説明

液晶表示装置

【課題】残像の発生を低減することの可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】映像信号Din(n−1),Din(n)と、蒸着方向情報30Aとに基づいて、水平方向差分および垂直方向差分が算出される。算出された水平方向差分および垂直方向差分が所定の閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素11のうち所定の規定に基づいて選択した方の画素11の位置情報(A(n),A(n−1))が抽出される。位置情報A(n−1)から位置情報A(n)を減算して位置情報B1(n)が導出されたのち、位置情報B1(n)から、所定の閾値を超える画素11の位置情報B2(n)が算出される。映像信号Din(n)と、位置情報B2(n)と、重み付け情報30Bとに基づいて補正量C(n)が変えられる。映像信号Din(n)に、補正量C(n)が加算され、表示信号Dout(=Din(n)+C(n))が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正された映像信号を利用して映像を表示する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像を表するデバイスに用いられる表示素子として、半導体駆動素子基板と透明電極基板との間に配向膜を介して液晶層が設けられたアクティブ型の液晶表示素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。半導体駆動素子基板は、半導体基板に回路駆動用の駆動素子や画素電極などが設けられたものである。一方、透明電極基板は、透明基板に透明電極などが設けられたものである。配向膜は、液晶分子を所定の配向状態となるように配向させるためのものである。
【0003】
この液晶表示素子では、画素電極と透明電極との間に電圧が印加されると、それらの電極間の電位差に応じて液晶分子の配向状態が変化し、それに伴って液晶層の光学的特性が変化する。これにより、液晶層の光学的特性の変化を利用して光の変調を行うことができるので、この液晶表示素子を利用して映像を表示することができる。
【0004】
この液晶表示素子のうち、特に、垂直配向性を有する液晶(いわゆる垂直配向液晶) を利用したものは、コントラストが高く、かつ応答速度も速いので、表示性能を向上し得るものとして注目されている。この垂直配向液晶を利用した場合には、印加電圧がゼロのときに液晶分子が半導体駆動素子基板の基板面に対して垂直に配向するので、いわゆるノーマリーブラックモードと呼ばれる表示状態が得られる。一方、電圧が印加されると液晶分子が基板面に対して傾斜し、光の透過率が変化する。この場合には、特に、傾斜時に液晶分子の傾斜方向が一様でないと明暗のむらが生じるので、その明暗のむらが生じないようにするために、あらかじめ一定方向に僅かな角度(プレティルト角)だけ傾斜させた状態で液晶分子を配向させる必要がある。
【0005】
所望の配向状態となるように垂直配向液晶を配向させる方法としては、ポリイミドに代表される有機配向膜を使用する方法と、酸化ケイ素に代表される無機配向膜を使用する方法とがある。前者は、有機材料膜をラビングすることにより配向状態を制御するものであり、後者は、無機材料膜を斜方蒸着することにより配向状態を制御するものである。無機配向膜は、表示画像の高輝度化を実現し得るものとして注目されている。
【0006】
昨今では、表示画像の高輝度化を実現するために光源のパワーが上昇しており、配向膜が高強度の光に晒される傾向にある。そのため、プロジェクタの表示性能を長期に渡って確保する観点からは、低耐光性の有機配向膜よりも高耐光性の無機配向膜を使用するのが好ましい。無機配向膜を使用する場合には、酸化ケイ素を斜方蒸着する際に、その蒸着粒子の入射角度を変化させることによりプレティルト角を制御することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−301778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、表示画像の高輝度化だけでなく、高精細化も求められており、光源のパワーだけでなく、画素の開口率も大きくなる傾向にある。開口率を大きくするためには、画素内の遮光領域を小さくすることが必要となる。しかし、垂直配向液晶を用いた場合に、遮光領域をあまり小さくすると、画素間に発生する横方向電界に起因した配向乱れが表示領域内で生じ、動画の表示に際して残像が見えてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、残像の発生を低減することの可能な液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液晶表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素と、複数の画素をアクティブ駆動する駆動回路とを備えたものである。各画素は、画素電極、第1配向膜、液晶層、第2配向膜および対向電極を含む積層構造となっている。液晶層は、垂直配向性を有する液晶分子を含んでおり、第1配向膜および第2配向膜は、無機材料を斜方蒸着することにより形成された無機配向膜である。駆動回路は、第1算出部、第2算出部、第3算出部および第4算出部を有している。第1算出部は、まず、無機配向膜の蒸着方向を考慮して、互いに隣接する2つの画素の第1映像信号の差分をとることにより第1差分を算出するようになっている。第1算出部は、さらに、第1差分が所定の閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素のうち無機配向膜の蒸着方向に対応した方の画素の第1位置情報を抽出するようになっている。第2算出部は、まず、無機配向膜の蒸着方向を考慮して、互いに隣接する2つの画素の、第1映像信号よりも1フィールド前の第2映像信号の差分をとることにより第2差分を算出するようになっている。第2算出部は、さらに、第2差分が閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素のうち無機配向膜の蒸着方向に対応した方の画素の第2位置情報を抽出するようになっている。第3算出部は、第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第3位置情報を算出するようになっている。第4算出部は、第3位置情報に対応する画素の第1映像信号に所定の補正量を加算することにより第3映像信号を算出するようになっている。
【0011】
本発明の液晶表示装置では、第1映像信号および蒸着方向に基づいて第1位置情報が抽出されると共に、第2映像信号および蒸着方向に基づいて第2位置情報が抽出される。ここで、第1位置情報は、第1映像信号に基づいて映像を表示した際に、画素間に発生する横方向電界に起因した配向乱れが生じ得る画素の位置情報に対応する。一方、第2位置情報は、第2映像信号に基づいて映像を表示した際に、画素間に発生する横方向電界に起因した配向乱れが生じ得る画素の位置情報に対応する。そのため、第1位置情報と第2位置情報とに基づいて第3位置情報を算出することにより、動画の表示に際して残像として表示され得る画素の位置情報を算出することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶表示装置によれば、第1映像信号、第2映像信号および蒸着方向を利用して、動画の表示に際して残像として表示され得る画素の位置情報を算出し、その位置情報に対応する画素の第1映像信号に所定の補正量を加算するようにした。これにより、動画の表示に際して生じ得る残像の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態の液晶表示装置の概略構成図である。
【図2】図1の液晶表示パネルの断面構成図である。
【図3】図2の液晶層の拡大図である。
【図4】液晶分子のプレティルト角ついて説明するための模式図である。
【図5】図1の映像信号処理部を機能ブロックごとに分けて表した機能ブロック図である。
【図6】配向乱れが表示領域内で生じ得る画素の位置情報を導出する様子の一例を表した概念図である。
【図7】配向乱れが表示領域内で生じ得る画素の位置情報を導出する様子の他の例を表した概念図である。
【図8】配向乱れが動画の表示に際して残像として表示され得る画素の位置情報を導出する様子を表した概念図である。
【図9】配向乱れが動画の表示に際して残像として表示され得る画素に対応した映像信号の補正量を導出する様子を表した概念図である。
【図10】画素間に横方向電界が発生しているときの液晶分子の配向の様子を表した模式図である。
【図11】表示領域内に生じる表示乱れを表した模式図である。
【図12】動画の表示に際して残像が生じる様子を表した模式図である。
【図13】補正対象の画素の位置について説明するための概念図である。
【図14】一適用例に係る画像表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(液晶表示装置)
2.適用例(プロジェクタ)
3.変形例
【0015】
<実施の形態>
[概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置1の全体構成の一例を表したものである。この液晶表示装置1は、液晶表示パネル10と、バックライト20と、映像信号処理部30と、データドライバ40と、ゲートドライバ50と、タイミング制御部60とを備えたものである。なお、映像信号処理部30、データドライバ40、ゲートドライバ50、タイミング制御部60、および後述の画素回路が、本発明の「駆動回路」の一具体例に相当する。
【0016】
(液晶表示パネル10)
液晶表示パネル10は、複数の画素11が液晶表示パネル10の表示部(図示せず)全体に渡ってマトリクス状に形成されたものであり、各画素11をデータドライバ40およびゲートドライバ50によってアクティブ駆動することにより、外部から入力された映像信号Dinに基づく画像を表示するものである。上記の映像信号Dinは、1フィールドごとに表示部10に表示する映像のデジタル信号であり、画素11ごとのデジタル信号を含んでいる。
【0017】
図2は、液晶表示パネル10の一部の断面構成の一例を表したものである。液晶表示パネル10は、互いに対向する一対の基板の間に、配向膜を介して液晶層が設けられた積層構造となっている。具体的には、表示部10は、TFT(thin film transistor)基板12(半導体駆動素子基板)、画素電極13、配向膜14、液晶層15、配向膜16、対向電極17、ブラックマトリクス層18および対向基板19(透明電極基板)をこの順に有している。表示部10のうち、画素電極13に対応する部分(図中の破線で囲まれた部分)が画素11に相当する。つまり、各画素11が、画素電極13、配向膜14、液晶層15、配向膜16および対向電極17の積層構造となっている。
【0018】
TFT基板12は、例えば、基板上に、アクティブ型の画素回路を有するものである。画素回路は、例えば、画素11ごとに形成されたTFTおよび容量素子を含んで構成されており、各画素11をアクティブ駆動することが可能となっている。画素回路の形成された基板は、例えば、単結晶シリコン基板、または、可視光に対して透明な基板(例えば板ガラス)である。対向基板19は、可視光に対して透明な基板、例えば板ガラスからなる。
【0019】
画素電極13および対向電極17は、例えばITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)などの透明導電膜からなる。画素電極13は、例えば、TFT基板12上にマトリクス状に配列されたものであり、画素11ごとの電極として機能する。対向電極17は、対向基板19のうち画素11との対向領域全体に渡って形成されており、全ての画素11に対して共通に用いられる電極として機能する。
【0020】
配向膜14,16は、液晶層15に含まれる液晶分子15A(図3参照)を所定の配向状態となるように配向させるものである。配向膜14(第1配向膜)は、画素電極13を含むTFT基板12の表面を覆っており、配向膜16(第2配向膜)は、対向電極17の表面全体を覆っている。配向膜14,16は、酸化ケイ素などの無機材料によって形成された無機配向膜であり、無機材料を斜方蒸着することにより形成されたものである。斜方蒸着とは、ターゲットの面に対して斜め方向から蒸着粒子を供給することにより成膜する方法のことである。蒸着粒子の、ターゲットの面への入射角度を変化させることにより、液晶分子15Aのプレティルト角θ(後述)を制御することが可能である。
【0021】
液晶層15は、画素電極13および対向電極17に対する電圧印加に応じて配向状態を変化させることにより、当該液晶層15への入射光を変調するものである。液晶層15は、図3に示したように、形状異方性を有する液晶分子15Aを含んでいる。液晶分子15Aは、垂直配向性を有する液晶分子、すなわち、VA(Vertical Alignment)モードの液晶分子である。液晶分子15Aは、電界に対して垂直方向に配向する性質を有している。液晶分子15Aは、画素電極13および対向電極17への電圧印加によって、TFT基板12の表面に対して垂直な方向に電界が印加されたときに、TFT基板12の表面と平行な方向に向かって配向する性質を有している。液晶分子15Aは、印加電圧が0(ゼロ)の状態において、配向膜14,16の影響を受けて、TFT基板12の表面に対してほぼ垂直に配向する性質を有している。つまり、液晶層15は、いわゆるノーマリーブラックモードの液晶層である。
【0022】
液晶分子15Aは、厳密には、例えば、図3に示したように、印加電圧がゼロの状態において、配向膜14,16の影響を受けて、所定の方向に僅かな角度で傾いている。この僅かな傾き(プレティルト角θ)が、画素電極13および対向電極17への電圧印加によって、TFT基板12の表面に対して垂直な方向に電界が印加されたときに、液晶分子15Aが配向し易い方向を規定する。
【0023】
つまり、配向膜14は、例えば、図3に示したように、印加電圧がゼロの状態において、液晶表示パネル10の正面方向から見たときに、液晶分子15Aを面内の一の方向D1(第1方向)にプレティルト角θだけ傾かせる配向性を有している。配向膜16は、例えば、図3に示したように、印加電圧がゼロの状態において、液晶表示パネル10の正面方向から見たときに、第1方向D1とは真逆の方向D2にプレティルト角θだけ傾かせる配向性を有している。従って、液晶層15に含まれる液晶分子15Aは、例えば、図3に示したように、配向膜14の法線AXとの関係で第1方向D1にプレティルト角θだけ傾いている。
【0024】
なお、図4(A)に示したように、液晶分子15Aが、TFT基板12の表面と平行なXY平面において第1象限の方向に角度αで傾いている場合には、液晶分子15Aがプレティルト角θで傾いている方向D1も、第1象限の方向を向いている。このとき、方向D1が、配向膜14の蒸着方向に対応しており、正の水平方向成分と、正の垂直方向成分を有している。また、図4(B)に示したように、液晶分子15Aが、TFT基板12の表面と平行なXY平面において第3象限の方向に角度βで傾いている場合には、液晶分子15Aがプレティルト角θで傾いている方向D1も、第3象限の方向を向いている。このとき、方向D1が、配向膜14の蒸着方向に対応しており、負の水平方向成分と、負の垂直方向成分を有している。
【0025】
ブラックマトリクス層18は、例えば、遮光部18Aおよび光透過部18Bを有している。遮光部18Aは、画素電極13との対向部分に開口を有しており、その開口内に光透過部18Bが配置されている。これにより、ブラックマトリクス層18は、液晶層15を透過してきた光のうち画素電極13に対応する部分からの光を選択的に透過し、液晶層15を透過してきた光のうち画素電極13同士の間隙に対応する部分からの光を選択的に遮断する機能を有する。
【0026】
バックライト20は、液晶表示パネル10に対して光を照射する光源であり、例えばCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp:冷陰極蛍光ランプ)やLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)などを含んで構成されている。
【0027】
データドライバ40は、液晶表示パネル10の各画素11へ、タイミング制御部60から供給される1ライン分の映像信号に基づく駆動電圧を供給するものである。具体的には、このデータドライバ51は、1ライン分の映像信号に対してそれぞれD/A変換を施すことにより、アナログ信号である映像信号を生成し、各画素11へ出力するようになっている。
【0028】
ゲートドライバ50は、タイミング制御部60によるタイミング制御に従って、液晶表示パネル10内の各画素11を図示しない走査線に沿って線順次駆動するものである。
【0029】
映像信号処理部30は、外部から入力された映像信号Dinに対して所定の画像処理を施すと共に、所定の画像処理を施した後の映像信号Doutをタイミング制御部60に出力するものである。上記の映像信号Doutは、映像信号Dinと同様、画素11ごとのデジタル信号を含んでいる。
【0030】
次に、映像信号処理部30の内部構成について説明する。図5は、映像信号処理部30を機能ブロックごとに分けて記述したものである。映像信号処理部30は、例えば、図5に示したように、フィールドメモリ31、水平垂直差分検出回路32、フィールド間差分検出回路33、補正量算出回路34、遅延回路35および加算回路36を有している。
【0031】
フィールドメモリ31は、外部から入力された映像信号Dinを、次の映像信号Dinが外部から入力されるまでの間、保持するものである。従って、映像信号処理部30に、映像信号Dinとして入力順番nの映像信号Din(n)(第1映像信号)が入力された際には、水平垂直差分検出回路32は映像信号Dinとして入力順番n−1の映像信号Din(n−1)(第2映像信号)を保持している。ここで、nは、映像信号Dinの入力順番を意味する正数である。従って、映像信号Din(n−1)は、映像信号Din(n)との関係では、1フィールド前の映像信号Dinに相当する。
【0032】
水平垂直差分検出回路32は、画素11間に発生する横方向電界に起因した配向乱れが表示領域内で生じ得る画素11の位置情報を導出するものである。水平垂直差分検出回路32は、外部から入力された映像信号Din(n)から、配向乱れが生じ得る位置情報A(n)(第1位置情報)を導出するものである。また、水平垂直差分検出回路32は、フィールドメモリ31から読み出した映像信号Din(n−1)から、配向乱れが生じ得る画素11の位置情報A(n−1)(第2位置情報)を導出するものでもある。
【0033】
水平垂直差分検出回路32は、配向膜14,16の蒸着方向を考慮して、互いに隣接する2つの画素の映像信号Din(n)の差分を算出する。具体的には、水平垂直差分検出回路32は、まず、蒸着方向情報30Aが、方向D1が水平方向成分を有していることを示す情報である場合には、映像信号Din(n)から、水平方向に隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(水平方向差分, 第1差分)を算出する。また、水平垂直差分検出回路32は、蒸着方向情報30Aが、方向D1が垂直方向成分を有していることを示す情報である場合には、垂直方向に互いに隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(垂直方向差分, 第1差分)を算出する。次に、水平垂直差分検出回路32は、算出した差分(水平方向差分,垂直方向差分)が所定の閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素11のうち所定の規定に基づいて選択した方の画素11の位置情報を抽出する。この位置情報を含んだものが上述した位置情報A(n)に相当する。上記の所定の閾値は、例えば、白表示の映像信号から黒表示の映像信号を減算することにより得られる値である。
【0034】
同様にして、水平垂直差分検出回路32は、配向膜14,16の蒸着方向を考慮して、互いに隣接する2つの画素の映像信号Din(n−1)の差分を算出する。具体的には、水平垂直差分検出回路32は、まず、蒸着方向情報30Aが、方向D1が水平方向成分を有していることを示す情報である場合には、映像信号Din(n−1)から、水平方向に隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(水平方向差分, 第2差分)を算出する。また、水平垂直差分検出回路32は、蒸着方向情報30Aが、方向D1が垂直方向成分を有していることを示す情報である場合には、垂直方向に互いに隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(垂直方向差分, 第2差分)を算出する。次に、水平垂直差分検出回路32は、算出した差分(水平方向差分,垂直方向差分)が所定の閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素11のうち所定の規定に基づいて選択した方の画素11の位置情報を抽出する。この位置情報を含んだものが上述した位置情報A(n−1)に相当する。上記の所定の閾値は、例えば、白表示の映像信号から黒表示の映像信号を減算することにより得られる値である。
【0035】
ここで、水平方向差分は、水平垂直差分検出回路32に入力される蒸着方向情報30Aを考慮して導出される。具体的には、蒸着方向情報30Aが、方向D1が正の水平方向成分を有していることを示す情報である場合には、例えば、着目した一の画素11の映像信号Dinから、その画素11の左側の画素11の映像信号Dinを減算することにより水平方向差分が算出される。このとき、水平方向差分が所定の閾値以上となっている場合には、水平垂直差分検出回路32は、例えば、着目した一の画素11(つまり、その差分の算出元の2つの画素11のうち右側の画素11)の位置情報を抽出する。一方、蒸着方向情報30Aが、方向D1が負の水平方向成分を有していることを示す情報である場合には、例えば、着目した一の画素11の映像信号Dinから、その画素11の右側の画素11の映像信号Dinを減算することにより水平方向差分が算出される。このとき、水平方向差分が所定の閾値以上となっている場合には、水平垂直差分検出回路32は、例えば、着目した一の画素11(つまり、その差分の算出元の2つの画素11のうち左側の画素11)の位置情報を抽出する。
【0036】
垂直方向差分についても、水平垂直差分検出回路32に入力される蒸着方向情報30Aを考慮して導出される。具体的には、蒸着方向情報30Aが、方向D1が正の垂直方向成分を有していることを示す情報である場合には、例えば、着目した一の画素11の映像信号Dinから、その画素11の下側の画素11の映像信号Dinを減算することにより垂直方向差分が算出される。このとき、垂直方向差分が所定の閾値以上となっている場合には、水平垂直差分検出回路32は、例えば、着目した一の画素11(つまり、その差分の算出元の2つの画素11のうち上側の画素11)の位置情報を抽出する。一方、蒸着方向情報30Aが、方向D1が負の垂直方向成分を有していることを示す情報である場合には、例えば、着目した一の画素11の映像信号Dinから、その画素11の上側の画素11の映像信号Dinを減算することにより垂直方向差分が算出される。このとき、垂直方向差分が所定の閾値以上となっている場合には、水平垂直差分検出回路32は、例えば、着目した一の画素11(つまり、その差分の算出元の2つの画素11のうち上側の画素11)の位置情報を抽出する。
【0037】
以下に、蒸着方向情報30Aが、方向D1が正の水平方向成分および正の垂直方向成分を有していることを示す情報である場合の位置情報A(n),A(n−1)の具体的な内容について、図6、図7を参照して説明する。例えば、映像信号Din(n−1)が、図6に示したような明暗分布の映像信号Dinを含んでいるときには、位置情報A(n−1)は、映像信号Din(n−1)中の暗部37の上辺および右辺に接する画素11の位置に対応して、例えば1を有している。同様に、例えば、映像信号Din(n)が、図7に示したような明暗分布の映像信号Dinを含んでいるときには、位置情報A(n)は、映像信号Din(n)中の暗部37の上辺および右辺に接する画素11の位置に対応して、例えば1を有している。
【0038】
フィールド間差分検出回路33は、画素11間に発生する横方向電界に起因して発生した配向乱れが動画の表示に際して残像として表示され得る画素11の位置情報を導出するものである。フィールド間差分検出回路33は、位置情報A(n−1)から位置情報A(n)を減算して位置情報B1(n)を導出したのち、位置情報B1(n)から、所定の閾値を超える画素11の位置情報を算出して、動画の表示に際して残像として表示され得る位置情報B2(n)(第3位置情報)を導出する。
【0039】
以下に、蒸着方向情報30Aが、方向D1が正の水平方向成分および正の垂直方向成分を有していることを示す情報である場合の位置情報B2(n)の具体的な内容について、図8を参照して説明する。図8は、フィールド間差分検出回路33における演算を模式的に表したものである。位置情報A(n−1),A(n)が、図8に示したような情報を有しているときには、位置情報B1(n)は、位置情報A(n−1)に含まれる1の位置に対応して、1を有しており、位置情報A(n)に含まれる1の位置に対応して、−1を有している。なお、位置情報A(n−1)に含まれる1の位置と、位置情報A(n)に含まれる1の位置とが重複する箇所については、上述した差分処理によって0(ゼロ)となっている。また、位置情報B2(n)は、所定の閾値が0(ゼロ)と設定されていた場合には、位置情報B1(n)に含まれる1の位置に対応して、1を有している。位置情報B2(n)に含まれる1の位置は、図7の暗部37の上辺および右辺のいずれにも接していない画素11の位置に対応している。
【0040】
補正量算出回路34は、動画の表示に際して残像として表示され得る画素11に対応した映像信号Dinの補正量を変える(算出する)ものである。補正量算出回路34は、例えば、図9に示したように、映像信号Din(n)、位置情報B2(n)および重み付け情報30Bに基づいて、動画の表示に際して残像として表示され得る画素11への補正量C(n)を変える(算出する)。上記の重み付け情報30Bには、例えば、色情報、透過率特性および温度情報の少なくとも1つが含まれている。ここで、色情報とは、映像信号Din(n)のうち位置情報B2(n)に対応する画素11の映像信号Dinの色情報を指す。透過率特性とは、映像信号Din(n)のうち位置情報B2(n)に対応する画素11の透過率特性を指す。温度情報とは、液晶表示パネル1の温度(画素11の温度)についての情報である。
【0041】
遅延回路35は、補正量算出回路34において補正量C(n)が変えられる(算出される)までの間、映像信号Din(n)を保持するものである。また、遅延回路35は、補正量算出回路34から加算回路36に補正量C(n)が出力されるタイミングに合わせて、映像信号Din(n)を出力するものである。
【0042】
加算回路36は、遅延回路35から入力された映像信号Din(n)に、補正量算出回路34から入力された補正量C(n)を加算するものである。また、加算回路36は、加算により得られた映像信号(Din(n)+C(n))(第3映像信号)を表示信号Dout(n)として出力するものでもある。
【0043】
本実施の形態の液晶表示パネル1では、データドライバ40から供給される信号電圧と、ゲートドライバ50から供給される走査電圧とにより、マトリクス状に配置された複数の画素11がアクティブ駆動される。ここで、データドライバ40から供給される信号電圧は、映像信号Dinに対して所定の補正処理を行うことにより得られた映像信号Doutに基づいて設定されている。そのため、本実施の形態では、外部から入力された映像信号Dinを直接反映した画像ではなく、補正処理のなされた映像信号Doutを反映した画像が液晶表示パネル10に表示される。
【0044】
[補正手順]
次に、本実施の形態の液晶表示装置1における映像信号Dinの補正手順について説明する。本実施の形態では、映像信号処理部30において、画素間に発生する横方向電界に起因して発生した配向乱れが動画の表示に際して残像として表示され得る画素11に対応する映像信号Dinに対して補正がなされる。具体的には、以下の手順に従って映像信号Dinに補正がなされる。
【0045】
まず、水平垂直差分検出回路32において、差分(水平方向差分,垂直方向差分)が算出される。具体的には、入力順番nで映像信号Dinとして入力された映像信号Din(n)と、蒸着方向情報30Aとに基づいて、水平方向に隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(水平方向差分)が算出される。さらに、映像信号Din(n)と、蒸着方向情報30Aとに基づいて、垂直方向に互いに隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(垂直方向差分)が算出される。同様にして、入力順番n−1で映像信号Dinとして入力された映像信号Din(n−1)と、蒸着方向情報30Aとに基づいて、水平方向に隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(水平方向差分)が算出される。さらに、映像信号Din(n−1)と、蒸着方向情報30Aとに基づいて、垂直方向に隣接する2つの画素11の映像信号Dinの差分(垂直方向差分)が算出される。
【0046】
次に、水平垂直差分検出回路32において、算出された差分(水平方向差分,垂直方向差分)が所定の閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素11のうち所定の規定に基づいて選択した方の画素11の位置情報が抽出される。その結果、画素間に発生する横方向電界に起因した配向乱れが表示領域内で生じ得る画素11の位置情報(A(n),A(n−1))が導出される。
【0047】
次に、フィールド間差分検出回路33において、位置情報A(n−1)から位置情報A(n)を減算して位置情報B1(n)が導出されたのち、位置情報B1(n)から、所定の閾値を超える画素11の位置情報が算出される。その結果、動画の表示に際して残像として表示され得る画素11の位置情報B2(n)が導出される。その後、補正量算出回路34において、映像信号Din(n)と、位置情報B2(n)と、重み付け情報30Bとに基づいて、動画の表示に際して残像として表示され得る画素11への補正量C(n)が変えられる(算出される)。そして、加算回路36において、映像信号Din(n)に、補正量C(n)が加算される。その結果、表示信号Dout(=Din(n)+C(n))が生成される。
【0048】
[効果]
ところで、例えば、図10に示したように、幅D1の遮光領域72が表示領域71の間に形成されていた場合に、画素11の開口率を大きくするために、遮光領域72の幅を幅W1よりも狭いW2にしたとする。なお、図10では、説明の便宜上、ブラックマトリクス層18が省略されているが、遮光領域72に対応して遮光部18Aが形成されているものとする。このようにした場合に、例えば、図10に示したように、一の画素電極13に+5Vを印加し、それに隣接する画素電極13に0Vを印加し、対向電極17に0Vを印加したときには、画素11間に大きな横方向電界Eが生じる。これにより、従来では、例えば、図11に示したように、横方向電界Eに起因した配向乱れ73が、+5Vを印加した画素電極13に対応する画素11の表示領域40内で生じてしまう。そして、そのような配向乱れ73が生じた状態で、動画を表示した場合には、配向乱れ73が元の正常な状態に戻る過程で、液晶分子15Aの挙動が不定となる。その結果、例えば、図12に示したように、暗部37が左方向に移動するような動画が表示されている際に、1フィールド前に暗部37が存在していた箇所に隣接する画素11に残像74が見えてしまうという問題があった。なお、残像74の見える位置は、配向膜14,16の蒸着方向によって異なる。図12には、配向膜14,16が、液晶分子15Aを図4(A)に示したように第1象限の方向にプレティルト角θで傾かせる配向性を有しているときに見える残像70が模式的に表されている。
【0049】
一方、本実施の形態では、入力順番nの映像信号Din(n)および蒸着方向情報30Aに基づいて位置情報A(n)が抽出されると共に、入力順番n−1の映像信号Din(n−1)および蒸着方向情報30Aに基づいて位置情報A(n−1)が抽出される。ここで、位置情報A(n)は、映像信号Din(n)に基づいて映像を表示部10に表示した際に、画素11間に発生する横方向電界Eに起因した配向乱れ73が生じ得る画素11の位置情報に対応する。一方、位置情報A(n−1)は、映像信号Din(n−1)に基づいて映像を表示部10に表示した際に、画素11間に発生する横方向電界Eに起因した配向乱れ73が生じ得る画素11の位置情報に対応する。そのため、位置情報A(n−1)と位置情報A(n)とに基づいて算出した位置情報B2(n)は、動画の表示に際して残像として表示され得る画素11の位置情報に対応する。従って、位置情報B2(n)に対応する画素11の映像信号Din(n)に所定の補正量を加算することにより、動画の表示に際して生じ得る残像の発生を低減することができる。
【0050】
上述の補正は、例えば図13(A)に示したように、暗部37の上辺および右辺のいずれにも接していない画素11に対応する映像信号Dinに対してなされる。具体的には、例えば図13(B)に示したように、y4の行の映像信号21aのうち、暗部37のx座標(x2〜x4)とは異なるx座標x5、x6に対して、オーバードライブ電圧ΔVが補正量C1,C2として付加される。同様に、y2、y3の行の映像信号21aのうち、暗部37のx座標(x2〜x4)とは異なるx座標x7に対して、オーバードライブ電圧ΔVが補正量C3,C4として付加される。この補正のなされる位置は、従来から一般的に存在するオーバードライブ処理のなされる画素11の位置38(図13(A)参照)とは異なっている。従って、本実施の形態の補正処理は、従来からのオーバードライブ処理に影響を与える虞はなく、従来からのオーバードライブ処理とは独立して実施することが可能である。
【0051】
特に、オーバードライブ処理として、エッジ強調を行う際には、位置38の画素11と暗部37の画素11との間に極めて大きな横方向電界が生じる。その場合に、エッジ強調の効果を損なうことなく、大きな横方向電界に起因した残像が動画の表示に際して生じるのを低減することができる。
【0052】
<適用例>
次に、上記実施の形態の液晶表示パネル1の一適用例について説明する。本適用例にかかるプロジェクタは、上記実施の形態の液晶表示パネル1をライトバルブ(後述の空間光変調部130)として用いたものである。
【0053】
図14は、本適用例にかかるプロジェクタ100(画像表示装置)の概略構成の一例を表したものである。このプロジェクタ100は、例えば、図示しない情報処理装置の画面に表示されている画像をスクリーン200上に投影するものである。
【0054】
プロジェクタ100は、例えば、3板式の透過型プロジェクタであり、例えば、図14に示したように、発光部110、光路分岐部120、空間光変調部130、合成部140および投影部150を有している。なお、本適用例の発光部110、光路分岐部120、空間光変調部130、合成部140が本発明の「画像光生成部」の一具体例に相当する。
【0055】
発光部110は、空間光変調部130の被照射面を照射する光束を供給するものであり、例えば、白色光源のランプと、そのランプの背後に形成された反射鏡とを含んで構成されている。この発光部110は、必要に応じて、ランプの光111が通過する領域(光軸AX上)に、何らかの光学素子を有していてもよい。例えば、ランプの光軸AX上に、ランプからの光111のうち可視光以外の光を減光するフィルタと、空間光変調部130の被照射面上の照度分布を均一にするオプティカルインテグレータとをランプ側からこの順に設けることが可能である。
【0056】
光路分岐部120は、発光部110から出力された光111を波長帯の互いに異なる複数の色光に分離して、各色光を空間光変調部130の被照射面に導くものである。光路分岐部120は、例えば、図14に示したように、1つのクロスミラー121と、4つのミラー122を含んで構成されている。クロスミラー121は、発光部110から出力された光111を波長帯の互いに異なる複数の色光に分離する共に各色光の光路を分岐するものである。このクロスミラー121は、例えば、光軸AX上に配置されており、互いに異なる波長選択性を持つ2枚のミラーを互いに交差させて連結して構成されている。4つのミラー122は、クロスミラー121により光路分岐された色光(図14では赤色光111R,青色光111B)を反射するものであり、光軸AXとは異なる場所に配置されている。4つのミラー122のうち2つのミラー122は、クロスミラー121に含まれる一のミラーによって光軸AXと交差する一の方向に反射された光(図14では赤色光111R)を空間光変調部130R(後述)の被照射面に導くように配置されている。4つのミラー122のうち残りの2つのミラー122は、クロスミラー121に含まれる他のミラーによって光軸AXと交差する他の方向に反射された光(図14では青色光111B)を空間光変調部130B(後述)の被照射面に導くように配置されている。なお、発光部110から出力された光111のうちクロスミラー121を透過して光軸AX上を通過する光(図14では緑色光111G)は、光軸AX上に配置された空間光変調部130G(後述)の被照射面に入射するようになっている。
【0057】
空間光変調部130は、図示しない情報処理装置から入力された映像信号Dinに応じて、複数の色光を色光ごとに変調して色光ごとに変調光を生成するものである。この空間光変調部130は、例えば、赤色光111Rを変調する空間光変調部130Rと、緑色光111Gを変調する空間光変調部130Gと、青色光111Bを変調する空間光変調部130Bとを含んでいる。なお、空間光変調部130R、緑色光111Gおよび空間光変調部130Bが上記実施の形態の液晶表示パネル1によって構成されている。
【0058】
空間光変調部130Rは、例えば、透過型の液晶パネルであり、合成部140の一の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部130Rは、入射した赤色光111Rを映像信号Dinに基づいて変調して赤画像光112Rを生成し、この赤画像光112Rを空間光変調部130Rの背後にある合成部140の一の面に出力するようになっている。空間光変調部130Gは、例えば、透過型の液晶パネルであり、合成部140の他の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部130Gは、入射した緑色光111Gを映像信号Dinに基づいて変調して緑画像光112Gを生成し、この緑画像光112Gを空間光変調部130Rの背後にある合成部140の他の面に出力するようになっている。空間光変調部130Bは、例えば、透過型の液晶パネルであり、合成部140のその他の面との対向領域に配置されている。この空間光変調部130Bは、入射した青色光111Bを映像信号Dinに基づいて変調して青画像光112Bを生成し、この青画像光112Bを空間光変調部130Rの背後にある合成部140のその他の面に出力するようになっている。
【0059】
合成部140は、複数の変調光を合成して画像光を生成するものである。この合成部140は、例えば、光軸AX上に配置されており、例えば、4つのプリズムを接合して構成されたクロスプリズムである。これらのプリズムの接合面には、例えば、多層干渉膜等により、互いに異なる波長選択性を持つ2つの選択反射面が形成されている。一の選択反射面は、例えば、空間光変調部130Rから出力された赤画像光112Rを光軸AXと平行な方向に反射して投射部150の方向に導くようになっている。また、他の選択反射面は、例えば、空間光変調部130Bから出力された青画像光112Bを光軸AXと平行な方向に反射して投射部150の方向に導くようになっている。また、空間光変調部130Gから出力された緑画像光112Gは、2つの選択反射面を透過して、投射部150の方向に進むようになっている。結局、合成部140は、空間光変調部130R,130G,130Bによってそれぞれ生成された画像光を合成して画像光113を生成し、生成した画像光113を投射部150に出力するように機能する。
【0060】
投影部150は、合成部140から出力された画像光113をスクリーン200上に投影して画像を表示させるものである。この投影部150は、例えば、光軸AX上に配置されており、例えば、投影レンズによって構成されている。
【0061】
本適用例では、空間光変調部130R、緑色光111Gおよび空間光変調部130Bとして、上記実施の形態の液晶表示パネル1が用いられている。これにより、画素11間に発生する横方向電界に起因して発生した配向乱れが動画の表示に際して残像として表示され得る画素11に対応する映像信号Dinに対して補正がなされる。その結果、画素11間に発生する横方向電界に起因した残像が動画の表示に際して生じるのを低減することができる。
【0062】
また、本適用例では、上記実施の形態で述べたように、残像の補正が暗部37に接していない画素11に対応する映像信号Dinに対してなされる。従って、本適用例の補正処理は、従来からのオーバードライブ処理に影響を与える虞はなく、従来からのオーバードライブ処理とは独立して実施することが可能である。その結果、例えば、本適用例の補正処理と併せて、エッジ強調を行うことが可能となるので、大きな横方向電界に起因した残像が動画の表示に際して生じるのを低減しつつ、動画をシャープに表示することができる。
【0063】
以上、実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されず、種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、上記実施の形態等では、暗部37の表示位置が変化するのに伴って、暗部37に隣接する、明るい画素11に生じる残像を低減する手段として本発明を適用した場合について記載されていた。しかし、暗部の中を明部が移動する場合に、明部の中(明部の外縁)に生じる残像を低減する手段として本発明を適用することはもちろん可能である。
【0065】
また、上記実施の形態等では、方向D1が正の水平方向成分を有している場合に、着目した一の画素11の映像信号Dinから、その画素11の左側の画素11の映像信号Dinを減算することにより水平方向差分を算出することが例示されていた。しかし、蒸着方法によっては、着目した一の画素11の映像信号Dinから、その画素11の右側の画素11の映像信号Dinを減算することにより水平方向差分を算出する方が好ましい場合がある。従って、蒸着方法に応じて、差分のとり方を規定することが好ましい。なお、上記の場合に、水平方向差分が所定の閾値以上となっているときには、例えば、着目した一の画素11(つまり、その差分の算出元の2つの画素11のうち左側の画素11)の位置情報を抽出することになる。
【0066】
また、上記適用例では、液晶表示パネル10が透過型の液晶パネルとなっていたが、反射型の液晶表示パネルとなっていてもよい。ただし、その場合には、液晶表示パネル10の配置が上述の位置とは異なる。
【0067】
また、上記適用例では、液晶表示装置をプロジェクタに適用する場合について記載されていたが、他の表示デバイスに適用することはもちろん可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…液晶表示装置、10…液晶表示パネル、11…画素、12…TFT基板、13…画素電極、14,16配向膜、15…液晶層、15A…液晶分子、17…対向電極、18…ブラックマトリクス層、18A…遮光部、18B…光透過部、20…バックライト、Din…映像信号、21…タイミング制御回路、21a,21b,21c…制御信号、21A…表示信号生成回路、21B…表示信号保持制御回路、22…水平駆動回路、23…書き込み走査回路、30…映像信号処理部、30A…蒸着方向情報、30B…重み付け情報、31…フィールドメモリ、32…水平垂直差分検出回路、33…フィールド間差分検出回路、34…補正量算出回路、35…遅延回路、36…加算回路、37…蒸着方向情報、38…位置、40…データドライバ、50…ゲートドライバ、60…タイミング制御部、71…表示領域、72…遮光領域、73…配向乱れ、74…残像、100…プロジェクタ、200…スクリーン、110…発光部、111…光、111R…赤色光、111G…緑色光、111B…青色光、112R…赤色画像光、112G…緑色画像光、112B…青色画像光、113…画像光、120…光路分岐部、121…クロスミラー、122…ミラー、130,130R,130G,130B…空間光変調部、140…合成部、150…投影部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素と、
前記複数の画素をアクティブ駆動する駆動回路と
を備え、
前記各画素は、画素電極、第1配向膜、液晶層、第2配向膜および対向電極を含む積層構造となっており、
前記液晶層は、垂直配向性を有する液晶分子を含み、
前記第1配向膜および前記第2配向膜は、無機材料を斜方蒸着することにより形成された無機配向膜であり、
前記駆動回路は、
前記無機配向膜の蒸着方向を考慮して、互いに隣接する2つの画素の第1映像信号の差分をとることにより第1差分を算出したのち、前記第1差分が所定の閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素のうち前記無機配向膜の蒸着方向に対応した方の画素の第1位置情報を抽出する第1算出部と、
前記無機配向膜の蒸着方向を考慮して、互いに隣接する2つの画素の、前記第1映像信号よりも1フィールド前の第2映像信号の差分をとることにより第2差分を算出したのち、前記第2差分が閾値以上となっている場合に、その差分の算出元の2つの画素のうち前記無機配向膜の蒸着方向に対応した方の画素の第2位置情報を抽出する第2算出部と、
前記第1位置情報と前記第2位置情報とに基づいて第3位置情報を算出する第3算出部と、
前記第3位置情報に対応する画素の前記第1映像信号に所定の補正量を加算することにより第3映像信号を算出する第4算出部と
を有する液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1配向膜は、前記画素電極および前記対向電極に電圧が印加されていない場合に、当該液晶表示装置の正面方向から見たときに、前記液晶分子を面内の第1方向に傾かせる配向性を有し、
前記第2配向膜は、前記画素電極および前記対向電極に電圧が印加されていない場合に、当該液晶表示装置の正面方向から見たときに、前記液晶分子を前記第1方向とは真逆の方向に傾かせる配向性を有する
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1方向が水平方向成分を有する場合には、前記第1算出部は、水平方向に隣接する2つの画素の第1映像信号の差分をとることにより前記第1差分を算出すると共に、前記第2算出部は、水平方向に隣接する2つの画素の第2映像信号の差分をとることにより前記第2差分を算出する
請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1方向が垂直方向成分を有する場合には、前記第1算出部は、垂直方向に隣接する2つの画素の第1映像信号の差分をとることにより前記第1差分を算出すると共に、前記第2算出部は、垂直方向に隣接する2つの画素の第2映像信号の差分をとることにより前記第2差分を算出する
請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第4算出部は、前記第2映像信号に基づいて前記補正量を変える
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第4算出部は、前記第2映像信号のうち前記第3位置情報に対応する画素の色情報に基づいて前記補正量を変える
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第4算出部は、前記画素の温度情報に基づいて前記補正量を変える
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−191157(P2010−191157A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35062(P2009−35062)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】