説明

液晶表示装置

【課題】ピーク波長が380nm〜420nmの範囲のLEDを使用した透過率が高く、しかも、発光効率の高い発光型の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の液晶表示装置10は、液晶層21が挟持された一対の基板と、一対の基板13、14の一方側の背面に配置されたバックライト装置12と、一対の基板13、14の他方側に形成された偏光板23、26とを備え、バックライト装置12としてピーク波長380nm〜420nmの範囲の光を発する発光ダイオードを備え、一対の基板13、14の他方側に形成された偏光板26の液晶層21と反対側には、単位ピクセル毎に、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して所定の色の光33を発する蛍光体層29を備えるサブピクセルを備え、蛍光体層29の液晶層21とは反対側の面には波長420nm以下の波長の光を反射又は吸収するフィルター層30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光型の液晶表示装置に関し、特にピーク波長が380nm〜420nmの範囲の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)をバックライト光源として用い、このバックライト光源からの入射光を液晶層にて光変調して各色の蛍光体膜に照射させ、これらの蛍光体膜の発光を利用して各種表示を行う、発光効率の高い自発光型の液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示装置は、非発光型表示装置であって、冷陰極管や白色LED等を光源とするバックライト装置からの入射光を液晶層にてサブピクセルごとに光変調し、単位ピクセル(1ピクセル)を構成する各サブピクセルに対応して設けられたR(赤色)、G(緑色)及びB(青色)の各カラーフィルター層を透過させて各種表示を行っている。このうち、白色LED光源を用いたバックライト装置は、冷陰極管に比べ長寿命であることや光のロスが少ないことから、特に中小型の液晶表示装置に多く用いられるようになっている。この白色LED光源では、一般的には青色LEDと、黄色蛍光体又は黄色+赤色蛍光体を組み合わせることによって得た白色光が利用されている。
【0003】
このような白色LED光源は、青色+黄色蛍光体等にて白色を実現しているが、白色LED光源内の発熱による蛍光体の発光効率の低下(いわゆる温度消光)による光損失も多い。また、R、G及びBのカラーフィルター層は、バックライト装置から入射される白色光をこのカラーフィルター層の通過時に赤色、緑色及び青色に分離し、白色光の略1/3の強度で特定の波長の光のみを通過させ、その他の波長の光はカットされる。そのため、従来の液晶表示装置は光源の利用率が低く、液晶表示装置全体での光利用効率は非常に低い。
【0004】
一方、下記特許文献1には、バックライト装置として紫外光源を用い、この紫外光源を励起光として、ブラウン管の場合と同様に、赤色、緑色及び青色の各色の蛍光体層を発光させる形式の液晶表示装置の発明が開示されている。また、下記特許文献2には、バックライト装置として青色LEDを用い、この青色LEDからの青色光を利用して赤色及び緑色の蛍光体層を発光させて赤色及び緑色の光を得ると共に、青色LEDからの青色光をそのまま透過させて青色の光を得る形式の液晶表示装置の発明が開示されている。更に、下記特許文献3には、バックライト装置として青色LEDを用い、この青色LEDからの青色光を利用して赤色及び緑色の蛍光体層を発光させて赤色及び緑色の光を得ると共に青色光ルミネセンスND層を利用して青色の光を得る形式の液晶表示装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−036158号公報
【特許文献2】特開2003−005182号公報
【特許文献3】特開2006−301632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されているような紫外光を励起光源とし、液晶層にて光変調を行うことにより蛍光体層を利用してR、G及びBの光を得る形式の液晶表示装置は、光の利用効率が高く、高輝度であり、また、従来の液晶表示装置に見られるような視野角特性は基本的に存在しないという利点を有している。しかしながら、励起光として紫外線を用いて蛍光体を発光させる形式の液晶表示装置は、蛍光体層の発光効率が高くなる等の利点はあるものの、課題も多く、未だに実用化には至っていない。
【0007】
すなわち、紫外光は、可視領域の光に比べて液晶表示装置の各種構成部材の透過率が低いため、光の利用効率が低くなり、しかも、各種構成部材において紫外光の吸収が生じて各種構成部材の劣化が進行するため、各種構成部材の信頼性が低下するという課題がある。また、紫外光は、漏れ光の人体に及ぼす影響が懸念されるため、紫外線波長のカットフィルターが必要となり、更に、紫外光を得るための光源として特殊な高圧水銀ランプ、ブラックライト等を用いる必要があるため、製造費用が高額となってしまうという課題もある。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されている液晶表示装置では、青色LEDを励起光源として用いることによって赤色及び緑色を発光させ、青色については青色LEDからの青色をそのまま利用して青色光を得ている。その場合、青色のサブピクセルは、青色LEDからの光を液晶層で光変調し、そのまま視認することになるので、青色のサブピクセルのみ視野角特性が異なるようになる。そのため、上記特許文献3に開示された液晶表示装置では、上記特許文献2に開示されている液晶表示装置の青色のサブピクセルに青色光ルミネセンスND層を用いて視野角特性を補正しているが、透過率が低下すると共に視野角特性を完全に補正することは難しい。
【0009】
本発明者らは、上記のような従来技術の問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、ピーク波長が380nm〜420nm程度のLEDをバックライト光源として用いると、上記特許文献1〜3に開示されている液晶表示装置の問題点を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。なお、ピーク波長が380nm〜420nm程度のLEDは既に公知のものであり、特にピーク波長が405nmのLEDはブルーレイDVD用途に広く用いられている。すなわち、本発明は、紫外光源や青色LEDを使用することなく、液晶表示装置の各構成部材の劣化を抑制でき、透過率が高く、しかも、発光効率の高い発光型の液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、液晶層が挟持された第1基板及び第2基板と、前記第1基板の背面に順次配置された第1の偏光板及びバックライト光源と、前記第2基板に形成された第2の偏光板と、を備えた液晶表示装置において、前記バックライト光源としてピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を発する発光ダイオードを備え、前記第2の偏光板の前記液晶層と反対側には、単位ピクセル毎に、前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して所定の色の光を発する蛍光体層を備え、前記蛍光体層の前記液晶層とは反対側には波長420nm以下の波長の光を反射又は吸収するフィルター層が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の液晶表示装置では、バックライト装置の光源としてピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を発するLEDを用い、所定の色の光を発する蛍光体を励起し、所定の色を発光させている。通常の液晶表示装置に使用されている各種透明部材は、380nmよりも短い近紫外光ないし紫外光は吸収され易く、それ以外の可視光のような光は透過しやすい。本発明の励起光であるピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光は可視光領域であるので、液晶表示装置の各種透明部材による励起光の吸収を抑制することができるために明るい液晶表示装置が得られるようになり、しかも、励起光を上記のような近紫外光ないし紫外光とした場合に生じるような各種構成部材に対するダメージを低減することができる。
【0012】
また、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を発するLEDは、単一波長の光源であって、青色LEDと黄色蛍光体を用いた白色LED等のように発光源と蛍光体とが接していないから、蛍光体層が高温になることが抑制される。そのため、本発明の液晶表示装置では、温度消光が少ないために明るい液晶表示装置が得られるようになる。更に、本発明の液晶表示装置では、所定の色のカラー表示のために蛍光体層を用いているので、光損失が大きいカラーフィルター層を必要とせず、しかも、蛍光体層は所定の色に対する色変換効率がよいため、液晶表示装置全体としての光源からの光の利用効率もよくなる。また、本発明の液晶表示装置では、光源の波長は単一であるから、光源の波長に対し、光変調液晶素子の各サブピクセルにおける透過率を最大に調整することが容易であり、容易に明るい発光型の液晶表示装置となし得る。
【0013】
また、本発明の液晶表示装置では、波長420nm以下の波長の光を反射又は吸収するフィルター層が設けられているため、バックライト光源であるLEDからのピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光が液晶表示装置の外部に出て来ることが抑制され、しかも、外来光によって蛍光体層が発色することが抑制されるので、色純度が良好な発光型の液晶表示装置が得られる。このフィルター層として特に波長420nm以下の波長の光を反射するものを使用すると、バックライト光源からの入射光のうち蛍光体の励起に使用されずに蛍光体層を通過してきた成分はこのフィルター層によって反射されて再度蛍光体層に入射するから、フィルター層の発光効率が向上する。
【0014】
なお、本発明の液晶表示装置に使用し得る所定の色の蛍光体としては、周知のものを適宜選択して使用し得る。これらの蛍光体を含む層は、蛍光体粉末をエポキシ樹脂やシリコーン樹脂に混合して薄膜形成することにより、蛍光体粉末を熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等に混合することにより、フォトレジストに分散させてフォトリソグラフィー法により、スクリーン印刷、インクジェット印刷ないしスプレイ塗布法等により、更にはCRTの蛍光体層形成方法と同様の方法により、形成することができる。
【0015】
また、フィルター層は、バックライト光源からのピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光をカットすると共に外光に含まれる励起波長の光をカットしてコントラストの低下を抑制し、色純度を向上させるものであり、周知の近紫外光及び紫外光を吸収する化学的遮断剤又は反射及び分散させる物理的遮断剤を混入した樹脂層を利用でき、或いは、紫外線カットフィルター用の材料から光吸収特性を考慮の上で適宜選択して使用し得る。
【0016】
なお、本発明の液晶表示装置における液晶層の駆動モードとしては、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(電界効果複屈折:Electrically Controlled Birefringence)モード、VA(Vertical Alignment)モードあるいはMVA(Multi-domain Vertical Alignment)モードで駆動するいわゆる縦電界方式のものや、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード等の横電界方式のもの等、従来から液晶表示装置で普通に採用されているものをそのまま使用することができる。また、本発明の液晶表示装置における液晶層の駆動方法としては、従来の液晶表示装置で採用されている単純マトリクス型のものもアクティブマトリクス型のものも全て使用することができる。更に、本発明の液晶表示装置で使用し得る偏光板としては、液晶表示装置の駆動モードに合わせて、普通に使用されている偏光板をそのまま使用することができるが、市販の偏光板には紫外線カット機能が付与されているものが多いので、少なくとも380nm〜420nmの範囲の光を透過させるものを選択して使用するとよい。
【0017】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記蛍光体層は、前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収してそれぞれ異なる色の光を発する複数種の蛍光体を含んでいるものとすることができる。
【0018】
蛍光体層が複数種の蛍光体を含んでいるものとすると、任意の色の光を発することができる液晶表示装置が得られる。例えば、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して、青色光及び黄色光を発する2種の蛍光体を含んでいる場合には擬似的に白色光を得ることができ、また、赤色光、緑色光及び青色光の発する3種の蛍光体を含んでいる場合にも同様に白色光を得ることができる。更には、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して任意の色の光を発する複数種の蛍光体を用いることにより、所望の任意の色の光を発することができる液晶表示装置が得られる。そのため、本発明の液晶表示装置によれば、色の表現特性が優れた発光型の液晶表示装置が得られる。
【0019】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記単位ピクセルは前記単位ピクセル毎に少なくとも1つのサブピクセルを有し、前記サブピクセル毎に前記蛍光体層が備えられているものとすることができる。
【0020】
本発明の液晶表示装置においては、単位ピクセル(「1ピクセル」、「単位画素」とも称される)毎に少なくとも1つのサブピクセル(「サブ画素」とも称される)、すなわち、1つないし複数のサブピクセルを含んでいる。これらのサブピクセルのそれぞれには、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して所定の色の光を発する蛍光体層が備えられているため、単位ピクセル毎に1色のみないし複数色の発光が可能となるので、色の表現特性が優れた発光型の液晶表示装置が得られる。
【0021】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記単位ピクセルは、前記単位ピクセル毎にそれぞれ異なる色の光を発する複数のサブピクセルを含んでいるものとすることができる。
【0022】
本発明の液晶表示装置によれば、単位ピクセルに形成されるサブピクセルの蛍光体層の色の組み合わせを替えることで様々な色が表現できる液晶表示装置を提供することができるようになる。
【0023】
また、本発明の液晶表示装置では、前記複数のサブピクセルは、赤色光を発する赤色蛍光体層を備える赤色サブピクセルと、緑色光を発する緑色蛍光体層を備える緑色サブピクセルと、青色光を発する青色蛍光体層を備える青色サブピクセルとを備えているものとすることが好ましい。
【0024】
赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)は光の3原色であるから、これらの光の混色により様々な色を表現することができる。しかも,本発明の液晶表示装置における光源の波長は単一であるから、液晶表示装置の透過率を最大に調整することができるので、容易に輝度が高く様々な色が表現できる液晶表示装置を提供することができるようになる。
【0025】
また、本発明の液晶表示装置では、青色のサブピクセルはピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して青色の光を発する蛍光体を用いているので、上記特許文献2に開示されている液晶表示装置のようなバックライト光源として青色LEDを用いた場合とは異なり、青色のサブピクセルの視角特性が赤色及び緑色のサブピクセルの視覚特性と同様になるので、視角が変化しても色ずれが生じることが少なくなる。
【0026】
なお、本発明の液晶表示装置に使用し得る各色の蛍光体としては、周知のものを適宜選択して使用し得るが、赤色蛍光体としてはEu付活硫化物系赤色蛍光体、緑色蛍光体としてはEu付活硫化物系緑色蛍光体、青色蛍光体には、Eu付活リン酸塩系青色蛍光体が好ましい。これらの蛍光体を含む層は、蛍光体粉末をエポキシ樹脂やシリコーン樹脂に混合して薄膜形成することにより、蛍光体粉末を熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等に混合することにより、フォトレジストに分散させてフォトリソグラフィー法により、スクリーン印刷、インクジェット印刷ないしスプレイ塗布法等により、更にはCRTの蛍光体層形成方法と同様の方法により、形成することができる。
【0027】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記複複数のサブピクセルは、それぞれのサブピクセルの平面視の面積が各サブピクセルから発せられる光を合成して所望の色が得られるように調整されていることが好ましい。
【0028】
本発明の液晶表示装置によれば、特に液晶層の駆動信号をそれぞれの色に対応して変更しなくても、所望の白色光ないし任意の色の光を得ることができ、更に中間階調表示の際の色ずれも少ない良好な表示特性を得ることができるようになる。
【0029】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記サブピクセルの平面視の周囲は遮光部材で遮光されていることが好ましい。
【0030】
本発明の液晶表示装置によれば、各蛍光体層の間に遮光層が形成されているため、それぞれ隣り合う蛍光体層が発光したときに混色が生じることが抑制されるので、色純度が向上し、良好な表示画質の液晶表示装置が得られる。
【0031】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層とは反対側の面に形成されており、前記蛍光体層及びフィルター層は前記第2の偏光板の表面に形成されていることが好ましい。
【0032】
本発明の液晶表示装置によれば、第2の偏光板、蛍光体層及びフィルター層を、液晶表示装置の製造時に第2基板の液晶層とは反対側の面に順次形成することができるため、製造効率が向上する。
【0033】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層とは反対側の面に形成され、透明基板の一方側の面に前記蛍光体層が形成されていると共に前記透明基板の他方側の面には前記フィルター層が形成された第3基板を備え、前記第3基板は、前記蛍光体層が前記第2の偏光板と対向するように、前記第2基板の前記液晶層とは反対側に配置されているものとすることができる。
【0034】
従来の液晶表示装置の製造工程には、第2の偏光板を第2基板の液晶層とは反対側の面に形成する工程が存在する。本発明の液晶表示装置によれば、別途透明基板の一方側の面に蛍光体層が形成され、この透明基板の他方側の面にフィルター層が形成された第3基板を用意しておくことにより、従来の液晶表示装置の製造工程に引き続いて第3基板を第2基板の第2の偏光板側に配置することにより製造することができるため、製造効率が向上する。
【0035】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記第2の偏光板、蛍光体層及びフィルター層は、前記第2基板の前記液晶層側に形成されているものとすることができる。
【0036】
偏光板、蛍光体層及びフィルター層が全て第2基板の液晶層側に形成されていると、これらの構成要素が外部に露出することがなくなる。そのため、本発明の液晶表示装置によれば、使用時に偏光板、蛍光体層及びフィルター層にキズがつき難いので、安定した表示画質の液晶表示装置が得られる。加えて、本発明の液晶表示装置によれば、液晶層を透過したバックライト光源からの光は直ちに偏光板を経て所定の色を発光する蛍光体層又は赤色蛍光体層、緑色蛍光体層ないし青色蛍光体層に入射するため、混色が少なく、表示画質が良好な液晶表示装置が得られる。
【0037】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層側に形成されており、前記蛍光体層及びフィルター層は、前記第2基板の前記液晶層とは反対側に形成されているものとすることができる。更に、本発明の液晶表示装置においては、前記蛍光体層及び前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層側に形成されており、前記フィルター層は前記第2基板の前記液晶層とは反対側に形成されているものとすることができる。
【0038】
本発明の液晶表示装置によれば、偏光板、蛍光体層及びフィルター層の配置を第2基板に対して様々に変更することができるため、本発明の液晶表示装置の設計の自由度が増加する。
【0039】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記第2基板の前記液晶層とは反対側の最外表面には反射防止膜が形成されていることが好ましい。
【0040】
第2基板の前記液晶層とは反対側の最外表面には反射防止膜が形成されていると、液晶表示装置の表示面に外景の移り込みが少なくなるので、表示面が視認し易くなる。
【0041】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記フィルター層は波長430nm以下の光を反射するものであり、前記第2の偏光板と前記蛍光体層との間に前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を透過させるがその他の波長の光を反射するバンドパスフィルターが備えられていることが好ましい。
【0042】
本発明の液晶表示装置においては、第2の偏光板と蛍光体層との間に、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を透過させるがその他の波長の光を反射するバンドパスフィルター層が備えられている。このバンドパスフィルター層は、バックライトからのピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光は透過することができ、可視光領域の光を反射することができる。また、蛍光体層において発光された光は等方的に放射される。そのため、本発明の液晶表示装置によれば、蛍光体層で発光した可視光のうち、バックライト側へ向かう光をバンドパスフィルター層で反射させることができるので、このバックライト側へ向かった光も表示用に利用できるため、より効率よく発光できる液晶表示装置を提供することができる。加えて、本発明の液晶表示装置では、蛍光体層の液晶層とは反対側に、波長420nm以下の波長の光を反射するフィルター層が用いられているため、バックライト光源からの入射光のうち蛍光体の励起に使用されずに蛍光体層を通過してきた成分はこのフィルター層によって反射されて再度蛍光体層に入射するから、フィルター層の発光効率が向上する。
【0043】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記蛍光体層は、前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光が前記蛍光体層に入射する光量を100%としたとき、前記蛍光体層の前記波長が380nm〜420nmの範囲の光の透過率が0.1%〜10%の範囲であることが好ましい。
【0044】
蛍光体層中の蛍光体濃度が低濃度であり、かつ、薄膜の場合は、発光量は少なく、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光が透過する割合が多くなる。そのため、蛍光体層を透過する光中にはピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光が多くなるので、フィルター層からの反射光による蛍光体層の発光効果は高くなる。一方、蛍光体層中の蛍光体濃度が高濃度であり、かつ、厚膜の場合は、蛍光体層による発光効率は高いが、蛍光体層内での散乱もあり、蛍光体層の下層部分での発光光が蛍光体層を透過し難くなるため、フィルター層での反射光による発光効果は低くなる。また、蛍光体層中の蛍光体濃度が低濃度であり、かつ、薄膜の場合は、安価に蛍光体層を形成することができるようになり、しかも、蛍光体を樹脂等の中に混合して蛍光体層を作成する場合には印刷法等によって容易に製造することができるようになる。しかしながら、最適な蛍光体層中の蛍光体濃度との関係は一義的には定められない。
【0045】
そこで、本発明の液晶表示装置では、蛍光体層は、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光が蛍光体層に入射する光量を100%としたとき、蛍光体層の波長が380nm〜420nmの範囲の光の透過率が0.1%〜10%の範囲となるようにしている。最適な蛍光体層の波長が380nm〜420nmの範囲の光の透過率は、蛍光体の種類、粒径、濃度、膜厚等によって変化するが、上記光の透過率を0.1%〜10%の範囲とすると、蛍光体材料が緑色用のものであっても、赤色用のものであっても、更には青色用のものであっても、最適な条件における正面輝度を100%とした場合、80%以上の正面輝度を確保することができる。そのため、本発明の液晶表示装置によれば、蛍光体層からの発光量が多くなり、明るい表示が可能な液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1Aは実施例1〜10に共通する液晶表示装置の平面図であり、図1Bは図1AのIB−IB線での断面図である。
【図2】図2Aは実施例1にかかる液晶表示装置における単位ピクセル分の第2基板の平面図であり、図2Bは第1基板をも含む図2AのIIB−IIB線での断面図である。
【図3】実施例1にかかる液晶表示装置の発光原理を示す断面図である。
【図4】実施例2にかかる液晶表示装置の単位ピクセル分の第2基板の平面図である。
【図5】第1基板をも含む図4のV−V線での断面図である。
【図6】実施例2にかかる液晶表示装置の発光原理を示す断面図である。
【図7】実施例3にかかる液晶表示装置の図5に対応する断面図である。
【図8】実施例4にかかる液晶表示装置の図5に対応する断面図である。
【図9】実施例5にかかる液晶表示装置の図5に対応する断面図である。
【図10】実施例6にかかる液晶表示装置の図5に対応する断面図である。
【図11】図11Aは実施例2〜6に共通する変形例の液晶表示装置における単位ピクセル分の第2基板の平面図であり、図11Bは他の変形例の第2基板の平面図である。
【図12】実施例7にかかる液晶表示装置の図5に対応する断面図である。
【図13】実施例7におけるバンドパスフィルター層を用いたことによる作用効果を説明する概略図である。
【図14】図14Aは蛍光体層内での発光状態を示す概略図であり、図14Bはバンドパスフィルター層のみを用いた場合の蛍光体層内での発光状態を示す概略図であり、図14Cはバンドパスフィルター層とフィルター層の両方を用いた場合の蛍光体層内での発光状態を示す概略図である。
【図15】図15A〜図15Cは各濃度の基本蛍光体膜の枚数を変化させた場合の輝度の変化を示す図であり、図15D〜図15Fは各濃度の基本蛍光体膜の枚数を変化させた場合の輝度の変化を示す図である。
【図16】図16Aは各濃度の基本蛍光体膜の枚数を変化させた場合のフィルター効率の変化を示す図であり、図16D〜図16F各濃度の基本蛍光体膜の枚数を変化させた場合のフィルター効率の変化を示す図である
【図17】基本蛍光体膜中の蛍光体濃度(%)と基本蛍光体膜の枚数を掛けた値と輝度の関係を示す図である。
【図18】バックライト光の分光透過率と発光強度の関係を示す図である。
【図19】図19A〜図19Cは各濃度の基本蛍光体膜の枚数を変化させた場合の400nmの波長の光が蛍光体層を透過する透過率の変化を示す図であり、図19D〜図19Fは各濃度の基本蛍光体膜の枚数を変化させた場合の400nmの波長の光が蛍光体層を透過する透過率の変化を示した図である。
【図20】図19A〜図19Cに記した各データを励起光の透過率と正面輝度の関係として表した図である。
【図21】図21Aは蛍光体粒子が粗い場合の励起光の透過率と正面輝度の関係を示す図であり、図21Bは蛍光体粒子が細かい場合の励起光の透過率と正面輝度の関係を示す図である。
【図22】緑色蛍光体材料を変えた場合の励起光の透過率と正面輝度の関係を示す図である。
【図23】蛍光体層が青色の場合の励起光の透過率と正面輝度の関係を示す図である。
【図24】蛍光体層が赤色の場合の励起光の透過率と正面輝度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、各実施例及び図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための液晶表示装置を例示するものであって、本発明をこの液晶表示装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0048】
また、以下に述べる第1基板及び第2基板の「表面」とは液晶層側の面を示すものとする。なお、本発明における液晶表示装置は、TNモード、STNモード、ECBモード、VAモードあるいはMVAモードで駆動するいわゆる縦電界方式の液晶表示装置や、IPSモード、FFSモード等の横電界方式の液晶表示装置にも適用可能であるが、以下においてはTNモードの液晶表示装置に代表させて各実施形態の液晶表示装置を説明する。
【実施例1】
【0049】
実施例1の液晶表示装置として、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を用いたTNモードの液晶表示装置10を、図1〜図3を用いて説明する。図1A及び図1Bに示すように、この液晶表示装置10は、液晶表示パネル11と、バックライト装置12とを主体として構成されている。そして、液晶表示パネル11とバックライト装置12とは平面視で重なるように配置されている。
【0050】
この液晶表示パネル11は、第1基板13と第2基板14とがシール材15によって貼り合わされると共に、このシール材15によって区画された領域内に液晶が封入され、第1基板13及び第2基板14間に液晶層21が挟持された構成になっている。シール材15の一部には液晶を注入する注入口16が設けられており、この注入口16は封止材17により封止されている。シール材15の内側の領域は、各種画像やデータ等を表示する表示領域18になっており、シール材15の外側の領域は非表示領域19となっている。また、表示領域18には、ここでは1つのサブピクセル22aからなる単位ピクセル22が例えばマトリクス状に設けられている(図2A参照)。サブピクセル22aの間の領域には、行方向には走査線が、列方向には信号線(それぞれ図示省略)が、それぞれ互いに絶縁された状態で交差するように形成されている。
【0051】
第1基板13は第2基板14と対向配置させたときに所定スペースの張出し部13aが形成されるように第2基板14より若干サイズが大きいものが使用されている。この張出し部13aには、液晶層21を駆動するためのドライバーIC20等が配置されている。
【0052】
第1基板13は、図2Bに示したように、ガラス等で形成された透明基板に、金属膜や絶縁膜、樹脂膜等の成膜とパターニングを繰り返して形成された信号線や走査線などの各種配線、スイッチング素子としてのTFT、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電性材料からなる画素電極、電極間絶縁膜、などを備えた第1構造物24と、この第1構造物24の表面に形成された配向膜25とで構成されている。この配向膜25にはラビング処理がされており、液晶層21の液晶分子の配向を規制するためのものである。また、第1の偏光板23が第1基板13とバックライト装置12との間に配置されている。なお、横電界方式の液晶表示パネルの場合には、第1基板13に共通電極も形成されている。
【0053】
第2基板14は、ガラス等で形成された透明基板上に形成されたITOやIZO等の透明導電性材料からなる共通電極などを備えた第2構造物27と、この第2構造物27の表面に形成された配向膜28とで構成されている。この配向膜28にはラビング処理がされており、液晶層21の液晶分子の配向を規制するためのものである。なお、横電界方式の液晶表示パネルの場合、第2基板13には共通電極が形成されていない。そして、この第2基板14の液晶層21とは反対側の面に順次第2の偏光板26、蛍光体層29、フィルター層30及び反射防止層34が形成されている。なお、後述する実施例7のように、第2の偏光板26と蛍光体層29との間にバンドパスフィルター層を形成してもよい。またバンドパスフィルター層の他に、従来の非発光型液晶表示装置に用いられる輝度向上フィルムを配置してもよい。また、第2の偏光板26として、例えばワイヤーグリッド偏光板を用いてもよい。このような、バンドパスフィルー層や、輝度向上フィルム、ワイヤーグリッド偏光板を用いることで、輝度向上を図ることができる。
【0054】
蛍光体層29は、図2Aに示すように、単位ピクセル22毎にマトリクス状に配置されている。この蛍光体層29の材料として、例えば、赤色蛍光体にはEu付活硫化物系赤色蛍光体、緑色蛍光体にはEu付活硫化物系緑色蛍光体、青色蛍光体にはEu付活リン酸塩系青色蛍光体を使用することができる。この蛍光体層29は、表示させたい色に応じて単一又は複数の蛍光体を含んでいるものとすることができる。例えば、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して、青色光及び黄色光を発する2種の蛍光体を含んでいる場合には、擬似的に白色光を得ることができ、また、赤色光、緑色光及び青色光の発する3種の蛍光体を含んでいる場合にも同様に白色光を得ることができる。更には、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して任意の色の光を発する単一又は複数の蛍光体を適宜選択して用いることにより、任意の色の光を発することができる液晶表示装置が得られるようになる。
【0055】
また、蛍光体層29は遮光膜31により仕切られている。この遮光膜31を形成することにより、それぞれ隣り合う色が混ざることを抑制し、表示する画像の色純度及びコントラストの向上を図ることができる。
【0056】
フィルター層30は、蛍光体の励起光が液晶表示装置10の外部に出て来ることがないようにすると共に、外来光の中に含まれている蛍光体を励起することができる波長の光をカットするためのものであり、ここでは波長420nm以下の光を反射又は吸収する性質を備えているものが用いられる。このフィルター層30を用いることにより、液晶表示装置10のコントラストの低下を抑制し、色純度を向上させることができる。なお、このような波長420nm以下の光を反射又は吸収する性質を備えているフィルター層30の形成材料は種々のものが知られており、これらの中から適宜選択して用いればよい。また、反射防止膜34は、外景が写り込んで表示画像が見難くなることを抑制するために設けられているものであるが、必ずしも必要な構成ではない。
【0057】
バックライト装置12は、ピーク波長が波長380nm〜420nmの範囲のLEDを複数個備えている。この液晶表示装置10においては、図3に示すように、バックライト装置12に設けられたLEDから照射されるピーク波長380nm〜420nmの光32が液晶表示パネル11に入射され、液晶層21で変調されたピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32が所定の色の蛍光体層29に入射する。このピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32は、一部が蛍光体層29内に分散されている蛍光体に吸収され、所定の色の蛍光体を励起させて所定の色で発光させる。そのため、所定の色の蛍光体層29で発光された所定の色の光33は、蛍光体に吸収されなかった一部のピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32とともに、フィルター層30に入射する。
【0058】
フィルター層30は、波長420nm以下の光を反射又は吸収する性質を備えているため、フィルター層30に入射した一部のピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32は外部に出てくることはない。また、外来光のうち波長420nm以下の光は、フィルター層30によって反射ないし吸収されるため、蛍光体層29内に入射することがないので、外来光に起因する光による蛍光体層29からの光は極めて少なくなる。そのため、実施例1の液晶表示装置10によれば、色純度が高く、しかも、コントラストも良好な液晶表示装置が得られる。
【0059】
以上述べたように、実施例1の液晶表示装置10によれば、バックライト装置12の光源としてピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を発するLEDを用い、所定の色の蛍光体を励起して所定の色を発光させている。通常の液晶表示装置に使用されている各種透明部材は、380nmよりも短い近紫外光ないし紫外光は吸収され易く、それ以外の可視光のような光は透過しやすい。しかしながら、実施例1の液晶表示装置10で使用されている励起光であるピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光は、液晶表示装置10の各種透明部材による励起光の吸収を抑制することができるために明るい液晶表示装置10が得られるようになり、しかも、従来例のように励起光を380nmよりも短い近紫外光ないし紫外光とした場合に生じるような各種構成部材に対するダメージを低減することができる。
【0060】
また、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲のLEDは、単一波長の光源であって、青色LEDと黄色蛍光体を用いた白色LED等のように発光源と蛍光体とが接していないから、蛍光体層が高温になることが抑制される。そのため、実施例1の液晶表示装置10によれば、温度消光が少ないために明るい液晶表示装置10が得られるようになる。更に、実施例1の液晶表示装置10では、所定の色でのカラー表示のために蛍光体層29を用いているので、光損失が大きいカラーフィルター層を必要とせず、しかも、蛍光体層29は所定の色に対する色変換効率がよいため、液晶表示装置全体としての光源からの光の利用効率もよくなる。また、実施例1の液晶表示装置10では、光源の波長は単一であるから、透過率を最大に調整することが容易であり、容易に明るい液晶表示装置10を得ることができる。
【実施例2】
【0061】
実施例1の液晶表示装置10では単位ピクセル毎に所定の色の1色を発光させていたが、実施例2では、単位ピクセルを赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光の三原色を発光する3つのサブ画素で形成した液晶表示装置10Aについて説明する。なお、実施例2の液晶表示装置10Aでは、実施例1の液晶表示装置10とは単位ピクセル内の蛍光体層の配置が異なるのみであるので、共通する構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0062】
実施例2の液晶表示装置10Aでは、蛍光体層は、図4、図5に示すように、単位ピクセル22毎に、赤色蛍光体層29R、緑色蛍光体層29G、及び、青色蛍光体層29Bがマトリクス状に配置されている。この蛍光体層29R、29G、29Bの材料としては、上述したように、赤色蛍光体層29RにはEu付活硫化物系赤色蛍光体、緑色蛍光体層29GにはEu付活硫化物系緑色蛍光体、青色蛍光体層29BにはEu付活リン酸塩系青色蛍光体を使用することができる。また、各蛍光体層29R、29G、29Bは遮光膜31により仕切られている。この遮光膜31を形成することにより、それぞれ隣り合う色が混ざることを抑制し、表示する色純度の向上を図ることができる。また、これらの赤色蛍光体層29R、緑色蛍光体層29G、及び、青色蛍光体層29Bをそれぞれ異なる面積にすることで、色度を調整するようにしてもよい。
【0063】
この実施例2の液晶表示装置10Aでは、図6に示すように、バックライト装置12に設けられたLEDから照射されるピーク波長380nm〜420nmの光32が液晶表示パネル11に入射され、液晶層21で変調されたピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32が赤色蛍光体層29R、緑色蛍光体層29G及び青色蛍光体層29Bに入射する。このピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32は、一部がこれらの蛍光体層29R、29G及び29B内に分散されている蛍光体に吸収され、それぞれの蛍光体を励起させてそれぞれの色で発光させる。そのため、それぞれの蛍光体層29R、29G及び29Bで発光されたそれぞれの色の光33R、33G、33Bは、蛍光体に吸収されなかった一部のピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32とともに、フィルター層30に入射する。
【0064】
また、実施例2の液晶表示装置10Aで使用しているフィルター層30は、波長420nm以下の光を反射又は吸収する性質を備えているため、フィルター層30に入射した一部のピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32は外部に出てくることはない。また、外来光のうち波長420nm以下の光は、フィルター層30によって反射ないし吸収されるため、蛍光体層29R、29G及び29B内に入射することがないので、外来光に起因する光による蛍光体層29R、29G及び29Bからの光はほとんど存在しない。そのため、実施例2の液晶表示装置10Aによれば、色純度が高く、しかも、コントラストも良好な液晶表示装置が得られる。
【0065】
実施例2の液晶表示装置10Aでは、バックライト装置12の光源としてピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を発するLEDを用い、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を励起し、それぞれのサブピクセル22a毎に光の3原色であるR、G及びBのいずれかを発光させている。そのため、実施例2の液晶表示装置10Aは、カラー表示のために光損失が大きいカラーフィルター層を必要とせず、しかも、蛍光体層29R、29G及び29BはそれぞれR、G、Bに対する色変換効率がよいため、液晶表示装置全体としての発色効率もよくなる。また、実施例2の液晶表示装置10Aでは、光源の波長は単一であるから、透過率を最大に調整することが容易であり、容易に明るい液晶表示装置10Aを得ることができる。
【0066】
以上述べたように、実施例2の液晶表示装置10Aによれば、単位ピクセル22内の各サブピクセル22aにおける蛍光体層29R、29G及び29Bをピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して光の三原色であるR、G、Bの3色を個別に発光するものとしているので、実施例1の液晶表示装置10と同様の効果を奏することができる他、より幅広い表現力を有する液晶表示装置10Aを得ることができる。
【実施例3】
【0067】
実施例2の液晶表示装置10Aでは、第2基板14の第2構造物27における液晶層21とは反対側の面に、液晶層21側から順に、第2の偏光板26、蛍光体層29、フィルター層30及び反射防止膜34を直接配置した例を示した。実施例3の液晶表示装置10Bでは、これらの蛍光体層29R、29G、29B、フィルター層30及び反射防止膜34を別個の透明基板35に形成した第3基板36を用い、この第3基板36を第2基板14上に載置することにより作製したものであり、その他の構成は実施例2の液晶表示装置10Aと実質的に同一である。この実施例3の液晶表示装置10Bを図7を用いて説明する。なお、図7においては実施例2の液晶表示装置10Aと同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0068】
第3基板36は、ガラス等で形成された透明基板35の一方の面に蛍光体層29R、29G、29B、が形成され、他方の面にフィルター層30及び反射防止膜34が形成されている。なお、第2の偏光板26は、実施例2の液晶表示装置10Aの場合と同様に、第2基板14の液晶層21とは反対側の面に形成されている。また、この第3基板36は、第2基板14とは別途単独で製造することができる。そのため、実施例3の液晶表示装置10Bは、実施例2の液晶表示装置10Aの場合と同様の工程によって第2基板14の表面に第2の偏光板26を形成した後、第3基板36の蛍光体層29R、29G、29Bが第2の偏光板26に接するように載置することより製造することができるため、製造効率が向上する他、実質的に実施例2の液晶表示装置10Aと同様の効果を奏することができる。
【実施例4】
【0069】
実施例4の液晶表示装置10Cは、第2の偏光板26、蛍光体層29R、29G、29B、及びフィルター層30を第2構造物27の表面に形成し、反射防止膜34のみ第2構造物27の液晶層21とは反対側に形成したものであり、その他の構成は実施例2の液晶表示装置10Aと実質的に同一である。この実施例4の液晶表示装置10Cを図8を用いて説明する。なお、図8においては、実施例2の液晶表示装置10Aと同じ構成部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。ただし、実施例4の液晶表示装置10Cが縦電界方式の液晶表示パネルの場合、共通電極は、図示省略したが、配向膜28と第2の偏光板26との間に配置されている。
【0070】
図8に示すように、実施例4の液晶表示装置10Cでは、第2基板14Cの構成が、液晶層21側から、配向膜28、第2の偏光板26、蛍光体層29R、29G、29B、フィルター層30、第2構造物27、反射防止膜34の順となっている。このような構成とすると、使用時に第2の偏光板26、赤色蛍光体層29R、緑色蛍光体層29G、青色蛍光体層29B、及びフィルター層30にキズがつき難くなるため、安定した表示画質の液晶表示装置10Cとなる。加えて、実施例4の液晶表示装置10Cによれば、液晶層21を透過したバックライト光源12からの光は直ちに偏光板26を経て赤色蛍光体層29R、緑色蛍光体層29Gないし青色蛍光体層29Bに入射するため、混色が少なく、表示画質が良好なとなる。
【実施例5】
【0071】
実施例5の液晶表示装置10Dは、第2の偏光板26を第2構造物27の表面に形成し、蛍光体層29R、29G、29B、フィルター層30及び反射防止膜34を第2構造物27の液晶層21とは反対側に形成したものであり、その他の構成は実施例2の液晶表示装置10Aと実質的に同一である。この実施例5の液晶表示装置10Dを図9を用いて説明する。なお、図9においては、実施例2の液晶表示装置10Aと同じ構成部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。ただし、実施例5の液晶表示装置10Dが縦電界方式の液晶表示パネルの場合、共通電極は、図示省略したが、配向膜28と第2の偏光板26との間に配置されている。
【0072】
図9に示すように、実施例5の液晶表示装置10Dでは、第2基板14Dの構成が、液晶層21側から、配向膜28、第2の偏光板26、第2構造物27、蛍光体層29R、29G、29B、フィルター層30、反射防止膜34の順となっている。製造工程の都合により、実施例5の液晶表示装置10Dのような構成としても、実質的に実施例2の液晶表示装置10Aと同様の効果を奏することができるため、設計の自由度が向上する。
【実施例6】
【0073】
実施例6の液晶表示装置10Eは、第2の偏光板26及び蛍光体層29R、29G、29Bを第2構造物27の表面に形成し、フィルター層30及び反射防止膜34を第2構造物27の液晶層21とは反対側に形成したものであり、その他の構成は実施例2の液晶表示装置10Aと実質的に同一である。この実施例6の液晶表示装置10Eを図10を用いて説明する。なお、図10においては、実施例2の液晶表示装置10Aと同じ構成部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。ただし、実施例6の液晶表示装置10Eが縦電界方式の液晶表示パネルの場合、共通電極は、図示省略したが、配向膜28と第2の偏光板26との間に配置されている。
【0074】
図10に示すように、実施例6の液晶表示装置10Eでは、第2基板14Eの構成が、液晶層21側から、配向膜28、第2の偏光板26、蛍光体層29R、29G、29B、第2構造物27、フィルター層30、反射防止膜34の順となっている。製造工程の都合により、実施例6の液晶表示装置10Eのような構成としても、実質的に実施例2の液晶表示装置10Aと同様の効果を奏することができるため、設計の自由度が向上する。
【0075】
[変形例]
実施例1の液晶表示装置10では単位ピクセルが一種の蛍光体層からなるもの、実施例2〜6の液晶表示装置10A〜10Eでは単位ピクセルがそれぞれR、G及びBの3色のサブピクセルからなるものを示したが、本発明ではこれに限らず他の構成のものも採用し得る。そこで、図11を参照して、本発明の液晶表示装置の変形例を説明する。
【0076】
図11Aに示した第1の変形例の液晶表示装置10F及び図11Bに示した第2の変形例の液晶表示装置10Gでは、単位ピクセル22内に4つのサブピクセル22aが形成されている例である。この第1及び第2の変形例の液晶表示装置10F及び10Gでは、サブピクセル22aの蛍光体層29'を任意の色を使用することができ、例えば、R、G、G、BやR、G、B、B等とすることができる。また、蛍光体層の色は、R、G、Bに限られず、白色(W)やシアン(C)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)等も使用することができる。また、単位ピクセル22内のサブピクセル22aの数は、4つに限らず、2つでもよく、更には5個以上とすることもできる。
【実施例7】
【0077】
実施例7の液晶表示装置10Hとしては、第2の偏光板26と所定の色の蛍光体層29との間にバンドパスフィルター層37を設けたものを作製した。この実施例7の液晶表示装置10Hの構成を図12を用いて、また、バンドパスフィルター層37を用いたことによる作用効果を図13、図14を用いて説明する。なお、実施例7の液晶表示装置10Hは、実施例1の液晶表示装置10とは第2の偏光板26と所定の色の蛍光体層29との間にバンドパスフィルター層37が形成されていること以外は共通するので、実施例1の液晶表示装置10と同一の構成のものについては同一の参照符号を付与し、それらの詳細な説明は省略する。ただし、実施例7の液晶表示装置10Hでは、フィルター層30aとしては波長430nm以下の光を反射するものを用いている。
【0078】
実施例7の液晶表示装置10Hには、図12に示すように、第2の偏光板26と蛍光体層29の間にバンドパスフィルター層37が備えられている。図13に示すように光の進行状態を模式的に表して説明すると、バックライト装置12から照射されたピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32は、液晶層21を透過してバンドパスフィルター層37まで到達する。このバンドパスフィルター層37は、波長が380nm〜420nmの範囲の光のみを透過し、それ以外の波長の光を反射するように設計されているので、バックライト装置12からの光32はバンドパスフィルター層37を透過して蛍光体層29内に入射される
【0079】
そして、バンドパスフィルター層37を透過した光32は、蛍光体層29内に存在する蛍光体の粒子に吸収されて可視光領域の所定の色の可視光33を発光する。この発光した可視光33は、蛍光体の粒子に対して等方的に広がっていくため、可視光33はバックライト装置12と反対側の外部に進む可視光33のほかにバックライト装置12側に進む可視光33も存在する。このバックライト装置12側に進んだ可視光33は、観測者に観測されることなく、光のロスとして無駄な発光となる(図14A参照)。
【0080】
しかし、本実施例7の液晶表示装置10Hでは、蛍光体層29の裏側にバンドパスフィルター層37が備えられているため、バックライト装置12側に進んだ可視光33rはこのバンドパスフィルター層37よって反射されてバックライト装置12とは反対側の外部に進む可視光33aとなることができる(図14B参照)。そのため、本実施例7の液晶表示装置10Hによれば、発生した可視光の無駄を抑制することができ、明るい表示が可能な液晶表示装置となる。
【0081】
更に、本実施例7の液晶表示装置10Hでは、蛍光体層29の表面側には、波長420nm以下の波長の光を反射するフィルター層30aが備えられている。このフィルター層30aは、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32を透過させずに反射させるので、蛍光体層29内の蛍光体粒子29aに吸収されずに、そのまま蛍光体層29を透過したピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32を蛍光体層29側に反射させることができる(図14C参照)。
【0082】
したがって、フィルター層30aで反射されたピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32rは、再度蛍光体層29内の蛍光体粒子29aに吸収させて可視光33bを発光することができるので、蛍光体層29での発光量を多くすることができる。なお、再度発光した可視光33bは、上述したように等方向に広がりバックライト装置12側へ進む可視光33rrもあるが、バンドパスフィルター層37が備えられているため、再度可視光33rrはバンドパスフィルター層37で反射され、バックライト装置12と反対側の外部へ進む光33cとなることができる。
【0083】
そのため、実施例7の液晶表示装置10Hによれば、実施例7の液晶表示装置で発光したすべての光33g(図13参照)は、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが備えられていない場合に発光する可視光33のみに比べ、バンドパスフィルター層37の反射光33a,33c及びピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光32がフィルター層30aに反射して発光した光33bが加わることにより、より明るい表示が可能となる。
【0084】
[実験例1]
ここで、フィルター層30a及びバンドパスフィルター層37が存在する場合及び存在しない場合について、蛍光体層29の厚さ及び蛍光体層29中の蛍光体粒子29aの濃度と発光量との関係を図15を用いて説明する。なお、以下においては、蛍光体層に含有させる蛍光体粒子としては、Eu付活硫化物系蛍光体の粒子をそのまま用いた場合を例にとって説明する。
【0085】
まず、同一厚さで蛍光体濃度のみが異なる低濃度基本蛍光体膜、中濃度基本蛍光体膜及び高濃度基本蛍光体膜を作製した。この低濃度基本蛍光体膜の蛍光体濃度は0.24mass%であり、中濃度基本蛍光体膜の蛍光体濃度は0.40mass%であり、高濃度基本蛍光体膜の蛍光体濃度は0.61mass%である。このようにして形成された3種の基本蛍光体膜をそれぞれ所定の枚数重ねることにより所定濃度及び所定膜厚の蛍光体層29を作製し、それぞれの場合についてフィルター層30a及びバンドパスフィルター層37の存在する場合と存在しない場合について表示面の明るさ(輝度)を調べた。なお、「膜厚(=枚数)×濃度」の関係は、低濃度基本蛍光体膜3枚が中濃度基本蛍光体膜2枚にほぼ対応し、中濃度基本蛍光体膜5枚が高濃度基本蛍光体膜3枚にほぼ対応する。
【0086】
図15Aは低濃度基本蛍光体膜を3枚〜5枚まで変化させた場合の、図15Bは中濃度基本蛍光体膜を2枚〜5枚まで変化させた場合の、図15Cは高濃度基本蛍光体膜を3枚〜5枚まで変化させた場合の、それぞれ輝度の変化を示す図である。また、図15Dは各濃度の基本蛍光体膜を3枚使用した場合の表示面の輝度の、15Eは各濃度の基本蛍光体膜を4枚使用した場合の表示面の輝度の、図15Fは各濃度の基本蛍光体膜を5枚使用した場合の表示面の輝度の比較をそれぞれ示した図である。
【0087】
なお、図15A〜図15Fにおける「輝度の高い領域」とは、本発明の液晶表示装置を実用化する上で望ましい最小限の明るさとしての2350cd/mを達成できる範囲を示している。
【0088】
図15A及び図15Bに示した結果から、低濃度基本蛍光体膜及び中濃度基本蛍光体膜からなる蛍光体層29を用いた場合には、蛍光体層29の厚さが厚くなるに従って輝度は高くなっているが、中濃度基本蛍光体膜が4枚以上からなる蛍光体層29を用いた場合には輝度は飽和状態となっていることがわかる。また、図15Cに示した結果によると、蛍光体層29として高濃度基本蛍光体膜を用いた場合には、蛍光体層の厚さが厚くなるにしたがって輝度は低下している。これらの図15A〜図15Cに示した結果によると、「膜厚(枚数)×濃度」の関係は、ほぼ中濃度基本蛍光体膜5枚が高濃度基本蛍光体膜3枚に相当するから、蛍光体層29には最適な膜厚及び濃度範囲が存在することが分かる。
【0089】
また、図15A〜図15Cに示した結果によれば、蛍光体層29として、低濃度基本蛍光体膜、中濃度基本蛍光体膜及び高濃度基本蛍光体膜の何れを用いた場合においても、輝度の関係は、(他に何も使用しない場合)<(フィルター層のみを用いた場合)<(バンドパスフィルター層のみを用いた場合)<(フィルター層及びバンドパスフィルター層を用いた場合)となっており、本発明のフィルター層30a及びバンドパスフィルター層37を用いることの効果が確認される。特にフィルター層30aのみを用いた場合よりも、バンドパスフィルター層37のみを用いた場合の輝度は高く、更にフィルター層30a及びバンドパスフィルター層37を用いた場合は最も輝度が高くなっていることが分かる。
【0090】
次に、図15D〜図15Fを参照して、蛍光体層29として、低濃度基本蛍光体膜、中濃度基本蛍光体膜及び高濃度基本蛍光体膜を同じ枚数用いた場合において、それぞれの基本蛍光体膜中の蛍光体濃度の相違による表示面の輝度の変化をフィルター層30a及びバンドパスフィルター層37(図12参照。以下、同じ)の存在する場合と存在しない場合をそれぞれ検討した。
【0091】
まず、図15D、図15Eに示すように、蛍光体層29として各濃度の基本蛍光体膜を3枚(薄膜)又は4枚(中間膜厚)使用した場合は、低濃度基本蛍光体膜の場合に比べて高濃度基本蛍光体膜の方が輝度が高くなっていることがわかり、中濃度基本蛍光体膜の場合はそれらの中間程度の輝度となっている。
【0092】
一方、図15Fに示すように、蛍光体層29として各濃度の基本蛍光体膜を5枚(厚膜)使用した場合は、低濃度基本蛍光体膜の場合に比べて中濃度基本蛍光体膜の方が輝度が高くなっているが、高濃度基本蛍光体膜は中濃度基本蛍光体膜に比べて輝度が減少している。これは、蛍光体層29内の単位面積あたりの蛍光体粒子の量が多くなりすぎると、バックライト装置から入射した光により発光した可視光の内、蛍光体層29内の蛍光体粒子に遮られてバックライト装置とは反対側の外部へ透過することが困難となる割合が増加するからである。このような現象は特に蛍光体層29の液晶層側で発光した可視光で起こりやすい。
【0093】
すなわち、蛍光体層29内の単位面積あたりの蛍光体粒子の量と輝度の関係においては、蛍光体層内の単位面積あたりの蛍光体粒子の量が多くなるにつれて輝度が高くなるが、一定の蛍光体層内の単位面積あたりの蛍光体粒子の量で飽和状態となり、それ以上蛍光体層内の単位面積あたりの蛍光体粒子の量が増加すると輝度が低下し、発光のロスが起こることがわかる。このときの一定の蛍光体層29内の単位面積あたりの蛍光体濃度としては、基本蛍光体膜が5枚の場合では2.0〜3.0mass%であることが図15Fから読み取ることができる。このように、最適な厚さ及び濃度の蛍光体層29を形成すれば、発光のロスを抑制し、明るい表示が可能な液晶表示装置を提供することができることがわかる。
【0094】
また、図15D〜図15Fに示した結果によれば、蛍光体層29として低濃度基本蛍光体膜、中濃度基本蛍光体膜及び高濃度基本蛍光体膜の何れを用いた場合においても、上述した図15A〜図15Cの場合と同様に、輝度は、(他に何も使用しない場合)<(フィルター層のみを用いた場合)<(バンドパスフィルター層のみを用いた場合)<(フィルター層及びバンドパスフィルター層を用いた場合)となっており、本発明のフィルター層及びバンドパスフィルター層37を用いることの効果が確認される。特にフィルター層30aのみを用いた場合よりも、バンドパスフィルター層37のみを用いた場合の輝度は高く、更に、フィルター層30a及びバンドパスフィルター層37を用いた場合は最も輝度が高くなっていることが分かる。
【0095】
次に、フィルター層30a及びバンドパスフィルター層37が存在する場合及び存在しない場合について、蛍光体層29の厚さ及び蛍光体層29中の蛍光体の粒子の濃度とフィルター効率との関係を図16を用いて説明する。このフィルター効率とは、蛍光体層29のみの場合を基準(100%)とし、フィルター層30aのみ存在する場合、バンドパスフィルター層37のみ存在する場合、フィルター層30aとバンドパスフィルター層37の両方が存在する場合の輝度の割合を示すものである。なお、図16A〜図16Fには、フィルター層30及びバンドパスフィルター層37の両方を備える場合において、計算により求めたフィルター層30の存在によるフィルター効率の変化も示してある。
【0096】
図16Aは低濃度基本蛍光体膜を3枚〜5枚まで変化させた場合の、図16Bは中濃度基本蛍光体膜を2枚〜5枚まで変化させた場合の、図16Cは高濃度基本蛍光体膜を3枚〜5枚まで変化させた場合の、それぞれフィルター効率の変化を示す図である。また、図16Dは各濃度の基本蛍光体膜を3枚使用した場合の、16Eは各濃度の基本蛍光体膜を4枚使用した場合の、図16Fは各濃度の基本蛍光体膜を5枚使用した場合のフィルター効率の変化を示す図である。
【0097】
まず、図16Aは蛍光体層29として低濃度基本蛍光体膜を使用している場合であるが、この場合、基本蛍光体膜の枚数が増えると、バンドパスフィルター層37のみが存在している場合はフィルター効率が高くなるが、フィルター層30aのみが存在している場合はフィルター効率が低くなっている。このような現象が生じる理由は、バンドパスフィルター層37は、上述したように、発光した可視光のバックライト装置側へ進む光を反射することで発光効率を上げるものであるから、基本蛍光体膜中の蛍光体濃度が低くて膜厚が薄いと、バックライト装置から入射される光により発光する可視光の割合が少なくなり、バックライト装置側へ進む可視光も少なくなり、バンドパスフィルター層37が反射する光量も減ること、更には、バックライト装置から入射される光が蛍光体粒子に吸収されることなくそのままフィルター層30aまで透過してしまう光が増加することによる。
【0098】
この場合、フィルター層30aは、既に上述したように、バックライト装置から入射される光を反射して再度蛍光体層29を透過させることによって発光効率を上げることができるから、基本蛍光体膜の単位面積あたりの蛍光体濃度が低くて膜厚が薄い場合は、多くのバックライト装置から入射される光がフィルター層30aまで透過するので、フィルター層30aの効率が高くなる。
【0099】
また、バンドパスフィルター層37の効率は低濃度基本蛍光体膜の枚数が増えるごとに高くなり、フィルター層30aの効率は低濃度基本蛍光体膜の枚数が増えるごとに低くなる。これは、蛍光体層29内で発光する可視光の量が増えることにより、バンドパスフィルター層37が反射する可視光の量が増えると共に、フィルター層30aまで透過するバックライト装置から入射される光の量が減るためである。
【0100】
なお、低濃度基本蛍光体膜を使用している場合は、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aを合わせて用いた場合でも、それらを合わせた効率は低濃度基本蛍光体膜が増えても低下することとなる。これは、フィルター層30aで反射したバックライト装置から入射される光が再度蛍光体層29を通過しても蛍光体層29内の蛍光体粒子に吸収されずにそのままバックライト装置側へ透過して無駄な光となる割合が多いからである。
【0101】
次に、図16Bは蛍光体層29として中濃度基本蛍光体膜を使用している場合であるが、この場合、中濃度基本蛍光体膜の枚数が4枚まで増えるとバンドパスフィルター層37のみが存在している場合はフィルター効率が高くなるが、フィルター層30aのみが存在している場合はフィルター効率が低くなる。このような傾向は、低濃度基本蛍光体膜を用いた場合と同様である。しかし、中濃度基本蛍光体膜が5枚になると、バンドパスフィルター層37のみ存在する場合とフィルター層30aのみ存在する場合はほぼ同様であるが、これら両方を備えた場合のフィルター効率は高くなっている。
【0102】
すなわち、中濃度基本蛍光体膜を5枚備えるような厚膜となると、単位面積あたりの蛍光体層29内の蛍光体濃度も高くなり、バックライト装置から入射した光により可視光を発光する割合も多くなる。それに伴い、バックライト側へ進む可視光も増え、バンドパスフィルター層37により反射される可視光の量も多くなり、その結果バンドパスフィルター層37の効率も上がる。
【0103】
一方、蛍光体層29で発光する可視光が多くなると、上述したようにフィルター層30aまで透過するバックライト装置から入射した光の量は減ることとなり、フィルター層30aの効率が減ることとなる。それと共に、蛍光体層29の単位面積あたりの蛍光体濃度が増えることでフィルター層30aで反射されたバックライト装置から入射した光が再度蛍光体層29内で発光する割合も多くなる。すなわち、無駄な発光が減っていることとなり、発光効率がよくなっていることになる。
【0104】
また、図16Cは、蛍光体層29として高濃度基本蛍光体膜を使用している場合であるが、高濃度基本蛍光体膜の枚数が増えると共にバンドパスフィルター層37及びフィルター層30aを両方用いた場合のフィルター効率も上昇している。このとき、バンドパスフィルター層37のみを用いた場合では、高濃度基本蛍光体膜の枚数が1枚増えるごとにバンドパスフィルター層37の効率はおよそ10%ずつ上昇しているが、フィルター層30aのみを用いた場合では、高濃度基本蛍光体膜の枚数が増えてもフィルター層30aの効率の減少は1%前後である。
【0105】
これは、蛍光体層29の単位面積あたりの蛍光体濃度が一定以上高くなると、フィルター層30aまで透過されるバックライト装置から入射した光はほとんどなくなり、大部分が蛍光体粒子に吸収されて蛍光体層29内で可視光として発光するからである。そのため、バンドパスフィルター層37の効率は上昇し、フィルター層30aの効率は減少することとなる。
【0106】
次に、図16D〜図16Fを参照して、蛍光体層29として、低濃度基本蛍光体膜、中濃度基本蛍光体膜及び高濃度基本蛍光体膜を同じ枚数用いた場合において、それぞれの基本蛍光体膜中の蛍光体濃度の差によるフィルター効率の変化をフィルター層30a及びバンドパスフィルター層37の存在する場合と存在しない場合を検討する。
【0107】
まず、図16Dに示すように、基本蛍光体膜が3枚(層)の場合は、単位面積あたりの蛍光体層29内の蛍光体濃度が上がるに従って、バンドパスフィルター層37のみの場合の効率は上がり、フィルター層30aのみの場合の効率は下がり、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aを両方用いた場合の効率は下がる傾向となる。
【0108】
一方、基本蛍光体膜が4枚(層)の場合は、図16Eに示すように、単位面積あたりの蛍光体層29内の蛍光体濃度が高くなるにつれて、バンドパスフィルター層37のみの場合の効率は上がり、フィルター層30aのみの場合の効率は下がることは、上述した基本蛍光体膜が3枚の場合と同じである。しかしながら、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方を用いた場合の効率は、単位面積あたりの蛍光体層29内の蛍光体濃度が低いうちは下がるが、一定の蛍光体濃度を超えると効率は上がる傾向となる。この傾向は、図16Fに示すように、蛍光体層29として、基本蛍光体膜を5枚用いた場合も同様である。
【0109】
以上、図15、図16に示すような結果から、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方用いた場合の蛍光体層29の発光状態は、単位面積あたりの蛍光体層29内の蛍光体濃度が高くなるにつれて輝度が上昇するが、一定の蛍光体濃度を超えると減少することとなり、更に、フィルター効率は蛍光体層29内の蛍光体濃度が高くなるにつれて低くなるが、一定の蛍光体濃度を超えると、フィルター効率は高くなることとなる。
【0110】
また、図17に、「基本蛍光体膜中の蛍光体濃度(%)と基本蛍光体膜の枚数を掛けた値」と輝度の関係を示した。なお、図17は図15に示したグラフからバンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方を備えた場合と蛍光体層29のみの場合の値をまとめて記したものである。この図17に示した結果から、輝度は、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方を備えた場合の方が、蛍光体層29のみの場合よりも高くなること、「基本蛍光体膜中の蛍光体濃度(%)と基本蛍光体膜の枚数を掛けた値」には最適値があることがわかる。なお、「基本蛍光体膜中の蛍光体濃度(%)と基本蛍光体膜の枚数を掛けた値」は、蛍光体層29の厚さが一定ではないために必ずしも厳密な比較はできないが、実質的に単位面積あたりの蛍光体層29内の蛍光体濃度を表している。
【0111】
次に、図18及び図19A〜図19Fを参照して、400nmの波長の光の透過率についての濃度及び膜厚との関係を説明する。なお、400nmの波長の光は本発明におけるピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光の略中間の波長の光を代表して例示したものである。よって、400nmの波長の光に限定されるものではない。
【0112】
なお、図18はバックライト光の分光透過率と発光強度の関係を示す図である。図19Aは低濃度基本蛍光体膜を3枚〜5枚まで変化させた場合の、図19Bは中濃度基本蛍光体膜を2枚〜5枚まで変化させた場合の、図19Cは高濃度基本蛍光体膜を3枚〜5枚まで変化させた場合の、それぞれ400nmの波長の光が蛍光体層29を透過する割合の変化を示す図である。また、図19Dは各濃度の基本蛍光体膜を3枚使用した場合の、図19Eは各濃度の基本蛍光体膜を4枚使用した場合の、図19Fは各濃度の基本蛍光体膜を5枚使用した場合の400nmの波長の光が蛍光体層29を透過する透過率の変化をそれぞれ示した図である。また、各図での透過率の割合は蛍光体層に入る直前の400nmの波長の光を100%とし、蛍光体粒子に吸収されずに透過した割合を示すものである。
【0113】
まず、図18を参照して、例えばバックライトからのピーク波長が405nmの波長の光を例にとり、このピーク波長の光の透過率と可視光の発光について説明する。図18に示すように、バックライト光源として用いられているLEDはピーク波長405nmの強い光を発しているが、緑色(G)の蛍光体層の蛍光体粒子に吸収されてピーク波長約530nmの光を発光することにより順次弱くなる。そのため、ピーク波長405nmの光が蛍光体層内で蛍光体粒子に吸収される割合が多くなると、ピーク波長405nmの光がそのまま蛍光体粒子に吸収されずに蛍光体層を透過してしまう割合が参照符号a〜dに示すように減少し、それに比例して発光される同じく波長約530nm付近の可視光の量が参照符号a〜dに示すように増えることとなる。したがって、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光がどの程度そのまま蛍光体層を透過するかを測定することによって、可視光の発光の割合が分かることとなる。
【0114】
まず、図19Aは、低濃度基本蛍光体膜を使用している場合であるが、低濃度基本蛍光体膜の枚数が増えるごとに波長400nmの光の透過率も減少している。これは、低濃度基本蛍光体膜の膜厚が厚くなるほど蛍光体層内の単位面積あたりの蛍光体濃度が増加し、400nmの波長の光が蛍光体層内で吸収される割合が多くなり、可視光の発光の割合が多くなっていることを意味する。このことは、図19B及び図19Cに示した中濃度基本蛍光体膜及び高濃度基本蛍光体膜においても、同様の傾向となっている。
【0115】
次に、図19Dでは、各濃度の基本蛍光体膜を3枚備えた場合の変化を示しているが、この場合、蛍光体層内の単位面積あたりの蛍光体濃度が高くなるにつれて透過率は低くなっている。これは、図19E及び図19Fに示した各濃度の基本蛍光体膜が4枚、及び5枚の場合も同様の傾向を示している。
【0116】
次に、図19A〜図19Cに記した各データを1つのグラフに表したものを図20に示す。このとき、横軸は図19A〜図19Cに記した励起光である波長400nmの光の透過率とし、縦軸は液晶表示装置の正面輝度を最適値を100%とした相対値で表している。また、図20には、比較例として蛍光体層のみの透過率も示してある。
【0117】
図20より、バンドパスフィルター層37とフィルター層30aがある場合、正面輝度が最も高いのは励起光の透過率が約0.3%の場合であり、高濃度基本蛍光体膜を4枚備えたものである。また、透過率が約0.3%よりも低くなると正面輝度は僅かに低下するが、透過率が約0.3%よりも高くなると正面輝度は徐々に低下していく。なお、透過率が0%に近くなると、400nmの波長の光が蛍光体層のバックライト装置から最も遠い部分の蛍光体粒子まで届いていないおそれがある。すなわち、蛍光体層の蛍光体粒子に発光とは無関係な無駄な蛍光体部分が存在する状態となると、この無駄に存在する蛍光体粒子が発光された可視光を遮ることとなり、結果的に発光効率が悪くなるおそれもある。そのため、透過率が0%であることは好ましくない。
【0118】
そのため、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが存在している場合、正面輝度が最も良好な場合の75%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は0%を超え、20%以下が好ましいことが分かる。また、より好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の85%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は0%を超え、12%以下が好ましいことが分かる。更に、最も好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の95%以上を確保することができるようにするためには、透過率は0%を超え、3%以下とすればよいことが分かる。なお、図20に示した比較例としての蛍光体層29のみの場合の結果によると、透過率が約2%のときに最適条件があるが、それよりも透過率が低くなっても高くなっても、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが存在している場合と比較すると、急に正面輝度が低下していく。
【0119】
以上より、実験例1に示した結果によれば、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方を用い、蛍光体層の波長400nmの光の透過率が0%を超え、15.0%以下の範囲、より好ましくは0%を超え、10%以下の範囲、最も好ましくは0%を超え、3%以下となるようにすることで、発光効率のよい自発光型の液晶表示装置を提供することができることがわかる。なお、上記実験例1では、400nmの波長の光を代表例として用いた例を示したが、これに限らず、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光であれば十分に上記効果を奏することが可能である。
【0120】
[実験例2]
実験例2としては、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方を用い、蛍光体層の緑(G)の蛍光体粒子の粒径が異なる場合についての透過率と輝度との関係を図21を用いて検討する。なお、図21Aは蛍光体層の蛍光体粒子が粗い場合の図20に対応するグラフであり、図21Bには蛍光体層の蛍光体粒子が細かい場合の図20に対応するグラフである。また、粗い蛍光体粒子の平均粒径は45μm〜80μmn範囲のものであり、細かい蛍光体の粒子の平均直径は20μm以下のものをそれぞれ選別して用いた。
【0121】
この場合、図21Aに示すように、蛍光体粒子が粗い場合は、正面輝度が最も良好な場合の75%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は15%以下が好ましいことが分かる。また、より好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の85%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は12%以下が好ましいことが分かる。更に、最も好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の95%以上を確保することができるようにするためには、透過率は3%以下とすればよいことが分かる。なお、図21Aに示した比較例としての蛍光体層29のみの場合の結果によると、透過率が約1.5%のときに最適条件があるが、それよりも透過率が低くなっても高くなっても、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが存在している場合と比較すると、急に正面輝度が低下していく。
【0122】
また、図21Bに示すように、蛍光体粒子が細かい場合は、正面輝度が最も良好な場合の75%以上の高い範囲となるようにするためには、外挿すると、透過率は15%以下が好ましいことが分かる。また、より好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の85%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は8%以下が好ましいことが分かる。更に、最も好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の95%以上を確保することができるようにするためには、透過率は5%以下とすればよいことが分かる。なお、図21Aに示した比較例としての蛍光体層29のみの場合の結果によると、透過率が約3%のときに最適条件があるが、それよりも透過率が低くなっても高くなっても、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが存在している場合と比較すると、急に正面輝度が低下していく。
【0123】
図21A及び図21Bを対比較すると明らかなように、蛍光体粒子が粗い場合と細かい場合とでは、最適な条件は僅かに異なっているが、実質的に同様な傾向の結果が得られている。ただ、蛍光体粒子の粒径が細かい方が、同じ透過率でも輝度が低い傾向がある、このような結果が得られた理由は、蛍光体粒子が細かすぎると、バックライト装置からの励起光が蛍光体粒子に接触し難くなるため、発光し難くなるためであると推定される。
【0124】
[実験例3]
以上の実験例1及び2では緑色蛍光体としてEu付活硫化物系蛍光体を用いた例を示したが、実験例3としては実験1及び2とは異なるEu付活硫化物系蛍光体の緑色蛍光体を用いた場合についての透過率と輝度との関係を図22を用いて説明する。
【0125】
この場合、図22に示すように、正面輝度が最も良好な場合の75%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は12%以下が好ましいことが分かる。また、より好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の85%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は8%以下が好ましいことが分かる。更に、最も好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の95%以上を確保することができるようにするためには、透過率は5%以下0.2%以上とすればよいことが分かる。なお、図22に示した比較例としての蛍光体層29のみの場合の結果によると、透過率が約3%のときに最適条件があるが、それよりも透過率が低くなっても高くなっても、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが存在している場合と比較すると、急に正面輝度が低下していく。
【0126】
図22の結果からすると、実験例1及び2の場合と比較すると好ましい表面輝度が得られる透過率範囲が狭くなっているが、実験例1及び2の場合とほぼ同様の傾向を示している。この図22に示した結果からすると、緑色蛍光体の場合には、蛍光体粒子の材料が変わってもほぼ同様の傾向が得られることがわかる。例えば、Eu付活硫化物系蛍光体だけでなくEu,Mn付活硫化物系蛍光体を用いてもよい。
【0127】
[実験例4]
以上の実験例1及び2では蛍光体層29として緑色蛍光体粒子を含むものを用いた例を示したが、実験例4としては蛍光体層29として青蛍光体粒子を含むものを用いた場合についての透過率と輝度との関係を図23を用いて説明する。なお、ここで使用した青色蛍光体粒子は、Eu付活リン酸塩系青色蛍光体粒子をそのまま用いた。また、図23には、蛍光体層のみの場合とバンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方用いた場合の測定結果も示してある。
【0128】
図23に示した結果によれば、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方用いた場合、透過率約0.015%に最適条件があり、透過率が0.015%よりも高くなるに従って正面輝度は低下していく。この場合、正面輝度が最も良好な場合の75%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は15%以下が好ましいことが分かる。また、より好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の85%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は5%以下が好ましいことが分かる。更に、最も好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の95%以上を確保することができるようにするためには、透過率は0.5%以下とすればよいことが分かる。なお、図23に示した比較例としての蛍光体層29のみの場合の結果によると、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの場合とほぼ同様の傾向を示すが、透過率が高くなるに従って、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが存在している場合と比較すると、急に正面輝度が低下していく。なお、Eu付活リン酸塩系の青色蛍光体粒子を用いたが、この他Eu付活酸化物蛍光体や、Ce付活硫化物蛍光体を用いても同様の傾向を示す。
【0129】
[実験例5]
以上の実験例1及び2では蛍光体層29として緑色蛍光体粒子を含むものを用いた例を示したが、実験例5としては蛍光体層29として赤蛍光体粒子を含むものを用いた場合についての透過率と輝度との関係を図24を用いて説明する。なお、ここで使用した赤色蛍光体粒子は、Eu付活硫化物系の赤色蛍光体粒子をそのまま用いた。また、図24には、蛍光体層のみの場合とバンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方用いた場合の測定結果も示してある。
【0130】
図24に示した結果によれば、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの両方用いた場合、透過率約6%に最適条件があり、透過率が6%よりも低くなるに従って正面輝度は低下していく。この場合、正面輝度が最も良好な場合の75%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は0.6%以上6%以下が好ましいことが分かる。また、より好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の85%以上の高い範囲となるようにするためには、透過率は0.2%以上6%以下が好ましいことが分かる。更に、最も好ましい条件として、正面輝度が最も良好な場合の95%以上を確保することができるようにするためには、透過率は2%以上6%以下とすればよいことが分かる。なお、図24に示した比較例としての蛍光体層29のみの場合の結果によると、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aの場合とほぼ同様の傾向を示すが、透過率が低くなるに従って、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aが存在している場合と比較すると急に正面輝度が低下していく。なお、Eu付活硫化物系の赤色蛍光体粒子を用いたが、この他Eu付活硫酸化物蛍光体や、Eu付活窒化物蛍光体を用いても同様の傾向を示す。
【0131】
以上、述べたように、蛍光体材料が緑色蛍光体材料であるか、青色蛍光体材料であるか、赤色蛍光体材料であるかによって、更には、蛍光体材料の粒径や蛍光体材料の組成の差異によっても、正面輝度が良好となる最適な蛍光体層の透過率範囲は異なっている。しかしながら、蛍光体層は、ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光が蛍光体層に入射する光量を100%としたとき、蛍光体層の波長が380nm〜420nmの範囲の光の透過率が0.1%〜10%の範囲となるようにすれば、蛍光体材料が緑色用のものであっても、赤色用のものであっても、更には青色用のものであっても、最適な条件における正面輝度を100%とした場合、80%以上の正面輝度を確保することができるようになる。
【0132】
なお、上記実施例7では、単位ピクセルが一種の蛍光体層からなるものに対して、バンドパスフィルター層37及びフィルター層30aを受けた例を示した。しかしながら、本発明は、実施例2〜6(図5〜図10参照)に示したような単位ピクセルがそれぞれR、G及びBの3色のサブピクセルからなる液晶表示装置に対しても、更には、図11A及び図11Bに示したような単位ピクセル内に4つのサブピクセルからなる液晶表示装置に対しても、同様に適用可能である。これらの場合においても、図12に示したように、蛍光体層29と第2の偏光板26との間にバンドパスフィルター層37を配置し、蛍光体層29の表面にフィルター層30aを形成すればよい。
【符号の説明】
【0133】
10、10A〜10H…液晶表示装置 11…液晶表示パネル 12…バックライト装置 13…第1基板 14、14A〜14D…第2基板 15…シール材 16…注入口 17…封止材 18…表示領域 19…非表示領域 20…ドライバー 21…液晶層 22…単位ピクセル 22a…サブピクセル 23、26…偏光板 24…第1構造物 25、28…配向膜 27…第2構造物 29…所定の色の蛍光体層 29B…青色蛍光体層 29R…赤色蛍光体層 29G…緑色蛍光体層 30、30a…フィルター層 31…遮光膜 32…ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光 33…所定の色の光 33R…赤色光 33G…緑色光 33B…青色光 34…反射防止膜 35…透明基板 36…第3基板 37…バンドパスフィルター層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層が挟持された第1基板及び第2基板と、
前記第1基板の背面に順次配置された第1の偏光板及びバックライト光源と、
前記第2基板に形成された第2の偏光板と、
を備えた液晶表示装置において、
前記バックライト光源としてピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を発する発光ダイオードを備え、
前記第2の偏光板の前記液晶層と反対側には、
単位ピクセル毎に、前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収して所定の色の光を発する蛍光体層を備え、
前記蛍光体層の前記液晶層とは反対側には波長420nm以下の波長の光を反射又は吸収するフィルター層が形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記蛍光体層は、前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を吸収してそれぞれ異なる色の光を発する複数種の蛍光体を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記単位ピクセルは前記単位ピクセル毎に少なくとも1つのサブピクセルを有し、
前記サブピクセル毎に前記蛍光体層が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記単位ピクセルは、前記単位ピクセル毎にそれぞれ異なる色の光を発する複数のサブピクセルを含むことを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記複数のサブピクセルは、赤色光を発する赤色蛍光体層を備える赤色サブピクセルと、緑色光を発する緑色蛍光体層を備える緑色サブピクセルと、青色光を発する青色蛍光体層を備える青色サブピクセルとを備えていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記複数のサブピクセルは、それぞれのサブピクセルの平面視の面積が各サブピクセルから発せられる光を合成して所望の色が得られるように調整されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記サブピクセルの平面視の周囲は遮光部材で遮光されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層とは反対側の面に形成されており、前記蛍光体層及びフィルター層は前記第2の偏光板の表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層とは反対側の面に形成され、
透明基板の一方側の面に前記蛍光体層が形成されていると共に前記透明基板の他方側の面には前記フィルター層が形成された第3基板を備え、
前記第3基板は、前記蛍光体層が前記第2の偏光板と対向するように、前記第2基板の前記液晶層とは反対側に配置されている特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記第2の偏光板、蛍光体層及びフィルター層は、前記第2基板の前記液晶層側に形成されている特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層側に形成されており、前記蛍光体層及びフィルター層は、前記第2基板の前記液晶層とは反対側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記蛍光体層及び前記第2の偏光板は前記第2基板の前記液晶層側に形成されており、前記フィルター層は前記第2基板の前記液晶層とは反対側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記第2基板の前記液晶層とは反対側の最外表面には反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記フィルター層は波長430nm以下の光を反射するものであり、前記第2の偏光板と前記蛍光体層との間に前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光を透過させるがその他の波長の光を反射するバンドパスフィルター層が備えられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記蛍光体層は、前記ピーク波長が380nm〜420nmの範囲の光が前記蛍光体層に入射する光量を100%としたとき、前記蛍光体層の前記波長が380nm〜420nmの範囲の光の透過率が0.1%〜10%の範囲であることを特徴とする請求項14に記載の液晶表示層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−250259(P2010−250259A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203533(P2009−203533)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】