカラー液晶表示装置は、白黒階調表示の液晶表示素子と、その裏面に配置された赤(R),緑(G),青(B)の3色の光源群とから構成され、液晶表示素子の画像表示に同期させながら光源を順次点灯させて、その光を液晶表示素子に照射することにより、カラー画像を得るものである。
【0007】
前記FSCモードによれば、液晶表示素子の各画素が1対1でカラー絵素に対応する。 従って、従来3画素で1個のカラー絵素を構成するカラーフィルター方式の液晶表示素子に比べ、見かけ上の画素数及び開口率を3倍にすることかできること、またカラーフィルターを省ける分、明るく、小型で、高解像度のカラー画像を表示できることが可能になる。
【0008】
液晶表示装置を駆動する方式としては、2種類、即ちフレーム反転方式と行毎反転方式がある。この方式の特徴について図面を用いて説明する。
図4は駆動におけるフレーム、フィールド、および交流化信号の概念を示した図である。図4において、1フレームはF,G,Bフィールドからなり1枚の完結した画面を送る時間で、ちらつきを防ぐため1秒間のフレーム数は通常60以上とされている。従って2フレーム単位での時間は約16.7msec以下に設定する。
【0009】
1フレームは3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の3つのフィールドから成っている。AL1,AL2は異なったタイプの交流化信号で、該交流化信号によって行電極に与えられる選択パルスの極性が決定される。
【0010】
図4に示した2種類の交流化信号、即ち、第1の交流化信号AL1,第2の交流化信号AL2共に、フィールド内で頻繁に極性を変えている。この極性を変える周期が、図2に示した複数の行電極のうちの1本が選択されている時間に相当する。すなわち本発明においては行電極を1行選択する毎に印加電圧の極性を反転させている。
交流化信号AL1,AL2は共にフィールド毎にも極性を変えている。
【0011】
交流化信号AL1,AL2の波形は、図6に示すように、第1フレームと第2フレームとで極性を反転されている。このように構成することにより多数のフレームの画像を書き込む中で印加電圧の極性が反転して電荷がキャンセルされ、残留直流分を無くしている。
【0012】
図5は交流化信号の第1のタイプを詳細に説明する波形図であり、フレーム反転法と呼称される駆動方法である。図5において、FRは1周期を2フレームとする信号、SUBは半周期を1フィールドとする信号、AL1は第1のタイプの交流化信号、VR1,VR2,VR3はそれぞれ第1,2,3行目の行電極に与えられる駆動信号である。
【0013】
図5に示したように、1つのフィールド毎に1回行電極に与えられる選択信号20は交流化信号によって極性が制御され、図5においては交流化信号と同じ方向の極性とされている。更に井戸信号24は前記選択信号20とは逆極性となるように制御されている。
【0014】
また本発明においては行電極を1行選択する毎に印加電圧の極性を反転させる1行毎反転方式をとっているため、VR2の選択信号はVR1と逆極性、VR3の選択信号はVR1と同極性となっている。従って選択信号は(フィールドを無視して)フレーム毎に極性を変えて選択電圧値+VSもしくは−VSをとる信号となっている。なお選択信号20もしくは井戸信号24について、番号はVR1のみに付されているが、これは図が煩雑になるのを防ぐためで、各行電圧において、実線が選択信号20を、また破線が井戸信号24を示すと読み替えてよい。
【0015】
図6は交流化信号の第2のタイプを詳細に説明する波形図であり、ライン毎反転法とも呼称される駆動方法である。図6において、FRは1周期を2フレームとする信号、SUBは半周期を1フィールドとする信号、AL2は第2のタイプの交流化信号、VR1,VR2,VR3はそれぞれ第1、2,3行目の行電極に与えられる駆動信号である。更に井戸信号24は前記選択信号20とは逆極性となるように制御されている。
【0016】
図6に示したように、1つのフィールド毎に1回、行電極に与えられる選択信号20は交流化信号によって極性が制御され、図6においては交流化信号AL2と同じ方向の極性とされている。更に井戸信号24は前記選択信号20とは逆極性となるように制御されている。なお選択信号20もしくは井戸信号24について、番号はVR1のみに付されているが、これは図が煩雑になるのを防ぐためで、各行電圧において、実線が選択信号20を、また破線が井戸信号24を示すと読み替えてよい。
【0017】
第1の交流化信号AL1と第2の交流化信号AL2とが異なるのはフィールド毎に極性を反転させるか否かで、第1の交流化信号AL1は図4及び図5に示すように、フィールド毎には波形の極性を反転せず、行電極を1行選択する毎に極性を反転され、かつフレーム毎に波形の極性を反転させている。なお後述する井戸信号24は、フィールド毎に設けられ、前記行選択信号とは逆極性とされて前記行選択信号とバイアス電圧によって液晶に印加された注入された電荷を緩和する働きをしている。
【0018】
また、第2の交流化信号AL2は図4及び図6に示すように、行電極を1行選択する毎に極性を反転され、かつフィールド毎に波形の極性を反転させている。なお後述する井戸信号24はフィールド毎に設けられ、前記行選択信号とは逆極性とされて前記行選択信号とバイアス電圧によって液晶に注入された電荷を緩和する働きをしている。
【0019】
第1の交流化信号AL1と第2の交流化信号AL2とは波形の周波数がほぼ同じで、どちらの信号を用いても直流分のキャンセルは出来ているため、交流化信号として第1の交流化信号AL1のタイプを選んでも第2の交流化信号AL2選んでも差は少ない。
【0020】
さて、FSC駆動のため、フィールド周波数を従来の60Hzから180Hzと3倍に上昇した時にこの駆動条件で十分応答可能な液晶物質がうまく応答しきれないという問題が起きる。
【0021】
カラーフィルターを前提とする3画素で1絵素が形成されている場合、1枚の画面の切り替え時間は従来の60Hz前後のフィールド周波数を時間に換算すると1フレームに割り当てられる時間は約16.7msとなる。
【0022】
一方、FSC駆動を前提とすると前記駆動周波数は180Hzと3倍に増加するから赤(R)、緑(G)、青(B)発光に振り分けられるフィールドの時間の長さは60Hzの場合の1/3、即ち5.6ms程度となる。この時間内で情報の書き込みあるいは消去を行おうとすると従来材料であるネマチック系ではスタティック駆動でも特に立ち下がり特性が悪く完全には消去できないと言う問題があり、更に時分割駆動を前提にすると、立ち上がり特性が確保できず、書き込みが十分には行えないという技術的な問題が浮かび上がってきた。
【0023】
一方、材料の側面に目を転じると、FSC駆動を目的とした液晶材料開発の歴史は浅く、反強誘電性液晶物質(以後AFLCと略記する。)の材料開発の主眼はもっぱら60Hz駆動を前提としたものに限られてきた。が、この制限を念頭にいれながら以下にその特徴を列挙する事にする。
【0024】
AFLCの開発の歴史の中で良好な材料として従来から認められてきた特徴は、(1)低周波数における三角波の印加電圧が比較的低い領域においては、透過光強度がなるべく変化しない液晶材料であり(2)応答特性が駆動条件を満足する事(3)コントラスト比が高く保たれる事(4)マトリックス特性が確保される事等が上げられてきた。特に(1)に関しては重要視され、マトリックス特性,コントラスト特性を確保する上では必須の特性と言われてきた。
【0025】
概略、非特許文献1に開示されているが特に(1)の性質が重要であるとされてきたことについて図3を用いて説明する。同図中過程Aで示されるように、前記三角波の振幅電圧を0Vから増加させていく過程においては、電圧を増加させても、310で示される電圧までは透過率はほとんど上昇しない。ところがこの電圧をさらに増加させると、曲線320に沿って、急激に透過光強度は増加し、304で示された電圧で飽和し、以後電圧を増加させても変化はない。このときの透過光強度をTsatで以後表す事にする。前記Tsatの強度はY軸上に330で示される。
【0026】
次に三角波の電圧を減少していく過程Bであるが、306で示される電圧から透過光強度は急に減少し0Vの直前の電圧308で透過光強度は0に落ちてしまう。さらに電圧を減少させCの過程に入っても318でしめされる電圧までは透過光強度0の状態を保つがこの電圧を超えると透過光は再び急激に増加し始めこの傾向は314に相当する電圧まで継続する。このあと電圧を更に減少せしめても透過光強度はTsatの値を示す。
【0027】
この後電圧を増加せしめる過程Dに入るとこれまで一定であった透過光は電圧316から減少し始め0Vの直前の322で示された電圧で透過光強度は0に落ちてしまう。
【0028】
従来のフレーム周波数として60Hzを前提とした場合に良好な材料の例として、例えば特許文献3の図12に開示された組成物の特性は、本願の図3の過程Aもしくは過程Cにおいて、X軸から離れはじめる電圧310もしくは318で示される電圧が、飽和透過光強度を与える電圧304もしくは314の値になるべく近い値を示す液晶材料と等価であり、従来の液晶材料開発もこの特徴を与えるものが良好な材料として追求されてきた。
【0029】
前記基準は別途特許文献2の段落番号0023にも開示されており、310の電圧が飽和透過光強度Tsatを与える電圧304から低電圧側に離れるパネル特性、換言すると“鍋底率”の大きい材料を用いた液晶表示装置は、単純マトリックス駆動を前提としたときは光り漏れを誘起し、コントラストを確保する上では好ましくないものと理解、評価されてきた。
【0030】
【特許文献1】特開2002−328400号公報
【特許文献2】特開平09−157248号公報
【特許文献3】特開平10−053765号公報
【非特許文献1】強誘電性液晶ディスプレーと材料 シーエムシーテクニカルライブラリー (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本願発明者は当初60Hz駆動のために最良であるはずの材料、すなわち鍋底率が小さく、光漏れのごく少ない組成物を調整し、後述するFSC用試験波形でフィールド単位でのコントラスト比、フィールド単位における色分離能、FSC駆動時のマトリックス特性等の試験を試みたが、期待に反し全くその特性はほとんど発揮できなかった。さらにこの傾向は従来良好な特性を付与すると言われてきた液晶物質の量を増加させればさせるほど前記諸特性の劣化が顕著になってきた。
【0032】
そこで本発明は、FSCモードの時分割駆動を前提としたとき、前記FSC駆動条件下で以下の条件、すなわちフレーム間にわたる白と黒のコントラスト比が十分に保たれること、各RGBの各フィールドにわたり色分離が十分なこと、表示装置としてマトリックス特性が十分確保可能な液晶材料と該液晶材料を用いた良好な液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
すなわち 本発明は1本以上の行電極と、一本以上の列電極が形成された基板と、該基板間に狭持された反強誘電性液晶物質と、独立した3原色光が順次発光する照明装置とを有するフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において、該反強誘電性カラー液晶表示装置は、三角波を印加した時のヒステリシス曲線の立ち上がり側の飽和電圧304の80%における透過光強度332が最大透過光強度330に対し、3%以上の透過光強度を実現させる反強誘電性液晶物質を含有することを特徴とする。
【0034】
前記反強誘電性液晶物質は、下記一般式[1]もしくは[2]で表される化合物を少なくとも1種類以上混合したことを特徴とする。
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
(式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基でありRFはフルオロアルキル基もしくはメチル基であり、pは4〜6、Rqは炭素数1から4までのアルコキシ基、*は不斉中心を示す。(A)および(B)は水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換されてもよい1、4−フェニレン基またはビフェニル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)
【0037】
該一般式[1]で表される反強誘電性液晶が60重量%以上で構成される事を特徴とする。
【0038】
該一般式[2]で表される反強誘電性液晶が50重量%以下で構成される事を特徴とする。
【0039】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内に、選択パルスとその前後のバイアス電圧区間と、リセット区間と、それらに一部重複してもよい発光区間とが設けられる事を特徴とする。
【0040】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において1フレームは少なくとも前記3原色の発光区間である3つのフィールド区間より成り、各フィールドは前記行電極を行電極選択信号により順次選択する書き込み区間と、前記照明装置が発光する発光区間と、単一の矩形波パルスで構成されるリセット区間とからなり、前記反強誘電性液晶物質に、 前記行電極が選択された時は該行電極に|Vs|の選択電位の与えられた単一矩形波パルスが印加され、選択されない時は|Vb|のバイアス電位を与えられ、該バイアス電圧Vbは全ての行電極に対し、各フィールドの開始時点で同時に印加が開始され、さらに前記リセット区間には前記発光区間の直後に前記行電極とは逆極性でパルス幅が前記行電極に印加される単一矩形波パルスの2倍でかつその波高値が|Vb|から2*|Vb|の範囲内で構成された単一矩形波パルスで構成された井戸パルスが配置され、前記列電極には表示内容に従って単一矩形波パルスで構成され、|Vd|の電位を保ちながら該矩形波パルスのパルス幅を変化させ、諧調を付与する事を特徴とする。
【0041】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、ライン毎、またはフィールド毎、又はフレーム毎に極性反転を行う事を特徴とする。
【0042】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、選択電圧の走査電極行に関し、偶数フィールドは第1行目から最終行に向かって開始され、一方奇数フィールドでは最終行から1行目に向かって走査され、またはその逆を許容させることを特徴とする。
【0043】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内の発光区間は、少なくとも一部が選択区間と重複を許容されることを特徴とする。
【0044】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において温度検出装置が設置されている事を特徴とする。
【発明の効果】
【0045】
本願発明の液晶表示装置は、FSC駆動下においてきわめて良好な特性を示した。この特性改良に大きく寄与した要因は主として用いた液晶材料と駆動波形との組み合わせであり、しかも本願において用いた一群の液晶は、従来の60Hz駆動を前提とした評価基準では全くの不適とされてきた鍋底率の大きいものを積極的に用いた結果である。
【0046】
さらに駆動面に関して言及するならば、図7に示す井戸パルス24が、FSC駆動の際の画質向上に顕著な効果を示す事が示された。また、一斉にリセット区間内に選択パルスの2倍の時間幅の井戸パルスを配設する事で、黒を確実に書き込む事が可能となり、更なる画質向上に寄与する事が判明した。
【0047】
このことから、本願発明の液晶表示装置は、従来の材料判断基準とは異なった新しい基準に基づいたものであり、FSCモードを用いた液晶表示装置の開発と、新たな発展に大きく寄与する契機となることが予想できる。またカルボン酸エステルを主剤として用いる事により、より高性能な液晶表示装置が安価に提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施例に用いた反強誘電性液晶表示装置の断面図を示す。この反強誘電性液晶表示装置は、液晶材料としてエルシーエー社製のAF0706-3を用い、そのセル総厚hが約1.1μmになるように一対の基板431,432にて挟持させた。基板431,432の対向面には電極44が形成されその上に配向膜45が形成されている。基板431,432と電極44の間には絶縁膜48,49が配設され、前記基板431,432からのアルカリイオンの溶出を防止している。さらに一方の基板431の外側に偏光板の偏光軸と配向膜45の配向処理方向とが略平行になるように第1の偏光板411が配置されており、他方の基板432の外側には、第1の偏光板411の偏光軸と略90度異なるようにして第2の偏光板412が設置されている。
【0049】
偏光板411,412は、液晶層46における液晶が電圧無印加時の反強誘電状態にあるときに遮光し、液晶層46における液晶が強誘電状態にあるときに通過する光を透過させるために、偏光軸が直交するように調整されている。
46は液晶が注入される空間であり、表示機器のセル厚はhで代表されている。
【0050】
前記液晶のセル厚hについては2つの観点から決定される。まず第1にコントラスト比を向上させるためにはバルクで示す螺旋構造を完全に解除させるとともに、基板に平行に配向させるために1.2μm以下にする必要がある。これ以上のセル厚に設定すると黒のレベルが上昇してコントラスト比を悪くする原因となる。
【0051】
つぎに、設定したセル厚での光学的行路長(リターデーション)として180nmから220nmを確保しなければならない。この値の前後で白の状態が最も明るくなり、かつ量産で問題になるセルの厚みの変化に対して最も鈍い変化、安定な状態を確保できるからである。
【0052】
液晶パネルの下部には3原色である赤(R)、緑(G),青(B)の光を発光するLEDバックライト光源161、162,163が配設され、導光板18にて液晶セル全体を照明する機構が施されている。これらの3原色光源は1フレーム毎に順次等周期で点灯するとともに、該点灯タイミングに合わせて液晶表示装置には当該光源色の表示情報が表示されてカラー表示がなされる。この液晶表示駆動モードがいわゆるFSC方式と呼称されている。
【0053】
図2は本実施例に用いた反強誘電性液晶パネルの平面図及び簡略化した断面図であり行電極数が32本、列電極数が64本の時を想定してある。図2(a)に示した下側の基板432には透明な行電極R1,R2,R3,・・・,R32が設けられ、図2(b)に示した上側の基板431には透明な列電極C1,C2,C3,・・・,C64が設けられ、該上下の基板431,432間に反強誘電性液晶物質が狭持されている。このようなパネルにおいては、行電極を行選択信号によって順次選択し、1つの行電極が選択されているときに同期して、当該行の表示データを全列電極に与える、いわゆる線順次駆動が行われる。以上のセル構成については第1の実施形態と呼称する事にする。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の液晶表示パネルの作製方法を説明する。まず、基板431,432の表示部に対応する領域に、フォトリソ法等でITO等による透明電極44を形成する。次いで、印刷成膜によって絶縁膜48,49を成膜する。そして、スピンコートや転写印刷で材料を塗布した後加熱する等の方法によって有機配向膜45を成膜する。以上のようにして、基板431,432および配向膜45を有するそれぞれの基板を得ることができる。そして、基板431,432および配向膜45を有する基板を同方向または逆方向にラビングする。
【0055】
片側の基板には基板431および432を固定するためのシール22が印刷法にて形成され、ついで基板431と他方の基板432とを重ね合わせる。
【0056】
以上のようにして、図1に示すような液晶表示パネルが形成される。ただし、この段階では、液晶層46に相当する部分は空隙の状態である。次いで、液晶表示パネルを気密装置にセットし、液晶の等方相転移温度まで加温し、その温度に保持した状態で気密装置を真空に引いた後、液晶表示素子における液晶注入部が設けられている側を液晶材料に浸し、気密装置の気圧を上げて液晶材料を液晶注入部から液晶層46の形成部に注入させる。その後、液晶注入部に接着剤を塗布し、加熱等によって接着剤を硬化させ液晶注入部を塞ぐ。
【0057】
セルに注入された後の液晶に対して、通常、周波数40〜100Hz、振幅20〜30V程度の矩形波が透明電極44の間に約10秒〜20秒印加され、注入直後に形成された各種層構の欠陥を修復する通電処理を行う。以上の処理を第2の実施形態と呼称する。
【0058】
(第3の実施形態)
図7は本願の液晶表示装置の評価に用いた駆動波形のタイミングが示されている。図7においてFRの1周期は2フレームで構成され、SUBの1周期は2フィールドで構成され、それぞれR,G,B…のフィールドに対応している。AL2は行毎反転とかつフィールド毎の反転をあらわすための交流化信号である。
【0059】
さらに、1フィールド区間内の特定の行電極に対して、1パルスの選択電圧、選択電圧と同極性の保持電圧、および選択電圧とは逆極性で、選択電圧の2倍の時間幅を有する強制リセット電圧と、極性の異なり同じ絶対値を有する後続矩形波を少なくとも2個連続して印加するとともに、前記強制リセット電圧印加後に行電極へ基準電圧を印加するように制御するように構成する。図7中、Vs,Vb,Vwellはそれぞれ選択電圧パルス、バイアス電圧,および井戸パルスの電圧を表している。
【0060】
また図7において、VR1は第1行目の行電極に与えられる駆動信号、VC1白、VC1黒、VC1赤はそれぞれ第1列目の列電極に与えられる駆動信号で、VC1白は第1列目の表示を白にする、すなわちフィールドのR、G、B、すべてで液晶をONにして表示を白色にするための信号、VC1黒は第1列目の表示を黒にする、すなわちフィールドのR、G、B、すべてで液晶をOFFにして表示を黒色にするための信号、VC1赤はRフィールドで液晶をON、G、Bフィールドで液晶をOFFにしてRのみ透過させて表示を赤色にするための信号である。
【0061】
具体例として、行電極にVR1が、列電極にVC1赤のデータ信号を同時印加したときの液晶に印加される電圧について考える。第1行第1列目の液晶ドットに印加される実際の電圧は、行電極に与えられる駆動信号と列電極に与えられる駆動信号の差すなわち(VR1−VC1赤)となる事を図7の最下段のVR1−VC1赤の欄に示した。さらに信号電圧の最大値Vdも、各温度領域毎に定めた選択電圧Vsに所定の比率を乗じた値として定める。この実施の形態では、Vbの目安として選択電圧パルスVsの1/4とし、データ電圧Vdは選択電圧パルスVsの1/5倍を目安とした。更にリセット区間に印加する井戸パルスVwellの波高値は、バイアス電圧Vbの1倍から2倍を目安とした。これら駆動波形の設定について第3の実施形態と呼称する事にするが交流化信号としてAL1を用いてもなんら問題の生じない事は確認している。なお以下に示す本願実施例の時間-透過光強度の測定においてはすべて第3の実施形態の手続きを踏んでいる。
【0062】
さらに本願で用いられる反強誘電性液晶は、下記一般式〔1〕、〔2〕で表される。
【0063】
【化5】
【0064】
【化6】
(式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基でありRFはフルオロアルキル基もしくはメチル基であり、pは4〜6、Rqは炭素数1から4までのアルコキシ基、*は不斉中心を示す。(A)および(B)は水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換されてもよい1、4−フェニレン基またはビフェニル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)
一般式〔1〕で表される化合物の例を以下に示す。
【0065】
【化7】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0066】
【化8】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0067】
【化9】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0068】
【化10】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0069】
【化11】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0070】
【化12】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0071】
【化13】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0072】
【化14】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0073】
【化15】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0074】
【化16】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0075】
【化17】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0076】
【化18】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0077】
(第4の実施形態)
通常、化6から化7で表される液晶物質を反強誘電性液晶表示装置に注入した後、0.1Hz前後の周波数の三角波を印加すると図3で示したような印加電圧−透過光強度を示すヒステリシス曲線が得られる。図中X軸は前記三角波の最大振幅を表している。
【0078】
また第3図における縦軸は透過光強度を、横軸は印加電圧を示している。本願では印加電圧304で示された電圧以上で、これ以上変化しない透過光強度を特に飽和透過光強度Tsatと定義している。
【0079】
次に前記印加電圧304の80%に相当する電圧点328を求め、前記電圧点に対応する透過光強度332を求めるとともに、前記飽和透過光強度Tsatに対する浮き上がり度合い―割合―を計算した。前記透過光強度332をT(332)で表す事とすると過程Aにおける透過光強度比Gは以下の数式で定義される事になる。
【0080】
【数1】
この三角波を用いての透過光強度と飽和透過光強度の比をもとめる手続きを第4の実施形態と呼称する。
【実施例1】
【0081】
以下、本発明の実施例を説明する。第1から第2までの実施形態に則って作成したセルに対し、背面側に設置される基板431,432に対して、ラビング方向と偏光軸が平行になるように偏光板411を貼り合わせ、観察側に設置される基板に対して、偏光板412の偏光軸を前記偏光板411との偏光軸が直交するように貼り合わせた。これは通常ノーマリーブラックと呼称される偏光板の組み合せに相当する。更に表1に示した下記化合物を調合してなる反強誘電性液晶組成物を真空高温下で注入し、最後に液晶注入部を封止した。以後、本願で開示する実施例は特に断らなくても全て前記第1から第4の実施形態を用いた時の結果であることが前提となる。
【0082】
【表1】
【0083】
第3の実施形態で示した駆動方法によって液晶表示パネルを駆動した。なおこの時のデータ波形は図7の(VR1−VC1赤)に相当する波形であり、赤のみを表示させる時に用いるものである。以後選択波形、バイアス波形及びデータ波形の組み合せをプローブ波形S(1,0,0)で表す事とする。この時の駆動条件を再掲すると駆動周波数180Hz、選択波形のパルス幅80μs、選択電圧Vs:13V、バイアス電圧:4V、データ電圧:3V、井戸パルスの電圧Vwell:4V、プローブ波形:P(1,0,0)である。また第4の実施形態に基づいて得た透過光強度比の値の値は0.04であった。この時の測定結果を図8に示す。
【0084】
図8からわかる事として、プローブ信号がS(1,0,0)である事を示すデータ系列102に対しそれぞれ赤(R),緑(G),青(B)フィールドに対応する時間−透過光強度の関係は時間的に明確に分離されている事を示している。ちなみに前記、時間-透過光強度において、Rフィールドの透過光の時間に対する積分強度を1とした場合、緑(G),青(B)の各フィールドの透過光強度(=漏れ光)の割合は7%以下であり、マトリックス特性、つまりオンデータとオフデータによって表示を書き分けられる能力、換言すればマトリックス特性を十分満たしている事がわかる。なお以降のマトリックス特性の判定基準としては合格のレベルをRとGにおける透過光の強度積分強度比で判定し、その比が15%以下を○と定め15〜20%の範囲を△、これ以上は不合格の×と記す事とする。
(第1比較例)
【0085】
実施例1における図8は駆動波形に関し 図7における井戸パルス24を配設したときの結果であるが図9に、前記図7のVR1の印加波形から該井戸パルス24を取り去り、前記リセット区間の印加電圧を0Vに設定するときのタイミング図を示す。このタイミング図は60Hz駆動の場合の基本となる波形としてしられている。
前記井戸パルス24の効果を検討するために 前記図9で示した井戸パルス24無しでの駆動波形と実施例1で用いたパネルを用い、駆動周波数180Hzにて駆動したときの時間−透過光強度の変化を図10に示す。
【0086】
該図10中の赤(R)の強度を1としたとき、緑(G)のピークとの比は20%を超えており、図8でしめされた値である7%と比較すると約3倍弱の値の増加を示していることがわかる。この比が大きいことは、すなわち、G光およびB光の漏れが生じ、色純度の低下(=混色)や黒レベルの上昇(=コントラスト低下)等の表示装置の劣化を示すものであり、井戸パルス24と色純度やコントラスト比との相関の大きいことがわかる。このことから、以後の駆動波形については、図7で示された井戸パルス24の配設を前提とした。
(第2比較例)
【0087】
さらに、従来駆動で前提とされていたフレーム周波数60Hz下において、良好とされてきた液晶材料を用いて液晶表示素子を構成し、前記図7に示した駆動波形にてFSC駆動を行ったときの時間−透過光強度の変化を第2比較例として図11に示す。この組成は表2で示されており、特許文献3の図12、実施例2で開示されている組成である。該組成は60Hz駆動において鍋底効果の観点から良好と評価された材料組成であり、該組成物の特徴としては3番目の物質以外、左側側鎖がアルキル基ではなく、全体としてアルコキシ基が80wt%を占める組成で調整されている点である。この液晶組成物の場合に得られる第4の実施形態での時間−透過光強度を図11に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
図8において印加したと同じプローブ信号102のデータS(1,0,0)に対し、緑(G),及び青(B)のフィールドの透過光強度112、及び114はRの示す透過光強度110と、ほぼ等しい値を示した。一方第4の実施形態に基づいた透過光強度の比は0.002であった。従来の三角波を用いた評価基準では特許文献3で開示されたごとく鍋底率は小さく、非常に良好な材料のはずであるが、この材料はFSC駆動を前提としたとき、マトリックス特性、つまりフィールド間におけるオンデータとオフデータによって表示を書き分ける能力が特に悪く、混色、白化現象が発生し、所望の色がほとんど実現できない。
(第3比較例)
【0090】
更に特許文献3の図12、実施例4で開示された組成)について検討を試みた。分子式と組成を表3に示す。この液晶組成物の場合に得られる第4の実施形態での時間−透過光強度を図12に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
図8において印加したと同じプローブ信号102のデータS(1,0,0)に対し、G,及びBのフィールドの透過光強度112、及び114はRの示す透過光強度110との比は0.61、0.23であり、良好なマトリックス特性は示してはいない。一方第4の実施形態に基づいた透過光強度の比は0.011であった。従来の三角波を用いた評価基準では鍋底率は小さく、非常に良好な材料のはずであるが、この材料はFSC駆動を前提としたとき、マトリックス特性、つまりフィールド間におけるオンデータとオフデータによって表示を十分に書き分ける能力が悪く、混色、白化現象が発生し、所望の色があまり実現できないことがわかる。
【0093】
本願発明者はFSC駆動を前提としたときの、好ましいコンポーネントの組み合せとして先ず左側側鎖の候補としてアルキル基とアルコキシ基に着目して鋭意検討を重ねた結果、基本的にカルボン酸エステル構造を前提とし、分子の左側側鎖について、アルコキシ基を有するものは原則使用しないか、使用しても極力低比率の方が好ましいとの作業仮説に基づき更なる検証を進めた。
(第2実施例)
【0094】
左側2環のベンゼン環の一部がハロゲン原子に置換されているコンポーネントとされていない、骨格の異なるものとを混合した時の光学特性について検討した。その代表的な透過光強度の時間変化を図13にまたこの時の組成を表4に示す。
【0095】
【表4】
左側側鎖がアルキル基であれば混合の状態もよく、また白レベルも図8と比較しても、勝るとも劣らない。なお第4の実施形態に基づく透過光強度比の値の値は0.0652であった。この値を鍋底率に換算すると、従来の評価基準からは、決して好ましい材料と位置付けられるものではない。
(第3実施例)
【0096】
左側2環のベンゼン環と単環のベンゼン環の一部がハロゲン原子に置換されているコンポーネントとを混合した時の光学特性について検討した。その代表例を図14にまたこの時の組成を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
白レベルは図13に比較して低くなり、黒レベルは若干上昇しているが、マトリックス特性は良好と判断される。このときの駆動周波数180Hz、選択波形のパルス幅80μs、選択電圧Vs:20V、バイアス電圧:8V、データ電圧:6.5V、井戸パルスの電圧Vwell:8V、プローブ波形:S(1,0,0)であった。一方第4の実施形態に基づく透過光強度比の値は0.085であった。やはり従来の判断基準からは好ましい材料とは思えない組成物が示した、従来の判定基準からすると思いがけない駆動特性と言ってよい。
(第4比較例)
【0099】
さて比較例として第4の実施形態の透過光強度比の値が0.03付近の組成物を調整した。この時の組成を表6に示す。他の実施例の場合と同様、第3の実施形態の駆動波を用いて駆動した場合の光学特性について検討を行った。
【表6】
上記組成の材料を用いたパネル特性を図15に示す。図15は、実現される白のレベルが低いこと、Rに続くGのフィールド間における漏れ光の割合が30%超と色純度確保の観点から好ましくない事、Rのフィールド内で透過率の時間変化が見られる事、黒のレベルが下がらない事などからトータルとして好ましくないと判断せざるを得ない。一方、第4の実施形態に基づく透過光強度比の値は0.0291であり、従来基準からは良好な材料と判断されるべき液晶組成物である。しかしFSC駆動を前提とした時にはほとんど使用に耐えないと断ぜざるを得ない特性であった。
(第4実施例)
【0100】
更に式〔2〕で示される化合物として表7に示される組成物を作成し、他の実施例の場合と同様、実施形態3の駆動波を用いて駆動した場合の光学特性について検討を行った。
【0101】
【表7】
【0102】
分子構造の特徴として、左右の側鎖はアルコキシ基であるが右側側鎖アルコキシ基の間に−(CH2)n−で表されるスペーサーを入れた事である。本願のこれまでの実験結果の予想からは、左側側鎖の構造がアルコキシ基であることから、FSC駆動のための材料としては不適の可能性を有していたが、実際は前記スペーサーをキラル中心とアルコキシ基の間に導入する事により、FSC駆動用の材料として使用可能となった例である。
【0103】
上記組成の材料を用いた時間−透過光強度特性を図16に示す。図8もしくは図13と比較しても遜色のない駆動特性が得られた。また第4の実施形態に基づく透過光強度比の値は0.09であり、やはり従来の材料評価基準からは、漏れ光が顕著で不適格と判定されてもおかしくないヒステリシス特性であった。また実施例4での結果は、液晶分子の左右の側鎖構造として、アルコキシ基でも使用可能である場合もある事を如実に示した例であり、今後更なるFSC駆動用の材料開発の可能性を切り開く端緒となる事を暗示している。
(第5実施例)
【0104】
更に本願発明者は実施例3の駆動電圧を低下させるため実施例3の組成物に対してさらに左右両側の側鎖にエーテル結合を導入した化合物の添加効果について、上限を8%までとした検討を加えた。この時の液晶組成を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
このときmの範囲として8、9、10であれば最大8wt%までは、マトリックス性を損なう事なく、閾値は低下する。ちなみに実施例3において選択電圧Vs。バイアス電圧Vbデータ電圧Vd、がそれぞれ(20V、8V、6.5V)であったものが、第3物質を添加する事により(10.5V、3.5V、2.0V)にまで低下した。
【0107】
しかし、これ以上第3物質を添加すると、駆動電圧は同様に低下するが、ヒステリシス幅が極端に狭くなり、結果として駆動マージンが狭くなる。駆動マージンは実際の分割数にほぼ逆比例する事から、50分割レベル超を指向するとき、8wt%が上限の目安となるが、分割数をこれより小さくとれば、第3添加物質が添加可能な上限値を増加させる事が出来ることは言うまでもない。
【0108】
実施形態3の駆動波を用いて駆動した場合の時間-透過光強度特性を図17に示した。赤の透過光強度110と緑の透過光強度112および青の透過光強度114を比較すると色分離は良好になされている事が示されている。また実施形態4を用いた透過光強度比の値は0.07であり、従来基準からはやはり良好ではない材料と判断されてしかるべき液晶組成物であるが、本願で開示された駆動タイミング波形を用いたFSC駆動では他の実施例同様良好な特性を示す事がわかる。
(第6実施例)
【0109】
さらに本願発明者は、諧調を付与するための工夫を行った。この工夫について図7におけるVC1赤とVR1−VC1赤の部分のみを図18に示す。この時のデータ信号はS(1/2、0、0)と表される。これを図7との比較で考えると、図18においては、赤を与える信号のパルス幅は図7における選択パルスのそれに比較して1/2と狭く設定されている。
【0110】
すると図7との比較においては、単一パルスの単一電圧(Vs+Vd)で表現されていた赤を書くパルスは、選択時間の半分の時間に相当する地点1402で選択電圧レベルであるVsまで落ち、残りの選択時間をこの電圧レベルで経過し、その後非選択区間へと移行する事になる。
【0111】
図18で設定した、データ電圧を液晶表示装置に印加した場合の透過光強度の時間変化を図19の1502として示した。比較のために選択時間一杯にデータ電圧を印加した場合に得られる透過光強度の時間変化を図19の1504とし点線で示した。データ電圧の印加時間を変化させる事により、透過光強度が変化し、諧調が付与される事がわかる。
【0112】
表9に本願で明らかになった第4の実施形態に基づいた透過光強度比と表示装置の示す諸特性の総合評価を表9に示した。表9は、FSC駆動用材料の評価基準として、前記第4の実施形態に基づいた透過光強度比が非常に大切で、良好なFSC駆動特性を確保するためには前記透過光強度比が0.03以上を示す材料を調整しなければならない事が判明する。
【0113】
【表9】
【0114】
第1実施例から第5実施例まで、本液晶表示装置は、液晶物質が温度依存性を有するため、結果として、駆動も温度依存性を有することになる。このため最適な表示を行うためには、正確な温度に対し、最適な駆動条件を与える必要がある。
本願発明者はこのために、あらかじめ、各温度に対する駆動条件を求めておき、本表示装置内に、例えばサーミスタ等の温度検出器を配置した。該温度検出器は、前記液晶表示装置の温度を検出し、もって最適駆動条件を設定するための用に供したが、温度検出器として、サーミスタのみに限定されない事は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例におけるセル構造の概念図である。
【図2】本実施例に用いた反強誘電性液晶パネルの平面図及び簡略化した断面図である。
【図3】三角波を用いた時の印加電圧-透過光強度の関係を示すヒステリシス図である
【図4】本発明の駆動法で用いるフレーム、フィールドの定義およびタイミングを示した概念図である。
【図5】本発明の駆動法で用いる交流化信号の第1のタイプを説明する波形図である。
【図6】本発明の駆動法で用いる交流化信号の第2のタイプを説明する波形図である。
【図7】本発明が用いた第4の実施形態での駆動法をしめすタイミング図である。
【図8】本発明の第1実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.04であるとき、第1実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図9】第1比較例として用いた、第4の実施形態から井戸パルスを除いた駆動法をしめすタイミング図である。
【図10】図9で示された波形で駆動した場合、液晶表示装置が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図11】本発明の第2比較例において、第4の実施形態での透過光強度比が0.002である時、比較例2が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図12】本発明の第3比較例において第4の実施形態での透過光強度比が0.011であるとき、第3比較例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図13】本発明の第2実施例において、第4の実施形態での透過光強度比が0.0652であるとき、第2実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図14】本発明の第3実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.0851であるとき、第3実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図15】本発明の第4比較例において第4の実施形態での透過光強度比が0.0291であるとき、第4比較例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図16】本発明の第4実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.09であるとき、第4実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図17】本発明の第5実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.08であるとき、第5実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図18】本発明の第6実施例において 諧調を付与する時のデータ波形と液晶に印加される電圧を表す図である。
【図19】本発明の第6実施例において図18で示された駆動波形印加で得られる透過光強度の時間変化を表した図である。
【符号の説明】
【0116】
1: 液晶表示装置
20: 選択信号を表す
24: 井戸信号を表す
110: 透過光強度-時間を表す図の中のR(赤)成分の強度を表す
112: 透過光強度-時間を表す図の中のG(緑)成分の強度を表す
114: 透過光強度-時間を表す図の中のB(青)成分の強度を表す
411、412: 偏光板を表している
431、432: 基板を表している
41、42: 絶縁膜を表している
44: 透明電極を表している
45: 配向膜を表している
46: 反強誘電性液晶層を表している
314、304: 透過光強度が飽和する時の三角波印加電圧を表している
310、318: X軸から透過光強度が増加し始まる時の三角波印加電圧を表している
328: 飽和電圧304の80%における三角波印加電圧を表している
330: 最大透過光強度を表している
332: 飽和電圧304の80%にあたる電圧での透過強度を表している
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の制御方法に関し、より詳細には3原色のバックライトを時分割発光させカラー表示を行うカラー光源型の単純マトリクスフィールド色順次駆動の反強誘電性液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能液晶ディスプレーの主流は現在、材料としてはネマティック液晶を、表示品位を向上させるためには、基板にTFTなどの非線形スイッチング素子を配設したアクティブ表示装置となっている。一方ADL,Chandani等によって発見された反強誘電性液晶を用いたパネルは、単純マトリックス駆動でありながら上記アクティブ表示素子と比較しても遜色のない画像品位が得られることから、多くの研究と開発の努力が重ねられており、現在まで多くの研究成果が発表されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
従来、液晶パネルのカラー化については、バックライトは白色光を用いながら、絵素を構成する画素には、それぞれ赤、緑、青(以後R,G,Bと略記する)のフィルターをセル内の電極に合わせながら形成し、RGBそれぞれの3つの画素を1絵素とする方式が一般的であった。
【0004】
ただ前記フィルター方式のカラー化の技術は、カラーフィルターおよび偏光板による光の吸収のため、ややもすると表示が暗く、解像度が低く、高品質のカラー画像を表示させることは困難な状況であった。
【0005】
これらの欠点を解決し、表示を明るく保ちながら、解像度を上げる技術として、近年バックライトとして白色光の替わりに赤(R)、緑(G)、青(B)の光を発光するLEDを順次発光させ、1つの画素で1つの絵素を形成するフィールド色順次発光モード(Field Sequential Colorモード 以後FSCモードと略記する)が注目されている。
【0006】
このFSCモードを用いたカラー液晶表示装置は、白黒階調表示の液晶表示素子と、その裏面に配置された赤(R),緑(G),青(B)の3色の光源群とから構成され、液晶表示素子の画像表示に同期させながら光源を順次点灯させて、その光を液晶表示素子に照射することにより、カラー画像を得るものである。
【0007】
前記FSCモードによれば、液晶表示素子の各画素が1対1でカラー絵素に対応する。 従って、従来3画素で1個のカラー絵素を構成するカラーフィルター方式の液晶表示素子に比べ、見かけ上の画素数及び開口率を3倍にすることかできること、またカラーフィルターを省ける分、明るく、小型で、高解像度のカラー画像を表示できることが可能になる。
【0008】
液晶表示装置を駆動する方式としては、2種類、即ちフレーム反転方式と行毎反転方式がある。この方式の特徴について図面を用いて説明する。
図4は駆動におけるフレーム、フィールド、および交流化信号の概念を示した図である。図4において、1フレームはF,G,Bフィールドからなり1枚の完結した画面を送る時間で、ちらつきを防ぐため1秒間のフレーム数は通常60以上とされている。従って2フレーム単位での時間は約16.7msec以下に設定する。
【0009】
1フレームは3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の3つのフィールドから成っている。AL1,AL2は異なったタイプの交流化信号で、該交流化信号によって行電極に与えられる選択パルスの極性が決定される。
【0010】
図4に示した2種類の交流化信号、即ち、第1の交流化信号AL1,第2の交流化信号AL2共に、フィールド内で頻繁に極性を変えている。この極性を変える周期が、図2に示した複数の行電極のうちの1本が選択されている時間に相当する。すなわち本発明においては行電極を1行選択する毎に印加電圧の極性を反転させている。
交流化信号AL1,AL2は共にフィールド毎にも極性を変えている。
【0011】
交流化信号AL1,AL2の波形は、図6に示すように、第1フレームと第2フレームとで極性を反転されている。このように構成することにより多数のフレームの画像を書き込む中で印加電圧の極性が反転して電荷がキャンセルされ、残留直流分を無くしている。
【0012】
図5は交流化信号の第1のタイプを詳細に説明する波形図であり、フレーム反転法と呼称される駆動方法である。図5において、FRは1周期を2フレームとする信号、SUBは半周期を1フィールドとする信号、AL1は第1のタイプの交流化信号、VR1,VR2,VR3はそれぞれ第1,2,3行目の行電極に与えられる駆動信号である。
【0013】
図5に示したように、1つのフィールド毎に1回行電極に与えられる選択信号20は交流化信号によって極性が制御され、図5においては交流化信号と同じ方向の極性とされている。更に井戸信号24は前記選択信号20とは逆極性となるように制御されている。
【0014】
また本発明においては行電極を1行選択する毎に印加電圧の極性を反転させる1行毎反転方式をとっているため、VR2の選択信号はVR1と逆極性、VR3の選択信号はVR1と同極性となっている。従って選択信号は(フィールドを無視して)フレーム毎に極性を変えて選択電圧値+VSもしくは−VSをとる信号となっている。なお選択信号20もしくは井戸信号24について、番号はVR1のみに付されているが、これは図が煩雑になるのを防ぐためで、各行電圧において、実線が選択信号20を、また破線が井戸信号24を示すと読み替えてよい。
【0015】
図6は交流化信号の第2のタイプを詳細に説明する波形図であり、ライン毎反転法とも呼称される駆動方法である。図6において、FRは1周期を2フレームとする信号、SUBは半周期を1フィールドとする信号、AL2は第2のタイプの交流化信号、VR1,VR2,VR3はそれぞれ第1、2,3行目の行電極に与えられる駆動信号である。更に井戸信号24は前記選択信号20とは逆極性となるように制御されている。
【0016】
図6に示したように、1つのフィールド毎に1回、行電極に与えられる選択信号20は交流化信号によって極性が制御され、図6においては交流化信号AL2と同じ方向の極性とされている。更に井戸信号24は前記選択信号20とは逆極性となるように制御されている。なお選択信号20もしくは井戸信号24について、番号はVR1のみに付されているが、これは図が煩雑になるのを防ぐためで、各行電圧において、実線が選択信号20を、また破線が井戸信号24を示すと読み替えてよい。
【0017】
第1の交流化信号AL1と第2の交流化信号AL2とが異なるのはフィールド毎に極性を反転させるか否かで、第1の交流化信号AL1は図4及び図5に示すように、フィールド毎には波形の極性を反転せず、行電極を1行選択する毎に極性を反転され、かつフレーム毎に波形の極性を反転させている。なお後述する井戸信号24は、フィールド毎に設けられ、前記行選択信号とは逆極性とされて前記行選択信号とバイアス電圧によって液晶に印加された注入された電荷を緩和する働きをしている。
【0018】
また、第2の交流化信号AL2は図4及び図6に示すように、行電極を1行選択する毎に極性を反転され、かつフィールド毎に波形の極性を反転させている。なお後述する井戸信号24はフィールド毎に設けられ、前記行選択信号とは逆極性とされて前記行選択信号とバイアス電圧によって液晶に注入された電荷を緩和する働きをしている。
【0019】
第1の交流化信号AL1と第2の交流化信号AL2とは波形の周波数がほぼ同じで、どちらの信号を用いても直流分のキャンセルは出来ているため、交流化信号として第1の交流化信号AL1のタイプを選んでも第2の交流化信号AL2選んでも差は少ない。
【0020】
さて、FSC駆動のため、フィールド周波数を従来の60Hzから180Hzと3倍に上昇した時にこの駆動条件で十分応答可能な液晶物質がうまく応答しきれないという問題が起きる。
【0021】
カラーフィルターを前提とする3画素で1絵素が形成されている場合、1枚の画面の切り替え時間は従来の60Hz前後のフィールド周波数を時間に換算すると1フレームに割り当てられる時間は約16.7msとなる。
【0022】
一方、FSC駆動を前提とすると前記駆動周波数は180Hzと3倍に増加するから赤(R)、緑(G)、青(B)発光に振り分けられるフィールドの時間の長さは60Hzの場合の1/3、即ち5.6ms程度となる。この時間内で情報の書き込みあるいは消去を行おうとすると従来材料であるネマチック系ではスタティック駆動でも特に立ち下がり特性が悪く完全には消去できないと言う問題があり、更に時分割駆動を前提にすると、立ち上がり特性が確保できず、書き込みが十分には行えないという技術的な問題が浮かび上がってきた。
【0023】
一方、材料の側面に目を転じると、FSC駆動を目的とした液晶材料開発の歴史は浅く、反強誘電性液晶物質(以後AFLCと略記する。)の材料開発の主眼はもっぱら60Hz駆動を前提としたものに限られてきた。が、この制限を念頭にいれながら以下にその特徴を列挙する事にする。
【0024】
AFLCの開発の歴史の中で良好な材料として従来から認められてきた特徴は、(1)低周波数における三角波の印加電圧が比較的低い領域においては、透過光強度がなるべく変化しない液晶材料であり(2)応答特性が駆動条件を満足する事(3)コントラスト比が高く保たれる事(4)マトリックス特性が確保される事等が上げられてきた。特に(1)に関しては重要視され、マトリックス特性,コントラスト特性を確保する上では必須の特性と言われてきた。
【0025】
概略、非特許文献1に開示されているが特に(1)の性質が重要であるとされてきたことについて図3を用いて説明する。同図中過程Aで示されるように、前記三角波の振幅電圧を0Vから増加させていく過程においては、電圧を増加させても、310で示される電圧までは透過率はほとんど上昇しない。ところがこの電圧をさらに増加させると、曲線320に沿って、急激に透過光強度は増加し、304で示された電圧で飽和し、以後電圧を増加させても変化はない。このときの透過光強度をTsatで以後表す事にする。前記Tsatの強度はY軸上に330で示される。
【0026】
次に三角波の電圧を減少していく過程Bであるが、306で示される電圧から透過光強度は急に減少し0Vの直前の電圧308で透過光強度は0に落ちてしまう。さらに電圧を減少させCの過程に入っても318でしめされる電圧までは透過光強度0の状態を保つがこの電圧を超えると透過光は再び急激に増加し始めこの傾向は314に相当する電圧まで継続する。このあと電圧を更に減少せしめても透過光強度はTsatの値を示す。
【0027】
この後電圧を増加せしめる過程Dに入るとこれまで一定であった透過光は電圧316から減少し始め0Vの直前の322で示された電圧で透過光強度は0に落ちてしまう。
【0028】
従来のフレーム周波数として60Hzを前提とした場合に良好な材料の例として、例えば特許文献3の図12に開示された組成物の特性は、本願の図3の過程Aもしくは過程Cにおいて、X軸から離れはじめる電圧310もしくは318で示される電圧が、飽和透過光強度を与える電圧304もしくは314の値になるべく近い値を示す液晶材料と等価であり、従来の液晶材料開発もこの特徴を与えるものが良好な材料として追求されてきた。
【0029】
前記基準は別途特許文献2の段落番号0023にも開示されており、310の電圧が飽和透過光強度Tsatを与える電圧304から低電圧側に離れるパネル特性、換言すると“鍋底率”の大きい材料を用いた液晶表示装置は、単純マトリックス駆動を前提としたときは光り漏れを誘起し、コントラストを確保する上では好ましくないものと理解、評価されてきた。
【0030】
【特許文献1】特開2002−328400号公報
【特許文献2】特開平09−157248号公報
【特許文献3】特開平10−053765号公報
【非特許文献1】強誘電性液晶ディスプレーと材料 シーエムシーテクニカルライブラリー (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本願発明者は当初60Hz駆動のために最良であるはずの材料、すなわち鍋底率が小さく、光漏れのごく少ない組成物を調整し、後述するFSC用試験波形でフィールド単位でのコントラスト比、フィールド単位における色分離能、FSC駆動時のマトリックス特性等の試験を試みたが、期待に反し全くその特性はほとんど発揮できなかった。さらにこの傾向は従来良好な特性を付与すると言われてきた液晶物質の量を増加させればさせるほど前記諸特性の劣化が顕著になってきた。
【0032】
そこで本発明は、FSCモードの時分割駆動を前提としたとき、前記FSC駆動条件下で以下の条件、すなわちフレーム間にわたる白と黒のコントラスト比が十分に保たれること、各RGBの各フィールドにわたり色分離が十分なこと、表示装置としてマトリックス特性が十分確保可能な液晶材料と該液晶材料を用いた良好な液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
すなわち 本発明は1本以上の行電極と、一本以上の列電極が形成された基板と、該基板間に狭持された反強誘電性液晶物質と、独立した3原色光が順次発光する照明装置とを有するフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において、該反強誘電性カラー液晶表示装置は、三角波を印加した時のヒステリシス曲線の立ち上がり側の飽和電圧304の80%における透過光強度332が最大透過光強度330に対し、3%以上の透過光強度を実現させる反強誘電性液晶物質を含有することを特徴とする。
【0034】
前記反強誘電性液晶物質は、下記一般式[1]もしくは[2]で表される化合物を少なくとも1種類以上混合したことを特徴とする。
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
(式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基でありRFはフルオロアルキル基もしくはメチル基であり、pは4〜6、Rqは炭素数1から4までのアルコキシ基、*は不斉中心を示す。(A)および(B)は水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換されてもよい1、4−フェニレン基またはビフェニル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)
【0037】
該一般式[1]で表される反強誘電性液晶が60重量%以上で構成される事を特徴とする。
【0038】
該一般式[2]で表される反強誘電性液晶が50重量%以下で構成される事を特徴とする。
【0039】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内に、選択パルスとその前後のバイアス電圧区間と、リセット区間と、それらに一部重複してもよい発光区間とが設けられる事を特徴とする。
【0040】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において1フレームは少なくとも前記3原色の発光区間である3つのフィールド区間より成り、各フィールドは前記行電極を行電極選択信号により順次選択する書き込み区間と、前記照明装置が発光する発光区間と、単一の矩形波パルスで構成されるリセット区間とからなり、前記反強誘電性液晶物質に、 前記行電極が選択された時は該行電極に|Vs|の選択電位の与えられた単一矩形波パルスが印加され、選択されない時は|Vb|のバイアス電位を与えられ、該バイアス電圧Vbは全ての行電極に対し、各フィールドの開始時点で同時に印加が開始され、さらに前記リセット区間には前記発光区間の直後に前記行電極とは逆極性でパルス幅が前記行電極に印加される単一矩形波パルスの2倍でかつその波高値が|Vb|から2*|Vb|の範囲内で構成された単一矩形波パルスで構成された井戸パルスが配置され、前記列電極には表示内容に従って単一矩形波パルスで構成され、|Vd|の電位を保ちながら該矩形波パルスのパルス幅を変化させ、諧調を付与する事を特徴とする。
【0041】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、ライン毎、またはフィールド毎、又はフレーム毎に極性反転を行う事を特徴とする。
【0042】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、選択電圧の走査電極行に関し、偶数フィールドは第1行目から最終行に向かって開始され、一方奇数フィールドでは最終行から1行目に向かって走査され、またはその逆を許容させることを特徴とする。
【0043】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内の発光区間は、少なくとも一部が選択区間と重複を許容されることを特徴とする。
【0044】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において温度検出装置が設置されている事を特徴とする。
【発明の効果】
【0045】
本願発明の液晶表示装置は、FSC駆動下においてきわめて良好な特性を示した。この特性改良に大きく寄与した要因は主として用いた液晶材料と駆動波形との組み合わせであり、しかも本願において用いた一群の液晶は、従来の60Hz駆動を前提とした評価基準では全くの不適とされてきた鍋底率の大きいものを積極的に用いた結果である。
【0046】
さらに駆動面に関して言及するならば、図7に示す井戸パルス24が、FSC駆動の際の画質向上に顕著な効果を示す事が示された。また、一斉にリセット区間内に選択パルスの2倍の時間幅の井戸パルスを配設する事で、黒を確実に書き込む事が可能となり、更なる画質向上に寄与する事が判明した。
【0047】
このことから、本願発明の液晶表示装置は、従来の材料判断基準とは異なった新しい基準に基づいたものであり、FSCモードを用いた液晶表示装置の開発と、新たな発展に大きく寄与する契機となることが予想できる。またカルボン酸エステルを主剤として用いる事により、より高性能な液晶表示装置が安価に提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施例に用いた反強誘電性液晶表示装置の断面図を示す。この反強誘電性液晶表示装置は、液晶材料としてエルシーエー社製のAF0706-3を用い、そのセル総厚hが約1.1μmになるように一対の基板431,432にて挟持させた。基板431,432の対向面には電極44が形成されその上に配向膜45が形成されている。基板431,432と電極44の間には絶縁膜48,49が配設され、前記基板431,432からのアルカリイオンの溶出を防止している。さらに一方の基板431の外側に偏光板の偏光軸と配向膜45の配向処理方向とが略平行になるように第1の偏光板411が配置されており、他方の基板432の外側には、第1の偏光板411の偏光軸と略90度異なるようにして第2の偏光板412が設置されている。
【0049】
偏光板411,412は、液晶層46における液晶が電圧無印加時の反強誘電状態にあるときに遮光し、液晶層46における液晶が強誘電状態にあるときに通過する光を透過させるために、偏光軸が直交するように調整されている。
46は液晶が注入される空間であり、表示機器のセル厚はhで代表されている。
【0050】
前記液晶のセル厚hについては2つの観点から決定される。まず第1にコントラスト比を向上させるためにはバルクで示す螺旋構造を完全に解除させるとともに、基板に平行に配向させるために1.2μm以下にする必要がある。これ以上のセル厚に設定すると黒のレベルが上昇してコントラスト比を悪くする原因となる。
【0051】
つぎに、設定したセル厚での光学的行路長(リターデーション)として180nmから220nmを確保しなければならない。この値の前後で白の状態が最も明るくなり、かつ量産で問題になるセルの厚みの変化に対して最も鈍い変化、安定な状態を確保できるからである。
【0052】
液晶パネルの下部には3原色である赤(R)、緑(G),青(B)の光を発光するLEDバックライト光源161、162,163が配設され、導光板18にて液晶セル全体を照明する機構が施されている。これらの3原色光源は1フレーム毎に順次等周期で点灯するとともに、該点灯タイミングに合わせて液晶表示装置には当該光源色の表示情報が表示されてカラー表示がなされる。この液晶表示駆動モードがいわゆるFSC方式と呼称されている。
【0053】
図2は本実施例に用いた反強誘電性液晶パネルの平面図及び簡略化した断面図であり行電極数が32本、列電極数が64本の時を想定してある。図2(a)に示した下側の基板432には透明な行電極R1,R2,R3,・・・,R32が設けられ、図2(b)に示した上側の基板431には透明な列電極C1,C2,C3,・・・,C64が設けられ、該上下の基板431,432間に反強誘電性液晶物質が狭持されている。このようなパネルにおいては、行電極を行選択信号によって順次選択し、1つの行電極が選択されているときに同期して、当該行の表示データを全列電極に与える、いわゆる線順次駆動が行われる。以上のセル構成については第1の実施形態と呼称する事にする。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の液晶表示パネルの作製方法を説明する。まず、基板431,432の表示部に対応する領域に、フォトリソ法等でITO等による透明電極44を形成する。次いで、印刷成膜によって絶縁膜48,49を成膜する。そして、スピンコートや転写印刷で材料を塗布した後加熱する等の方法によって有機配向膜45を成膜する。以上のようにして、基板431,432および配向膜45を有するそれぞれの基板を得ることができる。そして、基板431,432および配向膜45を有する基板を同方向または逆方向にラビングする。
【0055】
片側の基板には基板431および432を固定するためのシール22が印刷法にて形成され、ついで基板431と他方の基板432とを重ね合わせる。
【0056】
以上のようにして、図1に示すような液晶表示パネルが形成される。ただし、この段階では、液晶層46に相当する部分は空隙の状態である。次いで、液晶表示パネルを気密装置にセットし、液晶の等方相転移温度まで加温し、その温度に保持した状態で気密装置を真空に引いた後、液晶表示素子における液晶注入部が設けられている側を液晶材料に浸し、気密装置の気圧を上げて液晶材料を液晶注入部から液晶層46の形成部に注入させる。その後、液晶注入部に接着剤を塗布し、加熱等によって接着剤を硬化させ液晶注入部を塞ぐ。
【0057】
セルに注入された後の液晶に対して、通常、周波数40〜100Hz、振幅20〜30V程度の矩形波が透明電極44の間に約10秒〜20秒印加され、注入直後に形成された各種層構の欠陥を修復する通電処理を行う。以上の処理を第2の実施形態と呼称する。
【0058】
(第3の実施形態)
図7は本願の液晶表示装置の評価に用いた駆動波形のタイミングが示されている。図7においてFRの1周期は2フレームで構成され、SUBの1周期は2フィールドで構成され、それぞれR,G,B…のフィールドに対応している。AL2は行毎反転とかつフィールド毎の反転をあらわすための交流化信号である。
【0059】
さらに、1フィールド区間内の特定の行電極に対して、1パルスの選択電圧、選択電圧と同極性の保持電圧、および選択電圧とは逆極性で、選択電圧の2倍の時間幅を有する強制リセット電圧と、極性の異なり同じ絶対値を有する後続矩形波を少なくとも2個連続して印加するとともに、前記強制リセット電圧印加後に行電極へ基準電圧を印加するように制御するように構成する。図7中、Vs,Vb,Vwellはそれぞれ選択電圧パルス、バイアス電圧,および井戸パルスの電圧を表している。
【0060】
また図7において、VR1は第1行目の行電極に与えられる駆動信号、VC1白、VC1黒、VC1赤はそれぞれ第1列目の列電極に与えられる駆動信号で、VC1白は第1列目の表示を白にする、すなわちフィールドのR、G、B、すべてで液晶をONにして表示を白色にするための信号、VC1黒は第1列目の表示を黒にする、すなわちフィールドのR、G、B、すべてで液晶をOFFにして表示を黒色にするための信号、VC1赤はRフィールドで液晶をON、G、Bフィールドで液晶をOFFにしてRのみ透過させて表示を赤色にするための信号である。
【0061】
具体例として、行電極にVR1が、列電極にVC1赤のデータ信号を同時印加したときの液晶に印加される電圧について考える。第1行第1列目の液晶ドットに印加される実際の電圧は、行電極に与えられる駆動信号と列電極に与えられる駆動信号の差すなわち(VR1−VC1赤)となる事を図7の最下段のVR1−VC1赤の欄に示した。さらに信号電圧の最大値Vdも、各温度領域毎に定めた選択電圧Vsに所定の比率を乗じた値として定める。この実施の形態では、Vbの目安として選択電圧パルスVsの1/4とし、データ電圧Vdは選択電圧パルスVsの1/5倍を目安とした。更にリセット区間に印加する井戸パルスVwellの波高値は、バイアス電圧Vbの1倍から2倍を目安とした。これら駆動波形の設定について第3の実施形態と呼称する事にするが交流化信号としてAL1を用いてもなんら問題の生じない事は確認している。なお以下に示す本願実施例の時間-透過光強度の測定においてはすべて第3の実施形態の手続きを踏んでいる。
【0062】
さらに本願で用いられる反強誘電性液晶は、下記一般式〔1〕、〔2〕で表される。
【0063】
【化5】
【0064】
【化6】
(式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基でありRFはフルオロアルキル基もしくはメチル基であり、pは4〜6、Rqは炭素数1から4までのアルコキシ基、*は不斉中心を示す。(A)および(B)は水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換されてもよい1、4−フェニレン基またはビフェニル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)
一般式〔1〕で表される化合物の例を以下に示す。
【0065】
【化7】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0066】
【化8】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0067】
【化9】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0068】
【化10】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0069】
【化11】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0070】
【化12】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0071】
【化13】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0072】
【化14】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0073】
【化15】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0074】
【化16】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0075】
【化17】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0076】
【化18】
式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基である。
【0077】
(第4の実施形態)
通常、化6から化7で表される液晶物質を反強誘電性液晶表示装置に注入した後、0.1Hz前後の周波数の三角波を印加すると図3で示したような印加電圧−透過光強度を示すヒステリシス曲線が得られる。図中X軸は前記三角波の最大振幅を表している。
【0078】
また第3図における縦軸は透過光強度を、横軸は印加電圧を示している。本願では印加電圧304で示された電圧以上で、これ以上変化しない透過光強度を特に飽和透過光強度Tsatと定義している。
【0079】
次に前記印加電圧304の80%に相当する電圧点328を求め、前記電圧点に対応する透過光強度332を求めるとともに、前記飽和透過光強度Tsatに対する浮き上がり度合い―割合―を計算した。前記透過光強度332をT(332)で表す事とすると過程Aにおける透過光強度比Gは以下の数式で定義される事になる。
【0080】
【数1】
この三角波を用いての透過光強度と飽和透過光強度の比をもとめる手続きを第4の実施形態と呼称する。
【実施例1】
【0081】
以下、本発明の実施例を説明する。第1から第2までの実施形態に則って作成したセルに対し、背面側に設置される基板431,432に対して、ラビング方向と偏光軸が平行になるように偏光板411を貼り合わせ、観察側に設置される基板に対して、偏光板412の偏光軸を前記偏光板411との偏光軸が直交するように貼り合わせた。これは通常ノーマリーブラックと呼称される偏光板の組み合せに相当する。更に表1に示した下記化合物を調合してなる反強誘電性液晶組成物を真空高温下で注入し、最後に液晶注入部を封止した。以後、本願で開示する実施例は特に断らなくても全て前記第1から第4の実施形態を用いた時の結果であることが前提となる。
【0082】
【表1】
【0083】
第3の実施形態で示した駆動方法によって液晶表示パネルを駆動した。なおこの時のデータ波形は図7の(VR1−VC1赤)に相当する波形であり、赤のみを表示させる時に用いるものである。以後選択波形、バイアス波形及びデータ波形の組み合せをプローブ波形S(1,0,0)で表す事とする。この時の駆動条件を再掲すると駆動周波数180Hz、選択波形のパルス幅80μs、選択電圧Vs:13V、バイアス電圧:4V、データ電圧:3V、井戸パルスの電圧Vwell:4V、プローブ波形:P(1,0,0)である。また第4の実施形態に基づいて得た透過光強度比の値の値は0.04であった。この時の測定結果を図8に示す。
【0084】
図8からわかる事として、プローブ信号がS(1,0,0)である事を示すデータ系列102に対しそれぞれ赤(R),緑(G),青(B)フィールドに対応する時間−透過光強度の関係は時間的に明確に分離されている事を示している。ちなみに前記、時間-透過光強度において、Rフィールドの透過光の時間に対する積分強度を1とした場合、緑(G),青(B)の各フィールドの透過光強度(=漏れ光)の割合は7%以下であり、マトリックス特性、つまりオンデータとオフデータによって表示を書き分けられる能力、換言すればマトリックス特性を十分満たしている事がわかる。なお以降のマトリックス特性の判定基準としては合格のレベルをRとGにおける透過光の強度積分強度比で判定し、その比が15%以下を○と定め15〜20%の範囲を△、これ以上は不合格の×と記す事とする。
(第1比較例)
【0085】
実施例1における図8は駆動波形に関し 図7における井戸パルス24を配設したときの結果であるが図9に、前記図7のVR1の印加波形から該井戸パルス24を取り去り、前記リセット区間の印加電圧を0Vに設定するときのタイミング図を示す。このタイミング図は60Hz駆動の場合の基本となる波形としてしられている。
前記井戸パルス24の効果を検討するために 前記図9で示した井戸パルス24無しでの駆動波形と実施例1で用いたパネルを用い、駆動周波数180Hzにて駆動したときの時間−透過光強度の変化を図10に示す。
【0086】
該図10中の赤(R)の強度を1としたとき、緑(G)のピークとの比は20%を超えており、図8でしめされた値である7%と比較すると約3倍弱の値の増加を示していることがわかる。この比が大きいことは、すなわち、G光およびB光の漏れが生じ、色純度の低下(=混色)や黒レベルの上昇(=コントラスト低下)等の表示装置の劣化を示すものであり、井戸パルス24と色純度やコントラスト比との相関の大きいことがわかる。このことから、以後の駆動波形については、図7で示された井戸パルス24の配設を前提とした。
(第2比較例)
【0087】
さらに、従来駆動で前提とされていたフレーム周波数60Hz下において、良好とされてきた液晶材料を用いて液晶表示素子を構成し、前記図7に示した駆動波形にてFSC駆動を行ったときの時間−透過光強度の変化を第2比較例として図11に示す。この組成は表2で示されており、特許文献3の図12、実施例2で開示されている組成である。該組成は60Hz駆動において鍋底効果の観点から良好と評価された材料組成であり、該組成物の特徴としては3番目の物質以外、左側側鎖がアルキル基ではなく、全体としてアルコキシ基が80wt%を占める組成で調整されている点である。この液晶組成物の場合に得られる第4の実施形態での時間−透過光強度を図11に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
図8において印加したと同じプローブ信号102のデータS(1,0,0)に対し、緑(G),及び青(B)のフィールドの透過光強度112、及び114はRの示す透過光強度110と、ほぼ等しい値を示した。一方第4の実施形態に基づいた透過光強度の比は0.002であった。従来の三角波を用いた評価基準では特許文献3で開示されたごとく鍋底率は小さく、非常に良好な材料のはずであるが、この材料はFSC駆動を前提としたとき、マトリックス特性、つまりフィールド間におけるオンデータとオフデータによって表示を書き分ける能力が特に悪く、混色、白化現象が発生し、所望の色がほとんど実現できない。
(第3比較例)
【0090】
更に特許文献3の図12、実施例4で開示された組成)について検討を試みた。分子式と組成を表3に示す。この液晶組成物の場合に得られる第4の実施形態での時間−透過光強度を図12に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
図8において印加したと同じプローブ信号102のデータS(1,0,0)に対し、G,及びBのフィールドの透過光強度112、及び114はRの示す透過光強度110との比は0.61、0.23であり、良好なマトリックス特性は示してはいない。一方第4の実施形態に基づいた透過光強度の比は0.011であった。従来の三角波を用いた評価基準では鍋底率は小さく、非常に良好な材料のはずであるが、この材料はFSC駆動を前提としたとき、マトリックス特性、つまりフィールド間におけるオンデータとオフデータによって表示を十分に書き分ける能力が悪く、混色、白化現象が発生し、所望の色があまり実現できないことがわかる。
【0093】
本願発明者はFSC駆動を前提としたときの、好ましいコンポーネントの組み合せとして先ず左側側鎖の候補としてアルキル基とアルコキシ基に着目して鋭意検討を重ねた結果、基本的にカルボン酸エステル構造を前提とし、分子の左側側鎖について、アルコキシ基を有するものは原則使用しないか、使用しても極力低比率の方が好ましいとの作業仮説に基づき更なる検証を進めた。
(第2実施例)
【0094】
左側2環のベンゼン環の一部がハロゲン原子に置換されているコンポーネントとされていない、骨格の異なるものとを混合した時の光学特性について検討した。その代表的な透過光強度の時間変化を図13にまたこの時の組成を表4に示す。
【0095】
【表4】
左側側鎖がアルキル基であれば混合の状態もよく、また白レベルも図8と比較しても、勝るとも劣らない。なお第4の実施形態に基づく透過光強度比の値の値は0.0652であった。この値を鍋底率に換算すると、従来の評価基準からは、決して好ましい材料と位置付けられるものではない。
(第3実施例)
【0096】
左側2環のベンゼン環と単環のベンゼン環の一部がハロゲン原子に置換されているコンポーネントとを混合した時の光学特性について検討した。その代表例を図14にまたこの時の組成を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
白レベルは図13に比較して低くなり、黒レベルは若干上昇しているが、マトリックス特性は良好と判断される。このときの駆動周波数180Hz、選択波形のパルス幅80μs、選択電圧Vs:20V、バイアス電圧:8V、データ電圧:6.5V、井戸パルスの電圧Vwell:8V、プローブ波形:S(1,0,0)であった。一方第4の実施形態に基づく透過光強度比の値は0.085であった。やはり従来の判断基準からは好ましい材料とは思えない組成物が示した、従来の判定基準からすると思いがけない駆動特性と言ってよい。
(第4比較例)
【0099】
さて比較例として第4の実施形態の透過光強度比の値が0.03付近の組成物を調整した。この時の組成を表6に示す。他の実施例の場合と同様、第3の実施形態の駆動波を用いて駆動した場合の光学特性について検討を行った。
【表6】
上記組成の材料を用いたパネル特性を図15に示す。図15は、実現される白のレベルが低いこと、Rに続くGのフィールド間における漏れ光の割合が30%超と色純度確保の観点から好ましくない事、Rのフィールド内で透過率の時間変化が見られる事、黒のレベルが下がらない事などからトータルとして好ましくないと判断せざるを得ない。一方、第4の実施形態に基づく透過光強度比の値は0.0291であり、従来基準からは良好な材料と判断されるべき液晶組成物である。しかしFSC駆動を前提とした時にはほとんど使用に耐えないと断ぜざるを得ない特性であった。
(第4実施例)
【0100】
更に式〔2〕で示される化合物として表7に示される組成物を作成し、他の実施例の場合と同様、実施形態3の駆動波を用いて駆動した場合の光学特性について検討を行った。
【0101】
【表7】
【0102】
分子構造の特徴として、左右の側鎖はアルコキシ基であるが右側側鎖アルコキシ基の間に−(CH2)n−で表されるスペーサーを入れた事である。本願のこれまでの実験結果の予想からは、左側側鎖の構造がアルコキシ基であることから、FSC駆動のための材料としては不適の可能性を有していたが、実際は前記スペーサーをキラル中心とアルコキシ基の間に導入する事により、FSC駆動用の材料として使用可能となった例である。
【0103】
上記組成の材料を用いた時間−透過光強度特性を図16に示す。図8もしくは図13と比較しても遜色のない駆動特性が得られた。また第4の実施形態に基づく透過光強度比の値は0.09であり、やはり従来の材料評価基準からは、漏れ光が顕著で不適格と判定されてもおかしくないヒステリシス特性であった。また実施例4での結果は、液晶分子の左右の側鎖構造として、アルコキシ基でも使用可能である場合もある事を如実に示した例であり、今後更なるFSC駆動用の材料開発の可能性を切り開く端緒となる事を暗示している。
(第5実施例)
【0104】
更に本願発明者は実施例3の駆動電圧を低下させるため実施例3の組成物に対してさらに左右両側の側鎖にエーテル結合を導入した化合物の添加効果について、上限を8%までとした検討を加えた。この時の液晶組成を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
このときmの範囲として8、9、10であれば最大8wt%までは、マトリックス性を損なう事なく、閾値は低下する。ちなみに実施例3において選択電圧Vs。バイアス電圧Vbデータ電圧Vd、がそれぞれ(20V、8V、6.5V)であったものが、第3物質を添加する事により(10.5V、3.5V、2.0V)にまで低下した。
【0107】
しかし、これ以上第3物質を添加すると、駆動電圧は同様に低下するが、ヒステリシス幅が極端に狭くなり、結果として駆動マージンが狭くなる。駆動マージンは実際の分割数にほぼ逆比例する事から、50分割レベル超を指向するとき、8wt%が上限の目安となるが、分割数をこれより小さくとれば、第3添加物質が添加可能な上限値を増加させる事が出来ることは言うまでもない。
【0108】
実施形態3の駆動波を用いて駆動した場合の時間-透過光強度特性を図17に示した。赤の透過光強度110と緑の透過光強度112および青の透過光強度114を比較すると色分離は良好になされている事が示されている。また実施形態4を用いた透過光強度比の値は0.07であり、従来基準からはやはり良好ではない材料と判断されてしかるべき液晶組成物であるが、本願で開示された駆動タイミング波形を用いたFSC駆動では他の実施例同様良好な特性を示す事がわかる。
(第6実施例)
【0109】
さらに本願発明者は、諧調を付与するための工夫を行った。この工夫について図7におけるVC1赤とVR1−VC1赤の部分のみを図18に示す。この時のデータ信号はS(1/2、0、0)と表される。これを図7との比較で考えると、図18においては、赤を与える信号のパルス幅は図7における選択パルスのそれに比較して1/2と狭く設定されている。
【0110】
すると図7との比較においては、単一パルスの単一電圧(Vs+Vd)で表現されていた赤を書くパルスは、選択時間の半分の時間に相当する地点1402で選択電圧レベルであるVsまで落ち、残りの選択時間をこの電圧レベルで経過し、その後非選択区間へと移行する事になる。
【0111】
図18で設定した、データ電圧を液晶表示装置に印加した場合の透過光強度の時間変化を図19の1502として示した。比較のために選択時間一杯にデータ電圧を印加した場合に得られる透過光強度の時間変化を図19の1504とし点線で示した。データ電圧の印加時間を変化させる事により、透過光強度が変化し、諧調が付与される事がわかる。
【0112】
表9に本願で明らかになった第4の実施形態に基づいた透過光強度比と表示装置の示す諸特性の総合評価を表9に示した。表9は、FSC駆動用材料の評価基準として、前記第4の実施形態に基づいた透過光強度比が非常に大切で、良好なFSC駆動特性を確保するためには前記透過光強度比が0.03以上を示す材料を調整しなければならない事が判明する。
【0113】
【表9】
【0114】
第1実施例から第5実施例まで、本液晶表示装置は、液晶物質が温度依存性を有するため、結果として、駆動も温度依存性を有することになる。このため最適な表示を行うためには、正確な温度に対し、最適な駆動条件を与える必要がある。
本願発明者はこのために、あらかじめ、各温度に対する駆動条件を求めておき、本表示装置内に、例えばサーミスタ等の温度検出器を配置した。該温度検出器は、前記液晶表示装置の温度を検出し、もって最適駆動条件を設定するための用に供したが、温度検出器として、サーミスタのみに限定されない事は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例におけるセル構造の概念図である。
【図2】本実施例に用いた反強誘電性液晶パネルの平面図及び簡略化した断面図である。
【図3】三角波を用いた時の印加電圧-透過光強度の関係を示すヒステリシス図である
【図4】本発明の駆動法で用いるフレーム、フィールドの定義およびタイミングを示した概念図である。
【図5】本発明の駆動法で用いる交流化信号の第1のタイプを説明する波形図である。
【図6】本発明の駆動法で用いる交流化信号の第2のタイプを説明する波形図である。
【図7】本発明が用いた第4の実施形態での駆動法をしめすタイミング図である。
【図8】本発明の第1実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.04であるとき、第1実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図9】第1比較例として用いた、第4の実施形態から井戸パルスを除いた駆動法をしめすタイミング図である。
【図10】図9で示された波形で駆動した場合、液晶表示装置が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図11】本発明の第2比較例において、第4の実施形態での透過光強度比が0.002である時、比較例2が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図12】本発明の第3比較例において第4の実施形態での透過光強度比が0.011であるとき、第3比較例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図13】本発明の第2実施例において、第4の実施形態での透過光強度比が0.0652であるとき、第2実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図14】本発明の第3実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.0851であるとき、第3実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図15】本発明の第4比較例において第4の実施形態での透過光強度比が0.0291であるとき、第4比較例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図16】本発明の第4実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.09であるとき、第4実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図17】本発明の第5実施例において第4の実施形態での透過光強度比が0.08であるとき、第5実施例が示す透過光強度の時間変化を表した図である。
【図18】本発明の第6実施例において 諧調を付与する時のデータ波形と液晶に印加される電圧を表す図である。
【図19】本発明の第6実施例において図18で示された駆動波形印加で得られる透過光強度の時間変化を表した図である。
【符号の説明】
【0116】
1: 液晶表示装置
20: 選択信号を表す
24: 井戸信号を表す
110: 透過光強度-時間を表す図の中のR(赤)成分の強度を表す
112: 透過光強度-時間を表す図の中のG(緑)成分の強度を表す
114: 透過光強度-時間を表す図の中のB(青)成分の強度を表す
411、412: 偏光板を表している
431、432: 基板を表している
41、42: 絶縁膜を表している
44: 透明電極を表している
45: 配向膜を表している
46: 反強誘電性液晶層を表している
314、304: 透過光強度が飽和する時の三角波印加電圧を表している
310、318: X軸から透過光強度が増加し始まる時の三角波印加電圧を表している
328: 飽和電圧304の80%における三角波印加電圧を表している
330: 最大透過光強度を表している
332: 飽和電圧304の80%にあたる電圧での透過強度を表している
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上の行電極と、一本以上の列電極が形成された基板と、該基板間に狭持された反強誘電性液晶物質と、独立した3原色光が順次発光する照明装置とを有するフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において、該反強誘電性カラー液晶表示装置は、三角波を印加した時のヒステリシス曲線の立ち上がり側の飽和電圧304の80%における透過光強度332が最大透過光強度330に対し、3%以上の透過光強度を実現させる反強誘電性液晶物質を含有することを特徴とするフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項2】
前記反強誘電性液晶物質は、下記一般式[1]もしくは[2]で表される化合物を少なくとも1種類以上混合したことを特徴とする請求項1に記載の反強誘電性液晶表示装置。
【化1】
【化2】
(式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8
のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基でありRFはフルオロアルキル基もしくはメチル基であり、pは4〜6、Rqは炭素数1から4までのアルコキシ基、*は不斉中心を示す。(A)および(B)は水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換されてもよい1、4−フェニレン基またはビフェニル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)
【請求項3】
該一般式[1]で表される反強誘電性液晶が60重量%以上で構成される事を特徴とした請求項2記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項4】
該一般式[2]で表される反強誘電性液晶が50重量%以下で構成される事を特徴とした請求項2記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項5】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内に、選択パルスとその前後のバイアス電圧区間と、リセット区間と、それらに一部重複してもよい発光区間とが設けられる事を特徴とした請求項1記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項6】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において1フレームは少なくとも前記3原色の発光区間である3つのフィールド区間より成り、各フィールドは前記行電極を行電極選択信号により順次選択する書き込み区間と、前記照明装置が発光する発光区間と、単一の矩形波パルスで構成されるリセット区間とからなり、前記反強誘電性液晶物質に、 前記行電極が選択された時は該行電極に|Vs|の選択電位の与えられた単一矩形波パルスが印加され、選択されない時は|Vb|のバイアス電位を与えられ、該バイアス電圧Vbは全ての行電極に対し、各フィールドの開始時点で同時に印加が開始され、さらに前記リセット区間には前記発光区間の直後に前記行電極とは逆極性でパルス幅が前記行電極に印加される単一矩形波パルスの2倍でかつその波高値が|Vb|から2*|Vb|の範囲内で構成された単一矩形波パルスで構成された井戸パルスが配置され、前記列電極には表示内容に従って単一矩形波パルスで構成され、|Vd|の電位を保ちながら該矩形波パルスのパルス幅を変化させ、諧調を付与する事を特徴とした請求項1記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項7】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、ライン毎、またはフィールド毎、又はフレーム毎に極性反転を行う事を特徴とした請求項1ないし請求項6記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項8】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、選択電圧の走査電極行に関し、偶数フィールドは第1行目から最終行に向かって開始され、一方奇数フィールドでは最終行から1行目に向かって走査され、またはその逆を許容させることを特徴とする請求項1から請求項7までに記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項9】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内の発光区間は、少なくとも一部が選択区間と重複を許容されることを特徴とした請求項1から請求項8までに記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項10】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において温度検出装置が設置されている事を特徴とした請求項1から請求項9までに記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項1】
1本以上の行電極と、一本以上の列電極が形成された基板と、該基板間に狭持された反強誘電性液晶物質と、独立した3原色光が順次発光する照明装置とを有するフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において、該反強誘電性カラー液晶表示装置は、三角波を印加した時のヒステリシス曲線の立ち上がり側の飽和電圧304の80%における透過光強度332が最大透過光強度330に対し、3%以上の透過光強度を実現させる反強誘電性液晶物質を含有することを特徴とするフィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項2】
前記反強誘電性液晶物質は、下記一般式[1]もしくは[2]で表される化合物を少なくとも1種類以上混合したことを特徴とする請求項1に記載の反強誘電性液晶表示装置。
【化1】
【化2】
(式中Rmは炭素数8〜11のアルキル基もしくはアルコキシ基、nは炭素数2〜8
のアルキル基もしくはアルコキシ基よりなる群からそれぞれ独立してえらばれた基でありRFはフルオロアルキル基もしくはメチル基であり、pは4〜6、Rqは炭素数1から4までのアルコキシ基、*は不斉中心を示す。(A)および(B)は水素原子の1個以上がハロゲン原子に置換されてもよい1、4−フェニレン基またはビフェニル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である。)
【請求項3】
該一般式[1]で表される反強誘電性液晶が60重量%以上で構成される事を特徴とした請求項2記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項4】
該一般式[2]で表される反強誘電性液晶が50重量%以下で構成される事を特徴とした請求項2記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項5】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内に、選択パルスとその前後のバイアス電圧区間と、リセット区間と、それらに一部重複してもよい発光区間とが設けられる事を特徴とした請求項1記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項6】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において1フレームは少なくとも前記3原色の発光区間である3つのフィールド区間より成り、各フィールドは前記行電極を行電極選択信号により順次選択する書き込み区間と、前記照明装置が発光する発光区間と、単一の矩形波パルスで構成されるリセット区間とからなり、前記反強誘電性液晶物質に、 前記行電極が選択された時は該行電極に|Vs|の選択電位の与えられた単一矩形波パルスが印加され、選択されない時は|Vb|のバイアス電位を与えられ、該バイアス電圧Vbは全ての行電極に対し、各フィールドの開始時点で同時に印加が開始され、さらに前記リセット区間には前記発光区間の直後に前記行電極とは逆極性でパルス幅が前記行電極に印加される単一矩形波パルスの2倍でかつその波高値が|Vb|から2*|Vb|の範囲内で構成された単一矩形波パルスで構成された井戸パルスが配置され、前記列電極には表示内容に従って単一矩形波パルスで構成され、|Vd|の電位を保ちながら該矩形波パルスのパルス幅を変化させ、諧調を付与する事を特徴とした請求項1記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項7】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、ライン毎、またはフィールド毎、又はフレーム毎に極性反転を行う事を特徴とした請求項1ないし請求項6記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項8】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、選択電圧の走査電極行に関し、偶数フィールドは第1行目から最終行に向かって開始され、一方奇数フィールドでは最終行から1行目に向かって走査され、またはその逆を許容させることを特徴とする請求項1から請求項7までに記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項9】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式において、各フィールド内の発光区間は、少なくとも一部が選択区間と重複を許容されることを特徴とした請求項1から請求項8までに記載の反強誘電性液晶表示装置。
【請求項10】
前記フィールドシーケンシャル駆動方式の反強誘電性カラー液晶表示装置において温度検出装置が設置されている事を特徴とした請求項1から請求項9までに記載の反強誘電性液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−162973(P2009−162973A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240(P2008−240)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(506084254)サンテック・ディスプレイ株式会社 (2)
【出願人】(307030049)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(506084254)サンテック・ディスプレイ株式会社 (2)
【出願人】(307030049)
【Fターム(参考)】
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