説明

液晶表示装置

【課題】偏光板のカールを抑え、生産性の向上を図る液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置は、液晶層を挟んで配置される第1及び第2のガラス基板10、11と、第1及び第2のガラス基板に貼設される偏光板20A、20Bを有している。偏光板20A、20Bは、夫々偏光フィルム及び透明フィルムからなる二層構造を有し、各フィルムの延伸軸は互いに交差している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に偏光板を、偏向作用を持つ偏光フィルムと、偏光作用を持たない透明フィルムとから構成した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置の軽量化のため、ガラス基板の薄型化技術が実用化されているが、これに伴い特に液晶表示装置製造工程の熱処理工程において偏光板がカールし、生産性を低下させることが問題となっていた。
【0003】
かかる問題を解決する一例として、保護膜の熱面積変化率の差を小さくし偏光板のカールを防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−279269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では偏光板が持つ延伸軸に起因する応力を抑えることができず、また応力に起因するカールを防ぐことは困難である。
【0005】
図5は従来の偏光板20が熱処理によりカールした状態を表す斜視図である。偏光板20は延伸軸を有し、その軸の両端に応力がかかり易いという特徴を有する。具体的には、熱が加わると延伸軸方向に偏光板20が収縮し、またガラス基板と偏光板20の密着性が強いため、当該応力は上方向に作用し易い傾向がある。
【0006】
したがって、本発明は、偏光フィルム及び透明フィルムが夫々有する対角線上の延伸軸を交差させて重ねあわせ、互いにかかる応力を打ち消すことのできる偏光板を有する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、
第1のガラス基板と、前記第1のガラス基板と液晶層を介して対向配置された第2のガラス基板と、前記第1及び第2のガラス基板の液晶層とは反対側の面に貼設される第1及び第2の偏光板とを備える液晶表示装置であって、前記第1の偏光板は、矩形状であり対角線上の第1の方向の延伸軸を有し偏向作用を持つ第1の偏光フィルムと、矩形状であり偏向作用を持たず対角線上の前記第1の方向に交差した第2の方向の延伸軸を有し前記第1の偏光フィルムとともに互いに貼設された第1の透明フィルムとを含み、前記第2の偏光板は、矩形状であり対角線上の前記第2の方向の延伸軸を有し偏向作用を持つ第2の偏光フィルムと、矩形状であり偏向作用を持たず対角線上の前記第1の方向の延伸軸を有し前記第2の偏光フィルムとともに互いに貼設された第2の透明フィルムとを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、偏光板のカールを抑え、液晶表示装置の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る液晶表示装置について図1乃至図4を参照して説明する。なお実施の形態ではノーマリーホワイト90°のツイストネマティックモード(以下TNモードという)を例に説明する。また同一部分は同一符号を付して示す。
【0010】
図1は、本発明による液晶表示装置の実施の形態を示す平面図、図2は、図1の液晶表示装置のA−A断面図、である。
【0011】
液晶表示装置は表示領域を有する第1のガラス基板10と、この第1のガラス基板10に所定の隙間を保持して対向配置された第2のガラス基板11と、ポリビニルアルコール(以下PVAという)からなり詳細を後述する偏光板20A、20Bと、表示領域を駆動する駆動LSI等を備え、また第1のガラス基板10下面に配置され光源となるバックライトユニットをさらに備えている。第1のガラス基板10及び第2のガラス基板11の厚さは、例えば0.2mmである。
【0012】
第1のガラス基板10と第2のガラス基板11とは表示領域の周縁である額縁領域においてシール材12を用いて接合され、第1のガラス基板10と第2のガラス基板11とシール材12とで囲まれた領域に液晶層13が形成されている。
【0013】
さらに第1のガラス基板10の液晶層13とは反対側の面には偏光板20Aが、第2のガラス基板11の液晶層13とは反対側の面には偏光板20Bが夫々配置されている。
【0014】
また第1のガラス基板10上には図示しない複数の信号及び走査線が設けられ、信号線と走査線の交差部近傍にスイッチング素子として、例えば薄膜トランジスタが設けられる。
【0015】
なお第1及び第2のガラス基板10、11上には図示しない配向膜も形成される。
【0016】
図3は、図2の破線部(ア)で示す、偏光板20Aの拡大断面図、図4は第1及び第2の偏光板20A、20Bにかかる応力の関係を示す図である。
【0017】
偏光板20Aは、矩形状であり対角線上の第1の方向d1の延伸軸25を有し偏向作用を持つ第1の偏光フィルム21と、矩形状であり偏向作用を持たず対角線上の第2の方向d2の延伸軸26を有する第1の透明フィルム22と、第1の偏光フィルム21及び第1の透明フィルム22を挟持し保護する図示しない保護膜からなる。第1の方向d1及び第2の方向d2は、互いに交差しているため、延伸軸25及び延伸軸26も互いに交差している。そして第1の偏光フィルム21と、第1の透明フィルム22は互いに貼設されている。
【0018】
また、図4に示すように第2のガラス基板11に貼設する偏光板20Bも、矩形状であり対角線上の第2の方向d2の延伸軸27を有し偏向作用を持つ第2の偏光フィルム23と、矩形状であり偏向作用を持たず対角線上の第1の方向d1の延伸軸28を有する第2の透明フィルム24と、第2の偏光フィルム23及び第2の透明フィルム24を挟持し保護する保護膜からなる。そして第2の偏光フィルム23と、第2の透明フィルム24は、延伸軸27及び延伸軸28が互いに交差した状態で貼設される。そして、偏光板20A,20Bは、その第1及び第2の透明フィルム22、24側がガラス基板10,11に貼設される。
【0019】
従って、ガラス基板10,11面に貼設された偏光板20A、20Bにおける第1、第2の透明フィルム22,24の延伸軸26,28は、互いに異なり交差している。
【0020】
図4は、本実施の形態による液晶表示装置の分解斜視図であり、特に、第1及び第2の偏光フィルム21、23並びに第1及び第2の透明フィルム22、24の延伸軸25、26、27、28の方向と、第1及び第2の偏光フィルム21、23並びに第1及び第2の透明フィルム22、24にかかる応力を示した図である。
【0021】
第1の偏光フィルム21、第1の透明フィルム22、第2の偏光フィルム23、及び第2の透明フィルム24はPVAの高分子フィルムを対角線方向となる延伸軸方向に引き伸ばし形成される。そして、高分子フィルムに偏光子となる例えばヨウ素化合物を添加することで偏向作用を持つ第1及び第2の偏光フィルム21、23が形成され、当該高分子フィルムにヨウ素化合物を添加しないことで偏向作用を持たない第1及び第2の透明フィルム22、24が形成される。
【0022】
このように第1の偏光フィルム21及び透明フィルム22は高分子フィルムを延伸軸方向に引き伸ばし形成される。そのため、液晶表示装置製造工程の例えば熱処理工程であるオートクレイブにより熱が加わると延伸軸方向に収縮する傾向があり、特に延伸軸25、26の両端において第1の偏光フィルム21及び透明フィルム22に力が加わる。
【0023】
さらに第1の透明フィルム22は第1のガラス基板10に貼設され、かつ第1の偏光フィルム21はこの第1の透明フィルム22に貼設されるが、夫々の密着性が強く、かつ材質がPVAと比べガラス基板10の方が硬いため、延伸軸方向に収縮する力は延伸軸25、26の両端において第1の偏光フィルム21及び透明フィルム22に作用する応力となり、これらの応力はガラス基板10から離れる方向d3にかかり易い傾向にある。
【0024】
また第2の偏光フィルム23及び透明フィルム24も同様に高分子フィルムを引き伸ばし形成され、材質の異なる第2のガラス基板11と貼設されるため、延伸軸27,28の両端において第2の偏光フィルム23及び透明フィルム24に作用する応力はガラス基板11から離れる方向d4にかかり易い傾向にある。
【0025】
なお偏光板20A、20Bは同一材料から形成されるため、第1の偏光フィルム21及び透明フィルム22に第1のガラス基板10から離れる方向d3へかかる応力と、第2の偏光フィルム23及び透明フィルム24に第2のガラス基板11から離れる方向d4へかかる応力は略等しくなる。
【0026】
第1の偏光フィルム21、第1の透明フィルム22、第2の偏光フィルム23及び第2の透明フィルム24は、夫々の延伸軸25、26、27、28が交互に交差するよう、順に配置される。そのため、第1の偏光フィルム21、第1の透明フィルム22、第2の偏光フィルム23及び第2の透明フィルム24にかかる応力を打ち消すことができ、その結果、偏光板20A、20Bにかかるカールを抑制することができる。
【0027】
また、本実施の形態は第1及び第2の透明フィルム22、24が第1及び第2の偏光フィルム21、23よりも液晶層13に近い面に形成されているが、第1及び第2の偏光フィルム21、23を第1及び第2の透明フィルム22、24よりも液晶層13に近い面に形成したとしても、延伸軸25及び延伸軸26、並びに延伸軸27及び延伸軸28が夫々互いに交差していれば、第1の偏光フィルム21、第1の透明フィルム22、第2の偏光フィルム23及び第2の透明フィルム24にかかる応力を打ち消しあい、偏光板20A、20Bにかかるカールを抑制する同一の効果を奏する。
【0028】
さらに、本実施の形態では第1及び第2のガラス基板10、11の厚みが0.2mmのものについて説明したが、ガラス基板の厚みが0.4mm以下であると偏光板20A、20Bにカールが発生する傾向があり、厚みが薄くなるにつれ、その傾向は強まるので、本実施の形態による効果は大きい。
【0029】
なお、この発明は上記実施の形態のものに限定されるものではなく、ノーマリーホワイト90°のTNモード以外であっても、例えば偏光板の延伸軸方向が対角線上にあり、各偏光板の延伸軸がガラス基板を挟んで交差しているモードであれば同一の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置を示す平面図。
【図2】図1の液晶表示装置のA−A線に沿う断面図。
【図3】図2の破線部(ア)で示す部分の拡大断面図。
【図4】上記液晶表示装置を示す分解斜視図であり、特に、透明フィルム及び偏光フィルムにかかる応力を示した図。
【図5】従来の偏光板が熱処理によりカールした状態を表す斜視図。
【符号の説明】
【0031】
10…第1のガラス基板、11…第2のガラス基板、12…シール材、13…液晶層、20…偏光板、21…第1の偏光フィルム、22…第1の透明フィルム、23…第2の偏光フィルム、24…第2の透明フィルム、25…第1の偏光フィルムの延伸軸、26…第1の透明フィルムの延伸軸、27…第2の偏光フィルムの延伸軸、28…第2の透明フィルムの延伸軸、d1…第1の方向、d2…第2の方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板と液晶層を介して対向配置された第2のガラス基板と、
前記第1及び第2のガラス基板の液晶層とは反対側の面に貼設される第1及び第2の偏光板とを備える液晶表示装置であって、
前記第1の偏光板は、矩形状であり対角線上の第1の方向の延伸軸を有し偏向作用を持つ第1の偏光フィルムと、矩形状であり偏向作用を持たず対角線上の前記第1の方向に交差した第2の方向の延伸軸を有し前記第1の偏光フィルムとともに互いに貼設された第1の透明フィルムとを含み、
前記第2の偏光板は、矩形状であり対角線上の前記第2の方向の延伸軸を有し偏向作用を持つ第2の偏光フィルムと、矩形状であり偏向作用を持たず対角線上の前記第1の方向の延伸軸を有し前記第2の偏光フィルムとともに互いに貼設された第2の透明フィルムとを含んでいることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の偏光板は、前記第1及び第2の透明フィルム側が前記第1及び第2のガラス基板に夫々貼設されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−175434(P2009−175434A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13898(P2008−13898)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】